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特許7181760交直変換所の保護制御装置、直流送電システムの保護制御システム、並びに交直変換所の保護制御方法
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  • 特許-交直変換所の保護制御装置、直流送電システムの保護制御システム、並びに交直変換所の保護制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】交直変換所の保護制御装置、直流送電システムの保護制御システム、並びに交直変換所の保護制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/16 20060101AFI20221124BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H02H3/16 A
H02J1/00 301D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018201674
(22)【出願日】2018-10-26
(65)【公開番号】P2020068621
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-09-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 次世代洋上直流送電システム開発事業 システム開発/要素技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉原 徹
(72)【発明者】
【氏名】木村 守
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-106029(JP,A)
【文献】特開平1-8828(JP,A)
【文献】特開2001-69661(JP,A)
【文献】特開2008-79484(JP,A)
【文献】特開2009-238966(JP,A)
【文献】特開2016-226174(JP,A)
【文献】特開2018-46642(JP,A)
【文献】特公昭52-15777(JP,B1)
【文献】カナダ国特許出願公開第946932(CA,A1)
【文献】国際公開第2016/129094(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/16
H02H 7/12
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続されて直流送電システムを構成する、交直変換所の保護制御装置であって、
保護制御装置は、当該交直変換所に接続された1または複数の直流線路のそれぞれにおける事故を判定し、最も早く事故検出した1つの前記直流線路の前記直流遮断器を開放し、前記最も早く事故検出した1つの直流線路以外の前記直流線路の前記直流遮断器の開放を阻止することを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
前記交直変換器の他方端は、それぞれ直流遮断器並びに直流リアクトルを介して直流線路に連系されていることを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
前記直流線路における事故の判定は、前記直流線路を流れる電流増加の時間変化率または変化分を用いて行うことを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
前記直流線路における事故の判定は、前記直流線路の電圧低下の時間変化率または変化分を用いて行うことを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
前記直流線路における事故の判定は、前記直流線路に設置した直流リアクトルの相手端側における電圧低下の時間変化率または変化分を用いて行うことを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
複数の直流線路のそれぞれに設けられ、前記直流線路の物理量を計測する計測部と、物理量から前記直流線路における事故を判定する保護制御部と、保護制御部からの指令により前記直流遮断器を操作する遮断部とを備えた複数の保護制御装置と、
前記複数の保護制御装置の前記保護制御部からの事故判定の情報を用いて、1つの保護制御装置を選択し、選択した保護制御装置の前記保護制御部、前記遮断部を介してその直流遮断器を操作させるとともに、選択しなかった他の保護制御装置における直流遮断器の開放を阻止する中央保護装置とを備えることを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置であって、
複数の直流線路のそれぞれに、前記直流線路の物理量を計測する計測部と、物理量から前記直流線路における事故を判定する保護制御部と、保護制御部からの指令により前記直流遮断器を操作する遮断部とを備えた複数の保護制御装置を備え、
各保護制御装置は、前記保護制御部における事故判定の情報を相互に交換し、自己の前記保護制御部における事故判定の生成前に他の前記保護制御部における事故判定の情報を得たときに自己の前記直流遮断器の開放を阻止することを特徴とする交直変換所の保護制御装置。
【請求項8】
交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続されて直流送電システムの保護制御システムであって、
各交直変換所は、請求項1に記載の交直変換所の保護制御装置を備えていることを特徴とする直流送電システムの保護制御システム。
【請求項9】
交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続されて直流送電システムを構成する、交直変換所の保護制御方法であって、
当該交直変換所に接続された1または複数の直流線路のそれぞれにおける事故を判定し、最も早く事故検出した1つの前記直流線路の前記直流遮断器を開放し、前記最も早く事故検出した1つの直流線路以外の前記直流線路の前記直流遮断器の開放を阻止することを特徴とする交直変換所の保護制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の交直変換所の保護制御方法であって、
開放する1つの直流遮断器を選択するにあたり、複数の直流線路において検出した事故電流が、当該交直変換所からの直接事故電流であるか、当該交直変換所に隣接する交直変換所からの回り込みによる事故電流かを弁別して、直接事故電流であることをもって前記開放する1つの直流遮断器として選択することを特徴とする交直変換所の保護制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生可能エネルギー電源などの発電システムを、電力変換器および直流線路を介して連系する、交直変換所の保護制御装置、直流送電システムの保護制御システム、並びに交直変換所の保護制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長距離送電や、海底送電の高効率化のために、直流送電システムが用いられる。一般の電力系統は交流系統であるので、直流送電システムでは、交流系統の電力を交直変換器で直流に変換して送電する。
【0003】
従来、直流送電システムは、2つの交直変換器を直流送電で接続する、1対1送電の直流送電システムが主であったが、近年、直流送電システムの大容量化に伴い、大規模送電に適した直流送電システムの形態として、3箇所以上の交直変換器から構成される多端子直流送電システムの開発が進められている。
【0004】
多端子直流送電システムの運用形態として、洋上に複数の風車を建設してウインドファームを構成し、その発電電力を洋上変電所で集電し、多端子直流送電システムで複数の陸上系統に送電する洋上ウインドファーム連系多端子直流送電システムが注目されている。
【0005】
多端子直流送電システムの運用上の課題の一つとして、交流系統及び直流線路の地絡あるいは短絡などの系統事故時の保護が挙げられる。
【0006】
このうち交流系統における事故についてみると、交流送電線路での地絡事故発生時の事故検出や保護に関して、保護リレーによる事故線路の検出や、交流遮断器による事故線路の開放、事故除去および再閉路などの技術が、既に一般に用いられている。なお、交流系統の事故検出や保護は、高速再閉路方式の場合、商用周波数の3サイクルから5サイクル程度、時間にすると50ミリ秒から100ミリ秒程度で、事故検出および事故線路の開放が完了し、事故発生から約1秒程度で、再閉路を完了することができる。
【0007】
これに対し直流線路における事故についてみると、特に多端子直流送電システムでは、半導体素子を使用した交直変換器を用いて構成されるため、半導体素子の過電流および過電圧保護の観点から、直流事故の検出および事故点の切り離しを、事故発生から数ミリ秒以内に行う必要がある。
【0008】
この点に関し特許文献1は、「直流送電網の各端子に接続される電流検出器を内蔵した電力変換器と、前記電力変換器の交流側に接続される交流電流遮断器と、前記直流送電網の節点に接続される直流電流遮断器及び電流検出器と、前記電力変換器と前記節点を接続する直流送電線路と、を有することを特徴とする直流送電システムにおいて、系統事故発生時において、健全端の高速な潮流制御運転再開または潮流制御運転継続を、低コストで実現する信頼性の高い直流送電システム」とすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-46642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
直流線路での地絡事故の発生時に事故線路を切り離す方法として、近年、直流遮断器の実用化に向けた技術開発が進められているが、地絡事故の検出および事故線路の同定については、直流線路の長さは100km以上となる場合もあり、通信遅延も含めた時間制約の厳しさゆえ、交流系統の事故検出や保護に比べ、技術的な障壁は高いといえる。
【0011】
また直流線路の構成についてみると、特許文献1では、直流送電網がY型のように分岐点を持つ構成について説明されているが、直流送電網の構成は、常に分岐点を持つとは限らない。例えば4端子直流送電システムで、四角形の各頂点に電力変換器があり、四角形を描くように送電網が構成されるループ構成の場合、分岐点は持たない。また電力変換器は、一つの直流線路にのみ接続されるとは限らず、電力変換器の出力が複数の直流線路に分岐されて送電されることもある。
【0012】
このように直流送電網の構成が多様であることを想定すると、特に多端子直流送電システムを構成する場合に、複雑な直流送電網のいずれかで発生した地絡事故が、当該直流線路の遮断のみならず、他の直流線路にまで波及するような事態は避ける必要がある。
【0013】
以上のことから本発明においては、交直変換所、直流送電システムにおける事故時に適正な範囲の直流線路保護を確実に行い得る交直変換所の保護制御装置、直流送電システムの保護制御システム、並びに交直変換所の保護制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のことから本発明においては、「交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続されて直流送電システムを構成する、交直変換所の保護制御装置であって、保護制御装置は、当該交直変換所に接続された1または複数の直流線路のそれぞれにおける事故を判定し、最も早く事故検出した1つの直流線路の直流遮断器を開放し、最も早く事故検出した1つの直流線路以外の直流線路の直流遮断器の開放を阻止することを特徴とする交直変換所の保護制御装置」としたものである。
【0015】
また本発明においては、「交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続された直流送電システムの保護制御システムであって、各交直変換所は、交直変換所の保護制御装置を備えていることを特徴とする直流送電システムの保護制御システム」としたものである。
【0016】
また本発明においては、「交流と直流を相互に変換する交直変換器の一方端が交流送電系統に連系され、他方端がそれぞれ直流遮断器を介して1または複数の直流線路に連系される交直変換所が互いに接続されて直流送電システムを構成する、交直変換所の保護制御方法であって、当該交直変換所に接続された1または複数の直流線路のそれぞれにおける事故を判定し、最も早く事故検出した1つの直流線路の直流遮断器を開放し、最も早く事故検出した1つの直流線路以外の直流線路の直流遮断器の開放を阻止することを特徴とする交直変換所の保護制御方法」としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、直流線路の地絡ないし短絡事故の発生時に、交直変換所で計測可能な情報のみで、直流事故の事故検出と事故線路同定と事故線路両端の直流遮断器の開放を行い、システム全体の事故波及を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係る多端子直流送システムの構成例を示す図。
図2】本発明の実施例に係る直流遮断器DCCBの構成例を示す図。
図3】本発明の実施例に係る交直変換所の保護動作シーケンスを示す図。
図4】本発明の実施例における直流遮断器制御部203の構成例を示す図。
図5】直流線路Ld3内の事故点F1で直流事故が発生したことを示す図。
図6】直流線路Ld3内の事故点F1で直流事故が発生した場合に交直変換器CONAからの電流経路を示す図。
図7】直流線路Ld3内の事故点F1で直流事故が発生した場合に交直変換器CONBからの電流経路を示す図。
図8】直流線路Ld3内の事故点F1で直流事故が発生した場合に交直変換器CONCからの電流経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の実施例は本発明の一形態を示すものであり、本発明は要旨を逸脱しない限り、他の形態を含むものである。また以下の説明で、特に断りがない限り、「交流」は三相交流を指す。さらに以下の説明で、直流遮断器の開放と投入という表記を用いるが、開放とは、直流遮断器の両端を電気的に切り離すことを指し、投入とは、直流遮断器の両端を電気的に接続することを指す。
【実施例1】
【0021】
本発明の実施例1においては、多端子直流送システムを保護の対象として説明するが、この一例として3端子直流送電システムを図1に図示して説明する。ここでは、3端子直流送電システムで直流線路の地絡事故が発生した場合に、電気所である交直変換所で計測可能な情報のみで、直流事故の事故検出と事故線路同定と事故線路両端の直流遮断器の開放を行い、さらには直流送電システムの運転を再開する、一連の動作を説明する。
【0022】
図1は電気所である交直変換所がTA、TB、TCの各端子による3端子直流送電システムを構成した事例である。各端子の交直変換所TA、TB、TCは、その一方端が交流送電線Laを介して交流系統Gに接続され、その他方端を直流線路Ldに接続している。
【0023】
また各端子の交直変換所TA、TB、TCは、交流送電線Laと直流母線Busの間に配置された交直変換器CONにおいて交直変換を行い、直流母線Busを直流線路Ldに連系する。各直流線路Ldには直流遮断器DCCBと直流リアクトルDCLが直列接続されている。
【0024】
なお図1並びに以降の図において、上記の各記号に付したA、B、Cはこの記号の機器が交直変換所TA、TB、TCのいずれの端子に属する機器であるかを区別して表記したものであり、さらに各記号に付した数値は当該の機器が複数ある場合にこれを区別するために使用したものである。したがって、上記記号は各端子などを区別して説明する必要がない場合、あるいは複数の機器を区別して説明する必要がない場合には、A、B、Cの記号や数値を省略して説明するものとする。
【0025】
図1から明らかなように、図1内の3つの交流系統GA、GB、GCはそれぞれ、交流送電線LaA、LaB、LaCを介して、交直変換所TA、TB、TCと接続されている。
【0026】
このうち、交直変換所TAは、直流線路Ld1を介して交直変換所TBと接続され、直流線路Ld2とLd3を介して、交直変換所TCと接続される。これにより交直変換所TAは3回線の直流線路による送電を行っている。また交直変換所TBは1回線の直流線路による送電を行っており、交直変換所TCは2回線の直流線路による送電を行っている。
【0027】
本発明においては、電力変換器CONの出力が複数の直流線路Ldにより電力を送るように構成されている電気所である交直変換所、つまり複数回線構成の直流送電をおこなう電気所である交直変換所を制御の対象とする。この意味において、本発明の直流送電システムの保護制御装置は交直変換所TAとTCを保護の適用対象とするものである。なお1回線の直流線路による送電を行う交直変換所TBは、既存の考えによる保護が行われているが、本発明の保護装置がそのまま適用可能である。
【0028】
なお図1の設備において、交直変換器CONは、自己消弧素子とコンデンサを用いて構成され、自交直変換器CONを通流する電力を、交流および直流に相互に変換が可能な、一般に自励式交直変換器と言われる構成であり、例えば2レベル変換器やモジュラーマルチレベル変換器などが適用可能である。
【0029】
また図1において直流遮断器DCCBは、遮断部以外に計測部、保護制御部を含む直流線路保護機能を備えたものとして記述されているが、必ずしも直流遮断器DCCBに付随して装置構成されるものではなく、回線ごとに近傍に設置されていればよいことは言うまでもない。
【0030】
ここで直流線路保護機能における計測部とは、事故発生を判断するための電力系統の物理量を計測するものであり、具体的には各回線を流れる直流電流であり、あるいは各回線の電圧(直流リアクトルDCLの直流線路側電圧)である。これら各回線の電流、電圧から保護制御部ではその変化分、あるいは時間変化率が所定の閾値を超えて変動したことをもって事故判定する過電流リレーあるいは不足電圧リレーで構成されている。遮断部では、当該回線の保護制御部の判断結果に従い直流線路を開放する。
【0031】
また図1には図示していないが、直流線路Ldはその一部がアース接続されたものであってもよい。また直流線路Ldは、海底に設置される場合と、陸上の架線上に設置される場合とがある。直流線路Ldの保護を行うにあたり、海底設置と架線設置では、特に再閉路処理の実行可否の処理を区別して実施するのがよい。海底設置の場合には、地絡事故は永久事故と定義するのが妥当であることから再閉路処理は実行せず、架線設置の場合のみ再閉路処理を実行するものとするのがよい。
【0032】
また図1において、保護制御部は、それぞれ、自交直変換所内の直流母線Busに接続されるすべての直流遮断器DCCBの運転状態を監視し、直流線路Ldの異常検出時に、変換所中央保護装置Cに自保護装置内の直流遮断器DCCBの開放状態を送信し、変換所中央保護装置Cから自保護装置内の直流遮断器DCCBの開放指令を受け取り、直流遮断器DCCBを開放ないし投入する機能を有する。
【0033】
この結果、各直流遮断器DCCBは、自己内の保護制御部や遮断部の状態を変換所中央保護装置Cに送信し、変換所中央保護装置Cからの指令によって遮断部が作動し、直流遮断器DCCBを開放ないし投入する。これにより変換所中央保護装置Cは、複数の回線に接続された複数の直流遮断器DCCBの中の1つの直流遮断器DCCBのみを開放制御し、他の直流遮断器DCCBが開放制御されることを確実に阻止する。
【0034】
なお図1内における電流方向として、交直変換所TA内の、直流遮断器DCCBA1から直流線路Ld1に向かって流れる電流をIAと表記し、直流遮断器DCCBA2から直流線路Ld2に向かって流れる電流をIBと表記し、直流遮断器DCCBA3から直流線路Ld3に向かって流れる電流をICと表記している。
【0035】
なお、交直変換所TA、TB、TC内の各機器は、1つの交直変換所内に備えられる機器であり、通信距離は短いため、1つの変換所の中で、互いにリアルタイムでの通信が可能である。
【0036】
なお、図1では、直流母線Busが直流リアクトルDCLの一端と接続され、直流リアクトルDCLのもう一端が、直流遮断器DCCBの一端と接続され、直流遮断器DCCBのもう一端が、直流線路Ldに接続される構成となっているが、直流母線Busが直流遮断器DCCBの一端と接続され、直流遮断器DCCBのもう一端が、直流リアクトルDCLの一端と接続され、直流リアクトルDCLのもう一端が、直流線路Ldに接続される構成であってもよい。
【0037】
次に、直流遮断器DCCBの構成例について、図2を用いて説明する。直流遮断器DCCBは、遮断部である直流遮断部201、計測部である電流センサ202、保護制御部である直流遮断器制御部203から構成されている。なお、図2の直流遮断器DCCBの周囲には、本発明を説明するために必要な機器のみを図示しており、他に、高調波フィルタや電圧センサ、断路器、避雷器など、本発明の要旨を逸脱しない限り、他の機器を含んでいてもよい。
【0038】
ここで直流遮断部201は、直流遮断器制御部203からの動作指令に基づいて、自遮断器を開放ないし投入する機能を有する。電流センサ202は、自電流センサを通流する電流を計測するものであるが、電圧センサであってもよい。
【0039】
直流遮断器制御部203は、電流センサ202の電流検出値を基に、自直流線路Ldで事故が発生しているかどうか判定する機能と、変換所中央保護装置Cに直流遮断器の運転状態を送信する機能と、直流事故が発生していると判定した場合に、自直流線路保護装置の開放許可の要求を変換所中央保護装置Cに送信する機能と、変換所中央保護装置Cから送信される直流遮断器の開放ないし投入指令に基づいて、自直流線路保護装置内の直流遮断器を開放ないし投入させる機能を有する。
【0040】
次に直流事故時の保護動作シーケンスを、図1から図4を用いて、説明する。本発明の実施例では、図1内の3つの交直変換所TA、TB、TCが独立して、直流事故の除去および保護動作を行う。なお以下の説明では、交直変換所TAの保護動作シーケンスを例に、直流事故時の保護動作シーケンスを説明する。
【0041】
図3は、交直変換所TAにおける一連の保護動作シーケンスであり、事故発生処理ステップS301、直流線路Ld1事故判定処理ステップS302A、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302C、遮断器開放判定処理ステップS303、事故除去確認処理ステップS304、遮断器再閉路処理ステップS305、遮断器開放禁止状態の解除処理ステップS306、完了処理ステップS307から構成される。
【0042】
事故発生処理ステップS301は、直流事故が発生したことを示す。
【0043】
直流線路Ld1事故判定処理ステップS302Aは、交直変換所TA内の直流遮断器DCCBA1の直流遮断器制御部203にて、直流線路Ld1で、直流事故が起こっているか、判定を行う。直流線路Ld2事故判定処理ステップS302Bは、交直変換所TA内の、直流遮断器DCCBA2の直流遮断器制御部203にて直流線路Ld2で、直流事故が起こっているか、判定を行う。直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cは、交直変換所TA内の、直流遮断器DCCBA3の直流遮断器制御部203にて直流線路Ld3で、直流事故が起こっているか、判定を行う。
【0044】
なお直流線路Ld1事故判定処理ステップS302A、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cは、基本的に同様の判定方法を用いて直流事故が起こっているか、判定を行う。
【0045】
以下では、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cを例に説明する。
【0046】
直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cでは、直流遮断器DCCBA3にて検出している電流ICの情報を基に、地絡事故が起きたと判定した場合には、変換所中央保護装置Cに、自遮断器の開放要求を送信する。
【0047】
地絡事故の判定基準としては、例えば、地絡電流ICの時間変化率が、予め定められたしきい値dIthを超えた場合に、事故と判定する方法が挙げられる。
【0048】
図4は、本発明の実施例における直流遮断器制御部203の構成例であり、例えば直流遮断器DCCBA3の直流遮断器制御部203の構成例を示している。直流遮断器制御部203は、加算器401、微分器402、しきい値判定403から構成される。
【0049】
図4内の記号について、Imeasは直流遮断器DCCBA3で検出される直流電流値であり、Iは、直流遮断器DCCBA1を流れる直流電流の計画値であり、Ifは、直流遮断器DCCBA3を流れる直流電流のうち、直流線路の地絡事故に起因して流れる電流成分であり、dIf/dtはIfの時間変化率であり、dIthは直流電流の事故判定をするための判定しきい値である。これにより、直流電流が急増した事象を把握して事故と判定する。
【0050】
なお直流遮断器制御部203における事故検知の動作原理としては、他に地絡電流ICの変化分を評価するものであってもよい。また線路電圧の電圧低下について、時間変化率あるいは変化分を評価するものであってもよい。
【0051】
以上が図4の説明である。なお、交直変換器TB、交直変換器TC内の変換所中央保護装置Cについても、図4と同様である。
【0052】
なお、以降の説明では、直流遮断器DCCBを流れる直流電流のうち、直流線路の地絡事故に起因して流れる電流成分のことを、直流遮断器DCCBを流れる事故電流と呼称する。
【0053】
以上が、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cの動作の説明であり、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld1事故判定処理ステップS302Aについても、それぞれ、自直流遮断器DCCBにて検出している電流情報を基に、同様の判定および自遮断器の開放要求を中央保護装置Cに送信する。
【0054】
中央保護装置C内の処理である図3の遮断器開放判定処理ステップS303では、直流線路Ld1事故判定処理ステップS302A、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cから送信される各遮断器の開放要求指令に基づいて、開放する遮断器を選択し、該当する直流遮断器DCCBに、開放指令を送信する。
【0055】
本発明の実施例では、1つの交直変換所の中に備えられる1つ以上の直流遮断器DCCBの中で、直流事故を一番早く検出した直流遮断器のみを開放する。これにより、3回線構成の交直変換所TA、あるいは2回線構成の交直変換所TCでは、最も早く直流事故を検知した直流遮断器DCCBのみを開放して他の直流遮断器DCCBの開放を阻止する。また、1回線構成の交直変換所TBでは、そのまま当該の直流遮断器DCCBを開放することになる。
【0056】
本発明においては、事故発生により1つの直流遮断器DCCBを開放したときに他の直流遮断器DCCBの開放を阻止している。このため、以降の説明では、交直変換所内に備えられた1つ以上の直流遮断器DCCBが全て投入状態である状態を「遮断器開放許可状態」と呼称し、直流遮断器DCCBが1つでも開放状態である場合を「遮断器開放禁止状態」と呼称する。
【0057】
なお、交直変換所内に備えられた1つ以上の直流遮断器DCCBが全て投入状態であるという状態は、直流事故の発生の直前に投入されていた直流遮断器が全て投入状態であるという状態を指し、直流送電システムの送電経路の切替やメンテナンスなど、計画的に開放されている直流遮断器DCCBについては、遮断器開放許可状態と遮断器開放禁止状態の判別の対象外である。
【0058】
従って例えば、交直変換所TA内の3つの直流遮断器DCCBA1、DCCBA2、DCCBA3がすべて投入状態であるとき中央保護装置Cは遮断器開放許可状態と認識しており、この状態において例えば直流遮断器DCCBA3の直流遮断器制御部203が直流事故を検知して直流遮断器DCCBA3の開放要求を送信してきた場合、中央保護装置Cは現状が遮断器開放許可状態であることから、直ちに直流遮断器DCCBA3の開放要求を許可する。また同時に中央保護装置Cは、1つの直流遮断器DCCBが開放状態であることから、現状を遮断器開放禁止状態と認識し、従って、以降に他の直流遮断器DCCBA1、DCCBA2から開放要求を送信してきたとしても、この開放要求を許可しない。
【0059】
これにより事故発生後は、3回線構成の交直変換所TAは、以降2回線運用されることになり、2回線構成の交直変換所TCは、以降1回線運用されることになり、1回線構成の交直変換所TBは、以降運用停止されることになる。
【0060】
図3に戻り、事故除去確認処理ステップS304では、遮断器開放指令処理ステップS303における直流遮断器開放処理の結果として、直流事故が除去されたことを判定する。具体的には事故除去確認処理ステップS304の処理においては、例えば、直流送電システム全体を監視するのがよい。図示しない直流送電システム全体制御装置において、各直流線路Ldの状態を監視し、直流線路の電流や電圧の情報を基に、事故除去を判定する方法が挙げられる。
【0061】
遮断器再閉路処理ステップS305では、直流送電システムの構成を地絡事故の発生前に戻すために、遮断器開放判定処理ステップS303にて開放した直流遮断器に、投入指令を与え、いわゆる再閉路処理を実行する。なお、直流線路の事故において、永久事故が予め想定される場合(海底送電の場合など)や、直流送電システムの運用上、再閉路が不要な場合には、遮断器再閉路処理ステップS305は不要である。
【0062】
遮断器開放禁止状態の解除処理ステップS306では、直流送電システム内で遮断器開放禁止状態となっている交直変換所がある場合に、遮断器開放禁止状態を解除する。これにより中央保護装置Cは、現状が再度遮断器開放許可状態に戻されたものと認識する。
【0063】
遮断器開放禁止状態の解除処理ステップS306を経て、完了処理ステップS307で、図3の一連のシーケンスが完了する。以上が、本発明の実施例1における交直変換所TAの保護動作シーケンスである。また交直変換所TB、交直変換所TCについても、同様の保護動作シーケンスである。
【0064】
次に図6から図8を用いて、図1の直流送電システムに直流事故F1が発生した場合の事故電流について説明する。なお直流送電システムの構成や機器配置は図1と同じであり、直流線路Ld3に地絡事故F1が発生したものとする。
【0065】
図5は、直流線路Ld3内の事故点F1で直流事故が発生した場合を図示している。また図6から図8は、直流線路Ld3の事故点F1で直流事故が発生した場合に、交直変換所TAを通流する事故電流を3つの成分I0、I1、I2に分類し、各々の電流経路を図示したものである。
【0066】
図6内のI0は、交直変換所TAの交直変換器CONAから、母線BusA、直流線路Ld3に接続された直流リアクトルDCLA3、直流遮断器DCCBA3を通って、事故点F1に向かって流れる事故電流である。
【0067】
図7内のI1は、交直変換所TBの交直変換器CONBから、母線BusB、直流リアクトルDCLB1、直流遮断器DCCBB1、直流線路Ld1、直流遮断器DCCBA1、直流リアクトルDCLA1、交直変換所TAの母線BusA、直流線路Ld3に接続された直流リアクトルDCLA3、直流遮断器DCCBA3を通って事故点F1に向って流れる事故電流である。
【0068】
図8内のI2は、交直変換所TCの交直変換器CONCから、母線BusC、直流リアクトルDCLC1、直流遮断器DCCBC1、直流線路Ld2、直流遮断器DCCBA2、直流リアクトルDCLA2、交直変換所TAの母線BusA、直流線路Ld3に接続された直流リアクトルDCLA3、直流遮断器DCCBA3を通って事故点F1に向って流れる事故電流である。
【0069】
事故電流I0と事故電流I1、I2の電流経路を比較すると、事故電流I0は1つの直流遮断器DCCBを通過する電流であるのに対し、事故電流I1、I2は直流線路と3つの直流遮断器DCCBを通過する電流である。
【0070】
上記のように、直流事故の発生時に、ある交直変換所を通過して流れる事故電流は、I0のように、直流事故が発生した直流線路に接続された交直変換所から、1つの直流線路保護装置のみを通って事故点に流れる事故電流Ifxと、I1やI2のように、直流事故が発生した直流線路に接続された交直変換所以外の交直変換所から、1つ以上の直流線路と3つ以上の直流線路保護装置を通って事故点に流れる事故電流Ifyの2種類に分けられる。なお事故電流Ifxを直接事故電流、事故電流Ifyを回り込み事故電流と呼ぶことにする。
【0071】
直流線路Ldには直流リアクトルDCCLがあるため、直接事故電流Ifxの電流経路には1つのみ直流リアクトルがある回路であるのに対し、回り込み事故電流Ifyの電流経路には、少なくとも3つの直流リアクトルが、直列に接続される回路である。
【0072】
また、直接事故電流Ifxは、図4の場合、直流事故が発生した直流線路Ld3の両端に接続される、交直変換所TAと交直変換所TCにのみ流れる。
【0073】
電流経路内に含まれる直流リアクトルDCCLの数が多いほど、直流リアクトルDCCLのインダクタンスによって、事故電流の時間変化率はより小さくなるため、直接事故電流Ifxと回り込み事故電流Ifyの事故電流の時間変化率を比較すると、直接事故電流Ifxの方が大きいと言える。また事故電流の大きさや変化分についても直接事故電流Ifxの方が大きいと言える。
【0074】
上記のように、直流事故の発生時に、ある交直変換所を通過して流れる事故電流は、図1のICのように、直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ifyの両方が、同一方向に流れるような事故電流と、図1のIA、IBのように、回り込み事故電流Ifyのみ流れる事故電流の2種類に分けられる。
【0075】
また、直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ifyと、図1内のIA、IB、ICを比較すると、交直変換所TA内のIA、IBには回り込み事故電流Ifyの電流が流れるのに対し、ICには、直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ifyの両方の電流が、同一方向に流れる。
【0076】
つまり、直流事故の発生時のIA、IB、ICの時間変化率を比較すると、ICが最も大きいと言える。またまた事故電流の大きさや変化分についてもICが最もが大きいと言える。
【0077】
直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ifyの大きさは、直流リアクトルDCLのインダクタンスと直流線路のインピーダンスおよび事故点によって決まるものであり、オフライン解析などで事前に評価可能である。
【0078】
直流リアクトルDCLのインダクタンスを、例えば、「直接事故電流Ifxの時間変化率dIfx/dtが、予め定められたdIthより大きく、かつ、Ifyの時間変化率dIfy/dtが、予め定められたdIthより小さく」なるようなインダクタンスとすることで、直接事故電流Ifxと回り込み事故電流Ifyの時間変化率の違いによる直流事故時の事故線路の同定が可能である。
【0079】
これらのことは、直接事故電流Ifxを検知する回線の事故検知は、回り込み事故電流Ifyを検知する回線の事故検知よりも早い段階で検知することが可能であることを意味している。
【0080】
本発明の実施例では、直流事故F1が発生した場合、図3の直流線路Ld1事故判定処理ステップS302A、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cに従って、各直流遮断器DCCBの直流遮断器制御部203で、直流事故の判定を行い、事故と判定した場合、自遮断器の開放要求を送信する。
【0081】
このとき、3回線構成の交直変換所TAでは、各回線の直流遮断器DCCBの直流遮断器制御部203において、直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ify、あるいはこれらの合成電流を検知して事故判定を行っており、直流遮断器DCCBA1、DCCBA2、DCCBA3のいずれの直流遮断器制御部203も事故検知し、中央制御装置CAに遮断器の開放要求を送信している可能性が高い。
【0082】
同様に2回線構成の交直変換所TCでは、各回線の直流遮断器DCCBの直流遮断器制御部203において、直接事故電流Ifx、回り込み事故電流Ify、あるいはこれらの合成電流を検知して事故判定を行っており、直流遮断器DCCBC1、DCCBC2のいずれの直流遮断器制御部203も事故検知し、中央制御装置CCに遮断器の開放要求を送信している可能性が高い。
【0083】
なお1回線構成の交直変換所TBでは、直流遮断器DCCBB1の直流遮断器制御部203において、回り込み事故電流Ifyを検知して事故判定を行っており、中央制御装置CBに遮断器の開放要求を送信している可能性が高い。
【0084】
然るに、直流事故発生に伴う3回線構成の交直変換所TAでは、IA、IB、ICの時間変化率は、上記した理由によりICが最も大きく、換言すると、直流遮断器DCCBA1の直流遮断器制御部203、直流遮断器DCCBA2の直流遮断器制御部203、直流遮断器DCCBA3の直流遮断器制御部203の中で、直流遮断器DCCBA3の直流遮断器制御部203が、一番先に自遮断器の開放要求を、中央保護装置CAに送信することになる。
【0085】
同様に2回線構成の交直変換所TCでは、直流遮断器DCCBC1の直流遮断器制御部203、直流遮断器DCCBC2の直流遮断器制御部203の中で、直流遮断器DCCBC1の直流遮断器制御部203が、一番先に自遮断器の開放要求を、中央保護装置CCに送信することになる。
【0086】
なお1回線構成の交直変換所TBの場合、直流遮断器DCCBB1の直流遮断器制御部203は、回り込み電流Ifyを検知して事故判定をする可能性が高いが、直接事故電流Ifxの場合よりも検知時間が遅れるあるいは時間変化率が小さいことなどから、自端子、自回線における事故であるか否かを判別し、自端子、自回線における事故でないことを検知して直流遮断器の開放を阻止することが可能である。
【0087】
このようにして直流線路Ld3に接続された直流遮断器DCCBA3、DCCBC2からの開放要求を受けた変換所中央保護装置CA、CCでは、開放する遮断器を選択し、該当する直流遮断器DCCBA3、DCCBC2の保護装置に、開放指令を送信し、他の直流遮断器の開放動作を阻止する。
【0088】
以降、図3のシーケンスに従い、最終的に、完了処理ステップS307で、図3の一連のシーケンスが完了する。
【実施例2】
【0089】
実施例2においては、本発明を実施する上でのいくつかの変形事例を説明する。
【0090】
まず実施例1では、直流遮断器側に計測部、保護制御部、遮断部からなる保護制御装置を備え、保護制御装置から中央保護装置に開放要求を報告し、中央保護装置の承認を得てから保護制御部が実際の遮断動作に入るという、中央制御型の処理を実行したものである。
【0091】
この中央制御型の処理に代えて、複数の保護制御装置による協調制御型の処理とすることができる。複数の保護制御装置による協調制御型の処理では、各保護制御装置は開放要求を相互に交換し合い、自分が開放要求を生成する前に他から開放要求が来た場合には自分の開放動作を阻止するように機能させたものである。要するに1つの交直変換所の中で、複数の回線ごとに事故検知し、最も早い時点で事故検知した1つの回線のみを開放し、他の回線の開放を阻止するように構成すればよい。
【0092】
また、本発明の他の実施例では、図3の直流線路Ld1事故判定処理ステップS302A、直流線路Ld2事故判定処理ステップS302B、直流線路Ld3事故判定処理ステップS302Cにおける直流事故判定のために、直流電流の時間変化率を基にして、事故判定を行う方法は、本方法に限定されるものではなく、直流電流の振幅を基にして、判定する方法でもよい。また不足電圧の変化分や、時間変化率を用いて事故判定するものであってもよい。
【0093】
また、本発明の他の実施例では、直流事故の発生時に、機器の運用や過電流耐量などが許す範囲で、交直変換器はゲートブロックしてもよいし、しなくてもよい。直流事故の発生時に交直変換器がゲートブロックした場合には、図3に示す一連のシーケンスが完了した後、ゲートデブロックし、運用を再開すればよい。また、直流事故に伴う、交直変換器の運転指令の変更については、本発明の要旨を逸脱しない限り、任意に変更してもよい。
【0094】
また交流系統Gは、風力発電や太陽光発電など、再生可能エネルギー電源および複数の再生可能エネルギー電源から構成される再生可能エネルギー電源群であってもよい。
【符号の説明】
【0095】
G:交流系統
La:交流送電線
TA、TB、TC:交直変換所
Ld:直流線路
CON:交直変換器
Bus:直流母線
C:変換所中央保護装置
DCL:直流リアクトル
201:直流遮断部
202:直流センサ
203:直流遮断器制御部
Ld:直流線路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8