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  • 特許-電流入力回路及び電力測定器 図1
  • 特許-電流入力回路及び電力測定器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電流入力回路及び電力測定器
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/00 20060101AFI20221124BHJP
   G01R 19/25 20060101ALI20221124BHJP
   G01R 21/133 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01R19/00 A
G01R19/25
G01R21/133 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018172842
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020046225
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596157780
【氏名又は名称】横河計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】橘 勝也
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-288218(JP,A)
【文献】特開平6-77416(JP,A)
【文献】実開昭62-133434(JP,U)
【文献】実開昭58-88459(JP,U)
【文献】特開昭64-15948(JP,A)
【文献】特開2011-12964(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00-19/32
G01R 21/00-21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を入力するA端子及び電流を出力する±端子と、
前記A端子及び前記±端子の間に接続されたシャント抵抗と、
前記シャント抵抗にかかる電圧を増幅する増幅回路と、
前記増幅回路により増幅された電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する後処理回路と、を備え、
前記後処理回路は抵抗を有し、前記増幅回路の基準電位を示す第1パターンは、前記抵抗を介して前記後処理回路の基準電位を示す第2パターンに接続され、前記第2パターンは前記±端子に接続され
前記後処理回路は、前記増幅回路により増幅された電圧と、前記増幅回路の基準電位との差動成分を出力するオペアンプを有し、該オペアンプの出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することを特徴とする電流入力回路。
【請求項2】
前記増幅回路及び前記後処理回路に電圧を供給する電源回路を備え、
前記増幅回路はインダクタを有し、該インダクタは前記電源回路に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の電流入力回路。
【請求項3】
前記第1パターンは前記増幅回路を囲むように配置され、前記第2パターンは前記後処理回路を囲むように配置されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電流入力回路。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の電流入力回路を備えることを特徴とする電力測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流入力回路及び電力測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力測定器として、一般的に図2に示す構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。図2において、電力測定器1は、電圧入力回路10と、電流入力回路20と、演算部30と、表示部40と、メモリ50と、操作部60と、CPU70とを備える。
【0003】
電圧入力回路10は、分圧回路11により入力電圧を分圧した後、増幅回路12により増幅し、A/D変換器13によりデジタル信号に変換する。
に出力する。
【0004】
電流入力回路20は、シャント抵抗21にかかる電圧を増幅回路22で増幅し、A/D変換器23によりデジタル信号に変換する。
【0005】
演算部30は、A/D変換器13から入力された電圧信号、及びA/D変換器23から入力された電流信号から、電圧値、電流値、電力値などを演算し、演算結果をメモリ50に格納する。表示部40は、演算部30の演算結果を表示する。操作部60は、例えば、ボタン、キー、外付けのキーボードやマウス等であり、測定条件等が設定される。CPU70は、電力測定器1の各機能部10~60とバスで接続されて各機能部10~60を制御し、電力測定器1の全体を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-288218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図2に示した電流入力回路20において、電流出力側の±端子(L端子)とシャント抵抗21の接続点である点Pから、接地された筺体100へは、電流入力回路20内の回路パターンを通って、複数の経路により電流が流れる。そのため、該電流と回路パターンのインピーダンスにより電圧が発生し、増幅回路22の入出力端子間に余分な電位差が発生してしまい、シャント抵抗21に流れる電流の測定に誤差が生じることがあった。
【0008】
そこで、本開示は、電流測定の誤差を低減することが可能な電流入力回路及び電力測定器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
幾つかの実施形態に係る電流入力回路は、電流を入力するA端子及び電流を出力する±端子と、前記A端子及び前記±端子の間に接続されたシャント抵抗と、前記シャント抵抗にかかる電圧を増幅する増幅回路と、前記増幅回路により増幅された電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する後処理回路と、を備え、前記後処理回路は抵抗を有し、前記増幅回路の基準電位を示す第1パターンは、前記抵抗を介して前記後処理回路の基準電位を示す第2パターンに接続され、前記第2パターンは前記±端子に接続され、前記後処理回路は、前記増幅回路により増幅された電圧と、前記増幅回路の基準電位との差動成分を出力するオペアンプを有し、該オペアンプの出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
このように、増幅回路の基準電位と後処理回路の基準電位とを分離し、増幅回路の基準電位を示す第1パターンを、抵抗を介して後処理回路の基準電位を示す第2パターンに接続し、第2パターンを±端子に接続することにより、増幅回路を流れるコモンモード電流を小さくすることができるため、電流測定の誤差を低減することが可能となる。
また、シャント抵抗にかかる電圧を増幅回路により増幅した後に、増幅回路の基準電位との差動成分を抽出することにより、さらに電流測定の誤差を低減することが可能となる。
【0011】
一実施形態において、前記増幅回路及び前記後処理回路に電圧を供給する電源回路を備え、前記増幅回路はインダクタを有し、該インダクタは前記電源回路に接続されてもよい。
このような構成によれば、増幅回路を電源回路から絶縁し、コモンモード電流を低減させることが可能となる。
【0012】
一実施形態において、前記第1パターンは前記増幅回路を囲むように配置され、前記第2パターンは前記後処理回路を囲むように配置されてもよい。
このような構成によれば、シールド効果によりノイズを低減することが可能となる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る電力測定器は、前記電流入力回路を備える。
このような構成によれば、高精度に電流を測定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、電流測定の誤差を低減することが可能な電流入力回路及び電力測定器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る電流入力回路を示す図である。
図2】従来の電力測定器の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る電流入力回路を示す図である。図1に示すように、電流入力回路200は、電流を入力するA端子及び電流を出力する±端子と、シャント抵抗210と、増幅回路220と、後処理回路230と、電源回路240とを備える。
【0018】
シャント抵抗210の一端は電流入力回路200のA端子に接続され、シャント抵抗210の他端は電流入力回路200の±端子に接続され、シャント抵抗210により電流信号が電圧信号に変換される。
【0019】
増幅回路220は、オペアンプ221及びオペアンプ222により、シャント抵抗210にかかる電圧を増幅する。増幅回路220は図1の構成に限られず、従来の任意の増幅回路を用いることができる、例えば、図1ではオペアンプを2段としているが、オペアンプは1段であっても3段以上であってもよい。
【0020】
増幅回路220の基準電位を示す第1プレーンパターン250は、増幅回路220を囲むように配置される。なお、図1では第1プレーンパターン250を第2プレーンパターン260と区別するために、第1プレーンパターン250には斜線を付している。また、第1プレーンパターン250への接続を意味する逆三角形の記号にも斜線を付している。第1プレーンパターン250は、抵抗234及び抵抗235を介して、後処理回路230の基準電位を示す第2プレーンパターン260に接続される。
【0021】
抵抗223の一端はオペアンプ222の出力端子及び後処理回路230に接続され、抵抗223の他端は抵抗224に接続される。抵抗224の一端は抵抗223に接続され、抵抗224の他端はプレーンパターン250に接続される。
【0022】
後処理回路230は、A/D変換器236を有し、A/D変換器236は、増幅回路220により増幅された電圧をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0023】
後処理回路230の基準電位を示す第2プレーンパターン260は、後処理回路230を囲むように配置される。また、第2プレーンパターン260は、電流入力回路200の±端子に接続される。斜線の付されていない逆三角形の記号は、第2プレーンパターン260への接続を意味する。なお、±端子付近に配置された逆三角形の記号は、±端子と第2プレーンパターン260とが接続されることを意味する。
【0024】
後処理回路230は、図1に示すようにA/D変換器236の前段にオペアンプ(差動アンプ)231を有してもよい。その場合には、オペアンプ231は増幅回路220により増幅された電圧と、増幅回路220の基準電位との差動成分を出力し、同相成分を除去する。そして、A/D変換器236は、オペアンプ231の出力信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0025】
抵抗232の一端はオペアンプ222の出力端子に接続され、抵抗232の他端はオペアンプ231の第1入力端子に接続される。抵抗234の一端は第1プレーンパターン250に接続され、抵抗234の他端はオペアンプ231の第2入力端子に接続される。抵抗233の一端はオペアンプ231の第1入力端子に接続され、抵抗233の他端はオペアンプ231の出力端子に接続される。抵抗235の一端はオペアンプ231の第2入力端子に接続され、抵抗235の他端は第2プレーンパターン260に接続される。抵抗232と抵抗234の抵抗値は同一であり、抵抗233と抵抗235の抵抗値も同一である。抵抗232,233,234,235、及びオペアンプ231により、差動増幅回路が構成される。差動増幅回路は、入力信号の差動成分を、(抵抗233,235の抵抗値)/(抵抗232,234の抵抗値)倍に増幅して出力する。
【0026】
電源回路240は、DC/DC変換により直流電圧を生成し、増幅回路220及び後処理回路230に対して電源を供給する。図1ではオペアンプ222に対する電源供給の配線のみ示し、他の配線は省略している。電源回路240の+端子はコンデンサ241を介して第2プレーンパターン260に接続され、電源回路240の-端子は直接第2プレーンパターン260に接続される。
【0027】
インダクタ225の一端は電源回路240に接続され、インダクタ225の他端はオペアンプ221,222の電源端子に接続される。インダクタ225は、例えばチョークコイルである。これにより、増幅回路220を電源回路240から絶縁し、コモンモード電流を低減させることが可能となる。なお、増幅回路220の電源として、別途絶縁電源(例えば、絶縁型DC/DCコンバータ)を設けることにより、電源へのインピーダンスを高くしてもよい。
【0028】
第2プレーンパターン260は、電流入力回路200の±端子(L端子)と接続される。また、第2プレーンパターン260は、コンデンサ261を介して、接地された筺体100に接続される。電流入力回路200においては、±端子とシャント抵抗210の接続点Pから筺体100へは、第2プレーンパターン260を通る経路1により電流が流れるか、第1プレーンパターン250、抵抗234,235、及び第2プレーンパターン260を通る経路2により電流が流れる。抵抗234,235の抵抗値を大きくすることにより、経路2に流れるコモンモード電流を極めて小さくすることができる。すなわち、図2に示した従来の電流入力回路20では、増幅回路22の内部に流れるコモンモード電流は大きいが、本発明に係る電流入力回路200では、増幅回路220の内部に流れるコモンモード電流を極めて小さくすることができる。そのため、本発明によれば、電流測定の誤差を低減することが可能となる。
【0029】
また、電流入力回路200は、オペアンプ231を設け、オペアンプ231により、オペアンプ222の出力電圧と、増幅回路220の基準電位との差動成分を増幅するようにしてもよい。なお、ここでの増幅とは1倍も含む。シャント抵抗210の抵抗値は小さいため、シャント抵抗210にかかる電圧も小さいが、オペアンプ231には、該電圧を増幅回路220により増幅した電圧が入力されるため、オペアンプ231は同相信号を高精度に除去することができる。したがって、さらに電流測定の誤差を低減することが可能となる。
【0030】
また、図2に示した電力測定器1の電流入力回路20を、上述した電流入力回路200に置換することができる。すなわち、本発明に係るた電力測定器は、電圧入力回路10と、電流入力回路200と、演算部30と、表示部40と、メモリ50と、操作部60と、CPU70とを備える。電流入力回路200を備える電力測定器は、高精度に電流を測定することが可能となる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0032】
100 筺体
200 電流入力回路
210 シャント抵抗
220 増幅回路
221,222,231 オペアンプ
223,224,232,233,234,235 抵抗
225 インダクタ
226,241,261 コンデンサ
230 後処理回路
236 A/D変換器
240 電源回路
250 第1プレーンパターン
260 第2プレーンパターン
図1
図2