IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テイエルブイの特許一覧

<>
  • 特許-振動検出装置 図1
  • 特許-振動検出装置 図2
  • 特許-振動検出装置 図3
  • 特許-振動検出装置 図4
  • 特許-振動検出装置 図5
  • 特許-振動検出装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】振動検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 1/00 20060101AFI20221124BHJP
   G01H 11/08 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01H1/00 Z
G01H11/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018219799
(22)【出願日】2018-11-23
(65)【公開番号】P2020085637
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 康祐
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-182724(JP,A)
【文献】特開2015-135308(JP,A)
【文献】特開2017-161277(JP,A)
【文献】特開2001-017445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一固有振動数を有する第一接触探針であって、軸貫通穴を有しており、対象物に接触する第一接触探針、
第一接触探針の振動を表す信号を出力する第一信号出力手段、
第一固有振動数とは異なる第二固有振動数を有する第二接触探針であって、前記軸貫通穴を貫通して配置され、対象物に接触する第二接触探針、
第二接触探針の振動を表す信号を出力する第二信号出力手段、
振動した第一接触探針又は第二接触探針を識別し、第一接触探針又は第二接触探針が有する第一固有振動数又は第二固有振動数に基づき、対象物の振動の共振周波数を認識する制御手段であって、当該共振周波数に基づき対象物の振動の種別を判断する制御手段、
を備えており、
第一接触探針と第二接触探針とは、同時に対象物に接触する、
とを特徴とする振動検出装置。
【請求項2】
請求項に係る振動検出装置において、
前記第一接触探針の中心軸線と、前記第二接触探針の中心軸線とは、同一線上又は略同一線上に配置されている、
ことを特徴とする振動検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る振動検出装置は、配管系統に設けられたスチームトラップや弁等の検査対象に探針を接触させることによって、検査対象の振動を検出する振動検出装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内では蒸気が液化してドレン(蒸気の凝縮水)が発生するが、このドレンが過度に滞留すると、蒸気移送のための空間が縮小され、蒸気の移送効率が低下してしまう。
【0003】
このような事態を回避するために、配管系統には随所に多数のスチームトラップが設けられている。スチームトラップは液化によって生じた内部のドレン水量が一定レベルに達した場合、内蔵されているフロートが浮上してスチームトラップの排出口を開放し、自動的にドレンを配管外に排出する構造を備えている。
【0004】
ところで、スチームトラップに作動不良が生じると、適正な蒸気の移送が妨げられ、産業プラントの効率的な稼動が確保できない。このため、スチームトラップの作動状態を検査する技術が重視されており、スチームトラップの振動を検出することによって作動不良を検査する装置が知られている。
【0005】
スチームトラップの作動不良としては様々なものがあるが、たとえばフロートの摩耗や変形等が原因で、本来、密閉すべき排出口とフロートとの間に隙間が生じることによって発生する密閉不良がある。密閉不良が生じた場合、その隙間から蒸気が漏洩して蒸気移送にロスが生じる。このため、蒸気の漏洩音を振動として検出して、密閉不良の検査を行う。
【0006】
このような振動検出を行う検査装置として、後記特許文献1に開示されている計測装置がある。この計測装置は先端に探針10を有しており、探針10は振動センサ2内の圧電素子21に接続されている。そして、この探針10を計測対象物に押し当て、計測対象物の振動を探針10に伝達する。伝達された振動の強度は、探針10の圧電素子21から電気信号として出力されて、スチームトラップの特有の振動が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-84419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1に開示された計測装置では、多様な周波数の振動を容易に検出することができないという問題がある。すなわち、スチームトラップが設置される環境においては、スチームトラップの密閉不良による振動以外に、スチームトラップの部品の消耗や故障等による振動や、配管フランジ継手の締結緩みによる振動や、蒸気使用装置の運転異常による振動等が生じることがある。これらの異常によって異音が発生するが、この異音の周波数は密閉不良による漏洩音の周波数とは異なる。
【0009】
ここで、振動検出において用いられるプローブ(探針)は特定の固有振動数を有するように設定されている。そして、この固有振動数と対象物の振動とが一致したことに反応してプローブが共振することによって、特有の周波数の振動を取り出して検出を行うものである。
【0010】
特許文献1に開示された計測装置では、検出可能な振動が、探針10の固有振動数に一致する共振周波数の振動に限られる。このため、密閉不良によって生じる蒸気の漏洩音とは異なる異音を検知しようとすると、それぞれの音の周波数に応じた計測装置を用意して検査を行う必要があり、多様な周波数の振動を効率的に検出することができない。
【0011】
そこで本願に係る振動検出装置は、これらの問題を解決するために、多様な周波数の振動を効率的に検出することができる振動検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係る振動検出装置においては、
各々、異なる固有振動数を有する複数の接触探針であって、対象物に接触する複数の接触探針、
各接触探針の振動を表す信号を出力する信号出力手段、
振動した接触探針を識別し、当該接触探針が有する固有振動数に基づき、対象物の振動の共振周波数を認識する制御手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係る振動検出装置においては、制御手段が振動した接触探針を識別し、当該接触探針が有する固有振動数に基づき、対象物の振動の共振周波数を認識する。したがって、多様な周波数の振動を効率的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願に係る振動検出装置の第1の実施形態を示す検査器50の外観図である。
図2図1に示す検出ヘッド4の拡大一部断面図である。
図3図2に示す高周波用プローブ10の断面図である。
図4図2に示す低周波用プローブ20の一部断面図である。
図5図1に示す検査器50の回路構成を示すブロック図である。
図6図5に示す制御部30が実行する振動検出プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る振動検出装置の下記の要素に対応している。
高周波用プローブ10・・・接触探針、第一接触探針
プローブ軸穴10a・・・軸貫通穴
低周波用プローブ20・・・接触探針、第二接触探針
制御部30・・・制御手段
圧電素子14、15・・・信号出力手段、第一信号出力手段
圧電素子24、25・・・信号出力手段、第二信号出力手段、
40kHz・・・固有振動数、第一固有振動数
20kHz・・・固有振動数、第二固有振動数
スチームトラップ・・・対象物
蒸気の漏洩音、部品の消耗や故障等の異常による異音・・・振動の種別
【0016】
[第1の実施形態]
本願に係る振動検出装置の第1の実施形態を図1ないし図6に基づいて説明する。本実施形態に係る検査器50は、配管系統の随所に設置されているスチームトラップ(図示せず)の作動不良等の異常を検知するための検査装置である。
【0017】
フロート式のスチームトラップは、配管内でドレンが発生・滞留した場合、内蔵されているフロートが浮上して排出口を開放し、配管内の高圧による勢いに従って自動的にドレンを配管外に排出する。排出後はフロートが元の状態に復帰し排出口を閉塞して密閉する。この排出は数秒間に一度行われ、開放による排出・閉塞による密閉が繰り返されている。
【0018】
ところで、スチームトラップには作動不良が生じることがあり、この作動不良としては密閉不良がある。この密閉不良は、フロートの摩耗や変形等が原因で、本来、密閉すべき排出口とフロートとの間に隙間が生じることによって発生する作動不良である。密閉不良が生じた場合、その隙間から蒸気が漏洩し特有の漏洩音が発生する。この漏洩音の周波数は例えば40 kHz前後(波長が比較的短い)である。したがって、40 kHz付近の周波数の振動を検知することによって密閉不良の検査を行うことができる。
【0019】
また、スチームトラップの部品の消耗や故障等による振動や、配管フランジ継手の締結緩みによる振動や、蒸気使用装置の運転異常による振動が発生することもあり、このような異音の周波数を本実施形態では例えば20kHz前後(波長が比較的長い)とする。したがって、20kHz付近の周波数の振動を検知することによってスチームトラップの密閉不良以外の検査を行うことができる。
【0020】
(検査器50の全体構成の説明)
図1に示すように、本実施形態に係る検査器50には液晶部51が設けられており、この液晶部51はタッチパネルとして構成されている入力領域52、及び所定の表示を行う表示領域53を備えている。
【0021】
また、検査器50の先端部には検出ヘッド4が突出して設けられている。検出ヘッド4は高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20を内蔵しており(図2参照)、この検出ヘッド4の先端部分が検査の対象面60に押し当てられることによって、対象物の振動を検出して検査を行う。
【0022】
高周波用プローブ10には、図3に示すように、中心軸に沿ってプローブ軸穴10aが貫通して設けられており筒状に形成されている。高周波用プローブ10の後端部18は、高周波用プローブ体10Hよりも筒径が小さく構成されており、この後端部18の外周面にはネジ部が形成されている。
【0023】
そして、後端部18のネジ部に座ネジ部品16が螺入されて取り付けられる。座ネジ部品16の上部には、二つの圧電素子14、15が挿入されて配置される。圧電素子14、15は、高周波用プローブ10が振動したとき電圧変動を生じ、この振動を表す電気信号を発生する。なお、圧電素子14、15には、それぞれ下方に出力端子14T、15Tが設けられており、ここに接続された配線(図示せず)を通じて、圧電素子14、15からの電気信号が出力される。
【0024】
高周波用プローブ10の後端部18には、さらにウエイト17が取り付けられ、高周波用プローブ10の重量バランスが調整されている。ウエイト17の上部には、キャップ110が取り付けられる(図2参照)。このキャップ110の取付穴にはネジ部が形成されており、後端部18に対して螺入されて、座ネジ部品16との間で、圧電素子14、15、出力端子14T、15T、ウエイト17を挟み込んで、後端部18に固定する。
【0025】
他方、低周波用プローブ20は、図4に示すように、高周波用プローブ10よりも細長いバー形状を備えている。低周波用プローブ20の後端部28は、低周波用プローブ体20Hよりも筒径が小さく構成されており、この後端部28の外周面にはネジ部が形成されている。
【0026】
そして、後端部28のネジ部に座ネジ部品26が螺入されて取り付けられる。座ネジ部品26の上部には、高周波用プローブ10の構成と同様に、二つの圧電素子24、25が挿入されて配置される。圧電素子24、25は、低周波用プローブ20が振動したとき電圧変動を生じ、この振動を表す電気信号を発生する。なお、圧電素子24、25には、それぞれ下方に出力端子24T、25Tが設けられており、ここに接続された配線(図示せず)を通じて、圧電素子24、25からの電気信号が出力される。
【0027】
低周波用プローブ20の後端部28には、さらにウエイト27が取り付けられ、低周波用プローブ20の重量バランスが調整されている。ウエイト27の上部には、キャップ120が取り付けられる(図2参照)。このキャップ120の取付穴にはネジ部が形成されており、後端部28に対して螺入されて、座ネジ部品26との間で、圧電素子24、25、出力端子24T、25T、ウエイト27を挟み込んで、後端部28に固定する。
【0028】
ここで、本実施形態においては、高周波用プローブ10の固有振動数は40kHzに設定されており、低周波用プローブ20の固有振動数は20kHzに設定されている。物体の固有振動数は、物体の形状、質量又は剛性等によって決定されるが、本実施形態では主にプローブの長さを調整することによって、高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20の固有振動数をそれぞれ40kHz、20kHzに設定している。
【0029】
図2に示すように、検出ヘッド4は先端に形成されたヘッド先端穴49に向けて細く構成されており、これに対応して内面には傾斜面45が形成されている。そして、検出ヘッド4内において、高周波用プローブ10のプローブ軸穴10aに、低周波用プローブ20が挿入されて配置され、高周波用プローブ10の先端部19及び低周波用プローブ20の先端部29が、検出ヘッド4のヘッド先端穴49から突出可能に設けられる。
【0030】
検出ヘッド4内には、中心軸に直行する状態で第一内壁41及び第二内壁42が設けられている。第一内壁41には中心部分に内壁穴41aが形成されており、ここを低周波用プローブ20が貫通して配置される。
【0031】
第一内壁41と、高周波用プローブ10に固定されたキャップ110との間にはスプリング13が取り付けられ、スプリング13は常時、高周波用プローブ10を検出ヘッド4のヘッド先端穴49から突出する方向に付勢している。また、第二内壁42と、低周波用プローブ20に固定されたキャップ120との間にはスプリング23が取り付けられ、スプリング23は常時、低周波用プローブ20を検出ヘッド4のヘッド先端穴49から突出する方向に付勢している。
【0032】
図1及び図2は、検出ヘッド4が対象面60に押し付けられた状態を示している。高周波用プローブ10の先端部19及び低周波用プローブ20の先端部29は、同時に対象面60に接触し、高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20は検出ヘッド4内に埋没して、スプリング13、23はそれぞれ圧縮される。検出ヘッド4を対象面60から離した場合、高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20は、各々、スプリング13、23の付勢力を受けて検出ヘッド4のヘッド先端穴49から突出する。
【0033】
なお、高周波用プローブ10は、スプリング13の付勢力を受けた場合、座ネジ部品16が傾斜面45に当接することによって、突出方向への移動が規制される。また、低周波用プローブ20は、スプリング23の付勢力を受けた場合、座ネジ部品26が第一内壁41に当接することによって、突出方向への移動が規制される。
【0034】
なお、本実施形態では、以上のように高周波用プローブ10のプローブ軸穴10aに低周波用プローブ20が配置されることによって、高周波用プローブ10の中心軸線と低周波用プローブ20の中心軸線とが、同一線上に位置するよう構成されている。スチームトラップの検査を行う場合、検査者は手で検査器50を把持して対象面60に押し付けるため、検出ヘッド4が対象面60に対して垂直状態から斜めに傾くことがある。
【0035】
本実施形態では、高周波用プローブ10の中心軸線と低周波用プローブ20の中心軸線とが、同一線上に位置しているため、検出ヘッド4がいずれの方向に傾いたとしても、高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20の十分な埋没を確保することができ、より正確な検査を行うことができる。
【0036】
(検査器50の回路構成の説明)
次に、図5に基づいて検査器50の回路構成を説明する。検出ヘッド4に設けられている高周波用プローブ10からの出力信号は、まずフィルター11に与えられる。このフィルター11はバンドパスフィルターであり、高周波用プローブ10からの出力信号のうち、40kHzの周波数帯域以外の周波数成分をカットする。
【0037】
前述のように、高周波用プローブ10の固有振動数は40kHzに設定され、40kHzの振動を抽出するようになっているが、出力信号に仮に他の周波数成分が混入していたとしても、フィルター11を通すことによって確実に40kHzの周波数の振動データのみを検出することができる。フィルター11を経た出力信号は、増幅器12で増幅された後、A/D変換器13でデジタル信号に変換されて制御部30に与えられる。
【0038】
また、検出ヘッド4に設けられている低周波用プローブ20からの信号は、フィルター21に与えられる。このフィルター21もバンドパスフィルターであり、低周波用プローブ20からの出力信号のうち、20kHz の周波数帯域以外の周波数成分をカットすることによって、確実に20kHzの周波数の振動データのみを検出する。フィルター21を経た出力信号は、増幅器22で増幅された後、A/D変換器23でデジタル信号に変換されて制御部30に与えられる。
【0039】
液晶部51の入力領域52を通じて入力された指示は制御部30に取り込まれ、また制御部30は表示領域53の表示を制御する。そして、制御部30は処理プログラムに従い、メモリ31へのデータの記録やデータの更新を行いながら所定の処理を実行する。
【0040】
(検査器50の検査処理の説明)
続いて、図6のフローチャートに従い、制御部30が実行する検査処理の内容を説明する。まず制御部30は、測定スイッチがONになったか否かを判別する(ステップS1)。本実施形態においては、例えば検出ヘッド4が対象面60に押し付けられ、高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20が検出ヘッド4内に埋没したとき、この埋没を公知のスイッチ機構(図示せず)で検知して測定スイッチONと判断する。
【0041】
次に、制御部30は測定時間をカウントするためにタイマーをスタートし(ステップS2)、スチームトラップの対象面60における40kHz又は20kHzの周波数の振動を高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20、フィルター11、21を通じて取り込み、この高周波振動データ及び低周波振動データをメモリ31に記憶する(ステップS3)。
【0042】
この振動データの取得・記憶の処理を、測定時間のカウントから15秒が経過するまで、所定の時間的間隔で繰り返す(ステップS4)。スチームトラップ内のフロートの浮上によるドレンの排出が数秒間に一度行われていることから、密閉不良を確実に検出するため、15秒間にわたって振動データを取得する。
【0043】
この後、制御部30は、高周波振動データ及び低周波振動データの双方を検出したか否かを判別する(ステップS5)。前述のように、本実施形態における高周波用プローブ10の固有振動数は40kHzに設定されており、低周波用プローブ20の固有振動数は20kHzに設定されていることから、高周波振動データは、スチームトラップに蒸気漏れが生じているときの漏洩音の周波数(40kHz)の振動データであり、低周波振動データは、スチームトラップの密閉不良による振動以外によって発生する異音(例えば、スチームトラップの部品の消耗や故障等による振動や、配管フランジ継手の締結緩みによる振動や、蒸気使用装置の運転異常による振動)の周波数(20kHz)の振動データである。
【0044】
高周波振動データ及び低周波振動データの双方を検出した場合、スチームトラップに蒸気漏れが生じている可能性もあるが、同時に低周波振動データも検出していることから、蒸気漏れではなく外部ノイズを検出した可能性もある。すなわち、多種雑多な周波数の振動がスチームトラップの外部で発生しており、このノイズの中の20kHz及び 40kHzの周波数を検出した可能性ある。このような外部ノイズとしては、たとえばスチームトラップに接続されている配管の接続箇所に緩みが生じ、配管の擦れ等によって発生する振動が考えられる。
【0045】
このため、制御部30は、高周波振動データ及び低周波振動データの双方を検出した場合、液晶部51の表示領域52に「蒸気漏れの可能性あり・周辺設備も要チェック」を表示して処理を終了する(ステップS6)。「蒸気漏れの可能性あり」と表示することによって、スチームトラップに蒸気漏れの可能性があるものの、その信頼性は確実ではないことを示し、かつ「周辺設備も要チェック」と表示することによって、配管の接続箇所等のチェックを促す。
【0046】
ステップS5において、高周波振動データ及び低周波振動データの双方を検出していない場合はステップS7に進み、ここで高周波振動データを検出したか否かを判別する。ステップS5を経た後、高周波振動データの検出が確認された場合、高周波振動データのみの検出であるため、スチームトラップに蒸気漏れが生じていると判断することができる。このため、制御部30は、液晶部51の表示領域52に「蒸気漏れを検出」を表示し処理を終了する(ステップS8)。
【0047】
また、ステップS7において、高周波振動データを検出していない場合はステップS9に進み、ここで低周波振動データを検出したか否かを判別する。ステップS5を経た後、低周波振動データの検出が確認された場合、低周波振動データのみの検出であるため、
スチームトラップの密閉不良による振動以外の異常(スチームトラップの部品の消耗や故障等による振動や、配管フランジ継手の締結緩みによる振動や、蒸気使用装置の運転異常による振動)が生じていると判断することができる。このため、制御部30は、液晶部51の表示領域52に「その他の異常を検出」を表示し処理を終了する(ステップS10)。
【0048】
なお、ステップS9において、低周波振動データを検出していない場合は、高周波振動データ及び低周波振動データのいずれも検出されていないため、制御部30は、液晶部51の表示領域52に「正常」を表示し処理を終了する(ステップS11)。
【0049】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、接触探針として高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20を例示したが、異なる固有振動数を有する複数の接触探針である限り、異なる形状・構成を採用してもよい。さらに、前述の実施形態においては、高周波用プローブ10(第一接触探針)のプローブ軸穴10a(軸貫通穴)に、低周波用プローブ20(第二接触探針)が挿入されて配置された構成を示したが、軸貫通穴を設けず、第一接触探針と第二接触探針とを近接する位置に並べて配置することもできる。
【0050】
また、複数の接触探針として、二つの高周波用プローブ10及び低周波用プローブ20を例示したが、三つ以上の接触探針を設け、三種以上の周波数の振動を検出することもできる。この場合、前述の実施形態において示した構成と同様、より径の大きな接触探針に軸貫通穴を形成し、その内部に径の小さな接触探針を配置して、三つ以上の接触探針の中心軸線を一致させて構成することもできる。
【0051】
前述の実施形態においては、スチームトラップの振動のみを検出する検出器50を例示したが、さらに高周波用プローブ10(第一接触探針)の先端部19又は低周波用プローブ20(第二接触探針)の先端部29の双方又はいずれか一方に熱電対を設け、スチームトラップの表面温度をも検出する構成としてもよい。スチームトラップのドレン排出に詰まりが生じている場合、排出されずに滞留したドレンによってスチームトラップの表面温度は低下することから、スチームトラップの表面温度を検出することによって、スチームトラップのドレン排出不良をも検査することが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
10:高周波用プローブ 10a:プローブ軸穴 14、15、24、25:圧電素子
20:低周波用プローブ 30:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6