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特許7181750塗布用活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】塗布用活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20221124BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20221124BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D133/14
C09D7/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018190415
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2019073684
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2017198161
(32)【優先日】2017-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 惇
(72)【発明者】
【氏名】辻村 祐輔
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135476(JP,A)
【文献】特開昭62-101611(JP,A)
【文献】特開2015-212324(JP,A)
【文献】特開2005-272582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 100/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びにアンモニウム基、水酸基、アミド基及びポリオキシエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)と、
前記基(α)を有さないエチレン性不飽和モノマー(B)と、有機溶剤(C)と、光重合開始剤(D)と、水とを含有する塗布用活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)がアクリル酸、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアクリルアミド、N,N,N-トリメチル-2-(メタクロイルオキシ)エチルアンモニウム=クロライド、メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、前記エチレン性不飽和モノマー(B)がトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、前記エチレン性不飽和モノマー(B)の25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであり、前記有機溶剤(C)の沸点が、30℃以上90℃以下であり、前記有機溶剤(C)の25℃における水100gに対する溶解度が、20g以上であり、水の重量割合が、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として1~30重量%である塗布用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記エチレン性不飽和モノマー(A)の重量割合が、前記エチレン性不飽和モノマー(A)及びエチレン性不飽和モノマー(B)の合計重量に基づいて、1.0~99重量%である請求項1に記載の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記水の重量割合が、前記有機溶剤(C)及び水の合計重量に基づいて、10~50重量%である請求項1又は2に記載の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物を60℃以上、100℃未満の条件下で乾燥させた後に、活性エネルギー線により硬化させる硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗布用活性エネルギー線硬化性組成物及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスやプラスチック等の透明基材は、基材の内面と外面の温湿度の差により、一方の表面が露点以下になった場合、又は基材に対して急激な温湿度変化が起こった場合(具体的には、沸騰水蒸気が基材に接触した場合及び低温部から高温多湿の環境に移った場合等)に空気中の水分が水滴として付着し、基材表面が結露する。その結果、結露した水滴により光の散乱が起こり、曇りが発生することで、視界が妨げられる。このような曇りにより、一般的な窓ガラス、ショーケース用ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、反射鏡、眼鏡及びサングラス等では、安全性や視認性が著しく損なわれる。
【0003】
これらの基材に防曇性を付与する方法として、特許文献1には、バインダー成分及びポリアクリル酸類を含有する耐熱性防曇膜形成用塗布剤であって、耐熱性防曇膜を形成した際にポリアクリル酸類由来の成分が吸水することにより防曇性が発現することを特徴とする耐熱性防曇膜形成用塗布剤を用いて基材上に耐熱性防曇膜を形成する技術が開示されている。
【0004】
このように従来の防曇性物品は、防曇性に寄与する化合物として、親水性のアクリル酸を主構成モノマーとするポリマーを用いているが、これに疎水性のモノマーを共重合させた場合は、防曇性が低下するという問題があった。
防曇性物品に耐擦傷性等の付加機能を付与するためには、親水性のモノマーに限らず、疎水性のモノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート等)を共重合させることも必要であり、この場合でも、十分な防曇性を発揮する技術が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-153164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、防曇性に優れた硬化物を与える塗布用活性エネルギー線硬化性組成物及び前記硬化物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びにアンモニウム基、水酸基、アミド基及びポリオキシエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)と、前記基(α)を有さないエチレン性不飽和モノマー(B)と、有機溶剤(C)と、光重合開始剤(D)と、水とを含有する塗布用活性エネルギー線硬化性組成物であって、前記エチレン性不飽和モノマー(B)の25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであり、前記有機溶剤(C)の沸点が、30℃以上90℃以下であり、水の重量割合が、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として1~30重量%である塗布用活性エネルギー線硬化性組成物;前記塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する有機溶剤(C)を60℃以上、100℃未満の条件下で蒸発させた後に、活性エネルギー線により硬化させる硬化物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、その硬化物は、防曇性に優れるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩並びにアンモニウム基、水酸基、アミド基及びポリオキシエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)、前記基(α)を有さないエチレン性不飽和モノマー(B)、有機溶剤(C)、光重合開始剤(D)及び水を含有する。
【0010】
本発明におけるエチレン性不飽和モノマー(A)は、上述の通り、カルボキシ基、リン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、アミノ基及びこれらの塩(アルカリ金属塩及び塩酸塩等)並びにアンモニウム基、水酸基、アミド基及びポリオキシエチレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の基(α)を有する。
なお、本願においてポリオキシエチレン基とは、ポリオキシエチレン基1モルにつき、2モル以上オキシエチレン基で構成された基を意味する。
【0011】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、カルボキシ基を有するエチレン性不飽和モノマー(A1)としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイロキシエチル、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートコハク酸付加物、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートコハク酸付加物、1,4-ベンゼンジメタノールモノ(メタ)アクリレートコハク酸付加物、(メタ)アクリルアミド無水マレイン酸付加物、ω-カルボキシ-カプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ジ-(カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート及び6-(メタ)アクリルアミドヘキサン酸等が挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」の表記は、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」の表記は、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル」の表記は、アクリロイル及び/又はメタアクリロイルを意味する。
【0012】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、リン酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A2)としては、リン酸2-[(メタ)アクリロイロキシ]エチル、リン酸水素ビス〔[2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル〕及び2-(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0013】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、ホスホン酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A3)としては、ビニルホスホン酸等が挙げられる。
【0014】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、スルホン酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A4)としては、(メタ)アクリル酸2-スルホエチル、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びビニルスルホン酸等が挙げられる。
【0015】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、アミノ基を有するエチレン性不飽和モノマー(A5)としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、アンモニウム基を有するエチレン性不飽和モノマー(A6)としては、N,N,N-トリメチル-2-[(メタ)アクロイルオキシ]エチルアンモニウム=クロライド、N-ベンジル-N,N-ジメチル-2-[(メタ)アクロイルオキシ)エチルアンモニウム=クロライド等が挙げられる。
【0017】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A7)としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、7-ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールモノアクリレート並びにこれらのアルキレンオキサイド(炭素数2~4が好ましい)付加物等が挙げられる。
上記のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。
なお、本願において、水酸基及びポリオキシエチレン基の両方を有するエチレン性不飽和モノマーは、(A7)と分類する。
【0018】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、アミド基を有するエチレン性不飽和モノマー(A8)としては、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、3-(メタ)アクリロイル-2-オキサゾリジノン、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N-ドデシル(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、1,3,5-トリ(メタ)アクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0019】
エチレン性不飽和モノマー(A)の内、ポリオキシエチレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(A9)としては、アルコキシ(メトキシ及びエトキシ等)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール -ポリプロピレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール -ポリテトラエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、アルコキシ-ポリテトラエチレングリコール-ポリエチレングリコール-モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール-ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド[以下、EOと略記することがある]変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート及びエチレンオキサイド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
また、エチレン性不飽和モノマー(A)が有する基(α)が、2種以上の場合の具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
スルホン酸基及びアンモニウム基の両方を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、〔3-[(メタ)アクリロキシルアミノ]プロピル〕ジメチル(3-スルホブチル)アンモニウムヒドロキシ分子内塩等が挙げられる。
リン酸基及びアンモニウム基の両方を有するエチレン性不飽和モノマーとしては、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン等が挙げられる。
【0021】
前記のエチレン性不飽和モノマー(A)の内、防曇性の観点から好ましいのは、前記のエチレン性不飽和モノマー(A)であり、更に好ましいのはカルボキシ基を有するエチレン性不飽和モノマー(A1)、スルホン酸基を有するエチレン性不飽和モノマー(A4)、アンモニウム基を有するエチレン性不飽和モノマー(A6)及びポリオキシエチレン基を有するエチレン性不飽和モノマー(A9)である。
エチレン性不飽和モノマー(A)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明におけるエチレン性不飽和モノマー(B)は、前記の基(α)を有さない25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであるエチレン性不飽和モノマーである。
前記のエチレン性不飽和モノマー(B)の溶解度が1gを超えると、防曇性が悪化する。
なお、本願において、25℃における水100gに対する溶解度は以下の方法で測定した。
[溶解度の測定方法]
温度25℃、相対湿度(RH)65%の環境下で、100gのイオン交換水をスターラーで撹拌しながら、0.01g毎に試料を添加していき、目視で白濁が確認できた時点で測定を終了し、白濁が確認できる直前の試料の添加量を水溶解度とする。
【0023】
前記のエチレン性不飽和モノマー(B)としては、25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであるものであって、以下の単官能エチレン性不飽和モノマー(B1)、2官能エチレン性不飽和モノマー(B2)及び3官能以上6官能以下のエチレン性不飽和モノマー(B3)等が挙げられる。
【0024】
[単官能エチレン性不飽和モノマー(B1)]
前記の単官能エチレン性不飽和モノマー(B1)としては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert-オクチル(メタ)アクリレート、2,3-ジメチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-n-ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、4-ブロモブチル(メタ)アクリレート、2-エチルへキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5-テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4-クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート及びパーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
前記の2官能エチレン性不飽和モノマー(B2)としては、25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであるものであって、以下の2官能(メタ)アクリレートモノマー(B21)、2官能ウレタン(メタ)アクリレート化合物(B22)、2官能ポリエステル(メタ)アクリレート化合物(B23)等が挙げられる。
【0026】
[2官能(メタ)アクリレートモノマー(B21)]
前記の2官能(メタ)アクリレートモノマー(B21)としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-2-ブチル-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、及び1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
[2官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(B22)]
前記の2官能ウレタン(メタ)アクリレートモノマー(B22)は、イソシアネートに、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られる化合物であれば特に限定されず、例えば、2つのイソシアネート基を有する化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を触媒として金属系化合物(スズ化合物及びビスマス化合物等)存在下で反応させることによって得ることができる。
【0028】
前記のモノマー(B22)の原料となるイソシアネートとしては特に限定されず、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイオシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート及び1,6,10-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
また、上記イソシアネートとしては、ポリオール(エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等)と、過剰のイソシアネートとの反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も用いることができる。
【0029】
前記のモノマー(B22)の原料となる水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては特に限定されず、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
[2官能ポリエステル(メタ)アクリレートモノマー(B23)]
前記の2官能ポリエステル(メタ)アクリレートモノマー(B23)は、ポリカルボン酸とポリオールの縮合によって得られる末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、ポリカルボン酸にアルキレンオキサイドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基の全てを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0031】
前記のモノマー(B23)の構成単位であるポリオールとしては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール等)、アルキレンエーテルグリコール(ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール等)、脂環式ジオール(1,4-シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)、及びグリセリン等が挙げられる。
【0032】
前記のモノマー(B23)の構成単位であるポリカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバンチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクチルコハク酸及びアコニット酸、並びに、これらの酸の無水物又は低級アルキルエステル等が挙げられる。
【0033】
前記の3官能以上6官能以下のエチレン性不飽和モノマー(B3)としては、25℃における水100gに対する溶解度が0~1gであるものであって、以下の3官能(メタ)アクリレートモノマー(B31)、4官能以上6官能以下の(メタ)アクリレートモノマー(B32)、4官能以上6官能以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー(B33)等が挙げられる。
【0034】
[3官能(メタ)アクリレートモノマー(B31)]
前記のモノマー(B31)としては、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンの炭素数3~4のアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0035】
[4官能以上6官能以下の(メタ)アクリレートモノマー(B32)]
前記のモノマー(B32)としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
[4官能以上6官能以下のウレタン(メタ)アクリレートモノマー(B33)]
前記のモノマー(B33)は、U-6LPA、UA-1100H及びU-15HA(以上、新中村化学工業(株)製);UN-3320HA、UN-3320HC、UN-3320HS、UN-904、UN-906S、UN-901T、UN-905及びUN-952(以上、根上工業(株)製);並びにUA-306H、UA-306T、UA-306I及びUA-510H(以上、共栄社化学(株)製)等として、市場から入手することができる。
【0037】
前記のエチレン性不飽和モノマー(B)の内、耐擦傷性の観点から好ましいのは、3官能以上のエチレン性不飽和モノマー(B3)であり、更に好ましいのは3官能(メタ)アクリレートモノマー(B31)及び4官能以上6官能以下の(メタ)アクリレートモノマー(B32)である。
エチレン性不飽和モノマー(B)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明におけるエチレン性不飽和モノマー(B)の数平均分子量(以下、Mnと略記することがある)は、耐擦傷性の観点から、250~1,000であることが好ましい。
本発明におけるMnは、THFを溶剤として用い、ポリオキシプロピレングリコールを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される。サンプル濃度は0.25重量%、カラム固定相はTSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの、カラム温度は40℃である。
【0039】
本発明における有機溶剤(C)は、上述の通り、沸点が30℃以上90℃以下である。有機溶剤(C)の沸点は、好ましくは60℃以上90℃以下である。
前記の有機溶剤(C)の沸点が90℃より高いと、防曇性が悪化する。
また、沸点が30℃未満であると、取扱いが困難である。
本発明における有機溶剤(C)としては、前記基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)、前記基(α)を有さないエチレン性不飽和モノマー(B)及び光重合開始剤(D)を溶解させるものであり、沸点が30℃以上90℃以下であれば、特に限定されないが、芳香族炭化水素、エステル又はエーテルエステル、エーテル、ケトン及びアルコールのうち沸点が30℃以上90℃以下のものを用いることができ、それぞれ芳香族炭化水素(ベンゼン等)、エステル又はエーテルエステル(酢酸エチル等)、エーテル(ジエチルエーテル及びテトラヒドロフラン等)、ケトン(アセトン及びメチルエチルケトン等)、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びt-ブチルアルコール等)等が挙げられる。
有機溶剤(C)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
前記の有機溶剤(C)の25℃における水100gに対する溶解度は、防曇性の観点から、20g以上であることが好ましい。
なお、本願において、溶解度が20g以上であるとは、25℃の水と混和性を示す(25℃における水100gに対して少なくとも20g以上溶解する)状態も含む。
【0041】
前記の有機溶剤(C)の内、防曇性の観点から好ましいものは、エーテル、ケトン及びアルコールであり、更に好ましいのはテトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メタノール及びエタノールであり、特に好ましいのはエタノールである。
【0042】
本発明における光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン化合物(D-1)、アルキルフェノン化合物(D-2)、アントラキノン化合物(D-3)、チオキサントン化合物(D-4)、ケタール化合物(D-5)、ベンゾフェノン化合物(D-6)、ホスフィンオキサイド化合物(D-7)及びオキシムエステル化合物(D-8)等が挙げられる。
【0043】
ベンゾイン化合物(D-1)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0044】
アルキルフェノン化合物(D-2)としては、アセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-フェニルプロパン-1-オン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン及び2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0045】
アントラキノン化合物(D-3)としては、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等が挙げられる。
【0046】
チオキサントン化合物(D-4)としては、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン及び2-クロロチオキサントン等が挙げられる。
【0047】
ケタール化合物(D-5)としては、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0048】
ベンゾフェノン化合物(D-6)としては、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド及び4,4’-ビスメチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0049】
ホスフィンオキサイド化合物(D-7)としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2、6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフォィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
オキシムエステル化合物(D-8)としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)及びエタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。
【0051】
光重合開始剤(D)の内、硬化性の観点から好ましいのは、アルキルフェノン化合物(D-2)、ホスフィンオキサイド化合物(D-7)及びオキシムエステル化合物(D-8)であり、更に好ましいのはアルキルフェノン化合物(D-2)及びホスフィンオキサイド化合物(D-7)である。
光重合開始剤(D)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する水の重量割合は、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、1~30重量%である。水の重量割合は、好ましくは2~25重量%である。
水の重量割合が30重量%を超えると、防曇性が悪化し、水の重量割合が1重量%未満であると、防曇性が悪化する。
更に防曇性を高める観点からは、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する水の重量割合は、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、5~20重量%であることが好ましい。
【0053】
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する前記のモノマー(A)の重量割合は、防曇性の観点から、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、1~50重量%であることが好ましい。
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する前記のエチレン性不飽和モノマー(B)の重量割合は、耐擦傷性の観点から、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、5~70重量%であることが好ましい。
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する前記の有機溶剤(C)の重量割合は、防曇性の観点から、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、10~70重量%であることが好ましい。
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する前記の光重合開始剤(D)の重量割合は、硬化性の観点から、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の重量を基準として、0.1~10重量%であることが好ましい。
【0054】
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する前記のエチレン性不飽和モノマー(A)の重量割合は、防曇性の観点から、前記のエチレン性不飽和モノマー(A)及びエチレン性不飽和モノマー(B)の合計重量に基づいて、好ましくは1.0~99重量%であり、更に好ましくは2~80重量%であり、特に好ましくは5~50重量%である。
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する水の重量割合は、防曇性の観点から、前記の有機溶剤(C)及び水の合計重量に基づいて、好ましくは10~50重量%である。
【0055】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の製造方法は、例えば、前記の(A)~(D)及び水を、20~80℃の温度範囲で、公知の機械的混合方法(メカニカルスターラー及びマグネティックスターラー等を用いる方法)を用いることによって均一混合することで、製造することができる。
【0056】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、以下に詳述するように基材に塗布し、硬化させることで、防曇性の高い硬化物を得ることができるため、コーティング剤、特に防曇性コーティング剤として有用である。
【0057】
硬化物の防曇性を高める観点から、本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の好ましい硬化物の製造方法は、以下の製造方法である。
即ち、本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物が含有する有機溶剤(C)を60℃以上、100℃未満の条件下で蒸発させた後に、活性エネルギー線により硬化させる硬化物の製造方法である。
【0058】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の基材への塗布方法としては、公知のコーティング法(スピンコート、ロールコート及びスプレーコート等)及び公知の印刷法(平版印刷、カルトン印刷、金属印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷及びグラビア印刷等)を適用できる。また、微細液滴を連続して吐出するインクジェット方式の塗布にも適用できる。
塗布用活性エネルギー線硬化性組成物を基材に塗布する際の膜厚は、防曇性の観点から、1~100μmであることが好ましい。
【0059】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物中の有機溶剤(C)を蒸発させる温度としては、上記の通り、60℃以上、100℃未満である。
60℃未満であると、硬化性が悪化し、100℃以上であると防曇性が悪化する。
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物中の有機溶剤(C)を60℃以上、100℃未満の条件下で蒸発させる方法としては、塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の温度を60℃以上、100℃未満の状態を1~10分維持することで実施する方法が、防曇性の観点から好ましい。
【0060】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、360nm~830nmの活性光線の照射で光硬化できるため、一般的に使用されている高圧水銀灯の他、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びハイパワーメタルハライドランプ等(UV・EB硬化技術の最新動向、ラドテック研究会編、シーエムシー出版、138頁、2006)が使用できる。
【0061】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物は、優れた防曇性を有するがこれは以下のメカニズムが想定される。
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物を、60℃以上、100℃未満の状態にすることで、まず、水より低沸点である有機溶剤(C)が蒸発するが、有機溶剤(C)が蒸発する過程で、水も蒸発しようと表面への拡散が起こり、濃縮される。このとき、前記のエチレン性不飽和モノマー(A)の有する基(α)は、親水性であるので水に引っ張られる形で表面へと配向する。一方、水溶解度の低い前記のエチレン性不飽和モノマー(B)は、水との接触面積を最小限にするように内部方向への拡散が起こるため、(A)と(B)の疑似的なミクロ相分離が起こる。
前記の基(α)の表面配向のドライビングフォースは、このような疑似的なミクロ相分離であるため、基(α)の水との相互作用が強いほど、また、(B)の水溶解度が低いほど大きくなる。
【0062】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物、特に上記の本発明の製造方法で得た硬化物は、防曇性及び表面硬度に優れるため、本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、窓ガラス、ショーケース用ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、反射鏡、眼鏡及びサングラス等のコーティング剤として極めて有用である。
【実施例
【0063】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
<実施例1~42、比較例1~5>
表1に記載の配合組成(重量部)に従って、一括で配合し、ディスパーサーで均一に分散するまで撹拌し、各塗布用活性エネルギー線硬化性組成物(X-1)~(X-42)及び比較の硬化性組成物(比X-1)~(比X-5)を得た。
【0065】
次に、得られた各塗布用活性エネルギー線硬化性組成物(X-1)~(X-42)及び比較の硬化性組成物(比X-1)~(比X-5)を、表面処理を施した厚さ100μmのPETフィルム[商品名「コスモシャインA4300」、東洋紡(株)製]に、アプリケーターを用いて膜厚が表1~3に記載の値となるように塗布して、80℃、1分間で前記の各硬化性組成物を乾燥させた。前記の各硬化性組成物中の有機溶剤の含有量は1重量%以下であった。次いで、窒素雰囲気下で、ベルトコンベア式UV照射装置[アイグラフィックス(株)製「ECS-151U」、以下の評価にも同じ装置を用いた。]にて露光量500mJ/cmで硬化し、硬化物を得た。
上記の硬化物を、以下の評価方法(1)~(2)に従って、評価した。評価結果を表1~3に示す。
【0066】
なお、上記の実施例1~42において、各硬化性組成物を乾燥させる条件を80℃から、60℃以上、100℃未満の温度範囲で変更しても、実施例1~42と同様に評価結果を得ることができる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
<評価方法>
(1)防曇性の評価
硬化物の試験片を40℃に保った温水浴の水面から5cmの高さのところに、試験片を塗膜面が下になるように設置し、温水浴からスチームを硬化物に10秒間連続曝露し、曝露終了後の曇りの有無を目視で評価した。
また、より過酷な条件で試験をするために、温水浴の温度を40℃から60℃に変更して同様に試験した。
<評価基準>
○:曇りが認められない
×:曇りが認められる
【0071】
(2)耐スチールウール(SW)性[耐擦傷性の評価]
試験荷重を100gに変更した以外は、JIS L-0849に準拠し、#0000のスチールウールを用いて擦過回数20回往復で試験した。擦った後の硬化物を目視で観察し、以下の基準で評価した。
<評価基準>
◎:往復20回後で傷なし。
○:往復10回後で傷ないが、往復20回後には傷あり。
×:往復10回以内に傷あり。
【0072】
表1中の略号は以下のとおり。
<基(α)を有するエチレン性不飽和モノマー(A)>
(A-2)、PM-1:
リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル[商品名「KAYAMER PM-1」、日本化薬(株)製]
(A-3)、AMPS:
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸[東京化成工業(株)製]
(A-4)、DMAA:
ジメチルアクリルアミド[商品名「DMAA」、KJケミカルズ(株)製]
(A-5)、DAM:
N,N,N-トリメチル-2-(メタクロイルオキシ)エチルアンモニウム=クロライドの80重量%水溶液[東京化成工業(株)製]
なお、表中(A-5)の重量部数は、(A-5)中のN,N,N-トリメチル-2-(メタクロイルオキシ)エチルアンモニウム=クロライドの重量部数を示す。また、水溶液中の水の重量部数は表中の水の重量部数に含めた。
(A-6)、PME-400:
メトキシポリエチレングリコール-メタクリレート[商品名「ブレンマーPME-400」、日油(株)製]
(A-7)、50POEP-800B:
オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート [商品名「ブレンマー 50POEP-800B」、日油(株)製]
(A-8)、4HBA:
4-ヒドロキシブチルアクリレート[商品名「4HBA」、日本化成(株)製]
【0073】
<前記基(α)を有さないエチレン性不飽和モノマー(B)>
(B-1)、TMPTA:
トリメチロールプロパントリアクリレート(25℃における水100gに対する溶解度:0.05g)
[商品名「ビスコート#295」、大阪有機化学工業(株)製]
(B―2)、EA-300:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(25℃における水100gに対する溶解度:0.05g)
[商品名「ネオマーEA-300」、三洋化成工業(株)製]
(B―3)、DA-600:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(25℃における水100gに対する溶解度:0.05g)
[商品名「ネオマーDA-600」、三洋化成工業(株)製]
(比B-1)、MA:メチルアクリレート(25℃における水100gに対する溶解度:6g)[商品名「MA」、東亞合成(株)製]
<有機溶剤(C)>
(C-1):エタノール(沸点:78.5℃、25℃における水100gに対する溶解度:混和性)
(C-2):メチルエチルケトン(沸点:79.4℃、25℃における水100gに対する溶解度:27.5g)
(C-3):テトラヒドロフラン(沸点:66℃、25℃における水100gに対する溶解度:混和性)
(C-4):イソプロピルアルコール(沸点:80.5℃、25℃における水100gに対する溶解度:混和性)
(C-5)酢酸エチル(沸点:77℃、25℃における水100gに対する溶解度:8.7g)
<光重合開始剤(D)>
(D-1)、IRGACURE TPO:
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、
[商品名「IRGACURE TPO」、BASF(株)製]
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物、特に本発明の製造方法で得た硬化物は、防曇性及び表面硬度に優れるため、本発明の塗布用活性エネルギー線硬化性組成物は、窓ガラス、ショーケース用ガラス、自動車や航空機のフロントガラス、反射鏡、眼鏡及びサングラス等のコーティング剤として極めて有用である。