IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボーグワーナー インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特許-摩擦材 図1
  • 特許-摩擦材 図2
  • 特許-摩擦材 図3
  • 特許-摩擦材 図4
  • 特許-摩擦材 図5
  • 特許-摩擦材 図6
  • 特許-摩擦材 図7
  • 特許-摩擦材 図8
  • 特許-摩擦材 図9
  • 特許-摩擦材 図10A
  • 特許-摩擦材 図10B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20221124BHJP
   F16D 13/62 20060101ALI20221124BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20221124BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20221124BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
C09K3/14 520J
C09K3/14 520M
C09K3/14 520H
C09K3/14 520F
C09K3/14 520Z
C09K3/14 520L
F16D13/62 A
C08L101/00
C08K7/02
C08K3/013
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018530682
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-04
(86)【国際出願番号】 US2016068480
(87)【国際公開番号】W WO2017117038
(87)【国際公開日】2017-07-06
【審査請求日】2019-12-05
(31)【優先権主張番号】62/387,654
(32)【優先日】2015-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500124378
【氏名又は名称】ボーグワーナー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100093861
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 眞司
(74)【代理人】
【識別番号】100129218
【弁理士】
【氏名又は名称】百本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】フェン・ドン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ラム
(72)【発明者】
【氏名】ディアンナ・ヒギンズ
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-045860(JP,A)
【文献】特開2005-113130(JP,A)
【文献】特開2005-121221(JP,A)
【文献】特開2005-133074(JP,A)
【文献】特表2008-539315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
F16D 13/62
C08L 101/00
C08K 7/02
C08K 3/013
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々細孔サイズを有する細孔を画定する摩擦材であって、前記摩擦材は、
A.以下の1及び2を含む基材:
1.前記基材の総重量を基準にして55重量%~60重量%の量で存在するアラミド繊維、及び
2.前記基材の総重量を基準にして40重量%~45重量%の量で存在する充填材であって、炭素、珪藻土、シリカ、グラファイト、又はこれらの組合せを含む、充填
B.摩擦調整剤を含む堆積物層であって、前記摩擦調整剤は、シリカ、珪藻土又はこれらの組合せを含む、堆積物層;及び
C.前記摩擦材の全体に配置された樹脂;を含み、
前記摩擦材は、ASTM D4404-10を使用して測定時、60%~85%の空隙率を有し;
前記摩擦材は、ASTM D4404-10を使用して測定時、0.5μm~50μmのメジアン細孔サイズを有し;また
前記摩擦材は、200℃未満の熱的劣化温度を有する材料を含まないものである、摩擦材。
【請求項2】
前記アラミドがポリパラフェニレンテレフタルアミドである、請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
200℃未満の熱的劣化温度を有する前記材料が、綿、セルロース及びそれらの組み合わせから選択されるものである、請求項1または2に記載の摩擦材。
【請求項4】
綿を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項5】
前記基材が、前記基材の総重量を基準にして20重量%以下の量のグラファイトをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項6】
前記摩擦調整剤が珪藻土であり、前記基材の総重量を基準にして0.2~20重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項7】
前記充填材が珪藻土であり、前記基材及び前記堆積物層の総重量を基準にして25~60重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項8】
前記基材が多孔質層であり、前記摩擦調整剤の粒子は、前記多孔質層内に配置され、前記多孔質層が、環境に暴露するための第1最外側面及び金属板に対する接着のための第2最外側面を含み、前記多孔質層が、前記第1最外側面及び前記第2最外側面に最も近接して配置される下部象限をさらに画定し、前記摩擦調整剤の粒子は、前記多孔質層の前記上部象限に配置される、請求項1~7のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項9】
前記摩擦材が、ASTM D4404-10を使用して測定時、60%~70%の空隙率を有し、ASTM D4404-10を使用して測定時、8μm~15μmのメジアン細孔サイズを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の摩擦材。
【請求項10】
少なくとも2つの面を有する金属板及び前記少なくとも2つの面の少なくとも1つに結合された、請求項1~9のいずれか一項に記載の摩擦材を含む、摩擦板。
【請求項11】
請求項10に記載の摩擦板及び分離板を含む、クラッチアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のクラッチアセンブリを含む、トランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、繊維及び充填剤を含む基材、摩擦調整剤を含む堆積物層(deposit)及び摩擦材の全体に配置された樹脂を含む摩擦材に関する。より具体的に、このような摩擦材は、トランスミッションのクラッチアセンブリ内の摩擦板に使用され得る。
【背景技術】
【0002】
自動車パワートレーンのいくつかの構成要素は、湿式クラッチを用いて、車両の動力発生器(すなわち、内燃機関、電気モーター、燃料電池など)から動力を伝達してホイールを駆動させることができる。動力発生器から下流に位置し、車両の発進、ギア変速及び他のトルク伝達現象を可能にするトランスミッションがこのような構成要素のうちの1つである。一部の形態の湿式クラッチは、現在自動車作動に利用可能な多くの異なるタイプのトランスミッションの全般にわたって見出され得る。湿式クラッチは、いくつかの例において名を付けようとすると、自動トランスミッション用トルクコンバータ(torque converter)、自動トランスミッションまたは半自動デュアルクラッチトランスミッション(DCT)用多板湿式クラッチパック、及びトルクコンバータの代替品として7~9個程度のギアが装着されたスポーティな自動トランスミッション(sportier automatic transmission)に内蔵され得る湿式始動クラッチに使用され得る。同様の湿式クラッチは、トランスミッションの他にも、車両パワートレーンの他の部分で発見され得る。
【0003】
湿式クラッチは、潤滑剤の存在下で、表面などの間に選択的界面摩擦係合を付与することによって、2つ以上の対向する回転面を連動させるアセンブリである。摩擦クラッチ板、バンド、シンクロナイザリング(synchronizer ring)、またはこれらの係合可能な回転面のうちの1つを提供する一部の他の部品は、典型的に、摩擦材が意図した連動摩擦係合を誘発するように支援する。摩擦界面における潤滑剤の存在は、摩擦材を冷却させ、その摩耗を減少させ、突然のトルク伝達現象(すなわち、変速衝撃)を伴うことができる不適切な状況を避けるためのものであり、トルク伝達が、非常に速く行っても、漸進的に進行され得るように、少しの初期スリップが発生するようにする。しかし、摩擦界面で潤滑剤を維持させることは、燃費に悪影響を及ぼす。これは、摩擦材面を一定の温度以下に維持する流速で、一般的に低い圧力下で、摩擦界面にまたは摩擦界面から潤滑剤をポンピングするのに必要な動力が窮極的に動力発生器から吸い上げられる(siphon)ためである。
【0004】
多くの適用の場合に、トランスミッション及びトルクオンデマンドシステム(torque-on-demand system)は、主に燃費及び駆動便宜性のためにスリップクラッチを内蔵する。これらのシステム内においてスリップクラッチの役割は、湿式始動クラッチのような車両発進装置からトルクコンバータクラッチに至るまで様々である。作動条件によって、スリップクラッチは3つの主要クラスに区別され得る:(1)低圧及び高速スリップクラッチ、例えば、湿式始動クラッチ;(2)高圧及び低速スリップクラッチ、例えば、コンバータクラッチ;(3)極低圧及び低速スリップクラッチ、例えば、ニュートラル状態から空ぶかしへ移行するクラッチ。
【0005】
大部分のスリップクラッチ適用に対する主な性能問題は、震え防止及び摩擦材のエネルギー管理である。震えの発生は、摩擦材の摩擦特性、結合面の硬度及び粗さ、油膜の維持力、潤滑剤の化学及び相互作用、クラッチ作動状態、ドライブラインアセンブリ及びハードウェア整列、及びドライブライン汚染(driveline contamination)を含む多くの要因から起因することができる。エネルギー管理は、主に摩擦材の温度制御と関連があり、ポンプ用量、オイル流動経路及び制御戦略の影響を受けることができる。
【0006】
新規及び先進のトランスミッションシステムが自動車産業で開発されている。これらの新規システムは、しばしば高いエネルギー要求を伴う。したがって、これらの先端システムの増加するエネルギー要求を満たすために摩擦材の技術も開発されなければならない。特に、新規の高エネルギータイプの摩擦材が必要である。新規の高エネルギー摩擦材は、典型的に、表面速度が65m/秒以下の高速を耐えることができなければならない。また、摩擦材は、典型的に、1500psi以下の高い対面ライニング圧力(facing lining pressure)を耐えることができなければならない。摩擦材が制限された潤滑条件下で有用であることがまた重要であり得る。
【0007】
多くの適用の場合に、摩擦材は、先端トランスミッションシステムに有用であり得るように、耐久性があり、高い耐熱性を有していなければならない。典型的に、摩擦材はまた、高温で安定した状態を維持しなければならず、作動状態で発生される高熱を急速に放散することができなければならない。
【0008】
従来の摩擦材は一般的に、高い表面速度から招来され得る300~350℃超過の表面温度で確実に機能することができない。この温度を超過する場合、このような摩擦材は、摩擦材面に熱的劣化した潤滑剤添加剤が蓄積され、実質的に不透過性スラッジ堆積物層が形成される過程である材料劣化及び/または潤滑剤の熱的劣化及びグレイジングを経る傾向がある。材料の熱的劣化は、多くの適用の場合に材料の強度及び耐久性の損失を引き起こし、しばしば、高い摩耗を誘発する。表面グレイジング摩擦材は、震え及び摩擦界面にまたがって一定していない摩擦係数を含み、様々な問題を誘発することができる。十分に低い表面温度を維持するために摩擦材を介して循環されなければならない必要がある潤滑剤の量は、湿式クラッチの構成及び対向する回転面間の摩擦界面の表面積に依存する。
【0009】
従来には、温度の安全性のために摩擦材に石綿繊維(asbesto fiber)が含まれた。健康及び環境問題によって、石綿はもはや使用されていない。より最近の摩擦材は、含浸材料または繊維をフェノールまたはフェノール変性樹脂で変性することによって、摩擦材における石綿の不在を解決しようとする試みが行って来た。これら摩擦材は、発生された高熱を急速に放散しない傾向があり、現在開発中の高速システムに使用するために要求される必要な耐熱性及び十分に高い摩擦性能係数を有することができない。
【0010】
典型的に、新規トランスミッションシステムの係合及び分離過程中に生成される高速は、摩擦材が係合、すなわち、摩擦係合を通じて比較的一定の摩擦を維持できることを必要とする。「震え」を最小化するために、様々な速度及び温度で摩擦係合が相対的に一定であることがまた重要であり得る。
【0011】
摩擦係合の間に摩擦材が騷音または「スコーク(squawk)」が含まれないように、摩擦材が好ましいトルク曲線形態を有することがまた重要であり得る。例えば、トルク曲線において、トルクが開始点よりも曲線終点にてより大きければ、その後、震えが発生することができる。反対に、トルク曲線が終点よりも曲線の開始点にてより大きければ、その後、震えが発生しないこともある。多数のサイクルの間に最小トルク「フエード(fade)」が好ましい。前述された事項を考慮して、改善された摩擦材を開発することができる機会が残っている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の他の利点は、添付図面に関連して考慮するとき、下記の詳細な説明を参照することによって、より良く理解されるので、容易に認識されるであろう。1つ以上の図面における個別の構成要素は、尺度に合わせて示されていないこともある。
図1図1は、基材及び堆積物層を含む摩擦材の一実施形態の断面図である。
図2図2は、堆積物層の一実施形態の断面図である。
図3図3は、図1の摩擦材及び基板を含む摩擦板の断面図である。
図4図4は、基材及び堆積物層を含む摩擦材の別の実施形態の断面図である。
図5図5は、比較例1の摩擦板のサイクル時間及びサイクル数(200以下)における関数としての摩擦係数(COF)を示すトルク曲線である。
図6図6は、実施例1の摩擦板のサイクル時間及びサイクル数(1000以下)における関数としての摩擦係数(COF)を示すトルク曲線である。
図7図7は、実施例2の摩擦板のサイクル時間及びサイクル数(1000以下)における関数としての摩擦係数(COF)を示すトルク曲線である。
図8図8は、比較例1、実施例1及び実施例2の摩擦板に対する(μ4-μ3)値を示す線グラフであり、より小さい正の値が好ましく、これは最小の震えを示す。
図9図9は、クラッチアセンブリを示す切断部が含まれたトランスミッションの斜視図である。
図10A図10Aは、約11マイクロメータのメジアン粒径及び円筒形形状を有するフラックス焼成珪藻土の一実施形態の電子顕微鏡写真である。
図10B図10Bは、約15マイクロメータのメジアン粒径及び円筒形形状を有する天然珪藻土の別の実施形態の電子顕微鏡写真である。
【発明の概要】
【0013】
摩擦材は、基材、摩擦調整剤を含む堆積物層及び摩擦材全体に配置された樹脂を含む。基材は、基材の総重量を基準にして50重量%超過~70重量%の量で存在するアラミド繊維を含む。基材はまた、基材の総重量を基準にして30重量%~50重量%未満の量で存在する充填剤を含む。摩擦材は、熱的劣化温度が200℃未満の材料を含まない。
【0014】
一実施形態において、本発明は、各々細孔サイズを有する細孔を画定する摩擦材を提供する。例えば、摩擦材は、ASTM D4404-10を使用して測定時、60%~85%の空隙率及びASTM D4404-10を使用して測定時、0.5μm~50μmのメジアン細孔サイズを有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、摩擦材10及び摩擦材10を含む摩擦板30を含む。本明細書に開示された摩擦材10は、典型的に、例えば、自動車のトランスミッション46内の湿式クラッチアセンブリに含まれ得る摩擦板30に使用される。言い換えれば、摩擦材10は、典型的に、当業界に知られているように、鋼板のような基板32に接着され、摩擦板30を形成するように設計される。金属板は2つの面を有し、摩擦材10は、例えば、当業界に知られた任意の接着剤によって、この2つの面のうちの1つに接着され得る。摩擦板30は、例えば、図9に示したように、クラッチパックまたはクラッチアセンブリ48を形成するために、分離板として、使用、販売、または提供され得る。本明細書に開示された摩擦材10及び摩擦板30は、他の車両の適用に使用されることができ、自動車以外の用途を有することが理解されるべきである。
【0016】
摩擦材:
摩擦材10は、基材12、摩擦調整剤22を含む堆積物層14及び摩擦材10全体に配置された樹脂(26/34)を含む。これらのそれぞれは、以下でより詳細に開示される。摩擦材10は、単層(single-ply)で説明され得るが、これは単一層であり、二重2層ではないことを意味する。すなわち、摩擦材10は、2-層構造で存在することができる2つの別個の層を含まない。
【0017】
基材:
図1図4に示したように、摩擦材10は、基材12を含む。基材12は、代替的に、基材層として、1次層または多孔質層として説明することができる。層がある場合、このような層は、典型的に、分離型ではなく、エッジ及び/または境界に対してよく画定される。その代わりに、このような層は、典型的に、非分離型であり、以下でより詳細に説明されるように、堆積物層14にブレンディング(blending)され得る。例えば、このような層は、勾配タイプのパターンで堆積物層14にブレンディングされ得る。代替的に、堆積物層14は勾配タイプのパターンで基材12にブレンディングされ得る。
【0018】
基材12の総厚さTは、典型的に、0.3~1、例えば0.3~0.9、0.4~0.8、0.5~0.7、0.6~0.7、または0.6~0.75mmである。さらなるの非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。このような厚さは、金属板に結合する前または後の厚さを指すことができる。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0019】
アラミド繊維:
図1図4に示したように、基材12は、アラミド繊維20、すなわち、アラミドであるか、これを含む繊維を含む。アラミド繊維20は、1μm~500μmの直径及び2mm~20mmの長さを有することができる。繊維は、織布、不織布または任意の他の適切な構造であり得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。繊維20は、代替的に、多数の繊維20として開示され得る。
【0020】
アラミド繊維20は、基材12の総重量を基準にして、50重量%超過~70重量%の量で存在する。様々な実施形態において、アラミド繊維20は、基材12の総重量を基準にして、51~69、52~68、53~67、54~66、55~65、56~64、57~63、58~62、59~61、51~65、51~60、51~55、55~70、55~65、55~60、60~70、60~65、または65~70重量%の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0021】
アラミド繊維20は、特に限定されず、当業界に公知された任意のものであり得る。例えば、アラミド繊維20は、AB同種重合体、AABB重合体などであるか、これでさらに画定されるか、これを含むか、これからなるか、またはこれから必須的になることができる。当業界に知られているように、アラミドは、一般的に、アミン基とカルボン酸ハライドとの間の反応によって製造され得る。単純なAB同種重合体は、nNH-Ar-COCl→-(NH-Ar-CO)-+nHClのように見える。アラミドの様々な非限定的な例は、ケブラー(Kevlar)、トワロン(Twaron)、ノーメックス(Nomex)、ニュースター(New Star)及びテイジンコーネックス(Teijinconex)を含み、これらはAABB重合体である。ノーメックス、テイジンコーネックス及びニュースターは、主にメタ連結を含み、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(MPIA)である。ケブラー及びトワロンは、いずれも最も単純な形態のAABBパラポリアミドであるp-フェニレンテレフタルアミド(PPTA)である。PPTAは、p-フェニレンジアミン(PPD)及びテレフタロイルジクロライド(TDCまたはTCl)の産物である。1つ以上のタイプのアラミドが使用され得る。一実施形態において、アラミドは、ポリパラフェニレンテレフタルアミドである。別の実施形態において、アラミドは、2つ以上のタイプのアラミド、例えば、第1のポリパラフェニレンテレフタルアミド及び第1のものと異なる第2のポリパラフェニレンテレフタルアミドであるか、これを含む。一実施形態において、トワロン製品などが使用される。他の実施形態において、ケブラーが使用される。さらに他の実施形態において、他のアラミドが使用される。アラミド繊維20の総重量%は、前述された通りである。様々な実施形態において、2つ以上のアラミドが使用される場合、使用されるすべてのアラミドの総重量が、基材12の総重量を基準にして、50重量%超過~70重量%である限り、各アラミドは1~70重量%の任意の量で存在することができる。例えば、任意の1つ以上の個別アラミドは、基材12の総重量を基準にして、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、または70重量%の量で使用され得る。いくつかの実施形態において、2つのアラミドが使用され、前述したように、第1のアラミドは、基材12の総重量を基準にして、5~50、10~45、15~40、20~35、35~30、20~40、20~35、20~30、20~25、25~40、25~35、25~30重量%の量で使用され、第2のアラミドは、アラミドの総重量%が基材12の総重量を基準にして、50重量%超過~70重量%になるようにするバランス量(balance amount)で使用される。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0022】
様々な実施形態において、アラミド繊維20は、0.5~10mmの長さび300超過のカナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness)(CSF)を有する。他の実施形態において、450~550、例えば、530~550のCSFを有するより少なくフィブリル化されたアラミド繊維20が使用される。他の実施形態において、アラミド繊維20は、580~650または650超過のCSFを有する。反対に、アラミドパルプのようなより多くフィブリル化された繊維は、285~290のろ水度を有する。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0023】
用語「カナダ標準ろ水度」(T227 om-85)は、繊維のフィブリル化の程度が繊維のろ水度の測定値として開示され得ることを開示する。CSF試験は、1リットルの水中の3グラムの繊維の懸濁液が排水され得る比率の任意的の測定値を提供する経験的手続きである。したがって、より少なくフィブリル化されたアラミド繊維20は、他のアラミド繊維20またはパルプよりも摩擦材10からの流体のより高いろ水度またはより高い排水率を有する。430~650のCSFを有するアラミド繊維20を含む摩擦材10は、より多くフィブリル化されたアラミド繊維20を含む摩擦材10より優れた摩擦性能及び優れた材料特性を提供することができる。カナダ標準ろ水度が高いことと共に、繊維長さがより長いほど、高い空隙率及び良好な耐磨耗性を備えた摩擦材10が提供される傾向がある。アラミド繊維20がより少なくフィブリル化されたものほど(530~650のCSF)、良好な長期間耐久性及び安定した摩擦係数を示すことができる。
【0024】
アクリル繊維のような他の繊維が使用され得ることもまた考慮される。例えば、アクリル繊維は、少なくとも85重量%のアクリロニトリル単量体から形成されたもののような1つ以上の合成アクリル重合体であり得るか、またはこれらから形成され得る。
【0025】
充填剤:
このような繊維に加えて、図1図3及び図4に示したように、基材12はまた、基材12の総重量を基準にして、30重量%~50重量%未満の量で存在する充填剤24を含む。様々な実施形態において、充填剤24は、基材12の総重量を基準にして、31~49、32~48、33~47、34~46、35~45、36~44、37~43、38~42、39~41、30~45、30~40、30~35、35~49、35~45、35~40、40~49、40~45、または45~49重量%の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0026】
充填剤24は、特に制限されず、当業界に公知された任意のものであり得る。例えば、充填剤24は、補強充填剤または非補強充填剤であり得る。充填剤24は、シリカ、珪藻土、グラファイト及びこれらの組み合わせから選択され得る。様々な実施形態において、充填剤24は珪藻土である。充填剤24は、充填剤が珪藻土でない限り、シリカを含まれないことができる。
【0027】
他の実施形態において、充填剤24は、シリカ、炭素、グラファイト、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト(cordierite)、ムライト、シリマナイト(sillimanite)、スポジュメン(spodumene)、ペタライト(petalite)、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン及びこれらの組み合わせであるか、これを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。例えば、このような実施形態は、グラファイトを含むことができるが、シリカ及び/または珪藻土を含まれないことができる。様々なさらなる実施形態において、充填剤24は、珪藻土であるか、これを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。珪藻土はシリカを含む鉱物である。勿論、充填剤24のすべての粒子は、珪藻土であり得るか、または珪藻土、炭素、グラファイト及びアルミナの様々な組み合わせのような異なるタイプの粒子の組み合わせを含むことができる。含まれた充填剤24のタイプまたはタイプなどは、要求される物理的特性に応じて変化し得る。
【0028】
様々な実施形態において、基材12は、充填剤24の一部として、またはそれから独立的にグラファイトをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、基材12は、基材12の総重量を基準にして、20重量%以下の量でグラファイトをさらに含むことができる。グラファイトが含まれる場合、これは、基材12の総重量を基準にして0を超過し、典型的に、20重量%未満の量で含まれるであろう。様々な実施形態において、グラファイトは、基材12の総重量を基準にして、1~20、2~19、3~18、4~17、5~16、6~15、7~14、8~13、9~12、10~11、5~10、5~15、5~19、10~15、10~19、または15~19重量%の量で存在する。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0029】
他の実施形態において、グラファイトは、充填剤24自体に対して前述された任意の量で、例えば、基材12の総重量を基準にして、31~49、32~48、33~47、34~46、35~45、36~44、37~43、38~42、39~41、30~45、30~40、30~35、35~49、35~45、35~40、40~49、40~45、または45~49重量%の量で含まれる。言い換えれば、グラファイトは、充填剤24自体であることができ、したがって、充填剤24自体が存在することができる前述された任意の量で存在することができる。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。用語「必須的になる」は、1つ以上の前述された充填剤24を含む実施形態及び1つ以上の前述された充填剤24が同時に含まない実施形態を開示することができる。
【0030】
充填剤24の役割は、典型的に、摩擦材10の細孔サイズに影響を及ぼし、また、弾性に影響を及ぼすことができ、それぞれ以下でより詳細に開示される。例えば、充填剤24の個々の粒子のサイズがより大きい場合、摩擦材10が形成されるとき、粒子がしっかり共にパッキング(packing)されない。これは、より大きい細孔サイズの形成につながる傾向がある。反対に、充填剤24の個々の粒子のサイズがより小さい場合、摩擦材10が形成されるとき、粒子がよりしっかり共にパッキングされる。これは、より小さい細孔サイズの形成につながる傾向がある。
【0031】
様々な実施形態において、充填剤24は、後述する任意の1つ以上の摩擦調整剤22から選択され得る。代替的に、下記の摩擦調整剤22のうちの任意の1つは、前述された任意の1つ以上の充填剤24から選択され得る。充填剤24は、タイプ、使用量及び位置に応じて、摩擦調整剤22として作用するか、それと特性を共有することができ、及び/または摩擦調整剤22が、充填剤24として作用するか、それと特性を共有することができる。
【0032】
充填剤24及び/または摩擦調整剤22は、約0.5~約80ミクロンの粒子サイズを有することができる。粒子サイズは、例えば、細孔サイズ及び空隙率を最大化するために、摩擦材10の3次元構造を注文製作するのに使用され得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0033】
堆積物層:
図1図4に示したように、摩擦材10はまた、堆積物層14を含む。堆積物層14は、層または単純に基材12に対する追加物層としてさらに画定され得る。層がある場合、堆積物層14は、典型的に、2次層として開示され、典型的に、分離型ではなく、エッジ及び/または境界によく画定される。その代わりに、2次層は、典型的に、非分離型であり、前述された第1層として、基材12にブレンディングされ得る。例えば、2次層は、勾配タイプパターンで基材12にブレンディングされ得る。
【0034】
基材12と堆積物層14との組み合わせは、典型的に、基板材料として開示され得るものを形成する。基板材料の面は、代替的に、摩擦発生面18として開示され得る。この面は、(樹脂26/34なし)単に基材12及び堆積物層14であるか、これを含むことができるか、または基材12、堆積物層14及び樹脂26/34(硬化したか、硬化しなかったか)であるか、これを含むことができる。典型的に、用語「基板材料」は、樹脂26/34(硬化したか、硬化しなかったか)が含まれない実施形態を開示する。
【0035】
様々な実施形態において、摩擦材10は基材12を含み、堆積物層14自体は摩擦発生層として開示される。このような実施形態において、基材12は、結合面16を提供する。摩擦発生層(例えば、堆積物層14)は、その後、基材12の結合面16に平行に配置され、これに反対側に向かう摩擦発生面18を提供することができる。すなわち、堆積物層14自体は、摩擦発生面18を形成することができるか、または基材12及び堆積物層14の組み合わせ(例えば、分離型層として存在しない場合)は、摩擦発生面18を形成することができる。様々な実施形態において、摩擦材10は、摩擦発生面18と結合面16との間の距離として画定される厚さを有する。様々な他の実施形態において、摩擦発生層は、摩擦発生面18から結合面16に向かって厚さの30%以下、代替的に、40%以下まで延びる。
【0036】
摩擦調整剤:
図1図4に示したように、堆積物層14は、摩擦調整剤22を含む。用語「摩擦調整剤22」は、当業界によく知られており、様々な化合物の粒子であるか、これを含むことができる。例えば、摩擦調整剤22は、シリカ、珪藻土、ゴム、グラファイト、カシューナッツ及びこれらの組み合わせから選択され得る。様々な実施形態において、摩擦調整剤22は、シリカ及び/または珪藻土であるか、これを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。他の実施形態において、摩擦調整剤22は、シリカ、炭素、グラファイト、アルミナ、マグネシア、酸化カルシウム、チタニア、セリア、ジルコニア、コージエライト、ムライト、シリマナイト、スポジュメン、ペタライト、ジルコン、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化ホウ素、炭化ハフニウム、窒化ケイ素、窒化チタン、ホウ化チタン及びこれらの組み合わせであるか、これを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。様々なさらなる実施形態において、摩擦調整剤22は、珪藻土であるか、これを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。珪藻土は、シリカを含む鉱物である。珪藻土は、相対的に高い摩擦係数を示す安価な研磨材料である。他の実施形態において、珪藻土、及び/または二酸化ケイ素のようなシリカ粒子が使用される。
【0037】
シリカ粒子は、繊維に強く結合し得る安価な無機材料である。勿論、摩擦調整剤22のすべての粒子は、珪藻土であり得るか、または代替的に、珪藻土、炭素、グラファイト及びアルミナの様々な組み合わせのような異なるタイプの粒子の組み合わせを含むことができる。Celite及びCelatomは、使用され得る珪藻土の2つの商標名である。用語「必須的になる」は、前述された摩擦調整剤22のうちの1つ以上を含む実施形態及び1つ以上の前述された摩擦調整剤22が同時に含まない実施形態を開示することができる。例えば、このような実施形態は、グラファイトを含むことができるが、シリカ及び/または珪藻土が含まれないことができる。他の実施形態において、摩擦調整剤22は、シリカ粒子、樹脂粉末、例えば、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂及びこれらの混合物、部分的及び/または完全炭化された炭素粉末及び/または粒子、及びこれらの組み合わせから選択される。様々な実施形態において、摩擦調整剤22は、摩擦材10に高い摩擦係数を提供する。使用される摩擦調整剤22のタイプまたはタイプなどは、要求される摩擦特性に応じて変化し得る。いくつかのタイプの摩擦調整剤22はまた、滑らかな摩擦面を有する摩擦材10を提供することができ、摩擦材10に良好な「シフトフィール(shift feel)」及び摩擦特性を提供して、例えば、トランスミッション46で使用される場合、任意の「震え」が最小化され得る。
【0038】
摩擦調整剤22は、基材12に3次元面を提供することができる。様々な実施形態において、摩擦調整剤22は粒子形態である。例えば、摩擦調整粒子の均一性は、0.5~80ミクロン、例えば、0.5~20ミクロンの範囲及びサイズの粒子を使用することによって達成され得る。様々な実施形態において、摩擦調整剤22の粒子は、100nm~80μm、500nm~30μm、または800nm~20μmのアベレージ(average)直径を有する。いくつかの実施形態において、摩擦調整粒子サイズが大きすぎるか小さすぎる場合、最適な3次元構造が達成されない。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0039】
様々な実施形態において、摩擦調整剤22は、弾性でゴムのような特性を示すエラストマー粒子である。様々な適切なエラストマー粒子は、カシューナッツシェルオイル、ゴム及びこれらの組み合わせから誘導された粒子である。いくつかの実施形態において、エラストマー粒子は、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム(「SBR」)、ブチルゴム、及びハロゲン化ゴム、例えば、クロロブチルゴム、ブロモブチルゴム、ポリクロロプレンゴム及びニトリルゴムを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなるゴム粒子である。いくつかの実施形態において、エラストマー粒子は、シリコーンゴムを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなることができる。他の実施形態において、エラストマー粒子は、ニトリルゴムを含むか、これから必須的になるか、またはこれからなる。別の実施形態において、エラストマー粒子は、カシューナッツ粒子またはカシューナッツシェルオイルから誘導された粒子を含むか、これから必須的になるか、またはこれからなるエラストマー粒子を含む。用語「必須的になる」は、1つ以上のタイプの前述された化合物を含む実施形態及び1つ以上の他のタイプの前述された化合物が含まれない実施形態を開示することができる。
【0040】
様々な実施形態において、エラストマー粒子は、40μm未満、代替的に2μm~40μm、代替的に5μm~30μm、代替的に5μm~15μmのアベレージ直径を有する。有利には、40μm未満の平均直径を有する摩擦発生層のエラストマー粒子は、典型的に、弾性を向上させ、予想外に、向上した静止摩擦係数(COF)を有する摩擦材10を生成することができる。また、様々な実施形態において、エラストマー粒子は、200℃以上、代替的に300℃以上、代替的に400℃以上の熱安全性を有する(そして、当業者によって理解されるように、熱安全性の上限値を有する)。用語「熱安全性」は、エラストマー粒子が溶融されないか、軟化されないか、分解されないことを開示する。エラストマー粒子の熱安全性は、典型的に、熱重量測定分析法(「TGA」)によって測定される。TGAを介して分析されたエラストマー粒子のサンプルが重量を失い始める温度は、エラストマー粒子が熱安全性を失う温度である。
【0041】
様々な実施形態において、摩擦調整剤22は、基材12の総重量を基準にして、0.2~20重量%の量で使用される。様々な実施形態において、摩擦調整剤22は、基材12の総重量を基準にして、0.2~15、0.2~10、0.2~5、1~10、1~5、2~5、2~6、2~15などの量で使用される。様々な実施形態において、基材12の表面上の摩擦調整剤22の塗布面積は、表面積の3~90%である。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0042】
様々な実施形態において、充填剤24及び摩擦調整剤22は、同一であるか異なることができる。例えば、充填剤24及び摩擦調整剤22は、同一であることができ、例えば、両方とも珪藻土であり得る。しかし、同時に、充填剤24及び摩擦調整剤22は、異なるタイプの珪藻土であり得る。例えば、珪藻土は、フラックス焼成されるか、天然のものであるか、またはこれらの組み合わせであり得る。また、珪藻土は、0.5~25、1~25、5~25、5~20、5~15、5~10、0.5~5、1~5、2~4、10~20、11~19、12~18、13~17、14~16、または15マイクロメータの平均粒径を有することができる。珪藻土はまた、当業者に公知された方法を使用して計算されるように、10%スラリー中に使用される場合、7、8、9または10のpHを有することができる。珪藻土は、120~220、130~210、140~200、150~190、160~180、170~180、130~160、または140~150の吸油量(lb./100lbs)(Gardner-Coleman)を有することができる。珪藻土は、当業者によって認識されるように、円筒形粒子または異なる形状の粒子を有することができる。さらに、珪藻土は、5、4、3、2、1、または0.5以下の自由水分(最大水分%)を有することができる。珪藻土に対する非限定的なオプションは、図10A及び図10Bに示す。
【0043】
樹脂:
図1図4に示したように、摩擦材10はまた、摩擦材10全体に配置されるか、分散された樹脂26/34を含む。言い換えれば、樹脂26/34は、摩擦材10全体にわたって均一であるか、または不均一に分散され得る。様々な実施形態において、樹脂26/34は、基材12全体にわたって均一であるか、または不均一に分散され、1つ以上の堆積物層14、充填剤(複数)24及び/または摩擦調整剤(複数)22を部分的にまたは全体的にカプセル化することができる。図面において、符号26は、未硬化の樹脂を指す。また、図面において、符号34は、部分硬化または完全硬化樹脂を指す。
【0044】
樹脂26/34は、当業界に公知された任意のものであることができ、硬化するか、硬化性であり得る。代替的に、樹脂26は、硬化しないタイプであり得る。様々な実施形態において、摩擦材10の形成ステップに応じて、樹脂34は、部分的に硬化するか、全体的に硬化するか、または全体よりも少なく硬化し得る。代替的に、樹脂26は、全く硬化しないこともある。樹脂26/34は、製造過程のどのステップが検討されるかに応じて、硬化するか、未硬化するか、または部分的に硬化し得る。
【0045】
様々な実施形態において、樹脂26/34は、摩擦材10に構造的剛性を提供するのに適した任意の熱硬化性樹脂であり得る。使用され得る様々な樹脂は、フェノール樹脂、フェノール系樹脂及びフェノール変性樹脂を含む。フェノール樹脂は、芳香族アルコール、典型的にフェノール及びアルデヒド、典型的にホルムアルデヒドの縮合によって生成される熱硬化性樹脂のクラスである。フェノール系樹脂は、典型的に、任意の溶媒または加工酸を除いて、すべての樹脂の総重量を基準にして、少なくとも50重量%のフェノール樹脂を含む熱硬化性樹脂ブレンドである。様々なフェノール系樹脂は、エポキシ、ブタジエン、シリコーン、桐油(tung oil)、ベンゼン、カシューナッツオイルなどのような調整成分を含むことができることが理解されるべきである。フェノール変性樹脂において、フェノール樹脂は、一般的に、50重量%以上(存在する任意の溶媒は除く)で存在する。しかしながら、1つ以上の実施形態において、樹脂26/34は、シリコーン-フェノール樹脂混合物の混合物の重量を基準にして(溶媒及び他の加工酸は除く)、例えば、5~80重量%のシリコーン樹脂を含むことができる。使用され得るフェノール樹脂及びフェノール-シリコーン樹脂の例が、米国特許第5,998,307号に開示されており、これは、様々な非限定的な実施形態において、その全文が本明細書に明確に組み込まれる。
【0046】
使用され得るシリコーン樹脂は、熱硬化シリコーンシーラント(sealant)及びシリコーンゴムを含むことができる。キシレン及びアセチルアセトン(2、4-ペンタンジオン)を含むもののような様々なシリコーン樹脂がまた使用され得る。他の実施形態において、残余(溶媒及び他の加工補助剤は除く)フェノール樹脂と共に、5~25重量%のエポキシ化合物を含むエポキシ変性フェノール樹脂がまた使用され得る。
【0047】
様々な実施形態において、樹脂26/34は、基材12及び堆積物層14の総重量を基準にして、25~60重量%の量で存在する。例えば、樹脂26/34は、基材12及び堆積物層14の総重量を基準にして、25~35、25~30、30~40、30~35、35~40、40~60、45~55、45~50、または50~55重量%の量で存在することができる。この値は、代替的に、樹脂「ピックアップ(pick up)」として開示され得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。一旦硬化されると、樹脂34は、摩擦材10に強度及び剛性を付与し、適切な潤滑剤の流動及び保持のために所望の空隙率を維持しながら、アラミド繊維20、充填剤粒子24などを接着させる。
【0048】
150℃未満の熱的劣化温度を有する材料の非含有:
摩擦材10は、200℃、175℃または150℃未満の熱的劣化温度を有する材料(例えば、繊維)を含有しないこともできる。用語「熱的劣化温度」は、当業界において、材料の発火点、すなわち、火炎またはスパークのような外部発火源なしに物質が正常の大気で自然発火する最低温度として認識される。この温度は、燃焼に必要な活性化エネルギーを供給するのに必要である。本発明に関連して、摩擦材10がクラッチアセンブリに使用される場合、発生する摩擦によって高温に到逹することができる。温度が熱的劣化温度を超過すると、材料(例えば、繊維)が燃焼及び/または分解され、摩擦材10の効率性を減少させることができる。200℃未満の熱的劣化温度を有する材料(例えば、繊維)の例は、綿、セルロース及びこれらの組み合わせである。様々な実施形態において、摩擦材10は、綿を含有せず及び/または、セルロース繊維を含有しない。セルロース繊維は、天然セルロース、再生セルロース、再生リヨセルセルロース、及びこれらの組み合わせであり得る。天然セルロースは、β(1→4)-グリコシド-結合グルコース繰り返し単位を含み、繰り返し単位(「n」)の大多数が一般的に100~10,000個の範囲の一般的な高分子化学式(Cを有する直鎖多糖類である。再生セルロースは、天然セルロースと同一の化学式を有し、ビスコース工程、銅アンモニウム工程(cuprammonium process)及び有機溶媒紡糸工程(organic solvent spinning process)を含むいくつかの工程のうちの1つからの天然由来高分子(例えば、木材パルプまたは竹)から製造される。再生セルロースのいくつかの例は、レーヨン、モーダル及びリヨセルである。セルロース誘導体は、グルコース単位上の水酸基が、例えば、エステル基で完全にまたは部分的に置換された変性セルロースである。セルロース誘導体のいくつかの例は、セルロースアセテート及びセルローストリアセテートである。他の実施形態において、摩擦材10は、200℃未満の熱的劣化温度を有する繊維が含まれないことができるが、実際には、200℃未満の熱的劣化温度を有する充填剤24及び/または他の材料を含むことができる。
【0049】
多孔質層:
さらなる実施形態において、基材12は、多孔質層としてさらに画定され、摩擦調整剤22の粒子は、多孔質層内にまたはその全体に配置される。多孔質層は、環境に暴露するための第1最外側面(例えば、前述された摩擦発生面18であり得る)及び(金属板など)基板32に対する接着のための第2最外側面を含むことができる。第2最外側面は、前述された結合面16であり得る。多孔質層は、第1最外側面に最も近接して配置された上部象限38及び第2最外側面に最も近接して配置された下部象限40をさらに画定することができる。摩擦調整剤22の粒子は、多孔質層の上部象限38に配置され得る。
【0050】
摩擦材の物理的特性:
図1図4に示したように、摩擦材10は、典型的に、細孔36、例えば、複数の細孔36を画定する。細孔36は、各々細孔サイズを有する。アベレージまたは平均細孔サイズは、典型的に、分布として表示される。細孔サイズは、ASTM D4404-10を使用して測定され得る。様々な実施形態において、メジアン細孔サイズは、代替的に、摩擦材10のすべての細孔サイズの範囲は、ASTM D4404-10を使用して測定時、0.5μm~50μm、1μm~50μm、5μm~50μm、10μm~45μm、15μm~40μm、20μm~35μm、25μm~30μm、30μm~35μm、5μm~15μm、5μm~10μm、10μm~15μm、10μm~20μm、5μm~20μm、5μm~7μm、7μm~10μm、7μm~15μm、8~15、9~14、10~13、または11~12μmである。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0051】
他の実施形態において、摩擦材10は、ASTM D4404-10を使用して測定時、60%~85%の空隙率を有する。摩擦材10の空隙率は、代替的に、空気に開放された総摩擦材10の百分率または、空気であるか、固体ではない容積を基準にして、総摩擦材10の百分率として記載することができる。様々な実施形態において、摩擦材10は、ASTM D4404-10を使用して測定時、60~80、60~75、60~70、60~65、65~85、65~75、65~70、70~85、70~80、70~75、75~85、75~80、または80~85%の空隙率を有する。別の実施形態において、摩擦材10は、ASTM D4404-10を使用して測定時、60、61、62、63、64、65、66、67、78、69、または70%の空隙率を有する。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0052】
様々な実施形態において、摩擦材10は、使用中により均一な熱放散を可能にする改善された弾性及び/または空隙率と共に改善された震え防止特性を示す。トランスミッション内の流体は、摩擦材10の細孔36を通って急速に移動することができる。また、改善された弾性及び/または空隙率は、摩擦材10にさらに均一な圧力または一定の圧力分布を提供して、一定しないライニングの摩耗または「ホットスポット(hot spot)」が最小化されるようにする。
【0053】
摩擦材10の構造がより多孔質であるほど、熱がより効率的に放散される。摩擦材10が多孔質である場合、使用中に摩擦材10の係合の間に摩擦材10の内部及び外部のオイル流動は、より急速に発生する。例えば、摩擦材10がより高い平均流動細孔直径及び空隙率を有する場合、摩擦材10の細孔36を通る自動トランスミッション流体のより良好な流動によって、摩擦材10がより低温で作動するか、トランスミッション内により少ない熱が発生する可能性が大きくなる。トランスミッションシステムの作動中に、特に高温において、自動トランスミッション流体の破損でよって、時間がたつにつれて摩擦材10上にオイル堆積物層が発生する傾向がある。オイル堆積物層は、細孔36のサイズを減少させる傾向がある。したがって、摩擦材10がより大きい細孔36で形成される場合、オイル堆積物層後の残存する/生成された細孔サイズがより大きくなる。摩擦材10の空隙率は、繊維、樹脂、充填剤、充填剤粒子サイズ及び基板材料重量の選択を基準にしてさらに調整され得る。
【0054】
様々な実施形態において、摩擦材10は、高い空隙率を有することによって、使用中に高い流体透過用量になることができる。このような実施形態において、摩擦材10が多孔質だけでなく、圧縮性であることが重要であり得る。例えば、摩擦材10に透過された流体は、典型的に、トランスミッションの作動中に加えられる圧力下で摩擦材10から急速に圧搾または放出され得るべきであるが、摩擦材10は、典型的に崩壊されてはいけない。また、摩擦材10が高い熱伝導性を有して、トランスミッションの作動中に発生された熱が急速に放散されるようにすることが重要であり得る。
【0055】
樹脂がない摩擦材10の総厚さTは、典型的に、0.3~1.6、0.4~1.5、0.5~1.4、0.6~1.3、0.7~1.2、0.8~1.1、または0.9~1mmである。この厚さは、金属板に結合される前の厚さを指称し、キャリパー(caliper)の厚さと指称され得る。この厚さTは、典型的に、堆積物層(例えば、樹脂がない基板)を含む繊維/基材の厚さである。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0056】
金属板に結合された後、摩擦材10の総厚さTは、典型的に、0.3~1.2、0.4~1.1、0.5~1、0.6~0.9、または0.7~0.8mmである。この厚さTは、典型的に、堆積物層及び樹脂を含む繊維/基材の厚さであり、金属板に結合された後に測定される。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0057】
本発明の摩擦材10は、例えば、摩擦板30を形成するのに使用される場合、通常的に、後述される試験を使用して測定時、例えば、0.10~0.16、0.11~0.15、0.12~0.14、または0.12~0.13の動的摩擦係数(COF)及び当業者によって認識されるように、それから生成されたトルク曲線を示す。様々な実施形態において、当業者に理解され得るように、摩擦材10は、特により遅い速度で、時間がたつにつれて一定または漸次的に減少するトルク曲線を示す。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0058】
COFを測定するために使用された試験は、GK3試験ベンチで行われる。4つの両面摩擦板及び相応する適用DCT流体は、車両発進時のデュアルクラッチトランスミッションの作動環境をシミュレーションするのに使用される。適用DCT流体は、22L/分の流速で摩擦材の摩擦界面に供給される。このような流速は、摩擦材の摩擦界面及びそれらの対向する結合面の温度が440℃に到逹するようにする。発進試験には、以下の追加試験パラメータがある:シミュレーション慣性:0.85KgM;275KWの最大電力;350KJのエネルギー;6.7W/mmの特定のネット電力(specific net power);0.42MPaのライニング圧力;6500rpmの最大回転速度;1.5秒の停止時間。摩擦トルク勾配の測定は、摩擦材の係合/分離サイクル回数に対してプロットされ得る。正の摩擦トルク勾配は、一般的に、品質摩擦性能を示す。負の摩擦トルク勾配は、一般的に、グレイジングを示す。
【0059】
様々な実施形態において、摩擦材10/摩擦板30は、当業者によって理解されるように、基板32との結合後の摩擦材10の厚さ(硬化樹脂34を含む)と比較して、基板32との結合前の繊維及び充填剤24(樹脂26/34なし;また、「基板材料」ともいう)の厚さの測定後に測定時、10~30%または10~20%、例えば、11~19%、12~18%、13~17%、4~16%、または15%の圧縮率を示す。様々な実施形態において、圧縮は、前記で最初に導入されたように、T及びTを使用して計算され得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0060】
さらに他の実施形態において、本発明の摩擦材10は、例えば、摩擦板30を形成するのに使用される場合、樹脂34の硬化及び金属板との結合後、0.4~1.2mmの最終ライニング厚さを有する。他の実施形態において、この厚さは、0.5~1.1、0.6~1、0.7~0.9、または0.8~0.9mmである。これは、上で最初に紹介されたTとして説明され得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0061】
さらなる実施形態において、本発明の摩擦材10)は、例えば、摩擦板30を形成するのに使用される場合、10、50、100、200、500、1000、または2000サイクル後に当業者によって理解されるように、ホットスポット及び/または熱ステイン(heat stain)を示さず、ここで、サイクルは、当業者によって理解される。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0062】
これらの物理的特性のすべてに関連して、さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。様々な非限定的な実施形態において、摩擦材10は、弾力性または弾性であるが、永久変形、摩滅及び応力に対して耐性があり、高い耐熱性を有し、速く熱を放散させることができ、長期間持続し、安定して一定した摩擦性能を有するもののような様々な許容可能な特性を有するべきである。
【0063】
さらなる非限定的な実施形態:
他の実施形態において、摩擦材10は炭素繊維(複数)が含まれない。さらなる実施形態において、摩擦材10が珪藻土を含まない場合、摩擦材10はシリカが含まれない。代替的に、摩擦材10はグラファイトが含まれないことができる。同様に、摩擦材10は、前記で詳細に開示された前述の充填剤24及び/または摩擦調整剤22のうちの任意の1つ以上が含まれないことができる。摩擦材10は、いくつかのアラミド繊維20が摩擦材10を形成するのに使用される限り、前述されたもののうちの任意のもののようないくつかのタイプのアラミド繊維20(例えば、特定のサイズか、またはフィブリル化されたもの)を含有しないこともできる。
【0064】
さらなる非限定的な実施形態において、摩擦材10は、潤滑剤の存在下で、対向した結合面(例えば、分離板の表面)との界面摩擦係合に適用される摩擦発生(または、界面と呼ばれる)面18を含む。(硬化)樹脂26/34と接着された摩擦調整剤22を含む基材12及び堆積物層14は、摩擦発生面18及びそれに隣接して位置する。アラミド繊維20繊維は、摩擦調整剤22の粒子を保持し、これらを摩擦発生面18またはその近所に維持させる相互連結されたウェブ(web)を形成する発散フィブリルを含むことができる。アラミド繊維20の一部及び/または摩擦調整剤22の粒子は、摩擦係合の間に対向した結合面と接触するようにするために、摩擦発生面18に露出することができる。摩擦調整剤22の粒子を摩擦発生面18またはその近所に維持させるウェブの能力は、安定した摩擦係数を有する摩擦材10を提供することができる。また、一部の場合、熱的劣化されやすいアラミド繊維20は、アンチグレイジング効果を有することができる。アラミド繊維20の熱的劣化は、摩擦発生面18から表面-堆積物層14グレーズ(glaze)材料を除去し、新しいアラミド繊維20を持続的に露出させることによって、グレイジングに対して耐性になるようにすることができる。
【0065】
さらに他の実施形態において、摩擦材10は、摩擦発生面18と対向した結合面16との間の距離によって画定される厚さを有することができる。対向した結合面16は、基板32または他の材料(例えば、金属板)との結合が達成されるようになっている摩擦材10の面である。摩擦発生面18から対向した結合面16に向かって延びる摩擦安全性領域は、バランス量のアラミド繊維20及び摩擦調整剤22の粒子を含むことができる。摩擦安全性領域は、摩擦発生面18から摩擦材10の厚さの40%以下、20%以下、10%以下、または5%以下の深さまで延びることができる。例えば、摩擦材10が0.25mm~2mmの厚さである場合、摩擦安全性領域は、摩擦発生面18から0.0125mm(0.25mmの5%)~0.80mm(2mmの40%)以下の深さまで内部方向に延びることができる。摩擦安全性領域下部の残余摩擦材10は、摩擦安全性領域と同一の一般構造を有するか、それと異なる構造を有することができる。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0066】
様々な実施形態において、摩擦材10は、当業者に公知された任意の適切な技術によって基板32に結合される。基板32のいくつかの例は、これらに限定されるのではないが、クラッチ板、シンクロナイザリング及びトランスミッションバンドを含む。摩擦材10は、摩擦発生面18及び対向した結合面16を含むことができる。摩擦発生面18は、潤滑剤の存在下で対向する回転面との選択的な界面摩擦係合に適用されることができ、対向した結合面16は、接着剤の助けでまたは他の適した結合技術によって基板32との結合付着が行われる。潤滑剤は、例えば、自動トランスミッション流体のような任意の適した潤滑油であり得る。摩擦材10上の潤滑剤の流速は、燃費を向上させるためのものであって、摩擦発生面18での温度が、長時間にわたって350℃を超過するように管理され得る。様々な実施形態において、摩擦材10は、350℃超過500℃以下で順調に作動するが、このような高温環境にのみ制限されるのではなく、所望の場合、摩擦発生面18での温度が350℃未満に維持されるように設計された湿式クラッチに使用され得る。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0067】
さらに他の実施形態において、摩擦材10は、摩擦材10の摩擦安全性領域を支持する基材繊維材料を含む。基材繊維材料は、いくつかの実施形態において、0.25mm~2mm(例えば、T)であり得る基材繊維材料の厚さを画定する上部面及び下部面(例えば、前述された結合面16及び摩擦発生面18)を有する。摩擦安全性領域を形成するアラミド繊維20及び摩擦調整剤22の粒子は、基材繊維材料と高度に混ぜ合わされ、基材繊維材料の上部面が摩擦材10の摩擦発生面18と一般的に一致するようになるか、別の実施形態において、アラミド繊維20及び摩擦調整剤22の粒子は、基材繊維材料と部分的に混ぜ合わされ、70μm以下、50μm以下、20μm以下、または10μm以下の厚さの表面層を形成することによって、基材繊維材料の上部面が摩擦発生面18と一致しないようになることができる。摩擦材10の様々な特性は、アラミド繊維20及び摩擦調整剤22の粒子が基材繊維材料の上部面にどれだけ浸透または蓄積されるかを測定することができる。このような特性は、基材繊維材料の空隙率と、摩擦安全性領域に含まれたアラミド繊維20及び摩擦調整剤22の粒子の量を含む。様々な実施形態において、基材繊維材料の下部面は、基板32に隣接して位置され、典型的に、摩擦材10の対向した結合面16と一致する。(硬化)樹脂26/34は、基材繊維材料の上部面の上に位置する摩擦安全性領域の任意の部分だけでなく、基材繊維材料の全体に均一に分布され、接着性、剛性及び構造的支持を提供することができる。摩擦材10の(硬化)樹脂26/34の典型的な重量%は、様々な実施形態において、15~50重量%である。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0068】
他の実施形態において、摩擦材10の摩擦安全性領域は、摩擦界面での温度が350℃を超過する場合、結果的に、摩擦材10が意図された摩擦性能を長期間の間に維持するようにする摩擦発生面18の規則的な再生が可能にするように構成され得る。基材繊維材料のバルク構造は、アラミド繊維20及び充填剤24の配列によって提供され得る。
【0069】
さらに他の実施形態において、本発明は、米国特許第6,630,416号及び/または米国特許出願公開第2013/0037373号に記載されたような任意の1つ以上の構成要素、方法ステップなどを含むことができ、これら文献の各々は、様々な非限定的な実施形態において、その全文が本明細書に明確に組み込まれる。代替的に、本明細書に開示された任意の1つ以上の構成要素などは、本明細書に組み込まれた前述された文献のうちの一方または両方に記載された説明を使用して変形されるか、さらに記載され得る。
【0070】
他の実施形態において、摩擦材10及び/または基材12、堆積物層14、または樹脂26/34、または前述された任意の他の構成要素のうちの任意のものは、金属繊維、炭素繊維、炭素粒子、炭化された炭素粒子、樹脂粉末、及び/またはこれらの組み合わせが含まれないことができる。
【0071】
さらに他の実施形態において、基材層12は、それぞれ基材12の総重量を基準にして、約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、または60重量%のアラミド繊維(例えば、ポリパラフェニレンテレフタルアミド)またはその範囲、約30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40重量%の珪藻土またはその範囲、及び約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15重量%のグラファイトまたはその範囲を含むことができる。また、樹脂(例えば、樹脂ピックアップ)は、約30、31、32、33、34、または35重量%またはその範囲の量で存在することができる。また、摩擦材10の密度は、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、または0.75g/cmまたはその範囲であり得る。これらの実施形態のすべては、200℃未満の熱的劣化温度を有する材料を含有しない。前述した値及びその範囲のすべての組み合わせは、様々な非限定的な実施形態において本明細書に明確に考慮される。また、これらの実施形態のうちの任意のものは、本明細書に記載された前述された物理的特性のうちの任意の1つ以上を有することができる。
【0072】
さらなる実施形態において、堆積物層14の摩擦調整剤22及び基材12の充填剤24は、両方とも珪藻土であり、当業者によって理解されるような同一の形態を有する。このような実施形態において、摩擦調整剤22及び充填剤の量は、互いに同一であるかまたは異なることができる。
【0073】
摩擦板:
図3に示したように、本発明はまた、前記で先立って紹介したような基板32(例えば、金属板)を含む摩擦板30を提供する。基板32は(少なくても)2つの面42、44を有し、摩擦材10は、典型的に、これらの面42、44のうちの一方または両方に結合される。典型的に、摩擦板30は、摩擦材10が一面または両面42、44に接着または結合される場合、形成される。一面または両面42、44に対する摩擦材10の結合または接着は、当業界に知られた任意の接着剤または手段、例えば、フェノール樹脂または前述された任意の樹脂26/34によって達成され得る。本発明はまた、当業者によって選択されるような摩擦板30及び分離板を含むクラッチアセンブリを提供する。本発明はまた、クラッチアセンブリ48を含むトランスミッション46を提供する。トランスミッション46は、自動トランスミッションまたは手動トランスミッションであり得る。
【0074】
さらなる実施形態において、本発明は、基板32及び摩擦材10を含む高エネルギー発進クラッチ用摩擦材10を開示する。摩擦材10は、それぞれ細孔サイズを有する前述された細孔36を画定する。これらの実施形態において、摩擦材10は、環境に暴露するための第1最外側面及び金属板に対する接着のための第2最外側麺を有する多孔質1次層を含み、該多孔質1次層は、第1最外側面に最も近接して配置された上部象限38及び上部象限38と接触され、第2最外側面に最も近接して配置された下部象限40をさらに画定する。多孔質1次層は、前述されたような基材12層であり得る。典型的に、多孔質1次層は、多孔質1次層の総重量を基準にして、50~70重量%の量で存在するアラミド繊維20及び多孔質1次層の総重量を基準にして、30~50重量%の量で存在する珪藻土を含む。摩擦材10はまた、1次層に含浸された硬化フェノール樹脂34を含む。これらの実施形態において、摩擦材10は、前述されたような空隙率及びメジアン細孔サイズを有する。さらに、摩擦材10は、200℃未満の熱的劣化温度を有する材料が含まれない。関連する実施形態において、アラミド繊維20は、第1のポリパラフェニレンテレフタルアミド及び、第1のそれとは異なる第2のポリパラフェニレンテレフタルアミドを含む。他の実施形態において、摩擦調整剤22は珪藻土であり、多孔質1次層は、多孔質1次層の総重量を基準にして、20重量%以下の量でグラファイトをさらに含む。さらなる非限定的な実施形態において、前述された範囲の限界点を含み、その以内のすべての値及び値の範囲が本明細書において明確に考慮される。
【0075】
本発明はまた、摩擦材10と基板を含む摩擦板自体、及び摩擦板と分離板を含むクラッチアセンブリを提供する。本発明はまた、クラッチアセンブリを含むトランスミッションを提供する。
【0076】
摩擦材形成方法:
本発明はまた、摩擦材を形成する方法を提供する。様々な実施形態において、本方法は、繊維を含む基材を形成するステップ、基材の少なくとも1つの面を摩擦調整粒子でコーティングして堆積物層を形成するステップ、基材/堆積物層(また、基板材料としてもいう)を樹脂で含浸するステップ、及び次いで、含浸された基材/堆積物層を当業者が理解できるように、所定時間所定温度で硬化させるステップを含む。例えば、基材12は、フェノール樹脂またはフェノール系樹脂で含浸されることができ、所定時間所望の温度に加熱され、摩擦材10を形成することができる。加熱は約350°F~450°Fの温度でフェノール樹脂を硬化させる。シリコーン樹脂のような他の樹脂が存在する場合、加熱は約350°F~450°Fの温度でシリコーン樹脂を硬化させる。その後、含浸され硬化された摩擦材10は、適切な手段によって所望の基板に接着され得る。
【0077】
実施例
本発明を代表するものではない摩擦材の比較例(比較例1)と共に本発明を代表する摩擦材の2つの実施例(実施例1及び2)を形成する。形成後、実施例1及び2ならびに比較例1を評価して、以下で提示されるような様々な物理的特性を測定する。実施例1及び2ならびに比較例1の組成物を以下の表1に提示し、ここで、構成要素は、基材の総重量を基準にして重量%で提示される。
【0078】
【表1】
【0079】
使用される樹脂の量は、典型的に、当業界で「樹脂ピックアップ」として開示される。表1に提示された樹脂の量は、基材及び堆積物層を合せた総重量を基準にした重量%である。
【0080】
構造繊維A、B、Cは、様々なタイプのポリパラフェニレンテレフタルアミドを含む。
【0081】
200℃未満の熱的劣化温度を有する材料は、綿を含む。
【0082】
充填剤A~Gは、炭素、珪藻土、シリカ、及びグラファイトを含む。
【0083】
摩擦調整剤A、Bは、珪藻土及びシリカを含む。
【0084】
摩擦板の形成:
形成後、実施例1及び2ならびに比較例1を、フェノール接着剤を使用してスチールコア板の表面にそれぞれ結合させて、一連の摩擦板(それぞれ、摩擦板1及び2ならびに比較摩擦板1)を形成する。この方法は、当業者に認識され、よく理解されている。
【0085】
摩擦板1及び2ならびに比較摩擦板1を、GK3試験ベンチを使用して評価する。4つの両面摩擦板及び相応する適用DCT流体を使用して、車両発進時のデュアル-クラッチトランスミッションの作動環境をシミュレーションする。適用DCT流体を22L/分の流速で摩擦材の摩擦界面に供給する。この流速は、摩擦材の摩擦界面及びその対向する結合面の温度を440℃に到逹するようにする。発進試験には、以下の追加試験パラメータがある。シミュレーション慣性:0.85KgM;275KWの最大電力;350KJのエネルギー;6.7W/mmの特定のネット電力;0.42MPaのライニング圧力;6500rpmの最大回転速度;及び1.5秒の停止時間。摩擦係数の勾配(500rpm及び200rpmの回転速度での摩擦材の摩擦係数の差)の測定は、摩擦材の係合/分離サイクルの回数に対してプロットされ得る。正のCOF勾配は、一般的に、品質摩擦性能を示す。負の摩擦トルク勾配は、一般的に、不良な摩擦性能を示す。
【0086】
摩擦係数を図5図7に示したように、各々の係合サイクルについて測定する。図5は、比較例1の摩擦板に対するCOFを示す。中央値係数の下落及び曲線の終点での上昇は、摩擦性能の劣化を示す。摩擦性能が許容可能な限界を超えて劣化される前に、比較例1の摩擦板についてのみ200サイクルが達成された。
【0087】
反対に、図6及び図7は、それぞれ実施例1及び実施例2の摩擦板に対するCOFを示す。この摩擦板は、全体係合にわたって安定した摩擦係数を示す。このような現象は、1000回の係合サイクルをはるかに超えて持続し、これは、耐久性のある摩擦性能を示す。
【0088】
これらの評価の結果を図8に示したように、震えを推正するのに使用する。この図において、μ4は、トルク曲線の終点における最高点を示す。μ3は、最大RPMの10%におけるトルク曲線上の点を示す。μ4-μ3が正数であると、その後、震えが発生する傾向がある。μ4-μ3が負数であると、その後、震えが存在しない可能性が高い。瞬時評価において、μ4-μ3は、すべての評価で正数である。しかし、実施例1及び2の摩擦板は、比較例1の摩擦板よりも数がより少ない。これは、比較例1の摩擦板に比べて実施例1及び2の摩擦板の性能が優れていることを示す。
【0089】
本明細書の全般を通じて説明された実施形態のすべての組み合わせは、このような発明が文字のとおり上述の1つの段落またはセクションに開示されていなくても、1つ以上の非限定的な実施形態において明確に考慮される。すなわち、明確に考慮される実施形態は、本発明の任意の部分から選択及び組み合わされた前述された任意の1つ以上の構成要素を含むことができる。
【0090】
前述された1つ以上の値は、変化量が本発明の範囲内に維持される限り、±5%、±10%、±15%、±20%、±25%、±30%などによって変化し得る。マーカッシュグループ(Markush group)の各構成因子から他のすべての構成因子と独立的に予期せぬ結果を得ることができる。各々の構成因子は、添付された特許請求の範囲内の特定の実施形態に個別的に、そして、または組み合わせて必要とすることができ、これに対する適切な支援を提供する。独立項及び単一従属と多重従属との両方の従属項のすべての組み合わせの対象が本明細書において明確に考慮される。本発明は、限定ではないものとして説明される単語を含む例示的なものである。本発明の多くの変形及び変異が上述の教示に照らして可能であり、本発明は、本明細書に具体的に開示されたものと異なりに実施され得る。
【0091】
本発明の様々な実施形態を開示するのに必要な任意の範囲及び下位範囲が添付された特許請求の範囲に独立的で、総合的に属し、このような値が本明細書に明確に明示されない場合にも、全体及び/または分数値を含み、すべての範囲を開示して考慮することに理解されるのがまた理解されるべきである。当業者は、列挙された範囲及び下位範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に開示し、これを可能にし、このような範囲及び下位範囲が適切な1/2、1/3、1/4、1/5などにさらに記述され得ることを容易に認識する。単なる1例として、「0.1~0.9の」範囲は、下位1/3、すなわち0.1~0.3、中位1/3、すなわち0.4~0.6、及び上位1/3、すなわち0.7~0.9でさらに記述されることができ、これは、個別的に、総合的に、添付された特許請求の範囲内におり、添付された特許請求の範囲内の特定の実施形態に個別的に及び/または、総合的に必要とすることができ、これに対する適切な支援を提供する。また、「少なくても」、「超過」、「未満」、「以下」などのような範囲を画定または修正する言語に関連して、このような言語は、下位範囲及び/または上限または下限を含むことが理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、必須的に、少なくとも10~35の下位範囲、少なくとも10~25の下位範囲、25~35の下位範囲などを含み、各々の下位範囲は、添付された特許請求の範囲内の特定の実施形態に個別的に及び/または総合的に必要とすることができ、これに対する適切な支援を提供する。最後に、開示された範囲内の個別数が添付された特許請求の範囲内の特定の実施形態に必要とすることができ、これに対する適切な支援を提供する。
【0092】
例えば、「1~9の」範囲は、4.1のような小数点(または、分数)を含む個別数だけでなく、3のような様々な個別整数を含み、これは、添付された特許請求の範囲内の特定の実施形態に必要とすることができ、これに対する適切な支援を提供する。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B