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  • 特許-二重容器用注出キャップ及び二重容器 図1
  • 特許-二重容器用注出キャップ及び二重容器 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】二重容器用注出キャップ及び二重容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/32 20060101AFI20221124BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B65D47/32 310
B65D1/02 111
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019140360
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021020733
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
(72)【発明者】
【氏名】桑原 和仁
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058643(JP,A)
【文献】特開2018-052563(JP,A)
【文献】特開2016-190675(JP,A)
【文献】特開2018-058594(JP,A)
【文献】特開2017-132529(JP,A)
【文献】特開2014-024569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液を収容する充填空間を有する内層体と、該内層体との相互間に内部空間を区画するとともに該内部空間に通じる通気口を有する外層体とを備える容器本体に装着され、該外層体を押圧することによって該充填空間の内容液を注出口から注出させる二重容器用注出キャップであって、
前記通気口を覆って前記外層体に装着され、前記注出口を有するとともに該通気口に向けて外気を導入する外気導入口を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体の裏面に対して当接及び離反可能であって、前記通気口から前記外気導入口に向かう空気の流通を遮断する一方、該外気導入口から該通気口に向かう空気の流通は許容する空気弁と、
前記空気弁を挟んで前記キャップ本体の裏面に対向して設けられ、前記充填空間と前記注出口とを通じさせる内容液用連通口を有する隔壁と、該隔壁から起立する環状壁と、該隔壁及び該環状壁の少なくとも一方を貫通して前記外気導入口と前記通気口とを通じさせる空気用連通口と、を有する中栓と、を備え、
前記中栓は、前記環状壁に連結するとともに前記空気弁の下面から離隔して該空気弁の外縁部に沿って延在する板状部を有し、
前記空気弁の外縁部は前記環状壁の内周面に沿って延在し、
前記板状部は、前記環状壁の内周面から径方向内側に向けて延在した後、前記環状壁の内周面に沿うようにして円弧状に延在し、この円弧状に延在する部分の先端に設けられ該空気弁の下面に当接する当接部を有する二重容器用注出キャップ。
【請求項2】
前記板状部は、前記当接部よりも薄肉である請求項1に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項3】
前記空気用連通口は、少なくとも前記環状壁を貫くものであって、
前記板状部の下面は、前記空気用連通口を区画する前記環状壁の下面と揃う位置にある請求項1又は2に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項4】
前記空気弁と前記当接部とが当接する部位は、ともに平坦面である請求項1~3の何か一項に記載の二重容器用注出キャップ。
【請求項5】
前記容器本体と請求項1~4の何れか一項に記載の二重容器用注出キャップとで構成される二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液を収容する内層体と内層体を内側に収める外層体とを備える容器本体に装着され、外層体への押圧に伴って内容液を注出させる二重容器用注出キャップ、及び容器本体にこの注出キャップを装着した二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内容液を収容する容器本体に注出キャップを装着した容器においては、例えば特許文献1に示されているような、内層体と外層体で構成した容器本体を用いた二重容器(デラミ容器、積層剥離容器ともいう)が使用されている。この種の外層体は可撓性を有していて、また表裏を貫く貫通穴(通気口)を通して内層体との相互間に形成される内部空間に空気を取り込むことができるよう構成されている。そして注出キャップには、内部空間から外界へ空気が漏れるのを防ぐ一方、内部空間が減圧されると外界から内部空間へ空気の導入が許容される空気弁が設けられている。
【0003】
このような構成の二重容器によれば、外層体を押圧することによって内部空間が加圧され、これによって充填空間の圧力が高まって内容液を注出させることができる。また外層体への押圧を解除すれば、外層体の復元に伴って内部空間が減圧し、これによって通気口から内部空間へ空気が導入されて内層体のみを減容変形させることができる。すなわち、内容液が少なくなっても容器の自立性が維持されるという利点がある。また、外気と置換することなく内容液を注出させることができるので、収容した内容液の品質劣化が生じにくいという利点もある。このためこの種の容器は、例えば醤油、ソース、味醂、料理酒などの調味料やシャンプー、リンス、液体石鹸、化粧水などの化粧料を収容するのに好適なものとして多用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-31932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した注出キャップは、特許文献1に示されているように、外層体に装着されるキャップ本体の内側に空気弁を備えている。そしてキャップ本体は、外層体の通気口に通じる外気導入口を備えていて、また空気弁は、通常時はキャップ本体の裏面に当接して通気口と外気導入口との間での空気の流通を遮断する一方、内部空間が減圧状態になるとキャップ本体の裏面から離反するように弾性変形する結果、通気口と外気導入口との間での空気の流通が可能となる。
【0006】
ところで、内部空間に導入される空気の量や流速などによっては、キャップ本体の裏面から離反した空気弁が振動して音鳴りが発生するおそれがあった。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、空気弁に起因する音鳴りを効果的に抑制することが可能な二重容器用注出キャップ、及び二重容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内容液を収容する充填空間を有する内層体と、該内層体との相互間に内部空間を区画するとともに該内部空間に通じる通気口を有する外層体とを備える容器本体に装着され、該外層体を押圧することによって該充填空間の内容液を注出口から注出させる二重容器用注出キャップであって、
前記通気口を覆って前記外層体に装着され、前記注出口を有するとともに該通気口に向けて外気を導入する外気導入口を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体の裏面に対して当接及び離反可能であって、前記通気口から前記外気導入口に向かう空気の流通を遮断する一方、該外気導入口から該通気口に向かう空気の流通は許容する空気弁と、
前記空気弁を挟んで前記キャップ本体の裏面に対向して設けられ、前記充填空間と前記注出口とを通じさせる内容液用連通口を有する隔壁と、該隔壁から起立する環状壁と、該隔壁及び該環状壁の少なくとも一方を貫通して前記外気導入口と前記通気口とを通じさせる空気用連通口と、を有する中栓と、を備え、
前記中栓は、前記環状壁に連結するとともに前記空気弁の下面から離隔して該空気弁の外縁部に沿って延在する板状部を有し、
前記空気弁の外縁部は前記環状壁の内周面に沿って延在し、
前記板状部は、前記環状壁の内周面から径方向内側に向けて延在した後、前記環状壁の内周面に沿うようにして円弧状に延在し、この円弧状に延在する部分の先端に設けられ該空気弁の下面に当接する当接部を有する二重容器用注出キャップである。
【0009】
前記板状部は、前記当接部よりも薄肉であることが好ましい。
【0010】
前記空気用連通口は、少なくとも前記環状壁を貫くものであって、
前記板状部の下面は、前記空気用連通口を区画する前記環状壁の下面と揃う位置にあることが好ましい。
【0011】
前記空気弁と前記当接部とが当接する部位は、ともに平坦面であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記容器本体と上述した何れかの二重容器用注出キャップとで構成される二重容器でもある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の二重容器用注出キャップは、中栓に、環状壁に連結するとともに空気弁の下面から離隔して空気弁の外縁部に沿って延在する板状部を設け、板状部の先端に、空気弁の下面に当接する当接部を設けている。すなわち、板状部及び当接部によって空気弁の振動が抑えられるので音鳴りが効果的に抑制できる。なお、本明細書等で当接とは、2つの部材が接触している状態のみならず、僅かに離れている状態も含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に従う二重容器の一実施形態を示した側面視での部分拡大断面図である。
図2図1における板状部周辺を拡大して示した図である。
図3図1に示した中栓の平面図である。
図4図1に示した中栓を形成するための金型について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1を参照して、本発明に従う二重容器の一実施形態について説明する。なお、本明細書等において、「上」方向、「下」方向とは、図1に示すように外層体(符号3)が下方に位置し、蓋体(符号9)が上方に位置する状態での向きをいう。
【0016】
本実施形態の二重容器は、容器本体1(内層体2と外層体3で構成される)、注出キャップ4(中栓5、逆止弁6、移動弁7、キャップ本体8で構成される)、及び蓋体9を備えている。
【0017】
内層体2は、その内側に内容液を収容可能な充填空間Sを備えている。本実施形態の内層体2は、薄肉の合成樹脂製であって、減容変形可能である。
【0018】
外層体3は、中心軸Oに沿って延在する筒状の口部3aを備えている。本実施形態の口部3aは、上端が開口する上部分3bに対し、下部分3cが大径に形成されている。また上部分3bの外周面には雄ねじ部3dが設けられている。更に上部分3bには、径方向に延在して上部分3bを貫通する通気口3eが設けられ、また通気口3eが開口する外周面には、上下方向に延在して雄ねじ部3dを分断する切欠き3fが設けられている。なお、図示は省略するが、口部3aの下方には筒状の胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられていて、外層体3はボトル状の形態をなしている。また本実施形態の外層体3は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0019】
また内層体2と外層体3との相互間には、通気口3eに通じる内部空間Nが形成されている。
【0020】
本実施形態における内層体2と外層体3は、相互に相溶性が低い合成樹脂を剥離可能に積層させたものである。内層体2を構成する合成樹脂としては、例えばナイロン樹脂(PA)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、変性ポリオレフィン樹脂(例えば三井化学株式会社製「アドマー」(登録商標)等)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)の他、ポリエチレン樹脂(PE)やポリプロピレン樹脂(PP)を採用することができる。また外層体3を構成する合成樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)をはじめとするポリエチレン樹脂(PE)の他、ポリプロピレン樹脂(PP)やポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を採用することができる。なお内層体2と外層体3は、単一の合成樹脂によってそれぞれが単層構造となるように形成されるものでもよいし、複数の合成樹脂を重ね合わせてそれぞれが積層構造となるように形成されるものでもよい。このような内層体2と外層体3は、内層体2を形成する合成樹脂素材と外層体3を形成する合成樹脂素材とが積層されたパリソンを、ブロー成形することによって得ることができるが、他にも、内層体2の合成樹脂素材と外層体3の合成樹脂素材とを積層させた試験管状のプリフォームを準備し、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して形成することや、内層体及び外層体を個別に形成し、その後、内層体を外層体の内側に配置したものも用いることができる。また、図示は省略するが、内層体2と外層体3との間に、縦方向に延在して内層体2と外層体3とを部分的に接合する、1本或いは複数本の接着帯を設けてもよい。
【0021】
中栓5は、例えばポリプロピレン(PP)のような合成樹脂で形成されている。本実施形態の中栓5は、口部3aの上方に位置して充填空間Sを閉鎖する隔壁5aを備えている。隔壁5aには、これを貫通する開口(内容液用連通口5b)と、全体として円筒状をなすとともに、上部に対して下部を縮径させた筒状壁5cが設けられている。
【0022】
また、内容液用連通口5b及び筒状壁5cの径方向外側には、上方を開放した環状凹部5eが設けられていて、環状凹部5eの径方向外側における隔壁5aの下面には、内層体2と液密に当接する環状のシール壁5dが設けられている。更に、隔壁5aの外縁部には、上方に向けて起立する環状壁5fが設けられている。そして、隔壁5aと環状壁5fとが連結する部位には、隔壁5aにおける径方向外側部分と環状壁5fにおける下方部分を一体的に切り欠くようにして形成され、隔壁5aと環状壁5fの両方を貫通する空気用連通口5gが設けられている。
【0023】
更に中栓5は、環状壁5fの内周面に一体的に連結するとともに、厚みが比較的薄い板状部5hを備えている。板状部5hは、図2に示すように、空気用連通口5gの直上に位置するように設けられている。また板状部5hの下面は、切り欠かれたように形成されて空気用連通口5gを区画する環状壁5fの下面に揃う高さに位置している。本実施形態の板状部5hは、平面視においては、図3に示すように環状壁5fの内周面から比較的広い幅で径方向内側に向けて延在した後、環状壁5fに沿うようにして比較的細い幅で円弧状に延在する形態をなすものである。このように板状部5hの厚みは比較的薄く、また平面視において長く延在しているため、片持ち梁のように上下方向に弾性変形することができる。このような形態になる板状部5hは、本実施形態では環状壁5fに対して周方向に等間隔で合計6つ設けている。なお板状部5hの数は、中栓5の形状や所期する機能等によって任意に変更可能である。またそれぞれの板状部5hの先端には、上方に向けて突出し、後述するように空気弁(符合6a)の下面に当接する当接部5jが設けられている。当接部5jの上面は、図2に示すように略水平方向に延在する平坦面である。
【0024】
本実施形態の中栓5は、溶融した合成樹脂素材を金型内で硬化させることによって上記の形態に成形したものである。具体的には図4に示すように、中栓5の上面における形状を形成するための上型D1と中栓5の下面における形状を形成するための下型D2とを突き合わせるようにして金型を閉じて、これらの内部に形成されている空洞(キャビティ)内で合成樹脂素材を硬化させて中栓5を形作っている。図4は、上型D1と下型D2における隔壁5aと環状壁5fとの連結部付近を示した概略図であって、図4(a)は、空気用連通口5gや板状部5hが設けられていない部位での断面図(図3に示すA-Aに沿う断面図)を示し、図4(b)は、空気用連通口5gや板状部5hを設けた部位での断面図(図3に示すB-Bに沿う断面図)を示している。
【0025】
図4(a)に示すように、上型D1によって、隔壁5aの上面や環状壁5fの内周面、上面、外周面等が形成され、下型D2によって、隔壁5aの下面やシール壁5dの外周面等が形成される。また図4(b)に示したように、空気用連通口5gや板状部5hを設ける部位においては、下型D2には部分的に上方へ突出させる突起部D2aを設け、上型D1には突起部D2aに対応する形状となる凹部D1aを設けている。そして、凹部D1aの径方向内側面と突起部D2aの径方向外側面が直接突き合わされて喰いきりになるようにして、空気用連通口5gを開口させている。
【0026】
ところで、環状壁5fの下面と板状部5hの下面は、突起部D2aの上面によって形成される。ここで、環状壁5fの下面と板状部5hの下面が揃っていなければ(環状壁5fの下面に対して板状部5hの下面が上方又は下方に位置していれば)、突起部D2aの上面形状が複雑になり、コストが嵩む上に成形も難しくなる。一方、本実施形態のように、環状壁5fの下面と板状部5hの下面を揃えることによって、金型費用を抑えることができ、また成形も安定的に行えるようになる。
【0027】
逆止弁6は、図1に示すように、空気の流れを規制するための空気弁6aと、内容液の流れを規制するための注出弁6bとを有している。本実施形態の逆止弁6は、ゴムやエラストマー、軟質ポリエチレン(低密度ポリエチレン)等の軟質材で形成されている。
【0028】
空気弁6aは、中心軸Oを中心とする筒状であって且つ下端部が環状凹部5eによって支持される基部6cを備えている。また基部6cの径方向外側には、中心軸Oを中心とする薄肉のドーナツ板状であって、図1に示すように内縁部が基部6cに対して一体に連結して基部6cに固定支持され、そこから径方向外側に向かって下方に湾曲するように延在する(円弧状に延在する)空気弁本体部6dが設けられている。また空気弁本体部6dの外縁側には、空気弁本体部6dよりも厚肉になる空気弁外縁部6eが設けられている。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の空気弁外縁部6eの上面は、上方に向けて先細りになるように傾斜しつつ頂部は横断面視で円弧状の面になるように形成されている。また空気弁外縁部6eの下面は、略水平方向に延在する平坦面である。そして空気弁外縁部6eの直下には、空気弁外縁部6eの下面から離隔する板状部5hが、空気弁外縁部6eに沿うように延在している(図3に示すように円弧状に延在している)。また板状部5hの先端に設けた当接部5jは、その上面が空気弁外縁部6eの下面に当接している。
【0030】
注出弁6bは、図1に示すように内容液用連通口5b及び筒状壁5cの上方に位置し、隔壁5aに着座して内容液用連通口5bを閉鎖する一方、筒状壁5cの一部は解放させたままとする板状の注出弁本体部6fと、注出弁本体部6fと基部6cとを弾性的に連結する連結片6gとを備えている。注出弁6bは、例えば3点弁や4点弁のように複数本の連結片6gによって注出弁本体部6fと基部6cとを連結するものに限られず、1点弁の如き一つの連結片6gによって注出弁本体部6fと基部6cとを連結するものでもよい。
【0031】
移動弁7は、本実施形態では球状をなすものであって、筒状壁5c内に配置され、容器本体1の姿勢変更や充填空間Sの内圧に応じて筒状壁5cの内周面に沿って移動する。移動弁7は、図1に示すように容器本体1を正立姿勢にした状態においては、筒状壁5cの縮径した下部に着座して、筒状壁5cと充填空間Sとを非連通状態にしている。
【0032】
キャップ本体8は、本実施形態では合成樹脂で形成されていて、逆止弁6の上方に位置する天壁8aと、天壁8aの外縁に一体に連結するとともに口部3aを取り囲む外周壁8bとを備えている。外周壁8bの内周面には、雄ねじ部3dに適合する雌ねじ部8cが設けられている。
【0033】
天壁8aの中央部には、天壁8aを貫く孔の縁部から上方に向けて延在し、その上部開口を内容液の注出口8dとする注出筒8eが設けられている。天壁8aの下面には、下方を開放するとともに基部6cの上部を支持する環状凹部8fが設けられている。環状凹部8fの径方向外側には、天壁8aを上下方向に貫通する外気導入口8gが設けられている。そして外気導入口8gの径方向外側には、天壁8aから下方に向けて突出し、下面が平坦面になる環状の段部8hが設けられている。なお本実施形態の段部8hは、空気弁6aの空気弁外縁部6eが当接する部位である。より詳細に説明すると、図2に示すように当接部5jの上面が空気弁外縁部6eの下面に当接した状態において、空気弁外縁部6eの上面が段部8hの下面に当接するようにしている。そして図1に示すように天壁8aの外縁部には、蓋体9を保持する爪部8jが設けられている。
【0034】
なお、後述するように内部空間Nが減圧状態になった際、空気弁6aの空気弁本体部6dは下方に向かって撓んで、空気弁外縁部6eと段部8hとの間には空気が通過可能な隙間が形成される。この状態においてキャップ本体8の内側には、外気導入口8gから通気口3eまで連通する空気の通る通路(連通路)が形成される。本実施形態の連通路は、外気導入口8gを通過し、離反した空気弁外縁部6eと段部8hとの隙間を通り、空気用連通口5gを経由して、更に雄ねじ部3dと雌ねじ部8cとの間に形成される螺旋状の隙間(又は切欠き3fによる隙間)を経て通気口3eに至る通路である。なお本実施形態の空気弁本体部6dは、空気弁外縁部6eよりも薄肉であって撓みやすくなっているため、内部空間Nが減圧状態になると、空気弁外縁部6eを段部8hからより確実に離反させることができる。また、上記のように板状部5hは上下方向に弾性変形可能であるため、空気弁外縁部6eが段部8hから離反するにあたって、大きな妨げになることはない。
【0035】
蓋体9は、本実施形態では合成樹脂で形成されていて、天壁8aの上方に位置する頂壁9aと、頂壁9aに一体に連結する蓋体外周壁9bとを備えている。頂壁9aの下面には、注出筒8eの内側に挿入されるとともに注出筒8eの内面と気密に当接するシール筒9cが設けられている。蓋体外周壁9bの内周面には、爪部8jに係合する係合凸部9dが設けられている。また蓋体外周壁9bの外周面には、キャップ本体8の外周壁8bに一体に連結するヒンジ部9eが設けられている。なお、本実施形態の蓋体9はキャップ本体8と一体に連結するものであるが、キャップ本体8とは別異に設け、ねじやアンダーカットによってキャップ本体8に着脱自在に取り付けるようにしてもよい。
【0036】
このような構成になる二重容器おいては、外層体3の胴部を押圧することによって内部空間Nが加圧され、これによって充填空間Sの圧力が高まるため、充填空間Sの内容液は、注出弁本体部6fを上昇させつつ、内容液用連通口5bから連結片6gの周囲の隙間を通って基部6cの内側に流れ込み、注出筒8eの内部を通って注出口8dから注出される。ここで、通気口3eと外気導入口8gとをつなぐ上述した連通路は、空気弁6aの空気弁外縁部6eが全周に亘って段部8hに当接して非連通の状態になっているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。更に本実施形態においては、板状部5hの先端に設けた当接部5jによって、空気弁外縁部6eは下方から支持されるため、空気弁外縁部6eと段部8hとの当接がより確実なものとなり、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出す不具合をより確実に防止することができる。なお、当接部5jの上面と空気弁外縁部6eの下面は曲面であってもよいが、本実施形態のように両方を平坦面とする場合は、両者はより安定的に当接するため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出す不具合を更に確実に防止することができる。そして筒状壁5c内の移動弁7は、内容液を注出させるべく容器本体1を傾倒姿勢に変位させた状態において、自重や筒状壁5cの下方側の開口から流入する内容液によって、注出弁本体部6f側(図1に破線で示す位置)に移動している。
【0037】
その後、外層体3への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nの容積が増えることから内部空間Nは減圧状態になる。これにより空気弁本体部6dは、板状部5hを弾性変形させつつ下方に向かって撓むため、空気弁外縁部6eと段部8hとの間には隙間が生じ、外気導入口8gから導入された空気は、上述した連通路を通って内部空間Nへ導入される。これにより内層体2を減容変形させたまま、外層体3を復元させることができる。またこの状態においては、当接部5jの上面が空気弁外縁部6eの下面に当接しているため、空気弁6aの振動が抑えられて音鳴りを抑制することができる。特に本実施形態においては、当接部5jの上面と空気弁外縁部6eの下面はともに平坦面であって、両者は安定的に当接しているため、空気弁6aの振動をより確実に抑制できるため、音鳴りを抑える効果が一層確実になる。
【0038】
また外層体3への押圧を解除した際は、充填空間Sの圧力が元の状態に戻って注出弁本体部6fが隔壁5aの上面に着座するため、内容液用連通口5bから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。ここで、内容液の注出を終えて容器本体1を元の正立姿勢に変位させた際、移動弁7は、それ自身の自重や充填空間S内の圧力低下によって下方に移動する。これによって筒状壁5cの上方内側には、移動弁7が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容液を注出筒8eから筒状壁5c内へ引き戻すことができ(サックバック機能)、注出筒8eからの液だれを有効に防止することができる。なお、下方に移動した移動弁7は、筒状壁5cの縮径した下部に着座するので、筒状壁5cから充填空間Sへの外気の流れ込みを防止することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。また、上述した実施形態の効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0040】
1:容器本体
2:内層体
3:外層体
3a:口部
3b:上部分
3c:下部分
3d:雄ねじ部
3e:通気口
3f:切欠き
4:注出キャップ
5:中栓
5a:隔壁
5b:内容液用連通口
5c:筒状壁
5d:シール壁
5e:環状凹部
5f:環状壁
5g:空気用連通口
5h:板状部
5j:当接部
6:逆止弁
6a:空気弁
6b:注出弁
6c:基部
6d:空気弁本体部
6e:空気弁外縁部
6f:注出弁本体部
6g:連結片
7:移動弁
8:キャップ本体
8a:天壁
8b:外周壁
8c:雌ねじ部
8d:注出口
8e:注出筒
8f:環状凹部
8g:外気導入口
8h:段部
8j:爪部
9:蓋体
9a:頂壁
9b:蓋体外周壁
9c:シール筒
9d:係合凸部
9e:ヒンジ部
D1:上型
D1a:凹部
D2:下型
D2a:突起部
N:内部空間
O:中心軸
S:充填空間
図1
図2
図3
図4