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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
H01L21/304 648F
H01L21/304 643A
H01L21/304 643C
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2018206627
(22)【出願日】2018-11-01
(65)【公開番号】P2019176125
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2018057501
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 宣之
(72)【発明者】
【氏名】林 昌之
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 亨
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207080(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135064(WO,A1)
【文献】特開2012-195524(JP,A)
【文献】特開2018-018899(JP,A)
【文献】特開2015-109335(JP,A)
【文献】特開2015-082650(JP,A)
【文献】特開2008-235341(JP,A)
【文献】特開2008-028280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理方法であって、
過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第1SPMを基板に供給する第1SPM供給工程と、
前記第1SPMよりも高い濃度で硫酸を含む硫酸含有液を、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する硫酸含有液供給工程と、
前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、排液配管に流入させる排液工程と、
前記硫酸含有液供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記硫酸含有液を、回収配管に流入させる工程と、前記回収配管に流入した前記硫酸含有液を、硫酸を貯留する硫酸タンクに流入させる工程と、を含む回収工程と、
前記回収配管によって案内された前記硫酸含有液に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、
前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定工程と、
前記硫酸濃度測定工程において測定された硫酸濃度が下限値を下回る場合に、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記硫酸含有液は、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第2SPMであり、
前記硫酸含有液供給工程は、前記第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する第2SPM供給工程である、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記第1SPM供給工程は、前記第2SPMの作成に用いられる硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、
前記第2SPM供給工程は、前記回収配管に流入した前記第2SPMを含む硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項4】
硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理方法であって、
過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第1SPMを基板に供給する第1SPM供給工程と、
過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する第2SPM供給工程と、
前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、排液配管に流入させる排液工程と、
前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、回収配管に流入させる回収工程と、
前記回収配管によって案内された前記第2SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、を含み、
前記第1SPM供給工程は、前記第2SPMの作成に用いられる硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、
前記第2SPM供給工程は、前記回収配管に流入した前記第2SPMを含む硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含む、基板処理方法。
【請求項5】
前記第1SPM供給工程において前記基板から排出された前記第1SPMを、前記基板を取り囲んでおり、前記排液配管に接続された第1のガードに受け止めさせる第1SPM捕獲工程と、
前記第2SPM供給工程において前記基板から排出された前記第2SPMを、前記基板を取り囲んでおり、前記回収配管に接続された第2のガードに受け止めさせる第2SPM捕獲工程と、をさらに含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止されるのと同時にまたは停止された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記基板から排出された液体を前記第1のガードが受け止める第1状態から前記基板から排出された液体を前記第2のガードが受け止める第2状態に切り換えるガード切り換え工程をさらに含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記ガード切り換え工程は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMの供給が開始された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換える工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記ガード切り換え工程は、前記基板から排出された前記第2SPMを前記第1のガードに受け止めさせながら、前記基板と前記第1のガードとを上下方向に相対的に移動させる相対移動工程を含む、請求項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1SPM供給工程は、硫酸および過酸化水素水をノズル内で混合し、前記ノズル内で作成された前記第1SPMを前記ノズルから前記基板に向けて吐出するノズル内混合工程を含む、請求項2~8のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
前記第1SPM供給工程および第2SPM供給工程において前記SPMを前記基板に供給しながら、過酸化水素水に対する硫酸の比を前記第1混合比から前記第2混合比まで連続的に増加させる混合比連続増加工程をさらに含む、請求項2~9のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも長い、請求項2~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも短い、請求項2~10のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第3混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第3SPMを、前記第1SPM供給工程において前記基板への前記第1SPMの供給が開始される前に前記基板に供給する第3SPM供給工程をさらに含む、請求項2~12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記第2SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第2SPMの流量は、前記第1SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第1SPMの流量よりも大きい、請求項2~13のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記基板処理方法は、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第2混合比よりも大きい第4混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第4SPMを、前記第2SPM供給工程の後に前記基板に供給する第4SPM供給工程をさらに含み、
前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記第4SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第4SPMを、前記回収配管に流入させる工程とを含み、
前記再混合工程は、前記回収配管によって案内された前記第2SPMおよび第4SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する工程を含む、請求項2~14のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理装置であって、
少なくとも一部がレジストで覆われた基板を保持する基板保持ユニットと、
過酸化水素水に対する硫酸の比を変更する混合比変更ユニットを含み、硫酸および過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成し、硫酸を含む硫酸含有液を前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する硫酸含有液供給ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する排液配管と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する回収配管と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板から排出された液体が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切り換えユニットと、
硫酸を貯留しており、前記回収配管に流入した前記硫酸含有液が流入する硫酸タンクと、
前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を測定する硫酸濃度計と、
前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充ユニットと、
前記硫酸含有液供給ユニットおよび切り換えユニットを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第1SPMを作成し、作成された前記第1SPMを、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第1SPM供給工程と、
前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、前記第1SPMよりも硫酸濃度が高い前記硫酸含有液を作成し、作成された前記硫酸含有液を、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する硫酸含有液供給工程と、
前記切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、前記排液配管に流入させる排液工程と、
前記切り換えユニットを制御することにより、前記硫酸含有液供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記硫酸含有液を、前記回収配管に流入させ、前記回収配管に流入した前記硫酸含有液を前記硫酸タンクに流入させる回収工程と、
前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、前記回収配管によって案内された前記硫酸含有液に含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、
前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を、前記硫酸濃度計に測定させる硫酸濃度測定工程と、
前記硫酸濃度測定工程において測定された硫酸濃度が下限値を下回る場合に、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸補充ユニットによって前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充工程とを実行する、基板処理装置。
【請求項17】
前記硫酸含有液は、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第2SPMであり、
前記硫酸含有液供給ユニットは、硫酸および過酸化水素水を混合することにより、前記SPMを作成し、作成された前記SPMを前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給するSPM供給ユニットであり、
前記硫酸含有液供給工程は、前記第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する第2SPM供給工程である、請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
前記基板処理装置は、硫酸を貯留しており、前記回収配管に流入した前記第2SPMが流入する硫酸タンクと、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を貯留する高濃度硫酸タンクと、をさらに備え、
前記第1SPM供給工程は、前記高濃度硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、
前記第2SPM供給工程は、前記硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含む、請求項17に記載の基板処理装置。
【請求項19】
硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理装置であって、
少なくとも一部がレジストで覆われた基板を保持する基板保持ユニットと、
過酸化水素水に対する硫酸の比を変更する混合比変更ユニットを含み、硫酸および過酸化水素水を混合することにより、前記SPMを作成し、作成された前記SPMを前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給するSPM供給ユニットと、
前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する排液配管と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する回収配管と、
前記基板保持ユニットに保持されている基板から排出された液体が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切り換えユニットと、
硫酸を貯留しており、前記回収配管に流入した前記SPMが流入する硫酸タンクと、
前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を貯留する高濃度硫酸タンクと、
前記SPM供給ユニットおよび切り換えユニットを制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第1SPMを作成し、作成された前記第1SPMを、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第1SPM供給工程と、
前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第2SPMを作成し、作成された前記第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第2SPM供給工程と、
前記切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、前記排液配管に流入させる排液工程と、
前記切り換えユニットを制御することにより、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる回収工程と、
前記SPM供給ユニットを制御することにより、前記回収配管によって案内された前記第2SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、を実行し、
前記第1SPM供給工程は、前記高濃度硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、
前記第2SPM供給工程は、前記硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含む、基板処理装置。
【請求項20】
前記基板処理装置は、
前記排液配管に接続されており、前記基板保持ユニットに保持されている基板を取り囲む第1のガードと、
前記回収配管に接続されており、前記基板保持ユニットに保持されている基板を取り囲む第2のガードと、をさらに備え、
前記切り換えユニットは、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記基板から排出された液体を前記第1のガードが受け止める第1状態と、前記基板から排出された液体を前記第2のガードが受け止める第2状態との間で切り換えるガード切り換えユニットと、を含み、
前記制御装置は、
前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板から排出された前記第1SPMを、前記第1のガードに受け止めさせる第1SPM捕獲工程と、
前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第2SPM供給工程において前記基板から排出された前記第2SPMを、前記第2のガードに受け止めさせる第2SPM捕獲工程と、をさらに実行する、請求項17~19のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項21】
前記制御装置は、前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止されるのと同時にまたは停止された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換えるガード切り換え工程をさらに実行する、請求項20に記載の基板処理装置。
【請求項22】
前記ガード切り換え工程は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMの供給が開始された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換える工程を含む、請求項21に記載の基板処理装置。
【請求項23】
前記ガード切り換えユニットは、前記第1のガードおよび第2のガードを個別に昇降させるガード昇降ユニットを含み、
前記ガード切り換え工程は、前記基板から排出された前記第2SPMを前記第1のガードに受け止めさせながら、前記ガード昇降ユニットに前記基板と前記第1のガードとを上下方向に相対的に移動させる相対移動工程を含む、請求項22に記載の基板処理装置。
【請求項24】
前記SPM供給ユニットは、前記基板保持ユニットに保持されている基板に向けて前記SPMを吐出するノズルを含み、
前記第1SPM供給工程は、硫酸および過酸化水素水を前記ノズル内で混合し、前記ノズル内で作成された前記第1SPMを前記ノズルから前記基板に向けて吐出するノズル内混合工程を含む、請求項17~23のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項25】
前記制御装置は、前記混合比変更ユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程および第2SPM供給工程において前記SPMを前記基板に供給しながら、過酸化水素水に対する硫酸の比を前記第1混合比から前記第2混合比まで連続的に増加させる混合比連続増加工程をさらに実行する、請求項17~24のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項26】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも長い、請求項17~25のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項27】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも短い、請求項17~25のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項28】
前記制御装置は、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第3混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第3SPMを作成し、作成された前記第3SPMを、前記第1SPM供給工程において前記基板への前記第1SPMの供給が開始される前に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第3SPM供給工程をさらに実行する、請求項17~27のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項29】
前記第2SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第2SPMの流量は、前記第1SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第1SPMの流量よりも大きい、請求項17~28のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項30】
前記制御装置は、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第2混合比よりも大きい第4混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第4SPMを作成し、作成された前記第4SPMを、前記第2SPM供給工程の後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第4SPM供給工程をさらに実行し、
前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記第4SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第4SPMを、前記回収配管に流入させる工程とを含み、
前記再混合工程は、前記回収配管によって案内された前記第2SPMおよび第4SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する工程を含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理方法および基板処理装置に関する。処理対象の基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel Display)用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板を処理する基板処理装置が用いられる。
特許文献1には、基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている。この基板処理装置は、基板を水平に保持しながら回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板に向けてSPM(硫酸と過酸化水素水との混合液)を吐出するノズルとを備えている。特許文献1の段落0061および0065には、レジスト膜を除去するためにSPMを基板に供給し、基板に供給されたSPMを回収することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-019016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、基板に供給されたSPMを回収することが開示されているものの、硫酸および過酸化水素水の濃度については開示されていない。過酸化水素水の濃度、つまり、混合前の硫酸および過酸化水素水の体積に対する混合前の過酸化水素水の体積の割合を増加させると、SPMの除去能力(SPMがレジストを除去する能力)が高まる。
その一方で、過酸化水素水の濃度を増加させると、回収されたSPMに含まれる硫酸の濃度が低下してしまう。この場合、SPMの回収および再利用を繰り返すと、回収されたSPMに含まれる硫酸の濃度は、短期間で再利用に適さない値まで低下してしまう。回収されたSPMに含まれる硫酸の濃度を高めるために過酸化水素水の濃度を減少させると、回収される前のSPMの除去能力が低下してしまう。したがって、特許文献1に記載の発明では、基板から効率よくレジストを除去しながら、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができない。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、基板から効率よくレジストを除去しながら、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる基板処理方法および基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の一実施形態は、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理方法であって、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第1SPMを基板に供給する第1SPM供給工程と、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する第2SPM供給工程と、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、排液配管に流入させる排液工程と、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、回収配管に流入させる回収工程と、前記回収配管によって案内された前記第2SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、を含む、基板処理方法を提供する
【0007】
この構成によれば、第1SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水が混合され、作成された第1SPMが基板に供給される。そして、第1SPMの供給が停止された後、第2SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水が混合され、作成された第2SPMが基板に供給される。これにより、第1SPMおよび第2SPMが基板に供給され、レジストが基板から除去される。
【0008】
第1SPMを作成するときは、硫酸および過酸化水素水が第1混合比で混合される。第2SPMを作成するときは、硫酸および過酸化水素水が第2混合比で混合される。第1混合比および第2混合比は、いずれも、混合前の過酸化水素水の体積に対する混合前の硫酸の体積の比を表す。第1混合比は、第2混合比よりも小さい。したがって、第1SPMに含まれる過酸化水素水の濃度は、第2SPMに含まれる過酸化水素水の濃度よりも高い。
【0009】
過酸化水素水の濃度が相対的に高いので、第1SPMは、第2SPMよりも高い除去能力を有している。したがって、レジストを効率的に基板から除去できる。そして、第1SPMが基板に供給された後、第2SPMが基板に供給される。第2SPMは除去能力が第1SPMより劣るものの、第1SPMの供給によって殆ど全てのレジストが基板から除去されているので、比較的除去し易いレジストしか基板に残っていない。そのため、除去能力が劣る第2SPMであっても、レジストを基板から確実に除去できる。
【0010】
基板に供給され基板から排出された第1SPMは、回収配管ではなく、排液配管に流入する。基板から排出された第1SPMは、過酸化水素水の濃度が相対的に高く、硫酸の濃度が相対的に低い。それだけでなく、基板から排出された第1SPMは、第1SPMとレジストとの反応によって生じた多くの汚染物質(レジストの炭化物など)を含んでいる。したがって、基板から排出された第1SPMは、回収に適さない。
【0011】
その一方で、基板から排出された第2SPMは、硫酸の濃度が相対的に高い。さらに、基板から排出された第2SPMに含まれる汚染物質の量は、基板から排出された第1SPMに含まれる汚染物質の量よりも少ない。したがって、硫酸の濃度が相対的に高く、汚染物質の含有量が少ない第2SPMが、回収配管に導かれ、過酸化水素水と再び混合される。これにより、第2SPMに含まれる硫酸が過酸化水素水と反応し、新たなSPMが作成される。そのため、SPMの廃棄量を減らすことができる。
【0012】
このように、硫酸の濃度、つまり、混合前の硫酸および過酸化水素水の体積に対する混合前の硫酸の体積の割合が大きいときに、SPMを回収するので、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる。さらに、硫酸の濃度が高い状態を維持するのではなく、SPMの回収を開始する前に、過酸化水素水の濃度が高く、十分な除去能力を有するSPMを基板に供給するので、レジストを効率的に基板から除去できる。したがって、基板から効率よくレジストを除去しながら、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる。
【0013】
第1SPMの供給は、第1SPM、または、混合前の硫酸および過酸化水素水を基板に向けて吐出することを意味する。これは、第2SPMや後述する第3SPMについても同様である。つまり、硫酸および過酸化水素水は、基板に向けてノズルから吐出される前に混合されてもよいし、複数のノズルから吐出された後に混合されてもよい。後者の場合、硫酸および過酸化水素水は、複数のノズルと基板との間の空間で混合されてもよいし、基板上で混合されてもよい。
【0014】
前記一実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理方法に加えてもよい。
前記基板処理方法は、前記第1SPM供給工程において前記基板から排出された前記第1SPMを、前記基板を取り囲んでおり、前記排液配管に接続された第1のガードに受け止めさせる第1SPM捕獲工程と、前記第2SPM供給工程において前記基板から排出された前記第2SPMを、前記基板を取り囲んでおり、前記回収配管に接続された第2のガードに受け止めさせる第2SPM捕獲工程と、をさらに含む
【0015】
この構成によれば、基板から排出された第1SPMが、基板を取り囲む第1のガードに受け止められる。基板から排出された第2SPMは、基板を取り囲む第2のガードに受け止められる。第1のガードに受け止められた第1SPMは、第1のガードに接続された排液配管に流入する。第2のガードに受け止められた第2SPMは、第2のガードに接続された回収配管に流入する。
【0016】
基板から排出された第1SPMは、多くの汚染物質を含んでいる。したがって、第1のガードが第1SPMを受け止め後は、汚染物質が第1のガードの内壁に残留している場合がある。基板から排出された第2SPMを第1のガードで受け止めて回収すると、第1のガードに付着している汚染物質が、第2SPMに混入する場合がある。したがって、第1のガードとは異なる第2のガードに第2SPMを受け止めさせることにより、回収されたSPMに含まれる汚染物質の量を減らすことができる。
【0017】
前記基板処理方法は、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止されるのと同時にまたは停止された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記基板から排出された液体を前記第1のガードが受け止める第1状態から前記基板から排出された液体を前記第2のガードが受け止める第2状態に切り換えるガード切り換え工程をさらに含む
【0018】
この構成によれば、第1SPMの供給が停止されたときに基板から排出された第1SPMは、第1のガードに受け止められる。その後、第1のガードおよび第2のガードの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ、基板から排出された第2SPMが第2のガードに受け止められる。つまり、汚染物質の含有量が多い第1SPMの排出が終了した後に、第1のガードが基板に直接対向した状態から第2のガードが基板に直接対向した状態に切り換えられる。これにより、汚染物質の含有量が多い第1SPMで第2のガードが汚染されることを防止できる。
【0019】
前記ガード切り換え工程は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMの供給が開始された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換える工程を含む
この構成によれば、基板から排出された第1SPMが第1のガードに受け止められる。その後、第2SPMが基板に供給され、基板から排出される。第2SPMの供給が開始されたときに基板から排出された第2SPMは、第1のガードに受け止められる。その後、第1のガードおよび第2のガードの状態が第1状態から第2状態に切り換えられ、基板から排出された第2SPMが第2のガードに受け止められる。
【0020】
基板から排出された第2SPMに含まれる汚染物質の量は、基板から排出された第1SPMに含まれる汚染物質の量よりも少ない。したがって、汚染物質の含有量が多い第1SPMが第1のガードに受け止められ、その後、汚染物質の含有量が少ない第2SPMが第1のガードに受け止められる。これにより、第1のガードの内壁に付着している汚染物質が洗い流される。第1のガードに付着している汚染物質が乾くと、基板が配置された空間を汚染物質が漂い、当該基板に付着する場合がある。したがって、基板の汚染を低減できる。
【0021】
さらに、第2SPMの供給を開始したときは、比較的除去し易いレジストが基板に残っており、基板から排出された第2SPMに汚染物質が含まれる場合がある。この場合、第2SPMの供給を開始してからある程度の時間が経つと、全てのレジストが基板から除去され、汚染物質を含まないまたは殆ど含まない第2SPMが基板から排出される。
第2SPMの供給を開始したときに基板から排出された第2SPMに汚染物質が含まれる場合でも、このような第2SPMは、第1のガードを介して排液配管に導かれる。したがって、汚染物質を含む第2SPMが回収配管に回収されることを防止できる。さらに、このような第2SPMを利用して第1のガードを洗浄するので、SPMの使用量を増やすことなく、第1のガードを洗浄できる。
【0022】
前記ガード切り換え工程は、前記基板から排出された前記第2SPMを前記第1のガードに受け止めさせながら、前記基板と前記第1のガードとを上下方向に相対的に移動させる相対移動工程を含む
この構成によれば、基板から排出された第2SPMが第1のガードに受け止められているときに、基板と第1のガードとを上下方向に相対的に移動させる。これにより、第2SPMが第1のガードの内壁に直接当たる位置が、第1のガードに対して上下に移動する。これにより、第1のガードに対して第2SPMが直接当たる範囲が広がるので、第1のガードの内壁に付着している汚染物質を効果的に除去できる。
【0023】
前記相対移動工程は、前記基板だけまたは前記第1のガードだけを上下方向に移動させる工程であってもよいし、前記基板および第1のガードの両方を上下方向に移動させる工程であってもよい。前記相対移動工程は、前記第1のガードおよび第2のガードの状態が前記第2状態に切り換わるまで、前記第1のガードを下方向にだけに移動させる工程であってもよい。また、前記相対移動工程は、前記第1のガードおよび第2のガードの状態が前記第2状態に切り換わる前に、前記第1のガードを一旦停止させる工程を含んでいてもよい。
【0024】
前記第1SPM供給工程は、硫酸および過酸化水素水をノズル内で混合し、前記ノズル内で作成された前記第1SPMを前記ノズルから前記基板に向けて吐出するノズル内混合工程を含む
この構成によれば、硫酸および過酸化水素水が、ノズルに供給され、ノズル内で混合される。これにより、第1SPMが作成される。その後、第1SPMが基板に供給される。硫酸および過酸化水素水の反応によって生成されるペルオキソ一硫酸(カロ酸とも呼ばれる。)の酸化能力は、時間の経過に伴って低下する。硫酸および過酸化水素水を混合した直後に、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMを基板に供給すれば、このような酸化能力の低下を最小限にとどめることができる。これにより、除去能力が高い第1SPMを基板に供給することができ、レジストの除去に要する時間を短縮できる。
【0025】
前記基板処理方法は、前記第1SPM供給工程および第2SPM供給工程において前記SPMを前記基板に供給しながら、過酸化水素水に対する硫酸の比を前記第1混合比から前記第2混合比まで連続的に増加させる混合比連続増加工程をさらに含む
この構成によれば、SPMが基板に供給されているときに、混合比(過酸化水素水に対する硫酸の比)を、第1混合比から第2混合比に連続的に増加させる。これにより、第1SPMが基板に供給され、その後、第2SPMが基板に供給される。SPMに含まれる過酸化水素水が減少し、過酸化水素水の濃度が低下すると、SPMの温度が低下する。混合比を連続的に変更すれば、SPMの温度を連続的に変化させることができる。したがって、基板の急激な温度変化を防止しながら、レジストを効率的に除去できる。
【0026】
前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記回収配管に流入した前記第2SPMを、硫酸を貯留する硫酸タンクに流入させる工程と、を含み、前記基板処理方法は、前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を測定する硫酸濃度測定工程と、前記硫酸濃度測定工程において測定された硫酸濃度が下限値を下回る場合に、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充工程とをさらに含む
【0027】
回収された第2SPMは、硫酸以外の成分を含むものの、その半分以上は硫酸である。SPMの回収および再利用を繰り返すと、回収された硫酸の硫酸濃度が徐々に低下していく。言い換えると、回収されたSPMに含まれる硫酸の水分濃度が徐々に上昇していく。回収配管に流入した第2SPMは、硫酸を貯留する硫酸タンクに回収される。硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度が測定され、測定された硫酸濃度が下限値を下回ると、硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸が硫酸タンク内に供給される。これにより、硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を再利用に適した範囲内に維持できる。
【0028】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも長い
この構成によれば、第1SPMが長時間基板に供給される。つまり、第1SPMが基板に供給されている時間は、第2SPMが基板に供給されている時間よりも長い。したがって、除去能力が高いSPMが長時間基板に供給される。そのため、第2SPMが長時間基板に供給される場合に比べて、レジストの除去に要する時間を短縮できる。
【0029】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも短い
この構成によれば、第2SPMが長時間基板に供給される。つまり、第1SPMが基板に供給されている時間は、第2SPMが基板に供給されている時間よりも短い。したがって、第1SPMが長時間基板に供給される場合に比べて、SPMが回収される時間を延ばすことができる。これにより、再利用されるSPMを増やすことができ、SPMの廃棄量を減らすことができる。
【0030】
前記基板処理方法は、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第3混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第3SPMを、前記第1SPM供給工程において前記基板への前記第1SPMの供給が開始される前に前記基板に供給する第3SPM供給工程をさらに含む
【0031】
この構成によれば、過酸化水素水の濃度が高い第1SPMを基板に供給する前に、硫酸の濃度が高い第3SPMを基板に供給する。強度が低いパターンが基板に形成されている場合、過酸化水素水の濃度が高いSPMを基板に供給してレジストの除去を開始すると、パターンがダメージを受けることがある。したがって、過酸化水素水の濃度を段階的または連続的に増加させれば、強度が低いパターンが基板に形成されている場合でも、パターンのダメージを減らすことができる。
【0032】
前記基板処理方法は、前記第1SPM供給工程および第3SPM供給工程において前記SPMを前記基板に供給しながら、過酸化水素水に対する硫酸の比を前記第3混合比から前記第1混合比まで連続的に減少させる混合比連続減少工程をさらに含んでいてもよい。この場合、過酸化水素水に対する硫酸の比を段階的に減少させる場合に比べて、パターンのダメージを減らすことができる。第3混合比は、第2混合比と等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
前記第2SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第2SPMの流量(単位時間あたりに吐出される量。以下、同様)は、前記第1SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第1SPMの流量よりも大きい第1および第2SPMの少なくとも一方の流量が時間の経過に伴って変化する場合は、第2SPMの流量の最大値が、第1SPMの流量の最大値より大きければよい。基板に供給される第2SPMの総量は、基板に供給される第1SPMの総量より多いことが好ましい。
【0034】
この構成によれば、第1SPMの供給を停止した後に、過酸化水素水に対する硫酸の比を第2混合比まで高めると共に、第1SPMの流量よりも大きい流量で第2SPMを基板に向けて吐出する。過酸化水素水の濃度の減少によって反応熱が減少するものの、基板に向けて吐出されるSPMの流量が増加するので、基板上のSPMの温度を上昇させることができる。これにより、過酸化水素水の濃度低下に伴う剥離能力の低下を補うことができる。
【0035】
前記基板処理方法は、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第2混合比よりも大きい第4混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第4SPMを、前記第2SPM供給工程の後に前記基板に供給する第4SPM供給工程をさらに含み、前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記第4SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第4SPMを、前記回収配管に流入させる工程とを含み、前記再混合工程は、前記回収配管によって案内された前記第2SPMおよび第4SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する工程を含む
【0036】
この構成によれば、第2SPMが基板に供給された後に、第2SPMよりも硫酸の濃度が高い第4SPMが基板に供給される。第4SPMは、第2SPMと同様に、回収配管に流入し、新たなSPMの作成に用いられる。したがって、回収されたSPMに含まれる硫酸の濃度を段階的または連続的に高めることができる。これにより、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる。
【0037】
前記第1SPM供給工程は、前記第2SPMの作成に用いられる硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、前記第2SPM供給工程は、前記回収配管に流入した前記第2SPMを含む硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含む
【0038】
第2SPMの回収を続けると、回収された第2SPMが供給される硫酸タンク内の硫酸における硫酸の濃度が次第に低下し、硫酸タンク内の硫酸を用いて作成されたSPMの剥離能力が低下する場合がある。高濃度の硫酸、つまり、高濃度硫酸タンク内の硫酸を用いてSPMを作成すれば、剥離能力が高いSPMをレジストの表面に接触させることができる。したがって、レジストの表面に硬化層が形成されていても、レジストの硬化層を破壊できる。硬化層が破壊された後は、硬化層の亀裂を通ってSPMがレジストの内部(硬化していないレジスト)に浸透するので、回収されたSPMを含む硫酸を用いて作成されたSPMを基板に供給しても、レジストを剥離できる。これにより、高濃度の硫酸の使用量を抑えながら、基板上のレジストを短時間で確実に剥離できる。
【0039】
発明の他の実施形態は、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理装置であって、少なくとも一部がレジストで覆われた基板を保持する基板保持ユニットと、過酸化水素水に対する硫酸の比を変更する混合比変更ユニットを含み、硫酸および過酸化水素水を混合することにより、前記SPMを作成し、作成された前記SPMを前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給するSPM供給ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する排液配管と、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する回収配管と、前記基板保持ユニットに保持されている基板から排出された液体が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切り換えユニットと、前記SPM供給ユニットおよび切り換えユニットを制御する制御装置とを備える、基板処理装置を提供する
【0040】
前記制御装置は、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第1SPMを作成し、作成された前記第1SPMを、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第1SPM供給工程と、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第2混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第2SPMを作成し、作成された前記第2SPMを、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第2SPM供給工程と、前記切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、前記排液配管に流入させる排液工程と、前記切り換えユニットを制御することにより、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる回収工程と、前記SPM供給ユニットを制御することにより、前記回収配管によって案内された前記第2SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、を実行する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0041】
前記他の実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記基板処理装置に加えてもよい。
前記基板処理装置は、前記排液配管に接続されており、前記基板保持ユニットに保持されている基板を取り囲む第1のガードと、前記回収配管に接続されており、前記基板保持ユニットに保持されている基板を取り囲む第2のガードと、をさらに備え、前記切り換えユニットは、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記基板から排出された液体を前記第1のガードが受け止める第1状態と、前記基板から排出された液体を前記第2のガードが受け止める第2状態との間で切り換えるガード切り換えユニットと、を含み、前記制御装置は、前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板から排出された前記第1SPMを、前記第1のガードに受け止めさせる第1SPM捕獲工程と、前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第2SPM供給工程において前記基板から排出された前記第2SPMを、前記第2のガードに受け止めさせる第2SPM捕獲工程と、をさらに実行するこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0042】
前記制御装置は、前記ガード切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止されるのと同時にまたは停止された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換えるガード切り換え工程をさらに実行するこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0043】
前記ガード切り換え工程は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMの供給が開始された後に、前記第1のガードおよび第2のガードの状態を、前記第1状態から前記第2状態に切り換える工程を含むこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
前記ガード切り換えユニットは、前記第1のガードおよび第2のガードを個別に昇降させるガード昇降ユニットを含み、前記ガード切り換え工程は、前記基板から排出された前記第2SPMを前記第1のガードに受け止めさせながら、前記ガード昇降ユニットに前記基板と前記第1のガードとを上下方向に相対的に移動させる相対移動工程を含むこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0044】
前記SPM供給ユニットは、前記基板保持ユニットに保持されている基板に向けて前記SPMを吐出するノズルを含み、前記第1SPM供給工程は、硫酸および過酸化水素水を前記ノズル内で混合し、前記ノズル内で作成された前記第1SPMを前記ノズルから前記基板に向けて吐出するノズル内混合工程を含むこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0045】
前記制御装置は、前記混合比変更ユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程および第2SPM供給工程において前記SPMを前記基板に供給しながら、過酸化水素水に対する硫酸の比を前記第1混合比から前記第2混合比まで連続的に増加させる混合比連続増加工程をさらに実行するこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0046】
前記基板処理装置は、硫酸を貯留しており、前記回収配管に流入した前記第2SPMが流入する硫酸タンクと、前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を測定する硫酸濃度計と、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充ユニットと、をさらに備え、前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記回収配管に流入した前記第2SPMを前記硫酸タンクに流入させる工程と、を含み、前記制御装置は、前記硫酸タンク内の硫酸の硫酸濃度を、前記硫酸濃度計に測定させる硫酸濃度測定工程と、前記硫酸濃度測定工程において測定された硫酸濃度が下限値を下回る場合に、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を前記硫酸補充ユニットによって前記硫酸タンク内に供給する硫酸補充工程とをさらに実行するこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0047】
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも長いこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
前記第1SPM供給工程において前記第1SPMが前記基板に供給されている時間は、前記第2SPM供給工程において前記第2SPMが前記基板に供給されている時間よりも短いこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0048】
前記制御装置は、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第1混合比よりも大きい第3混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第3SPMを作成し、作成された前記第3SPMを、前記第1SPM供給工程において前記基板への前記第1SPMの供給が開始される前に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第3SPM供給工程をさらに実行するこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0049】
前記2SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第2SPMの流量は、前記第1SPM供給工程において前記基板に向けて吐出される前記第1SPMの流量よりも大きいこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
前記制御装置は、前記SPM供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表し、前記第2混合比よりも大きい第4混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第4SPMを作成し、作成された前記第4SPMを、前記第2SPM供給工程の後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第4SPM供給工程をさらに実行し、前記回収工程は、前記第2SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第2SPMを、前記回収配管に流入させる工程と、前記第4SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第4SPMを、前記回収配管に流入させる工程とを含み、前記再混合工程は、前記回収配管によって案内された前記第2SPMおよび第4SPMに含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する工程を含むこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0050】
前記基板処理装置は、硫酸を貯留しており、前記回収配管に流入した前記第2SPMが流入する硫酸タンクと、前記硫酸タンク内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸を貯留する高濃度硫酸タンクと、をさらに備え、前記第1SPM供給工程は、前記高濃度硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第1混合比で混合することにより前記第1SPMを作成する工程を含み、前記第2SPM供給工程は、前記硫酸タンク内の硫酸と過酸化水素水とを前記第2混合比で混合することにより前記第2SPMを作成する工程を含むこの構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【0051】
発明のさらに他の実施形態は、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理方法であって、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合することにより作成された第1SPMを基板に供給する第1SPM供給工程と、前記第1SPMよりも高い濃度で硫酸を含む硫酸含有液を、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に前記基板に供給する硫酸含有液供給工程と、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、排液配管に流入させる排液工程と、前記硫酸含有液供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記硫酸含有液を、回収配管に流入させる回収工程と、前記回収配管によって案内された前記硫酸含有液に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、基板処理方法を提供する
【0052】
基板に供給され基板から排出された第1SPMは、回収配管ではなく、排液配管に流入する。基板から排出された第1SPMは、過酸化水素水の濃度が相対的に高く、硫酸の濃度が相対的に低い。それだけでなく、基板から排出された第1SPMは、第1SPMとレジストとの反応によって生じた多くの汚染物質(レジストの炭化物など)を含んでいる。したがって、基板から排出された第1SPMは、回収に適さない。
【0053】
その一方で、基板から排出された硫酸含有液は、硫酸の濃度が相対的に高い。さらに、基板から排出された硫酸含有液に含まれる汚染物質の量は、基板から排出された第1SPMに含まれる汚染物質の量よりも少ない。したがって、硫酸の濃度が相対的に高く、汚染物質の含有量が少ない硫酸含有液が、回収配管に導かれ、過酸化水素水と再び混合される。これにより、硫酸含有液に含まれる硫酸が過酸化水素水と反応し、新たなSPMが作成される。そのため、SPMの廃棄量を減らすことができる。
【0054】
このように、硫酸の濃度が高い硫酸含有液を回収することができる。さらに、硫酸の濃度が高い状態を維持するのではなく、レジストを除去する液体の回収を開始する前に、過酸化水素水の濃度が高く、十分な除去能力を有する第1SPMを基板に供給する。これにより、レジストを効率的に基板から除去できる。したがって、基板から効率よくレジストを除去しながら、硫酸の濃度が高い硫酸含有液を回収することができる。
【0055】
発明の別の実施形態は、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMで基板からレジストを除去する基板処理装置であって、少なくとも一部がレジストで覆われた基板を保持する基板保持ユニットと、過酸化水素水に対する硫酸の比を変更する混合比変更ユニットを含み、硫酸および過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成し、硫酸を含む硫酸含有液を前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する硫酸含有液供給ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する排液配管と、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給され当該基板から排出された液体が流入する回収配管と、前記基板保持ユニットに保持されている基板から排出された液体が流入する配管を、前記排液配管および回収配管の間で切り換える切り換えユニットと、前記硫酸含有液供給ユニットおよび切り換えユニットを制御する制御装置とを備える。基板処理装置を提供する
【0056】
前記制御装置は、前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、過酸化水素水に対する硫酸の比を表す第1混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第1SPMを作成し、作成された前記第1SPMを、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する第1SPM供給工程と、前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、前記第1SPMよりも硫酸濃度が高い前記硫酸含有液を作成し、作成された前記硫酸含有液を、前記第1SPM供給工程において前記第1SPMの供給が停止された後に、前記基板保持ユニットに保持されている基板に供給する硫酸含有液供給工程と、前記切り換えユニットを制御することにより、前記第1SPM供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記第1SPMを、前記排液配管に流入させる排液工程と、前記切り換えユニットを制御することにより、前記硫酸含有液供給工程において前記基板に供給され前記基板から排出された前記硫酸含有液を、前記回収配管に流入させる回収工程と、前記硫酸含有液供給ユニットを制御することにより、前記回収配管によって案内された前記硫酸含有液に含まれる硫酸に過酸化水素水を混合することにより前記SPMを作成する再混合工程と、を実行する。この構成によれば、前述の効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
図2】基板処理装置に備えられた処理ユニットの構成例を説明するための図解的な断面図である。
図3】基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図4】基板処理装置によって行われる基板の処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図5】SPM工程における、硫酸および過酸化水素水の混合比の推移と、第1のガードおよび第2のガードの動作等を示すタイミングチャートである。
図6】SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水を混合し、基板から回収されたSPMを別の基板に供給するときの流れを示すフローチャートである。
図7】回収された硫酸の濃度の推移を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態に係るタイミングチャートであり、SPM工程における、硫酸および過酸化水素水の混合比の推移を示している。
図9】本発明の第3実施形態に係るタイミングチャートである。
図10】本発明の第4実施形態に係るタイミングチャートである。
図11】本発明の第5実施形態に係るSPM供給ユニットの硫酸供給部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の内部のレイアウトを説明するための図解的な平面図である。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、基板Wを収容する複数の基板収容器Cを保持する複数のロードポートLPと、複数のロードポートLPから搬送された基板Wを薬液等の処理液で処理する複数(たとえば12台)の処理ユニット2と、複数のロードポートLPから複数の処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボットと、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。搬送ロボットは、ロードポートLPと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送するインデクサロボットIRと、インデクサロボットIRと処理ユニット2との間の経路上で基板Wを搬送する基板搬送ロボットCRとを含む。
【0059】
基板処理装置1は、バルブ等を収容する複数の流体ボックス4と、硫酸を貯留する硫酸タンク27(図2参照)等を収容する貯留ボックス6とを含む。処理ユニット2および流体ボックス4は、基板処理装置1のフレーム5の中に配置されており、基板処理装置1のフレーム5で覆われている。貯留ボックス6は、図1の例では、基板処理装置1のフレーム5の外に配置されているが、フレーム5の中に収容されていてもよい。貯留ボックス6は、複数の流体ボックス4に対応する1つのボックスであってもよいし、流体ボックス4に一対一対応で設けられた複数のボックスであってもよい。
【0060】
12台の処理ユニット2は、平面視において基板搬送ロボットCRを取り囲むように配置された4つの塔を形成している。各塔は、上下に積層された3台の処理ユニット2を含む。4台の貯留ボックス6は、4つの塔のそれぞれに対応している。同様に、4台の流体ボックス4は、それぞれ4つの塔に対応している。各貯留ボックス6内の硫酸タンク27に貯留されている硫酸は、その貯留ボックス6に対応する流体ボックス4を介して、この貯留ボックス6に対応する3台の処理ユニット2に供給される。
【0061】
図2は、基板処理装置1に備えられた処理ユニット2の構成例を説明するための図解的な断面図である。
処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバ7と、チャンバ7内で1枚の基板Wを水平な姿勢で保持して、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック(基板保持ユニット)8と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面に、薬液の一例としてのSPM(硫酸過酸化水素水混合液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture))を供給するためのSPM供給ユニット(薬液供給ユニット)9と、スピンチャック8に保持されている基板Wの上面にリンス液を供給するためのリンス液供給ユニット10と、スピンチャック8を取り囲む筒状の処理カップ11とを含む。
【0062】
チャンバ7は、箱状の隔壁12と、隔壁12の上部から隔壁12内(チャンバ7内に相当)に清浄空気を送る送風ユニットとしてのFFU(ファン・フィルタ・ユニット)14と、隔壁12の下部からチャンバ7内の気体を排出する排気装置(図示しない)とを含む。FFU14は隔壁12の上方に配置されており、隔壁12の天井に取り付けられている。FFU14は、隔壁12の天井からチャンバ7内に清浄空気を送る。排気装置(図示しない)は、処理カップ11に接続された排気ダクト13を介して処理カップ11の底部に接続されており、処理カップ11の底部から処理カップ11内の気体を吸引する。FFU14および排気装置(図示しない)により、チャンバ7内にダウンフロー(下降流)が形成される。
【0063】
スピンチャック8として、基板Wを水平方向に挟んで基板Wを水平に保持する挟持式のチャックが採用されている。具体的には、スピンチャック8は、スピンモータ(回転ユニット)Mと、このスピンモータMの駆動軸と一体化されたスピン軸15と、スピン軸15の上端に略水平に取り付けられた円板状のスピンベース16とを含む。
スピンベース16は、基板Wの外径よりも大きな外径を有する水平な円形の上面16aを含む。上面16aには、その周縁部に複数個(3個以上。たとえば6個)の挟持部材17が配置されている。複数個の挟持部材17は、スピンベース16の上面周縁部において、基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。
【0064】
SPM供給ユニット9は、基板Wの上面に向けてSPMを吐出するSPMノズル18と、SPMノズル18が先端部に取り付けられたノズルアーム19と、ノズルアーム19を移動させることにより、SPMノズル18を移動させるノズル移動ユニット20とを含む。SPMノズル18は、たとえば、連続流の状態でSPMを吐出するストレートノズルである。SPMノズル18は、たとえば、基板Wの上面に垂直な方向に処理液を吐出する垂直姿勢でノズルアーム19に取り付けられている。ノズルアーム19は水平方向に延びている。
【0065】
ノズル移動ユニット20は、処理カップ11のまわりに設定された鉛直な揺動軸線まわりにノズルアーム19を水平移動させることにより、SPMノズル18を水平に移動させる。ノズル移動ユニット20は、SPMノズル18から吐出されたSPMが基板Wの上面に着液する処理位置と、SPMノズル18が平面視でスピンチャック8の周囲に位置する退避位置との間で、SPMノズル18を水平に移動させる。この実施形態では、処理位置は、たとえば、SPMノズル18から吐出されたSPMが基板Wの上面中央部に着液する中央位置である。
【0066】
SPM供給ユニット9は、SPMノズル18に硫酸(HSO)を供給する硫酸供給ユニット21を含む。硫酸供給ユニット21は、SPMノズル18に一端が接続された硫酸配管23と、硫酸配管23を開閉するための硫酸バルブ24と、硫酸配管23の開度を調整して、硫酸配管23を流通する硫酸の流量を調整する硫酸流量調整バルブ25と、硫酸配管23の他端が接続された硫酸供給部26とを含む。硫酸バルブ24および硫酸流量調整バルブ25は、流体ボックス4に収容されている。硫酸供給部26は貯留ボックス6に収容されている。
【0067】
図示はしないが、硫酸バルブ24は、液体が流れる内部流路と内部流路を取り囲む環状の弁座とが設けられたバルブボディと、弁座に対して移動可能な弁体と、弁体が弁座に接触する閉位置と弁体が弁座から離れた開位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様である。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。制御装置3は、アクチュエータを制御することにより、硫酸バルブ24を開閉させる。
【0068】
硫酸供給部26は、硫酸配管23に供給すべき硫酸を貯留する硫酸タンク27と、処理カップ11から回収された硫酸を貯留する回収タンク29と、回収タンク29に貯留されている硫酸を硫酸タンク27に送るための送液配管30と、回収タンク29内の硫酸を送液配管30に移動させる第1の送液装置31と、硫酸タンク27と硫酸配管23とを接続する硫酸供給配管32と、硫酸供給配管32を流通する硫酸を加熱して温度調整する温度調整器33と、硫酸タンク27内の硫酸を硫酸供給配管32に移動させる第2の送液装置34とを含む。
【0069】
温度調整器33は、硫酸タンク27の硫酸内に浸漬されていてもよいし、図2に示すように硫酸供給配管32の途中部に介装されていてもよい。硫酸供給部26は、硫酸供給配管32を流れる硫酸をろ過するフィルタ、および/または硫酸供給配管32を流れる硫酸の温度を計測する温度計をさらに備えていてもよい。なお、この実施形態では、硫酸供給部26が2つのタンクを有しているが、回収タンク29が省略され、処理カップ11から回収された硫酸が直接硫酸タンク27に供給されてもよい。第1の送液装置31および第2の送液装置34は、たとえばポンプである。ポンプは、硫酸などの液体を吸い込み、その吸い込んだ液体を吐出する。
【0070】
硫酸供給部26は、硫酸供給配管32から硫酸タンク27に硫酸を案内するリターン配管38と、リターン配管38を開閉するリターンバルブ39とを含む。リターン配管38の上流端は、硫酸バルブ24の上流で硫酸供給配管32に接続されており、リターン配管38の下流端は、硫酸タンク27に接続されている。硫酸バルブ24が閉じられ、リターンバルブ39が開かれると、硫酸タンク27から硫酸供給配管32に送られた硫酸が、リターン配管38を介して硫酸タンク27に戻る。これにより、硫酸タンク27内の硫酸が、硫酸タンク27、硫酸供給配管32、およびリターン配管38によって形成された環状の循環路を循環する。
【0071】
硫酸供給部26は、硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度を測定する硫酸濃度計C1と、新しい硫酸を硫酸タンク27に補充する硫酸補充配管28pと、硫酸補充配管28pを開閉する硫酸補充バルブ28vとを含む。硫酸濃度計C1は、硫酸タンク27に取り付けられていてもよいし、硫酸供給配管32またはリターン配管38に取り付けられていてもよい。図2は、硫酸濃度計C1がリターン配管38に取り付けられている例を示している。この場合、硫酸濃度計C1は、硫酸供給配管32を介してリターン配管38に送られた硫酸タンク27内の硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度を測定する。
【0072】
SPM供給ユニット9は、SPMノズル18に過酸化水素水(H)を供給する過酸化水素水供給ユニット22を含む。過酸化水素水供給ユニット22は、SPMノズル18に接続された過酸化水素水配管35と、過酸化水素水配管35を開閉するための過酸化水素水バルブ36と、過酸化水素水バルブ36の開度を調整して、過酸化水素水バルブ36を流通する過酸化水素水の流量を調整する過酸化水素水流量調整バルブ37とを含む。過酸化水素水バルブ36および過酸化水素水流量調整バルブ37は、流体ボックス4に収容されている。過酸化水素水配管35には、貯留ボックス6に収容された過酸化水素水供給源から、温度調整されていない常温(20~30℃)程度の過酸化水素水が供給される。
【0073】
硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36が開かれると、硫酸配管23からの硫酸および過酸化水素水配管35からの過酸化水素水が、SPMノズル18のケーシング(図示しない)内へと供給され、ケーシング内において十分に混合(攪拌)される。この混合によって、硫酸と過酸化水素水とが均一に混ざり合い、硫酸と過酸化水素水との反応によって硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)が生成される。SPMは、酸化力が強いペルオキソ一硫酸(Peroxymonosulfuric acid;HSO)を含み、混合前の硫酸および過酸化水素水の温度よりも高い温度(100℃以上。たとえば160~220℃)まで昇温させられる。生成された高温のSPMは、SPMノズル18のケーシングの先端(たとえば下端)に開口した吐出口から吐出される。
【0074】
SPMノズル18に供給される硫酸の流量は、硫酸流量調整バルブ25によって変更される。SPMノズル18に供給される過酸化水素水の流量は、過酸化水素水流量調整バルブ37によって変更される。したがって、硫酸および過酸化水素水の混合比は、硫酸流量調整バルブ25および過酸化水素水流量調整バルブ37によって変更される。硫酸および過酸化水素水の混合比(硫酸および過酸化水素水の流量比)は、たとえば、30:1(硫酸:過酸化水素水)~2:1(硫酸:過酸化水素水)の範囲内で調整される。
【0075】
リンス液供給ユニット10は、基板Wの上面に向けてリンス液を吐出するリンス液ノズル47を含む。リンス液ノズル47は、たとえば、連続流の状態で液を吐出するストレートノズルである。リンス液ノズル47は、チャンバ7の隔壁12に対して固定された固定ノズルである。リンス液ノズル47の吐出口は、基板Wの上面中央部に向けてられている。リンス液ノズル47は、チャンバ7内で移動可能なスキャンノズルであってもよい。すなわち、リンス液供給ユニット10は、リンス液ノズル47を移動させることにより、基板Wの上面に対するリンス液の着液位置を基板Wの上面内で移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0076】
リンス液ノズル47は、リンス液供給源からのリンス液を案内するリンス液配管48に接続されている。リンス液配管48の途中部には、リンス液ノズル47からのリンス液の供給/供給停止を切り換えるためのリンス液バルブ49が介装されている。リンス液バルブ49が開かれると、リンス液がリンス液配管48からリンス液ノズル47に供給され、リンス液ノズル47の下端に設けられた吐出口から吐出される。
【0077】
リンス液バルブ49が閉じられると、リンス液配管48からリンス液ノズル47へのリンス液の供給が停止される。リンス液は、たとえば脱イオン水(DIW(Deionized Water))であるが、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、アンモニア水および希釈濃度(たとえば、10ppm~100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。リンス液は、常温(20~30℃)であってもよいし、基板Wに供給される前に加熱されていてもよい。
【0078】
処理カップ11は、スピンチャック8に保持されている基板Wよりも外方(回転軸線A1から離れる方向)に配置されている。処理カップ11は、スピンベース16の側方を取り囲んでいる。スピンチャック8が基板Wを回転させている状態で、処理液が基板Wに供給されると、基板Wに供給された処理液が基板Wの周囲に振り切られる。処理液が基板Wに供給されるとき、上向きに開いた処理カップ11の上端部11aは、スピンベース16よりも上方に配置される。したがって、基板Wの周囲に排出された薬液や水などの処理液は、処理カップ11によって受け止められる。そして、処理カップ11に受け止められた処理液は、回収タンク29または図示しない廃液装置に送られる。
【0079】
処理カップ11は、基板Wの周囲に飛散した処理液(薬液またはリンス)を受け止める複数の筒状のガード43~45(第1、第2および第3のガード43,44,45)と、複数のガード43~45によって案内された処理液を受け止める環状の複数のカップ41,42と、複数のガード43~45および複数のカップ41,42を取り囲む円筒部材40とを含む。
【0080】
処理カップ11は、さらに、個々のガード43~45を独立して昇降させるガード昇降ユニット46を含む。ガード昇降ユニット46は、たとえば、動力を発生する電動モータと、電動モータの動力をいずれかのガード43~45に伝達するボールねじ機構とを含む。ガード昇降ユニット46が3つのガード43~45のうちの少なくとも一つを昇降させると、処理カップ11の状態が切り換わる。
【0081】
後述するように、処理カップ11の状態は、全てのガード43~45の上端が基板Wよりも下方に配置された退避状態(図2に示す状態)と、第1のガード43が基板Wの周端面に対向する第1の対向状態と、第2のガード44が基板Wの周端面に対向する第2の対向状態と、第3のガード45が基板Wの周端面に対向する第3の対向状態と、のうちのいずれかに切り換えられる。
【0082】
第1のカップ41は、円筒部材40の内側でスピンチャック8を取り囲んでいる。第1のカップ41は、基板Wの処理に使用された処理液が流入する環状の第1の溝50を区画している。第1の溝50の底部の最も低い箇所には、排液口51が開口しており、排液口51には、第1の排液配管52が接続されている。第1の排液配管52に導入される処理液は、排液装置に送られ、当該装置で処理される。
【0083】
第2のカップ42は、円筒部材40の内側で第1のカップ41を取り囲んでいる。第2のカップ42は、基板Wの処理に使用された処理液が流入する環状の第2の溝53を区画している。第2の溝53の底部の最も低い箇所には、排液/回収口54が開口しており、排液/回収口54には、共用配管55が接続されている。回収配管56および第2の排液配管57は、共用配管55から分岐している。回収配管56の上流端は、共用配管55に接続されており、回収配管56の下流端は、硫酸供給部26の回収タンク29に接続されている。
【0084】
回収配管56には回収バルブ58が介装されており、第2の排液配管57には排液バルブ59が介装されている。排液バルブ59が閉じられ、回収バルブ58が開かれると、共用配管55内を流れる液が回収配管56に導かれる。また、排液バルブ59が開かれ、回収バルブ58が閉じられると、共用配管55内を流れる液が第2の排液配管57に導かれる。回収バルブ58および排液バルブ59は、基板Wから排出された液が流入する配管を回収配管56と第2の排液配管57との間で切り換える回収排液切り換えユニットに含まれる。
【0085】
最も内側の第1のガード43は、円筒部材40の内側でスピンチャック8を取り囲んでいる。第1のガード43は、スピンチャック8の周囲を取り囲む円筒状の下端部63と、下端部63の上端から外方(基板Wの回転軸線A1から遠ざかる方向)に延びる筒状部64と、筒状部64の上端から鉛直上方に延びる円筒状の中段部65と、中段部65の上端から内方(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に向かって斜め上方に延びる円環状の上端部66とを含む。
【0086】
第1のガード43の下端部63は、第1のカップ41の第1の溝50上に位置している。第1のガード43の上端部66の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。図2に示すように、第1のガード43の上端部66の断面形状は直線状である。上端部66の断面形状は、円弧などの直線状以外の形状であってもよい。
【0087】
内側から2番目の第2のガード44は、円筒部材40の内側で第1のガード43を取り囲んでいる。第2のガード44は、第1のガード43を取り囲む円筒部67と、円筒部67の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に斜め上方に延びる円環状の上端部68とを有している。第2のガード44の円筒部67は、第2のカップ42の第2の溝53上に位置している。
【0088】
第2のガード44の上端部68の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。第2のガード44の上端部68の断面形状は直線状である。上端部68の断面形状は、円弧などの直線状以外の形状であってもよい。第2のガード44の上端部68は、第1のガード43の上端部66と上下方向に重なっている。第2のガード44の上端部68は、第1のガード43と第2のガード44とが最も近接した状態で第1のガード43の上端部66に対して微少な隙間を保って近接するように形成されている。
【0089】
内側から3番目の第3のガード45は、円筒部材40の内側で第2のガード44を取り囲んでいる。第3のガード45は、第2のガード44を取り囲む円筒部70と、円筒部70の上端から中心側(基板Wの回転軸線A1に近づく方向)に斜め上方に延びる円環状の上端部71とを有している。上端部71の内周端は、平面視で、スピンチャック8に保持される基板Wよりも大径の円形をなしている。上端部71の断面形状は直線状である。上端部71の断面形状は、円弧などの直線状以外の形状であってもよい。
【0090】
第1のカップ41の第1の溝50、第1のガード43の内壁43aおよびスピンチャック8のケーシングの外周は、基板Wの処理に用いられた薬液が導かれる第1の流通空間(換言すると、排液空間)S1を区画している。第2のカップ42の第2の溝53、第1のガード43の外壁43bおよび第2のガード44の内壁44aは、基板Wの処理に用いられた薬液が導かれる第2の流通空間(換言すると、回収空間)S2を区画している。第1の流通空間S1と第2の流通空間S2とは、第1のガード43によって互いに隔離されている。
【0091】
ガード昇降ユニット46は、ガード43~45の上端部が基板Wより上方に位置する上位置と、ガード43~45の上端部が基板Wより下方に位置する下位置との間で、各ガード43~45を昇降させる。ガード昇降ユニット46は、上位置と下位置との間の任意の位置で各ガード43~45を保持可能である。基板Wへの処理液の供給は、いずれかのガード43~45が基板Wの周端面に対向している状態で行われる。
【0092】
最も内側の第1のガード43を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第1の対向状態では、第1~第3のガード43~45の全てが上位置(処理高さ位置)に配置される。内側から2番目の第2のガード44を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第2の対向状態では、第2および第3のガード44,45が上位置に配置され、かつ第1のガード43が下位置に配置される。最も外側の第3のガード45を基板Wの周端面に対向させる、処理カップ11の第3の対向状態では、第3のガード45が上位置に配置され、かつ第1および第2のガード43,44が下位置に配置される。全てのガード43~45を、基板Wの周端面から退避させる退避状態(図2参照)では、第1~第3のガード43~45の全てが下位置に配置される。
【0093】
後述するように、処理カップ11を第1の対向状態から第2の対向状態に切り換えるときに、第1のガード43は、第2および第3のガード44,45が上位置に配置されている状態で、上位置と下位置との間の洗浄高さ位置に配置される。この状態は、処理カップ11が第1の対向状態から第2の対向状態に切り換わる移行状態である。処理カップ11は、第1~第3の対向状態、退避状態、および移行状態を含む複数の状態のうちのいずれかに切り換わる。移行状態は、第1のガード43が基板Wの周端面に対向する状態である。
【0094】
図3は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
制御装置3は、たとえばコンピュータである。制御装置3は、CPU等の演算ユニットと、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニットと、情報の入力および出力が行われる入出力ユニットとを有している。記憶ユニットは、演算ユニットによって実行されるコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含む。記録媒体には、制御装置3に後述するレジスト除去処理を実行させるようにステップ群が組み込まれている。
【0095】
制御装置3は、予め定められたプログラムにしたがって、スピンモータM、ノズル移動ユニット20、ガード昇降ユニット46、第1の送液装置31および第2の送液装置34、温度調整器33等の動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムにしたがって、硫酸バルブ24、過酸化水素水バルブ36、リンス液バルブ49等の開閉動作を制御する。また、制御装置3は、予め定められたプログラムにしたがって、硫酸流量調整バルブ25、過酸化水素水流量調整バルブ37の開度を調整する。硫酸濃度計C1の測定値は、制御装置3に入力される。
【0096】
図4は、基板処理装置1によって行われる基板Wの処理の一例について説明するためのフローチャートである。
以下では、図1図4を参照しながら、基板Wの処理の一例について説明する。この基板Wの処理の一例は、基板Wの上面(主面)からレジストを除去するレジスト除去処理である。レジストは、たとえば、炭素を含む化合物によって形成されたフォトレジストである。
【0097】
基板処理装置1によって基板Wが処理されるとき、制御装置3は、全てのノズルがスピンチャック8の上方から退避しており、全てのガード43~45が下位置に位置している状態で、基板Wの表面(デバイス形成面)の少なくとも一部がレジストで覆われた基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(図1参照)のハンドをチャンバ7の内部に進入させる。これにより、基板Wは、その表面が上に向けた状態でスピンチャック8に渡され、スピンチャック8に保持される(基板保持工程)。
【0098】
基板Wがスピンチャック8に保持された後、制御装置3は、スピンモータMに回転を開始させる。これにより、基板Wの回転が開始される(図4のS2。基板回転工程)。基板Wの回転速度は、予め定める液処理速度(300~1500rpmの範囲内で、たとえば500rpm)まで上昇させられ、その液処理速度に維持される。そして、基板Wの回転速度が液処理速度に達すると、制御装置3は、SPM工程(薬液供給工程)S3を実行する。
【0099】
具体的には、制御装置3は、ノズル移動ユニット20を制御して、SPMノズル18を、退避位置から処理位置に移動させる。また、制御装置3は、硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36を同時に開く。これにより、硫酸配管23を通って硫酸がSPMノズル18に供給されると共に、過酸化水素水配管35を通って過酸化水素水がSPMノズル18に供給される。SPMノズル18の内部において硫酸と過酸化水素水とが混合され、高温(たとえば、160~220℃)のSPMが生成される。そのSPMが、SPMノズル18の吐出口から吐出され、基板Wの上面中央部に着液する。
【0100】
SPMノズル18から吐出されたSPMは、基板Wの上面に着液した後、遠心力によって基板Wの上面に沿って外方に流れる。そのため、SPMが基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆うSPMの液膜が基板W上に形成される。これにより、レジストとSPMとが化学反応し、基板W上のレジストがSPMによって基板Wから除去される。基板Wの周縁部に移動したSPMは、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0101】
なお、制御装置3は、SPM工程S3において、ノズル移動ユニット20を制御して、SPMノズル18を、基板Wの上面の周縁部に対向する周縁位置と、基板Wの上面の中央部に対向する中央位置との間で移動させてもよい。この場合、基板Wの上面におけるSPMの着液位置が、基板Wの上面の全域を通過するので、基板Wの上面の全域がSPMの着液位置で走査される。これにより、基板Wの上面全域が均一に処理される。
【0102】
SPMの吐出開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36を閉じて、SPMノズル18からのSPMの吐出を停止する。これにより、SPM工程S3が終了する。その後、制御装置3がノズル移動ユニット20(図2参照)を制御して、SPMノズル18を退避位置に戻させる。
次いで、リンス液を基板Wに供給するリンス工程(図4のS4)が行われる。具体的には、制御装置3は、リンス液バルブ49を開いて、基板Wの上面中央部に向けてリンス液ノズル47にリンス液を吐出させる。リンス液ノズル47から吐出されたリンス液は、SPMによって覆われている基板Wの上面中央部に着液する。基板Wの上面中央部に着液したリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの上面上を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板W上のSPMが、リンス液によって外方に押し流され、基板Wの周囲に排出される。その結果、SPMおよびレジスト(レジスト残渣)が基板Wの上面の全域から洗い流される。リンス工程S4の開始から予め定める期間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ49を閉じて、リンス液ノズル47にリンス液の吐出を停止させる。
【0103】
次いで、基板Wを乾燥させる乾燥工程(図4のS5)が行われる。具体的には、制御装置3は、スピンモータMを制御することにより、SPM工程S3およびリンス工程S4までの回転速度よりも大きい乾燥回転速度(たとえば数千rpm)まで基板Wを加速させ、乾燥回転速度で基板Wを回転させる。これにより、大きな遠心力が基板W上の液に加わり、基板Wに付着している液が基板Wの周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから液が除去され、基板Wが乾燥する。そして、基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、制御装置3は、スピンモータMを停止させ、スピンチャック8による基板Wの回転を停止させる(図4のS6)。
【0104】
次いで、チャンバ7内から基板Wが搬出される(図4のS7)。具体的には、制御装置3は、全てのガード43~45が下位置に位置している状態で、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ7の内部に進入させる。そして、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドにスピンチャック8上の基板Wを保持させる。その後、制御装置3は、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ7内から退避させる。これにより、表面(デバイス形成面)からレジストが除去された基板Wがチャンバ7から搬出される。
【0105】
次に、SPM工程(図4のS3)における、硫酸および過酸化水素水の混合比の推移と、第1のガード43および第2のガード44の動作等について説明する。
図5は、SPM工程(図4のS3)における、硫酸および過酸化水素水の混合比の推移と、第1のガード43および第2のガード44の動作等を示すタイミングチャートである。図5において、回収のONは、基板Wから排出されたSPMが第2のガード44を介して回収配管56に流入することを表し、回収のOFFは、回収配管56へのSPMの流入が停止されていることを表す。図5において、排液のONは、基板Wから排出されたSPMが第1のガード43を介して第1の排液配管52に流入することを表し、排液のOFFは、第1の排液配管52へのSPMの流入が停止されていることを表す。以下では、図2および図5を参照する。以下の動作等は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の動作等を実行するようにプログラムされている。
【0106】
図5に示す時刻T1で硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36が開かれると、硫酸が第1HSO流量でSPMノズル18に供給され、過酸化水素水が第1H流量でSPMノズル18に供給される。そのため、硫酸および過酸化水素水は、SPMノズル18内において第1混合比(第1HSO流量/第1H流量)で混合される。これにより、第1SPMが、SPMノズル18内で作成され、SPMノズル18から基板Wの上面に向けて吐出される。その結果、基板Wの上面の全域を覆う第1SPMの液膜が形成される。
【0107】
硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36が開かれてから所定時間が経過すると、図5に示す時刻T2で硫酸流量調整バルブ25および過酸化水素水流量調整バルブ37の少なくとも一方の開度が変更され、硫酸および過酸化水素水が、第1混合比よりも大きい第2混合比(第2HSO流量/第2H流量)でSPMノズル18内で混合される。図5は、硫酸流量調整バルブ25および過酸化水素水流量調整バルブ37の両方の開度が変更される例を示している。これにより、第2SPMが、SPMノズル18内で作成され、SPMノズル18から基板Wの上面に向けて吐出される。その結果、基板Wの上面の全域を覆う第1SPMの液膜が、基板Wの上面の全域を覆う第2SPMの液膜に置換される。
【0108】
図5に示す例では、硫酸が第1HSO流量よりも大きい第2HSO流量でSPMノズル18に供給され、過酸化水素水が第1H流量よりも小さい第2H流量でSPMノズル18に供給される。第2HSO流量および第2H流量は、混合比(過酸化水素水に対する硫酸の比)が変更されてもSPMノズル18から吐出されるSPMの流量が一定に保たれるように設定されてもよいし、SPMノズル18から吐出されるSPMの流量が増加または減少するように設定されてもよい。混合比は、第1混合比から第2混合比に連続的に変更される。したがって、基板Wの上面に供給されるSPMは、過酸化水素水の濃度が高い状態から硫酸の濃度が高い状態に連続的に変化する。
【0109】
SPMの混合比が第2混合比に変更されてから所定時間が経過すると、図5に示す時刻T5で硫酸バルブ24および過酸化水素水バルブ36が閉じられ、SPMノズル18からのSPMの吐出が停止される。図5は、SPMの混合比が第1混合比に設定されている時間(時刻T1から時刻T2までの時間)が、SPMの混合比が第2混合比に設定されている時間(時刻T2から時刻T5までの時間)よりも長い例を示している。SPMの混合比が第1混合比に設定されている時間は、SPMの混合比が第2混合比に設定されている時間と等しくてもよいし、SPMの混合比が第2混合比に設定されている時間より短くてもよい。図8は、後者の例を示している。
【0110】
図5に示すように、処理カップ11は、SPMノズル18が第1SPMの吐出を開始する前に(図5に示す時刻T1の前に)、3つのガード43~45の中で最も内側の第1のガード43が基板Wの周端面に対向する第1の対向状態に設定されている。したがって、基板Wから排出された第1SPMは、第1のガード43の内壁43aによって受け止められ、第1のカップ41に案内される。そして、第1のカップ41内の第1SPMは、第1の排液配管52に排出される(図5に示す排液のON)。
【0111】
図5に示すように、SPMの混合比が第2混合比に変更された時点では(図5に示す時刻T2)、第1のガード43は、上位置に位置している。したがって、基板Wから排出された第2SPMは、第1のガード43の内壁43aによって受け止められ、第1のカップ41に案内される。ガード昇降ユニット46は、SPMの混合比が第2混合比に変更された後、図5に示す時刻T3で第1のガード43を上位置と下位置との間の洗浄高さ位置まで下降させる。これにより、第2SPMが第1のガード43の内壁43aに直接当たる位置が、第1のガード43に対して上方に移動する。
【0112】
ガード昇降ユニット46は、たとえば第1のガード43を洗浄高さ位置で所定時間静止させた後、図5に示す時刻T4で第1のガード43を下位置まで下降させる。したがって、処理カップ11は、SPMノズル18が第2SPMを吐出しており、基板Wの上面の全域が第2SPMの液膜で覆われている状態で、第2のガード44が基板Wの周端面に対向する第2の対向状態に切り換わる。基板Wから排出された第2SPMは、第2のガード44の内壁44aによって受け止められ、第2のカップ42に案内される。そして、第2のカップ42内の第2SPMは、共用配管55および回収配管56を介して回収タンク29に送られる。これにより、基板Wに供給された第2SPMが回収される(図5に示す回収のON)。
【0113】
図5に示す時刻T5でSPMノズル18からのSPMの吐出が停止されると、ガード昇降ユニット46は、図5に示す時刻T6で第1のガード43を下位置から上位置まで上昇させる。これにより、処理カップ11は、SPMノズル18がSPMの吐出を停止しており、基板Wの上面の全域がSPMの液膜で覆われている状態で、第1のガード43が基板Wの周端面に対向する第1の対向状態に切り換わる。この状態で、リンス液を基板Wに供給するリンス工程(図4のS4)が行われる。基板Wを乾燥させる乾燥工程(図4のS5)は、第3のガード45が基板Wの周端面に対向する第3の対向状態に処理カップ11が設定された状態で行われる。
【0114】
図6は、SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水を混合し、基板Wから回収されたSPMを別の基板Wに供給するときの流れを示すフローチャートである。以下では、図2および図6を参照する。以下の動作等は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。言い換えると、制御装置3は、以下の動作等を実行するようにプログラムされている。
【0115】
前述のように、SPM工程(図4のS3)を開始するときは、図6に示すように、硫酸および過酸化水素水を第1混合比で混合して、第1SPMを作成する(図6のS11)。第1SPMは、SPMノズル18から吐出され、基板Wに供給される(図6のS12)。そして、基板Wから排出された第1SPMは、第1のガード43および第1のカップ41を介して第1の排液配管52に導かれる。
【0116】
第1SPMの吐出が開始されてから所定時間が経過すると、硫酸および過酸化水素水の混合比(混合前の過酸化水素水の流量に対する混合前の硫酸の流量の比)が、第1混合比から第2混合比に増加する(図6のS13)。これにより、硫酸および過酸化水素水が第2混合比で混合され、第2SPMが作成される。その後、第2SPMは、基板Wに供給され(図6のS14)、基板Wから排出される。基板Wから排出された第2SPMは、第2のガード44、第2のカップ42、共用配管55、および回収配管56を介して、回収タンク29に回収される(図6のS15)。
【0117】
回収タンク29に回収された第2SPMは、硫酸を貯留する硫酸タンク27に送られる。回収タンク29に回収された第2SPMは、硫酸以外の成分を含むものの、その半分以上は硫酸である。回収タンク29に回収された第2SPMに含まれる硫酸は、硫酸タンク27内の硫酸と混合される。硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度は、硫酸濃度計C1によって測定される(図6のS16)。制御装置3は、硫酸濃度計C1の測定値に基づいて硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度を監視している(図6のS17)。
【0118】
硫酸濃度計C1によって測定された硫酸の硫酸濃度が下限値以上であれば(図6のS17でYes)、制御装置3は、硫酸タンク27内の硫酸を再びSPMノズル18に供給する。これにより、基板Wから排出された第2SPMに含まれる硫酸が過酸化水素水と混合され、新たなSPMが作成される。そして、この新たなSPMは、後続の基板Wに供給される。これにより、基板Wから排出されたSPMが再利用されるので、SPMの廃棄量を減らすことができる。
【0119】
その一方で、硫酸濃度計C1によって測定された硫酸の硫酸濃度が下限値を下回る場合(図6のS17でNo)、制御装置3は、硫酸補充配管28pに介装された硫酸補充バルブ28vを開いて、硫酸タンク27内に硫酸を補充する(図6のS18)。補充される硫酸は、未使用の硫酸(たとえば濃硫酸)であり、その硫酸濃度は、硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度よりも高い。したがって、未使用の硫酸が硫酸タンク27内に補充されることにより、硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度が上昇する。制御装置3は、硫酸補充バルブ28vを閉じた後、硫酸の硫酸濃度が下限値を下回るか否かを再び確認する(図6のS16に戻る)。これにより、硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度が高い状態が維持される。
【0120】
図7は、回収された硫酸の濃度の推移を示すグラフである。図7中の縦軸は、回収された硫酸の濃度を示している。図7中の横軸は、基板処理装置1で処理された基板Wの枚数を示している。図7中の比X、比Y、および比Zは、いずれも、過酸化水素水の流量を1とした場合の硫酸の流量の比を示している。比Xは、比Yよりも大きく、比Yは、比Zよりも大きい(比X>比Y>比Z)。
【0121】
図7を見ると分かるように、硫酸の比が比X、比Y、および比Zのいずれの場合も、硫酸の濃度は、基板Wの処理枚数が増えるにしたがって減少する。硫酸の濃度の低下率は、硫酸の比が小さいほど高い。つまり、硫酸の比が比Zのとき、硫酸の濃度の低下率が最も高く、硫酸の比が比Yのとき、硫酸の濃度の低下率が2番目に高い。言い換えると、硫酸の比が高いと、硫酸の濃度が低下し難い。硫酸の比が比Xのとき、基板Wに供給されたSPMを回収しながら100枚以上の基板Wを処理しても、硫酸の濃度が90%程度までしか低下しないことが確認された。
【0122】
前述のように、本実施形態では、硫酸の濃度が高いSPMを硫酸タンク27に回収し、回収されたSPMを硫酸として再利用する。図7を見ると分かるように、回収されたSPMにおける硫酸の濃度が高ければ、多数枚の基板Wを処理しても硫酸の濃度が低下し難い。したがって、硫酸タンク27内の硫酸の濃度を長期にわたって再利用に適した値に維持できる。これにより、硫酸タンク27内の硫酸の交換頻度や、硫酸タンク27内に新しい硫酸を補充する頻度を減らすことができる。
【0123】
以上のように本実施形態では、第1SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水が混合され、作成された第1SPMが基板Wに供給される。そして、第1SPMの供給が停止された後、第2SPMを作成するために硫酸および過酸化水素水が混合され、作成された第2SPMが基板Wに供給される。これにより、第1SPMおよび第2SPMが基板Wに供給され、レジストが基板Wから除去される。
【0124】
第1SPMを作成するときは、硫酸および過酸化水素水が第1混合比で混合される。第2SPMを作成するときは、硫酸および過酸化水素水が第2混合比で混合される。第1混合比および第2混合比は、いずれも、混合前の過酸化水素水の体積に対する混合前の硫酸の体積の比を表す。第1混合比は、第2混合比よりも小さい。したがって、第1SPMに含まれる過酸化水素水の濃度は、第2SPMに含まれる過酸化水素水の濃度よりも高い。
【0125】
過酸化水素水の濃度が相対的に高いので、第1SPMは、第2SPMよりも高い除去能力を有している。したがって、レジストを効率的に基板Wから除去できる。そして、第1SPMが基板Wに供給された後、第2SPMが基板Wに供給される。第2SPMは除去能力が第1SPMより劣るものの、第1SPMの供給によって殆ど全てのレジストが基板Wから除去されているので、比較的除去し易いレジストしか基板Wに残っていない。そのため、除去能力が劣る第2SPMであっても、レジストを基板Wから確実に除去できる。
【0126】
基板Wから排出された第1SPMは、回収配管56ではなく、第1の排液配管52に流入する。基板Wから排出された第1SPMは、過酸化水素水の濃度が相対的に高く、硫酸の濃度が相対的に低い。それだけでなく、基板Wから排出された第1SPMは、第1SPMとレジストとの反応によって生じた多くの汚染物質(レジストの炭化物など)を含んでいる。したがって、基板Wから排出された第1SPMは、回収に適さない。
【0127】
その一方で、基板Wから排出された第2SPMは、硫酸の濃度が相対的に高い。さらに、基板Wから排出された第2SPMに含まれる汚染物質の量は、基板Wから排出された第1SPMに含まれる汚染物質の量よりも少ない。したがって、硫酸の濃度が相対的に高く、汚染物質の含有量が少ない第2SPMが、回収配管56に導かれ、過酸化水素水と再び混合される。これにより、第2SPMに含まれる硫酸が過酸化水素水と反応し、新たなSPMが作成される。そのため、SPMの廃棄量を減らすことができる。
【0128】
このように、硫酸の濃度、つまり、混合前の硫酸および過酸化水素水の体積に対する混合前の硫酸の体積の割合が大きいときに、SPMを回収するので、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる。さらに、硫酸の濃度が高いい状態を維持するのではなく、SPMの回収を開始する前に、過酸化水素水の濃度が高く、十分な除去能力を有するSPMを基板Wに供給するので、レジストを効率的に基板Wから除去できる。したがって、基板Wから効率よくレジストを除去しながら、硫酸の濃度が高いSPMを回収することができる。
【0129】
本実施形態では、基板Wから排出された第1SPMが、基板Wを取り囲む第1のガード43に受け止められる。基板Wから排出された第2SPMは、基板Wを取り囲む第2のガード44に受け止められる。第1のガード43に受け止められた第1SPMは、第1のガード43に接続された第1の排液配管52に流入する。第2のガード44に受け止められた第2SPMは、第2のガード44に接続された回収配管56に流入する。
【0130】
基板Wから排出された第1SPMは、多くの汚染物質を含んでいる。したがって、第1のガード43が第1SPMを受け止め後は、汚染物質が第1のガード43の内周面に残留している場合がある。基板Wから排出された第2SPMを第1のガード43で受け止めて回収すると、第1のガード43に付着している汚染物質が、第2SPMに混入する場合がある。したがって、第1のガード43とは異なる第2のガード44に第2SPMを受け止めさせることにより、回収されたSPMに含まれる汚染物質の量を減らすことができる。
【0131】
本実施形態では、第1SPMの供給が停止されたときに基板Wから排出された第1SPMは、第1のガード43に受け止められる。その後、第1のガード43および第2のガード44の状態が第1の対向状態から第2の対向状態に切り換えられ、基板Wから排出された第2SPMが第2のガード44に受け止められる。つまり、汚染物質の含有量が多い第1SPMの排出が終了した後に、第1のガード43が基板Wに直接対向した状態から第2のガード44が基板Wに直接対向した状態に切り換えられる。これにより、汚染物質の含有量が多い第1SPMで第2のガード44が汚染されることを防止できる。
【0132】
本実施形態では、基板Wから排出された第1SPMが第1のガード43に受け止められる。その後、第2SPMが基板Wに供給され、基板Wから排出される。第2SPMの供給が開始されたときに基板Wから排出された第2SPMは、第1のガード43に受け止められる。その後、第1のガード43および第2のガード44の状態が第1の対向状態から第2の対向状態に切り換えられ、基板Wから排出された第2SPMが第2のガード44に受け止められる。
【0133】
基板Wから排出された第2SPMに含まれる汚染物質の量は、基板Wから排出された第1SPMに含まれる汚染物質の量よりも少ない。したがって、汚染物質の含有量が多い第1SPMが第1のガード43に受け止められ、その後、汚染物質の含有量が少ない第2SPMが第1のガード43に受け止められる。これにより、第1のガード43の内壁43aに付着している汚染物質が洗い流される。第1のガード43に付着している汚染物質が乾くと、基板Wが配置された空間を汚染物質が漂い、当該基板Wに付着する場合がある。したがって、基板Wの汚染を低減できる。
【0134】
さらに、第2SPMの供給を開始したときは、比較的除去し易いレジストが基板Wに残っており、基板Wから排出された第2SPMに汚染物質が含まれる場合がある。この場合、第2SPMの供給を開始してからある程度の時間が経つと、全てのレジストが基板Wから除去され、汚染物質を含まないまたは殆ど含まない第2SPMが基板Wから排出される。
【0135】
第2SPMの供給を開始したときに基板Wから排出された第2SPMに汚染物質が含まれる場合でも、このような第2SPMは、第1のガード43を介して第1の排液配管52に導かれる。したがって、汚染物質を含む第2SPMが回収配管56に回収されることを防止できる。さらに、このような第2SPMを利用して第1のガード43を洗浄するので、SPMの使用量を増やすことなく、第1のガード43を洗浄できる。
【0136】
本実施形態では、基板Wから排出された第2SPMが第1のガード43に受け止められているときに、基板Wと第1のガード43とを上下方向に相対的に移動させる。これにより、第2SPMが第1のガード43の内壁43aに直接当たる位置が、第1のガード43に対して上下に移動する。これにより、第1のガード43に対して第2SPMが直接当たる範囲が広がるので、第1のガード43の内壁43aに付着している汚染物質を効果的に除去できる。
【0137】
本実施形態では、硫酸および過酸化水素水が、SPMノズル18に供給され、SPMノズル18内で混合される。これにより、第1SPMが作成される。その後、第1SPMが基板Wに供給される。硫酸および過酸化水素水の反応によって生成されるペルオキソ一硫酸(カロ酸とも呼ばれる。)の酸化能力は、時間の経過に伴って低下する。硫酸および過酸化水素水を混合した直後に、硫酸および過酸化水素水の混合液であるSPMを基板Wに供給すれば、このような酸化能力の低下を最小限にとどめることができる。これにより、除去能力が高い第1SPMを基板Wに供給することができ、レジストの除去に要する時間を短縮できる。
【0138】
本実施形態では、SPMが基板Wに供給されているときに、混合比(過酸化水素水に対する硫酸の比)を、第1混合比から第2混合比に連続的に増加させる。これにより、第1SPMが基板Wに供給され、その後、第2SPMが基板Wに供給される。SPMに含まれる過酸化水素水が減少し、過酸化水素水の濃度が低下すると、SPMの温度が低下する。混合比を連続的に変更すれば、SPMの温度を連続的に変化させることができる。したがって、基板Wの急激な温度変化を防止しながら、レジストを効率的に除去できる。
【0139】
回収された第2SPMは、硫酸以外の成分を含むものの、その半分以上は硫酸である。SPMの回収および再利用を繰り返すと、回収された硫酸の硫酸濃度が徐々に低下していく。言い換えると、回収されたSPMに含まれる硫酸の水分濃度が徐々に上昇していく。回収配管56に流入した第2SPMは、硫酸を貯留する硫酸タンク27に回収される。硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度が測定され、測定された硫酸濃度が下限値を下回ると、硫酸タンク27内の硫酸よりも硫酸濃度が高い硫酸が硫酸タンク27内に供給される。これにより、硫酸タンク27内の硫酸の硫酸濃度を再利用に適した範囲内に維持できる。
【0140】
他の実施形態
本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
たとえば、図8に示すように、硫酸および過酸化水素水を第1混合比で混合する前に、第1混合比よりも大きい第3混合比で硫酸および過酸化水素水を混合して第3SPMを作成し、作成された第3SPMを基板Wに供給してもよい。第3混合比は、第2混合比と等しくてもよいし、第2混合比と異なっていてもよい。図8は、第3混合比が第2混合比よりも小さい例を示している。
【0141】
強度が低いパターンが基板Wに形成されている場合、過酸化水素水の濃度が高いSPMを基板Wに供給してレジストの除去を開始すると、パターンがダメージを受けることがある。したがって、図8に示すように、過酸化水素水の濃度を連続的に増加させれば、強度が低いパターンが基板Wに形成されている場合でも、パターンのダメージを減らすことができる。さらに、過酸化水素水の濃度を連続的に増加させれば、SPMの温度が徐々に上がるので、基板Wの温度が急激に上昇することを防止できる。
【0142】
前述の基板Wの処理の一例において、SPMノズル18から吐出されるSPMの流量は一定でなくてもよい。たとえば、ガード43,44の切り換え時において、つまり、図5に示す時刻T4において、基板Wに供給されるSPMの供給流量を、図5に示す時刻T1~時刻T2までの期間におけるSPMの供給流量よりも一時的に少なくしてもよい。これに代えてまたは併せて、ガード43,44の切り換え時において、基板Wの回転速度を図5に示す時刻T1~時刻T2までの期間における基板Wの回転速度よりも遅くしてもよい。
【0143】
基板WへのSPMの供給を継続したまま(すなわち基板WからのSPMの排出を継続したまま)、ガード43,44の切り換えを行う場合、基板Wからの排出されたSPMが、第1のガード43の上端(図2に示す上端部66の内周端)に衝突して、予期しない方向に飛散するおそれがある。
ガード43,44の切り換え時に、基板Wに供給されるSPMの供給流量を少なくしたり、基板Wの回転速度を遅くしたりすることにより、基板Wの周縁部から飛散するSPMの勢い(速度)を弱めたり、当該周縁部から飛散するSPMの量を減らしたりすることができる。これにより、チャンバ7内に配置された第1のガード43以外の部材が、基板Wから排出されたSPMで汚染されることを抑制または防止できる。
【0144】
ガード43,44の切り換え時において、基板WへのSPMの供給を一時的に停止してもよい。この場合、基板WからのSPMの排出量が減少するので、基板Wから排出されたSPMが第1のガード43の上端(図2に示す上端部66の内周端)に衝突して予期しない方向に飛散することを防止できる。
前述の基板Wの処理の一例において、図9に示すように、基板Wに向けて吐出される第2SPMの流量は、基板Wに向けて吐出される第1SPMの流量より大きくてもよい。この場合、第2SPMの流量は、たとえば5%以上~20%以下、特に、5%以上~12%以下の範囲で、第1SPMの流量よりも大きいことが好ましい。
【0145】
第2SPMは、第1SPMと比べると硫酸の濃度が高い。したがって、第1SPMと比較すると、第2SPMは、過酸化水素水と硫酸との混合により発生する反応熱が少なく、温度が低い。第2SPMの温度が低下すると、レジストに対する十分な剥離能力が得られない場合がある。基板Wに向けて吐出される第2SPMの流量を増やすと、基板W上での第2SPMの温度が上がる。これにより、第2SPMの剥離能力をさらに高めることができる。
【0146】
また、基板Wに向けて吐出される第2SPMの流量を増加させることに加えてまたは代えて、SPMが基板Wから排出される速度を遅らせるために、第2SPM供給工程での基板Wの回転速度を第1SPM供給工程での基板Wの回転速度より遅くしてもよい。この場合も、前述と同様の効果を得ることができる。第1および第2SPM供給工程の少なくとも一方において基板Wの回転速度が時間の経過に伴って変化する場合は、第2SPM供給工程での基板Wの回転速度の最小値が第1SPM供給工程での基板Wの回転速度の最小値より小さければよい。
【0147】
前述の基板Wの処理の一例において、図10に示すように、第2SPM供給工程の後、硫酸および過酸化水素水を、第2混合比(第2HSO流量/第2H流量)より大きい第4混合比(第4HSO流量/第4H流量)で混合して、第4SPMを作成し、作成された第4SPMを基板Wに供給してもよい。この場合、基板Wに向けて吐出される第4SPMの流量は、基板Wに向けて吐出される第2SPMの流量と等しくてもよいし、異なっていてもよい。SPMの剥離能力の低下を防止するために、第4SPMの流量を、たとえば5%以上~20%以下、特に、5%以上~12%以下の範囲で、第2SPMの流量より大きくしてもよい。
【0148】
処理カップ11を第1の対向状態と第2の対向状態との間で切り換えるのではなく、第1の対向状態と第3の対向状態との間、もしくは、第2の対向状態と第3の対向状態との間で切り換えてもよい。
回収配管56が、共用配管55を介さずに、第2のカップ42の底部に直接接続されていてもよい。この場合、第2のカップ42内のSPMは、回収配管56を介して、硫酸供給部26に回収される。したがって、第2の排液配管57ならびに切り換えユニット(回収バルブ58および排液バルブ59)は省略される。
【0149】
SPM工程S3の最初から最後まで1つのガードを用いて基板Wから排出されたSPMを受け止めてもよい。たとえば、第2のガード44にSPMを受け止めさせてもよい。この場合、第2のガード44に受け止められたSPMを回収するときは、回収バルブ58(図2参照)を開き、排液バルブ59を閉じればよい。
SPM工程S3において、第1のガード43を洗浄高さ位置で静止させることなく上位置から下位置まで下降させてもよい。
【0150】
前述の基板Wの処理の一例において、SPM工程S3に先立って、基板Wの上面を、第1の洗浄液を用いて洗浄する第1の洗浄工程と、第1の洗浄液をリンス液で洗い流す第2のリンス工程とが実行されてもよい。第1の洗浄液としてたとえばフッ酸(HF)を例示できる。第1の洗浄工程および第2のリンス工程は、処理カップ11が第1の対向状態にある状態で実行されてもよい。
【0151】
前述の基板Wの処理の一例において、SPM工程S3の後にリンス工程S4に先立って、過酸化水素水を基板Wの上面(表面)に供給する過酸化水素水供給工程が実行されてもよい。この場合、制御装置3は、過酸化水素水バルブ36を開いた状態に維持しつつ硫酸バルブ24だけを閉じればよい。これにより、SPMノズル18に過酸化水素水だけが供給され、SPMノズル18の吐出口から過酸化水素水が吐出される。過酸化水素水供給工程は、処理カップ11が第1の対向状態にある状態で実行されてもよい。
【0152】
前述の基板Wの処理の一例において、リンス工程S4の後に、基板Wの上面を、第2の洗浄液を用いて洗浄する第2の洗浄工程と、第2の洗浄液をリンス液で洗い流す第3のリンス工程とが実行されてもよい。第2の洗浄液としてSC1(NHOHとHとを含む混合液)を例示できる。第2の洗浄工程および第3のリンス工程は、処理カップ11が第1の対向状態にある状態で実行されてもよい。
【0153】
乾燥工程S5に先立って、IPA(イソプロピルアルコール)などの水よりも表面張力が低く、水よりも揮発性が高い有機溶剤を基板Wに供給して、基板W上のリンス液を有機溶剤によって置換する有機溶剤置換工程が実行されてもよい。有機溶剤置換工程は、処理カップ11が第3の対向状態にある状態で実行されてもよい。
図11に示すように、SPM供給ユニット9の硫酸供給部26は、硫酸配管23に供給すべき硫酸を貯留する高濃度硫酸タンク127をさらに備えていてもよい。高濃度硫酸タンク127内の硫酸(厳密には硫酸の水溶液)における硫酸の濃度は、硫酸タンク27内の硫酸における硫酸の濃度よりも高い。
【0154】
高濃度硫酸タンク127内の硫酸は、未使用の硫酸(たとえば濃硫酸)であってもよいし、未使用の硫酸と回収されたSPMとの混合液であってもよい。また、高濃度硫酸タンク127は、硫酸タンク27と同じ貯留ボックス6に収容されていてもよいし、硫酸タンク27とは別の貯留ボックス6に収容されていてもよい。図11は、高濃度硫酸タンク127が硫酸タンク27とは別の貯留ボックス6に収容されており、回収されたSPMが高濃度硫酸タンク127に供給されない例を示している。
【0155】
高濃度硫酸タンク127は、高濃度硫酸供給配管132によって硫酸配管23に接続されている。高濃度硫酸タンク127内の硫酸は、第3の送液装置134によって硫酸配管23に送られる。高濃度硫酸供給配管132を介して硫酸配管23に供給される硫酸は、温度調整器133によって加熱される。温度調整器133によって加熱された硫酸は、リターン配管138を介して高濃度硫酸タンク127に戻る。リターン配管138の上流端は、高濃度硫酸供給配管132を開閉する供給バルブ125aの上流で高濃度硫酸供給配管132に接続されており、リターン配管138の下流端は、高濃度硫酸タンク127に接続されている。
【0156】
硫酸供給配管32に介装された供給バルブ25aが開かれると、硫酸タンク27内の硫酸が、硫酸流量調整バルブ25の開度に対応する流量で硫酸配管23に供給される。高濃度硫酸供給配管132に介装された供給バルブ125aが開かれると、高濃度硫酸タンク127内の硫酸が、硫酸流量調整バルブ125の開度に対応する流量で硫酸配管23に供給される。制御装置3は、高濃度硫酸タンク127内の硫酸を用いて第1SPMを作成し、硫酸タンク27内の硫酸を用いて第2SPMを作成してもよい。つまり、新しい硫酸と過酸化水素水との混合により第1SPMを作成し、回収されたSPMを含む硫酸と過酸化水素水との混合により第2SPMを作成してもよい。
【0157】
硫酸タンク27へのSPMの回収を続けると、硫酸タンク27内の硫酸における硫酸の濃度が次第に低下し、硫酸タンク27内の硫酸を用いて作成されたSPMの剥離能力が低下する場合がある。高濃度の硫酸、つまり、高濃度硫酸タンク127内の硫酸を用いてSPMを作成すれば、剥離能力が高いSPMをレジストの表面に接触させることができる。したがって、レジストの表面に硬化層が形成されていても、レジストの硬化層を破壊できる。硬化層が破壊された後は、硬化層の亀裂を通ってSPMがレジストの内部(硬化していないレジスト)に浸透するので、回収されたSPMを含む硫酸を用いて作成されたSPMを基板Wに供給しても、レジストを剥離できる。これにより、高濃度の硫酸の使用量を抑えながら、基板W上のレジストを短時間で確実に剥離できる。
【0158】
前述の基板Wの処理の一例において、第2SPMの代わりに、硫酸を基板Wに供給してもよい。つまり、第1SPMよりも硫酸濃度が高ければ、第1SPMの供給の後に基板Wに供給される液体は、SPMおよび硫酸のいずれであってもよい。
第2SPMの代わりに硫酸を基板Wに供給する場合、たとえば、硫酸バルブ24(図2参照)を開いたまま、過酸化水素水バルブ36(図2参照)を閉じればいい。このようにすれば、硫酸含有液ノズルの一例であるSPMノズル18から硫酸だけが吐出される。SPM供給ユニット9は、硫酸含有液供給ユニットの一例である。
【0159】
基板処理装置1は、円板状の基板Wを処理する装置に限らず、多角形の基板Wを処理する装置であってもよい。
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全てのステップの2つ以上が組み合わされてもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0160】
1 :基板処理装置
3 :制御装置
8 :スピンチャック(基板保持ユニット)
9 :SPM供給ユニット
11 :処理カップ
18 :SPMノズル(ノズル)
21 :硫酸供給ユニット
22 :過酸化水素水供給ユニット
23 :硫酸配管
24 :硫酸バルブ
25 :硫酸流量調整バルブ(混合比変更ユニット)
26 :硫酸供給部
27 :硫酸タンク
28p :硫酸補充配管(硫酸補充ユニット)
28v :硫酸補充バルブ(硫酸補充ユニット)
29 :回収タンク
30 :送液配管
32 :硫酸供給配管
35 :過酸化水素水配管
36 :過酸化水素水バルブ
37 :過酸化水素水流量調整バルブ(混合比変更ユニット)
43 :第1のガード
44 :第2のガード
45 :第3のガード
46 :ガード昇降ユニット(切り換えユニット、ガード切り換えユニット)
52 :第1の排液配管(排液配管)
55 :共用配管
56 :回収配管
57 :第2の排液配管
58 :回収バルブ
59 :排液バルブ
127 :高濃度硫酸タンク
C1 :硫酸濃度計
W :基板
図1
図2
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図11