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特許7181786情報処理装置の制御方法、及びECサーバによる申込誘引方法
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  • 特許-情報処理装置の制御方法、及びECサーバによる申込誘引方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】情報処理装置の制御方法、及びECサーバによる申込誘引方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20221124BHJP
【FI】
G06Q30/02 490
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018241302
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020102125
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】517035773
【氏名又は名称】岩佐 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 健二
【審査官】関 博文
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-123006(JP,A)
【文献】国際公開第2006/018856(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、前記基準を満たさない第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める第1段階と、
前記基準価格から前記割引額を控除して前記第1取引の取引価格を得る第2段階と、
を含む、情報処理装置の制御方法。
【請求項2】
前記第1段階において、他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法を利用する前記第1取引に係る前記第1手数料と、前記基準を満たさず前記手数料が最大になる前記第2決済方法を利用する前記第2取引に係る前記第2手数料との差額の範囲内で前記割引額を決める、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第1段階において、他のいずれの決済方法と比較しても前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法を利用する前記第1取引に係る前記第1手数料と、前記第2手数料との差額の範囲内で前記割引額を決める、
請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1段階において、許容可能な最小利益が確保されるように前記割引額を決める、
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の制御方法。
【請求項5】
前記第1段階において、販売者の利益が最小となるように前記割引額を決める、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
前記第1段階において、前記基準価格と別に前記第1取引の注文者が負担する前記第1手数料の総和以上になるように前記割引額を決める、
請求項4又は請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記第1段階において、前記取引対象に設定された特定の競合価格と比較して前記取引価格が低額になるように前記割引額を決める、
請求項4から請求項6までのいずれかに記載の制御方法。
【請求項8】
取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、前記基準を満たさない第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める第1段階と、前記基準価格から前記割引額を控除して前記第1取引の取引価格を得る第2段階と、を含む、情報処理装置の制御方法を使用して得られる取引価格を電子商取引である前記第1取引の取引条件として提示する条件提示段階と、
前記取引価格が前記第1取引に適用されるための決済方法に関する制約を前記取引条件に関連付けて提示する制約提示段階と、
を含む、ECサーバによる申込誘引方法。
【請求項9】
前記制約提示段階において、前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する、
請求項8に記載の申込誘引方法。
【請求項10】
前記制約提示段階において、他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する、
請求項9に記載の申込誘引方法。
【請求項11】
前記制約提示段階において、他のいずれの決済方法と比較しても所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する、
請求項10に記載の申込誘引方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の機能に特に適合したデジタル計算またはデータ処理の装置または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットショッピングにおける決済に関し、販売者に有利な決済方法に誘導する手法が知られている。例えば、特許文献1には、販売者が負担するべきクレジット手数料と比較して購入者が負担するべき振込手数料が少額である場合に、振込手数料を販売者が負担することと振込手数料の金額を上回る特別割引が適用された支払い額を示しつつ購入者が振込決済を選択するよう誘導する販売手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-123006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の販売手法では、購入額に所定の割引率を乗じて得られる割引額と振込手数料との和を特別割引の割引額として計算している。そのため、特別割引の割引額がクレジット手数料を超える場合がある。この場合、特別割引を適用すると販売者にとって不利になるから、振込決済への誘導は行われない。
【0005】
また、特許文献1に記載の販売手法では、注文対象を選択させる段階より後に、決済方法を選択させる段階がある。そして、振込決済への誘導は決済方法を選択させる段階で行われるから、注文対象を選択させる段階において特別価格が適用された支払額が提示させることはない。
【0006】
本発明が解決しようとする第1の課題は、訴求力の高い取引価格を導出することである。また、本発明が解決しようとする第2の課題は、電子商取引における申込誘引段階の施策の訴求力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める。本発明は、少なくとも下記の各態様を包含する。
【0008】
〔A〕取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、前記基準を満たさない第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める第1段階と、前記基準価格から前記割引額を控除して前記第1取引の取引価格を得る第2段階と、を含む、情報処理装置の制御方法。
【0009】
〔B〕取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、前記基準を満たさない第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める第1段階と、前記基準価格から前記割引額を控除して前記第1取引の取引価格を得る第2段階と、を含む、情報処理装置の制御方法を使用して得られる取引価格を電子商取引である前記第1取引の取引条件として提示する条件提示段階と、前記取引価格が前記第1取引に適用されるための決済方法に関する制約を前記取引条件に関連付けて提示する制約提示段階と、を含む、ECサーバによる申込誘引方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1取引の取引価格が基準価格より安くなるので、訴求力の高い取引価格を導出し得る。また、本発明によれば、第1取引の取引価格が基準価格より安くなるので、電子商取引における申込誘引段階の施策の訴求力を向上させ得る。
【0011】
上記〔A〕の「情報処理装置の制御方法」には、下記の技術的限定を加えてもよい。また、同様の技術的限定を、上記〔B〕の「ECサーバによる申込誘引方法」に加えてもよい。
【0012】
(1)前記第1段階において、他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法を利用する前記第1取引に係る前記第1手数料と、前記基準を満たさず前記手数料が最大になる前記第2決済方法を利用する前記第2取引に係る前記第2手数料との差額の範囲内で前記割引額を決める。これにより、少なくとも1種の決済方法が相対的な選定基準を満たさないので、それ以外の決済方法について、基準価格から割引額を控除して取引価格を得ることができる。
【0013】
(2)前記第1段階において、他のいずれの決済方法と比較しても前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法を利用する前記第1取引に係る前記第1手数料と、前記第2手数料との差額の範囲内で前記割引額を決める。これにより、特定の1種以外の決済方法が相対的な選定基準を満たさないので、特定の1種の決済方法について、基準価格から割引額を控除して取引価格を得ることができる。
【0014】
(3)前記第1段階において、許容可能な最小利益が確保されるように前記割引額を決める。これにより、販売者にとって不利になることを防ぐことができる。
【0015】
(4)前記第1段階において、販売者の利益が最小となるように前記割引額を決める。これにより、販売者にとって不利になることを防ぎつつ割引額が最大になるので、訴求力が非常に高い取引価格を導出し得る。
【0016】
(5)前記第1段階において、前記基準価格と別に前記第1取引の注文者が負担する前記第1手数料の総和以上になるように前記割引額を決める。これにより、第1取引の注文者が負担する金額を基準価格以下に抑えることになるので、訴求力が高い取引価格を導出し得る。
【0017】
(6)前記第1段階において、前記取引対象に設定された特定の競合価格と比較して前記取引価格が低額になるように前記割引額を決める。これにより、特定の競合価格と比較して訴求力が高い取引価格を導出し得る。
【0018】
また、上記〔B〕の「ECサーバによる申込誘引方法」には、下記の技術的限定を加えてもよい。
【0019】
(1)前記制約提示段階において、前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する。これにより、基準価格より安い第1取引の取引価格で決済することになるので、電子商取引における申込誘引段階の施策の訴求力をさらに向上させ得る。
【0020】
(2)前記制約提示段階において、他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する。これにより、少なくとも1種の決済方法が相対的な選定基準を満たさないので、その選定基準を満たさない少なくとも1種の決済方法を選択不可にすることができる。
【0021】
(3)前記制約提示段階において、他のいずれの決済方法と比較しても所要の前記手数料が少ないという前記基準を満たす前記第1決済方法以外の決済方法が選択不可である前記制約を提示する。これにより、特定の1種以外の決済方法が相対的な選定基準を満たさないので、その選定基準を満たさない特定の1種以外の決済方法を選択不可にすることができる。
【0022】
この明細書では、下記のように用語を用いる。
【0023】
「取引対象」とは、販売者と注文者(ユーザ)との間で取引の対象となる商品やサービスのことである。「基準価格」とは、取引対象の原価と販売者の利益額との合計額から定められた一定の額のことである。「手数料」とは、決済に要する費用のことである。「決済方法」は、例えば、クレジットカード決済、銀行振込、コンビニ払い、代引きを包含する。「取引価格」とは、販売者と注文者(ユーザ)との間で取引される額のことである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ネットワーク構成を例示する説明図である。(実施例)
図2】サーバ装置及びクライアント装置のハードウェア的機能構成を例示するブロック図である。(実施例)
図3】ECサーバのソフトウェア的機能構成を例示するブロック図である。(実施例)
図4】電子商取引を例示するシーケンス図である。(実施例)
図5】基準価格を説明する図である。(実施例)
図6】割引前の取引価格を説明する図である。(実施例)
図7】基準価格と手数料との関係について複数の決済方法で比較する図である。(実施例)
図8】販売者が手数料を負担すると仮定した場合の基準価格と手数料との関係について複数の決済方法で比較する図である。(実施例)
図9】ユーザ端末に表示される注文画面を示す図である。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0025】
[1.実施形態]
[1-1.概要]
本実施形態は、販売者と注文者との間の電子商取引(EC)を管理するデータ処理システムに関する。本実施形態では、取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす決済方法の場合に、基準価格から割引額を控除して取引価格を得る。
【0026】
[1-2.ECサーバによる申込誘引方法]
実施形態に係るECサーバ(例えば、ECサーバ10)による申込誘引方法は、取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、前記基準を満たさない第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額の範囲内で割引額を決める第1段階と、前記基準価格から前記割引額を控除して前記第1取引の取引価格を得る第2段階と、を含む、情報処理装置(例えば、ECサーバ10)の制御方法を使用して得られる取引価格を電子商取引である前記第1取引の取引条件として提示する条件提示段階と、前記取引価格が前記第1取引に適用されるための決済方法に関する制約を前記取引条件に関連付けて提示する制約提示段階と、を含む。
【0027】
実施形態に係る情報処理装置は、クライアントサーバ型の情報処理システムにおいて、クライアント側装置に通信ネットワークを介して電子商取引に関する所定の情報を提供可能なサーバ側装置として構成されるのが好適である。
【実施例
【0028】
[2.実施例]
[2-1.概要]
本実施例は、電子商取引の取引条件として取引価格を得て、その取引価格をオンラインで提示するサービスに関する。本実施例のサービスでは、複数種類の決済方法が利用可能であることが前提にある。
【0029】
[2-2.特徴]
実施例のサービスでは、取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす決済方法の場合に、基準価格から割引額を控除して取引価格を得る。
【0030】
[2-3.実施例のシステムの構成]
[2-3-1.ネットワーク構成]
[2-3-1-1.概要]
図1は、実施例のシステムのネットワーク構成を例示する。実施例のシステムは、実施例のサービスをユーザ(注文者)に提供する。
【0031】
図1に例示されるように、実施例のシステムは、電子商取引に関する管理を行うECサーバ10と、電子商取引における販売者が使用する複数の販売者端末20と、電子商取引における注文者が使用する複数のユーザ端末30と、を含む。なお、図1において、販売者端末20及びユーザ端末30は、図面の簡略化のために一つずつのみが示される。
【0032】
ECサーバ10と販売者端末20は、通信ネットワーク40を通じてデータの授受が可能である。ECサーバ10とユーザ端末30は、通信ネットワーク40を通じてデータの授受が可能である。
【0033】
通信ネットワーク40は、インターネット(Internet),携帯電話網,無線WAN(Wireless Wide Area Network),無線LAN(Wireless Local Area Network),イーサネット(Ethernet)(登録商標)などの既存のネットワークのうち少なくともいずれかを含んでいてよい。
【0034】
[2-3-1-2.ECサーバ]
ECサーバ10は、Webサーバプログラムがインストールされたサーバ装置(コンピュータ)である。ECサーバ10は、要求(リクエスト)に応じて、要求元に必要なデータを提供(レスポンス)する。また、ECサーバ10は、要求(リクエスト)に応じて、必要なデータを登録する。なお、複数のサーバ装置を連携させてサーバシステムを構成し、ECサーバ10の機能を分担させ又はECサーバ10にかかる負担を分散させてもよい。
【0035】
[2-3-1-3.販売者端末]
販売者端末20は、所定のプログラムがインストールされたクライアント装置(コンピュータ)である。本実施例では、クライアント装置として、プログラムをインストール可能な汎用の携帯装置(例えば、携帯電話,スマートフォン(smartphone),タブレット(tablet)端末,タブレットPC(personal computer),ウェアラブルデバイス(wearable device)など)や汎用の処理装置(例えば、PC(personal computer)など)を用いることができる。
【0036】
[2-3-1-4.ユーザ端末]
ユーザ端末30は、所定のプログラムがインストールされたクライアント装置(コンピュータ)である。本実施例では、クライアント装置として、プログラムをインストール可能な汎用の携帯装置(例えば、携帯電話,スマートフォン(smartphone),タブレット(tablet)端末,タブレットPC(personal computer),ウェアラブルデバイス(wearable device)など)や汎用の処理装置(例えば、PC(personal computer)など)を用いることができる。
【0037】
[2-3-2.サーバ装置及びクライアント装置のハードウェア的機能構成]
図2は、サーバ装置及びクライアント装置のハードウェア的機能構成を例示する。図2に例示されるサーバ装置及びクライアント装置は、MPU(Micro-Processing Unit)やROM(Read Only Memory)を含む制御処理装置211と、RAM(Random Access Memory)を含む主記憶装置212と、HDD(Hard Disc Drive)を含む補助記憶装置213と、マウスやキーボードやタッチパネルディスプレイを含む入力装置214と、ディスプレイやスピーカやプリンタを含む出力装置215と、ネットワークカード(Network Interface Card)を含む通信制御装置216と、を有する。
【0038】
主記憶装置212、補助記憶装置213、入力装置214、出力装置215及び通信制御装置216は、バスラインを介して制御処理装置211とそれぞれ接続される。制御処理装置211は、(1)補助記憶装置213に記憶されたプログラムを主記憶装置212
上に読み込み、(2)プログラムの指示に従って入力装置214と補助記憶装置213と通信制御装置216との少なくともいずれかからデータを取得し、(3)取得したデータをプログラムに規定される手順で演算・加工した上で、(4)演算済み・加工済みのデータを補助記憶装置213と出力装置215と通信制御装置216との少なくともいずれかに提供する。
【0039】
[2-3-3.ソフトウェア的機能構成]
図3は、ECサーバ10のソフトウェア的機能構成を例示する。図3に例示されるように、ECサーバ10は、割引額決定部311,取引価格決定部312,条件提示部313及び制約提示部314を具備する。
【0040】
ECサーバ10、販売者端末20及びユーザ端末30のソフトウェア的機能は、サーバ装置向けのOS(Operating System)と当該OS上で動作するプログラムとがサーバ装置にインストールされることにより実現される。サーバ装置にインストールされるべきプログラムは、CD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disk),MOディスク(Magneto-Optical disk),フラッシュメモリ(flash memory)などの記録媒体に記録された状態で配布され当該記録媒体からサーバ装置に読み込まれてもよいし、通信ネットワーク40又はその他の通信ネットワークを介し搬送波に重畳させてサーバ装置に供給されてもよい。
【0041】
クライアント装置向けOSは、出荷当初からクライアント装置にインストールされているのが一般的である。クライアント装置にインストールされるべきその他のプログラムは、通信ネットワーク40を介し搬送波に重畳させてクライアント装置に供給されるのが一般的である。なお、クライアント装置にインストールされるべき上記その他のプログラムは、CD(Compact Disc),DVD(Digital Versatile Disk),MOディスク(Magneto-Optical disk),フラッシュメモリ(flash memory)などの記録媒体に非一時的に記録された状態で配布され当該記録媒体からユーザ装置に読み込まれてもよい。
【0042】
割引額決定部311は、販売者端末20から受信したデータに基づいて割引額を決める。具体的に、割引額決定部311は、取引対象の基準価格に応じて決まる手数料に関する基準を満たす決済方法(第1決済方法)を利用する取引(第1取引)に係る手数料(第1手数料)と、当該基準を満たさない決済方法(第2決済方法)を利用する取引(第2取引)に係る手数料(第2手数料)との差額の範囲内で割引額を決める。
【0043】
第1手数料と第2手数料との差額は、例えば下記のように決まる。
・他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、当該基準を満たさず手数料が最大になる第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料との差額
・他のいずれの決済方法と比較しても手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料と、第2手数料との差額
【0044】
割引額決定部311は、第1手数料と第2手数料との差額の範囲内で、例えば下記のように割引額を決めるようにしてもよい。
・許容可能な最小利益が確保される
・販売者の利益が最小となる
・取引価格と別に注文者が負担する第1手数料の総和以上になる
・取引対象に設定された特定の競合価格と比較して取引価格が低額になる
【0045】
許容可能な最小利益とは、例えば最小利益率が確保される利益のことをいう。
特定の競合価格は、例えば下記のように入手される。
・事前に出品者から競合価格に関する入力情報を受け付ける
・ECサーバ10内で同一の取引対象に関する価格情報をクローリングする
【0046】
取引価格決定部312は、販売者端末20から受信したデータ及び割引額決定部311が決めた割引額に基づいて取引価格を得る。具体的に、取引価格決定部312は、基準価格から割引額を控除して第1取引の取引価格を得る。
【0047】
条件提示部313は、取引価格決定部312が得た取引価格を第1取引の取引条件として注文者に提示するために、当該取引価格に係るデータをユーザ端末30に送信する。
【0048】
制約提示部314は、取引価格が第1取引に適用されるための決済方法に関する制約を取引条件に関連付けて注文者に提示するために、当該制約に係るデータをユーザ端末30に送信する。具体的に、制約提示部314は、例えば下記のような制約に係るデータをユーザ端末30に送信する。
・第1決済方法以外の決済方法が選択不可である制約
・他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法以外の決済方法が選択不可である制約
・他のいずれの決済方法と比較しても所要の手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法以外の決済方法が選択不可である制約
【0049】
[2-4.電子商取引]
図4は、実施例のシステムによる電子商取引を例示する。
【0050】
ステップS405では、販売者端末20が、販売者による取引対象に関するデータ(基準価格、原価、利益等)を受け付ける。ステップS410では、販売者端末20がECサーバ10に、取引対象に関するデータを登録する。ステップS415では、ECサーバ10が、割引額を決める(第1段階)。ステップS420では、ECサーバ10が、第1取引の取引価格を決める(第2段階)。
【0051】
ステップS425では、ユーザ端末30からの要求に応じたECサーバ10がユーザ端末30に、「第1取引の取引価格」及び「取引価格が第1取引に適用されるための決済方法に関する制約」に係るデータを送信する。ステップS430では、ユーザ端末30が、第1取引の取引価格を第1取引の取引条件として注文者に提示する(条件提示段階)。ステップS435では、ユーザ端末30が、取引価格が第1取引に適用されるための決済方法に関する制約を取引条件に関連付けて注文者に提示する(制約提示段階)。
【0052】
ステップS440では、ユーザ端末30が、注文者による注文に関するデータを受け付ける。ステップS445では、ユーザ端末30がECサーバ10に、注文に関するデータを送信する。ステップS450では、ECサーバ10が販売者端末20に、注文に関するデータを送信する。ステップS455では、販売者端末20が、注文に関するデータを販売者に通知する。
【0053】
ステップS460では、販売者端末20が、販売者による注文確認に関するデータを受け付ける。ステップS465では、販売者端末20がECサーバ10に、注文確認に関するデータを送信する。ステップS470では、ECサーバ10がユーザ端末30に、注文確認に関するデータを送信する。ステップS475では、ユーザ端末30が、注文確認に関するデータを注文者に通知する。以上により取引の契約が完了する。
【0054】
次に、「第1段階で決める割引額」及び「第2段階で決める取引価格」の導出例について、図5図8を参照しながら説明する。
【0055】
[2-5.基準価格]
図5は、基準価格を例示する。基準価格は、取引対象の原価と販売者の利益額との合計額から定められた一定の額である。
【0056】
[2-6.割引前の取引価格]
図6は、割引前の取引価格を例示する。図6(a)及び図6(b)に示すように、基準価格に手数料を上乗せした額を取引価格とする場合がある。この場合、形式的には販売者が手数料を負担することになるが、実質的には注文者が手数料を負担することになる。図6(c)及び図6(d)に示すように、注文者が手数料を別途負担することにはなるが、基準価格を取引価格とする場合がある。図6(e)及び図6(f)に示すように、販売者が手数料を負担することにはなるが、基準価格を取引価格とする場合がある。
【0057】
[2-7.基準価格と手数料との関係]
図7は、基準価格と手数料との関係を例示する。図7(a)に示すように、クレジットカード決済を利用する取引に係る手数料(X円)は、販売者が負担することになるので、販売者の利益額が少なくなる。図7(b)に示すように、銀行振込を利用する取引に係る手数料(X円)は、基準価格とは別に注文者が負担することになる。図7(c)に示すように、コンビニ払いを利用する取引に係る手数料(X円)は、基準価格とは別に注文者が負担することになる。
【0058】
これらの場合に、例えばX>X>Xとすると、他の少なくともいずれかの決済方法と比較して所要の手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料には、銀行振込の手数料(X円)とコンビニ払いの手数料(X円)が該当し、当該基準を満たさず手数料が最大になる第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料には、クレジットカード決済の手数料(X円)が該当する。
【0059】
あるいは、他のいずれの決済方法と比較しても所要の手数料が少ないという基準を満たす第1決済方法を利用する第1取引に係る第1手数料には、コンビニ払いの手数料(X円)が該当し、当該基準を満たさず手数料が最大になる第2決済方法を利用する第2取引に係る第2手数料には、クレジットカード決済の手数料(X円)が該当する。
【0060】
図8は、販売者が手数料を負担すると仮定した場合の基準価格と手数料との関係を例示する。販売者が手数料を負担すると仮定し、図7に示す場合と同じようにX>X>Xとする。
【0061】
この場合、図8(a)に示すように、クレジットカード決済を利用する取引に係る手数料(X円)が最大になるので、販売者の利益額が最も少なくなる。図8(b)に示すように、銀行振込を利用する取引に係る手数料(X円)がクレジットカード決済を利用する取引に係る手数料(X円)(図8(a)参照)と比較して安いので、銀行振込の場合、クレジットカード決済の場合と比較して販売者の利益額が多くなる。斜線部で図示させるこの余剰利益の金額の範囲内で割引額が決められる。図8(c)に示すように、コンビニ払いを利用する取引に係る手数料(X円)がクレジットカード決済を利用する取引に係る手数料(X円)(図8(a)参照)と比較して安いので、コンビニ払いの場合、クレジットカード決済の場合と比較して販売者の利益額が多くなる。斜線部で図示されるこの余剰利益の金額の範囲内で割引額が決められる。
【0062】
[2-8.注文画面]
図9は、ユーザ端末30に表示される注文画面を例示する。注文画面には、取引対象の情報(写真、説明文など)911の他に、基準価格912、基準価格から割引額を控除した取引価格913、決済方法に関する制約914等が表示される。制約914の表示方法としては、複数の決済方法を選択するボタンのうち、第1決済方法を選択するボタンが選択可能に表示され、第1決済方法以外の決済方法を選択するボタンが選択不可に表示されるようにすることができる。
【符号の説明】
【0063】
10 ECサーバ(情報処理装置の一例)
20 販売者端末
30 ユーザ端末
40 通信ネットワーク
311 割引額決定部
312 取引価格決定部
313 条件提示部
314 制約提示部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9