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  • 特許-送気システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】送気システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
F22B1/18 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019075349
(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公開番号】P2020173063
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】飛田 泰平
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096519(JP,A)
【文献】特開平03-025201(JP,A)
【文献】特開平11-211005(JP,A)
【文献】特開昭57-179310(JP,A)
【文献】特開昭59-221410(JP,A)
【文献】特開平11-063403(JP,A)
【文献】特開平07-332603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00 - 37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気が流通する配管と、
前記配管に設けられ、前記配管を流通する蒸気の流量を調節する制御弁と、
前記制御弁の開度を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
蒸気の送気を開始する際に、前記制御弁の下流側における流体の流速が所定の上限流速以下となる範囲で前記制御弁の弁開度を制御することによって、前記制御弁の下流側の流体の圧力である二次圧力を所定の目標圧力まで上昇させる送気制御を行い、
前記送気制御における前記弁開度の変更時の前記制御弁の下流側の流体の温度である二次温度の変化率又は前記二次圧力の変化率に基づいて前記弁開度を前記制御弁の下流側の流体の流速が前記上限流速を超える範囲で補正する送気システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送気システムにおいて、
前記制御部は、前記二次温度の変化率又は前記二次圧力の変化率が所定の判定基準以上の場合には前記弁開度を補正せず、前記二次温度の変化率又は前記二次圧力の変化率が前記判定基準よりも小さい場合に前記弁開度を前記制御弁の下流側における流体の流速が前記上限流速を超えるように補正する送気システム。
【請求項3】
請求項2に記載の送気システムにおいて、
前記制御部は、
段階的に設定された二次温度又は二次圧力である設定二次温度又は設定二次圧力に実際の前記二次温度又は前記二次圧力がなるように前記制御弁の弁開度を段階的に変更し、
前記制御弁の弁開度を変更してから実際の前記二次温度又は前記二次圧力が前記設定二次温度又は前記設定二次圧力になるまでの時間が所定の判定時間よりも長い場合に、前記二次温度又は前記二次圧力の変化率が前記判定基準よりも小さいと判定する送気システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の送気システムにおいて、
前記制御部は、前記二次圧力が大気圧以下の領域においては前記二次温度に基づいて前記制御弁の弁開度を制御する一方、前記二次圧力が大気圧よりも大きい領域においては前記二次圧力に基づいて前記制御弁の弁開度を制御する送気システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、蒸気の送気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、配管を介して蒸気を送気する送気システムが知られている。例えば、特許文献1には、スチームヘッダに貯留された蒸気を蒸気使用機器へ配管を介して送気する送気システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-224148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような送気システムにおいて送気を開始する際に、蒸気を急激に流通させると配管においてウォータハンマが発生する虞がある。一方、ウォータハンマの発生を回避するために蒸気を少しずつ流通させると、送気システムの立ち上がり時間、即ち、蒸気使用機器における蒸気の圧力が所定の目標圧力に達するまでの時間が長くなってしまう。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウォータハンマの発生を抑制しつつ、送気システムの立ち上がり時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された送気システムは、蒸気が流通する配管と、前記配管に設けられ、前記配管を流通する蒸気の流量を調節する制御弁と、前記制御弁の開度を制御する制御部とを備え、前記制御部は、蒸気の送気を開始する際に、前記制御弁の下流側における流体の流速が所定の上限流速以下となる範囲で前記制御弁の弁開度を制御することによって、前記制御弁の下流側の流体の圧力である二次圧力を所定の目標圧力まで上昇させる送気制御を行い、前記送気制御における前記弁開度の変更時の前記制御弁の下流側の流体の温度である二次温度の変化率又は前記二次圧力の変化率に基づいて前記弁開度を前記制御弁の下流側の流体の流速が前記上限流速を超える範囲で補正する。
【発明の効果】
【0007】
前記送気システムによれば、ウォータハンマの発生を抑制しつつ、送気システムの立ち上がり時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、送気システムの概略的な配管図である。
図2図2は、送気制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、送気システム100の概略的な配管図である。
【0010】
送気システム100は、蒸気が流通する配管10と、配管10に設けられ、配管10を流通する蒸気の(体積)流量を調節する制御弁20と、制御弁20の開度を制御する制御部30とを備えている。
【0011】
配管10の上流端は、スチームヘッダ11に接続されている。スチームヘッダ11には、蒸気流入管12を介してボイラ(図示省略)からの蒸気が供給され、供給された蒸気を貯留している。配管10の下流端は、蒸気使用機器(図示省略)に接続されている。
【0012】
制御弁20は、弁開度を変更することによって配管10を流通する流体の流量(体積流量又は質量流量)を調節する。制御弁20は、弁開度を全閉から全開まで連続的又は段階的に変更する。制御弁20は、制御部30からの指令(電気信号)に基づいて弁開度を変更する。例えば、制御弁20は、電動弁又は電磁弁である。
【0013】
スチームヘッダ11には、スチームヘッダ11に貯留される蒸気の圧力を検出する第1圧力センサ13が設けられている。スチームヘッダ11に貯留される蒸気の圧力は、制御弁20の上流側の流体の圧力である一次圧力に相当する。すなわち、第1圧力センサ13は、一次圧力を検出する。
【0014】
配管10のうち制御弁20の下流側の部分には、制御弁20の下流側の流体の圧力である二次圧力を検出する第2圧力センサ14が設けられている。また、配管10のうち制御弁20の下流側の部分には、制御弁20の下流側の流体の温度である二次温度を検出する温度センサ15が設けられている。
【0015】
制御部30は、第1圧力センサ13、第2圧力センサ14及び温度センサ15の検出結果が入力される。制御部30は、制御弁20に指令を出力し、制御弁20の弁開度を制御する。制御部30は、処理部31と記憶部32とを有している。処理部31は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成されている。処理部31は、記憶部32に記憶されているプログラムに基づいて制御弁20を制御する。尚、処理部31は、プロセッサと同様の機能を有するLSI(Large Scale Integration)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0016】
このように構成された送気システム100においては、ボイラによって生成された蒸気が蒸気流入管12を介してスチームヘッダ11に流入し、スチームヘッダ11に貯留される。スチームヘッダ11に貯留された蒸気は、配管10を介して蒸気使用機器へ供給される。蒸気使用機器へ供給される蒸気の圧力は、制御弁20によって調節される。
【0017】
ここで、送気システム100による蒸気の送気が停止された状態から蒸気の送気を開始する際には、制御部30は、制御弁20の下流側における流体の流速が所定の上限流速(例えば、20m/s)以下となる範囲で制御弁20の弁開度を制御することによって、二次圧力を所定の目標圧力まで上昇させる送気制御を行う。このとき、制御部30は、送気制御における弁開度の変更時の二次温度の変化率又は二次圧力の変化率に基づいて制御弁20の弁開度を制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超える範囲内で補正する。
【0018】
以下、制御部30による送気制御について詳しく説明する。図2は、送気制御のフローチャートである。
【0019】
まず、制御部30は、ステップS1において、現在の二次温度又は二次圧力に応じて次回の二次温度又は二次圧力を設定する。設定すべき二次温度又は二次圧力は、記憶部32に段階的に記憶されている。例えば、記憶部32には、設定すべき二次温度が5℃おきに記憶され、設定すべき二次圧力が50kPaおきに記憶されている。現在の二次温度又は二次圧力は、第2圧力センサ14又は温度センサ15によって検出される。次回の設定値として二次温度及び二次圧力の何れを用いるかは、現在の二次温度又は二次圧力に基づいて制御部30が判断する。現在の二次温度が100℃以下の場合又は現在の二次圧力が大気圧以下の場合には、制御部30は、次回の二次温度を設定する。一方、現在の二次温度が100℃よりも大きい場合又は現在の二次圧力が大気圧より大きい場合には、制御部30は、次回の二次圧力を設定する。制御部30は、記憶部32に記憶された二次温度又は二次圧力の中から現在の二次温度又は二次圧力よりも大きく且つ最も近い二次温度又は二次圧力を選択する。以下、次回の二次温度を「設定二次温度」、次回の二次圧力を「設定二次圧力」とも称する。
【0020】
ステップS2において、制御部30は、加算流速が設定されているか否かを判定する。加算流速は、送気制御の開始時にはゼロに設定されている。後述するステップS8において加算流速がゼロ以外の値に設定される場合がある。加算流速が設定されていない(即ち、加算流速がゼロ)場合には、制御部30は、ステップS3へ進む。一方、加算流速が設定されている(即ち、加算流速がゼロ以外)場合には、制御部30は、ステップS4へ進む。
【0021】
ステップS3において、制御部30は、通常の弁開度を算出する。ここで、「通常の弁開度」とは、配管10の流体の流速が所定の上限流速に制限された条件下での弁開度を意味する。上限流速は、配管10においてウォータハンマが発生しない程度の流速に設定されている。
【0022】
制御部30は、現在の制御弁20の前後の圧力条件の下で配管10のうち制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速となるような制御弁20の弁開度を求める。例えば、制御部30は、現在の一次圧力、現在の二次温度、現在の二次圧力、配管10の径、制御弁20のCv値と弁開度との関係、及び、配管10の上限流速に基づいて弁開度を算出する。例えば、現在の二次圧力が大気圧以下の場合には、計算の簡略化のため、現在の二次温度を飽和温度とした場合の飽和蒸気圧を、制御弁20の下流側の蒸気の圧力とみなし、その圧力に対応する蒸気の比体積が求められる。一方、現在の二次圧力が大気圧よりも大きい場合には、制御弁20の下流側の蒸気の圧力が現在の二次圧力であるとし、二次圧力に対応する蒸気の比体積が求められる。また、配管10の径及び上限流速から蒸気の体積流量が求められる。求められた蒸気の比体積及び体積流量から蒸気の質量流量が求められる。現在の一次圧力、現在の二次圧力及び求められた蒸気の質量流量から制御弁20のCv値が求められる。制御弁20のCv値と弁開度との関係及び求められたCv値から弁開度が求められる。
【0023】
続いて、ステップS5において、制御部30は、制御弁20の弁開度を算出された弁開度に変更する。
【0024】
その後、制御部30は、ステップS6において、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が所定の判定基準以上か否かを判定する。ステップS1において設定二次温度が設定されている場合には、制御部30は、二次温度の変化率を判定する。一方、ステップS1において設定二次圧力が設定されている場合には、制御部30は、二次圧力の変化率を判定する。具体的には、制御部30は、制御弁20の弁開度をステップS5において変更してから、現在の二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力に達するまでの時間(以下、「到達時間」と称する)を計測する。記憶部32には、制御弁20の弁開度を変更してから設定二次温度又は設定二次圧力に達すると想定される時間が判定時間として設定二次温度又は設定二次圧力ごとに記憶されている。制御部30は、ステップS1で設定した設定二次温度又は設定二次圧力に対応する判定時間を記憶部32から読み出し、読み出した判定時間と到達時間とを比較する。到達時間が判定時間以下の場合には、制御部30は、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が判定基準以上であると判定する。一方、到達時間が判定時間よりも長い場合には、制御部30は、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さいと判定する。
【0025】
二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が判定基準以上である場合には、制御部30は、ステップS7において、加算流速をゼロに設定する。
【0026】
一方、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さい場合には、制御部30は、ステップS8において、加算流速をゼロ以外の値に設定する。例えば、制御部30は、到達時間と判定時間との偏差に基づいて加算流速を設定する。例えば、制御部30は、(到達時間-判定時間)/判定時間を超過率として、超過率が大きくなるほど加算流速が段階的に大きくなるように加算流速を設定する。超過率が1~10%の場合には加算流速を1m/sに、超過率が11~20%の場合には加算流速を2m/sに、超過率が21~30%の場合には加算流速を3m/sに、超過率が31~40%の場合には加算流速を4m/sに、超過率が41%~の場合には加算流速を5m/sに設定され得る。加算流速には、最大加算流速が設定されている。前述の例では、5m/sが最大加算流速に設定されている。
【0027】
その後、ステップS9において、制御部30は、現在の二次圧力が最終的な目標となる二次圧力(以下、「目標二次圧力」という)に達したか否かを判定する。現在の二次圧力が目標二次圧力に達していない場合には、制御部30は、ステップS1へ戻る。一方、現在の二次圧力が目標二次圧力に達した場合には、制御部30は、送気制御を終了する。
【0028】
ステップS8において加算流速が設定された場合には、次回のステップS2において加算流速が設定されていると判定される。その場合、制御部30は、ステップS4において、配管10の上限流速を超える範囲で通常の弁開度を補正した補正後の弁開度を算出する。
【0029】
具体的には、制御部30は、ステップS3における通常の弁開度の場合と基本的には同じ手順で補正後の弁開度を算出する。このとき、制御部30は、現在の制御弁20の前後の圧力条件の下で制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速に加算流速を付加した流速となるような制御弁20の弁開度を求める。例えば、ステップS3の説明で例示した手順においては、体積流量を求める際に上限流速に代えて、上限流速に加算流速を付加した補正後の流速が用いられる。これにより、通常の弁開度よりも大きな弁開度が補正後の弁開度として算出される。
【0030】
その後のステップS5では、算出された補正後の弁開度に制御弁20の開度が制御される。それ以降のステップにおける処理は、前述の通りである。
【0031】
このような送気制御においては、制御部30は、設定二次温度又は設定二次圧力を段階的に増加させ、それと共に実際の二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力になるように制御弁20の弁開度を段階的に増大させる。このとき、配管10内においてウォータハンマが発生しないように制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速に制限されている。弁開度が変更される度に二次温度又は二次圧力が適切な変化率(即ち、速度)で変化しているか否かが判定される。制御部30は、二次温度又は二次圧力の変化率が所定の判定基準以上の場合には制御弁20の弁開度を補正せず、二次温度又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さい場合に制御弁20の弁開度を制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超えるように、即ち、通常算出される弁開度よりも大きくなるように弁開度を補正する。このように、流体の流速の制限が一時的に解除され、流体の流速が上限流速を超えるようになるので、二次温度又は二次圧力の変化が一時的に速くなる。
【0032】
送気システム100においては、ボイラの運転条件に応じて一次圧力が変動し、蒸気使用機器の運転条件に応じて二次圧力が変動し得る。その結果、流体の流速が速くなり過ぎるとウォータハンマが発生する可能性が高くなる一方、流体の流速が遅くなり過ぎると送気システム100の立ち上がり時間が長くなってしまう。それに対し、送気システム100においては流体の流速が基本的には上限流速に制限されるので、ウォータハンマの発生が抑制される。それに加えて、二次温度又は二次圧力の変化が遅い場合には流体の流速が上限流速を超える範囲で弁開度が補正されるため、流体の流速が一時的に速くなり、送気システム100の立ち上がり時間が短縮される。このときの流体の流速の上昇は一時的であるため、ウォータハンマが発生する可能性はそれほど高くならない。
【0033】
以上のように、送気システム100は、蒸気が流通する配管10と、配管10に設けられ、配管10を流通する蒸気の流量を調節する制御弁20と、制御弁20の開度を制御する制御部30とを備え、制御部30は、蒸気の送気を開始する際に、制御弁20の下流側における流体の流速が所定の上限流速以下となる範囲で制御弁20の弁開度を制御することによって、制御弁20の下流側の流体の圧力である二次圧力を所定の目標圧力まで上昇させる送気制御を行い、送気制御における弁開度の変更時の制御弁20の下流側の流体の温度である二次温度の変化率又は二次圧力の変化率に基づいて弁開度を制御弁20の下流側の流体の流速が上限流速を超える範囲で補正する。
【0034】
この構成によれば、蒸気の送気開始時には、制御部30が制御弁20の弁開度を制御することによって(具体的には、制御弁20の弁開度を少しずつ大きくすることによって)、二次圧力を所定の目標圧力まで上昇させる。その際、基本的には、制御弁20の下流側の流体の流速が上限流速以下となる範囲で制御弁20の弁開度が少しずつ大きくさせられる。これにより、送気開始時のウォータハンマの発生が抑制される。それに加えて、二次温度又は二次圧力の変化が遅い場合には、制御弁20の下流側の流体の流速が上限流速を超える範囲で制御弁20の弁開度が補正される。これにより、二次温度又は二次圧力の変化が促進され、送気システム100の立ち上がり時間が短縮される。この弁開度の補正は一時的であるため、ウォータハンマの発生の可能性もそれほど大きくならない。その結果、ウォータハンマの発生を抑制しつつ、送気システム100の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0035】
また、制御部30は、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が所定の判定基準以上の場合には弁開度を補正せず、二次温度の変化率又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さい場合に弁開度を制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超えるように補正する。
【0036】
この構成によれば、二次温度又は二次圧力の変化率が判定基準以上の場合には、制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超えない範囲で制御弁20の弁開度が制御される。一方、二次温度又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さい場合、即ち、二次温度又は二次圧力の変化が想定される基準よりも遅い場合には、制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超えるように制御弁20の弁開度が制御される。つまり、制御弁20の弁開度は、制御弁20の下流側における流体の流速が上限流速を超えない範囲で制御された開度よりも大きくなるように補正される。その結果、制御弁20の下流側における流体の流速が一時的に速くなり、送気システム100の立ち上がりが促進される。
【0037】
さらに、制御部30は、段階的に設定された二次温度又は二次圧力である設定二次温度又は設定二次圧力に実際の二次温度又は二次圧力がなるように制御弁20の弁開度を段階的に変更し、制御弁20の弁開度を変更してから実際の二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力になるまでの時間が所定の判定時間よりも長い場合に、二次圧力又は二次温度の変化率が判定基準よりも小さいと判定する。
【0038】
この構成によれば、実際の二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力になるまでの時間に基づいて二次温度又は二次温度の変化率を判定する。そのため、制御弁20の弁開度を変更してから実際の二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力になるまでの時間を計時するだけで、複雑な計算をすることなく、二次圧力又は二次温度の変化率を判定することができる。
【0039】
さらに、制御部30は、二次圧力が大気圧以下の領域においては二次温度に基づいて制御弁20の弁開度を制御する一方、二次圧力が大気圧よりも大きい領域においては二次圧力に基づいて制御弁20の弁開度を制御する。
【0040】
この構成によれば、二次圧力が大気圧以下の領域においては、二次温度に基づいて制御弁20の下流側の蒸気の圧力を推定することができる。つまり、二次圧力が大気圧以下の領域においては、二次圧力に基づいて制御弁20の下流側の蒸気の圧力を評価することが難しい。二次温度を用いることによって、二次温度を飽和温度とする蒸気の圧力を求めることができる。求めた蒸気の圧力を制御弁20の下流側の蒸気の圧力とみなすことによって、制御弁20の下流側の実際の蒸気の状態を評価することができる。その結果、二次圧力が大気圧以下の領域においても、二次圧力が目標圧力に到達するように制御弁20の弁開度を制御することができる。
【0041】
また、制御部30は、制御弁20の上流側の流体の圧力である一次圧力を検出する第1圧力センサ13、制御弁20の下流側の流体の圧力である二次圧力を検出する第2圧力センサ14、及び、制御弁20の下流側の流体の温度である二次温度を検出する温度センサ15の検出結果に基づいて制御弁20の弁開度を制御する。
【0042】
この構成によれば、送気システム100は、制御弁20の下流側の流体の体積流量を検出する体積流量センサを設けることなく、制御弁20によって蒸気の体積流量を調節することができる。つまり、簡易な構成で蒸気の流量制御を実現することができる。
【0043】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0044】
例えば、送気システム100の構成は、前述の構成に限定されない。例えば、配管10の上流端は、スチームヘッダ11以外の部分に接続されていてもよい。
【0045】
制御弁20の弁開度を制御する際に流体の流速が上限流速となるように弁開度を調節しているが、流体の流速に相関がある他のパラメータ、例えば、流体の体積流量等に上限を設けて弁開度を調節してもよい。
【0046】
二次温度又は二次圧力の変化率の判定は、前述の方法に限定されない。例えば、制御弁20の弁開度を変更してから所定の判定時間が経過したときの二次温度又は二次圧力が設定二次温度又は設定二次圧力に到達している場合に、二次温度又は二次圧力の変化率が判定基準以上であると判定し、そうでない場合に、二次温度又は二次圧力の変化率が判定基準よりも小さいと判定してもよい。その場合、設定二次温度又は設定二次圧力に応じた判定時間を表す関数が記憶部32に記憶されていてもよい。新たに設定される設定二次温度又は設定二次圧力が前記関数に代入されることによって設定二次温度又は設定二次圧力に応じた判定時間が求められる。
【0047】
加算流速の設定は、前述の方法に限定されない。例えば、前記超過率が大きくなるほど加算流速が連続的に大きくなるように加算流速を設してもよい。あるいは、到達時間と判定時間との偏差が大きくなるほど加算流速が連続的又は段階的に大きくなるように加算流速を設定してもよい。あるいは、到達時間と判定時間との偏差の大きさにかかわらず、一定値の加算流速を設定してもよい。
【0048】
弁開度の補正は、上限流速に加算流速を付加した上で弁開度を算出する方法に限定されない。例えば、流体の流速が上限流速以下となる範囲で求められた弁開度を所定量だけ又は所定割合だけ増加させることによって弁開度を補正してもよい。
【0049】
また、第1圧力センサ13、第2圧力センサ14及び温度センサ15の一部又は全部を、配管10のうち制御弁20の下流側の流体の体積流量を検出する流量センサに置き換えてもよい。その場合、弁開度を算出する際に、流量センサの検出結果が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、ここに開示された技術は、送気システムについて有用である。
【符号の説明】
【0051】
100 送気システム
10 配管
20 制御弁
30 制御部

図1
図2