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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20221124BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20221124BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20221124BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221124BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M4/13
H01M4/64 A
H01M10/052
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018192089
(22)【出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2020061282
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀江 英明
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-084718(JP,A)
【文献】特開2005-251465(JP,A)
【文献】特開2010-272266(JP,A)
【文献】特開2017-033937(JP,A)
【文献】特開2016-021421(JP,A)
【文献】特開2018-133237(JP,A)
【文献】特開2014-060075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0585
H01M 4/13
H01M 4/64
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層されてなるリチウム二次単電池を有するリチウムイオン電池であって、
前記正極集電体及び前記負極集電体の表面にはそれぞれ正極枠体及び負極枠体が形成され、前記正極活物質層及び前記負極活物質層はそれぞれ前記正極枠体及び前記負極枠体の内側に形成され、
前記正極枠体及び前記負極枠体のそれぞれには、対向する前記正極枠体及び前記負極枠体に係合可能な係合部が設けられ、
前記係合部は、前記正極枠体及び前記負極枠体の側部に設けられ、対向する前記正極枠体及び前記負極枠体の前記係合部に係止可能な係止部であり、
前記正極及び前記負極は、前記正極枠体及び前記負極枠体の前記係合部が互いに係合することで、前記セパレータを介して積層されているリチウムイオン電池。
【請求項2】
請求項記載のリチウムイオン電池において、
前記正極活物質層が正極活物質粒子の非結着体であり、前記負極活物質層が負極活物質粒子の非結着体であるリチウムイオン電池。
【請求項3】
正極集電体の表面に形成された正極枠体及びこの正極枠体の内側に形成された正極活物質層からなる正極と、負極集電体の表面に形成された負極枠体及びこの負極枠体の内側に形成された負極活物質層からなる負極とが、セパレータを介して積層されてなるリチウム二次単電池を有するリチウムイオン電池の製造方法であって、
前記正極集電体及び前記負極集電体の表面に形成された前記正極枠体及び前記負極枠体のそれぞれは他方の前記正極枠体及び前記負極枠体に係合可能な係合部を有し、
前記係合部は、前記正極枠体及び前記負極枠体の側部に設けられ、対向する前記正極枠体及び前記負極枠体の前記係合部に係止可能な係止部であり、
前記正極枠体及び前記負極枠体の前記係合部を互いに係合させることで前記正極及び前記負極を前記セパレータを介して積層する工程を有するリチウムイオン電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リチウムイオン電池及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(二次)電池は、高容量で小型軽量な二次電池として、近年様々な用途に多用されている。このうち、小型で薄型のリチウムイオン電池として、正極活物質及び電解液を含む正極活物質層を正極集電体の表面に形成した正極と、同様に負極活物質及び電解液を含む負極活物質層を負極集電体の表面に形成した負極とをセパレータを挟んで積層して略平板状のリチウム二次単電池を製造し、このリチウム二次単電池を複数層積層して積層型電池モジュールとして構成されたリチウムイオン電池が従来知られている。
【0003】
このようなリチウムイオン電池においては、精度良く位置決めした状態で正極及び負極を積層することが求められており、かかる要求を実現するリチウムイオン電池の製造方法として、例えば、正極及び/又は負極積層体を複数積層して電極積層体群を形成し、この電極積層体群を鉛直方向に落下させつつ、電極積層体群を包囲している複数の整列部材により電極積層体群の側面を押すことで電極積層体群を整列させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-76489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来のリチウムイオン電池の製造方法では、電極積層体群を落下させ、かつ、整列部材を電極積層体群に向けて押す構成が必要であり、その製造工程に手間がかかるとともに、整列部材をタイミング良く押せないときには電極のズレが生じる可能性を防止することができない、という課題や、電極積層体群を整列させるときに生じる摩擦によって電極活物質層の表面が荒れて界面抵抗値が上昇することが考えられる等の課題があった。
【0006】
そこで、この発明は、電極の位置ずれを防止すること及び電極活物質層の表面が荒れて界面抵抗値が上昇することの防止が可能なリチウムイオン電池及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、この発明は、正極集電体の表面に正極活物質層が形成された正極と、負極集電体の表面に負極活物質層が形成された負極とが、セパレータを介して積層されてなるリチウム二次単電池を有するリチウムイオン電池において、正極集電体及び負極集電体の表面にそれぞれ正極枠体及び負極枠体が形成され、正極活物質層及び負極活物質層がそれぞれ正極枠体及び負極枠体の内側に形成され、正極枠体及び負極枠体のそれぞれに、対向する正極枠体及び負極枠体に係合可能な係合部が設けられ、正極及び負極が、正極枠体及び負極枠体の係合部が互いに係合することで、セパレータを介して積層されていることを特徴とする。
【0008】
ここで、本発明においてリチウム二次単電池とは、正極活物質層が正極集電体の表面に形成された正極と、負極活物質層が負極集電体の表面に形成された負極とを有し、正極と負極とがセパレータを介して積層された構造を有し、電池容器、端子配置及び電子制御装置等を備えていない電池である(参考:日本工業規格JIS C8715-2「産業用リチウム二次電池の単電池及び電池システム」)。なお、リチウム二次単電池は単電池と略する場合がある。
【0009】
ここで、係合部が、正極枠体及び負極枠体の側部に設けられ、対向する正極枠体及び負極枠体の係合部に係止可能な係止部とすることが好ましい。また、正極活物質層が正極活物質粒子の非結着体であり、負極活物質層が負極活物質粒子の非結着体であることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、正極集電体の表面に形成された正極枠体及びこの正極枠体の内側に形成された正極活物質層からなる正極と、負極集電体の表面に形成された負極枠体及びこの負極枠体の内側に形成された負極活物質層からなる負極とが、セパレータを介して積層されてなるリチウム二次単電池を有するリチウムイオン電池の製造方法において、正極集電体及び負極集電体の表面に形成された正極枠体及び負極枠体のそれぞれが他方の正極枠体及び負極枠体に係合可能な係合部を有し、正極枠体及び負極枠体の係合部を互いに係合させることで正極及び負極をセパレータを介して積層する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明のリチウムイオン電池は、正極活物質層及び負極活物質層がそれぞれ内側に形成された正極枠体及び負極枠体に、対向する正極枠体及び負極枠体に係合可能な係合部が設けられ、正極及び負極が、正極枠体及び負極枠体の係合部が互いに係合することで、リチウム二次単電池が形成されている。
【0012】
上記した構成なので、電極の位置ずれを防止するとともに電極積層体群を整列させるときに生じる摩擦によって電極活物質層の表面が荒れて界面抵抗値が上昇することを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態であるリチウムイオン電池に用いられるリチウム二次単電池を示す分解斜視図である。
図2】第1実施形態のリチウムイオン電池の係止部を示す要部斜視図である。
図3】第1実施形態のリチウムイオン電池を示す断面図である。
図4】第1実施形態のリチウムイオン電池を示す斜視図である。
図5】第1実施形態のリチウムイオン電池の製造方法を示す工程図である。
図6】本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池に用いられるリチウム二次単電池の要部を示す断面図である。
図7】本発明の変形例であるリチウムイオン電池に用いられるリチウム二次単電池を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態であるリチウムイオン電池及びその製造方法について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態であるリチウムイオン電池を示す断面図、図4は第1実施形態のリチウムイオン電池を示す斜視図である。
【0016】
これら図において、本実施形態のリチウムイオン電池Lは、リチウムイオン電池Lの外殻をなす、可撓性を有する容器20内に外形略平板状の単電池1が直列に複数積層された積層型電池モジュール21が収納されて構成されている。
【0017】
単電池1は、図1に詳細を示すように、略平板状の樹脂集電体である正極集電体7の表面に正極活物質層5が形成された正極2と、同様に略平板状の樹脂集電体である負極集電体8の表面に負極活物質層6が形成された負極3とが、同様に略平板状のセパレータ4を介して積層されて構成され、全体として略平板状に形成されている。
【0018】
正極活物質層5及び負極活物質層6は、正極活物質粒子又は負極活物質粒子と電解液とを含む正極活物質層及び負極活物質層である。なお、電解液と正極活物質粒子又は負極活物質粒子とを混合した正極活物質層5及び負極活物質層6は、スラリー状であってもよく、スラリーよりも流動性の低い状態(例えばファニキュラー状態やペンデュラー状態とも呼ばれるおからのような半固体状)であってもよい。
【0019】
正極集電体7及び負極集電体8の表面(図1において正極集電体7の下面、負極集電体8の上面)には、外形がこれら正極集電体7及び負極集電体8にほぼ等しい矩形枠状の正極枠体9及び負極枠体10がそれぞれ形成されている。そして、正極活物質層5及び負極活物質層6は、それぞれ正極枠体9及び負極枠体10の内側に形成、配置され、これら正極活物質層5及び負極活物質層6の表面(図1において正極活物質層5の下面、負極活物質層6の上面)には、正極活物質層5及び負極活物質層6の表面を覆い、その端部が正極枠体9及び負極枠体10の上面9a、10aにまで至る(図4参照)セパレータ4が配置されている。なお、本実施形態では、セパレータ4として正極活物質層5及び負極活物質層6のそれぞれの表面を覆う一対のセパレータが用いられているが、すくなくとも、一枚のセパレータが正極活物質層5及び負極活物質層6のいずれか一方の表面に配置されていればよい。
【0020】
本実施形態では、一対の正極枠体9及び負極枠体10は略同一形状に形成されており、従って、正極活物質層5及び負極活物質層6の表面積も略同一とされている。しかしながら、本発明のリチウムイオン電池Lにおいて、正極活物質層5の表面積と負極活物質層6の表面積は同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
本発明のリチウムイオン電池Lは、正極集電体7及び負極集電体8の表面に設けた正極枠体9及び負極枠体10の内側に正極活物質層5及び負極活物質層6をそれぞれ形成しているので、正極枠体9、負極枠体10の形状と大きさを制御することで正極活物質層5及び負極活物質層6の表面積をそれぞれ制御できる。
【0022】
また、正極活物質層5の面積と負極活物質層6の面積とを同一にした場合には、特に精度良く積層する必要があるが、本発明のリチウムイオン電池Lは積層を精度良くおこなうことができる。
【0023】
正極集電体7とセパレータ4との間の間隔、及び、負極集電体8とセパレータ4との間の間隔は、それぞれ正極枠体9、負極枠体10の高さによって定まり、これら正極枠体9、負極枠体10の高さはリチウムイオン電池Lの容量に応じて調整され、これら正極集電体7、負極集電体8及びセパレータ4の位置関係は必要な間隔が得られるように定められている。
【0024】
そして、図1に示すように、正極2及び負極3がセパレータ4を介して対向した状態で向き合わされた状態で配置され、そして、セパレータ4を挟んで正極2と負極3とが積層されることで、本実施形態の単電池1が構成されている。
【0025】
ここで、本実施の形態においては、正極枠体9、負極枠体10の側面9b、10b及び上面9a、10aのそれぞれには、対向する正極枠体9及び負極枠体10に係止及び係合可能な係止部11及び係合部12がそれぞれ形成されている。
【0026】
なお、本発明のリチウムイオン電池においては、係止部11及び係合部12は枠体9、10の側面、上面又はその両方に組み合わせることで係止及び係合可能に形成されていればよく、少なくとも枠体9、10の側面に形成されていることが好ましい。枠体9、10の側面に係止及び係合可能に形成されているとリチウム二次単電池1の機械的強度が向上するため好ましい。
【0027】
枠体9、10の側面に形成される場合の一例である係止部11は、図2に詳細を示すように、負極枠体10の側面10bから立設された爪部11aと、正極枠体9の側面9bに形成され、爪部11aが係止可能な形状を有する段部11bとを有する。また、爪部11aの内方には中空の孔部11cが形成されており、この孔部11cにより爪部11aの枠体10の内方への変形を許容し、もって爪部11aと段部11bとの係止を容易かつ確実なものとしている。
【0028】
また、枠体9、10の上面に形成される場合の一例である係合部12は、図1に詳細を示すように、負極枠体10の上面10aから突設された突起12aと、正極枠体9の上面9aに形成され、突起12aが挿入、係合可能な凹部12bとを有する。
【0029】
そして、正極2及び負極3は、互いに対向する正極枠体9及び負極枠体10がその係止部11により係止されかつ係合部12により係合することで、セパレータ4を介して積層されている。この際、枠体9、10の上面9a、10aを図略のシール部材により封止することが好ましい。
【0030】
シール部材を構成する材料は、正極枠体9の上面9aと負極枠体10の上面10aとに対して接着性を有し、これを一体に固定可能な材料であり、電池作動温度下での耐熱性と絶縁性とを有し、電解液が浸透しない熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂等であれば良く、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリイミド樹脂から選択して使用することができる。また、シール部材を構成する材料は、液状シール材、接着テープ型シール材及びホットメルト型シール材等の形態にして用いることができる。
また、市場から入手できるホットメルト接着剤を用いることもできる。
【0031】
図1に示す単電池1は、隣り合う単電池1の正極集電体7の上面と負極集電体8の下面とが隣接するように直列に積層されて積層型電池モジュール21が形成され、そして、この積層型電池モジュール21が容器20に好ましくは減圧封止されて収納されて、図3、4に示す本実施形態のリチウムイオン電池Lが構成されている。
【0032】
詳細を図3に示す本実施形態のリチウムイオン電池Lを構成する容器20は、上容器20a及び下容器20bに分割されて構成されている。上容器20a及び下容器20bは略同一の形状に形成されており、上面が開口した上容器本体20c及び下容器本体20dと、これら上容器本体20c及び下容器本体20dの図3において左右の端部から側方に突出する一対の上容器縁部20e及び下容器縁部20fとを備える。
【0033】
リチウムイオン電池Lを構成する容器20は、図3に示す容器に限定されず、一対のシートに分割された容器及び袋状に形成された容器であってもよい。
【0034】
そして、図3に示す容器20においては、上容器20a及び下容器20bが相対向して配置されることで形成される内部空間に積層型電池モジュール21が収納され、この内部空間が好ましくは減圧された状態で、上容器縁部20e及び下容器縁部20fが図略のシール部材により封止されることで、本実施形態のリチウムイオン電池Lが構成される。上容器縁部20e及び下容器縁部20fを封止するシール部材としては、枠体を封止するシール部材と同様のものを用いることができる。
【0035】
ここで、図3に示すように、上容器20a及び下容器20bと積層型電池モジュール21との間には電極端子13、14がそれぞれ介在されており、この電極端子13、14の一部13a、14aは上容器縁部20e及び下容器縁部20fを通ってリチウムイオン電池Lの外方にまで延出している。
【0036】
ここで、本明細書において、「正極活物質層及び負極活物質層が正極枠体及び負極枠体の内側に形成された」とは、正極集電体7及び負極集電体8の表面に形成された正極枠体9、負極枠体10の内側に対応する活物質層が配置されている状態を意味し、好ましくは、正極活物質層5及び負極活物質層6が正極枠体9、負極枠体10の内側をそれぞれ満たしている状態を意味する。正極枠体9の内側に配置された正極活物質層5は正極活物質粒子と電解液とが混合された状態であり、負極枠体10の内側に配置された負極活物質層6は負極活物質粒子と電解液とが混合された状態である。
【0037】
本発明において正極枠体9及び負極枠体10の内側に正極活物質層5及び負極活物質層6が配置された状態にするには、粉体状の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を枠体9、10の内側にそれぞれに直接に入れてもよく、正極活物質粒子と電解液とを含んでなる混合物(正極スラリーともいう)及び負極活物質粒子と電解液とを含んでなる混合物(負極スラリーともいう)を枠体9、10の内側にそれぞれ入れることで行ってもよい。粉体状の正極活物質粒子及び負極活物質粒子を直接枠体9、10の内側に入れた場合、その後電解液を入れることで枠体9、10の内側に正極活物質層5及び負極活物質層6が配置される。
【0038】
正極活物質粒子又は正極スラリー、及び負極活物質粒子又は負極スラリーを枠体9、10の内側にそれぞれ入れる際には、正極集電体7及び負極集電体8に振動、衝撃を与えることが好ましい。振動、衝撃を与えることで正極活物質粒子又は正極スラリー、及び負極活物質粒子又は負極スラリーを枠体9、10の内側に均一に充填することができるので好ましい。
【0039】
また、正極活物質粒子又は負極活物質粒子と電解液とを混合した前記の正極スラリー及び負極スラリー(以下、電極スラリーと記載する場合は正極スラリー及び負極スラリーを意味する)は、液体(電解液)中に活物質粒子が均一に懸濁した流動性のある混合物であるが、正極活物質粒子又は負極活物質粒子と電解液との重量比を調整することによってスラリーよりも流動性の低い状態(例えばファニキュラー状態やペンデュラー状態とも呼ばれるおからのような半固体状)又は活物質粒子が液体を吸収することによって生じた凝集体等の状態としてもよい。
【0040】
正極活物質層5に含まれる正極活物質粒子としては、リチウムイオン電池に用いることができる公知の正極活物質粒子を用いることができ、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiCoO、LiNiO、LiMnO及びLiMn)、遷移金属酸化物(例えばMnO及びV)、遷移金属硫化物(例えばMoS及びTiS)及び導電性高分子(例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ-p-フェニレン及びポリカルバゾール)等が挙げられる。
【0041】
また、負極活物質層6に含まれる負極活物質粒子としては、リチウムイオン電池に用いることができる公知の負極活物質粒子を用いることができ、黒鉛、難黒鉛化性炭素、アモルファス炭素、高分子化合物焼成体(例えばフェノール樹脂及びフラン樹脂等を焼成し炭素化したもの等)、コークス類(例えばピッチコークス、ニードルコークス及び石油コークス等)、炭素繊維、導電性高分子(例えばポリアセチレン及びポリキノリン等)、スズ、シリコン、及び金属合金(例えばリチウム-スズ合金、リチウム-シリコン合金、リチウム-アルミニウム合金及びリチウム-アルミニウム-マンガン合金等)、リチウムと遷移金属との複合酸化物(例えばLiTi12等)等が挙げられる。
【0042】
本発明のリチウムイオン電池においては、正極活物質粒子又は負極活物質粒子が、その表面の少なくとも一部に被覆用樹脂組成物を含む被覆層を有する被覆正極活物質粒子又は被覆負極活物質粒子であることが好ましい。
【0043】
活物質粒子の表面が被覆層を有すると、充放電時に生じる電極の体積変化が緩和され、電極の膨脹を抑制することができるため好ましい。
【0044】
被覆層が含む被覆用樹脂としては、特開2017-054703号公報に非水系二次電池活物質被覆用樹脂として記載されたものを好適に用いることができる。
【0045】
被覆層はさらに導電性フィラーを含んでもよく、導電性フィラーは導電性を有する材料から選択される。
【0046】
導電性を有する材料としては、具体的には、金属[アルミニウム、ステンレス(SUS)、銀、金、銅及びチタン等]、カーボン[グラファイト、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラック等)、カーボンナノチューブ(単層、多層及びこれらの混合物等)等]、及びこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0047】
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、これらの合金又は金属酸化物が用いられてもよい。電気的安定性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン、銀、金、銅、チタン及びこれらの混合物であり、より好ましくは銀、金、アルミニウム、ステンレス及びカーボンであり、さらに好ましくはカーボンである。またこれらの導電性フィラーとは、非導電性粒子(セラミック材料や樹脂材料からなる粒子)の周りに導電性材料(上記した導電助剤の材料のうち金属のもの)をメッキ等でコーティングしたものでもよい。
【0048】
導電性フィラーとして導電性繊維を用いることも可能である。導電性繊維としては、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維、合成繊維の中に導電性のよい金属や黒鉛を均一に分散させてなる導電性繊維、ステンレス鋼のような金属を繊維化した金属繊維、有機物繊維の表面を金属で被覆した導電性繊維、有機物繊維の表面を導電性物質を含む樹脂で被覆した導電性繊維等が挙げられる。これらの導電性繊維の中では炭素繊維が好ましい。
【0049】
被覆活物質粒子が有する被覆層が導電性フィラーを含んでいる場合、被覆層の重量は、活物質粒子と被覆用樹脂組成物と必要により用いる導電性フィラーとの合計重量に対して、3~25重量%であることが好ましい。
【0050】
被覆活物質粒子は、特開2017-054703号公報等に記載された公知の方法(被覆用樹脂組成物、活物質粒子及び必要により用いる導電性フィラーを混合すること)等によって製造することができ、被覆用樹脂と必要により用いる導電性フィラーとを混合して得た被覆剤と活物質粒子とを混合することにより製造してもよく、被覆用樹脂、必要により用いる導電性フィラー及び活物質粒子を同時に混合することによって製造してもよい。なお、活物質粒子と被覆用樹脂と必要により用いる導電性フィラーとを混合する場合、混合順序には特に制限はないが、活物質粒子と被覆用樹脂とを混合した後、更に導電性フィラーを加えて更に混合することが好ましい。なお、被覆用樹脂は被覆用樹脂溶液として混合することが好ましく、例えば、活物質粒子を万能混合機に入れて30~500rpmで撹拌した状態で、被覆用樹脂の溶液を1~90分かけて滴下混合し、さらに導電助剤を混合し、撹拌したまま50~200℃に昇温し、0.007~0.04MPaまで減圧した後に10~150分保持することにより得ることができる。
【0051】
電極スラリーに用いる電解液としては、リチウムイオン電池の製造に用いられる公知の電解質及び非水溶媒を含有する電解液を使用することができる。
【0052】
電解質としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF及びLiClO等の無機酸のリチウム塩、LiN(CFSO、LiN(CSO及びLiC(CFSO等の有機酸のリチウム塩等が挙げられる。これらの内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのはLiPFである。
【0053】
非水溶媒としては、ラクトン化合物、環状又は鎖状炭酸エステル、鎖状カルボン酸エステル、環状又は鎖状エーテル、リン酸エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン、スルホラン等及びこれらの混合物を用いることができる。
【0054】
非水溶媒は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
非水溶媒の内、電池出力及び充放電サイクル特性の観点から好ましいのは、ラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及びリン酸エステルであり、より好ましいのはラクトン化合物、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステルおよびこれらの混合液であり、さらに好ましいのは環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル及び環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合液である。特に好ましいのはプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)及びこれらから選ばれる2種以上の炭酸エステルの混合液である。
【0056】
電極スラリーは、活物質粒子を電解液に公知の分散装置を用いて混合分散することで得られ、電極スラリーに含まれる活物質粒子の重量は、電解液の重量に基づいて10~60重量%の濃度で分散して調製することが好ましい。なお、電極スラリーに含まれる活物質粒子として前記の被覆活物質粒子を用いた場合には、電極スラリーに含まれる活物質粒子の重量は、被覆活物質粒子の重量を用いて計算される。
【0057】
正極活物質層5及び負極活物質層6のうち、少なくとも一方が、被覆活物質粒子が有する被覆層に含まれる導電性フィラーとは別に、さらに導電助剤を含んでもよい。導電助剤としては前記導電性フィラーと同じものをもちいることができる。なお、活物質層中に導電性フィラーと導電助剤とが含まれる場合、被覆用樹脂が溶解しない溶媒に活物質層を分散させると導電助剤のみが溶媒に抽出されるので、被覆層に残る導電性フィラーと導電助剤とを分離、区別することができる。
【0058】
さらに導電助剤を含む正極活物質層5及び負極活物質層6は、活物質粒子、電解液及び導電助剤を混合分散して得られる導電助剤を含んだ電極スラリーを用いることで形成することができる。導電助剤を含む正極活物質層5及び負極活物質層6は活物質粒子の間に導電助剤による導電経路が形成されるため、それによって活物質中での電子移動が良好となる。
【0059】
本発明において、正極活物質層5及び負極活物質層6の形成に用いる電極スラリーには、公知のリチウムイオン電池に用いられる電極形成用結着剤(結着剤又はバインダともいう)を含まないことが好ましい。ここでいう結着剤としては、リチウムイオン電池の電極において活物質粒子と集電体との結着及び活物質粒子同士の結着を目的として用いられる公知の結着剤(デンプン、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、スチレン-ブタジエンゴム、ポリエチレン及びポリプロピレン等の高分子化合物)等が挙げられる。
【0060】
電極形成用結着剤は、電極スラリーに含まれる分散媒に溶解又は分散して用いられ、分散媒を揮発させることで固体化して電極活物質同士及び電極活物質と集電体とを強固に固定することで導電経路を維持する必要がある。しかし、被覆活物質粒子を用いる場合は、被覆用樹脂の働きによって活物質粒子を電極内に固定することなく導電経路を維持することができるため、結着剤を添加する必要がない。結着剤を添加しないことによって、活物質粒子が電極内に固定化されないため活物質粒子の体積変化に対する緩和能力が良好となり好ましい。
【0061】
セパレータ4としては、リチウムイオン電池用の公知のセパレータを使用でき、ポリオレフィン(ポリエチレン及びポリプロピレン等)製の微多孔膜フィルム、ポリオレフィン製多孔性フィルムを積層した多層フィルム、ポリエステル繊維、アラミド繊維、ガラス繊維等からなる不織布、及びそれらの表面にシリカ、アルミナ、チタニア等のセラミック微粒子を付着させたもの等が挙げられる。
【0062】
正極集電体7及び負極集電体8は一対の集電体であり、リチウムイオン電池用の公知の集電体を制限無く使用することができ、公知の金属集電体及び導電材料と樹脂とから構成されてなる樹脂集電体(特開2012-150905号公報及び国際公開番号WO2015/005116号等に記載されている樹脂集電体)等を好適に用いることができる。
【0063】
金属集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン及びこれらの金属を1種以上含む合金、並びに、ステンレス合金からなる群から選択される一種以上の金属材料が挙げられる。これらの金属材料は薄板や金属箔等の形態で用いてもよい。また、上記金属材料以外で構成される基材表面にスパッタリング、電着、塗布等の方法により上記金属材料を形成したものを金属集電体として用いてもよい。
【0064】
前記の樹脂集電体は、導電性を有する高分子材料からなる導電性層を含んでなる集電体であり、導電性樹脂層は導電性を有する高分子材料を公知の方法でシート状に成形することで得ることができる。本発明のリチウムイオン電池には、導電性を有する高分子材料を公知の方法でシート状に成形することで得た導電性樹脂層に更に別の導電性層(金属層または他の導電性樹脂層)が積層されていてもよい。
【0065】
樹脂集電体が含む導電性樹脂層を構成する導電性を有する高分子材料として、導電性を有さない高分子に導電性フィラーを分散して導電性を付与した高分子材料を用いることができる。
【0066】
導電性を有さない高分子材料としては、脂肪族ポリオレフィン[ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリイソブチレン、ポリブタジエン及びポリメチルペンテン(PMP)並びにこれらの共重合体等]、脂環式ポリオレフィン[ポリシクロオレフィン(PCO)等]、ポリエステル樹脂[ポリエチレンテレフタレート(PET)等]、ポリエーテルニトリル(PEN)、合成ゴム[スチレンブタジエンゴム(SBR)等]、アクリル樹脂[ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等]、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0067】
電気的安定性の観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)及びポリシクロオレフィン(PCO)が好ましく、さらに好ましくはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)及びポリメチルペンテン(PMP)である。
【0068】
導電性フィラーは、導電性を有する材料から選択される。好ましくは、集電体内のイオン透過を抑制する観点から、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料を用いるのが好ましい。具体的には、カーボン材料、アルミニウム、金、銀、銅、鉄、白金、クロム、スズ、インジウム、アンチモン、チタン、ニッケルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
これらの導電性フィラーは1種単独で用いられてもよいし、2種以上併用してもよい。また、ステンレス(SUS)等のこれらの合金材が用いられてもよい。耐食性の観点から、好ましくはアルミニウム、ステンレス、カーボン材料、ニッケル、より好ましくはカーボン材料である。また、これらの導電性フィラーは、粒子系セラミック材料や樹脂材料の周りに、上記で示される金属をメッキ等でコーティングしたものであってもよい。
【0070】
樹脂集電体は、特開2012-150905号公報及び国際公開番号WO2015/005116号等に記載の公知の方法で得ることができ、具体例としては、ポリプロピレンに導電性フィラーとしてアセチレンブラックを5~20部分散させた後、熱プレス機で圧延したものが挙げられる。また、その厚みも特に制限されず、公知のものと同様、あるいは適宜変更して適用することができる。
【0071】
枠体9、10を構成する材料としては、集電体7、8との表面に固定することが可能であり、電解液に対して耐久性のある材料であれば特に限定されないが、高分子材料、特に熱硬化性樹脂が好ましい。具体的には、エポキシ系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等が挙げられ、耐久性が高く取り扱いが容易であることからエポキシ系樹脂が好ましい。
【0072】
次に、図5を参照して、本実施形態のリチウムイオン電池Lに用いられる単電池1の製造方法について説明する。
【0073】
まず、図5(a)に示すように、略矩形状に切断された負極集電体8の図中上面に負極枠体10を形成する。負極集電体8の上面に負極枠体10を形成する手法は任意であるが、一例として、負極集電体8の上面に負極枠体10を積層する方法があげられる。負極枠体10を積層する方法としては、スクリーン印刷を用いて所定の場所に枠体10を構成する材料を印刷する方法、枠体10を構成する材料を吐出可能なノズル30を所定箇所に移動制御して所定量の部材を吐出できる機構により負極枠体10を構成する材料を吐出する手法、所定の型を用いた射出成形等により成形した負極枠体10を負極集電体8の表面に積層する方法等が好適に挙げられる。この負極枠体10を形成する際、負極枠体10の側面10bに係止部11の爪部11a及び孔部11cを形成するとともに、上面10aに係合部12の突起12a(図5では図略)を形成する。負極枠体10の側面10b及び上面10aに係合部12を形成する方法としては、負極集電体8の表面に積層した後に所定の型枠を当てて成形する方法、及び成形した負極枠体10を負極集電体8の表面に積層する場合には係合部12の形状を有する型を用いて形成する方法等を用いることができる。
【0074】
次に、図5(b)に示すように、負極電極活物質と電解液とを含む負極活物質層6を負極枠体10の内側に形成、配置して負極3を形成する。負極3を形成する手法は任意であり、負極集電体8の表面に負極活物質6を含む負極スラリーを塗布する、負極枠体10の内側にノズル31等を用いて負極活物質6を含む負極スラリーを注入するなど、種々の手法が挙げられる。
【0075】
次に、図5(c)に示すように、負極3を形成する負極活物質6の図中上面を覆い、端部が負極枠体10の上面10aに載置されるように、セパレータ4を載置する。セパレータ4を負極活物質6の上面に載置する手法は任意であり、一例として、真空チャック32によりセパレータ4の上面を保持し、この真空チャック32を用いてセパレータ4を負極活物質6の上面に載置した後、チャック32をセパレータ4から外すような手法が好適に挙げられる。
【0076】
負極活物質層6を負極枠体10の内側に形成、配置して負極3を形成する方法としては、予めセパレータ4の表面に負極活物質層6を形成し、それを負極枠体10の内側にセパレータ4の外周が負極枠体10の上面10aと重なる様に配置する方法も用いることができる。この場合、負極枠体10の内側への負極活物質層6の形成と負極枠体10の上面10aへのセパレータ4の載置は同時に行われることとなる。なお、セパレータ4の表面への負極活物質層6の形成は、セパレータ4の表面に負極電極活物質と電解液とを含む混合物を塗布し、必要に応じて裏面から電解液を吸引除去することで行うことができる。
【0077】
次に、図5(d)に示すように、負極枠体10の上面10aにシール部材15を配置する。シール部材15を配置する手法も任意であるが、シール部材が液状シール部材である場合には、液状シール部材の吐出量を制御しながらノズル33から所定量の部材を吐出することによりシール部材15を負極枠体10の上面10aに配置する手法や、あらかじめ負極枠体10の上面10aにシート状のシール部材を配置しておく手法が挙げられる。
【0078】
次に、図5(e)に示すように、同様に略矩形状に切断された正極集電体7の図中上面に正極枠体9を形成し、正極電極活物質と電解液とを含む正極活物質5を正極枠体9の内側に形成、配置して正極2を形成する。正極2を形成する手法は、負極3を形成する手法と略同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0079】
次に、図5(f)に示すように、正極2を形成する正極活物質5の図中上面を覆い、端部が正極枠体9の上面9aに載置されるように、セパレータ4を載置する。セパレータ4を正極活物質5の上面に載置する手法は、セパレータ4を負極活物質6の上面に載置する手法と略同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0080】
そして、図5(g)に示すように、図5(f)に示す工程で製造された正極2を、セパレータ4が下方になるように上下反転させた状態で負極3の上方に配置し積層して、正極枠体9及び負極枠体10の係止部11及び係合部12によりこれら枠体9、10を互いに係止、係合させ、さらに、シール部材15により枠体9、10の上面9a、10aを封止することで、図5(h)に示すように本実施形態の単電池1を製造することができる。
上述したように本実施形態のリチウムイオン電池Lでは、正極活物質層5及び負極活物質層6がそれぞれ内側に形成された正極枠体9及び負極枠体10に、対向する枠体9、10に係合可能な係止部11及び係合部12が設けられ、正極2及び負極3が、正極枠体9及び負極枠体10の係止部11及び係合部12が互いに係止、係合することで、セパレータ4を介して積層され、単電池1が構成されている。
【0081】
従って、正極枠体9及び負極枠体10の係止部11及び係合部12を係止させることで、これら枠体9、10の位置決めを容易に行うことができ、もって、正極2及び負極3の位置ずれを防止するとともに製造工程を簡略化することが可能となる。また、電極活物質層の表面に摩擦が加わることが無いため、電極活物質層の表面が荒れて界面抵抗値が上昇することが無い。
【0082】
また、本実施形態の単電池1は、正極活物質層5が正極活物質粒子の非結着体であり、負極活物質層6が負極活物質粒子の非結着体であるので、活物質粒子は隣接する活物質粒子との接触を維持したまま動くことが出来る。これにより、リチウムイオン電池Lに応力が作用してリチウムイオン電池Lが変形した場合であっても、活物質層での亀裂の発生や集電体との界面での剥離を起こすことなく、正極集電体7と負極集電体8との間における導電経路を維持することができ、十分な充放電特性を発揮し続けることができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池Lについて説明する。図6は、本発明の第2実施形態であるリチウムイオン電池Lに用いられる単電池1の要部を示す断面図である。なお、以下の説明において、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
【0084】
第2実施形態の単電池1では、正極枠体9の上面9aに、突起12aの代わりに、係合部12としての凹部12c及び凸部12dが交互に複数形成された凹凸部12eが形成され、さらに、負極枠体10の上面10aに、この凹凸部12eに対応する凸部12f及び凹部12gが交互に複数形成された凹凸部12hが形成され、これら凹凸部12e、12hが互いに係合、嵌合することで枠体9、10が封止されている。この凹凸部12e、12hは、図6において図示を省略するが、枠体9、10の上面9a、10aに無端環状に延在している。
【0085】
ここで、図6に示す図示例では、第1実施形態におけるシール部材15が省略されているが、凹凸部12e、12hの間にシール部材15を設けてもよい。
【0086】
以上の構成を有する単電池1において、仮に正極活物質層5または負極活物質層6を構成する電解液が漏洩した場合でも、図6に示すように凹凸部12e、12hの接触面が折曲されているので、この接触面を通じて電解液が漏洩して枠体9、10の側面にまで至る距離をかせぐことができる。この結果、実質的に正極活物質層5及び負極活物質層6からの電極組成物の漏洩を抑止することができる。
【0087】
(変形例)
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0088】
一例として、上述の各実施形態における単電池1では一対のセパレータ4を介して正極2及び負極3を積層していたが、一枚のセパレータ4を介して正極2及び負極3を積層してもよい。例えば、負極3を構成する負極活物質層6の表面のセパレータ4を省略した構成の場合、図5(f)において上下反転する必要のない負極3から活物質等がこぼれる等の不具合は生じない。また、図5においては下にある負極3に対して正極2を上から配置しているが、負極3と正極2とは上下を入れ替えても行ってもよい。
【0089】
また、上述の各実施形態では外形略矩形板状の単電池1によりリチウムイオン電池Lを構成していたが、単電池1の形状は外形略矩形板状に限定されず、例えば図7に示すような不定形(図7に示す例では星形)であってもよい。
【0090】
さらに、係止部11及び係合部12の形状は上述の各実施形態のそれに限定されず、枠体の位置決めを容易に行うことができる形状であれば特段の限定はない。加えて、各実施形態では係止部11及び係合部12の双方を設けていたが、係合部または係止部のみの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
L リチウムイオン電池
1 単電池
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 正極活物質層
6 負極活物質層
7 正極集電体
8 負極集電体
9 正極枠体
10 負極枠体
9a、10a 上面
9b、10b 側面
11 係止部
12 係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7