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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】換気システム
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/76 20060101AFI20221124BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20221124BHJP
   F24F 7/00 20210101ALI20221124BHJP
【FI】
E04B1/76 200A
F24F7/08 Z
F24F7/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019047261
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020148038
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大浦 豊
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 幸康
(72)【発明者】
【氏名】藤園 武史
(72)【発明者】
【氏名】岡村 大輔
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-198371(JP,A)
【文献】特開2013-217616(JP,A)
【文献】特開2016-138428(JP,A)
【文献】特開2005-090187(JP,A)
【文献】特開2009-150099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
E04B 2/56 - 2/70;2/88 - 2/96
F24F 7/00 - 7/007
F24F 7/04 - 7/06
F24F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで日射熱を取得すると共に温熱を回収し内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで温熱損失を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から外気を取り入れ、他の方角の窓から内気を排出するものであり、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から外気を取り入れるように給気と排気の窓が切り替わることを特徴とする換気システム。
【請求項2】
建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで冷熱を回収し、内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで日射熱の取得を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から内気を排出し、他の方角の窓から外気を取り入れるものであり、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から内気を排出するように給気と排気の窓が切り替わることを特徴とする換気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷暖房負荷を抑えることのできる換気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の室内環境は、空調設備で制御していたが、窓からの熱の出入りが多く電気代がかかるため、経済的に優れたものが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、窓からの熱の出入りを減らし、冷暖房負荷を抑えることのできる換気システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による換気システムは、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで日射熱を取得すると共に温熱を回収し内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで温熱損失を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から外気を取り入れ、他の方角の窓から内気を排出するものであり、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から外気を取り入れるように給気と排気の窓が切り替わることを特徴とする。
【0005】
請求項2記載の発明による換気システムは、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで冷熱を回収し、内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで日射熱の取得を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から内気を排出し、他の方角の窓から外気を取り入れるものであり、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から内気を排出するように給気と排気の窓が切り替わることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明による換気システムは、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで日射熱を取得すると共に温熱を回収し内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで温熱損失を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から外気を取り入れることで日射熱を取得すると共に温熱を回収でき、他の方角の窓から内気を排出することで温熱損失が抑えられるので、暖房負荷を抑えることができる。本換気システムは、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から外気を取り入れるように給気と排気の窓が切り替わることで、暖房負荷を抑える効果が一日を通して確実に発揮される。
【0007】
請求項2記載の発明による換気システムは、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓を備え、各窓は、外側ガラスと内側ガラスを有し、外気が外側ガラスの内側面に沿って一方向に流れ、外側ガラスと内側ガラスの間の中間層の端部で折り返し、内側ガラスの外側面に沿って他方向に流れることで冷熱を回収し、内気が内側ガラスの外側面に沿って一方向に流れ、中間層の端部で折り返し、外側ガラスの内側面に沿って他方向に流れることで日射熱の取得を抑えるものであり、複数の窓のうち、日射が当たる方角の窓から内気を排出することで日射熱の取得を抑制でき、他の方角の窓から外気を取り入れることで冷熱を回収できるので、冷房負荷を抑えることができる。本換気システムは、太陽が動くことで日射を受ける方角が変わるのに連動して、日射を受ける方角の窓から内気を排出するように給気と排気の窓が切り替わることで、冷房負荷を抑える効果が一日を通して確実に発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の換気システムの第1実施形態を示す模式図である。
図2】同換気システムの窓の働きを示す説明図であって、(a)は給気側を、(b)は排気側を示す。
図3】同換気システムの窓(給気側)の上部を拡大して示す縦断面図である。
図4】同換気システムが設置されるビルの一例を示す平面図である。
図5】第1実施形態の換気システムにおいて、南面と西面に窓がある場合の各窓の給気と排気の切替え方の例を示す図である。
図6】東京の2月22日の各方位の壁面日射量の経時変化を示すグラフである。
図7】第1実施形態の換気システムにおいて、東面と南面と西面に窓がある場合の各窓の給気と排気の切替え方の例を示す図である。
図8】東京の2月22日の東面+南面及び南面+西面の日射量の経時変化を示すグラフである。
図9】本発明の換気システムの第2実施形態を示す模式図である。
図10】同換気システムの窓の働きを示す説明図であって、(a)は給気側を、(b)は排気側を示す。
図11】第2実施形態の換気システムにおいて、南面と西面に窓がある場合の各窓の給気と排気の切替え方の例を示す図である。
図12】東京の6月17日の各方位の壁面日射量の経時変化を示すグラフである。
図13】第2実施形態の換気システムにおいて、東面と南面と西面に窓がある場合の各窓の給気と排気の切替え方の例を示す図である。
図14】東京の6月17日の東面+南面及び南面+西面の日射量の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1~3は、本発明の換気システムの第1実施形態(請求項1記載の発明の実施形態)を示している。本実施形態は、オフィスビルの換気システムに適用したものであって、冬期における運転状態を示している。本換気システムは、図1に示すように、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓1と、天井裏に設置した空調機4と、天井5に設置した空気取入・吹出口6と、それらを天井裏で繋ぐダクト7とを備えている。
図4は、本換気システムが設置されるビルの一例を示す平面図であり、窓1は東面と南面と西面のうち、南面を含む少なくとも二つの面の開口部19に設置されている。そして本換気システムは、図1に示すように、日射の当たる方角の窓1から外気を取り入れ、他の窓1から内気を室外に排出する。
【0010】
各窓1は、図1~3に示すように、外窓(外側ガラス)2と内窓(内側ガラス)3とを備える二重窓となっており、外窓2と内窓3間の中間層8にブラインド等の遮蔽物9が上方から吊り下げて設置してある。
外窓2は、図3に示すように、上枠10のガラス11より室外側の底壁に通気口12aを形成し、中間の縦壁に通気口12bを形成し、ガラス11より室内側の底壁に通気口12cを形成することで、上枠10に室外空間から遮蔽物9より室外側の中間層8に連通する通気部13が設けてある。同通気部13は室外側の通気口12aが下向きに開口して設けてあり、室内側の通気口12cはガラス11に向けて斜め下向きに設けてある。
内窓3は、上枠14の室外側壁と上壁とに通気口15a,15bを形成することで、上枠14に遮蔽物9より室内側の中間層8より天井裏の空間に連通する通気部16が設けてあり、通気口15bにはダクト7が連結されている。
【0011】
内窓3の通気部16に連結されたダクト7には、図1に示すように、正逆回転自在なファン17を備えており、日射を受けている方角の窓1から外気を吸い込み、他の窓1から内気を排出するように各ファン17を回転させる。
【0012】
図2(a)は、給気側の窓1の働きを示している。同図に示すように、外窓2の通気部13より流入した冷たい外気は、通気部13室内側の通気口12cが内周側に向けて開口して設けてあることで、図中の矢印に示すように、外窓2のガラス11の室内側面に沿うように下向きに流出する。その後、冷たい外気はコールドドラフトにより中間層8の下まで流れる。この間に、外気は日射熱を取得する。その後、外気は中間層8の下部で折り返し、内窓3のガラス18から室内の熱が伝わることでさらに暖められ、ガラス18の室外側面に沿って上昇し、この間にガラス18から室外に逃げる熱を空気の流れによって回収する。0℃であった外気は、このように窓1の中間層8を通る間に日射熱を取得するとともに内窓3のガラス18から室内の熱を回収することで、18℃に暖められる。その後、暖められた外気は内窓3上部の通気部16を通り、ダクト7を通って空調機4へと送られ、空調機4により30℃程度に暖められて空気取入・吹出口6より室内に流出する。このように、中間層11内を外窓9と内窓10に沿うように迂回して外気が流れることで、日射熱を取得できるとともに、室内から室外に伝わる熱を空気の流れによって回収し、室内に戻すことで、室内から室外への熱の損失がほとんどなくなり、これにより空気が流入する方向とは逆方向である室内側から室外側への熱輸送が妨げられ、非常に高い断熱性が得られると共に、外気を日射を受ける窓1に通すことで18℃まで暖めてから空調機4に供給するので、空調機4の負荷を低減することができる。
【0013】
一方、排気側の窓1では、図2(b)に示すように、内窓3の通気部16より内気が遮蔽物9より室内側の中間層8に流れ込み、その後、内気は内窓3のガラス18の室外側面に沿って下向きに流れ、中間層8の下部で折り返し、外窓2のガラス11の室内側面に沿って上昇し、外窓2の通気部13を通って室外に排出される。このように、暖かい内気を遮蔽物9より室内側の中間層8に導入して下向きに流れることで、遮蔽物9より室内側の中間層8の温度が室内の温度とほぼ同じになるため、窓1からの温熱損失を抑制することができる。よって、空調機4の負荷を低減することができる。
【0014】
日射を受ける方角は時間によって変わるため、本換気システムは太陽の動きに連動して給気と排気の窓1が順次切り替わるようになっている。各窓1の給気から排気、排気から給気への切り替えは、ファン17の回転方向を変更して空気の流れの向きを変更することにより行うことができる。
【0015】
太陽の動きに連動して給気と排気の窓1を切り替える方法としては、ビルの建設地における年間の方位ごとの窓面日射量を計算し、最適な年間の給気・排気の切替時間を決定する方法がある。
以下に具体例をあげて説明する。図5,6は、南面と西面の2面に窓1がある場合の例を示している。図6は、ビルの建設地である東京の2月22日の各方位の壁面日射量(過去10年の平均)の経時変化を示すグラフである。なお、このようなグラフは、気象庁から入手できるデータに基づいて作成することができる。同グラフで南面と西面の日射量を比較すると、日の出から15:00までは南面の日射量が多く、15:00から日の入りまでは西面の日射量が多いことが分かる。そこで、図5に示すように、運転開始(例えば8:00)から15:00までの間は、南面の窓1から給気して西面の窓1から排気し、15:00から運転終了(例えば21:00)までの間は、西面の窓1から給気して南面の窓1から排気するように、本換気システムに内蔵するタイマー(図示省略)によりダクト経路にあるファン17の回転方向を制御して空気の流れの向きを変更する。
図7,8は、東面と南面と東面の3面に窓1がある場合の例を示している。図8は、ビルの建設地である東京の2月22日の東面+南面、南面+西面の壁面日射量(過去10年の平均)の経時変化を示すグラフである。同グラフより、日の出から12:00までの間は東面+南面の日射量が多く、12:00から日の入りまでの間は南面+西面の日射量が多いことが分かる。そこで、図7に示すように、運転開始(例えば8:00)から12:00までの間は、東面及び南面の窓1から給気して西面の窓1から排気し、12:00から運転終了(例えば21:00)までの間は、南面及び西面の窓1から給気して東面の窓1から排気するように、本換気システムに内蔵するタイマー(図示省略)によりダクト経路にあるファン17の回転方向を制御して空気の流れの向きを変更する。
【0016】
上述の例においては、1日ごとに図6,8に示すようなグラフを作成し、1日ごとに給気・排気を切り替えるタイミングを設定してもよいが、一定の期間(例えば2週間)ごとに図6,8に示すようなグラフを作成し、当該期間の間はグラフから求めた同じタイミングで給気・排気を切り替えるようにしてもよい。
また、東面と南面と東面の3面に窓1がある場合で、時間ごとに一つの方角の窓からだけ給気するようにしてもよい。例えば、運転開始から9:30までは東面の窓1から給気し(南面及び西面の窓1から排気)、9:30から15:00までは南面の窓1から給気し(東面及び西面の窓1から排気)、15:00から運転終了までは西面の窓1から給気(東面及び南面の窓1から排気)することもできる。
【0017】
上記のように、過去の日射量のデータに基づいて各窓1の給気と排気を切り替えるタイミングを予め設定しておく方法の他、外気温計と窓面日射量計を用いるなどして各窓1の給気と排気を切り替えるタイミングをリアルタイムで決定することもできる。
例えば、屋外に外気温計を設置し、東面と南面と西面に日射量計をそれぞれ設置しておき、外気温計で測定した外気温に基づいて季節が冬であるか否かを判定し、冬であると判定した場合は、運転開始時には東面の窓1から給気し(南面及び西面の窓1から排気)、東面の日射量計で測定した日射量よりも南面の日射量計で測定した日射量が多くなったときに、給気の窓1を東面から南面に切り替え(東面及び西面の窓1から排気)、南面の日射量計で測定した日射量よりも西面の日射量計で測定した日射量が多くなったときに、給気の窓1を南面から西面に切り替える(東面及び南面の窓1から排気)。
【0018】
上述した何れの制御方法においても、天候が曇天・雨天などの日射が少ない場合(センサーで計測した日射量が閾値以下の場合)は給気・排気の切替を行わないようにすることができる。これにより不要な給気・排気の切替を省くことができ、合理的な運転が行える。
一例として、図5,6に示す南面と西面の2面に窓1がある場合の例で説明すると、前日が西面給気の状態で運転終了(または朝まで連続運転)し、その翌日が切替の効果が見込めない日射の少ない日だった場合に、上記の制御がなければ、設定した切替モードに従って、朝に南面給気に切替、15:00に西面給気に切替と2回の不要な切替が発生するが、上記の日射量により切替を行うか否かを判断する制御を加えれば、不要な切替を行わずに済む。
なお、天候により一時的に日射量が閾値を越えた時間は、切替モードでの運用に移行する(再度閾値以下になった場合には切替は行わない。)。
【0019】
図9,10は、本発明の換気システムの第2実施形態(請求項2記載の発明の実施形態)を示している。本実施形態は、第1実施形態と同様に、オフィスビルの換気システムに適用したものであって、夏期における運転状態を示している。第2実施形態の換気システムは、第1実施形態と装置の構成は全く同じで、空気の流れる向きを第1実施形態とは逆向きにしている。すなわち、図9に示すように、日射の当たる方角の窓1から内気を室外に排出し、他の窓1から外気を取り入れる。
【0020】
図10(a)は、給気側の窓1の働きを示している。同図に示すように、外窓2の通気部13より流入した暖かい外気は、通気部13室内側の通気口12cが内周側に向けて開口して設けてあることで、図中の矢印に示すように、外窓2のガラス11の室内側面に沿うように下向きに流出し、その後、中間層8の下まで流れる。給気側の窓1は日射が当たっておらず、日射熱を取得しないため、この間の外気の温度上昇が抑制される。その後、外気は中間層8の下部で折り返し、内窓3のガラス18の室外側面に沿って上昇し、この間にガラス18から室外に逃げる冷熱を空気の流れによって回収する。これにより、30℃であった外気が27℃に冷やされる。その後、冷やされた外気は内窓3上部の通気部16を通り、ダクト7を通って空調機4へと送られ、空調機4により20℃程度に冷やされて空気取入・吹出口6より室内に流出する。このように、外気を日射を受けない窓1に通すことで冷熱を回収し、27℃まで冷やしてから空調機4に供給するので、空調機4の負荷を低減することができる。
【0021】
一方、排気側の窓1では、図10(b)に示すように、冷たい内気が窓1の中間層8の遮蔽物9より室内側に導入される。この空気は、室外よりも温度が低いので、内窓3のガラス18の室外側面に沿って下向きに流れ、その後、中間層8の下部で折り返し、外窓2のガラス11等の熱が伝わることで外窓2のガラス11の室内側面に沿って上昇し、この間に日射熱を取得すると共に、ガラス11を通じて室外から室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収する。25℃であった内気は、外窓2と遮蔽物9の間を通る間に日射熱を取得して46℃に暖められ、その後、外窓2の通気部13を通って空気が室外に放出される。空気が通気部13を通過する際、上枠10を伝って室内に入ってくる熱を空気の流れによって回収する。そして、空気が室外に放出されることで、日射熱とガラス11や上枠10から回収した熱を室外に捨てる。このように、外窓2の内側面と内窓3の外側面に沿うように内気が流れることで、日射熱の取得を抑制できると共に、室外から室内に伝わる熱を空気の流れによって回収し室外に捨てることで、空気が流出する方向とは逆方向である室外側から室内側への熱輸送が妨げられ、優れた断熱効果を発揮して、室内が涼しく保たれる。よって、空調機4の負荷を低減することができる。
【0022】
日射を受ける方角は時間によって変わるため、本換気システムは太陽の動きに連動して給気と排気の窓1が順次切り替わるようになっている。
図11,12は、南面と西面の2面に窓がある場合の例を示している。図12は、ビルの建設地である東京の6月17日の各方位の壁面日射量(過去10年の平均)の経時変化を示すグラフである。同グラフで南面と西面の日射量を比較すると、日の出から13:00までは南面の日射量が多く、13:00から日の入りまでは西面の日射量が多いことが分かる。そこで、図11に示すように、運転開始(例えば8:00)から15:00までの間は、西面の窓1から給気して南面の窓1から排気し、13:00から運転終了(例えば21:00)までの間は、南面の窓1から給気して西面の窓1から排気するように、本換気システムに内蔵するタイマー(図示省略)によりダクト経路にあるファン17の回転方向を制御して空気の流れの向きを変更する。
図13,14は、東面と南面と東面の3面に窓1がある場合の例を示している。図14は、ビルの建設地である東京の6月17日の東面+南面、南面+西面の壁面日射量(過去10年の平均)の経時変化を示すグラフである。同グラフより、日の出から12:00までの間は東面+南面の日射量が多く、12:00から日の入りまでの間は南面+西面の日射量が多いことが分かる。そこで、図13に示すように、運転開始(例えば8:00)から12:00までの間は、西面の窓1から給気して東面及び南面の窓1から排気し、12:00から運転終了(例えば21:00)までの間は、東面の窓1から給気して南面及び西面の窓1から排気するように、本換気システムに内蔵するタイマー(図示省略)によりダクト経路にあるファン17の回転方向を制御して空気の流れの向きを変更する。
【0023】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、外気温計と窓面日射量計を用いるなどして各窓1の給気と排気を切り替えるタイミングをリアルタイムで決定することもできる。
例えば、屋外に外気温計を設置し、東面と西面に日射量計をそれぞれ設置しておき、外気温計で測定した外気温に基づいて季節が夏であるか否かを判定し、夏であると判定した場合は、運転開始時には西面の窓1から給気し(東面及び南面の窓1から排気)、西面の日射量計で測定した日射量が東面の日射量計で測定した日射量より多くなったときに、給気の窓1を西面から東面に切り替える(南面及び西面の窓1から排気)。
【0024】
また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、日射量により切替を行うか否かを判断する制御を加えることができ、これにより曇天・雨天のときに不要な給気・排気の切替を省き、合理的な運転が行える。
【0025】
第2実施形態の換気システムは、夏期だけでなく中間期においても実施することができる。すなわち本換気システムは、冬期においては日射が当たる方角の窓1から外気を取り入れ、他の方角の窓1から内気を排出し、冬期以外は日射が当たる方角の窓1から内気を排出し、他の方角の窓1から外気を取り入れるようにすることで、年間を通じて冷暖房負荷を抑えることができる。
【0026】
以上に述べたように本換気システム(第1実施形態)は、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓1を備え、各窓1は、外側ガラス(外窓)2と内側ガラス(内窓)3を有し、外側ガラス2の内側面と内側ガラス3の外側面に沿うように外気が流れることで日射熱を取得し、外側ガラス2の内側面と内側ガラス3の外側面に沿うように内気が流れることで温熱損失を抑えるものであり、複数の窓1のうち、日射が当たる方角の窓1から外気を取り入れることで日射熱を取得でき、他の方角の窓1から内気を排出することで温熱損失が抑えられるので、暖房負荷を抑えることができる。
【0027】
本換気システム(第2実施形態)は、建物の異なる方角の壁に設けた複数の窓1を備え、各窓1は、外側ガラス2と内側ガラス3を有し、外側ガラス2の内側面と内側ガラス3の外側面に沿うように外気が流れることで冷熱を回収し、外側ガラス2の内側面と内側ガラス3の外側面に沿うように内気が流れることで日射熱の取得を抑えるものであり、複数の窓1のうち、日射が当たる方角の窓1から内気を排出することで日射熱の取得を抑制でき、他の方角の窓1から外気を取り入れることで冷熱を回収できるので、冷房負荷を抑えることができる。
【0028】
本換気システム(第1及び第2実施形態)は、太陽の動きに連動して給気と排気の窓1が順次切り替わることで、上記の暖房負荷又は冷房負荷を抑える効果が一日を通して確実に発揮される。
【0029】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。窓の構造は適宜変更することができ、外窓と内窓とを備える二重窓に限らず、外側ガラスと内側ガラスを1つのフレーム(枠、框等)に支持した単体サッシとすることもできる。室外空間から中間層に連通する通気部、中間層から室内空間に連通する通気部はどこに形成してあってもよく、例えば縦枠や下枠に設けてあったり、上框と上枠との隙間を通気部とし、その隙間から空気が流入・流出するもの等であってもよい。建物の構造は任意であり、壁面が必ずしも正確に東西南北に向いていなくてもよいし、横断面が四角形以外の多角形や円形であってもよい。本発明の換気システムは、ビルだけでなく、一般住宅で使用することもできる。本発明の換気システムは、ダクトを使わずに、窓だけで完結するものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 窓
2 外窓(外側ガラス)
3 内窓(内側ガラス)
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