(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】起伏ゲート及び起伏ゲートの分解方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/40 20060101AFI20221124BHJP
E02B 7/20 20060101ALI20221124BHJP
E02B 3/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
E02B7/40
E02B7/20 104
E02B3/06 301
(21)【出願番号】P 2019198944
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森井 俊明
(72)【発明者】
【氏名】仲保 京一
(72)【発明者】
【氏名】吉識 竜太
(72)【発明者】
【氏名】佐山 真一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144696(JP,A)
【文献】特開2000-355924(JP,A)
【文献】実開昭53-89721(JP,U)
【文献】特開2005-146749(JP,A)
【文献】特開2005-344469(JP,A)
【文献】特開2017-166128(JP,A)
【文献】特開2001-31387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/40
E02B 7/20
E02B 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1水域から第2水域への水の流れを堰き止める起伏ゲートであって、
本体と前記本体に設けられ所定の軸心に対して同心に延びる軸部とを有し、水中に設けられ、前記軸心の回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体と、
上方に開口して前記軸心を中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面を有し、前記軸部を前記軸心の回りに回転可能に支持する軸受とを備え、
前記軸受は、ベースと、前記軸心に対して前記第2水域の側に配置され、前記ベースのうち前記軸心を中心とする周方向の一端部に取り付けられる後側アタッチメントとを含む分割構造に形成され、
前記摺動面は、前記ベース及び前記後側アタッチメントに亘って形成され、
前記摺動面のうち前記ベースに形成された部分であるベース面は、前記軸心を含む水平面よりも下方に位置し、且つ、前記軸心を中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されている起伏ゲート。
【請求項2】
請求項1に記載の起伏ゲートにおいて、
前記軸受は、前記軸心に対して前記第1水域の側に配置され、前記ベースのうち前記周方向の他端部に取り付けられる前側アタッチメントをさらに含み、
前記摺動面は、前記ベース、前記前側アタッチメント及び前記後側アタッチメントに亘って形成される起伏ゲート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の起伏ゲートにおいて、
前記摺動面のうち前記後側アタッチメントに形成された部分である後側延長面は、前記水平面よりも上方まで延び、
前記ベースは、前記第1水域の方を向く受け面を有し、
前記後側アタッチメントは、前記受け面に接触した状態で前記ベースに取り付けられる起伏ゲート。
【請求項4】
請求項3に記載の起伏ゲートにおいて、
前記後側アタッチメントは、前記受け面に取り付けられる起伏ゲート。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の起伏ゲートにおいて、
前記ベースは、前記ベース面が形成されたブッシュと、前記ブッシュを支持するベース本体とを有し、
前記ブッシュは、前記軸心の方向へスライドさせることによって前記ベース本体に着脱可能に構成されている起伏ゲート。
【請求項6】
請求項5に記載の起伏ゲートにおいて、
前記ベース本体には、前記ブッシュに対して前記軸心の方向の両側に配置され、前記軸心の方向への前記ブッシュの移動を制限する抜け止め部が設けられており、
前記ブッシュは、前記抜け止め部を取り除くことによって、前記軸心の方向へスライド可能となっている起伏ゲート。
【請求項7】
本体及び前記本体に設けられ所定の軸心に対して同心に延びる軸部を有し、水中に設けられ、前記軸心の回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体と、上方に開口して前記軸心を中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面を有し、前記軸部を前記軸心の回りに回転可能に支持する軸受とを備え、第1水域から第2水域への水の流れを堰き止める起伏ゲートの分解方法であって、
前記軸受は、ベースと、前記ベースのうち前記軸心を中心とする周方向の端部に取り付けられるアタッチメントとを含む分割構造に形成され、
前記摺動面は、前記ベース及び前記アタッチメントに亘って形成され、
前記摺動面のうち前記ベースに形成された部分であるベース面は、前記軸心を含む水平面よりも下方に位置し、且つ、前記軸心を中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成され、
前記ベースは、前記ベース面が形成されたブッシュと、前記ブッシュを支持するベース本体とを有し、
前記アタッチメントを前記ベースから取り外す工程と、
前記アタッチメントを取り外した後に、前記扉体を上方に引き上げて前記軸部を前記ベース面から浮かす工程と、
前記扉体を引き上げた後に、前記ブッシュを前記軸心の方向へスライドさせて前記ベース本体から取り外す工程とを含む、起伏ゲートの分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、起伏ゲート及びその分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、水中に設けられ、所定の軸心の回りに倒伏状態と起立状態との間で回転する扉体を備えた起伏ゲートが開示されている。扉体の軸部は、軸心の回りに回転自在な状態で軸受に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような起伏ゲートにおいては、扉体又は軸受のメンテナンス又は交換のために、扉体を軸受から取り外す必要がある。軸受は、軸部が抜けださないように、軸心を中心とする、少なくとも180度よりも大きな範囲で軸部を覆っている。そのため、扉体を軸受から取り外す際には、軸受を分解する必要がある。同様に、扉体を軸受に設置する際には、軸受を分解する必要がある。
【0005】
しかしながら、軸受は水中に設置されているため、扉体の着脱においては、扉体を水中から引き上げたり、扉体を水中に降下させたりする。このとき、扉体が水の影響(波など)を受けるため、水中で扉体を引き上げたり、降下させたりする作業は陸上に比べて難しくなる。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水中での扉体の着脱作業を容易にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された技術は、第1水域から第2水域への水の流れを堰き止める起伏ゲートが対象である。起伏ゲートは、本体と前記本体に設けられ所定の軸心に対して同心に延びる軸部とを有し、水中に設けられ、前記軸心の回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体と、上方に開口して前記軸心を中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面を有し、前記軸部を前記軸心の回りに回転可能に支持する軸受とを備え、前記軸受は、ベースと、前記軸心に対して前記第2水域の側に配置され、前記ベースのうち前記軸心を中心とする周方向の一端部に取り付けられる後側アタッチメントとを含む分割構造に形成され、前記摺動面は、前記ベース及び前記後側アタッチメントに亘って形成され、前記摺動面のうち前記ベースに形成された部分であるベース面は、前記軸心を含む水平面よりも下方に位置し、且つ、前記軸心を中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されている。
【0008】
また、ここに開示された技術は、本体及び前記本体に設けられ所定の軸心に対して同心に延びる軸部を有し、水中に設けられ、前記軸心の回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体と、上方に開口して前記軸心を中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面を有し、前記軸部を前記軸心の回りに回転可能に支持する軸受とを備え、第1水域から第2水域への水の流れを堰き止める起伏ゲートの分解方法が対象である。前記軸受は、ベースと、前記ベースのうち前記軸心を中心とする周方向の端部に取り付けられるアタッチメントとを含む分割構造に形成され、前記摺動面は、前記ベース及び前記アタッチメントに亘って形成され、前記摺動面のうち前記ベースに形成された部分であるベース面は、前記軸心を含む水平面よりも下方に位置し、且つ、前記軸心を中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成され、前記ベースは、前記ベース面が形成されたブッシュと、前記ブッシュを支持するベース本体とを有し、前記アタッチメントを前記ベースから取り外す工程と、前記アタッチメントを取り外した後に、前記扉体を上方に引き上げて前記軸部を前記ベース面から浮かす工程と、前記扉体を引き上げた後に、前記ブッシュを前記軸心の方向へスライドさせて前記ベース本体から取り外す工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
前記起伏ゲートによれば、水中での扉体の着脱作業を容易にすることができる。
【0010】
前記起伏ゲートの分解方法によれば、水中での扉体の着脱作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、起伏ゲート式防波堤が設置された港の概観図である。
【
図2】
図2は、起立状態の起伏ゲートを第1水域の側から見た正面図である。
【
図3】
図3は、倒伏状態における起伏ゲートの概略的な側面図である。
【
図5】
図5は、ベースを半径方向外側を向いて見た図である。
【
図6】
図6は、ベースを部分的に拡大した側面図である。
【
図7】
図7は、第1取付部及び前側アタッチメントを中心に拡大した軸受の側面図である。
【
図8】
図8は、第2取付部及び後側アタッチメントを中心に拡大した軸受の側面図である。
【
図9】
図9は、前側アタッチメント及び後側アタッチメントを取り外した状態の軸受の側面図である。
【
図10】
図10は、前側アタッチメント及び後側アタッチメントを取り外した後に軸部を少し引き上げ且つ抜け止めピンを取り除いた状態の軸受の側面図である。
【
図11】
図11は、ベースを半径方向外側を向いて見た図であり、ブッシュ片を軸心の方向へスライドさせた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、起伏ゲート式防波堤100が設置された港の概観図である。
【0014】
例えば、起伏ゲート式防波堤100は、津波や高潮対策として海洋、より具体的には港湾に設置される。起伏ゲート式防波堤100は、第1水域Aと第2水域Bとを仕切るように配置されている。起伏ゲート式防波堤100が港湾に設置される場合、港外の水域が第1水域Aであり、港内の水域が第2水域Bである。
【0015】
起伏ゲート式防波堤100は、起伏ゲート1と、堤体9とを備える。
【0016】
堤体9は、第1水域Aと第2水域Bとを連通させる開口91が形成されている。起伏ゲート1は、開口91に設けられている。堤体9は、互いに対向するように配置されて開口91を区画する第1側壁92及び第2側壁93を有している。
【0017】
図2は、起立状態の起伏ゲート1を第1水域Aの側から見た正面図である。
図3は、倒伏状態における起伏ゲート1の概略的な側面図である。起伏ゲート1は、第1水域Aから第2水域Bへの水の流れを堰き止める。起伏ゲート1は、水中に設けられ、所定の軸心X回りに倒伏状態と起立状態との間で回転する扉体10と、扉体10を軸心Xの回りに回転可能に支持する軸受2とを備えている。ここで、「水中に設けられ」とは、少なくとも部分的に水中に配置されていることを意味する。つまり、水中に設けられた扉体10は、扉体10の全体が水中に配置されていることを要さない。例えば、水中に設けられた扉体10には、後述するように起立状態において扉体10の一部が水上に露出する構成も含み得る。
【0018】
扉体10は、開口91を開閉する。扉体10は、
図1に示すように、第1側壁92と第2側壁93との間に配置されている。扉体10の個数は、任意に設定され得る。この例では、起伏ゲート1は、4つの扉体10を有している。4つの扉体10は、第1側壁92と第2側壁93との間に配列されている。
【0019】
扉体10は、
図2に示すように、本体11と、本体11に設けられ軸心Xに対して同心に延びる軸部12を有している。例えば、本体11は、略矩形の平板状に形成されている。本体11の内部には、空気室(図示省略)が形成されている。軸部12は、本体11のうち矩形の一辺に相当する部分に設けられている。軸部12は、略円柱状に形成されている。複数(4つ)の扉体10は、
図1に示すように、軸部12が一直線上に並ぶようにして配列されている。
【0020】
軸受2は、水中(即ち、海中)に配置されている。軸受2は、軸部12を軸心Xの回りに回転可能に支持する(
図2参照)。これにより、扉体10は、軸部12を中心に、倒伏状態(
図3の実線参照)と起立状態(
図3の一点鎖線参照)との間で回転する。軸受2は、いわゆる滑り軸受である。1つの扉体10に、2つの軸受2が設けられている。
【0021】
扉体10は、一対のスラスト受け15によって軸心Xの方向への移動が制限されている。扉体10は、軸心Xの方向においてスラスト受け15と対向するように設けられたコンタクト部14を有している。コンタクト部14は、軸部12に設けられている。コンタクト部14は、軸部12から軸心Xを中心とする半径方向へ突出し、軸心Xを中心とする周方向に円弧状に拡がっている。
【0022】
スラスト受け15は、1つの扉体10に対して2つ設けられている。一対のスラスト受け15は、軸心Xの方向に並んでいる。一対のスラスト受け15は、2つの軸受2の間に配置されている。コンタクト部14は、2つのスラスト受け15の間に配置されている。
【0023】
一対のスラスト受け15の軸心Xの方向の間隔は、コンタクト部14の軸心Xの方向の幅よりも少しだけ大きい。そのため、扉体10が回転する際の抵抗が低減される。
【0024】
扉体10は、倒伏状態と起立状態との間で回転する際や倒伏状態において上下に揺動する際などに、コンタクト部14が一対のスラスト受け15の何れかに接触することによって、軸心Xの方向への扉体10の移動が制限される。尚、扉体10が軸心X回りに回転する際だけではなく、地震等の影響によっても軸心Xの方向へ移動した場合にも、コンタクト部14が一対のスラスト受け15の何れかに接触し得る。そのような場合においても、スラスト受け15によって軸心Xの方向への扉体10の移動が制限される。
【0025】
図3に示すように、倒伏状態において、扉体10の全体は、水中に沈んでいる。扉体10は、倒伏状態においては、本体11が軸心Xに対して第1水域Aの側に位置するように倒伏している(
図1参照)。倒伏状態において、扉体10は、開口91を開放している。
【0026】
水底(即ち、海底)には、倒伏状態の扉体10を格納する格納部94が形成されている。格納部94は、上方に開口する箱状に形成されている。格納部94の平面形状は、略矩形であって、扉体10を収容できる形状をしている。この例では、4つの扉体10に対して共通の格納部94が1つ設けられている。
【0027】
扉体10は、係留機構3によって倒伏状態で係留される。係留機構3は、フック31を有している。フック31は、所定の軸心回りに回転可能に構成されている。フック31は、駆動部(図示省略)によって軸心回りに回転駆動される。扉体10には、係合ピン13が設けられている。フック31は、軸心を中心とする周方向の一方に回転することによって倒伏状態にある扉体10の係合ピン13に係合する。係合ピン13へのフック31の係合により、扉体10が係留される。フック31は、軸心を中心とする周方向の他方に回転することによって係合ピン13への係合が解除される。係合ピン13へのフック31の係合が解除されると、扉体10は、扉体10の受ける浮力によって倒伏状態から起立状態へ回転する。
【0028】
起立状態において、扉体10は、部分的に水上に突出している。起立状態において、扉体10は、開口91を閉鎖する。
【0029】
軸受2の構成について詳しく説明する。
図4は、軸受2の側面図である。以下、特段の断りが無い限り、「周方向」とは、軸心Xを中心とする周方向を意味し、「半径方向」とは、軸心Xを中心とする半径方向を意味する。
【0030】
軸受2は、ベース3と、軸心Xに対して第1水域Aの側に配置され、ベース3のうち周方向の一端部に取り付けられる前側アタッチメント4と、軸心Xに対して第2水域Bの側に配置され、ベース3のうち周方向の他端部に取り付けられる後側アタッチメント5とを含む分割構造に形成されている。
【0031】
軸受2は、上方に開口して軸心Xを中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面21を有する。摺動面21は、ベース3、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5に亘って形成されている。摺動面21のうちベース3に形成された部分であるベース面21aは、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されている。ベース面21aは、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置している。摺動面21のうち前側アタッチメント4に形成された部分である前側延長面21bは、水平面HPよりも上方まで延びている。摺動面21のうち後側アタッチメント5に形成された部分である後側延長面21cは、水平面HPよりも上方まで延びている。さらに、後側延長面21cは、前側延長面21bよりも上方まで延びている。ベース面21a、前側延長面21b及び後側延長面21cは、軸心Xを中心とし且つ同一半径の円弧を軸心Xの方向に平行移動させることによって形成される円弧面を形成している。前側延長面21b及び後側延長面21cは、軸心Xと略同じ高さ位置に配置されている。すなわち、前側延長面21b及び後側延長面21cは、軸心Xと水平方向に並んでいる。
【0032】
図5は、ベース3を半径方向外側を向いて見た図である。
図6は、ベース3を部分的に拡大した側面図である。ベース3は、ベース本体31と、ベース面21aが形成されたベースブッシュ39とを有している。ベースブッシュ39は、ブッシュの一例である。
【0033】
ベースブッシュ39は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した板材で形成されている。ベースブッシュ39の内周面がベース面21aである。ベースブッシュ39は、複数のブッシュ片39aに分割されている。詳しくは、ベースブッシュ39は、軸心Xの方向に2分割され、周方向に5分割されている。すなわち、ベースブッシュ39は、10個のブッシュ片39aに分割されている。
【0034】
ベース本体31は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した支持壁32を有している。支持壁32は、ベースブッシュ39を支持する。支持壁32の内周面は、軸心Xを中心とする円弧を軸心Xの方向に平行移動させることによって形成される円弧面である。以下、この内周面を「支持面32a」と称する。支持面32a上には、ベースブッシュ39が載置される。支持面32aとベースブッシュ39とは、接触しているものの、接着はされていない。すなわち、ベースブッシュ39は、軸心Xの方向へスライドさせることによってベース本体31に着脱可能に構成されている。
【0035】
支持面32aには、周方向に並ぶ各2つのブッシュ片39aの間を仕切る仕切部33が設けられている。各仕切部33は、軸心Xの方向に延び且つ支持面32aから半径方向内側へ突出している。複数の仕切部33は、周方向に等間隔に配置されている。隣り合う各2つの仕切部33の間に、軸心Xの方向に並ぶ2つのブッシュ片39aが配置されている。つまり、周方向に隣り合うブッシュ片39aは、少なくとも仕切部33に相当する間隔を空けて配置されている。一方、軸心Xの方向に隣り合うブッシュ片39aは、略隙間なく配置されている。
【0036】
さらに、ベース本体31には、ベースブッシュ39に対して軸心Xの方向の両側に配置され、軸心Xの方向へのベースブッシュ39の移動を制限する抜け止めピン34が設けられている。詳しくは、抜け止めピン34は、支持壁32に設けられている。複数の抜け止めピン34は、周方向に間隔を空けて配置されている。軸心Xの方向に並ぶ各2つのブッシュ片39aに対して軸心Xの方向の両側に少なくとも1つずつ抜け止めピン34が設けられている。抜け止めピン34は、抜け止め部の一例である。
【0037】
各抜け止めピン34は、支持面32aから突出する状態(以下、「突出状態」という)と、支持面32aから突出しない状態(以下、「退避状態」という)とで切り替え可能に構成されている。例えば、各抜け止めピン34は、ボルトで形成されている。支持壁32には、抜け止めピン34が挿入される貫通孔32bが形成されている。また、支持壁32の外周面(即ち、支持面32aと反対側の面)には、各貫通孔32bに連続するように溶接ナット32cが設けられている。抜け止めピン34が溶接ナット32cにねじ込まれると、抜け止めピン34は、支持壁32を貫通し、突出状態となる。軸受2の使用状態(すなわち、組立完了後)は、抜け止めピン34は、突出状態となっている。抜け止めピン34を突出状態とすることによって、ベースブッシュ39の軸方向へのスライドが制限される。一方、抜け止めピン34を溶接ナット32cから後退させると、退避状態となる。抜け止めピン34を退避状態にする、即ち、支持面32aから取り除くことによって、ベースブッシュ39が軸心の方向へスライド可能となり、ベースブッシュ39を着脱することができる。
【0038】
ベース本体31は、
図4に示すように、前側アタッチメント4が取り付けられる第1取付部35と、後側アタッチメント5が取り付けられる第2取付部36とを有している。第1取付部35は、支持壁32の周方向の一端に隣り合うように配置され、第2取付部36は、支持壁32の周方向の他端に隣り合うように配置されている。第1取付部35は、軸心Xに対して第1水域Aの側に位置している。第2取付部36は、軸心Xに対して第2水域Bの側に位置している。
【0039】
図7は、第1取付部35及び前側アタッチメント4を中心に拡大した軸受2の側面図である。第1取付部35は、
図7に示すように、支持壁32から離れるほど半径方向外側に位置するように傾斜した取付壁35aを有している。取付壁35aには、ボルト4a(
図4参照)が挿入される貫通孔35bが形成されている。
【0040】
前側アタッチメント4は、
図7に示すように、前側本体41と、前側延長面21bが形成された前側延長ブッシュ49とを有している。
【0041】
前側延長ブッシュ49は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した板材で形成されている。前側延長ブッシュ49の内周面が前側延長面21bである。前側延長ブッシュ49は、複数のブッシュ片49aに分割されている。詳しくは、前側延長ブッシュ49は、軸心Xの方向に2分割されている。すなわち、前側延長ブッシュ49は、2個のブッシュ片49aに分割されている。
【0042】
前側本体41は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した支持壁42と、第1取付部35に取り付けられる取付壁43と、前側本体41を補強するためのウェブ44とを有している。取付壁43の一端縁は、支持壁42に連結されている。支持壁42と取付壁43とは、側面視で略V字状になるように互いに対向している。ウェブ44は、軸心Xと直交する方向に拡がる板状に形成され、支持壁42と取付壁43とに連結されている。
【0043】
支持壁42は、前側延長ブッシュ49を支持する。支持壁42の内周面は、軸心Xを中心とする円弧を軸心Xの方向に平行移動させることによって形成される円弧面である。以下、この内周面を「支持面42a」と称する。前側アタッチメント4がベース3に取り付けられた状態において、支持面42aは、支持面32aと同一の円弧面を形成する。支持面42a上には、前側延長ブッシュ49が載置される。支持面42aと前側延長ブッシュ49とは、接触しているものの、接着はされていない。
【0044】
支持面42aには、前側延長ブッシュ49の周方向の位置を規制する規制部45が設けられている。規制部45は、支持面42aの周方向の端部のうち支持面32aから遠い方の端部に配置されている。規制部45は、軸心Xの方向に延び且つ支持面42aから半径方向内側へ突出している。前側延長ブッシュ49の周方向の長さは、支持面42aの周方向の長さよりも長い。そのため、支持面42a上に載置された前側延長ブッシュ49の一部は、支持面32a上まで延びている。前側延長ブッシュ49は、規制部45と、ベース3の仕切部33のうち規制部45に最も近い仕切部33との間に配置されている。ブッシュ片49aと周方向に隣り合うブッシュ片39aは、少なくとも仕切部33に相当する間隔を空けて配置されている。一方、軸心Xの方向に並ぶ2つのブッシュ片49aは、軸心Xの方向に略隙間なく配置されている。
【0045】
さらに、前側本体41には、前側延長ブッシュ49に対して軸心Xの方向の両側に配置され、軸心Xの方向への前側延長ブッシュ49の移動を制限する抜け止めピン46が設けられている。詳しくは、抜け止めピン46は、支持壁42に設けられている。各抜け止めピン46は、支持面42aから突出している。例えば、各抜け止めピン46は、ボルトで形成されている。支持壁42には、抜け止めピン46が挿入される貫通孔42bが形成されている。また、支持壁42の外周面(即ち、支持面42aと反対側の面)には、各貫通孔42bに連続するように溶接ナット42cが設けられている。抜け止めピン46は、溶接ナット42cにねじ込まれており、支持壁42を貫通し、支持面42aから突出している。尚、抜け止めピン46を溶接ナット42cから後退させることによって、抜け止めピン46を支持面42aから突出しない状態とすることもできる。
【0046】
取付壁43には、ボルト4a(
図4参照)が挿入される貫通孔43aが形成されている。貫通孔43aは、貫通孔35bと連通している。取付壁43は、第1取付部35の取付壁35aに重ね合わされた状態で取付壁35aにボルト締結される。
【0047】
支持壁42と取付壁43とウェブ44との間にはスペース47が形成されている。このスペース47は、ボルト4aを締めたり、緩めたりして前側アタッチメント4を着脱するための作業スペースである。
【0048】
図8は、第2取付部36及び後側アタッチメント5を中心に拡大した軸受2の側面図である。第2取付部36は、
図8に示すように、支持壁32の周方向の他端から水平方向に延びる第1取付壁36aと第1取付壁36aから鉛直上方に延びる第2取付壁36bとを有している。第1取付壁36aには、ボルト5a(
図4参照)が挿入される貫通孔36cが形成されている。第2取付壁36bには、ボルト5b(
図4参照)が挿入される貫通孔36dが形成されている。第2取付壁36bは、ベース3に取り付けられた後側アタッチメント5が接触する受け面36eを有している。受け面36eは、実質的に第1水域Aの方を向いている。すなわち、受け面36eの法線方向は、実質的に第1水域Aの方を向いている。
【0049】
後側アタッチメント5は、後側本体51と、後側延長面21cが形成された後側延長ブッシュ59とを有している。
【0050】
後側延長ブッシュ59は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した板材で形成されている。後側延長ブッシュ59の内周面が後側延長面21cである。後側延長ブッシュ59は、複数のブッシュ片59aに分割されている。詳しくは、後側延長ブッシュ59は、軸心Xの方向に2分割されている。すなわち、後側延長ブッシュ59は、2個のブッシュ片59aに分割されている。
【0051】
後側本体51は、軸心Xを中心とする円弧状に湾曲した支持壁52と、第2取付部36の第1取付壁36aに取り付けられる第1取付壁53と、第2取付部36の第2取付壁36bに取り付けられる第2取付壁54と、後側本体51を補強するためのウェブ55とを有している。支持壁52と第2取付壁54とは、互いに対向している。第1取付壁53は、支持壁52と第2取付壁54とを連結している。ウェブ55は、軸心Xと直交する方向に拡がる板状に形成され、支持壁52と第1取付壁53と第2取付壁54とに連結されている。
【0052】
支持壁52は、後側延長ブッシュ59を支持する。支持壁52の内周面は、軸心Xを中心とする円弧を軸心Xの方向に平行移動させることによって形成される円弧面である。以下、この内周面を「支持面52a」と称する。後側アタッチメント5がベース3に取り付けられた状態において、支持面52aは、支持面32aと同一の円弧面を形成する。支持面52a上には、後側延長ブッシュ59が載置される。支持面52aと後側延長ブッシュ59とは、接触しているものの、接着はされていない。
【0053】
支持面52aには、後側延長ブッシュ59の周方向の位置決めを行う規制部56が設けられている。規制部56は、支持面52aの周方向の端部のうち支持面32aから遠い方の端部に配置されている。規制部56は、軸心Xの方向に延び且つ支持面52aから半径方向内側へ突出している。後側延長ブッシュ59の周方向の長さは、支持面52aの周方向の長さよりも長い。そのため、支持面52a上に載置された後側延長ブッシュ59の一部は、支持面32a上まで延びている。後側延長ブッシュ59は、規制部56と、ベース3の仕切部33のうち規制部56に最も近い仕切部33との間に配置されている。ブッシュ片59aと周方向に隣り合うブッシュ片39aは、少なくとも仕切部33に相当する間隔を空けて配置されている。一方、軸心Xの方向に並ぶ2つのブッシュ片59aは、軸心Xの方向に略隙間なく配置されている。
【0054】
さらに、後側本体51には、後側延長ブッシュ59に対して軸心Xの方向の両側に配置され、軸心Xの方向への後側延長ブッシュ59の移動を制限する抜け止めピン57が設けられている。詳しくは、抜け止めピン57は、支持壁52に設けられている。各抜け止めピン57は、支持面52aから突出している。例えば、各抜け止めピン57は、ボルトで形成されている。支持壁52には、抜け止めピン57が挿入される貫通孔52bが形成されている。また、支持壁52の外周面(即ち、支持面52aと反対側の面)には、各貫通孔52bに連続するように溶接ナット52cが設けられている。抜け止めピン57は、溶接ナット52cにねじ込まれており、支持壁52を貫通し、支持面52aから突出している。尚、抜け止めピン57を溶接ナット52cから後退させることによって、抜け止めピン57を支持面52aから突出しない状態とすることもできる。
【0055】
第1取付壁53には、ボルト5a(
図4参照)が挿入される貫通孔53aが形成されている。貫通孔53aは、貫通孔36cと連通している。第1取付壁53は、第2取付部36の第1取付壁36aに重ね合わされた状態で第1取付壁36aにボルト締結される。第2取付壁54には、ボルト5b(
図4参照)が挿入される貫通孔54aが形成されている。貫通孔54aは、貫通孔36dと連通している。第2取付壁54は、第2取付部36の第2取付壁36bに重ね合わされた状態で第2取付壁36bにボルト締結される。すなわち、後側アタッチメント5は、受け面36eに取り付けられている。
【0056】
支持壁52と第1取付壁53と第2取付壁54とウェブ55との間にはスペース58が形成されている。このスペース58は、ボルト5a,5bを締めたり、緩めたりして後側アタッチメント5を着脱するための作業スペースである。
【0057】
このように構成された軸受2は、
図4に示すように、軸心Xを中心とする180度よりも大きな範囲で軸部12の外周面を覆っている。そのため、軸受2は、軸部12が軸受2から抜け出すことなく、軸部12を回転可能に支持している。軸受2の摺動面21は、上方に開口しているので、扉体10が倒伏状態と起立状態との間で回転する際に、扉体10の本体11と摺動面21(即ち、軸受2)との緩衝が回避される。
【0058】
そして、扉体10又はベースブッシュ39、前側延長ブッシュ49若しくは後側延長ブッシュ59のメンテナンス又は交換の際には、軸受2が分解される。このとき、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5がベース3から取り外される。
【0059】
詳しくは、ボルト4aが取り外されることによって、前側アタッチメント4がベース3から取り外し可能となる。まず、前側アタッチメント4の前側本体41がベース3から取り外される。この状態においては、前側延長ブッシュ49の一部は、軸部12と支持壁32との間に挟まっている。この前側延長ブッシュ49を軸心Xの方向へスライドさせて、軸部12と支持壁32との間から引き抜く。こうして、前側アタッチメント4がベース3から取り外される。
【0060】
ボルト5a及びボルト5bが取り外されることによって、後側アタッチメント5がベース3から取り外し可能となる。まず、後側アタッチメント5の後側本体51がベース3から取り外される。この状態において、後側延長ブッシュ59の一部は、軸部12と支持壁32との間に挟まっている。この後側延長ブッシュ59を軸心Xの方向へスライドさせて、軸部12と支持壁32との間から引き抜く。こうして、後側アタッチメント5がベース3から取り外される。
【0061】
図9は、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を取り外した状態の軸受2の側面図である。前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5が取り外された状態においては、
図9に示すように、摺動面21のうちベース面21aだけが残った状態となっている。ベース面21aは、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されているので、軸部12をベース面21aから半径方向へ引き抜くことができる。さらに、ベース面21aは、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置しているので、軸部12をベース面21から鉛直上方へ引き抜くことができる。前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を取り外した後は、扉体10を鉛直上方に引き上げることによって扉体10をベース3(即ち、軸受2)から取り外すことができる。
【0062】
一方、扉体10を軸受2に取り付ける際には、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5がベース3から取り外されている。前述の如く、ベース面21aは、水平面HPよりも下方に位置し且つ、ベース面21aの中心角は180度以下なので、扉体10を鉛直下方に降下させることによって扉体10をベース面21a上に載置することができる。続いて、前側延長ブッシュ49及び後側延長ブッシュ59を、支持壁32の周方向の両端部と軸部12との間に軸心Xの方向へスライドさせて挿入する。その後、前側本体41を第1取付部35にボルト締結し、後側本体51を第2取付部36にボルト締結する。こうして、軸受2への扉体10の取付が完了する。
【0063】
ここで、軸受2を分割構造とする上で、ベース3、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5の3分割とすることによって、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を小型化且つ軽量化することができる。軸受2を分割構造とする場合、軸受2を2分割することも考えられる。しかし、軸受2を2分割とする場合、アタッチメントが大型化、ひいては重量化してしまう。軸受2は水中に配置されているため、軸受2の分解及び組立作業は容易ではない。前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5が小型化且つ軽量化されることによって、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5の取り扱いが容易になり、ひいては、軸受2の分解及び組立作業が容易になる。
【0064】
さらに、軸受2は、扉体10の倒伏状態と起立状態との間の回転を可能とするために、上方に開口した形状をしている。そのため、軸受2において周方向の両端部に位置する前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5は、軸受2のうち比較的上部に位置する部分である。そのような部分をアタッチメントとして分割する場合、アタッチメントをベースから上方に取り外し、アタッチメントをベースへ上方から載置して取り付ける構成が通常は考えられる。扉体10は起立状態となって第1水域Aから第2水域Bへの水の流れを堰き止めるため、扉体10が起立状態のときには扉体10に第1水域Aからの大きな水圧が作用する。これにより、軸受2には軸部12から概ね水平方向への大きな力が作用する。アタッチメントが軸心Xに対して第2水域Bの側に配置されている場合、アタッチメントに軸部12からの力が作用することになる。アタッチメントをベースへ上方から載置して取り付ける構成においては、軸受2が軸部12から略水平方向に受ける力の大部分は、アタッチメントとベースとの取付面と平行な方向、即ち、せん断方向に作用する傾向にある。そのため、アタッチメントとベースとの取付には、大きな取付強度が要求される。
【0065】
それに対し、軸受2においては、ベース3には、ベース3に取り付けられた後側アタッチメント5が接触する面であって第1水域Aの方を向く面である受け面36eが設けられている。後側アタッチメント5は、軸心Xに対して第2水域Bの側に配置されているので、扉体10が起立状態の際には、後側アタッチメント5に軸部12から略水平方向への力が作用する。受け面36eが無ければ、後側アタッチメント5が軸部12から受ける力の大部分を後側アタッチメント5を第1取付壁36aに取り付けるボルト5aで受け止めることになる。受け面36eが設けられていると、後側アタッチメント5が軸部12から受ける力の大部分を、受け面36eで受け止めることになる。この力は、受け面36eに対しその法線方向に作用する。その結果、後側アタッチメント5、ひいては、軸受2は、軸部12からのより大きな力に耐えることができる。
【0066】
続いて、ベースブッシュ39の交換について説明する。
図10は、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を取り外した後に軸部12を少し引き上げ且つ抜け止めピン34を取り除いた状態の軸受2の側面図である。
図11は、ベース3を半径方向外側を向いて見た図であり、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へスライドさせた状態を示す。
図11では、軸部12を省略している。軸受2においては、扉体10を前述のようにベース3から完全に取り外さなくても、ベースブッシュ39を交換することができる。当然ながら、扉体10をベース3から完全に取り外しても、ベースブッシュ39を交換することができる。
【0067】
詳しくは、
図9に示すように、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5をベース3から取り外す。これにより、扉体10が上方へ引き上げ可能となる。
【0068】
続いて、
図10に示すように、扉体10を上方に引き上げて扉体10をベース面21aから浮かせる。これにより、ベースブッシュ39は、扉体10の荷重から解放される。このとき、軸部12をベース3から完全に引き上げる必要はなく、軸部12とベースブッシュ39との間に隙間が形成されるように扉体10が引き上げられる。例えば、軸部12の最下部は、ベース面21aの最上部(即ち、周方向の一端部)よりも低い位置に位置している。
【0069】
さらに、抜け止めピン34を後退させて退避状態にする。これにより、軸心Xの方向へのブッシュ片39aの移動の制限が解除される。
図11では、抜け止めピン34は、支持壁32から取り外されている。
【0070】
続いて、
図11に示すように、ベースブッシュ39、即ち、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へスライドさせて、軸部12と支持壁32との間から引き抜く。
【0071】
このとき、ベースブッシュ39は、軸心Xの方向に2分割されているので、軸心Xの両側へベースブッシュ39、即ち、ブッシュ片39aを引き抜くことができる。これにより、ブッシュ片39aを引き抜く距離が短くなるので、ブッシュ片39aを引き抜く作業が簡易になる。
【0072】
さらに、ベースブッシュ39は、周方向において複数に分割されているので、各ブッシュ片39aが軽量化されている。これにより、ブッシュ片39aの取り扱いが容易になる。それに加えて、周方向に隣り合う各2つのブッシュ片39aは、仕切部33で仕切られている。そのため、各ブッシュ片39aには、隣り合うブッシュ片39aの荷重が作用しない。これにより、ブッシュ片39aに作用する摩擦が低減され、ブッシュ片39aの引き抜き作業が容易になる。また、仕切部33は、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へ引き抜く際にブッシュ片39aを軸心Xの方向へ案内する機能を有する。これにより、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へスムーズに引き抜くことができる。
【0073】
こうして、ベースブッシュ39がベース本体31から取り外される。尚、抜け止めピン34の退避状態への後退は、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へ引き抜く前であれば任意のタイミング(例えば、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を取り外す前、又は、扉体10を上方へ引き上げた後など)で行うことができる。
【0074】
その後、新たなベースブッシュ39がベース本体31に設置される。ベースブッシュ39の設置は、ベースブッシュ39の取り外しと逆の手順で行われる。つまり、扉体10をベース本体31から上方へ少し引き上げることによって、軸受12とベース本体31(即ち、支持壁32)との間に十分な隙間を確保する。ベースブッシュ39、即ち、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へスライドさせて、軸部12と支持壁32との隙間へ挿入する。続いて、抜け止めピン34を進出させて突出状態にする。その後、扉体10を降下させ、ベースブッシュ39上に載置させる。最後に、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5がベース3に取り付けられる。尚、抜け止めピン34の突出状態への進出は、ブッシュ片39aを軸心Xの方向へ挿入した後であれば任意のタイミング(例えば、扉体10を降下させた後、又は、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を取り付けた後など)で行うことができる。
【0075】
このときも、ベースブッシュ39を取り外すときと同様に、ベースブッシュ39が分割されていること、及び、仕切部33が設けられていることによって、ベースブッシュ39の設置作業を容易にすることができる。
【0076】
以上のように、第1水域Aから第2水域Bへの水の流れを堰き止める起伏ゲート1は、本体11と本体11に設けられ軸心Xに対して同心に延びる軸部12とを有し、水中に設けられ、軸心Xの回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体10と、上方に開口して軸心Xを中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面21を有し、軸部12を軸心Xの回りに回転可能に支持する軸受2とを備え、軸受2は、ベース3と、軸心Xに対して第2水域Bの側に配置され、ベース3のうち軸心Xを中心とする周方向の一端部に取り付けられる後側アタッチメント5とを含む分割構造に形成され、摺動面21は、ベース3及び後側アタッチメント5に亘って形成され、摺動面21のうちベース3に形成された部分であるベース面21aは、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置し、且つ、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されている。
【0077】
この構成によれば、軸受2は、軸部12が軸受2から抜け出すことなく、軸部12を回転可能に支持している。そして、軸受2の摺動面21は、上方に開口しているので、扉体10が倒伏状態と起立状態との間で回転する際に、扉体10の本体11と摺動面21(即ち、軸受2)との緩衝が回避され得る。
【0078】
このような軸受2から扉体10を取り外すためには軸受2を分解する必要がある。ここで、ベース面21aは、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置し、且つ、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成されている。そのため、ベース3からアタッチメントを取り外してベース3だけにした状態においては、扉体10を鉛直上方に引き上げることによって扉体10をベース3から取り外すことができると共に、扉体10を鉛直下方に降下させることによって扉体10をベース3に設置することができる。つまり、扉体10を引き上げつつ水平方向にも移動させたり、扉体10を降下させつつ水平方向にも移動させたりする必要がないので、扉体10の着脱が容易になる。
【0079】
このように、軸受2によれば、水中での扉体10の着脱作業を容易にすることができる。
【0080】
また、軸受2は、軸心Xに対して第1水域Aの側に配置され、ベース3のうち周方向の他端部に取り付けられる前側アタッチメント4をさらに含み、摺動面21は、ベース3、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5に亘って形成される。
【0081】
この構成によれば、軸受2は、ベース3、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5の少なくとも3つに分割される。扉体10を軸受2から着脱するためには、軸受2は、少なくとも2つに分割されればよい。それに対し、軸受2を少なくとも3つに分割することによって、着脱される部分である前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5を小型化且つ軽量化することができる。その結果、水中での軸受2の分解及び組立作業が容易になる。
【0082】
また、摺動面21のうち後側アタッチメント5に形成された部分である後側延長面21cは、水平面HPよりも上方まで延び、ベース3は、第1水域Aの方を向く受け面36eを有し、後側アタッチメント5は、受け面36eに接触した状態でベース3に取り付けられる。
【0083】
この構成によれば、ベース面21aは軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置し、後側アタッチメント5はベース3のうち周方向の他端部に取り付けられ、後側延長面21cは水平面HPよりも上方まで延びている。つまり、後側延長面21cは、水平面HPと交差するように拡がり、軸心Xと水平方向に並んで配置される。そのため、扉体10が起立状態となって第1水域Aから第2水域Bへの水の流れを堰き止める際に、軸部12から後側アタッチメント5へは、概ね水平方向の力が作用する。ここで、後側アタッチメント5は、第1水域Aの方向を向く受け面36eに接触しているので、後側アタッチメント5が軸部12から受ける力の大部分は、受け面36eに対してその法線方向に作用する。その結果、後側アタッチメント5は、軸部12からの大きな力に耐えることができる。
【0084】
さらに、後側アタッチメント5は、受け面36eに取り付けられる。
【0085】
この構成によれば、軸部12から後側アタッチメント5へ作用する力が受け面36eに確実に伝わるようになる。
【0086】
また、ベース3は、ベース面21aが形成されたベースブッシュ39(ブッシュ)と、ベースブッシュ39を支持するベース本体31とを有し、ベースブッシュ39は、軸心Xの方向へスライドさせることによってベース本体31に着脱可能に構成されている。
【0087】
この構成によれば、扉体10をベース3から完全に取り外さなくても、ベース本体31からベースブッシュ39を取り外したり、ベース本体31へベースブッシュ39を設置したりすることができる。つまり、前述のように、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5をベース3から取り外すことによって、扉体10の鉛直上方への引き上げが可能となる。この状態で、扉体10を鉛直上方へ引き上げて、ベースブッシュ39に扉体10の重量が作用しない状態にすれば、ベースブッシュ39を軸心Xの方向へ容易にスライドさせることができる。その結果、ベースブッシュ39のメンテナンス及び交換を容易に行うことができる。
【0088】
さらに、ベース本体31には、ベースブッシュ39に対して軸心Xの方向の両側に配置され、軸心Xの方向へのベースブッシュ39の移動を制限する抜け止めピン34(抜け止め部)が設けられており、ベースブッシュ39は、抜け止めピン34を取り除くことによって、軸心Xの方向へスライド可能となっている。
【0089】
この構成によれば、抜け止めピン34によって、軸心Xの方向へのベースブッシュ39の移動が制限される。そのため、軸受2の使用時にベースブッシュ39が軸心Xの方向へ抜け出てしまうことが防止される。一方、ベースブッシュ39を着脱する際には、抜け止めピン34を取り除くことによって、軸心Xの方向へのベースブッシュ39のスライドが可能となる。
【0090】
また、起伏ゲート1の分解方法は、本体11及び本体11に設けられ軸心Xに対して同心に延びる軸部12を有し、水中に設けられ、軸心Xの回りに倒伏状態と起立状態とで回転する扉体10と、上方に開口して軸心Xを中心に180度よりも大きな中心角を有する円弧状の摺動面21を有し、軸部12を軸心Xの回りに回転可能に支持する軸受2とを備え、第1水域Aから第2水域Bへの水の流れを堰き止める起伏ゲート1の分解方法であって、軸受2は、ベース3と、ベース3のうち軸心Xを中心とする周方向の端部に取り付けられる前側アタッチメント4及び/又は後側アタッチメント5(アタッチメント)とを含む分割構造に形成され、摺動面21は、ベース3並びに前側アタッチメント4及び/若しくは後側アタッチメント5に亘って形成され、摺動面21のうちベース3に形成された部分であるベース面21aは、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置し、且つ、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成され、ベース3は、ベース面21aが形成されたベースブッシュ39(ブッシュ)と、ベースブッシュ39を支持するベース本体31とを有し、前側アタッチメント4及び/又は後側アタッチメント5をベース3から取り外す工程と、前側アタッチメント4及び/又は後側アタッチメント5を取り外した後に、扉体10を上方に引き上げて軸部12をベース面21aから浮かす工程と、扉体10を引き上げた後に、ベースブッシュ39を軸心Xの方向へスライドさせてベース本体31から取り外す工程とを含む。
【0091】
この構成によれば、扉体10を軸受2から完全に取り除かなくても、ベースブッシュ39を簡単に着脱することができる。詳しくは、前側アタッチメント4及び/又は後側アタッチメント5をベース3から取り外すことによって、扉体10を上方へ引き上げることが可能となる。そして、扉体10を上方へ引き上げることによって軸部12をベース面21aから浮かせることができる。軸部12がベース面21aから浮くと、扉体10の荷重がベースブッシュ39に作用しないようになるので、ベースブッシュ39の摩擦力が低減し、ベースブッシュ39を軸心Xの方向へスライドさせることが可能となる。このように、前側アタッチメント4及び/又は後側アタッチメント5を取り外し、扉体10を少し引き上げ、ベースブッシュ39を軸心Xの方向に引き抜くことによって、ベースブッシュ39を簡単に取り外すことができる。
【0092】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0093】
例えば、起伏ゲートは、港湾に設置されるものに限定されない。起伏ゲートは、河川又は河口等に設置されてもよい。また、起伏ゲートは、堤体9と共に起伏ゲート式防波堤を形成していなくてもよい。すなわち、起伏ゲートは、堤体の開口ではなく、河川、河口において、第1側壁及び第2側壁のような、対向する側壁で区画された開口に設置されていてもよい。
【0094】
起伏ゲート1は、4つの扉体10を有しているが、扉体10の個数はこれに限られるものではない。扉体10の個数は、1,2,3,又は5以上であってもよい。
【0095】
前述の起伏ゲート1においては、1つの扉体10に2つの軸受2が設けられているが、これに限定されるものではない。例えば、1つの扉体10に対して1つ又は3つの軸受が設けられていてもよい。
【0096】
軸受2の前述の構成は、一例に過ぎない。例えば、軸受2は、2分割又は4分割以上に分割されていてもよい。例えば、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5の何れか一方だけがベース3に取り付けられる構成であってもよい。さらには、前側アタッチメント4又は後側アタッチメント5がさらに分割されていてもよい。
【0097】
ベースブッシュ39、前側延長ブッシュ49及び後側延長ブッシュ59のそれぞれは、ブッシュ片に分割されていなくてもよい。ベースブッシュ39、前側延長ブッシュ49及び後側延長ブッシュ59のそれぞれは、ブッシュ片に分割されているとしても、前述のような分割数でなくてもよい。例えば、ベースブッシュ39、前側延長ブッシュ49及び後側延長ブッシュ59のそれぞれは、軸心Xの方向に分割されていなくてもよい。
【0098】
支持面32aには、仕切部33が設けられていなくてもよい。その場合、周方向に隣り合う各2つのブッシュ片39aは、互いに接触していてもよい。あるいは、ベースブッシュ39は、周方向に分割されていなくてもよい。また、周方向に隣り合う各2つの仕切部33の間隔は、一定でなくてもよい。
【0099】
また、抜け止めピン34、抜け止めピン46及び抜け止めピン57を省略してもよい。例えば、抜け止めピン34は、ベースブッシュ39に対して軸心Xの方向の片側だけに配置されていてもよい。ベースブッシュ39に対して軸心Xの方向における抜け止めピン34と反対側には、軸心Xの方向へのベースブッシュ39の移動を制限する、固定的に突出したストッパが設けられていてもよい。この構成に場合、ベースブッシュ39は、軸心Xの方向における一方側(即ち、抜け止めピン34の側)にだけスライドすることができる。
【0100】
前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5の構成は、前述の構成に限定されてない。例えば、前側アタッチメント4は、後側アタッチメント5と同様に、水平方向に拡がる取付壁と鉛直方向に延び且つ第2水域Bの方を向く取付壁とに取り付けられてもよい。後側アタッチメント5は、受け面36cに接触していれば、受け面36c(即ち、第2取付壁36b)に取り付けられていなくてもよい。例えば、後側アタッチメント5は、第1取付壁36aにボルト締結され、受け面36cにはボルト締結されず、受け面36cに接触するだけでもよい。
【0101】
また、前側延長面21bは、後側延長面21cよりも上方まで延びていてもよい。あるいは、前側延長面21bは、後側延長面21cと同じ高さまで延びていてもよい。
【0102】
さらに、前述の分解方法を実現するための起伏ゲートは、起伏ゲート1の構成に限定されない。軸受2に含まれるアタッチメントは、1つであっても2以上であってもよい。例えば、軸受は、ベースとアタッチメントとの分割構造に形成され、摺動面のうちのベースに形成された部分は、軸心Xを含む水平面HPよりも下方に位置し、且つ、軸心Xを中心に180度以下の中心角を有する円弧状に形成され、摺動面のうちアタッチメントに形成された部分が水平面HPを横切って水平面HPよりも上方まで延びる構成であればよい。アタッチメントをベースから取り外す工程においては、摺動面のうち軸心Xを含む水平面HPを横切って水平面HPよりも上方まで延びる部分を含む1又は複数のアタッチメントをベースから取り外せばよい。前述の軸受2では、摺動面のうち軸心Xを含む水平面HPを横切って水平面HPよりも上方まで延びる部分を含むアタッチメントは、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5である。そのため、軸受2の場合には、アタッチメントをベースから取り外す工程においては、前側アタッチメント4及び後側アタッチメント5がベース3から取り外される。仮に、前側アタッチメント4の前側延長面21bが水平面HPよりも下方に位置する場合には、アタッチメントをベースから取り外す工程においては、後側アタッチメント5だけを取り外せばよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
以上説明したように、ここに開示された技術は、起伏ゲート及びその分解方法について有用である。
【符号の説明】
【0104】
1 起伏ゲート
10 扉体
11 本体
12 軸部
2 軸受
21 摺動面
21a ベース面
21b 前側延長面
21c 後側延長面
3 ベース
31 ベース本体
34 抜け止めピン(抜け止め部)
36c 受け面
39 ベースブッシュ(ブッシュ)
4 前側アタッチメント
5 後側アタッチメント
A 第1水域
B 第2水域
HP 水平面
X 軸心