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特許7181854PD-L1阻害剤併用療法を必要とする患者の同定
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】PD-L1阻害剤併用療法を必要とする患者の同定
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20221124BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221124BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221124BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20221124BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20221124BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z ZNA
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12M1/34 F
A61K31/337
A61K39/395 T
A61K45/06
A61P35/00
G01N33/53 M
G01N33/53 N
G01N33/574 A
G01N37/00 102
【請求項の数】 58
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019236560
(22)【出願日】2019-12-26
(62)【分割の表示】P 2015544488の分割
【原出願日】2013-11-29
(65)【公開番号】P2020099324
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-01-23
(31)【優先権主張番号】12195182.6
(32)【優先日】2012-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】12196177.5
(32)【優先日】2012-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベロウソフ, アントン
(72)【発明者】
【氏名】ビアンキーニ, ジャンパオロ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンニ, ルカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス, マルレーネ
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/127180(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/143523(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0203056(US,A1)
【文献】Neoplasia,2006年,Vol.8, No.3,pp.190-198
【文献】J. Korean Med. Sci.,2009年,Vol.24,pp.910-917
【文献】J. Clin. Oncol.,2001年,Vol.19, No.10,pp.2587-2595
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00-3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定するためのインビトロ方法であって、該PD-L1阻害剤併用療法において、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤及び化学療法剤と併用され、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療が患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療を受けており、前記方法は
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量をインビトロで測定する工程と、
b)工程(a)で、ERが非発現か又は低量発現であること、及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がPD-L1カットオフ値と比べ増加していることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程と
を含み、ここで、前記試料が、免疫組織化学染色法(IHC法)によるERの<1%染色を示す場合、前記試料は非発現か又は低量発現のER発現量を有すると評価され、
前記プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり、並びに
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2切断阻害剤である、及び/又は前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2二量体化阻害剤である、方法。
【請求項2】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療するための医薬であって、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤、化学療法剤、及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を含み、そのがんが、ER非発現か又は低量発現であること、及びPD-L1カットオフ値に比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有していることが決定されたがん患者が、該医薬を用いた治療のために選定され、ここで、がん患者からの試料が、免疫組織化学染色法(IHC法)によるERの<1%染色を示す場合、前記がんは非発現か又は低量発現のER発現量を有すると評価され、
前記プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり、並びに
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2切断阻害剤である、及び/又は前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2二量体化阻害剤である、医薬。
【請求項3】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤及び化学療法剤と組み合わせて治療するための医薬、又は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤及び化学療法剤と組み合わせて治療するための医薬であって、前記医薬がプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を含み、そのがんが、ER非発現か又は低量発現であること、及びPD-L1カットオフ値に比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有することが決定されたがん患者が、該医薬を用いた治療のために選定され、ここで、前記がん患者からの試料が、免疫組織化学染色法(IHC法)によるERの<1%染色を示す場合、前記がんは非発現か又は低量発現のER発現量を有すると評価され、
前記プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり、並びに
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2切断阻害剤である、及び/又は前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2二量体化阻害剤である、医薬。
【請求項4】
がんを、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤及び化学療法剤を用いた併用療法により治療するための医薬組成物であって、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤を含み、前記がんが、ER非発現か又は低量発現であること、及びPD-L1カットオフ値と比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有することが決定されたものであり、ここで、前記がんからの試料が、免疫組織化学染色法(IHC法)によるERの<1%染色を示す場合、前記がんは非発現か又は低量発現のER発現量を有すると評価され、
前記プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり、並びに
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2切断阻害剤である、及び/又は前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2二量体化阻害剤である、医薬組成物。
【請求項5】
化学療法剤を更に含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定するためのインビトロ方法であって、該PD-L1阻害剤併用療法において、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤及び化学療法剤と併用され、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療が患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤と化学療法剤とを含む治療を受けており、前記方法は
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)とインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量インビトロ測定する工程と、
b)工程(a)で、ERが非発現か又は低量発現であること、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がPD-L1カットオフ値と比べ増加していること、及びIFNγカットオフ値と比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量が測定される場合に患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程と
を含み、ここで、前記試料が、免疫組織化学染色法(IHC法)によるERの<1%染色を示す場合、前記試料は非発現か又は低量発現のER発現量を有すると評価され、
前記プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり、並びに
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2切断阻害剤である、及び/又は前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤が、HER2に結合する抗体(抗HER2抗体)であり且つHER2二量体化阻害剤である、方法。
【請求項7】
前記がんがIFNγカットオフ値と比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すると決定される、請求項2又は3に記載の医薬、又は請求項4又は5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
ER発現量がER(-)である、請求項2、3及び7の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、HER2受容体に結合する、請求項2、3、7及び8の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5、7及び8の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、HER2細胞外ドメインのサブドメインIVに結合する、請求項9に記載の医薬、又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、ハーセプチン(登録商標)/トラスツズマブである、請求項2、3及び7から10の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から10の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2のヘテロ二量体化又はHER2のホモ二量体化を阻害する、請求項2、3及び7から11の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から11の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2受容体に結合する、請求項2、3及び7から12の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から12の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2細胞外ドメインのドメインIIに結合する、請求項13に記載の医薬、又は請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記抗HER2抗体がHER2細胞外ドメインのドメインI、II、IIIの間の接合点に結合する、請求項14に記載の医薬、又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記抗HER2抗体がペルツズマブである、請求項2、3及び7から15の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から15の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記化学療法剤がタキソール(登録商標)又はその誘導体である、請求項2、3及び7から16の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から16の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記タキソール誘導体がドセタキセルである、請求項17に記載の医薬、又は請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記抗PD-L1抗体が、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖が、GFTFSDSWIH(配列番号15)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号16)及びRHWPGGFDY(配列番号3)と配列同一性をそれぞれ有するHVR-H1、HVR-H2並びにHVR-H3を含み、且つ
(b)軽鎖が、RASQDVSTAVA(配列番号17)、SASFLYS(配列番号18)及びQQYLYHPAT(配列番号19)と配列同一性をそれぞれ有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む
請求項2、3及び7から18の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から18の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記抗体がヒトコンセンサス配列に由来するVH及びVLフレームワーク領域を更に含む、請求項19に記載の医薬、又は請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
VHフレームワーク配列がKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する、請求項20に記載の医薬、又は請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
VLフレームワーク配列がKabatカッパI、II、III、又はIVサブグループ配列に由来する、請求項20に記載の医薬、又は請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗PD-L1抗体が重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖配列が、重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号20)と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ
(b)軽鎖配列が、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号21)と少なくとも95%の配列同一性を有する、
請求項19に記載の医薬、又は請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記がんが固形がんである、請求項2、3及び7から23の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から23の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記固形がんが乳がん又は胃がんである、請求項24に記載の医薬、又は請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記固形がんが乳がんである、請求項24に記載の医薬、又は請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
PD-L1の発現量がmRNA発現量である、請求項2、3及び7から26の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から26の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
PD-L1のmRNA発現量が、in situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、又はリアルタイムPCRにより評価される、請求項27に記載の医薬、又は請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
PD-L1の発現量がタンパク質発現量である、請求項2、3及び7から26の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から26の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記PD-L1のタンパク質発現量が、免疫アッセイ、ゲル又はブロットベースの技法、IHC法、質量分析、フローサイトメトリー、もしくはFACS法で評価される、請求項29に記載の医薬、又は請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
治療される患者がヒトである、請求項2、3及び7から30の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から30の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤、前記化学療法剤、及び前記プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤が、ネオアジュバント設定又はアジュバント設定又は転移性がんを治療する設定で投与される、請求項2、3及び7から31の何れか一項に記載の医薬、又は請求項4、5及び7から31の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
ER発現量がER(-)である、請求項1又は6に記載の方法。
【請求項34】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、HER2受容体に結合する、請求項1、6及び33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、HER2細胞外ドメインのサブドメインIVに結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗HER2抗体が、HER2切断阻害剤であり、ハーセプチン(登録商標)/トラスツズマブである、請求項1、6及び33から35の何れか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2のヘテロ二量体化又はHER2のホモ二量体化を阻害する、請求項1、6及び33から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2受容体に結合する、請求項1、6及び33から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗HER2抗体が、HER二量体化阻害剤であり、HER2細胞外ドメインのドメインIIに結合する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗HER2抗体がHER2細胞外ドメインのドメインI、II、IIIの間の接合点に結合する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗HER2抗体がペルツズマブである、請求項1、6及び33から40の何れか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記化学療法剤がタキソール(登録商標)又はその誘導体である、請求項1、6及び33から41の何れか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記タキソール誘導体がドセタキセルである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記抗PD-L1抗体が、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖が、GFTFSDSWIH(配列番号15)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号16)及びRHWPGGFDY(配列番号3)と配列同一性をそれぞれ有するHVR-H1、HVR-H2並びにHVR-H3を含み、且つ
(b)軽鎖が、RASQDVSTAVA(配列番号17)、SASFLYS(配列番号18)及びQQYLYHPAT(配列番号19)と配列同一性をそれぞれ有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む
請求項1、6及び33から43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体がヒトコンセンサス配列に由来するVH及びVLフレームワーク領域を更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
VHフレームワーク配列がKabatサブグループI、II、又はIII配列に由来する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
VLフレームワーク配列がKabatカッパI、II、III、又はIVサブグループ配列に由来する、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記抗PD-L1抗体が重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み、
(a)重鎖配列が、重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号20)と少なくとも95%の配列同一性を有し、且つ
(b)軽鎖配列が、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号21)と少なくとも95%の配列同一性を有する、
請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが固形がんである、請求項1、6及び33から48の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記固形がんが乳がん又は胃がんである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記固形がんが乳がんである、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
PD-L1の発現量がmRNA発現量である、請求項1、6及び33から51の何れか一項に記載の方法。
【請求項53】
PD-L1のmRNA発現量が、in situハイブリダイゼーション、マイクロアレイ、又はリアルタイムPCRにより評価される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
PD-L1の発現量がタンパク質発現量である、請求項1、6及び33から51の何れか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記PD-L1のタンパク質発現量が、免疫アッセイ、ゲル又はブロットベースの技法、IHC法、質量分析、フローサイトメトリー、もしくはFACS法で評価される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
治療される患者がヒトである、請求項1、6及び33から55の何れか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の阻害剤、前記化学療法剤、及び前記プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤が、ネオアジュバント設定又はアジュバント設定又は転移性がんを治療する設定で投与される、請求項1、6及び33から56の何れか一項に記載の方法。
【請求項58】
ER、及びPD-L1の発現量を検出することができる核酸又は抗体を含む、請求項1、6及び33から57の何れか一項に記載の方法を実施するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者がPD-L1阻害剤併用療法を必要としているかどうかを決定する手段及び方法に関する。患者由来の試料において、ERが非発現か又は低量であって、且つ、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していることがインビトロで測定される場合、その患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定される。該患者は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブなど)と化学療法剤(ドセタキセル(dodetaxel)など)とを含む治療を受けているか、或いはそのような治療が該患者のために計画されている。また、本明細書中には、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブなど)と化学療法剤(ドセタキセルなど)とを含む治療が計画されているがん患者におけるがんを治療するための手段及び方法も提供され、該患者はPD-L1阻害剤併用療法を受けることができる。
【背景技術】
【0002】
受容体チロシンキナーゼのHERファミリーは細胞増殖、分化及び生存の重要な媒介物である。この受容体ファミリーには、上皮増殖因子受容体(EGFR、ErbB1又はHER1)、HER2(ErbB2又はp185neu)、HER3(ErbB3)及びHER4(ErbB4又はtyro2)を含む4つの異なるメンバーが含まれる。
【0003】
erbB1遺伝子でコードされたEGFRは、ヒト悪性腫瘍に原因として関与している。特に、EGFR発現の増加は、乳房、膀胱、肺、頭部、頸部及び胃のがん並びに神経膠芽腫において観察されている。EGFR受容体の発現の増加は、同じ腫瘍細胞によるEGFRリガンドであるトランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)の産生の増加にしばしば関連し、自己分泌刺激経路による受容体の活性化が生じる。Baselga and Mendelsohn Pharmac. Ther. 64:127-154 (1994)。EGFR又はそのリガンドであるTGF-α及びEGFに対するモノクローナル抗体は、そのような悪性腫瘍の治療における治療剤として評価されている。例えば、Baselga and Mendelsohn., supra; Masui et al. Cancer Research 44:1002-1007 (1984);及びWu et al. J. Clin. Invest. 95:1897-1905 (1995)を参照。
【0004】
HERファミリーの第2のメンバーであるp185neuは、元々は、化学的に処理されたラットの神経芽細胞腫由来のトランスフォーミング遺伝子の産物として同定された。neuプロト原癌遺伝子の活性化型は、コードされたタンパク質の膜貫通領域の点突然変異(バリンからグルタミン酸へ)から生じる。neuのヒト相同体の増幅は、乳房及び卵巣のがんで観察され、悪い予後と相関している(Slamon et al., Science, 235:177-182 (1987); Slamon et al., Science, 244:707-712 (1989);及び米国特許第4968603号)。今日まで、neuプロト原癌遺伝子におけるものに類似した点突然変異はヒトの腫瘍に関しては報告されていない。HER2の過剰発現(遺伝子増幅に起因して頻繁だが均一ではない)はまた、胃、子宮内膜、唾液腺、肺、腎臓、結腸、甲状腺、膵臓及び膀胱の癌腫を含む他の癌腫においても観察されている。特に、King et al., Science, 229:974 (1985); Yokota et al., Lancet: 1:765-767 (1986); Fukushige et al., Mol Cell Biol., 6:955-958 (1986); Guerin et al., Oncogene Res., 3:21-31 (1988); Cohen et al., Oncogene, 4:81-88 (1989); Yonemura et al., Cancer Res., 51:1034 (1991); Borst et al., Gynecol. Oncol., 38:364 (1990); Weiner et al., Cancer Res., 50:421-425 (1990); Kern et al., Cancer Res., 50:5184 (1990); Park et al., Cancer Res., 49:6605 (1989); Zhau et al., Mol. Carcinog., 3:254-257 (1990); Aasland et al. Br. J. Cancer 57:358-363 (1988); Williams et al. Pathobiology 59:46-52 (1991);及びMcCann et al., Cancer, 65:88-92 (1990)を参照。HER2は前立腺がんで過剰発現され得る(Gu et al. Cancer Lett. 99:185-9 (1996); Ross et al. Hum. Pathol. 28:827-33 (1997); Ross et al. Cancer 79:2162-70 (1997);及び Sadasivan et al. J. Urol. 150:126-31 (1993))。
【0005】
ラットp185neu及びヒトHER2 タンパク質産物に対する抗体が記述されている。Drebinとその同僚らは、ラットneu遺伝子産物であるp185neuに対する抗体を産生させた。例えば、Drebin et al., Cell 41:695-706 (1985); Myers et al., Meth. Enzym. 198:277-290 (1991);及び国際公開第94/22478号参照。Derbinらは、Oncogene 2:273-277(1988)で、p185neuの2つの異なる領域と反応性のある抗体の混合物が、ヌードマウス中に移植されたneu形質転換NIH-3T3細胞に相乗的な抗腫瘍効果を生じることを報告している。また1998年10月20日発行の米国特許第5824311号も参照。
【0006】
Hudziakら、Mol. Cell. Biol. 9(3):1165-1172(1989)には、ヒト乳房腫瘍細胞株SK-BR-3を用いて特徴付けられたHER2抗体のパネルの作製が記載されている。抗体への曝露に続いてSK-BR-3細胞の相対的細胞増殖が、72時間後の単層のクリスタルバイオレット染色により決定された。このアッセイを使用して、最大阻害は細胞増殖を56%抑制した4D5と呼ばれる抗体で得られた。パネルの他の抗体は、このアッセイにおいてより少ない度合いで細胞増殖を低減した。抗体4D5は、TNF-αの細胞傷害効果に対してHER2過剰発現乳房腫瘍細胞株を感作させることが更に見出された。また1997年10月14日発行の米国特許第5677171号も参照。Hudziakらによって議論されたHER2抗体は、Fendly et al. Cancer Research 50:1550-1558 (1990); Kotts et al. In Vitro 26(3):59A (1990); Sarup et al. Growth Regulation 1:72-82 (1991); Shepard et al. J. Clin. Immunol. 11(3):117-127 (1991); Kumar et al. Mol. Cell. Biol.11(2):979-986 (1991); Lewis et al. Cancer Immunol. Immunother. 37:255-263 (1993); Pietras et al. Oncogene 9:1829-1838 (1994); Vitetta et al. Cancer Research 54:5301-5309 (1994); Sliwkowski et al. J. Biol. Chem.269(20):14661-14665 (1994); Scott et al. J. Biol. Chem. 266:14300-5 (1991); D’souza et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 91:7202-7206 (1994); Lewis et al. Cancer Research 56:1457-1465 (1996);及びSchaefer et al. Oncogene 15:1385-1394 (1997)において更に特徴付けられている。
【0007】
マウスHER2抗体4D5の組換え型ヒト化バージョン(huMAb4D5?8、rhuMAb HER2、トラスツズマブ又はハーセプチンTM;米国特許第5821337号)は、広範な抗がん治療を以前に受けているHER2過剰発現転移性乳がんの患者において臨床的に活性である(Baselga et al., J. Clin. Oncol. 14:737-744 (1996))。トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳がんの患者の治療のために、1998年9月25日、食品医薬品局から販売許可を受けた。
【0008】
ヒト化抗ErbB2抗体には、本明細書において出典明示により援用される米国特許第5821337号の表3に記載のhuMAb4D5-1、huMAb4D5-2、huMAb4D5-3、huMAb4D5-4、huMAb4D5-5、huMAb4D5-6、huMAb4D5-7、及びhuMAb4D5-8(ハーセプチン(登録商標));ヒト化520C9(国際公開第93/21319号)並びに本明細書において出典明示により援用される国際公開第01/000245号に記載のヒト化2C4が含まれる。
【0009】
ペルツズマブペルツズマブ(例えば、国際公開第01/000245号参照)は、HER二量体化阻害剤(HDI)として知られる最初の新クラスの薬剤である。ペルツズマブはHER2の二量体化ドメインに結合し、その結果HER2が活性な二量体受容体複合体を形成する能力を阻害するので、最終的に細胞の増殖と分裂をもたらす下流のシグナルカスケードが阻害される(Franklin, M.C., Cancer Cell 5 (2004) 317-328参照)。ペルツズマブは、HER2の細胞外ドメインに対する完全ヒト化組換えモノクローナル抗体である。ペルツズマブがヒト上皮細胞上のHER2に結合すると、HER2の、他のHERファミリーメンバー(EGFR、HER3、HER4を含む)との複合体形成及びおそらくHER2のホモ二量体化も阻害される。複合体の形成を阻害することで、ペルツズマブは、成長刺激効果、並びにHER1、HER3及びHER4のリガンド(例えば、EGF、TGFアルファ、アンフィレグリン及びヘレグリン)によって活性化される細胞生存シグナルを阻止する。ペルツズマブの別名は2C4である。ペルツズマブは、ヒトIgG1(K)フレームワーク配列に基づく完全ヒト化組換えモノクローナル抗体である。ペルツズマブの構造は、2つの重鎖(449残基)と2つの軽鎖(214残基)からなる。トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))と比べ、ペルツズマブは軽鎖で12のアミノ酸差異を有し、IgG1重鎖で29のアミノ酸差異を有する。
【0010】
様々な特性をもつ他のHER2抗体が、Tagliabue et al. Int. J. Cancer 47:933-937 (1991); McKenzie et al. Oncogene 4:543-548 (1989); Maier et al. Cancer Res. 51:5361-5369 (1991); Bacus et al. Molecular Carcinogenesis 3:350-362 (1990); Stancovski et al. PNAS (USA) 88:8691-8695 (1991); Bacus et al. Cancer Research 52:2580-2589 (1992); Xu et al. Int. J. Cancer 53:401-408 (1993); WO94/00136; Kasprzyk et al. Cancer Research 52:2771-2776 (1992);Hancock et al. Cancer Res. 51:4575-4580 (1991); Shawver et al. Cancer Res. 54:1367-1373 (1994); Arteaga et al. Cancer Res. 54:3758-3765 (1994); Harwerth et al. J. Biol. Chem. 267:15160-15167 (1992);米国特許第5783186号;及びKlapper et al. Oncogene 14:2099-2109 (1997)に記載されている。
【0011】
相同性スクリーニングは、結果的に他の2つのHER受容体ファミリーメンバー;HER3(米国特許第5183884号及び第5480968号、並びにKraus et al. PNAS (USA) 86:9193-9197 (1989))及びHER4(欧州特許出願第599274号; Plowman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:1746-1750 (1993);及びPlowman et al., Nature, 366:473-475 (1993))を同定した。これらの受容体は双方とも、少なくともいくつかの乳がん細胞株で発現増加を示す。
【0012】
HER受容体は通常、細胞内に様々な組み合わせで見出され、ヘテロ二量体化は、様々なHERリガンドに対する細胞応答の多様性を増加させると考えられる(Earp et al. Breast Cancer Research and Treatment 35: 115-132 (1995))。EGFRには6つの異なるリガンド;上皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、アンフィレグリン、ヘパリン結合上皮増殖因子(HB-EGF)、ベータセルリン及びエピレグリンが結合する(Groenen et al. Growth Factors 11:235-257 (1994))。単一の遺伝子の選択的スプライシングから生じるヘレグリンタンパク質のファミリーは、HER3及びHER4に対するリガンドである。ヘレグリンファミリーは、アルファ、ベータ及びガンマヘレグリン(Holmes et al., Science, 256:1205-1210 (1992);米国特許第5641869号;及びSchaefer et al. Oncogene 15:1385-1394 (1997));neu分化因子(NDF)、グリア増殖因子(GGF);アセチルコリン受容体誘導活性(ARIA);並びに感覚及び運動神経由来因子(SMDF)を含む。概説については、Groenen et al. Growth Factors 11:235-257 (1994); Lemke, G. Molec. & Cell. Neurosci. 7:247-262 (1996)及びLee et al. Pharm. Rev. 47:51-85 (1995)参照。近年、更に3つのHERリガンドが同定された;HER3又はHER4の何れかに結合することが報告されているニューレグリン-2(NRG-2)(Chang et al. Nature 387 509-512 (1997);及びCarraway et al Nature 387:512-516 (1997));HER4に結合するニューレグリン-3(Zhang et al. PNAS (USA) 94(18):9562-7 (1997));及びHER4に結合するニューレグリン-4(Harari et al. Oncogene 18:2681-89 (1999))。HB-EGF、ベータセルリン及びエピレグリンもまたHER4に結合する。
【0013】
EGF及びTGFαはHER2に結合しないが、EGFはEGFR及びHER2を刺激してヘテロ二量体を形成し、それがEGFRを活性化させ、ヘテロ二量体におけるHER2のリン酸基転移を生じる。二量体化及び/又はリン酸基転移はHER2チロシンキナーゼを活性化するように見える。上掲のEarp et al.,を参照。同様に、HER3がHER2と共発現される場合、活性シグナル伝達複合体が形成され、HER2に対する抗体はこの複合体を破壊する能力がある(Sliwkowski et al., J. Biol. Chem., 269(20):14661-14665 (1994))。加えて、ヘレグリン(HRG)に対するHER3の親和性は、HER2と共発現される場合に更に高い親和性にまで増大する。また、HER2-HER3タンパク質複合体に関しては、Levi et al., Journal of Neuroscience 15: 1329-1340 (1995); Morrissey et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92 1431-1435 (1995);及びLewis et al., Cancer Res., 56:1457-1465 (1996)を参照。HER3と同様に、HER4は活性なシグナル伝達複合体をHER2と形成する(Carraway及びCantley, Cell 78:5-8(1994))。
【0014】
抗体変異体組成物もまた、当該技術分野で記述されている。米国特許第6339142号は、抗HER2抗体と一又は複数のその酸性変異体の混合物とを含むHER2抗体組成物を記載しており、ここで、その酸性変異体の量は約25%未満である。トラスツズマブは例示的なHER2抗体である。Reidらは、Well Characterized Biotech Pharmaceuticals conference(2003年1月)で「ヒト化抗体の特徴を変える細胞培養方法の効果」(「Effects of Cell Culture Process Changes on Humanized Antibody Characteristics」)をポスター発表し、重鎖上のVHSシグナルペプチド、N末端グルタミン、及びピログルタミン酸の組み合わせが原因でN末端不均一性を有する無名のヒト化IgG1抗体組成物を記載している。Harrisらは、IBC抗体産生会議(2002年2月)での口頭発表「理想的なクロマトグラフィーによる抗体の特徴づけ方法」(「The Ideal Chromatographic Antibody Characterization Method」)で、E25(ヒト化抗-IgE抗体)の重鎖上のVHS伸長を報告している。Rouseらは、WCBPで「高分解能質量分析による糖タンパク質の特徴づけ及び生物薬剤開発への応用」(「Glycoprotein Characterization by High Resolution Mass Spectrometry and Its Application to Biopharmaceutical Development」)(2004年1月6日~9日)をポスター発表し、軽鎖上のAHS又はHSシグナルペプチド残基から生じたN末端不均一性を有するモノクローナル抗体組成物を記載している。IBC会議での発表(2000年9月)「よく特徴づけられた生物学的製剤のための比較可能性研究及びアッセイの戦略的利用」(「Strategic Use of Comparability Studies and Assays for Well Characterized Biologicals」)においてJill Porterは、重鎖に三つの余分なアミノ酸残基を有するZENAPAXTMの遅延溶出形態について論じた。米国特許第2006/0018899号は、主要種ペルツズマブ抗体とアミノ末端リーダー伸長変異体、並びに他の変異体形態のペルツズマブ抗体を含む組成物を記載している。
【0015】
HER抗体に関する特許公開には:米国特許第5677171号、米国特許第5720937号、米国特許第5720954号、米国特許第5725856号、米国特許第5770195号、米国特許第5772997号、米国特許第6165464号、米国特許第6387371号、米国特許第6399063号、米国特許出願公開第2002/0192211号、米国特許第6015567号、米国特許第6333169号、米国特許第4968603号、米国特許第5821337号、米国特許第6054297号、米国特許第6407213号、米国特許第6719971号、米国特許第6800738号、米国特許出願公開第2004/0236078号、米国特許第5648237号、米国特許第6267958号、米国特許第6685940号、米国特許第6821515号、国際公開第98/17797号、米国特許第6127526号、米国特許第6333398号、米国特許第6797814号、米国特許第6339142号、米国特許第6417335号、米国特許第6489447号、国際公開第99/31140号、米国特許出願公開第2003/0147884号、米国特許出願公開第2003/0170234号、米国特許出願公開第2005/0002928号、米国特許第6573043号、米国特許出願公開第2003/0152987号、国際公開第99/48527号、米国特許出願公開第2002/0141993号、国際公開第01/00245号、米国特許出願公開第2003/0086924号、米国特許出願公開第2004/0013667号、国際公開第00/69460号、国際公開第01/00238号、国際公開第01/15730号、米国特許第6627196号、米国特許第6632979号、国際公開第01/00244号、米国特許出願公開第2002/0090662号、国際公開第01/89566号、米国特許出願公開第2002/0064785号、米国特許出願公開第2003/0134344号、国際公開第04/24866号、米国特許出願公開第2004/0082047号、米国特許出願公開第2003/0175845号、国際公開第03/087131号、米国特許出願公開第2003/0228663号、国際公開第2004/008099号、米国特許出願公開第2004/0106161号、国際公開第2004/048525号、米国特許出願公開第2004/0258685号、米国特許第5985553号、米国特許第5747261号、米国特許第4935341号、米国特許第5401638号、米国特許第5604107号、国際公開第87/07646号、国際公開第89/10412号、国際公開第91/05264号、欧州特許第412116号、欧州特許第494135号、米国特許第5824311号、欧州特許第444181号、欧州特許出願公開第1006194号、米国特許出願公開第2002/0155527号、国際公開第91/02062号、米国特許第5571894号、米国特許第5939531号、欧州特許出願公開第502812号、国際公開第93/03741号、欧州特許出願公開第554441号、欧州特許第656367号、米国特許第5288477号、米国特許第5514554号、米国特許第5587458号、国際公開第93/12220号、国際公開第93/16185号、米国特許第5877305号、国際公開第93/21319号、国際公開第93/21232号、米国特許第5856089号、国際公開第94/22478号、米国特許第5910486号、米国特許第6028059号、国際公開第96/07321号、米国特許第5804396号、米国特許第5846749号、EP第711565号、国際公開第96/16673号、米国特許第5783404号、米国特許第5977322号、米国特許第6512097号、国際公開第97/00271号、米国特許第6270765号、米国特許第6395272号、米国特許第5837243号、国際公開第96/40789号、米国特許第5783186号、米国特許第6458356号、国際公開第97/20858号、国際公開第97/38731号、米国特許第6214388号、米国特許第5925519号、国際公開第98/02463号、米国特許第5922845号、国際公開第98/18489号、国際公開第98/33914号、米国特許第5994071号、国際公開第98/45479号、米国特許第6358682号、米国特許出願公開第2003/0059790号、国際公開第99/55367号、国際公開第01/20033号、米国特許第2002/0076695号、国際公開第00/78347号、国際公開第01/09187号、国際公開第01/21192号、国際公開第01/32155号、国際公開第01/53354号、国際公開第01/56604号、国際公開第01/76630号、国際公開第02/05791号、国際公開第02/11677号、米国特許第6582919号、米国特許出願公開第2002/0192652号、米国特許出願公開第2003/0211530号、国際公開第02/44413号、米国特許出願公開第2002/0142328号、米国特許第6602670号、国際公開第02/45653号、国際公開第02/055106号、米国特許出願公開第2003/0152572号、米国特許出願公開第2003/0165840号、国際公開第02/087619号、国際公開第03/006509号、国際公開第03/012072号、国際公開第03/028638号、米国特許出願公開第2003/0068318号、国際公開第03/041736号、EP第1357132号、米国特許第2003/0202973号、米国特許出願公開第2004/0138160号、米国特許第5705157号、米国特許第6123939号、欧州特許第616812号、米国特許出願公開第2003/0103973号、米国特許出願公開第2003/0108545号、米国特許第6403630号、国際公開第00/61145号、国際公開第00/61185号、米国特許第6333348号、国際公開第01/05425号、国際公開第01/64246号、米国特許出願公開第2003/0022918号、米国特許出願公開第2002/0051785号、米国特許第6767541号、国際公開第01/76586号、米国特許出願公開第2003/0144252号、国際公開第01/87336号、米国特許出願公開第2002/0031515号、国際公開第01/87334号、国際公開第02/05791号、国際公開第02/09754号、米国特許出願公開第2003/0157097号、米国特許出願公開第2002/0076408号、国際公開第02/055106号、国際公開第02/070008号、国際公開第02/089842号及び国際公開第03/86467号がある。
【0016】
HER2抗体トラスツズマブ/ハーセプチンTMで治療された患者が、HER2タンパク質過剰発現/遺伝子増幅に基づいて本療法のために選ばれる;例えば、国際公開第99/31140号(Patonら)、米国特許出願公開第2003/0170234号(Hellmann, S.)、及び米国特許出願公開第2003/0147884号(Patonら);並びに国際公開第01/89566号、米国特許出願公開第2002/0064785号、及び米国特許出願公開第2003/0134344号(Massら)参照。また、HER2過剰発現及び増幅検出のための免疫組織化学染色法(IHC法)及び蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)に関しては、Cohenらの米国特許出願公開第2003/0152987号を参照。国際公開第2004/053497号及び米国特許出願公開第2004/024815号(Bacusら)、並びに米国特許出願公開第2003/0190689号(Crosby及びSmith)は、トラスツズマブ療法に対する応答の決定又は予測について言及している。米国特許出願公開第2004/013297号(Bacusら)は、ABX0303 EGFR抗体療法に対する応答の決定又は予測に関する。国際公開第2004/000094号(Bacusら)は、小分子性EGFR-HER2チロシンキナーゼ阻害剤であるGW572016に対する応答の決定に関する。国際公開第2004/063709号(Amlerら)は、EGFR阻害剤であるエルロチニブHClに対する感受性の決定のためのバイオマーカー及び方法に関する。米国特許出願公開第2004/0209290号(Cobleighら)は、乳がん予後のための遺伝子発現マーカーに関する。
【0017】
HER2二量体化阻害剤(詳細が本明細書で上に記載されているペルツズマムなど)で治療されるべき患者は、HER活性化又は二量体化に基づいて本療法のために選ばれる。ペルツズマム及びそれを用いた療法のための患者の選定に関する特許公開には:国際公開第01/00245号(Adamsら);米国特許出願公開第2003/0086924号(Sliwkowski, M.);米国特許出願公開第2004/0013667号(Sliwkowski, M.);並びに国際公開第2004/008099号、及び米国特許出願公開第2004/0106161号(Bossenmaierら)がある。
【0018】
ハーセプチンTM/トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現するか、又はHER2遺伝子が増幅する転移性乳がん患者の治療のために:
a)転移性疾患のために少なくとも二つの化学療法レジメンを受けた患者の治療のための単剤療法として。事前の化学療法は、患者に不適切ではない限り、アントラサイクリン及びタキサンを少なくとも含んでいなければならない。ホルモン受容体陽性患者は、不適切ではない限り、ホルモン療法も受けていなければならない。
b)転移性疾患のための化学療法を受けず、アントラサイクリンが合わない患者の治療のためのパクリタキセルとの併用で、及び
c)転移性疾患のための化学療法を受けなかった患者の治療のためのドセタキセルとの併用で、
当該技術分野で必要とされている。
【0019】
ハーセプチンTM/トラスツズマブはまた、初期の乳がんにおいてはアジュバント療法としても使用され得る。ハーセプチンTM/トラスツズマブはまた、手術、化学療法(ネオアジュバント(すなわち、手術前)又はアジュバント)、及び(適切ならば)放射線療法に続く、HER2陽性の早期乳がん患者の治療のために認可されている。加えて、カペシタビン又は5-フルオロウラシル及びシスプラチンとの併用でのハーセプチンは、HER2陽性の局所進行性又は転移性食道胃接合部腺癌に罹患し、その転移性疾患の治療のために事前に抗がん治療を受けなかった患者の治療のために必要とされている。ネオアジュバントペルツズマブとトラスツズマブ療法の有効性及び安全性は、第2相試験で評価された(NEOSPHERE);Gianni (2012) Lancet Oncol 13, 25-32。
【0020】
当該技術分野において、ハーセプチンTM/トラスツズマブ を用いた乳がん患者の治療は、例えば、HER2陽性がんの患者のために推奨され、慣用されている。HER2陽性がんは、免疫組織化学法によって検出される高レベルのHER2(タンパク質)発現(例えば、HER2(+++))、又はin situハイブリリダイゼーション法で検知されるHER2遺伝子増幅(例えば、腫瘍細胞あたりのHER2遺伝子コピー数が4コピーを超えるか、もしくはCEP17シグナル数に対するHER2遺伝子コピー数の比率が≧2.0のような、ISH陽性)、或いはこれら両方が、乳房組織生検材料又は乳房組織切片等の患者から得られた試料中、或いは転移部位に由来する組織中に見出される場合に存在する。
【0021】
国際公開第2011/109789号、国際公開第2011/066342号、国際公開第2009/089149号、及び国際公開第2006/133396号は、PD-L1阻害剤の治療的使用を開示している。更に、国際公開第2010/077634号は、抗PD-L1抗体及びそれらの治療的使用を開示している。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量をインビトロで測定する工程と、
b)工程(a)で、ER非発現か又は低量発現であること、且つ、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べて増加していることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法に関する。
【0023】
したがって、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを組み合わせるPD-L1モジュレーター併用療法に対するがん患者にとっての必要性を決定する方法であって、
-HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む療法が計画されているか、又は前記治療を受けている患者の腫瘍試料を試験する工程と;
-前記腫瘍試料中のエストロゲン受容体及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を決定する工程とを含み、
それによって、ERが非発現か又は低量であり、且つ、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していることが、前記患者におけるPD-L1モジュレーター併用療法の使用の成功を示唆する、方法を提供する。
【0024】
驚くべきことに、添付の実施例に示されるように、エストロゲン受容体(ER)陰性(ER(-))がんの患者(ERが非発現か又は低量のがん患者)で、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(ハーセプチンTM/トラスツズマブ等)と化学療法剤(ドセタキセル/タキソテール(登録商標)等)での治療を受けている患者は、ER陰性(ER(-))がんの患者試料中、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールに比べ増加している場合、エストロゲン受容体(ER)陽性(ER(+))がんの患者に比べて有意に低い本療法に対する病理学的完全奏功率を示すことが本発明において見出された。用語「プログラム死リガンド1」、「CD274」及び「PD-L1」は、本明細書で互換的に使用される。したがって、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールに比べ増加しているER陰性(ER(-))がんの患者は、PD-L1阻害剤を用いた追加の併用療法から恩恵を受けるであろう。この患者群は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(ハーセプチンTM/トラスツズマブ)と化学療法剤(ドセタキセル/タキソテール(登録商標))を用いた治療に加えて、PD-L1阻害剤を用いた併用療法を受けると、病理学的完全奏功率(pCR)が上昇することが予測される。すなわち、ER陰性(ER(-))がんの患者は、その患者由来の試料中、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールに比べ増加している場合、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブ等)と化学療法剤(ドセタキセル/タキソテール(登録商標))を用いた治療に加えて、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤を服用するべきである。以下、ER陰性がんの患者又はER陰性がんの患者由来の(生検/腫瘍)試料は、本明細書中で「ER(-)」と記される。同様に、ER陽性がんの患者又はER陽性がんの患者由来の(生検/腫瘍)試料は、本明細書中で「ER(+)」と記される。
【0025】
上記に従って、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現で、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールに比べ増加していると決定されるがん患者を選定することと、及び有効量のHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤を前記患者に投与することとを含む方法に関する。同様に、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現であること、また、コントロールに比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。したがって、本明細書で企図されるのは、がんの治療での使用のための、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤とを含む医薬組成物であって、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現で、且つプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していると決定される。
【0026】
上記に従って、本明細書中で提供される、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法は、工程a)の前に追加の工程を含み得、前記工程は、前記がん患者由来の試料を得ることである(又は得ることを含む)。よって、本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、前記がん患者由来の試料を得る工程を含み、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量をインビトロで測定する工程と、
b)工程(a)で、ERが非発現か又は低量発現であること、且つプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを更に含む、方法を提供する。
【0027】
更に、患者試料中のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量に加えて測定される場合、患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性が更により確実に決定され得ることが、本明細書中で見出され、添付の実施例に示されている。ERが非発現か又は低量である患者は、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量が増加していて、且つインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量が低下している場合、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療に対する病理学的完全奏功率が有意に低いことが本明細書中に示されている。
【0028】
したがって、本明細書において提供される方法は、好ましくは、患者由来試料中のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を測定することを更に含み、それによって患者は、インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がコントロールと比べ低下している場合、PD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定される。上記に従い、本発明は、好ましい態様において、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)の発現量、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量、及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量をインビトロで測定する工程と、
b)工程(a)で、ERが非発現か又は低量発現であること、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加し、且つインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がコントロールと比べ低下していることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法に関する。
【0029】
したがって、コントロールと比べ低下しているインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量は、前記患者におけるPD-L1阻害剤併用療法の使用の成功を示唆する。上記に従い、本明細書において、がんの治療での使用のための医薬組成物を提供し、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現であること、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有すること、及びコントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を有することが決定される。したがって、本明細書において提供されるのは、がんの治療における使用のための、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤とを含む医薬組成物であって、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現であること、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有すること、及びコントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を有することが決定される。
【0030】
本明細書で使用される用語「がん患者」は、がんに罹患している疑いのある患者、がんに罹患している患者、又はがんに罹患しやすい患者を指す。本発明に従って治療されるべきがんは、乳がん又は胃がん等の固形がんである。更に、がんは、卵巣がん又は結腸直腸がんであってもよい。がんは、好ましくは、「HER2陽性」がんである。
【0031】
がんは、好ましくは、早期乳がん等の乳がんである。乳がんは早期乳がん又は転移性乳がんであり得る。したがって、(治療されるべき)がん患者は、固形がんに罹患していることが疑われているか、現在固形がんに罹患しているか、又は固形がんに罹患しやすい患者であり、固形がんは乳がん又は胃がんであり得る。がんは、好ましくは、早期乳がん等の乳がんである。患者は、好ましくは、ヒトである。
【0032】
上述の通り、エストロゲン受容体(ER)の発現量、プログラム死リガンド(PD-L1)の発現量、及び、場合によってインターフェロンガンマ(IFN-γ)の発現量は、患者由来の試料においてインビトロで測定され得る。本明細書において提供される方法は、好ましくは、インターフェロンガンマ(IFN-γ)を患者由来の試料においてインビトロで測定することを含む。本明細書において評価/分析される試料は、好ましくは、腫瘍組織試料である。患者(又は患者群)は、前記試料において、ERが非発現か又は低量で、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加し、且つ、場合によってインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がコントロールと比べ低下していることがインビトロで測定される場合、PD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定される。
【0033】
用語「ER」は「エストロゲン受容体」の略称である。同様に、用語「PD-L1」は「プログラム死リガンド」の、「IFN-γ」は「インターフェロンガンマ」の略称である。したがって、用語「ER」は、本明細書において「エストロゲン受容体」と互換的に使用され得る。同様に、用語「PD-L1」は「プログラム死リガンド」と、「IFN-γ」は「インターフェロンガンマ」と、本明細書において互換的に使用され得る。
【0034】
治療されるべき患者及び/又はがんの(腫瘍/生検)試料は、好ましくは、エストロゲン受容体(ER)が非発現か又は低量であることを特徴とするか、或いはそのことに関連している。患者の試料は、好ましくは、腫瘍試料である。ER発現量は、ER陰性(ER(-))であり得る。用語「ER(-)」は、本明細書において用語「ER陰性」と互換的に使用され得る。
【0035】
「ER陰性」発現量は、例えば、the Guideline on Hormone Receptor Testing in Breast Cancer S. Nofech-Mozes, E. Vella, S. Dhesy-Thind, 及びW. Hanna (A Quality Initiative of the Program in Evidence-Based Care (PEBC), Cancer Care Ontario (CCO); Report Date: April 8, 2011)に記載されているような、慣用的且つ標準的方法によって決定され得る。上記ガイドライン(及びその中で引用されている文献)は、その内容全体が本明細書において援用される。これらのガイドラインは、インターネット
(cancercare.on.ca)で、及び
PEBC Pathology & Laboratory Medicineのページ:
https://www.cancercare.on.ca/toolbox/qualityguidelines/clin-program/pathlabebs/で入手可能である。
【0036】
「ER陰性」発現量を決定するための慣用的且つ標準的方法は、これらのガイドライン、及び以下の文献にも記載されている:
Nofech-Mozes S, Vella ET, Dhesy-Thind S, Hagerty KL, Mangu PB, Temin S, et al. Systematic review on hormone receptor testing in breast cancer.Applied Immunohistochem Mol Morphol. 2012 May;20(3):214-63. doi: 10.1097/PAI.0b013e318234aa12. Epub 2011 Nov 11.
Nofech-Mozes S, Vella ET, Dhesy-Thind S, Hanna WM. Cancer Care Ontario guideline recommendations for hormone receptor testing in breast cancer. Clin Oncol (R Coll Radiol). Epub 2012 May 17.
【0037】
「ER陰性」発現は、例えば、ERが非発現かもしくは低量である場合、及び/又はプロゲステロン受容体(PR)が非発現かもしくは低量である場合、IHC法(免疫組織化学染色法)により決定され得る。略語「PR」は、本明細書において、用語「プロゲステロン受容体」と互換的に使用される。試料又は患者は、以下の(IHC法による)染色パターンに従って、本明細書において「ER陰性」と評価され得る:
【0038】
(細胞質ではなく)核のみの染色を評価しなければならない。
【0039】
染色には、以下の三つの分類がある:
陽性:ER又はPRの≧10%染色
低陽性:ER又はPRの1%から9%染色
陰性:ER及びPRの<1%染色
【0040】
したがって、試料又は患者は、特に、試料がIHC法による次の染色パターン:ER及びPRの<1%染色を示す場合、「ER陰性」と本明細書において評価され得る。
【0041】
試料又は患者は、試料がIHC法で「陽性」染色:ER又はPRの≧1%染色(すなわち、試験/評価された細胞の1%超がエストロゲン受容体又はプロゲステロン受容体を有する/IHC法(免疫組織化学染色法)によりエストロゲン受容体の染色を示す)を示す場合、本明細書において「ER陽性」と評価され得る。
【0042】
試料又は患者は、好ましくは、試料がIHC法で次の染色パターン:ERの<1%染色(すなわち、試験/評価された細胞の1%未満がエストロゲン受容体を有する/IHC法(免疫組織化学染色法)によりエストロゲン受容体(単数又は複数)の染色を示す)を示す場合、本明細書において「ER陰性」と評価され得る。試料又は患者は、もっとも好ましくは、腫瘍組織試料中の核がIHC法によるERの<1%染色を示す場合、「ER陰性」と評価される。したがって、本明細書で上に提供した三つの分類から、「ER陰性」の評価は、IHC法によるERの<1%染色に基づく。
【0043】
同様に、「ER陰性」発現は、当該技術分野で慣用的に用いられている更なる方法によって決定され得る。例えば、「ER陰性」は、mRNA/RNAが非発現か又は低量である場合に決定され得る。使用される慣用的方法は、限定されないが:Allredスコア、IRS、Remmeleスコア、又は他の適切な生化学的検出方法を含む。当業者であれば、これらの方法のカットオフは、IHC法により上で定義したカットオフと一致していなければならないことを認識している。
【0044】
本明細書において使用される、プロゲステロン受容体(PR)、エストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)、及び/又はインターフェロンガンマ(IFNγ)の核酸配列並びにアミノ酸配列はよく知られており、NCBIなどのデータベースから検索可能である。例示的配列が本明細書において提供されている(例えば、配列番号38-51参照)。
【0045】
マーカー(プログラム死リガンド1(PD-L1)及び/又はインターフェロンガンマ(IFNγ))のカットオフ値を設定するため、並びに解析される個体もしくは患者から得られた試料を測定するために使用される方法と試料のタイプは、相互に一致するか、或いは同じである。カットオフ値、すなわち、それを超える値が過剰発現(例えば、コントロールと比べたプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現増加)と認められる値は、コントロール群で得られる。カットオフ値、すなわち、それを下回る値が発現低下(例えば、コントロールと比べたインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現低下)と認められる値は、コントロール群で得られる。
【0046】
カットオフ値の根拠とされるコントロール群は、試験中の個体/患者の群と一致するように選ばれる。すなわち、本発明の方法が、乳がん又は胃がんの患者におけるPD-L1併用療法の必要性を決定するために使用される場合、コントロール群もそれぞれ、乳がん又は胃がんの患者である。PDL-1とIFN-γ両方のためのカットオフ値を設定するために使用されるコントロール群はそれぞれ、少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも100の個体/患者を含む。カットオフを超える発現量又はそれに相当する値は過剰発現を表していると考えられ、また、カットオフ以下の値は発現低下と考えられる。
【0047】
一実施態様において、個体/患者由来の腫瘍組織試料における「IFN-γ」発現量が、カットオフ値と比較される。カットオフを超える値はIFN-γの過剰発現を表していると考えられ、また、カットオフ以下の値はIFN-γの発現低下と考えられる。一実施態様において、発現低下は、IFN-γの発現量が、コントロール群でそれぞれ設定された最も高い五分位値、四分位値、又は三分位値以下である場合に認められる。一実施態様において、IFN-γのカットオフ値は、最も高い三分位値である。一実施態様において、カットオフ値は70百分位値から80百分位値である。一実施態様において、IFN-γのカットオフ値は、73百分位値であって、すなわち、このカットオフを超える値はIFN-γの過剰発現を表すと考えられ、73百分位値以下の値はIFN-γの発現低下と考えられる。一実施態様において、個体/患者は、試料(腫瘍組織試料など)中のIFN-γ発現が低下している(すなわち、IFN-γカットオフ値以下)場合、PD-L1併用療法を必要としていると決定される。一実施態様において、個体/患者は、IFN-γが過剰発現している(すなわち、上記のIFN-γカットオフを超える)場合、PDL-1併用療法を必要としていないと決定される。
【0048】
一実施態様において、個体/患者由来の腫瘍組織試料中のPD-L1発現量がカットオフ値と比較される。カットオフを超える値はPD-L1の過剰発現を表すと考えられ、カットオフ以下の値はPD-L1の発現低下と考えられる。一実施態様において、PDL-1の過剰発現は、PDL-1の発現量がコントロール群で設定された50百分位から75百分位のカットオフ値を超える場合に認められる。一実施態様において、PDL-1の過剰発現は、コントロール群で設定された、PDL-1の発現量が50百分位から70百分位のカットオフ値を超える場合に認められる。一実施態様において、個体/患者は、PDL-1が過剰発現している(すなわち、測定されたPDL-1発現量がPDL-1カットオフ値を超える)場合、PDL-1併用療法を必要としていると決定される。
【0049】
更なる一実施態様において、PDL-1の過剰発現は、腫瘍組織試料中IFN-γの発現量低下を有する個体/患者亜群に見出される。一実施態様において、PDL-1の過剰発現は、PDL-1の発現量がこの亜群で設定された40百分位から65百分位のカットオフ値を超える場合に認められる。一実施態様において、PDL-1の過剰発現は、PDL-1の発現量がこの亜群で設定された50百分位から60百分位のカットオフ値を超える場合に認められる。一実施態様において、個体/患者は、IFN-γ発現低下を有する亜群のPDL-1発現量が54百分位値を超える場合、PDL-1併用療法を必要としていると決定される。
【0050】
一実施態様において、個体/患者は、腫瘍組織試料中のIFN-γ発現が低下しており(すなわち、IFN-γカットオフ値以下)、且つPDL-1が過剰発現している(すなわち、PDL-1カットオフ値を超える)場合、PDL-1併用療法を必要としていると決定される。
【0051】
用語「コントロールと比べ増加しているプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量」は、上に定義又は説明されている通り、本明細書において「PDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PDL-1)の発現量」と互換的に使用され得る。
【0052】
用語「コントロールと比べ低下しているインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量」は、本明細書において「IFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量」と互換的に使用され得る。
【0053】
本発明は以下の態様に関する。
【0054】
本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量をインビトロで測定する工程と;
b)工程(a)で、(ER(-)/ER陰性のように)ERが非発現か又は低量発現であること、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がPD-L1カットオフ値を超えること、且つインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がIFNγカットオフ値以下であることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法に関する。
【0055】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量発現であること、また、PDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有すること、及びIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有するあることが決定されるがん患者を選定することと、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0056】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量発現であること、また、PDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有すること、及びIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0057】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤とを含む、がんの治療での使用のための医薬組成物であって、それにより前記がんが、(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量であること、PD-L1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有すること、且つIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を有することが決定される、医薬組成物に関する。
【0058】
本明細書で示された「PD-L1阻害剤」、「PD-L1阻害剤併用療法」、「がん」、「がん患者」、「HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター」、「化学療法剤」、「試料」、「発現量」などの説明及び定義はすべて、本発明の上記態様に準用される。
【0059】
患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量はインビトロで同時に測定、又は任意の組み合わせで続いて測定され得る。エストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量は、例えば、同時に測定され得る。エストロゲン受容体(ER)の発現量が最初に測定され、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の測定がそれに続いてもよい。プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量が最初に測定され、エストロゲン受容体(ER)とインターフェロンガンマ(IFNγ)の(同時の又は順次の)測定が)続いてもよい。インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量が最初に測定され、エストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)の(同時の又は順次の)測定が続いてもよい。患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量の測定のいかなる順番/組み合わせも本明細書で想定され、これに含まれる。
【0060】
本明細書において企図されるのは、第1の工程(1)で(ER(-)/ER陰性のように)ERが非発現か又は低量測定され、第2の工程(2)でIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量が測定され、且つ、第3の工程(3)でPDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)が測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定することである。
【0061】
本発明は以下の態様に関する:
【0062】
本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は(ii)患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)、プログラム死リガンド1(PD-L1)及びインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量をインビトロで測定する工程と;
b)第1の工程(1)において(ER(-)/ER陰性のように)ERが非発現か又は低量測定され、第2の工程(2)において IFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量が測定され、且つ、第3の工程(3)において PDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量が測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法に関する。
【0063】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、第1の工程(1)において(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量発現であること、また、第2の工程(2)においてIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すること、及び第3の工程(3)においてPDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0064】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、第1の工程(1)において(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量発現であること、また、第2の工程(2)においてIFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すること、且つ第3の工程(3)においてPDL-1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0065】
本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤とを含む、がんの治療での使用のための医薬組成物であって、それにより前記がんが、(ER(-)/ER陰性のように)ER非発現か又は低量発現であること、IFNγカットオフ値以下のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すること、PD-L1カットオフ値を超えるプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定される、医薬組成物に関する。
【0066】
本明細書で示された「PD-L1阻害剤」、「PD-L1阻害剤併用療法」、「がん」、「がん患者」、「HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター」、「化学療法剤」、「試料」、「発現量」などの説明及び定義のすべてが、本発明の上記態様に準用される。
【0067】
以下は、本発明に従いPD-L1阻害剤併用療法を必要としている患者を決定することを可能にする例示的カットオフ値に関する。患者由来試料中のPD-L1及び/又はIFNガンマの発現量が当該カットオフ値を下回るか上回るかは、慣用的手法(Affymetrixなど)によって簡単に決定され得る。
【0068】
遺伝子発現解析でのIFNガンマの発現に関する結果が4.8以上である場合、併用療法(HER2標的薬とPDL1標的薬)は推奨されず、更なるPDL1評価も必要ない。遺伝子発現解析でのIFNガンマの発現に関する結果が4.8未満の場合、PDL-1の評価も並行して行う必要がある。
次いで、PDL-1遺伝子発現の解析結果が5.3以上の場合、併用治療(HER2標的薬とPDL1標的薬)が推奨される。この例示的手順を図19に示す。
【0069】
これに関連して、Affymetrixは以下の通り実施され得る:腫瘍細胞の全RNAが、Light Cyclerペルツズマム FFPET RNAキット(Roche Diagnostics)を使用してFFPE腫瘍切片から抽出された。RNAは、WT-Ovation FFPE System V2(Nugen)を使用してハイブリダイゼーション用に処理され、Affymetrix GeneChip(登録商標)Human Genome U133 Plus 2.0アレイにハイブリダイズされた。ハイブリダイズされたアレイは洗浄され、Affymetrix Fluidics Station 450上で染色され、Affymetrix GeneChip(登録商標)Scanner 3000 7Gでスキャンされた。
【0070】
述べた通り、患者由来試料中のPD-L1及び/又はIFNガンマの発現量は、Affymetrixなどの慣用的手法によって決定され得る。以下は、そのような決定のための例示的手順(本明細書で遺伝子発現プロファイリングとも呼ばれる)に関する:
【0071】
腫瘍生検試料は、AFFYMETRIX HG-U133Plus2全ヒトゲノムマイクロアレイプラットフォームでの遺伝子発現のためにプロファイリングされ得る。RocheのHighPure RNA抽出、NuGenの増幅、並びにAFFYMETRIXの標準的ハイブリダイゼーション及びスキャニングの手順が使用され得る。これらの手順等は参照により本明細書に援用される。すべてのアレイスキャンは通常、標準的なAFFYMETRIX QCに合格する。
【0072】
ロバストマルチアレイアルゴリズム(RMA)は生信号を前処理するために使用され得る(本明細書に参照により援用される、Irizarry et al, 2003、www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12925520)。以下に報告されるように、目的の遺伝子のために利用可能なすべてのプローブセットが取得可能である。CD274遺伝子について、いくつかのプローブセットがこの遺伝子を表現するのに利用可能であった場合、(所定のプローブセットの発現の算術平均として定義される)平均発現の最高値を有するプローブセットが当該遺伝子を表すために選ばれた:
CD274(PDL1)
PDL1用に選択された、223834_at
227458_at
選択されたプローブセットは、遺伝子の最後のエクソン/3’UTRに対応し、既知のRefSEq mRNAをすべて捕捉する(図6参照)。
【0073】
IFNG
210354_at
このプローブセットもまた、遺伝子の最後のエクソン/3’UTRを表し、既知のRefSEq mRNAをすべて捕捉する(図7参照)。
【0074】
上記に従い、インターフェロンガンマの発現量はエストロゲン受容体(ER)の発現前、及び/又はプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現前に測定され得る。エストロゲン受容体(ER)及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量測定の工程は無くてもよい。
【0075】
添付の実施例に示すように、PD-L1併用療法は、例えば、インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がAffymetrixのような慣用的方法で測定して(約)4.8以上である場合、推奨されない。
【0076】
したがって、本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
(a)前記患者由来の試料におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量をインビトロで測定する工程と、
(b)インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量が工程(a)のAffymetrixのような慣用的方法で測定して(約)4.8以上である場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていないと決定する工程とを含む、方法を提供する。
【0077】
インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がAffymetrixのような慣用的方法で測定して(約)4.8未満である場合、プログラム死リガンド1(PD-L1)、及び、場合によっては、エストロゲン受容体(ER)の発現量が前記患者由来試料においてインビトロで測定され得る。
【0078】
したがって、本発明は、がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が前記患者のために計画されているか、又は患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
(a)前記患者由来の試料におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、エストロゲン受容体(ER)及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量をインビトロで測定する工程と、
(b)インターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がAffymetrixのような慣用的方法で測定して(約)4.8未満である場合、且つERが非発現か又は低量であって、また、場合によっては、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していることが工程(a)で測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法を提供する。
【0079】
患者由来の試料において測定されるプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加している場合、本発明に従い、患者はPD-L1阻害剤併用療法必要としていると決定され得る。例えば、プログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量は、Affymetrixのような慣用的方法で測定して(約)5.3以上であり得る。
【0080】
本明細書で示された「PD-L1阻害剤」、「PD-L1阻害剤併用療法」、「がん」、「がん患者」、「HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター」、「化学療法剤」、「試料」、「発現量」などの説明及び定義のすべてが、ここで準用される。
【0081】
したがって、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現であること、また、Affymetrixのような慣用的方法で測定して、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量、及び(約)4.8未満のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0082】
更に、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現であること、また、Affymetrixのような慣用的方法で測定して、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量、及び(約)4.8未満のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法に関する。
【0083】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤とを含む、がんの治療における使用のための医薬組成物が提供され、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現であること、また、Affymetrixのような慣用的方法で測定して、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量、及び(約)4.8未満のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有することが決定される。
【0084】
がんの治療における使用のための前記医薬組成物は化学療法剤を更に含んでもよい。
【0085】
本明細書で提供される方法は、上記に従い、前記試料中のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を測定し、コントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量が測定される場合に患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程を含んでもよい。例えば、インターフェロンガンマ(IFNγ)の「低下した発現量」は、Affymetrixのような慣用的方法で測定して発現量が(約)4.8未満であり得る。したがって、コントロールと比べ低下した発現量のインターフェロンガンマ(IFNγ)を有すると決定されるがんは、Affymetrixのような慣用的方法で測定して(約)4.8未満のインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有することが決定され得る。
【0086】
この発現量は、遺伝子産物/タンパク質の活性に反映され得ることが本明細書中で想定される。したがって、ER、PD-L1及び/又はIFN-γの活性も発現量に加えて、或いはその代わりに、本発明に従い測定及び評価され得る。ER、PD-L1及びIFN-γの発現量及び/又は活性を検出並びに評価するための、該当する手段及び方法は当業者に知られている。使用される例示的方法は、限定されないが、ウェスタンブロット、ノーザンブロット、リアルタイムPCRなどの分子評価を含む。それらの方法は本明細書で詳述している。
【0087】
ER、PD-L1及び/又はIFN-γの発現量は、ER、PD-L1及び/又はIFN-γのmRNA発現量であり得る。 遺伝子産物がRNA、特にmRNA(例えばスプライシングされていないか、部分的にスプライシングされているか、又はスプライシングされている、mRNA)である場合、測定はノーザンブロッティング法、in situハイブリダイゼーション、mRNA転写物のための一もしくは複数のプローブかプローブセットを備えたマイクロアレイ又はDNAチップ上でのハイブリダイゼーション、或いはリアルタイムPCRのような定量PCR法等、PCR法を利用して実施される。(特定の)mRNAを結合するためのこれらの方法、及び他の好適な方法は当該技術分野でよく知られており、例えば、Sambrook及びRussell (2001, loc. cit.)に記載されている。当業者は、成分、特に前記遺伝子産物の量を、検出信号の強度と測定されるべき遺伝子産物の量との相関関係、好ましくは、線形相関関係を利用することによって決定することができる。
【0088】
発現量は、ER、PD-L1及び/又はIFN-γのタンパク質発現量であり得る。タンパク質発現量の定量は、例えば、ウェスタンブロット法、免疫アッセイ、ゲル又はブロットベースの技法、IHC法、質量分析、フローサイトメトリー、FACS法等の周知の技術を利用することによって実施され得る。ポリペプチド(一又は複数)/タンパク質(一又は複数)の定量のための方法は、通常、当業者に既知である。溶液中の精製されたポリペプチドの量は、例えば、吸光分光分析等の物理学的方法によって決定され得る。混合物中の特定のポリペプチドを定量する方法は、例えば抗体の結合などの、特異的な結合に依存し得る。抗体の特異性を利用する特異的検出及び定量の方法は、例えば免疫組織化学染色法(in situ)を含む。ウエスタンブロット法は、電気泳動によるタンパク質混合物の分離と、抗体を用いた特異的検出を組み合わせている。電気泳動は、2次元電気泳動のように、多次元であり得る。通常、ポリペプチドは、1次元に沿ったそれらの見かけの分子量、及び他の方向に沿ったそれらの等電点によって、2次元電気泳動で分離されている。別法として、タンパク質の定量法は、質量分析又は酵素結合免疫吸着法を含むがこれらに限定されない。
【0089】
また、本発明との関連で、ハイスループットスクリーニング(HTS)の使用も想定される。(HTS)の適切な手法は、当該技術分野で知られている。当業者は、このような手順又は既知のHTS手法を、本発明の方法の実施に容易に適合させることができる立場にある。通常、このようなアッセイは液相で実施され、試験すべきそれぞれの細胞/組織/細胞培養物について少なくとも一つの反応バッチが作られる。使用される典型的な容器は、例えば、384、1536又は3456ウェルを備えるマイクロタイター・プレート(すなわち、「原型」の96反応器の倍数)である。ロボット、データ処理及び制御ソフトウェア、並びに高感度検出器は、HTS装置の更に一般に使用される構成要素である。試料(一又は複数)と試薬(一又は複数)の添加及び混合のためのステーションからステーションへのマイクロタイター・プレートの移送、それらの試薬のインキュベーション、並びに最終読み出し(検出)には、多くの場合、ロボットシステムが使用される。通常、多くのプレートの同時調製、インキュベーション及び解析にHTSを用いることができる。前記アッセイを単一反応で行うことができる(これが通常好ましい)が、洗浄及び/又は移送工程も含むことがある。検出は、放射活性、発光又は蛍光、例えば蛍光-共鳴-エネルギー移動(FRET)及び蛍光分極(FP)等を利用して実施することができる。本明細書に記載の生体試料をそのような状況で使用することもできる。特に、細胞アッセイ及びインビボアッセイをHTSに用いることができる。細胞アッセイは、細胞抽出物、すなわち、細胞、組織及びこれらに類するものからの抽出物も含み得る。インビボアッセイが、本明細書中で使用されるべきモジュレーター/阻害剤/化学療法剤の検証試験で特に有用であるが、しかし生体試料(特に、がんに罹患しているか、又は罹患しやすい患者/被験体から得られた試料)として細胞(一もしくは複数)又は組織(一もしくは複数)の使用がここでは好ましい。最初のアッセイの結果によっては、実験を再実行することによって絞り込まれたセット(例えば、最初のアッセイで「陽性」と判明した試料)に関して更なるデータを収集する追跡アッセイを実施し、観察結果を確認及び精緻化することができる。
【0090】
本発明の方法の文脈で使用される場合、「コントロール」の非限定的な例は、例えば、一又は複数の健康な被検体から、或いはPD-L1阻害剤併用療法が必要ないとわかっているがん/腫瘍に罹患している患者から得られた試料/細胞/組織など、好ましくは、PD-L1阻害剤併用療法を必要としていない患者由来のコントロールである。例えば、そのようなコントロール(試料)は、追加的なPD-L1阻害剤併用療法から恩恵を受けない患者由来のものでもあってもよい。もう一つの「コントロール」の非限定的例は「内標準」であり、例えば、精製されたか或いは合成的に製造されたタンパク質及び/又はペプチドもしくはRNAの混合物であり、上記のコントロールを使用してこれらの量をそれぞれ計ることができる。
【0091】
「コントロール」の更なる非限定的例は、「健康な」コントロールであり得、例えば、がん/腫瘍に罹患していない健康な被検体又は患者から得られた試料/細胞/組織、或いはそのような被検体から得られた細胞である。上記に従い、ER、PD-L1及び/又はIFN-γの発現量の基準値又はコントロール値は、対応する健康なコントロール被検体/患者(の試料)、すなわち、ER、PD-L1及び/又はIFN-γの「正常な」状態で決定されるものである。 前記コントロールは、試料/細胞/組織が腫瘍又はがん細胞を含有しない限りは、がんに罹患していることが疑われる個体又は患者から得られた試料/細胞/組織であってもよい。更に別の代替として、「コントロール」は、がんに罹患している個体又は患者から、前記がんの発生又は診断より前に得られた試料/細胞/組織であってもよい。
【0092】
本明細書において提供される方法に従って評価されるべき前記試料は、非疾患細胞及び/又は疾患細胞、すなわち、非がん性細胞及び/又はがん性細胞を含み得る。しかし、非がん性細胞中のがん性細胞の含有量は、例えば50%よりも高くなければならない。前記試料は、例えば乳がん/乳房腫瘍細胞(一又は複数)など、がん/腫瘍細胞(一又は複数)も(或いは、それらだけを)含み得る。用語「試料」は、一般に、患者の腫瘍から得られる任意の生体試料を意味する。前記試料は組織切片又は組織生検材料であってもよい。試料はまた、転移性病変もしくは転移性病変の切片、又は循環性腫瘍細胞を含むことが分かっているか疑われる血液試料であってもよい。上記に従って、生体試料は、がん細胞と、ある程度の、すなわち、例えば50%未満の、非がん性細胞(他の細胞)を含み得る。通常の知識を有する病理学者であれば、正常な組織細胞とがん細胞を識別することができる。組織生検材料、組織切片及び体液などを、哺乳動物(例えば、ヒト)から得るための方法は、当該技術分野で周知である。
【0093】
上述のように、本発明に従ってPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定されたがん患者は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているか、又はHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含むそのような治療が該患者のために計画されている。HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療は、「HER2陽性がん」を有する患者、例えばHER2陽性がんに罹患していることが疑われる患者、HER2陽性がんに罹患している患者、又はHER2陽性がんに罹患しやすい患者に用いられる。本発明に従い治療されるべきがんは、好ましくは、「HER2陽性がん」、特に「HER2陽性乳がん」である。「HER2陽性がん」は、「HER2陽性乳がん」又は「HER2陽性胃がん」であり得る。更に、HER2陽性がんは、卵巣がん、肺がん、結腸直腸がん、腎臓がん、骨がん、骨髄のがん、膀胱がん、皮膚がん、前立腺がん、食道がん、唾液腺がん、膵臓がん、肝臓がん、頭頚部がん、中枢神経系(特に脳の)がん、子宮頸がん、軟骨のがん、 結腸がん、泌尿生殖器のがん、消化管がん、膵臓がん、滑膜のがん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、及び子宮がんであり得る。
【0094】
本明細書で使用される用語「HER2陽性がん」は、正常よりも高いレベルのHER2を有するがん細胞を含む、がん/腫瘍組織などを指す。本発明の目的のために、「HER2陽性がん」は、免疫組織化学(IHC)法でのスコアが少なくとも2+、及び/又はin situハイブリダイゼーション(ISH)増幅率が≧2.0(すなわち、ISH陽性)である。したがって、免疫組織化学的方法等で検出される高HER2(タンパク質)発現量及び/又はin situハイブリダイゼーション)で検出されるHER2遺伝子増幅(腫瘍細胞あたりのHER2遺伝子のコピー数が4コピーを超えるか、もしくはCEP17シグナル数に対するHER2遺伝子のコピー数の比率が≧2.0など、ISH陽性)が、乳房組織生検材料もしくは乳房組織切片など患者から得られた試料中に、又は転移性部位から派生した組織中に見出される場合、HER2陽性がんが存在する。一実施態様において、「HER2陽性がん」は、免疫組織化学(IHC)法でのスコアがHER2(3+)、及び/又はISH陽性である。
【0095】
HER2の発現量は免疫組織化学的方法で検出され得、一方、前記HER2遺伝子増幅状態は蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)などのin situハイブリダイゼーション法で測定され得る。タンパク質発現アッセイ並びに遺伝子増幅の検出のために、対応するアッセイ及びキットが当該技術分野でよく知られている。或いは他の方法、例えば、qRT-PCRがHER2遺伝子の発現量を検出するために使用され得る。
【0096】
HER2発現量は、特に、免疫組織化学的方法によって検出され得る。これらの方法は当該技術分野でよく知られており、対応する市販のキットが利用可能である。本発明に従って利用され得る例示的キットは、特に、Dako社が製造販売するHerceptTestTM、又はVentana PathwayTMと呼ばれる検査キットである。HER2タンパク質の発現量は、提供される試薬を用いて、また、HercepTestTMの手順に従うことによって評価することができる。当業者は、免疫組織化学的方法によってHER2の発現量を決定するための更なる手段及び方法を知っているであろう; 例えば、国際公開第2005/117553号を参照されたい。したがって、HER2の発現量は、容易にかつ再現性よく、過度の負担なしに当業者によって決定され得る。しかし、正確で再現性のある結果を確保するためには、試験手順の妥当性を確保することができる専門の実験室で試験を行わなければならない。
【0097】
HER2の発現量は、低い発現量、中程度の発現量、及び高い発現量に分類することができる。本発明の文脈で、HER2陽性疾患は、HER2の強い発現量(例えば、IHCでHER2(3+))によって定義され、例えば、がん患者の試料において決定されることが好ましい。
【0098】
本明細書中でHER2(0)、HER2(+)、HER2(++)及びHER2(+++)と示されている、HER2発現量を表すIHC染色パターンを評価するために推奨されるスコアリングシステムは、以下の通りである:
【0099】
【0100】
上記のIHC染色パターンは、HER2陽性乳がんの決定において慣用的に使用されている。本明細書で使用される用語「HER2(+)」、「HER2(++)」及び「 HER2(+++)」は、用語「HER2(1+)」、「HER2(2+)」及び「HER2(3+)」に相当する。本発明の文脈において使用される「低いタンパク質発現量」は、0又は1+のスコア(本明細書中で上に示した表の記載では「陰性評価」)に相当し、「弱から中程度のタンパク質発現量」は、2+のスコア(「弱から中程度の過剰発現」、上の表参照)に相当し、「高いタンパク質発現量」は、3+のスコア(「強度の過剰発現」、上の表参照)に相当する。本明細書で上に詳述したように、タンパク質発現量の評価(すなわち、表に示したようなスコアリングシステム)は、免疫組織化学的方法によって得られた結果に基づく。したがって、標準として又は慣用的に、HER2状態の判定は、FDA承認の入手可能な2つの市販のキット、すなわちDako HerceptestTM及びVentana PathwayTMのうちの一つを用いて免疫組織化学によって実施される。これらは、発現量を、0(一細胞当たり<20000個の受容体、IHC染色による可視の発現なし)、1+(一細胞当たり~100000個の受容体、部分的な膜染色、HER-2過剰発現細胞の<10%)、2+(一細胞当たり~500000個の受容体、弱から中程度の完全な膜染色、HER2過剰発現細胞の>10%)、及び3+(一細胞当たり(~2000000個の受容体、強度の完全な膜染色、HER-2過剰発現細胞の>10%)に階層化する半定量アッセイである。
【0101】
或いは、HER2のタンパク質発現量を評価するための更なる方法、例えば、ウェスタンブロット法、ELISA法に基づく各種検出システム等が使用され得る。
【0102】
HER2陽性がんは、HER2の遺伝子増幅を評価することによっても診断され得る。したがって、HER2陽性がんは、ISHによる該評価が陽性の場合に診断される。該評価に従って、HER2陽性がんは、特に腫瘍細胞あたりのHER2遺伝子のコピー数が4を超える平均HER2遺伝子コピー数(それらの検査システムに関しては内部のセントロメア制御プローブ無しで)、又は>=2.0のHER2/CEP17の比率(それらの検査システムに関しては内部の第17番染色体のセントロメア制御プローブを使用)に関する。換言すれば、HER2陽性がんは、とりわけ4を超えるHER2遺伝子のコピー数に関する。HER2遺伝子の増幅量は、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法、色素産生in situハイブリダイゼーション(CISH)法、及びシルバーin situハイブリダイゼーション(SISH)法等のin situハイブリダイゼーション(ISH)法によって容易に同定され得る。これらの方法は当業者に知られている。これらの方法の原理は、標準的な教科書から推定することができる。in situハイブリダイゼーションによって、HER2遺伝子増幅状態の決定のための市販のキットが入手可能である。
【0103】
下記のIHC染色パターンが、HER2陽性胃がんの決定のために推奨される(Dako社製Herceptestの添付文書を参照)。
【0104】
Hercep TestTMで染色された生検標本のうち、少なくとも5個の染色がある腫瘍細胞を含むクラスターが推奨される。少なくとも5個の染色がある腫瘍細胞クラスターは、5個の連続したHER2染色腫瘍細胞からなる。
【0105】
【0106】
HER2陽性がん胃がんを判定するための、より精緻化されたIHC法の染色パターンは以下の通りである:
【0107】
【0108】
上に示したように、本発明に従い治療されるべきHER2陽性がんは、乳がん、例えば、早期乳がんであってもよい。本明細書で使用される用語「早期乳がん」は、乳房又は腋窩リンパ節を越えて広がっていない乳がんを指す。このようながんは、一般に、ネオアジュバント又はアジュバント療法で治療することができる。本明細書で使用される用語「ネオアジュバント療法」は、手術より前になされる全身療法を指す。用語「アジュバント療法」は、手術の後になされる全身療法を指す。上記に従い、治療は、早期乳がんのネオアジュバント又はアジュバント療法であってもよい。
【0109】
上記に従い、評価される試料は、上で定義したHER2陽性がんを有する患者由来の(から得られた)ものであり得る。例えば、該試料は、腫瘍性組織、腫瘍(一又は複数)から得られ、したがって、乳房腫瘍等のHER2陽性腫瘍であることが疑われる腫瘍細胞(一もしくは複数)又は腫瘍組織(一もしくは複数)である。当業者は、当該技術分野で知られている標準的な手法や本明細書に開示されている方法を用いて、そのような腫瘍及び/又は相当するがんに罹患している個体/患者を同定できる立場にある。一般的に、前記腫瘍細胞又はがん細胞は、任意の生物学的供給源/生物体、特に、上記のがんに罹患している任意の生物学的供給源/生物体から得ることができる。本発明の文脈で特に有用な細胞は、好ましくは、ヒト細胞である。これらの細胞は、例えば生検から、又は生体試料から得られる。腫瘍/がん/腫瘍細胞/がん細胞は、固形腫瘍/がん/腫瘍細胞/がん細胞である。上記に従い、がん/腫瘍細胞は、乳房のがん/腫瘍細胞、又は乳房のがん/腫瘍細胞等のがん/腫瘍細胞を含む前記試料であり得る。上記に従い、前記腫瘍/がんは乳房の腫瘍/がんであり得る。
【0110】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターはHER2阻害剤、例えば、HER二量体化/シグナル伝達阻害剤であり得る。HER二量体化阻害剤はHER2二量体化阻害剤であり得る。HER二量体化阻害剤は、HERのヘテロ二量体化又はホモ二量体化を阻害し得る。 HER二量体化阻害剤は、抗HER抗体であり得る。本明細書では、「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、特に、それらが所望の生物活性を示す限り、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。また、ヒト抗体及びヒト化抗体、並びにCDR移植抗体も含まれる。
【0111】
HER抗体は、EGFR、HER2及びHER3からなる群より選択されるHER受容体に結合し得る。該抗体は、好ましくは、HER2に結合する。抗HER2抗体はHER2細胞外ドメインのドメインIIに結合し得る。該抗体は、HER2細胞外ドメインのドメインI、II、IIIの間の接合点に結合し得る。抗HER2抗体はペルツズマムであり得る。
【0112】
本明細書での目的のため、「ペルツズマム」及び「rhuMAb 2C4」(これらは互換的に使用される)は、可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメイン(図2の通り、配列番号5と6にそれらのアミノ酸配列もそれぞれ示されている)を含む抗体を指す。図2には、変異体574/ペルツズマブの可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメインも示されている(図2の通り、配列番号7と8にそれらのアミノ酸配列もそれぞれ記されている)。ペルツズマブがインタクトな抗体である場合、ペルツズマブは好ましくはIgG1抗体を含み;軽鎖アミノ酸配列を含む一実施態様において、ペルツズマブは好ましくは軽鎖及び重鎖アミノ酸配列を、図3A/3Bと5A/5Bにそれぞれ示したように含んでいる(図5A/5Bは、変異体ペルツズマブの軽鎖及び重鎖アミノ酸配列を示す)。図3Bに示されているペルツズマブの重鎖アミノ酸配列は、場合によってはC末端の449位に追加のアミノ酸「K」を含んでもよい。該抗体は、場合によっては、組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHC)細胞により産生されてもよい。本明細書の用語「ペルズマム」及び「rhuMAb 2C4」は、米国一般名(USAN)又は国際一般名(INN)でペルズマムである薬剤のバイオシミラー版を包含する。ここでも、対応する配列を図2から5に示す。
【0113】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターは、HER切断(shedding)の阻害剤、例えばHER2切断阻害剤であり得る。HER切断阻害剤は、HERのヘテロ二量体化又はホモ二量体化を阻害し得る。前記HER切断阻害剤は抗HER抗体であり得る。
【0114】
本明細書では、「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、特に、それらが所望の生物活性を示す限り、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。また、ヒト抗体及びヒト化抗体、並びにCDR移植抗体も含まれる。
【0115】
抗HER抗体は、EGFR、HER2及びHER3からなる群より選択されるHER受容体に結合し得る。該抗体は、好ましくは、HER2に結合する。HER2抗体はHER2細胞外ドメインのサブドメインIVに結合し得る。HER2抗体は、好ましくは、ハーセプチンTM/トラスツズマブTMである。
【0116】
本明細書での目的のため、「ハーセプチンTM/トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5-8」(これらは互換的に使用される)は、可変軽鎖ドメイン及び可変重鎖ドメイン(それらのアミノ酸配列をそれぞれ図4に示す;ドメインは矢印で示す)。トラスツズマブがインタクトな抗体である場合、トラスツズマブは、好ましくは、図4に示すように、軽鎖アミノ酸配列及び重鎖アミノ酸配列を含む一実施態様において、IgG1抗体を含む。該抗体は、場合によっては、チャイニーズハムスター卵巣(CHC)細胞により産生されてもよい。本明細書の用語「トラスツズマブ」及び「rhuMAb4D5-8」は、米国一般名(USAN)又は国際一般名(INN)でトラスツズマブである薬剤のバイオシミラー版を包含する。
【0117】
プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤は、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)であり得る。繰り返すが、「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、特に、それらが所望の生物活性を示す限り、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。また、ヒト抗体及びヒト化抗体、並びにCDR移植抗体も含まれる。
【0118】
例示的抗PD-L1抗体は、本明細書にその内容全体が援用される国際公開第2010/077634号において開示されている。本発明に従って使用される、該当する例示的な抗PD-L1抗体を以下に記載する。
【0119】
抗PD-L1抗体は、HVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を含む重鎖可変領域ポリペプチドを含み得、
(a)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号1)であり;
(b)HVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号2)であり;
(c)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号3)であり;
更に配列中、X1はD又はGであり;X2はS又はLであり;X3はT又はSである。X1はDであってもよく;X2はSであってもよく、またX3はTであってもよい。
【0120】
ポリペプチドは、式(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の重鎖フレームワーク配列を更に含み得る。該フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来してもよい。該フレームワーク配列は、VHサブグループIIIのコンセンサスフレームワークであってもよい。一又は複数のフレームワーク配列は、以下であってもよい:
HC-FR1が、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号4);
HC-FR2が、WVRQAPGKGLEWV(配列番号5);
HC-FR3が、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号6);
HC-FR4が、WGQGTLVTVSA(配列番号7)。
【0121】
重鎖ポリペプチドは、HVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む可変領域軽鎖との組み合わせであってもよく、
(a)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8A(配列番号8)であり;
(b)HVR-L2配列は、SASX9LX10S(配列番号9)であり;且つ、
(c)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15T(配列番号10)であり;
更に配列中、X4はD又はVであり;X5はV又はIであり;X6はS又はNであり;X7はA又はFであり;X8はV又はLであり;X9はF又はTであり;X10はY又はAであり;X11はY、G、F又はSであり;X12はL、Y、F又はWであり;X13はY、N、A、T、G、F又はIであり;X14はH、V、P、T又はIであり;X15はA、W、R、P又はTである。
【0122】
X4はDであってもよく;X5はVであってもよく;X6はSであってもよく;X7はAであってもよく;X8はVであってもよく;X9はFであってもよく;X10はYであってもよく;X11はYであってもよく;X12はLであってもよく;X13はYであってもよく;X14はHであってもよく;X15はAであってもよい。
【0123】
ポリペプチドは、式(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の軽鎖フレームワーク配列を更に含み得る。該フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来してもよい。該フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークであってもよい。一又は複数のフレームワーク配列は、以下であってもよい:
LC-FR1が、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11);
LC-FR2が、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12);
LC-FR3が、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号13);
LC-FR4が、FGQGTKVEIKR(配列番号14)。
【0124】
抗PD-L1抗体(又はその抗原結合断片)は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得、
(a)重鎖はHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、更に、
(i)HVR-H1配列は、GFTFSX1SWIH(配列番号1)であり;
(ii)HVR-H2配列は、AWIX2PYGGSX3YYADSVKG(配列番号2)であり;
(iii)HVR-H3配列は、RHWPGGFDY(配列番号3)であり;且つ、
(b)軽鎖はHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含み、更に、
(iv)HVR-L1配列は、RASQX4X5X6TX7X8A(配列番号8)であり;
(v)HVR-L2配列は、SASX9LX10S(配列番号9)であり;
(vi)HVR-L3配列は、QQX11X12X13X14PX15T(配列番号10)であり;
配列中、X1はD又はGであり;XはS又はLであり;X3はT又はSであり;X4はD又はVであってもよく;X5はV又はIであってもよく;X6はS又はNであってもよく;X7はA又はFであってもよく;X8はV又はLであってもよく;X9はF又はTであってもよく;X10はY又はAであってもよく;X11はY、G、F又はSであってもよく;X12はL、Y、F又はWであってもよく;X13はY、N、A、T、G、F又はIであってもよく;X14はH、V、P、T又はIであってもよく;X15はA、W、R、P又はTであってもよい。
【0125】
X1はDであってもよく;X2はSであってもよく、且つX3はTであってもよい。更に、位置は次の通りであってもよい:X4=D、X5=V、X6=S、X7=A及びX8=V、X9=F、並びにX10=Y、X11=Y、X12=L、X13=Y、X14=H及び/又はX15=A。更に、位置は次の通りであってもよい:X1=D、X2=S及びX3=T、X4=D、X5=V、X6=S、X7=A及びX8=V、X9=F、並びにX10=Y、X11=Y、X12=L、X13=Y、X14=H及びX15=A。
【0126】
前記抗体(又はその抗原結合断片)は、
(a)式(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の重鎖フレームワーク配列、及び
(b)式(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の軽鎖フレームワーク配列
を更に含み得る。該フレームワーク配列は、ヒトコンセンサスフレームワーク配列に由来してもよい。
【0127】
可変領域の重鎖フレームワーク配列は、VHサブグループIIIのコンセンサスフレームワークであってもよい。一又は複数のフレームワーク配列は、以下であってもよい:
HC-FR1が、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号4);
HC-FR2が、WVRQAPGKGLEWV(配列番号5);
HC-FR3が、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号6);
HC-FR4が、WGQGTLVTVSA(配列番号7)。
【0128】
可変領域の軽鎖フレームワーク配列は、VLカッパIコンセンサスフレームワークであってもよい。一又は複数のフレームワーク配列は、以下であってもよい:
LC-FR1が、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11);
LC-FR2が、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12);
LC-FR3が、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号13);及び、
LC-FR4が、FGQGTKVEIKR(配列番号4)。
【0129】
前記抗体(もしくはその抗原結合断片)は、
(a)以下の可変重鎖フレームワーク配列:
(i)HC-FR1が、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号4);
(ii)HC-FR2が、WVRQAPGKGLEWV(配列番号5);
(iii)HC-FR3が、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号6);
(iv)HC-FR4が、WGQGTLVTVSA(配列番号7);及び、
(b)以下の可変軽鎖フレームワーク配列:
(i)LC-FR1が、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11);
(ii)LC-FR2が、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12);
(iii)LC-FR3が、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号13);
(iv)LC-FR4が、FGQGTKVEIKR(配列番号14)
であり得るか、又は上を含み得る。
【0130】
前記抗体(又はその断片)は、ヒト定常領域を更に含み得る。該定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4からなる群より選択され得る。該定常領域は、IgG1であり得る。前記抗体(又はその断片)は、マウス定常領域を更に含み得る。該定常領域は、IgG1、IgG2A、IgG2B及びIgG3からなる群より選択され得る。該定常領域は、IgG2Aであり得る。
【0131】
前記抗体(もしくはその断片)は、低減されたか又は最小のエフェクター機能を有し得る。最小エフェクター機能は、エフェクターを欠くFc変異から生じ得る。エフェクターを欠くFc変異は、N297Aであり得る。エフェクターを欠くFc変異は、D265A/N297Aであり得る。最小エフェクター機能は非グリコシル化から生じ得る。
【0132】
前記抗体(又はその断片)は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得、
(a)該重鎖は、GFTFSDSWIH(配列番号15)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号16)及びRHWPGGFDY(配列番号3)とそれぞれ少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3を含み、且つ
(b)該軽鎖は、RASQDVSTAVA(配列番号17)、SASFLYS(配列番号18)及びQQYLYHPAT(配列番号19)とそれぞれ少なくとも85%の全体的な配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3を含む。
【0133】
前記配列同一性は少なくとも90%であってもよい。
【0134】
前記抗体(又はその断片)は:
(a)式(HC-FR1)-(HVR-H1)-(HC-FR2)-(HVR-H2)-(HC-FR3)-(HVR-H3)-(HC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の重鎖(VH)フレームワーク配列;及び
(b)式(LC-FR1)-(HVR-L1)-(LC-FR2)-(HVR-L2)-(LC-FR3)-(HVR-L3)-(LC-FR4)に従ってHVRの間に並置された可変領域の軽鎖(VL)フレームワーク配列
を更に含み得る。
【0135】
前記抗体(又はその断片)は、ヒトコンセンサス配列に由来するVH及びVLフレームワーク領域を更に含み得る。前記VHフレームワーク配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列に由来し得る。前記VHフレームワーク配列は、KabatサブグループIIIコンセンサスフレームワーク配列であり得る。前記VHフレームワーク配列は、以下であってもよい:
HC-FR1が、EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAAS(配列番号4);
HC-FR2が、WVRQAPGKGLEWV(配列番号5);
HC-FR3が、RFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCAR(配列番号6);
HC-FR4が、WGQGTLVTVSA(配列番号7)。
前記VLフレームワーク配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来し得る。前記VLフレームワーク配列は、KabatカッパIコンセンサスフレームワーク配列であり得る。
【0136】
前記VLフレームワーク配列は、以下であってもよい:
LC-FR1が、DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITC(配列番号11);
LC-FR2が、WYQQKPGKAPKLLIY(配列番号12);
LC-FR3が、GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYC(配列番号13);
LC-FR4が、FGQGTKVEIKR(配列番号14)。
【0137】
前記抗体(又はその断片)は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得、
(a)該重鎖配列が、重鎖配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号20)と少なくとも85%の配列同一性を有し、また、
(b)該軽鎖配列が、軽鎖配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号21)と少なくとも85%の配列同一性を有する。
【0138】
前記配列同一性は少なくとも90%であってもよい。
【0139】
前記抗体(又はその断片)は、重鎖及び軽鎖可変領域配列を含み得、
(a)該重鎖が、配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSDSWIHWVRQAPGKGLEWVAWISPYGGSTYYADSVKGRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCARRHWPGGFDYWGQGTLVTVSA(配列番号20)を含み、且つ
(b)該軽鎖が、配列:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVSTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYLYHPATFGQGTKVEIKR(配列番号21)を含む。
【0140】
更に、抗PD-L1抗体は核酸によってコードされ得る。したがって、本明細書に記載されているのは、上記ポリペプチド/抗体(又はその断片)をコードする単離された核酸である。
【0141】
本明細書で提供されるのは、抗PD-L1抗体又はその抗原結合断片の軽鎖及び重鎖可変配列をコードする単離された核酸であって、
(a)該重鎖が、GFTFSDSWIH(配列番号15)、AWISPYGGSTYYADSVKG(配列番号16)及びRHWPGGFDY(配列番号3)とそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-H1、HVR-H2及びHVR-H3配列を更に含むか、又は
(b)該軽鎖が、RASQDVSTAVA(配列番号17)、SASFLYS(配列番号18)及びQQYLYHPAT(配列番号19)とそれぞれ少なくとも85%の配列同一性を有するHVR-L1、HVR-L2及びHVR-L3配列を更に含む。
【0142】
前記配列同一性は90%であってもよい。抗PD-L1抗体は、ヒトコンセンサス配列に由来するVL及びVHフレームワーク領域を更に含み得る。前記VH配列は、KabatサブグループI、II、又はIII配列に由来し得る。前記VL配列は、KabatカッパI、II、II、又はIVサブグループ配列に由来し得る。抗PD-L1抗体は、マウス抗体由来の定常領域を含み得る。抗PD-L1抗体は、ヒト抗体由来の定常領域を含み得る。該定常領域は、IgG1であってもよい。核酸によってコードされた抗体は、低減されたか又は最小のエフェクター機能を有し得る。最小エフェクター機能は、エフェクターを欠くFc変異から生じ得る。エフェクターを欠くFc変異は、N297Aであり得る。
【0143】
本明細書で更に提供されるのは、核酸を含むベクター、ベクターを含む宿主細胞である。前記宿主細胞は真核生物であってもよい。前記宿主細胞は哺乳類であってもよい。前記宿主細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であってもよい。前記宿主細胞は原核生物であってもよい。前記宿主細胞は、大腸菌であってもよい。本明細書で提供されるのは、また、抗PD-L1抗体又は抗原結合断片をコードするベクターの発現に適した条件下で上記宿主細胞を培養することと、該抗体又は断片を回収することとを含む、抗PD-L1抗体を作製するための方法でもある。
【0144】
以下に、本明細書で提供されるがん及び/又はがん患者を治療するための手法並びに方法をより詳しく述べる。
【0145】
したがって、本明細書で企図されるのは、(トラスツズマブ等の)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと、(本明細書に記載の抗PD-L1抗体等の)プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤とを含むがんの治療での使用のための医薬組成物であって、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現であること、また、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定される。前記がんは、コントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すると決定され得る。前記医薬組成物は、化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)を更に含んでもよい。
【0146】
上記に従い、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を、それらを必要としている被験体に投与することを含む、がんを治療するための方法を提供する。がんは、コントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量 を有すると決定され得る。
【0147】
本明細書で提供されるのは、がんの治療における使用のための、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤であって、それにより前記がんは、ERが非発現か又は低量発現であること、また、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定される。本明細書で更に提供されるのは、がんの治療における使用のための、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤、及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)であって、それにより前記がんが、ER非発現か又は低量発現であること、また、コントロールと比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定される。がんは、コントロールと比べ低下したインターフェロンガンマ(IFNγ)発現量を有すると決定され得る。
【0148】
上に論じたように、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、前記がんが、ER非発現か又は低量発現であること、また、コントロールに比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法を提供する。同様に、本発明は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんがER非発現か又は低量発現であること、また、コントロールに比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法を提供する。
【0149】
上記の「がん」、「がん患者」、「PD-L1阻害剤」、「PD-L1阻害剤併用療法」、「HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター」、「化学療法剤」、「ER非発現か又は低量発現」、「増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)発現量」、「低下したインターフェロンガンマ(IFN-γ)発現量」などに関する説明及び定義のすべてが、本明細書に関して準用される。
【0150】
用語「治療」(「treatment」)、「治療すること」(「treating」)等は、一般的に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを意味するために、本明細書で使用される。効果とは、ある疾患やその症状を完全にもしくは部分的に防ぐという意味で予防的であってもよく、並びに/或いは、疾患及び/又はその疾患に起因する副作用を部分的にもしくは完全に治癒させるという意味で治療的であってもよい。本明細書で使用される用語「治療」は、患者における疾患のいかなる治療も包含し、(a)患者が罹患しやすい疾患に関して予防すること;(b)その疾患を阻害する、すなわち、その進行を停止させること;又は(c)その疾患を軽減する、すなわち疾患を後退させることを含む。
【0151】
本発明の目的のための「患者」とは、ヒトと他の動物の両方、特に哺乳類やその他の生物体を含む。したがって、前記方法はヒトの治療と獣医学用途の両方に適用可能である。患者は、好ましくは、ヒトである。
【0152】
以下の説明は、本発明によるこれらの患者/患者群の治療/療法に、より詳細に関連している。
【0153】
前記医薬組成物は、個々の患者の臨床状態、医薬組成物の送達部位、投与方法、投与計画、及び施術者に既知の他の要因を考慮して、良好な医療行為と一致した様式で製剤化され、投与される。したがって、本明細書の目的のための医薬組成物の「有効量」は、このような条件により決定される。
【0154】
当業者であれば、個体に投与される医薬組成物中の、本明細書に記載のPD-L1阻害剤(単数又は複数)、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(単数又は複数)、及び化学療法剤(単数又は複数)の有効量は、とりわけ、化合物の性質に依存することを理解している。例えば、前記化合物が(ポリ)ぺプチド又はタンパク質である場合、用量あたり非経口投与される医薬組成物の薬学的総有効量は、約1μgタンパク質/患者体重kg/日から10mgタンパク質/患者体重kg/日の範囲であるが、これは、上記のように治療的裁量に委ねられる。この用量は、より好ましくは、少なくとも0.01mgタンパク質/体重kg/日であり、また、ヒトに関してもっとも好ましくは、約0.01から1mgタンパク質/体重kg/日である。
【0155】
トラスツズマブに関し、以下の投与法が用いられ得る:
薬量と投与方法
HER2検査は、治療開始前に必須である。ハーセプチン療法は、細胞傷害性化学療法の適用の経験が豊富な医師によってのみ開始されるべきである。
MBC
三週間スケジュール
推奨初回負荷用量は、8mg/体重kgである。三週間間隔の推奨維持量は、初期負荷用量開始後三週間から、6mg/体重kgである。
週間スケジュール
ハーセプチンの推奨初回負荷用量は、4mg/体重kgである。ハーセプチンの推奨週間維持量は、初期負荷用量の一週間後に開始で、2mg/体重kgである。
パクリタキセル又はドセタキセルとの組み合わせ投与
極めて重要な治験(H0648g、M77001)において、パクリタキセル又はドセタキセルは、ハーセプチンの初回投与(用量については、パクリタキセル又はドセタキセルの製品特性概要を参照)の翌日に、また、先のハーセプチン投与に良好な耐容性を示した場合はその後のハーセプチン投与の直後に投与された。
アロマターゼ阻害剤との組み合わせ投与
極めて重要な治験(BO16216)において、ハーセプチンとアナストロゾ-ルが1日目から投与された。ハーセプチンとアナストロゾ-ルとの相対的な投与タイミングについて制限はない(用量については、アナストロゾ-ル又は他のアロマターゼ阻害剤の製品特性概要を参照)。
EBC
三週間及び週間スケジュール
三週間レジメンとしてハーセプチンの推奨初回負荷用量は、8mg/体重kgである。三週間間隔のハーセプチンの推奨維持量は、初期負荷用量の三週間後に開始で、6mg/体重kgである。
【0156】
週間レジメンとして(4mg/kgの初回負荷用量に続き、毎週2mg/kg)、ドキソルビシンとシクロホスファミドを用いた化学療法に続く、パクリタキセルの併用で。(化学療法併用投与に関しては、第5節第1項参照)。
MGC
三週間スケジュール
推奨初回負荷用量は、8mg/体重kgである。三週間間隔の推奨維持量は、初期負荷用量の三週間後に開始で、6mg/体重kgである。
乳がん(MBC及びEBC)並びに胃がん(MGC)
治療期間
MBC又はMGCの患者は、疾患が進行するまではハーセプチンで治療されるべきである。EBCの患者は、一年間か、又は最初の発症が何であれ、疾患の再発まではハーセプチンで治療されるべきである。
【0157】
減量
臨床試験中、ハーセプチンの用量は削減しなかった。患者は可逆的、化学療法によって誘発される骨髄抑制の期間中に治療を継続することができるが、この間、好中球減少症の合併症に関して注意深くモニターされる必要がある。パクリタキセル、ドセタキセルもしくはアロマターゼ阻害剤の減量又は投与延期についての情報は、製品特性概要を参照のこと。
【0158】
飲み忘れ
患者のハーセプチンの飲み忘れが一週間以内であれば、通常の維持量(週間レジメン: 2mg/kg;三週間レジメン:6mg/kg)をすぐに与えるべきである。次に予定されているサイクルまで待ってはいけない。次いで、その後の維持量(週間レジメン:2mg/kg;三週間レジメン:6mg/kg)を以前のスケジュールに従って与えるべきである。
【0159】
患者が一週間を超えてハーセプチンを飲み忘れた場合、ハーセプチンの再負荷用量を約90分にわたって与えるべきである(週間レジメン:4mg/kg;三週間レジメン:8mg/kg)。次いで、その後のハーセプチンの維持量(週間レジメン:2mg/kg;三週間レジメン:6mg/kg)を、その時点から与えるべきである(週間レジメン:毎週;三週間レジメン:三週毎)。
特別な患者集団
【0160】
臨床データは、ハーセプチンの生体内分布は年齢又は血清クレアチニンによって変わらないことを示している。臨床治験では、高齢の患者はハーセプチンの減量をされなかった。腎臓又は肝臓障害を持つ高齢者に限った薬物動態試験は実施されていない。しかし、集団薬物動態分析では、年齢及び腎臓障害がトラスツズマブの生体内分布に影響を与えるとは示されなかった。
【0161】
投与方法
ハーセプチンの初期負荷用量は、90分間の静脈内注入として投与されるべきである。静脈内プッシュ又は静脈内ボーラスとして投与してはならない。ハーセプチンの静脈内注入は、アナフィラキシーに対応する用意のある医療提供者によってなされるべきであり、また、応急用具の用意も必要である。発熱や悪寒又は他の注入関連症状等の症状のために、最初の注入開始後少なくとも6時間、また、その後の注入開始の後2時間は、患者を観察する必要がある(第4節第4項と第4節第8項を参照)。注入の一次中断又は注入速度の減速は、そのような症状の抑制に役立つ。症状が和らいだ時に注入を再開することができる。
【0162】
初期負荷用量で良好な耐容性が示された場合、その後の用量を30分間の注入として投与することができる。本発明の医薬組成物は非経口で投与され得る。
【0163】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される担体」とは、非毒性の固体、半固体もしくは液体の、任意の形態の賦形剤、希釈剤、カプセル化材料又は処方助剤を意味する。本明細書中で用いられる用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内の注射並びに注入を含む投与の様式を指す。本明細書中で提供される組成物の投与は、特に、一日2回、毎日、一日おき、三日毎、四日毎、五日毎、週に一度、二週に一度、三週に一度、月に一度等の投与を含む。
【0164】
医薬組成物はまた、徐放システムによって適切に投与される。徐放性組成物の適切な例には、例えばフィルム又はマイクロカプセルのような成形品の形態を有する半透明ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスは、ポリ乳酸(米国特許第3773919号、EP第58481号)、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタミン酸との共重合体(Sidman, U. et al., Biopolymers 22:547-556 (1983))、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)(R. Langer et al., J. Biomed. Mater. Res. 15:167-277 (1981)、及びR. Langer, Chem. Tech. 12:98-105 (1982))、酢酸ビニルエチレン(R. Langer et al., Id.)又はポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP第133988号)を含む。徐放性医薬組成物は、リポソームに封入された化合物も含む。医薬組成物を含有するリポソームは、それ自体既知の方法:DE 3,218,121; Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:3688-3692 (1985); Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 77:4030-4034 (1980); EP第52322号;EP第36676号;EP第88046号;EP第143949号;EP第142641号;日本特許出願第83-118008号;米国特許第4485045号及び第4544545号;並びにEP第102324号で調製される。通常、前記リポソームは、小さな(約200-800オングストローム)単層タイプであり、脂質含量が約30モルパーセントコレステロールを超えるが、選択される比率は、最適な治療のために調整される。
【0165】
非経口投与の場合、医薬組成物は、所望の純度で、単位投薬注射可能形態(溶液、懸濁液又は乳濁液)で、薬学的に許容される担体、すなわち用いる用量及び濃度でレシピエントに対して無毒性で、且つ製剤の他の成分と適合性である担体と混合することにより、一般に処方される。
【0166】
一般に、製剤は、医薬組成物の成分を、均一かつ密接に液体担体もしくは微粉固体担体又はその両方と接触させることによって調製される。次いで、必要に応じで、製品を所望の製剤へ成形する。好ましくは、担体は非経口担体、より好ましくは、レシピエントの血液と等張の溶液である。このような担体ビヒクルの例は、水、食塩水、リンゲル液、及びデキストローズ溶液を含む。リポソームと同様、不揮発性油及びオレイン酸エチルなどの非水性ビヒクルもまた本明細書で有用である。担体は、例えば等張性及び化学安定性を高める物質など、少量の添加剤を適切に含有する。このような物質は用いる用量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、緩衝液、例えば、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、及び他の有機酸もしくはその塩;アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)(ポリ)ペプチド、例えば、ポリアルギニン又はトリペプチド;例えば、血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸又はアルギニンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びセルロースもしくはその誘導体、グルコース、マンノース又はデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;例えば、マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール;例えば、ナトリウムのような対イオン;及び/又はポリソルベート、ポロキサマーもしくはPEG等の非イオン性界面活性剤を含む。
【0167】
治療的投与のために使用される医薬組成物の成分は無菌でなければならない。無菌状態は、滅菌濾過膜(例えば、0.2ミクロン膜)を通して濾過することにより容易に達成される。医薬組成物の治療成分は、一般に、滅菌アクセスポートを有する容器内、例えば、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアル中に配置されている。
【0168】
医薬組成物の成分は、通常、単位用量又は複数回用量容器中、例えば、密閉アンプルもしくはバイアル中で、水溶液として又は再構成用の凍結乾燥製剤として保存される。凍結乾燥製剤の例として、10mlのバイアルに、滅菌濾過した1%(w/v)の水溶液5mlを充填し、得られた混合物を凍結乾燥する。注入溶液は、静菌性の注射用水を用いて凍結乾燥した化合物を再構成することにより調製される。
【0169】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)を含む、本明細書で提供されるがんの治療は、前記治療の個々の成分の同時、逐次又は別個の投与によって行ってもよい。例えば、本明細書に記載の一又は複数のHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブ等)は、本明細書に記載の一又は複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤(本明細書に提供及び記載の抗PD-L1抗体等)と同時投与されてもよい。又、本明細書に記載の一又は複数のHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブ等)の逐次投与は、本発明に従って使用される、本明細書に記載の一又は複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤(本明細書に提供及び記載の抗PD-L1抗体等)と同時に投与され得ることが、本明細書において想定されている。本明細書に記載のHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路の、本明細書に記載のモジュレーター(トラスツズマブ等)と、本明細書に記載の一又は複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤(本明細書に提供及び記載の抗PD-L1抗体等)は、別個に投与されてもよい。例えば、本明細書に記載の一又は複数のHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(トラスツズマブ等)は第一の工程で投与され、続いて、一又は複数のプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤(本明細書に提供及び記載の抗PD-L1抗体等)と共に第二の工程で投与されてもよく、また、その逆でもよい。同様に、化学療法剤は、同時に、逐次的に、又は別々に投与されてもよい。HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター(単数又は複数)、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤(単数又は複数)及び化学療法剤(単数又は複数)(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標)のようなタキソール誘導体等)の同時、逐次的、又は別個の投与の、いかなる組み合わせも本明細書において想定されている。
【0170】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)を含む、本明細書で提供されるがんの治療は、単独療法として適用され得る。しかし、本明細書で提供されるがんの治療は、一又は複数の追加の療法、例えば、手術、放射線療法及び/又は一もしくは複数の追加の化学療法剤等の一般的療法と共に(すなわち、更なる併用療法で)適用されてもよい。
【0171】
手術は、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)を含む、本明細書で提供されるがんの治療の施与期間中又はその前後に、部分的もしくは完全な腫瘍切除の工程を含み得る。本明細書で提供されるHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)は、ネオアジュバント設定又はアジュバント設定で投与され得る(特に、がんのネオアジュバント療法又はアジュバント療法)。
【0172】
HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤、及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤は、ネオアジュバント設定で投与され得る。HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤、及びプログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤は、アジュバント設定で、又は転移性設定で投与され得る。
【0173】
したがって、本明細書で提供されるHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤及び化学療法剤(タキソール、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))のようなタキソール誘導体等)は、 これらの治療を必要としている患者に対し、外科的処置/癌性組織の切除の間もしくは後に投与されてもよい。それゆえ、本発明は、ネオアジュバント療法、すなわち、必要としている患者/患者群に対し術前に与えられる、本明細書で提供されている療法での治療において有用である。本発明はまた、アジュバント療法(すなわち、術後)においても有用である。
【0174】
本明細書で使用される化学療法剤は、好ましくは、タキサン(用語「タキソール」は本明細書において「タキサン」と互換的に用いられる)、又はドセタキセル(タキソテル(登録商標))もしくはパクリタキセル等のタキサン誘導体(タキソール誘導体)である。ドセタキセル(タキソテル(登録商標))の使用は、本明細書において特に好ましい。
【0175】
(追加の)化学療法剤(単数又は複数)は、一又は複数の、以下の例示的で非限定的な薬物もしくは薬剤であってもよい:
シスプラチン、ビノレルビン、カルボプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、ドセタキセル、ベバシズマブ、ペメトレキセド、エトポシド、イリノテカン、イホスファミド(Ifosfamid)、トポテカン、
血管標的剤(例えば、コンブレタスタチンホスフェート、又はN-アセチルコルチノール-O-ホスフェート)を含む、(例えば、ベバシズマブ/アバスチン又はスーテント(リンゴ酸スニチニブ-SU-11248)等の)VEGFブロッカー(単数又は複数)、リノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、アンジオスタチン、ラゾキサン(razoxin)、サリドマイドのような抗血管新生剤;
抗エストロゲン(例えば、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン)、プロゲストーゲン(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、エキセメスタン)、抗プロゲストーゲン、抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロン)、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト(例えば、酢酸ゴセレリン、ロイプロリド(luprolide))、テストステロン5α-ジヒドロリダクターゼの阻害剤(例えば、フィナステリド)、抗侵襲剤(例えば、マリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤、及びウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベータ受容体機能の阻害剤)、並びに増殖因子機能の阻害剤のような細胞増殖抑制剤(単数又は複数)(これらの増殖因子には、例えば、血小板由来増殖因子及び肝細胞増殖因子が、これらの阻害剤には増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体、チロシンキナーゼ阻害剤及びセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤が含まれる);
生物学的応答調節物質(例えば、インターフェロン);代謝拮抗剤(単数又は複数)(例えば、ゲムシタビン);抗ホルモン化合物(単数又は複数)、例えば、抗エストロゲン(単数又は複数);抗体(例えば、エドレコロマブ);アジュバント(抗)ホルモン療法(単数又は複数)(すなわち、タモキシフェンのようなアジュバント(抗)ホルモン剤(単数又は複数)を用いる療法);(アンチセンス療法等の)遺伝子療法のアプローチ;及び/又は免疫療法のアプローチ。
【0176】
化学療法はまた、(更に)、腫瘍内科学において使用されるような、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤(単数又は複数)、RAF阻害剤(単数又は複数)、RAS阻害剤(単数又は複数)、二重チロシンキナーゼ阻害剤(単数又は複数)、タキソール、タキサン(単数又は複数)(パクリタキセル又はドセタキセル等)、ドキソルビシン又はエピルビシン等のアントラサイクリン(単数又は複数)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストロゾールもしくはレトロゾール)及び/又はビノレルビン等の、一又は複数の抗増殖/抗悪性腫瘍薬とそれらの組み合わせの使用を含むことができ;シクロホスファミド、メトトレキサート又はフルオロウラシル(5-FUとしても知られている)は、このような併用療法において個別に、或いはこれら三種の薬物を含む併用療法(「CMF療法」)の形態で、本明細書で提供されている他のいずれの追加の療法と任意選択的に組み合わせて使用することができる。本発明の併用療法で使用するための化学療法剤の特定の例は、ペメトレキセド、ラルチトレキセド、エトポシド、ビノレルビン、パクリタキセル、ドセタキセル、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、ゲムシタビン、イリノテカン(CPT-1 1)、5-フルオロウラシル(5-FU(カペシタビンを含む))、ドキソルビシン、シクロホスファミド、テモゾロミド、ヒドロキシウレア、(iii)腫瘍内科学において使用されるような抗増殖/抗悪性腫瘍薬とそれらの組み合わせ、例えば、代謝拮抗剤(メトトレキサートのような抗葉酸、5-フルオロウラシルのようなフルオロピリミジン、プリン及びアデノシンの同族体、シトシンアラビノシド);抗腫瘍抗生剤(例えば、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン及びイダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシン、ミトラマイシン等のアントラサイクリン);白金誘導体(例えば、シスプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例えば、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニトロソ尿素、チオテパ);抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン等のビンカアルカロイド、及びタキソール、タキソテール等のタキソイド);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド及びテニポシド等のエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテンカン、並びにイリノテカン);また、酵素(例えば、アスパラギナーゼ);及びチミジル酸合成酵素阻害剤(例えば、ラルチトレキセド);並びに更なる種類の化学療法剤である。
【0177】
本発明に従って使用するための阻害剤/モジュレーター/化学療法剤は本明細書に記載されており、概して、既知の及び/又は市販の阻害剤/モジュレーター/化学療法剤を指す。しかし、まだ未作製の阻害剤、又は阻害活性が未試験の既知の化合物の使用も、本発明の文脈において想定される。
【0178】
更なる態様において、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを組み合わせるPD-L1阻害剤併用療法に対する患者にとっての必要性を決定するために、本発明は、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を検出することができる核酸(単数又は複数)又は抗体(単数又は複数)の使用に関する。前記用語のそれぞれの説明は上記でなされており、ここで準用される。
【0179】
核酸(例えば、オリゴヌクレオチド(単数又は複数)は、好ましくは、約15から100ヌクレオチドの長さである。当業者は、その一般的な知識及び本明細書で提供された教示に基づき、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を検出することができるオリゴ(又はポリ)ヌクレオチドを同定及び/もしくは調製することが容易な立場にある。特に、該核酸(単数又は複数)(例えば、オリゴ(又はポリ)ヌクレオチド)は、本明細書に記載の方法、例えば発現量の測定、においてプローブとして使用され得る。当業者は、例えば、類似プローブの同定に有用なコンピュータープログラムが本明細書で使用され得ることを理解するであろう。例えば、エストロゲン受容体をコードする核酸(又は、該核酸の一部)(例えば、配列番号38)、PD-L1をコードする核酸(又は、該核酸の一部)(例えば、配列番号42)及び、任意選択的に、IFNγをコードする核酸(又は、該核酸の一部)(例えば、配列番号44)が、ER、PD-L1、及びIFNγの発現量をそれぞれ検出するための特定のプローブを同定するためにこの文脈において使用され得る。ER、PD-L1、及びIFNγをコードする例示的核酸配列は、対応するデータべース、例えば、NCBIデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez)で入手可能である。
【0180】
ER、PD-L1、及びIFNγの発現量を検出/決定/評価するための手段を任意選択的に更に含む診断用組成物である組成物が、本明細書において更に提供される。この検出手段は、例えば、上記のヌクレオチド及び/又は抗体である。したがって、本発明は、PD-L1阻害剤併用療法を必要としている患者を決定するための診断用組成物の調製のための、このような手段(例えば、ヌクレオチド及び/又は抗体)に関する。
【0181】
代替的態様において、本発明は、PD-L1阻害剤併用療法を必要としている患者の決定における使用のための、このような検出手段(例えば、上記の核酸及び/又は抗体、及び/又は本発明に従って使用されるキットとの関連で下記に記載の「結合分子」)に関する。好ましくは、本発明は、PD-L1阻害剤併用療法を必要としている患者の決定における使用のための抗体(単数又は複数)に関する。
【0182】
更に、本発明はまた、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を検出できる核酸(単数)又は抗体(単数)を含む、本明細書で提供する方法を実行するために有用なキットに関する。また、本明細書で提供する方法を実行するための本明細書に記載のキットの使用も、ここで想定されている。本明細書に記載の方法及び用途を実行するために有用な前記キットは、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を決定できるオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含み得る。例えば、前記キットは、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を特異的に測定するのに必要な化合物(単数又は複数)を含み得る。更に、本発明は、本発明の方法又は用途の実行のためのキットの調製のために、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を特異的に測定するのに必要な化合物(単数又は複数)の使用に関する。本発明の教示に基づき、当業者は、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を特異的に測定するのにどの化合物(単数又は複数)が必要であるか知っている。例えば、そのような化合物(単数又は複数)は、「結合分子(単数又は複数)」であり得る。特に、そのような化合物(単数又は複数)は、ER遺伝子/コード配列、PD-L1遺伝子/コード配列、及び、任意選択的にIFNγ/コード配列の(遺伝子)生成物に特異的な、(ヌクレオチド)プローブ(単数又は複数)、プライマー(単数又は複数)(対(単数又は複数))、抗体(単数又は複数)、及び/又はアプタマー(単数又は複数)であり得る。本発明の(関連で調製される)キットは診断用キットであり得る。
【0183】
本発明の(関連で調製される)キット、又は本発明の方法及び用途は、取扱説明書(単数もしくは複数)を更に含むか、或いは備えている。例えば、前記取扱説明書(単数又は複数)は、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの(基準/コントロール)発現量の決定(方法)、又はPD-L1阻害剤併用療法に対する患者にとっての必要性の決定(方法)において当業者の手引きとなるであろう。前記取扱説明書(単数もしくは複数)は、本明細書で提供されている方法もしくは用途を使用又は適用するための手引きを特に含み得る。本発明の(関連で調製される)キットは、本発明の方法及び用途を実行するために適切な/必要な物質/化学薬品及び/又は器具を更に含み得る。このような物質/化学薬品及び/又は器具は、例えば、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を特異的に測定するために必要な化合物(単数もしくは複数)の安定化及び/又は保存のための溶剤、希釈剤及び/又は緩衝剤である。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「含む」(「comprising」及び「including」)又はその文法上の変化形は、述べられた特徴、整数、工程又は構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、一又は複数の特徴、整数、工程、構成要素もしくはそれらの群の追加を排除するものではない。この用語は、用語「からなる」(「consisting of」)及び「から本質的になる」(「consisting essentially of」)を包含する。したがって、用語「含む」(「comprising」/「including」)/「有する」(「having」)は、更なる構成要素(又は機能、整数、工程等)が存在し得ることを意味する。
【0185】
用語「からなる」は、更なる構成要素(又は機能、整数、工程等)が存在し得ないことを意味する。
【0186】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語又はその文法上の変化形は、述べられた特徴、整数、工程又は構成要素を特定するものとして解釈されるべきであるが、追加の特徴、整数、工程、構成要素又はそれらの群が、特許請求されている組成物、装置又は方法の基本的且つ新規の特徴を実質的に変更しない場合に限り、一又は複数の特徴、整数、工程、構成要素もしくはそれらの群の追加を排除するものではない。したがって、用語「からなる」は、特定の更なる構成要素(又は特徴、整数、工程等)、つまり、組成物、装置又は方法の本質的な特性に実質的に影響を与えないものは存在し得ることを意味する。換言すると、用語「から本質的になる」(本明細書では用語「を実質的に含む」(「comprising substantially」と互換的に使用される)は、他の構成要素の存在によって装置又は方法の本質的な特性が実質的に影響されない限り、組成物、装置又は方法における必須の構成要素(又は特徴、整数、工程等)に加えた、他の構成要素の存在を許容する。
【0187】
用語「方法」は、化学、生物学、及び生物物理学の技術分野の当業者に既知の方法、手段、技術及び手順であるか、或いは既知の方法、手段、技術及び手順から彼らによって容易に開発される方法、手段、技術及び手順を含むがこれらに限定さない、所与の課題を達成するための方法、手段、技術及び手順を意味する。
【0188】
本明細書で使用される場合、用語「単離された」は、組成物がそのインビボ位置(例えば、水生生物又はコケ)から取り出されていることを表す。本発明の単離された組成物は、好ましくは、それらのインビボ位置に存在する他の物質(例えば、抗接着効果を含まない他のタンパク質)から実質的に遊離している(すなわち、精製されているか、又は半精製されている)。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、±10%を指す。
【0190】
本発明はまた、以下の項目にも関する:
1.がん患者のPD-L1阻害剤併用療法に対する必要性を決定する方法であって、
(i)HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が該患者のために計画されているか、又は(ii)該患者がHER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けており、
a)前記患者由来の試料中のエストロゲン受容体(ER)とプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量をインビトロで測定する工程と、
b)工程(a)で、ER非発現か又は低量発現であること、且つプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量がコントロールと比べ増加していることが測定される場合、患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定する工程とを含む、方法。
2.HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療が計画されているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現であること、コントロールに比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、化学療法剤及びプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法。
3.HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを含む治療を受けているがん患者のがんを治療する方法であって、がん患者のがんが、ER非発現か又は低量発現であること、コントロールに比べ増加したプログラム死リガンド1(PD-L1)の発現量を有することが決定されるがん患者を選定することと、プログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤の有効量を前記患者に投与することとを含む方法。
4.HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターとプログラム死リガンド1(PD-L1)阻害剤とを含む、がんの治療における使用のための医薬組成物であって、それにより前記がんが、ER非発現か又は低量発現であること、且つインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量がコントロールと比べ増加したインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量を有することが決定される、組成物。
5.化学療法剤を更に含む、項目4のがんの治療における使用のための医薬組成物。
6.前記患者由来の試料中のインターフェロンガンマ(IFNγ)の発現量をインビトロで測定することと、コントロールと比べ低下したインターフェロンガンマの発現量が測定される場合に患者はPD-L1阻害剤併用療法を必要としていると決定することとを更に含む、項目1から3の何れか一項に記載の方法。
7.ER発現量がER(-)である、項目1、2、3及び6の何れか一項に記載の方法;又は項目4及び5に記載の医薬組成物。
8.前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターがHER2抗体ハーセプチン/トラスツズマブである、項目1、2、3、6及び7の何れか一項に記載の方法;又は項目4、5及び7の何れか一項に記載の医薬組成物。
9.前記化学療法剤が、タキソールもしくはタキソール誘導体である、項目1、2、3、6、7及び8の何れか一項に記載の方法;又は項目5、7及び8の何れか一項に記載の医薬組成物。
10.前記プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤が、PD-L1に特異的に結合する抗体(抗PD-L1抗体)である、項目1、2、3、6、7及び8から9の何れか一項に記載の方法;又は項目4、5及び7から9の何れか一項に記載の医薬組成物。
11.前記がんが固形がんである、項目1、2、3及び6から10の何れか一項に記載の方法;又は項目4、5及び7から10の何れか一項に記載の医薬組成物。
12.前記固形がんが乳がん又は胃がんである、項目11に記載の方法;又は項目11に記載の医薬組成物。
13.PD-L1の発現量がmRNA発現量である、項目1、2、3及び6から12の何れか一項に記載の方法;又は項目4、5及び7から12の何れか一項に記載の医薬組成物。
14.HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーターと化学療法剤とを組み合わせるPD-L1阻害剤併用療法に対する患者にとっての必要性を決定するための、ER、PD-L1、及び、任意選択的にIFNγの発現量を検出することができる核酸又は抗体の使用。
15.前記HER2/neu(ErbB2)シグナル伝達経路のモジュレーター、前記化学療法剤、及び前記プログラム死リガンド1(PD-L1)の阻害剤がネオアジュバント設定で投与される、項目1、2、3及び6から14の何れか一項に記載の方法;又は項目4、5及び7から14の何れか一項に記載の医薬組成物。
【0191】
本発明は、以下の非限定的な図面及び実施例を参照して更に記載されている。特に断らない限り、組換え遺伝子技術の確立された方法は、例えば、その全内容が本明細書に参照により援用される、Sambrook, Russell 「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001)に記載の通りに使用された。
【図面の簡単な説明】
【0192】
図は以下を示す:
図1図1は、HER2タンパク質構造の模式図、及びその細胞外ドメインのドメインI-IVの各アミノ酸配列を提供する。
図2図2A及び2Bは、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V)(図2A)ドメイン及び可変重鎖(V)(図2B)ドメイン(配列番号は、それぞれ5と6);変異体574/ペルツズマブのVドメイン及びVドメイン(配列番号は、それぞれ7と8);並びにヒトVコンセンサスフレームワーク及びVコンセンサスフレームワーク(ヒトκ1、カッパ軽鎖サブグループI;ヒトIII、重鎖サブグループIII)(配列番号は、それぞれ9と10)のアミノ酸配列の配列比較を記述する。アステリスクは、ペルツズマムとマウスモノクローナル抗体2C4間の、又はペルツズマムとヒトフレーワーク間の可変ドメインの差異を示す。括弧内は、相補性決定領域(CDR)である。
図3図3A及び3Bは、ペルツズマムの軽鎖(図3A)及び重鎖(図3B)のアミノ酸配列を示す。太字はCDRである。計算された分子量は、軽鎖が2352622ダルトン、及び重鎖が4921656ダルトン(システインは還元状態)である。炭化水素部分は、重鎖のAsn299に結合される。
図4図4A及び4Bは、それぞれ、トラスツズマブの軽鎖(図4A)及び重鎖(図4B)のアミノ酸配列を示す。矢印は、可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインの境界線である。
図5図5A及び5Bは、それぞれ、変異体ペルツズマムの軽鎖配列(図5A)及び変異体ペルツズマムの重鎖配列(図5B)を示す。
図6図6A及び6B:遺伝子CD274に関する既知のmRNA転写産物および関連するAFFYMETRIXプローブセット標的領域の位置。エキソンは灰色太字の長方形で示され、接合領域は細い水平線で示される。mRNA配列に対してマッピングされた配列を持つプローブセットは、黒い太字の長方形で示される。提供される座標は、染色体9のゲノム座標である。
図7図7A及び7B:遺伝子IFNGに関する既知のmRNA転写産物及び関連するAFFYMETRIXプローブセット標的領域の位置。エキソンは灰色太字の長方形で示され、接合領域は細い水平線で示される。mRNA配列に対してマッピングされた配列を持つプローブセットは、黒い太字の長方形で示される。提供される座標は、染色体12のゲノム座標である。
図8】ER-およびER+集団のサンプルにおける遺伝子IFNGおよびCD274の発現の分布。シンボルタイプは最終的なpCR状態に対応する(塗りつぶしあり:pCR達成、塗りつぶしなし:pCR未達成)。
図9図9A:ER-応答者(pCR=YES)および非応答者(pCR=NO)の遺伝子CD274の発現のボックスプロット。右側には、両方のカテゴリの発現ヒストグラムが表示される。図9B:t検定統計量の分布(差のないH0仮説)。垂直のマークは、関連するサンプルで見つかった実際の値を示す。影付きの領域の面積はアルファレベルに対応している。
図10図10A:ER-応答者(pCR=YES)および非応答者(pCR=NO)の遺伝子IFNGの発現のボックスプロット。右側には、両方のカテゴリの発現ヒストグラムが表示される。図10B:t検定統計量の分布(差のないH0仮説)。垂直のマークは、関連するサンプルで見つかった実際の値を示す。影付きの領域の面積はアルファレベルに対応している。
図11図11A:ER+応答者(pCR=YES)および非応答者(pCR=NO)の遺伝子CD274の発現のボックスプロット。右側には、両方のカテゴリの発現ヒストグラムが表示される。図11B:t検定統計量の分布(差のないH0仮説)。垂直のマークは、関連するサンプルで見つかった実際の値を示す。影付きの領域の面積はアルファレベルに対応している。
図12図12A:ER+応答者(pCR=YES)および非応答者(pCR=NO)の遺伝子IFNGの発現のボックスプロット。右側には、両方のカテゴリの発現ヒストグラムが表示される。図12B:t検定統計量の分布(差のないH0仮説)。垂直のマークは、関連するサンプルで見つかった実際の値を示す。影付きの領域の面積はアルファレベルに対応している。
図13】ER-集団の最終ロジスティック回帰モデルの受信者動作特性。正のレベルは、正の応答状態と見なされる(pCR=YES)。
図14】ER-集団の最終ロジスティック回帰モデルのリフト曲線。正のレベルは、正の応答ステータスと見なされる(pCR=YES)。Y軸は、全体のその応答レベルの割合と比較した、選択された応答レベル(上の曲線がpCR=YESに対応する)における集団の部分の豊富さの比率を表示する。
図15】ER-集団の予測される臨床反応状態の例。患者の年齢、がんの種類、pNの状態、および関連する両方の遺伝子の発現によって制御される、予測される反応のプロファイルが示される。実際の予測pCR確率(0.443に等しい)は、中央値付近の両方の遺伝子の発現を有する約60才のN0 LABC患者に対して与えられる。
図16】ER+集団の最終ロジスティック回帰モデルの受信者動作特性。正のレベルは、正の応答状態と見なされる(pCR=YES)。
図17】ER-患者の年齢の分布。
図18】ER+患者の年齢の分布。
図19】ER-患者の臨床応答を予測するIFNGおよびCD274遺伝子の発現に関するディシジョンツリービュー。pCRの説明に必要な最初の2つの分割は、IFNGとCD274に対するものである。
【実施例
【0193】
実施例は発明を例示する。
【0194】
実施例1:HER2標的療法と化学療法とを受けているがん患者は、ER非発現か又は低量発現で(ER陰性)、且つPD-L1発現量が増加する場合、PD-L1阻害剤併用療法の恩恵を受ける。
【0195】
遺伝子発現の評価は、R Bioconductor パッケージ「affy」、R バージョン2.15.0を用いて実施された。すべての探索的分析と予測モデルは、SAS JMPバージョン10.0を使用して作成された。
【0196】
48 HER2+、ER+及び39 HER2+、ER-乳がん生検試料は、NeoSphere試験から得た。これらの試料は、患者から診断時に採取され、その後ドセタキセルとトラスツズマブでネオアジュバント設定で処理された。ベースラインでの主な臨床的共変量及び関係する集団での臨床応答(手術で評価されるような)の分布は、次の通りである。
【0197】
ER陰性試料:
患者の年齢(図17参照)
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
ER陽性試料:
患者の年齢(図18参照)
【0204】
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
遺伝子発現プロファイリング
腫瘍生検試料は、AFFYMETRIX HG-U133Plus2全ヒトゲノムマイクロアレイプラットフォームでの遺伝子発現のためにプロファイリングされた。RocheのHighPure RNA抽出、NuGenの増幅、並びに標準的なAFFYMETRIXのハイブリダイゼーション及びスキャニングの手順が使用された。すべてのアレイスキャンは、標準的なAFFYMETRIX QCに合格した。
【0211】
ロバストマルチアレイアルゴリズム(RMA)が、生信号の前処理のために使用された(Irizarry et al, 2003. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12925520)。以下の報告の通り、目的の遺伝子のために利用可能なすべてのプローブセットを取得した。CD274遺伝子について、いくつかのプローブセットが該遺伝子を表すのに利用可能であった場合、(所定のプローブセットの発現の算術平均として定義される)平均発現の最高値を有するプローブセットを該遺伝子を表すために選択した:
【0212】
CD274(PDL1)
PDL1用に選択された、223834_at
227458_at
選択されたプローブセットは、遺伝子の最後のエクソン/3’UTRに対応し、既知のRefSEq mRNAをすべて捕捉する(図6参照)。
【0213】
IFNG
210354_at
本プローブセットもまた、遺伝子の最後のエクソン/3’UTRを表し、既知のRefSEq mRNAをすべて捕捉する(図7参照)。
【0214】
図8は、ER-とER-集団両方の試料における上記遺伝子の発現の同時分布を示す。記号の種類は最終pCR状態(塗りつぶしあり:pCR達成、塗りつぶしなし-pCR未達成)に対応している。
【0215】
ER及びpCR層でのCD274とIFNG発現の分布についての更なる詳細は、付録Iに見出される。
【0216】
各ER部分母集団について、選択された遺伝子の発現と、患者の年齢、がんの種類及びリンパ節状態に合わせて調整された臨床応答との関係を示すロジスティック回帰モデルを構築した。
応答~患者年齢+がんの種類+pN+CD274+IFNG
【0217】
1.ER-集団
モデル出力の要約を以下に示す。オッズ比(OR)は、バイオマーカー値の単位変化当たりで示される。発現値はlog2スケールで示されているため、一単位変化は2倍の過剰発現に相当する。詳細は付録を参照のこと。
【0218】
【0219】
特定の患者の治療に対する応答可能性予測の最終モデルは、CD274とIFNGの発現を含み、以下のようである:
p(pCR)=-3.737+1.607*CD274-1.069*IFNG
【0220】
2.ER+集団
モデル出力の要約を以下に示す。オッズ比(OR)は、バイオマーカー値の単位変化当たりで示される。発現値はlog2スケールで示されているため、一単位変化は2倍の過剰発現に相当する。詳細は付録を参照のこと。
【0221】
【0222】
PDL1発現の役割は、ネオアジュバント設定でトラスツズマブと化学療法との併用療法を受けたHER2+乳がん患者のER-部分母集団において明らかである。すなわち、診断時のPDL1過剰発現は、ネオアジュバント療法への低い応答率(つまり、トラスツズマブと化学療法との併用療法への低い応答率)に対応する。これは患者の年齢、がんの種類、又はリンパ節状態に関係なく当てはまる。二つのバイオマーカー、PDL1とINFGの何れの遺伝子発現のベースライン評価も、それぞれ、患者がPDL-1標的療法をトラスツズマブと化学療法に追加された場合に、より大きな恩恵を受ける可能性があるかどうかの識別を可能にする。
【0223】
以下は、本発明に従いPD-L1阻害剤併用療法を必要としている患者を決定することを可能にするカットオフ値に関する。
【0224】
遺伝子発現解析でのIFNGの発現に関する結果が4.8以上である場合、併用療法(HER2標的薬とPDL1標的薬)は推奨されず、更なるPDL1評価も必要ないだろう。遺伝子発現解析でのIFNGに関する結果が4.8未満の場合、PDL-1の評価も並行して行う必要がある。次いで、PDL-1遺伝子発現解析の結果が5.3以上であれば、併用療法(HER2標的薬とPDL1標的薬)が推奨される(図19参照)。
【0225】
【0226】
【0227】
本発明は、以下のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列に関する:
【0228】
本明細書で提供される配列は、特に、NCBIデータベースで入手可能で、また、国際公開第2010/077634号に開示されており、www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=geneで利用可能であり;これらの配列は、注釈がつけられ変更された配列にも関する。本発明はまた、本明細書で提供される相同配列と、短い配列の変異体が使用される技術及び方法を提供する。
【0229】
配列番号1-21は、本発明に従って使用される抗PD-L1抗体を定義する。配列番号1-21は配列表に示される。
【0230】
配列番号22から37は、HER2タンパク質のドメインI-IVのアミノ酸配列の配列(配列番号22-25、図1も参照のこと)、及び抗HER2抗体の配列を示す;(配列番号26から37;図2-5も参照のこと)。
【0231】
配列番号26:
図2に示した通り、マウスモノクローナル抗体2C4の可変軽鎖(V)(図2A)ドメインのアミノ酸配列(それぞれ配列番号5及び6)。
【0232】
配列番号27:
図2に示した通り、マウスモノクローナル抗体2C4の可変重鎖(V)(図2B)ドメインのアミノ酸配列。
【0233】
配列番号28:
図2に示した通り、変異体574/ペルツズマブの可変軽鎖(V)(図2A)ドメインのアミノ酸配列。
【0234】
配列番号29:
図2に示した通り、変異体574/ペルツズマブの可変重鎖(V)(図2B)ドメインのアミノ酸配列。
【0235】
配列番号30:
図2に示した通り、ヒトV コンセンサスフレームワーク(hum κ1、カッパ軽鎖サブグループI;humIII、重鎖サブグループIII)。
【0236】
配列番号31:
図2に示した通り、ヒトVコンセンサスフレームワーク(hum κ1、カッパ軽鎖サブグループI;humIII、重鎖サブグループIII)。
【0237】
配列番号32:
図3Aに示した通り、ペルツズマム軽鎖のアミノ酸配列。
【0238】
配列番号33:
図3Bに示した通り、ペルツズマム重鎖のアミノ酸配列。
【0239】
配列番号34:
図4Aに示した通り、トラスツズマブ軽鎖ドメインのアミノ酸配列。矢印は、可変軽鎖ドメインの境界線である。
【0240】
配列番号35:
図4Bに示した通り、トラスツズマブ重鎖のアミノ酸配列。矢印は、可変重鎖ドメインの境界線である。
【0241】
配列番号36:
可変ペルツズマム軽鎖配列のアミノ酸配列(図5A)。
【0242】
配列番号37:
可変ペルツズマム重鎖配列のアミノ酸配列(図5B)。
【0243】
配列番号38
ホモサピエンスプロゲステロン受容体(PR)をコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NC_000011.9
>gi|224589802:c101000544-100900355 Homo sapiens chromosome 11, GRCh37.p10 Primary Assembly
【0244】
配列番号39:
ホモサピエンスプロゲステロン受容体(PR)のアミノ酸配列
PRGR_HUMAN Length: 933 December 07, 2012 15:10 Type: P Check: 6067 ..
【0245】
配列番号40:
ホモサピエンスエストロゲン受容体(ER)をコードするヌクレオチド配列
(NM_000125.3)
【0246】
配列番号41:
ホモサピエンスエストロゲン受容体(ER)をコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NC_000006.11
>gi|224589818:152011631-152424409 Homo sapiens chromosome 6, GRCh37.p10 Primary Assembly
【0247】
配列番号42:
ホモサピエンスエストロゲン受容体(ER)のアミノ酸配列
>ENST00000206249_6


配列番号43:
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)をコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NC_000009.11

>gi|224589821:5450503-5470567 Homo sapiens chromosome 9, GRCh37.p10 Primary Assembly
【0248】
配列番号44
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)(CD274)、転写変異体1、mRNAをコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NM_014143.3

>gi|292658763|ref|NM_014143.3| Homo sapiens CD274 molecule (CD274), transcript variant 1, mRNA
【0249】
配列番号45:
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)(プログラム細胞死1リガンド1アイソフォームa前駆体[ホモ・サピエンス])のアミノ酸配列
NCBI参照配列:NP_054862.1

>gi|7661534|ref|NP_054862.1| programmed cell death 1 ligand 1 isoform a precursor [Homo sapiens]
【0250】
配列番号46:
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)(CD274)、転写変異体2、 mRNAをコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NM_001267706.1
>gi|390979638|ref|NM_001267706.1| Homo sapiens CD274 molecule (CD274), transcript variant 2, mRNA
【0251】
配列番号47:
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)(プログラム細胞死1リガンド1アイソフォームb前駆体[ホモ・サピエンス])のアミノ酸配列
NCBI参照配列:NP_001254635.1

>gi|390979639|ref|NP_001254635.1| programmed cell death 1 ligand 1 isoform b precursor [Homo sapiens]
【0252】
配列番号48:
ホモサピエンスプログラム死リガンド1(PD-L1)(ホモサピエンスCD274分子(CD274)、転写変異体3、ノンコーディングRNA)をコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NR_052005.1

>gi|390979640|ref|NR_052005.1| Homo sapiens CD274 molecule (CD274), transcript variant 3, non-coding RNA
【0253】
配列番号49:
ホモサピエンスインターフェロンガンマをコードするヌクレオチド配列(Homo sapiens chromosome 12, GRCh37.p10 Primary Assembly)
NCBI参照配列:NC_000012.11

>gi|224589803:c68553521-68548550 Homo sapiens chromosome 12, GRCh37.p10 Primary Assembly
【0254】
配列番号50:
ホモサピエンスインターフェロンガンマ、mRNAをコードするヌクレオチド配列
NCBI参照配列:NM_000619.2

>gi|56786137|ref|NM_000619.2| Homo sapiens interferon, gamma (IFNG), mRNA
【0255】
配列番号51:
ホモサピエンスインターフェロンガンマ、インターフェロンガンマ前駆体[ホモ・サピエンス]のアミノ酸配列
NCBI参照配列:NP_000610.2
>gi|56786138|ref|NP_000610.2| interferon gamma precursor [Homo sapiens]
【0256】
本明細書で引用したすべての参考文献は、参照により全文が援用される。ここで本発明を十分に説明したが、本発明は、本発明の精神、範囲又はその如何なる実施態様にも影響を及ぼすことなく、条件、パラメータ等の広範且つ同等の範囲内で実施され得ることを当業者は理解するであろう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【配列表】
0007181854000001.app