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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/34 20060101AFI20221124BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   B66B 9/187 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B3/00 U
B66B9/187 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018157012
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029355
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】391028889
【氏名又は名称】三成研機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】山添 大樹
(72)【発明者】
【氏名】池上 正樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】浅野 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 有信
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-122543(JP,A)
【文献】特開2004-175496(JP,A)
【文献】特開平06-227774(JP,A)
【文献】特開2004-018243(JP,A)
【文献】特開2014-037279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00- 1/52
B66B 3/00- 3/02
B66B 9/00- 9/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降対象を昇降させるエレベータであって、
前記昇降対象が載せられて昇降する昇降手段と、
前記昇降手段が昇降する昇降空間に沿って設けられている給電レールと、を備え、
前記給電レールは、前記昇降手段側と外部機器側との間の通信信号を伝送し、
前記給電レールは、前記昇降手段側の機器を動作させるための電力を前記昇降手段側に供給し、
前記給電レールは、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を前記昇降手段側に供給し、
前記エレベータは、工事用エレベータであり、
前記昇降手段は、立設しているマストに沿って昇降し、
前記給電レールは、前記マストに沿って設けられており、
前記所定位置は、少なくとも、前記給電レールにおける上端側又は下端側の位置のうちの一方の位置である第1位置と、前記給電レールにおける上端側及び下端側の間の位置である第2位置とを含んでおり、
前記エレベータは、
前記昇降手段側の電力を供給する分電盤と、
前記分電盤から供給される電力を変圧し、変圧された電力を前記給電レールにおける前記第1位置に供給する第1トランスと、
前記分電盤から供給される電力を変圧し、変圧された電力を前記給電レールにおける前記第2位置に供給する第2トランスと、を更に備える、
エレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工事現場で用いられる工事用エレベータが知られていた(例えば、特許文献1参照)。この従来の工事用エレベータにおいては、垂直に立設するマストとして機能するレール部に沿って、昇降手段として機能する床部が昇降するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-145086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工事用エレベータにおいては、昇降手段(つまり、エレベータのかご又は床部)の外部の装置である外部装置との間で任意の通信(例えば、インターホンに関する通信等)を行うように構成されたり、あるいは、昇降手段側に対して昇降手段の外部から電源を供給するように構成されることがあり、この場合、通信や電源供給を行うために、信号線や電力線をまとめた電源・通信ケーブル(以下、単に「ケーブル」とも称する)が用いられていた。
【0005】
しかしながら、ケーブルにおいては、当該ケーブルの一端が昇降手段に接続されて固定されていたので、昇降手段が昇降する場合、当該ケーブルも一緒に昇降させる必要があり、昇降手段の荷重が増大する可能性があった。また、風が吹いた場合、ケーブルが当該風を受けて揺動し、マスト等に絡まって断線する可能性があり、安定的に運転できなくなる可能性があった。更に、キャブタイヤケーブル(つまり、例えば、ケーブル)の荷重が昇降手段にかかる事、電圧降下を考慮すると例えば最大揚程300m程度が限界とされていた。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みなされたもので、昇降手段にかかる荷重を減少させ且つ安定的に運転させることが可能となるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載のエレベータは、昇降対象を昇降させるエレベータであって、前記昇降対象が載せられて昇降する昇降手段と、前記昇降手段が昇降する昇降空間に沿って設けられている給電レールと、を備え、前記給電レールは、前記昇降手段側と外部機器側との間の通信信号を伝送し、前記給電レールは、前記昇降手段側の機器を動作させるための電力を前記昇降手段側に供給し、前記給電レールは、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を前記昇降手段側に供給し、前記エレベータは、工事用エレベータであり、前記昇降手段は、立設しているマストに沿って昇降し、前記給電レールは、前記マストに沿って設けられており、前記所定位置は、少なくとも、前記給電レールにおける上端側又は下端側の位置のうちの一方の位置である第1位置と、前記給電レールにおける上端側及び下端側の間の位置である第2位置とを含んでおり、前記エレベータは、前記昇降手段側の電力を供給する分電盤と、前記分電盤から供給される電力を変圧し、変圧された電力を前記給電レールにおける前記第1位置に供給する第1トランスと、前記分電盤から供給される電力を変圧し、変圧された電力を前記給電レールにおける前記第2位置に供給する第2トランスと、を更に備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のエレベータによれば、給電レールが通信信号を伝送することにより、例えば、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、昇降手段側と外部機器側との間の通信を正常に維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
また、給電レールは電力を供給することにより(つまり、給電レールが電源の電力を伝送することにより)、例えば、電源装置(一例としては、インバータ装置等)を昇降手段に載せる必要がないので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、風が吹いたりした場合であっても、電源の供給を維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
また、給電レールは、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を供給することにより、例えば、固定設置されている給電レールの所定位置に対して、電源装置(一例としては、インバータ装置等)からのケーブルを接続して、昇降手段側に電力を供給することができるので、施工又はメンテナンスが容易となる。
また、エレベータは、工事用エレベータであることにより、例えば、工事用エレベータにおいて、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。その事により、モータの負荷を小さく又は積載荷重を増大できる。また、工事用エレベータにおいて、例えば、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、昇降手段側と外部機器側との間の通信を正常に維持することができるので、
安定的に運転させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施の形態1に係るエレベータシステムを示す図である。
図2】動力用給電レールの一部の拡大正面図である。
図3】動力用給電レールの断面図である。
図4】制御電源用給電レールの断面図である。
図5】通信用給電レールの断面図である。
図6】実施の形態2に係るエレベータシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明に係るエレベータの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0027】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、昇降手段側と外部機器側との間の通信信号を伝送するエレベータに関する。
【0028】
ここで、「エレベータ」とは、昇降対象を鉛直方向において昇降させる装置であり、例えば、建物に設けられる建物用のエレベータ、及び工事現場又は建設現場で用いられる工事用エレベータ等を含む概念であり、例えば、昇降手段、及び給電レールを備えるものである。
【0029】
また、「昇降対象」とは、エレベータによって昇降される対象であり、例えば、人、動物、及び物(一例としては、建築部材、あるいは、道具等)等を含む概念である。また、「昇降手段」とは、昇降対象が載せられて昇降する手段であり、具体的には、鉛直方向において上方又は下方に移動するものであり、例えば、マストに沿って昇降するものであり、一例としては、床部、天井部、壁部等によって仕切られているいわゆる「かご」、あるいは、仕切られていない床部等を含む概念である。なお、「マスト」とは、例えば、工事用エレベータの部材であり、地上に立設されて昇降手段を支持するものである。
【0030】
また、「給電レール」とは、昇降手段が昇降する昇降空間に沿って設けられているものであり、具体的には、少なくとも昇降手段側と外部機器側との間の通信信号を伝送するものである。また、「給電レール」とは、例えば、複数種類の通信信号を多重化された状態で伝送するもの等を含む概念であり、また、昇降手段側の機器を動作させるための電力を昇降手段側に供給するもの等を含む概念であり、また、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を昇降手段側に供給するもの等を含む概念である。
【0031】
また、「昇降空間」とは、昇降手段が移動する空間であって、昇降路であり、例えば、マストに沿っており当該マストに隣接する空間、建物のエレベータシャフトの空間等を含む概念である。
【0032】
また、「外部機器」とは、昇降手段から離れた位置(つまり、外部の位置)に設けられている機器であり、例えば、工事用エレベータにおけるいわゆるインターホン子機、及び自動運転装置子機等を含む任意の機器を含む概念である。また、「インターホン子機」とは、昇降手段側との間で音声又は映像等の任意の情報の通信を行う機器であり、具体的には、昇降手段に設けられているインターホン親機との間で当該通信を行う機器である。また、「自動運転装置子機」とは、昇降手段側の状態に関する情報の通信を行う機器であり、具体的には、昇降手段に設けられている自動運転親機との間で当該通信を行う機器である。なお、「昇降手段側の状態」とは、例えば、昇降手段が停止中であること、移動中であること、昇降手段の扉が開いていること、あるいは、当該扉が閉じていること等に関する状態を含む概念である。
【0033】
また、「通信信号を多重化する」とは、通信を行うための電気信号である通信信号を伝送するための通信線又は通信ケーブルの本数又はサイズを減少させるため行われることであり、具体的には、共通の伝送路で複数のアナログ信号又はデジタル信号を伝送することであり、例えば、公知の技術である空間分割多重化、周波数分割多重化、時分割多重化、又は符号分割多重化のうちの1つの技術、あるいは、これらを組み合わせた技術を用いて実現されること等を含む概念である。
【0034】
また、「所定位置」とは、給電レールにおける予め定められた位置であり、例えば、上端側の位置、下端側の位置、又は上端側の位置及び下端側の位置の相互間の位置(以下、途中位置)等を含む概念である。なお、この所定位置は任意の基準で定めることができるが、例えば、給電レールの長さ又は給電レールにおける電圧降下等を考慮して、給電レールの全体の電力レベルが一定範囲内に維持されることを基準として定めてもよい。
【0035】
また、「給電レール」とは、例えば、通信信号を伝送する第1給電レールと、昇降手段側の機器を動作させるための電力を昇降手段側に供給する第2給電レールとを備えるものである。また、「給電レール」とは、例えば、相互に連結される複数のレールユニットにより構成されているもの等を含む概念である。「複数のレールユニット」とは、例えば、給電レールを構成する部品であり、長手方向において相互に連結されて給電レールを構成するものである。
【0036】
そして、以下の各実施の形態では、「エレベータ」が工事用エレベータである場合について説明し、特に、実施の形態1においては、給電レールにおける電力を受電する「所定位置」が下端側の位置である場合について説明し、また、実施の形態2においては、当該「所定位置」が上端側の位置、下端側の位置、及び途中位置である場合について説明する。
【0037】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0038】
(実施の形態1)
最初に、実施の形態1について説明する。実施の形態1においては、マストが2本であり、また、給電レールにおける電力を受電する「所定位置」が下端側の位置である場合について説明する。
【0039】
(構成)
まず、本実施の形態に係るエレベータシステムの構成について説明する。図1は、エレベータシステムを示す図である。なお、図1においては、エレベータシステムにおける本願に関する主要部分のみ図示し、主要部分以外の部分については、公知の構成を適用することができるので不図示となっている。なお、図1においては、各給電レールの詳細の構成の図示は、説明の便宜上省略されている(後述する実施の形態2の図6も同様とする)。
【0040】
また、以下の説明では、各図に示すX―Y―Z方向が互いに直交する方向であり、具体的には、Z方向が垂直方向(又は鉛直方向)であって、X方向及びY方向が垂直方向に対して直交する水平方向であるものとして、例えば、Z方向を高さ方向と称し、+Z方向を上側(平面)と称し、-Z方向を下側(底面)と称して説明する。
【0041】
エレベータシステム100は、工事用エレベータであり、具体的には、建設現場に設けられているエレベータであり、例えば、分電盤11、トランス12、外部側制御盤13、インターホン子機14、自動運転装置子機15、多重伝送中継ボックス16、リミット装置17、第1マスト21、第2マスト22、エレベータ部23、動力用給電レール31、制御電源用給電レール32、通信用給電レール33、動力用ケーブル41、制御電源用ケーブル42、インターホン通信用ケーブル43、多重伝送用通信ケーブル44、制御通信用ケーブル45、子機通信用ケーブル46、及びリミット用ケーブル47を備える。
【0042】
なお、「分電盤11、トランス12、外部側制御盤13、インターホン子機14、自動運転装置子機15、多重伝送中継ボックス16、及びリミット装置17」は、公知の機器と同様にして構成することができるので、概要のみ説明する。
【0043】
(構成-分電盤、トランス、外部側制御盤)
分電盤11は、エレベータ部23側に電力を供給する供給手段である。この分電盤の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、商用電源が不図示の供給元から供給されるように構成することができる。
【0044】
トランス12は、電力を変圧する変圧手段である。このトランス12の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、分電盤11側から供給される電力の電圧を任意のレベルの電圧に降圧するように構成することができる。
【0045】
外部側制御盤13は、外部機器であり、具体的には、エレベータ部23等の制御を行う制御手段であり、また、いわゆるインバーター装置としても機能するものである。この外部側制御盤13の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、任意の制御回路やインバーター回路等を用いて構成することができる。
【0046】
(構成-インターホン子機、自動運転装置子機)
インターホン子機14は、外部機器であり、具体的には、外部側制御盤13を介してエレベータ部23に搭載している不図示の内部側制御盤と通信を行う機器である。このインターホン子機14の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、不図示のスピーカ、マイク、カメラ、及びディスプレイ等の任意の装置を用いてエレベータ部23の内部と外部との相互間で通話等を行えるように任意の電気回路等を用いて構成することができる。なお、このインターホン子機14の個数は任意であるが、ここでは、例えば、エレベータシステム100が設けられている建設対象建物の各階に1個ずつ設けられていることとする(自動運転装置子機15も同様とする)。
【0047】
自動運転装置子機15は、外部機器であり、具体的には、外部側制御盤13を介してエレベータ部23に搭載している不図示の内部側制御盤と通信を行う機器である。この自動運転装置子機15の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、昇降手段であるエレベータ部23側の状態に関する情報を不図示の表示装置(例えば、LED等の光源を備えるランプ等)を用いて報知できるように任意の電気回路等を用いて構成することができる。なお、これらの自動運転装置子機15及びインターホン子機14と、エレベータ部23の内部側制御盤との間の相互間の通信で用いられる電気信号が、「通信信号」に相当する。また、これらの電気信号以外にも、外部側制御盤13とエレベータ部23との間でエレベータ部23の制御(例えば、昇降制御等)に関する制御信号の通信が行われるが、この制御信号も「通信信号」に相当する。
【0048】
(構成-多重伝送中継ボックス)
多重伝送中継ボックス16は、外部機器であり、具体的には、通信信号を中継する中継手段である。この多重伝送中継ボックス16の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、通信信号を多重化したり、多重化された通信信号を元に戻すために多重分離(逆多重化)したりする電気回路等を備えて構成することができる。
【0049】
(構成-リミット装置)
リミット装置17は、エレベータ部23の位置を検出する検出手段である。このリミット装置17の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の検出機構又は検出装置を備えて構成することができる。
【0050】
(構成-マスト)
第1マスト21及び第2マスト22は、エレベータ部23を昇降可能に支持する支持手段である。第1マスト21及び第2マスト22の具体的な種類や構成は任意であり、例えば、水平方向(X方向)においてエレベータ部23を挟んで当該エレベータ部23の両側に設けられているものであり、また、鉛直方向(Z方向)において延在しているものであり、また、金属製のものである。
【0051】
なお、この第1マスト21及び第2マスト22の相互間の空間であって、エレベータ部23が移動する空間が「昇降空間」に相当する。
【0052】
(構成-エレベータ部)
エレベータ部23は、前述の昇降手段である。このエレベータ部23の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、第1マスト21及び第2マスト22に支持されるものであり、また、第1マスト21及び第2マスト22に沿って昇降するものであり、また、集電部231を備えるものであり、また、いずれも不図示であるが、内部側制御盤、及び昇降要素等を備えるものである。
【0053】
(構成-エレベータ部-集電部)
集電部231は、エレベータ部23の各機器(例えば、内部側制御盤、及び昇降要素等)と各給電レールとを電気的に接続する接続手段であり、具体的には、エレベータ部23に搭載されており、当該エレベータ部23と共に昇降するものである。この集電部231の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の集電装置を用いて構成することができる。
【0054】
(構成-エレベータ部-内部側制御盤、昇降要素)
不図示の内部側制御盤は、エレベータ部23に搭載されているものである。この内部側制御盤の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、インターホン子機14及び自動運転装置子機15との間で通信を行って、インターホン親機及び自動運転親機として機能するものである。
【0055】
不図示の「昇降要素」とは、エレベータ部23を昇降させるための昇降機構(一例としては、各マストのガイドレールに沿って昇降させるための回転機構等)、及び昇降機構を駆動させるための駆動モータ等を備えて構成することができる。
【0056】
(構成-エレベータ部-動力用ケーブル)
動力用ケーブル41は、エレベータ部23側の機器(例えば、昇降要素の駆動モータ)を動作させるための電力を供給するための電源ケーブルである。この動力用ケーブル41の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、任意のレベルの三相交流の電力を供給するものであり、また、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端が動力用給電レール31の下端部(-Z方向)に接続されているものである。
【0057】
(構成-制御電源用ケーブル)
制御電源用ケーブル42は、エレベータ部23側の機器(例えば、内部側制御盤)を動作させるための電力を供給するための電源ケーブルである。この制御電源用ケーブル42の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、任意のレベル(例えば、動力用ケーブル41の電力よりも低いレベル)の三相交流の電力を供給するものであり、また、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端が制御電源用給電レール32の下端部(-Z方向)に接続されているものである。
【0058】
(構成-インターホン通信用ケーブル)
インターホン通信用ケーブル43は、インターホン子機14とエレベータ部23側の機器(例えば、内部側制御盤)との間の通信信号を伝送するためのケーブルである。このインターホン通信用ケーブル43の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、2芯の導電線が配設されているものであり、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端が通信用給電レール33の下端部(-Z方向)に接続されているものである。
【0059】
(構成-多重伝送用通信ケーブル)
多重伝送用通信ケーブル44は、多重伝送中継ボックス16にて多重化された通信信号を伝送するためのケーブルである。この多重伝送用通信ケーブル44の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、2芯の導電線が配設されているものであり、一端が多重伝送中継ボックス16に接続されているものであり、また、他端が通信用給電レール33の下端部(-Z方向)に接続されているものである。
【0060】
(構成-制御通信用ケーブル)
制御通信用ケーブル45は、外部側制御盤13とエレベータ部23側の機器(例えば、内部側制御盤)との間で伝送される制御に関する制御信号(通信信号)を伝送するためのケーブルである。この制御通信用ケーブル45の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、24芯の導電線が配設されているものであり、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端が多重伝送中継ボックス16に接続されているものである。
【0061】
(構成-子機通信用ケーブル)
子機通信用ケーブル46は、自動運転装置子機15とエレベータ部23側の機器(例えば、内部側制御盤)との間の通信信号を伝送するためのケーブルである。この子機通信用ケーブル46の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、2芯の導電線が配設されているものであり、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端が多重伝送中継ボックス16に接続されているものである。
【0062】
(構成-子機通信用ケーブル)
リミット用ケーブル47は、外部側制御盤13とリミット装置17との間で伝送される検出信号を伝送するためのケーブルである。このリミット用ケーブル47の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、2芯の導電線が配設されているものであり、一端が外部側制御盤13に接続されているものであり、また、他端がリミット装置17に接続されているものである。
【0063】
(構成-給電レール)
図2は、動力用給電レールの一部の拡大正面図であり、図3は、動力用給電レールの断面図であり、図4は、制御電源用給電レールの断面図であり、図5は、通信用給電レールの断面図である。なお、図3は、図2のA-A矢印から見た断面図であり、図4及び図5は、図3と同様な断面図である。
【0064】
(構成-給電レール-動力用給電レール)
動力用給電レール31は、前述の給電レールであり、具体的には、エレベータ部23が昇降する昇降空間に沿って設けられているものである。動力用給電レール31の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、第1マスト21に固定されているものであり、また、鉛直方向(Z方向)に沿っている長尺状のものであり、また、矩形柱の外形を有するものであり、また、中空部を有するものであり、また、所定の剛性を有する補強構造を有するものである(制御電源用給電レール32、及び通信用給電レール33も同様である)。
【0065】
また、動力用給電レール31は、例えば、図2のレールユニット300を長手方向に沿って複数個連結して形成されるものである(制御電源用給電レール32、及び通信用給電レール33も同様である)。なお、ここでの連結手法は任意であり、例えば、相互に隣接するレールユニット300同士を連結する連結具301を用いて連結することができる。なお、ここでは、例えば、連結具301の詳細は不図示であるが、例えば、レールユニット300同士を着脱可能に連結することができる任意の要素(例えば、ボルトとナット等)を含んで構成することができる。
【0066】
また、動力用給電レール31は、例えば、図2及び図3の溝部302、図3の第1導電部311、第2導電部312、第3導電部313、及び第4導電部314を備える。
【0067】
(構成-給電レール-動力用給電レール-溝部)
溝部302は、例えば、動力用給電レール31の中空部に連通する部分であり、また、図2に示すように動力用給電レール31の1個の面において長手方向に沿って設けられている部分であり、また、集電部231の一部が挿入される部分である。
【0068】
(構成-給電レール-動力用給電レール-導電部)
第1導電部311、第2導電部312、第3導電部313、及び第4導電部314は、動力用ケーブル41からの電力を通電する通電手段であり、例えば、制御電源用ケーブル42のU相、V相、W相、及びグランドが接続されるものである。そして、これらの第1導電部311、第2導電部312、第3導電部313、及び第4導電部314には、集電部231の一部であるトローリー部のブラシ部が常時接続されて、各導電部とエレベータ部23とが集電部231を介して相互に電気的に接続されることになる(制御電源用給電レール32の各通電部、及び通信用給電レール33の各通電部も同様である)。
【0069】
(構成-給電レール-制御電源用給電レール)
制御電源用給電レール32は、前述の給電レールであり、具体的には、エレベータ部23が昇降する昇降空間に沿って設けられているものである。また、制御電源用給電レール32は、例えば、図4の第1導電部321、第2導電部322、第3導電部323、及び第4導電部324を備える。
【0070】
(構成-給電レール-制御電源用給電レール-導電部)
第1導電部321、第2導電部322、第3導電部323、及び第4導電部324は、制御電源用ケーブル42からの電力を通電する通電手段であり、例えば、制御電源用ケーブル42のU相、V相、W相、及びグランドが接続されるものである。
【0071】
(構成-給電レール-通信用給電レール)
通信用給電レール33は、前述の給電レールであり、具体的には、エレベータ部23が昇降する昇降空間に沿って設けられているものである。また、通信用給電レール33は、例えば、図5の第1導電部331、第2導電部332、第3導電部333、及び第4導電部334を備える。
【0072】
(構成-給電レール-通信用給電レール-導電部)
第1導電部331、第2導電部332、第3導電部333、及び第4導電部334は、インターホン通信用ケーブル43及び多重伝送用通信ケーブル44を介して伝送される通信信号を通電する通電手段であり、例えば、各ケーブルの各導電線が接続されているものである。
【0073】
(電力の供給)
次に、このように構成されたエレベータシステム100の電力の供給について説明する。ここでは、例えば、外部側制御盤13からエレベータ部23の駆動モータに対して電力を供給する場合、エレベータ部23の内部側制御盤を動作させるための電力を供給する場合について説明する。
【0074】
(電力の供給-駆動モータに対する電力の供給)
エレベータ部23の駆動モータに対して電力を供給する場合、外部側制御盤13は、動力用ケーブル41に電力を供給する。そして、動力用給電レール31に供給された電力は、動力用給電レール31の各導電部及び集電部231を介して、エレベータ部23の駆動モータに供給されることになる。そして、この供給された電力によって駆動モータが駆動し、エレベータ部23が昇降することになる。
【0075】
(電力の供給-内部側制御盤を動作させるための電力の供給)
エレベータ部23の内部側制御盤を動作させるための電力を供給する場合、外部側制御盤13は、制御電源用ケーブル42に電力を供給する。そして、制御電源用ケーブル42に供給された電力は、制御電源用給電レール32の各導電部及び集電部231を介して、エレベータ部23の内部側制御盤に供給されることになる。そして、この供給された電力によって内部側制御盤が動作することになる。
【0076】
(通信信号の伝送)
次に、このように構成されたエレベータシステム100の通信信号の伝送について説明する。ここでは、例えば、インターホン子機14とエレベータ部23の内部側制御盤との間で通信信号を伝送する場合、自動運転装置子機15とエレベータ部23の内部側制御盤との間で通信信号を伝送する場合、及び外部側制御盤13とエレベータ部23との間でエレベータ部23の制御に関する通信信号(つまり、制御信号)を伝送する場合について説明する。
【0077】
(通信信号の伝送-インターホン子機との通信)
インターホン子機14とエレベータ部23の内部側制御盤との間で通信信号を伝送する場合、双方向での通信が可能であるが、相互に同様な伝送路を介して通信するので、ここでは、例えば、エレベータ部23の内部側制御盤側からインターホン子機14側に通信信号を伝送する場合について説明する(他の場合も同様とする)。
【0078】
エレベータ部23の内部側制御盤は、インターホン子機14と通信するための通信信号を、集電部231を介して制御電源用給電レール32に伝送する。そして、通信用給電レール33に伝送された通信信号は、通信用給電レール33の各通電部のうちの一部、インターホン通信用ケーブル43、外部側制御盤13を介してインターホン子機14に伝送される。
【0079】
(通信信号の伝送-自動運転装置子機との通信)
エレベータ部23の内部側制御盤は、自動運転装置子機15と通信するための多重化された通信信号を、集電部231を介して通信用給電レール33に伝送する。そして、通信用給電レール33に伝送された通信信号は、通信用給電レール33の各通電部のうちの一部、多重伝送用通信ケーブル44を介して多重伝送中継ボックス16に伝送されて、当該多重伝送中継ボックス16にて多重分離された後、子機通信用ケーブル46、外部側制御盤13を介して自動運転装置子機15に伝送される。
【0080】
(通信信号の伝送-外部側制御盤との通信)
エレベータ部23の内部側制御盤は、外部側制御盤13と通信するための多重化された通信信号を、集電部231を介して通信用給電レール33に伝送する。そして、通信用給電レール33に伝送された通信信号は、通信用給電レール33の各通電部のうちの一部、多重伝送用通信ケーブル44を介して多重伝送中継ボックス16に伝送されて、当該多重伝送中継ボックス16にて多重分離された後、制御通信用ケーブル45を介して外部側制御盤13に伝送される。
【0081】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、通信用給電レールが通信信号を伝送することにより、例えば、エレベータ部23にインターホン通信用ケーブル43、制御通信用ケーブル45、及び子機通信用ケーブル46を固定することが不要となるので、エレベータ部23の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、通信ケーブルが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、エレベータ部23側と外部機器(例えば、外部側制御盤13、インターホン子機14、及び自動運転装置子機15等)側との間の通信を正常に維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【0082】
また、複数種類の通信信号を多重化された状態で伝送することにより、例えば、単位数量当たりの通信線にて(つまり、例えば、通信用給電レール33における1個の導電部にて)伝送可能な通信信号の種類の個数を増大させることができるので、エレベータシステム100に用いる給電レールの本数を減少させたり、当該給電レールの径を小径化したり、あるいは、給電レールの重量を軽量化したりすることが可能となる。
【0083】
また、動力用給電レール31及び制御電源用給電レール32は電力を供給することにより、例えば、電源装置(一例としては、インバーター装置として機能する外部側制御盤13等)をエレベータ部23に載せる必要がないので、エレベータ部23の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、エレベータ部23に動力用ケーブル41及び制御電源用ケーブル42を固定することが不要となるので、エレベータ部23の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、電源ケーブルが不要となるので、風が吹いたりした場合であっても、電源の供給を維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【0084】
また、動力用給電レール31は、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を供給することにより、例えば、固定設置されている動力用給電レール31の所定位置に対して、電源装置(一例としては、インバーター装置として機能する外部側制御盤13等)からの動力用給電レール31を接続して、エレベータ部23側に電力を供給することができるので、施工又はメンテナンスが容易となる。
【0085】
また、所定位置は、少なくとも動力用給電レール31における下端側(-Z方向)の位置を含んでいることにより、例えば、動力用給電レール31の端部側に対して、電源装置(一例としては、インバーター装置として機能する外部側制御盤13等)からの動力用給電レール31を接続して、エレベータ部23側に電力を供給することができるので、施工又はメンテナンスが容易となる。
【0086】
また、給電レールは、通信信号を伝送する通信用給電レール33(第1給電レール)と、電力を供給する動力用給電レール31及び制御電源用給電レール32(第2給電レール)を備えることにより、例えば、通信信号の伝送用と電力の供給用とで給電レールを相互に分けることができるので、給電レールの管理性を向上させることが可能となる。
【0087】
また、給電レールは、相互に連結される複数のレールユニット(例えば、動力用給電レールのレールユニット300等)により構成されていることにより、例えば、レールユニットの交換により給電レールを修理することができるので、メンテナンス性を向上させることが可能となる。つまり、途中の給電レールにトラブルが発生した場合も、単体で交換できる仕組みとなっているので、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、例えば、用いるレールユニットの個数を増減させることにより、給電レール長さを調整することが可能となる。
【0088】
また、エレベータシステム100は、工事用エレベータであることにより、例えば、工事用エレベータにおいて、エレベータ部23に通信ケーブルを固定することが不要となるので、エレベータ部23の荷重を減少させることが可能となる。その事により、駆動モータの負荷を小さく且つ積載荷重を増大できる。また、工事用エレベータにおいて、例えば、通信ケーブルが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、エレベータ部23側と外部機器(例えば、外部側制御盤13、インターホン子機14、及び自動運転装置子機15等)側との間の通信を正常に維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【0089】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2においては、マストが1本であり、また、給電レールにおける電力を受電する「所定位置」が下端側の位置、途中位置、及び上端側の位置である場合について説明する。なお、実施の形態2の構成は、特記する構成を除いて実施の形態1の構成と同様であるので、実施の形態1の構成と同様な構成についてその説明を省略する。
【0090】
(構成)
まず、本実施の形態に係るエレベータシステムの構成について説明する。図6は、エレベータシステムを示す図である。なお、図6においては、実際には、図1のインターホン子機14、及び自動運転装置子機15が設けられているが、説明の便宜上、図示が省略されている。
【0091】
エレベータシステム500は、工事用エレベータであり、具体的には、建設現場に設けられているエレベータであり、例えば、分電盤51、第1トランス52、第2トランス53、外部側制御盤54、マスト61、エレベータ部62、動力用給電レール71、制御電源用給電レール72、通信用給電レール73、第1動力用ケーブル81、第2動力用ケーブル82、第3動力用ケーブル83、制御電源用ケーブル84、インターホン通信用ケーブル85、及び多重伝送用通信ケーブル86を備える。
【0092】
(構成-分電盤、トランス、外部側制御盤)
分電盤51は、エレベータ部62側に電力を供給する供給手段であり、例えば、実施の形態1の分電盤11と同様にして構成することができる。
【0093】
第1トランス52、及び第2トランス53は、電力を変圧する変圧手段であり、例えば、実施の形態1のトランス12と同様にして構成することができる。
【0094】
外部側制御盤54は、外部機器であり、具体的には、エレベータ部62等の制御を行う制御手段であり、また、いわゆるインバーター装置としても機能するものであり、例えば、実施の形態1の外部側制御盤13と同様にして構成することができる。特に、外部側制御盤54は、例えば、実施の形態1の多重伝送中継ボックス16の機能である多重化及び多重分離の機能も有するものである。
【0095】
(構成-マスト)
マスト61は、エレベータ部62を昇降可能に支持する支持手段であるマスト61の具体的な種類や構成は任意であり、例えば、水平方向(X方向)においてエレベータ部62の中心側に設けられているものであり、また、鉛直方向(Z方向)において延在しているものであり、また、金属製のものである。
【0096】
なお、このマスト61に隣接する空間であって、エレベータ部62が移動する空間が「昇降空間」に相当する。
【0097】
(構成-エレベータ部)
エレベータ部62は、前述の昇降手段である。このエレベータ部62の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、マスト61に支持されるものであり、また、マスト61に沿って昇降するものであり、また、いずれも不図示であるが、集電部、内部側制御盤、及び昇降要素等を備えるものである。なお、集電部、内部側制御盤、及び昇降要素については、実施の形態1で説明した同一名称の要素と同様であるので、その説明を省略する。
【0098】
(構成-エレベータ部-第1~第3動力用ケーブル)
第1~第3動力用ケーブル81~83は、エレベータ部23側の機器(例えば、昇降要素の駆動モータ)を動作させるための電力を供給するための電源ケーブルである。この第1~第3動力用ケーブル81~83の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、実施の形態1の動力用ケーブル41と同様にして構成することができ、第1動力用ケーブル81及び第2動力用ケーブル82の一端は、外部側制御盤54に接続されており、また、第3動力用ケーブル83の一端は、分電盤51に接続されている(なお、第3動力用ケーブル83の途中位置には、第2トランス53が設けられている)。そして、第1動力用ケーブル81の他端は、動力用給電レール71の上端部(+Z方向)に接続されており、また、第2動力用ケーブル82の他端は、動力用給電レール71の下端部(-Z方向)に接続されており、また、第3動力用ケーブル83の他端は、動力用給電レール71の途中位置に接続されている。
【0099】
(構成-制御電源用ケーブル、インターホン通信用ケーブル、及び多重伝送用通信ケーブル)
制御電源用ケーブル84、インターホン通信用ケーブル85、及び多重伝送用通信ケーブル86は、実施の形態1の同一名称の要素と同様にして構成することができる
【0100】
(構成-給電レール)
動力用給電レール71、制御電源用給電レール72、及び通信用給電レール73は、前述の給電レールであり、具体的には、実施の形態1の同一名称の構成と同様にして構成することができる。特に、図6では、説明の便宜上、動力用給電レール71、制御電源用給電レール72、及び通信用給電レール73をマスト61から離して図示しているが、各給電レールをマスト61に固定して取り付けてもよいし、あるいは、不図示の支持柱をマスト61に沿って設けて、当該支持柱に固定して取り付けてもよい。
【0101】
(電力の供給)
次に、このように構成されたエレベータシステム500の電力の供給について説明する。ここでは、例えば、エレベータ部62の内部側制御盤を動作させるための電力の供給は、実施の形態1で説明した内容と同様であるので説明を省略し、エレベータ部62の駆動モータに対して電力を供給する場合について説明する。
【0102】
(電力の供給-駆動モータに対する電力の供給)
エレベータ部62の駆動モータに対して電力を供給する場合、第1トランス52は、外部側制御盤13を介して、第1動力用ケーブル81及び第2動力用ケーブル82に電力を供給し、また、第2トランス53は、第3動力用ケーブル83の動力用給電レール71側の一部に電力を供給する。そして、第1動力用ケーブル81及び第2動力用ケーブル82に供給された電力は、動力用給電レール71の上端側(+Z方向)及び下端側(-Z方向)から当該動力用給電レール71の各導電部に供給されることになり、また、第3動力用ケーブル83に供給された電力は、動力用給電レール71の途中位置から当該動力用給電レール71の各導電部に供給されることになる。このように、動力用給電レール71は、相互に離れた複数の位置において電力を受電することになるので、動力用給電レール71各導電部のあらゆる位置で電力レベルを一定範囲内に維持することが可能となる。そして、動力用給電レール71の各導電部に供給された電力は、エレベータ部62の不図示の集電部を介して、当該エレベータ部62の駆動モータに供給されることになる。
【0103】
なお、このように構成されたエレベータシステム500においては、通信信号の伝送も行われるが、当該通信信号の伝送の内容は、実施の形態1の場合と同様であるのでその説明を省略する。
【0104】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、所定位置は、少なくとも動力用給電レール71における上端側及び下端側の間の位置(途中位置)を含んでいることにより、例えば、動力用給電レール71の途中の位置から電力を供給することができるので、動力用給電レール71全長において供給される電力レベルを一定範囲内に維持することができ、安定的に運転させることが可能となる。
【0105】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0106】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0107】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値(個数)、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0108】
(給電レールについて(その1))
また、上記各実施の形態では、給電レールを3本用いる場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、比較的太い給電レールを1本用いて、当該1本の給電レール内に導電部を12本設けて当該1本の給電レールにて電力の供給及び通信信号の伝送を行うように構成してもよい。また、例えば、給電レールの本数及び給電レールに設けられる導電部の本数を任意の本数に変更してもよい。より具体的には、給電レールは、1本仕様、2本仕様、3本仕様、4本仕様とデータ通信量に合せて増やす事も可能である。また、導電部については、図3図5に示す全ての導電部を用いて動作するように構成してもよいし、一部のみの導電部を用いて動作するように構成してもよい。
【0109】
(給電レールについて(その2))
また、上記各実施の形態では、電力の供給と通信信号の伝送とを、相互に異なる給電レールの導電部を介して行う場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、公知の電力線搬送通信の技術を適用して、電力の供給と通信信号の伝送とを、相互に共通する給電レールの導電部を介して行うように構成してもよい。
【0110】
(給電レールについて(その3))
また、上記各実施の形態では、給電レールの形状が矩形柱形状である場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、給電レールの形状を円柱形状、三角柱形状等の任意の形状としてもよい。
【0111】
(給電レールについて(その4))
また、上記実施の形態1では、第1マスト21における正面側(+Y方向)の面に給電レールを設ける場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、給電レールを第2マスト22に設けてもよいし、あるいは、当該給電レールを、正面側以外の面(例えば、背面側(-Y方向)の面、外側の面(第1マスト21の-X方向の面、あるいは、第2マスト22の+X方向の面)等)に設けてもよい。なお、複数の給電レール各々の設置位置を相互に異ならせてもよい。
【0112】
(多重化について(その1))
また、上記実施の形態1では、多重伝送中継ボックス16が通信信号の多重化及び多重分離を行う場合を例示して説明したが、これに限らない。例えば、外部側制御盤13が多重化及び多重分離を行うように構成してもよい。また、例えば、インターホン通信用ケーブル43、制御通信用ケーブル45、又は子機通信用ケーブル46の伝送される通信信号のうちの、実施の形態1で説明した制御通信用ケーブル45及び子機通信用ケーブル46の組み合わせ以外の任意の組み合わせのケーブルを伝送される通信信号を多重化してもよい。
【0113】
(多重化について(その2))
また、上記各実施の形態では、通信信号を多重化する場合を例示して説明したが、これに限らず、多重化せずに伝送するように構成してもよい。
【0114】
(付記)
付記1のエレベータは、昇降対象を昇降させるエレベータであって、前記昇降対象が載せられて昇降する昇降手段と、前記昇降手段が昇降する昇降空間に沿って設けられている給電レールと、を備え、前記給電レールは、前記昇降手段側と外部機器側との間の通信信号を伝送する。
【0115】
付記2のエレベータは、付記1に記載のエレベータにおいて、前記給電レールは、複数種類の前記通信信号を多重化された状態で伝送する。
【0116】
付記3のエレベータは、付記1又は2に記載のエレベータにおいて、前記給電レールは、前記昇降手段側の機器を動作させるための電力を前記昇降手段側に供給する。
【0117】
付記4のエレベータは、付記3に記載のエレベータにおいて、前記給電レールは、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を前記昇降手段側に供給する。
【0118】
付記5のエレベータは、付記4に記載のエレベータにおいて、前記所定位置は、少なくとも前記給電レールにおける上端側又は下端側の位置を含んでいる。
【0119】
付記6のエレベータは、付記4又は5に記載のエレベータにおいて、前記所定位置は、少なくとも前記給電レールにおける上端側及び下端側の間の位置を含んでいる。
【0120】
付記7のエレベータは、付記3から6の何れか一項に記載のエレベータにおいて、前記給電レールは、前記通信信号を伝送する第1給電レールと、前記昇降手段側の機器を動作させるための電力を前記昇降手段側に供給する第2給電レールとを備える。
【0121】
付記8のエレベータは、付記1から7の何れか一項に記載のエレベータにおいて、前記給電レールは、相互に連結される複数のレールユニットにより構成されている。
【0122】
付記9のエレベータは、付記1から8の何れか一項に記載のエレベータにおいて、前記エレベータは、工事用エレベータであり、前記昇降手段は、立設しているマストに沿って昇降し、前記給電レールは、前記マストに沿って設けられている。
【0123】
(付記の効果)
付記1に記載のエレベータによれば、給電レールが通信信号を伝送することにより、例えば、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、昇降手段側と外部機器側との間の通信を正常に維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【0124】
付記2に記載のエレベータによれば、複数種類の通信信号を多重化された状態で伝送することにより、例えば、単位数量当たりの通信線にて伝送可能な通信信号の種類の個数を増大させることができるので、エレベータに用いる給電レールの本数を減少させたり、当該給電レールの径を小径化したり、あるいは、給電レールの重量を軽量化したりすることが可能となる。
【0125】
付記3に記載のエレベータによれば、給電レールは電力を供給することにより(つまり、給電レールが電源の電力を伝送することにより)、例えば、電源装置(一例としては、インバータ装置等)を昇降手段に載せる必要がないので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。また、例えば、、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、風が吹いたりした場合であっても、電源の供給を維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【0126】
付記4に記載のエレベータによれば、給電レールは、自己の長手方向における所定位置にて受電した電力を供給することにより、例えば、固定設置されている給電レールの所定位置に対して、電源装置(一例としては、インバータ装置等)からのケーブルを接続して、昇降手段側に電力を供給することができるので、施工又はメンテナンスが容易となる。
【0127】
付記5に記載のエレベータによれば、所定位置は、少なくとも給電レールにおける上端側又は下端側の位置を含んでいることにより、例えば、給電レールの端部側に対して、電源装置(一例としては、インバータ装置等)からのケーブルを接続して、昇降手段側に電力を供給することができるので、施工又はメンテナンスが容易となる。
【0128】
付記6に記載のエレベータによれば、所定位置は、少なくとも給電レールにおける上端側及び下端側の間の位置を含んでいることにより、例えば、給電レールの途中の位置から電力を供給することができるので、給電レール全長において供給される電力レベルを一定範囲内に維持することができ、安定的に運転させることが可能となり、且つ、高揚程に対応可能となる。
【0129】
付記7に記載のエレベータによれば、給電レールは、通信信号を伝送する第1給電レールと、電力を供給する第2給電レールを備えることにより、例えば、通信信号の伝送用と電力の供給用とで給電レールを相互に分けることができるので、給電レールの管理性を向上させることが可能となる。
【0130】
付記8に記載のエレベータによれば、給電レールは、相互に連結される複数のレールユニットにより構成されていることにより、例えば、レールユニットの交換により給電レールを修理することができるので、メンテナンス性を向上させることが可能となる。つまり、途中の給電レールにトラブルが発生した場合も、単体で交換できる仕組みとなっているので、メンテナンス性を向上させることが可能となる。また、例えば、用いるレールユニットの個数を増減させることにより、給電レール長さを調整することが可能となる。
【0131】
付記9に記載のエレベータによれば、エレベータは、工事用エレベータであることにより、例えば、工事用エレベータにおいて、昇降手段にケーブルの一端を固定してぶら下げることが不要となるので、昇降手段の荷重を減少させることが可能となる。その事により、モータの負荷を小さく又は積載荷重を増大できる。また、工事用エレベータにおいて、例えば、ケーブルをぶら下げることが不要となるので、外部環境が影響する場合(例えば、高層階にて風が吹く場合等)であっても、昇降手段側と外部機器側との間の通信を正常に維持することができるので、安定的に運転させることが可能となる。
【符号の説明】
【0132】
11 分電盤
12 トランス
13 外部側制御盤
14 インターホン子機
15 自動運転装置子機
16 多重伝送中継ボックス
17 リミット装置
21 第1マスト
22 第2マスト
23 エレベータ部
31 動力用給電レール
32 制御電源用給電レール
33 通信用給電レール
41 動力用ケーブル
42 制御電源用ケーブル
43 インターホン通信用ケーブル
44 多重伝送用通信ケーブル
45 制御通信用ケーブル
46 子機通信用ケーブル
47 リミット用ケーブル
51 分電盤
52 第1トランス
53 第2トランス
54 外部側制御盤
61 マスト
62 エレベータ部
71 動力用給電レール
72 制御電源用給電レール
73 通信用給電レール
81 第1動力用ケーブル
82 第2動力用ケーブル
83 第3動力用ケーブル
84 制御電源用ケーブル
85 インターホン通信用ケーブル
86 多重伝送用通信ケーブル
100 エレベータシステム
231 集電部
300 レールユニット
301 連結具
302 溝部
311 第1導電部
312 第2導電部
313 第3導電部
314 第4導電部
321 第1導電部
322 第2導電部
323 第3導電部
324 第4導電部
331 第1導電部
332 第2導電部
333 第3導電部
334 第4導電部
500 エレベータシステム
図1
図2
図3
図4
図5
図6