(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】スラストチェーン装置
(51)【国際特許分類】
F16H 19/02 20060101AFI20221124BHJP
F16G 13/20 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
F16H19/02 B
F16G13/20
(21)【出願番号】P 2019537270
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(86)【国際出願番号】 FR2018050036
(87)【国際公開番号】W WO2018130769
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-05
(32)【優先日】2017-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518171133
【氏名又は名称】セラピド フランス
【氏名又は名称原語表記】SERAPID - FRANCE
【住所又は居所原語表記】ZI bleu Louis Delaporte,76370 Rousmesnil-Bouteilles,France
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セニュール,イヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥボーヴェ,アレクサンドル
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0008615(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014007458(DE,A1)
【文献】特開平11-79349(JP,A)
【文献】特開2014-66322(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第2251307(DE,A1)
【文献】特開平4-29660(JP,A)
【文献】特開2001-88549(JP,A)
【文献】特表2007-537403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 19/02
F16G 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラスト部(10a)およびハウジング部(10b)を含むオープンスラストチェーン
であるチェーン(10)と、
前記スラストチェーンの
前記スラスト部
(10a)上のスラストチェーンガイド
であるガイド(20)と、
前記スラストチェーンと係合する歯(2)が設けられた駆動スプロケット(1)と、
前記ハウジング部
(10b)の格納空間(9)と、
を備えるスラストチェーン装置であって、
前記格納空間(9)は、前記スラスト部
(10a)と平行であり、前記スラスト部
(10a)の反対側に位置し、
前記駆動スプロケット(1)は、前記スラスト部(10a)側および前記ハウジング部(10b)側において左右対称であるように前記スラストチェーンと係合し、
前記チェーン(10)は、前記スラスト部(10a)と前記ハウジング部(10b)との間に、前記
駆動スプロケット
(1)から離間して配置された接続部(10c)を備え、
前記駆動スプロケット(1)は、前記歯(2)が有する円形のインボリュート面(2a)を介して前記スラストチェーンと接触し、
前記チェーン(10)と噛み合う前記歯(2)は、前記スラスト部
(10a)との間で-10°~10°の範囲の角度を有する作用線を画定し、
前記ガイド(20)は、合成材料から形成された接触面を備
え、
前記ガイド(20)は、前記スラスト部(10a)に対応する第1の直線部と、前記ハウジング部(10b)に対応する第2の直線部と、前記接続部(10c)に対応する湾曲部と、を有し、
前記ガイド(20)には、外方向に向けられた揺動面が設けられ、
前記湾曲部は、凸状であり、
前記湾曲部の一方の端部が前記第1の直線部に滑らかに接続され、他方の端部が前記第2の直線部に滑らかに接続され、
前記湾曲部は、戻り部材(21)を形成し、
前記湾曲部は、一定でない半径を有し、180°にわたって延在し、
前記湾曲部は、前記駆動スプロケットの軸および前記スラスト部の軸を通る平面に関して対称であり、4つの同一の四分円部からなり、
前記四分円部のそれぞれは、前記駆動スプロケット(1)の軸および前記スラスト部(10a)の軸を通る平面に対する45°の平面に関して対称であり、前記スラスト部(10a)の軸と平行であり、
前記四分円部のそれぞれは、前記第1の直線部または前記第2の直線部を延ばす上部直線状領域と、前記駆動スプロケット(1)の軸を通り且つ前記スラスト部(10a)の軸に垂直な平面に配置された下部直線状領域であって、別の前記四分円部の下部直線状領域を延ばす下部直線状領域と、前記上部直線状領域と前記下部直線状領域との間の丸みを帯びた領域と、を有する、
スラストチェーン装置。
【請求項2】
前記接触面は、揺動面または摺動面であることを特徴とする、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動スプロケット(1)は、1つだけ設けられる、
請求項1
または2に記載の装置。
【請求項4】
前記スラスト部(10a)および前記ハウジング部(10b)の少なくとも一方は、前記駆動スプロケット(1)の上方に配置され、
前記接続部(10c)は、前記スプロケット(1)の下方に配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記接続部(10c)は、
前記戻り部材(21)によって案内される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記戻り部材(21)は、略インボリュート曲線状の形状を有する、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記戻り部材
(21)は、固定されている、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記戻り部材
(21の位置は、調整可能である、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項9】
前記
チェーン(10)は、テンショナー(15)を含む、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項10】
前記戻り部材
(21は、圧縮部材を含む、
請求項5または6に記載の装置。
【請求項11】
前記
駆動スプロケット(1)は、軸周りに回転可能に取り付けられた円形インボリュート輪郭を有する5~15個の歯(2)を有し、
前記チェーン(10)は、ロッド(11)を有し、少なくとも1つの前記ロッド(11)が前記
駆動スプロケット(1)と係合し、
前記
駆動スプロケット(1)
の前記歯(2)は、3mm~64mmの範囲のモジュールmを含む
、前記駆動スプロケット(1)の軸方向に直線状の直線歯
である、
請求項1~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記チェーン
(10)は、予め張力が加えられた弾性部材を有する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記作用線は、前記スラスト部
(10a)との間で-2°~2°の範囲の角度を形成する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
前記湾曲部は、同一の半径を有し且つ互いに水平方向に離間して配置されてそれぞれの中心がずらされた2つの円弧部を有し、前記半径は、2つの前記上部直線状領域の間の距離の半分よりも小さい、
請求項
1に記載の装置。
【請求項15】
前記ガイド(20)は、ガイドローラのための揺動面を形成する、
請求項
1または
14に記載の装置。
【請求項16】
前記湾曲部は、互いに接する複数の円弧部を含む、
請求項
1または15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推力によって積荷を移動させるための装置に関し、より詳細には、そのような装置に使用されるトランスミッションアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
長距離にわたって大きな積荷を移動する必要があるが利用可能なスペースが限られている場合、リジッドチェーンと呼ばれるチェーン装置を使用することが知られている。本出願人によって出願された仏国特許発明第2786476号には、リジッドチェーンを使用する関節式積荷リフティングコラムが開示されている。
【0003】
関節ロッドまたはリジッドチェーン装置は、チェーンを移動させて、チェーンの占有スペースが小さい折りたたまれた状態から、高い圧縮負荷に耐えることができる直線的且つ剛性が高い形態の展開状態へチェーンの状態を切り替えるために使用される。
【0004】
リジッドチェーンの折りたたまれた状態は、シリンダ、アーム、またはパンタグラフ式システムのそれらよりも小さいため、長距離移動に適している。
【0005】
リジッドチェーン装置は、例えば、エンタテインメント業界において、装飾要素または風景要素を長距離にわたって迅速に移動するために使用される。また、このタイプの装置は、生産業界において、例えば高質量の製品を大量生産するために使用され得る。
【0006】
チェーンのリンクの数を変更することで、リジッドチェーンの動作範囲を使用環境に適合させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願人によって市場に出された既存の装置は満足のいくものである。しかしながら、本出願人は、より汚染性の高いまたは扱いにくい技術を本技術に差し替えて新しい市場に参入するためには、高速であり、騒音が少なく、メンテンナンスの頻度が低い、長いスラストチェーンを提供する必要があると考えた。
【0008】
本発明は、上述した状況を改善するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、スラストチェーン装置を提供する。該装置は、スラスト部およびハウジング部を含むオープンスラストチェーンと、スラストチェーンのスラスト部上のスラストチェーンガイドと、スラストチェーンと係合する歯が設けられた駆動スプロケットと、ハウジング部の格納空間とを備える。格納空間は、スラスト部と平行であり、スラスト部の反対側に配置される。駆動スプロケットは、スラスト部側およびハウジング部側において左右対称であるようにスラストチェーンと係合する。チェーンは、スラスト部とハウジング部との間に、スプロケットから離間して配置された接続部を備える。駆動スプロケットは、歯が有する円形のインボリュート面を介してスラストチェーンと接触する。チェーンと噛み合う歯は、スラスト部との間で-10°~10°の範囲の角度を有する作用線を画定する。ガイドは、合成材料から形成された接触面を備える。
【0010】
このような装置は、様々な積荷を持ち上げるのに便利である。また、メンテナンスの頻度を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、上述したようなトランスミッションアセンブリによって、チェーンに力を加えることができ、その力は、チェーンの並進運動の方向とより良好に整合する。チェーンの並進運動の方向の力以外の、歯車からチェーンに伝達される力の成分は、わずかである。伝達エネルギー効率は、既知の伝達エネルギー効率よりも大幅に改善され、パフォーマンスが向上する。また、エネルギーを節約することができ、トランスミッションアセンブリおよび設備に加えられる機械的応力も低減される。特に、チェーンを案内する部材への応力が低減される。その結果、他のすべての特性は等しくなり、上記で定義したトランスミッションアセンブリによって、既知の設備よりも作動中の振動、摩耗および騒音が大幅に低減された設備を構築することができる。
【0012】
一実施形態において、接触面は、揺動面である。
【0013】
一実施形態において、接触面は、摺動面である。
【0014】
一実施形態において、駆動スプロケットは、1つだけ設けられる。駆動スプロケットは、歯の列を1列または複数列有することができる。
【0015】
一実施形態において、スラスト部およびハウジング部の少なくとも一方は、スプロケットの上方に配置され、接続部は、スプロケットの下方に配置される。スプロケットの領域における占有スペースは、最小限に抑えられる。垂直方向のアセンブリの場合、スラスト部およびハウジング部は、スプロケットの上方に配置される。斜め方向のアセンブリの場合、スラスト部は、スプロケットの上方に配置され、遊び除去部材が追加されてもよい。
【0016】
一実施形態において、接続部は、自由に動く。接続部は、スプロケットの下方で懸装しているため、接続部の形状は、リンクの長さとリンクの数によって決定される。
【0017】
一実施形態において、接続部は、戻り部材によって案内される。戻り部材は、円弧形状とは異なる輪郭を有する。特定の輪郭によって、特に騒音の観点からパフォーマンスが向上することが試験から判明した。
【0018】
一実施形態において、戻り部材は、略インボリュート曲線状の形状を有する。インボリュート曲線状の形状は、関連する部分の詳細な形状を画定する。
【0019】
一実施形態において、戻り部材は、固定されている。そのため、装置を容易に組み立てることができる。
【0020】
一実施形態において、戻り部材の位置は、調整可能である。最終的な位置への調整は、試運転時に実施することができる。
【0021】
一実施形態において、戻り部材は、テンショナーを含む。
【0022】
一実施形態において、戻り部材は、圧縮部材を含む。
【0023】
一実施形態において、スプロケットは、5~15個の直線歯を有する。この歯の数によって、歯車とチェーンとの間の連続した動きを良好に確保することができる。これにより、1つの歯から別の歯へ移動している間に生じる意図しない動きを防止して、それに関わる振動および騒音を制限することができる。
【0024】
一実施形態において、スプロケットは、3mm~64mmの範囲のモジュールを含む直線歯を有する。
【0025】
一実施形態において、チェーンは、ロッド(bars)によって互いに接合されたリンクを有する。ロッドは、チェーンのリンク上に空転するように取り付けられる。歯車とロッドとの間の回転は、摩擦によって促進される。これにより、トランスミッションアセンブリの使用中に生じる摩耗が低減される。
【0026】
一実施形態において、少なくとも1つのロッドは、実質的に円筒形の本体と、本体の周りに回転自在に配置された少なくとも1つのリングを有し、これにより、チェーンのガイドローラおよび/または駆動ローラが形成される。これらのローラは、摩耗部品として機能し、チェーンを完全に分解することなくメンテナンス作業中に迅速且つ容易に交換することができる。これにより、メンテナンスコストを削減することができる。
【0027】
一実施形態において、スプロケットの回転軸は、作動中、水平方向に向けられる。
【0028】
一実施形態において、スラスト部は、直線状である。
【0029】
一実施形態において、チェーンは、予め張力が加えられた弾性部材を有する。
【0030】
一実施形態において、作用線は、スラスト部との間で-2°~2°の範囲の角度を形成する。
【0031】
一実施形態において、ガイドは、スラスト部に対応する第1の直線部と、ハウジング部に対応する第2の直線部と、接続部に対応する湾曲部とを有する。ガイドには、外方向に向けられた揺動面が設けられる。湾曲部は、凸状であり、湾曲部の一方の端部が第1の直線部に滑らかに接続され、他方の端部が第2の直線部に滑らかに接続される。湾曲部は、戻り部材を形成する。また、湾曲部は、一定でない半径を有し、180°にわたって延在する。
【0032】
一実施形態において、湾曲部は、駆動スプロケットの軸およびスラスト部の軸を通る平面に関して対称であり、4つの同一の四分円部からなる。各四分円部は、駆動スプロケットの軸およびスラスト部の軸を通る平面に対する45°の平面に関して対称であり、スラスト部の軸と平行である。また、各四分円部は、第1の直線部または第2の直線部を延ばす上部直線状領域と、駆動スプロケットの軸を通り且つスラスト部の軸に垂直な平面に配置された下部直線状領域であって、別の四分円部の下部直線状領域を延ばす下部直線状領域と、上部直線状領域と下部直線状領域との間の丸みを帯びた領域とを有する。
【0033】
一実施形態において、湾曲部は、同一の半径を有し且つ互いに水平方向に離間して配置されてそれぞれの中心がずらされた2つの円弧部を有し、それらの半径は、2つの上部直線状領域の間の距離の半分よりも小さい。
【0034】
一実施形態において、ガイドは、ガイドローラのための揺動面を形成する。
【0035】
一実施形態において、湾曲部は、互いに接する複数の円弧部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の他の特徴、詳細および利点を、以下の詳細な説明および添付の図面に示す。
【
図1】本発明の一態様によるリジッドチェーン装置の側面図である。
【
図2】
図1のスプロケットの角度位置を示す詳細図である。
【
図3】
図2の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図4】
図3の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図5】
図4の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図6】本発明の別の態様によるリジッドチェーン装置の側面図である。
【
図7】
図6のスプロケットの角度位置を示す詳細図である。
【
図8】
図7の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図9】
図8の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図10】
図9の角度位置から5°ずらされたスプロケットの詳細図である。
【
図11】本発明の別の態様によるリジッドチェーン装置の側面図である。
【
図12】本発明の一態様によるリジッドチェーンの上面斜視図である。
【
図13】本発明の一態様によるリジッドチェーンの上面斜視図である。
【
図14】本発明の一態様によるリジッドチェーンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付の図面および以下の説明に含まれる要素のほとんどは既知のものである。したがって、それらは、本発明をよりよく理解するためおよびその定義に貢献するために、適宜使用することができる。
【0038】
チェーンと噛み合うスプロケットの輪郭は、互いに噛み合う2つの歯車の輪郭と大きく異なる。チェーンは、スプロケットの歯と接触する円筒状のロッドを有する。ロッドは、スプロケットと接触するように回転自在に取り付けられる。ロッドの直径および連続した2つのロッドの中心間の距離は、スプロケットに影響を与えるチェーンのパラメータである。スプロケットは、特に歯の数、直径、隣接する2つの歯の間の開口部およびスラスト角によって特徴付けられる。仏国特許発明第2780472号には、スプロケットを備えるスラストチェーン駆動装置が開示されている。スプロケットには、歯が設けられた2つのフランジの間に取り付けられた遊転ローラが設けられる。歯は、スプロケット歯あたり1つのローラの割合で設けられる。スラストチェーンの湾曲部は、固定されていない。推力は、チェーンの並進運動の方向から離れる方向に、チェーンの軸に加えられる。
【0039】
本出願人は、噛み合わない下端部を有するスラストチェーンの場合、追加のパラメータがあることを見出した。米国特許出願第2009/0008615号では、チェーンを担持および安定化するために、チェーンの下端部は、リンクから横方向に突出するフォロワベアリングと協働するガイド部に対応する。しかしながら、掘削作業において、他の要素の騒音がスラストチェーンの騒音を大幅に上回るため、特に音は非限定的なパラメータといえる。
【0040】
それに対して、本出願人は、例えば振動や騒音が重要なパラメータとなる住宅街やオフィス街の建造物で使用されるケーブルやベルト等の他の技術を現在使用している市場に、本スラストチェーンを導入したいと考えている。
【0041】
そのため、当該スラストチェーン装置は、オープンスラストチェーンを含む。この場合、「オープン」とは、分離した端部を有するチェーンを意味する。チェーンは、スラスト部と、ハウジング部と、スラスト部とハウジング部との間の接続部とを有する。接続部は、スプロケットから離間して配置される。装置は、スラストチェーンのスラスト部上のスラストチェーンガイドを含む。ガイドは、スラスト部の経路を決定する。スラスト部は、通常垂直に配置され、ガイドは、通常水平すなわち横方向の力を吸収する。装置は、スラストチェーンと係合する歯を有する駆動スプロケットを含む。スプロケットは、複数の歯を含む列を1つまたは複数有する。各列は、同一平面内に配置された歯を備える。装置は、ハウジング部の格納空間を有する。格納空間は、スラスト部と平行であり、スプロケットの回転軸に対してスラスト部の反対側に配置される。
【0042】
駆動スプロケットは、スラスト部側およびハウジング部側において左右対称であるようにスラストチェーンと係合する。スプロケットに伝達されるチェーンのハウジング部の質量によって、スプロケットを駆動するモータが必要とするトルクが低減される。駆動スプロケットは、歯が有する円形のインボリュート面を介してスラストチェーンと接触する。チェーンと噛み合う各歯は、スラスト部との間で-10°~10°の範囲の角度を有する作用線を画定する。ガイドは、合成材料から形成された接触面を備える。
【0043】
好ましくは、作用線は、スラスト部との間で-2°~2°の範囲の角度を形成する。初期の近似値が上記の角度の正弦(sine)によって制限されるため、ガイドに加えられる力は、チェーンの推力に対して3.5%未満である。合成材料から形成された接触面によって、チェーンに対して低摩擦およびわずかな摩耗が保証される。また、接触面は、時間をあけたメンテナンスに対応することができる摩耗レベルに抑えられる。
【0044】
図示するように、歯付きスプロケット1は、軸Xと平行な軸周りに回転可能に取り付けられる。チェーン10が有する円形噛合面100は、軸Zに沿って移動するように取り付けられる。この場合、「軸」という用語は、幾何学的な意味で用いられる。上述した実施形態において、円形噛合面100は、ロッド11の円形輪郭に対応する。軸Xは、駆動シャフト5の主方向に対応する。軸Zは、ロッド11によって担持される円形噛合面100がそれに沿って移動する垂直方向に対応する。
【0045】
図において中心Cn-1、CnおよびCn+1を有する円で示す円形噛合面100は、リングを有さないロッド11の本体またはリングのような中間部材によって直接担持され、これにより、駆動ローラが形成される。
【0046】
スプロケット1の回転軸と円形噛合面100の並進軸とは、互いに直交し、距離dだけ互いに離間して配置される。
【0047】
噛み合い中に、スプロケット1の少なくとも1つの歯2が1つの円形噛合面100と接触する。歯2は直線歯であり、円形噛合面100は軸Xに直交する方向に移動可能であるため、軸Xに沿って延びる線上で接触が起きる。図の紙面において、接触を基準接触点として示すことができる。
【0048】
力学において最も一般的な運動伝達方法は、回転運動を別の回転運動に変換することである。既知の伝達方法は、直線歯を有する第1の歯車と直線歯を有する第2の歯車とが互いに噛み合って一対の平歯車を形成して、第1の回転を第2の回転に変換するステップに関する。本明細書において、上記の単純なタイプの歯車対を用いて別のタイプの歯車対も定義する。また、類似の技術用語を用いてスラストチェーンの歯車対を説明する場合がある。
【0049】
本装置において、アセンブリは、軸X周りの回転運動を軸Zに沿った並進運動に変換する。このように、装置はラック・アンド・ピニオンに部分的に類似するが、円形噛合面100が従来のラックの輪郭と異なる。すなわち、一方の側の歯2と他方の側の円形噛合面100とが噛み合うことで、ラック・アンド・ピニオンと異なる噛合特性が、装置の歯車対に提供される。この場合、ロッド11は、
・ スプロケット1の歯2と接触する円形噛合面100を形成するまたは担持する機能、および
・ 特定リンクにある2つのプレートの間で良好な接続を確保して、チェーンの安定性を確保する機能
という2つの異なる機能を有する。
【0050】
スプロケット1は、チェーン10のスラスト部10aとも呼ばれるここでは垂直な直線部と噛み合う。したがって、噛み合い中のロッド11の動きは、並進運動である。本発明のチェーン10の歯車対と、パワートレインカップリングシステムや自転車の駆動システムのような、湾曲部が歯付きプーリに巻き付く閉じたチェーンを含む従来のシステムとは、並進運動という点で異なる。また、スプロケット1は、チェーン10のハウジング部10bとも呼ばれるここでは垂直な直線部とも噛み合う。ハウジング部10bは、格納空間9内に配置される。
【0051】
すなわち、チェーン10の噛み合いは、ラックの噛み合いや、従来のローラチェーンの噛み合いとは異なる。
【0052】
直線状運動とロッド11の円形の輪郭との組み合わせによって、トランスミッションアセンブリ1の噛み合いには、リジッドチェーン装置に特に適した速度における高い性能レベルが提供される。
【0053】
軸Zは、スプロケット1の接線速度が、円形噛合面100の線速度に等しく沿う接触線である。したがって、接触線とスプロケット1の回転軸との間の距離dは、ラック・アンド・ピニオンと同様に、スプロケット1のピッチ半径と、チェーン10のスラスト部10aのピッチ線における接触線とに相当する。スプロケット1のモジュールmとチェーン10のモジュールmは等しい。スプロケット1のピッチpとチェーン10のピッチpは等しい。スプロケット1のピッチpは、連続する2つの歯の噛合側面部上の類似する2つの点の間におけるスプロケット1のピッチ円で測定される弧の長さとして定義される。ピッチpとモジュールmとの関係は、次式によって示すことができる:p=m*π。
【0054】
噛み合い中に、1つの歯2の輪郭にある噛合側面部と円形噛合面100とが接触する。輪郭をみると、2つの凸面が接触することで、図において接触接線181として示す接線を定義することができる。接触接線181を破線で示す。噛み合い中に、接触点Mは、作用線182として示す理論線に沿って移動する。機械的には、作用線182は、別の部材と噛み合う1つの部材から接触点Mを介して伝達される力の方向を示す。
【0055】
作用線182は、接触接線181に対して実質的に垂直である。嵌合する円形インボリュート輪郭を有する歯をそれぞれ備える2つの歯車を含む従来の歯車対において、接触接線は、中心間の距離、すなわち2つの歯車のそれぞれの中心を結ぶ線の方向において、角度αを形成する。したがって、作用線は、中心間の距離の方向において、角度α±π/2を形成する。角度αは、通常、圧力角と呼ばれる。本明細書においても、「圧力角」という用語を用いる。
【0056】
嵌合する円形インボリュート輪郭を有する歯を備えるラック・アンド・ピニオンにおいて、ラックは、無限半径を有する歯車に相当する。ラックの並進運動の方向に延び且つ無限半径を有する歯車のピッチ円に対応する線は、基準線またはピッチ線と呼ばれる。この場合、作用線は基準線との間で角度αを形成する。次に、接触接線は、基準線との間で角度α±π/2を形成する。角度αは、圧力角とも呼ばれる。
【0057】
ホイール同士の歯車であってもラック・アンド・ピニオンであっても、嵌合する円形インボリュート輪郭を有する歯は、特にレオナルド・ダ・ヴィンチによる最初の干渉伝達システムと比較して、改善された特性を有する。1つ目の特性は、実質的に等速の伝達を提供することである。歯車対の一方の部材の速度が一定である場合、他方の部材の速度も一定となる。2つ目の特性は、噛み合い中の圧力角αが、機械加工公差や接触開始時および終了時の現象に関係なく実質的に一定であることである。3つ目の特性は、2つの凸面の間でスリップが生じることなく転がることで、接触が容易になされることである。したがって、動きの伝達は、十分に連続的且つ均一である。さらに、摩擦による劣化も制限される。
【0058】
多大な力に耐えてラックの脆化を防止するために、通常、円形インボリュート輪郭を有する歯は切断される。すなわち、各歯の半径方向端部は切り取られ、歯の谷部(2つの歯の間)は、その底まで機械加工されない。したがって、歯の半径方向端部は、鋭角ではなく、実質的に平坦または丸みを帯びており、歯の谷部は、端部に実質的に整合する雌型形状を有する。嵌合する円形インボリュート輪郭にこれらを適用することで、2つの嵌合する歯の接触開始時および終了時に生じる特定のスリップ現象および動作干渉現象を制限することができる。これらは、前進フェーズおよび後退フェーズとも呼ばれる。
【0059】
通常、圧力角の値は、規格に基づいて設定される。この値は、例えば、欧州の規格に従うと名目上20°であり、米国の規格に従うと名目上25°である。特定の歯車対、特に古い歯車対の値は、例外的に14.5°である。また、基準値を設定することで、単一のツールを用いてホイールやラックのような歯車部材を製造(機械加工)することができる。すなわち、規格外の圧力角αを有する歯車対を設計する場合、専用の機械加工ツールを設計する必要があり、これは、複雑且つコストがかかる。また、通常、歯車対は、歯の数やモジュール等のような多数のパラメータを相互参照するチャートを用いて設計される。これらのチャートは、基本圧力角αに基づいて作成される。一般に、技術者はそこから逸脱しないよう指導されている。
【0060】
本発明の一実施形態において、スプロケット1の歯2は、円形の噛合輪郭を有するロッドと動作可能に協働する。この場合、前進フェーズや後退フェーズ等における特定のスリップ現象および動作干渉現象を回避することができる。
【0061】
例えば、スプロケット1は、5~15個の歯2を有する。本発明の実施例において、スプロケット1は、9個の歯2を有するホイールである。スプロケット1の形状は、ピッチpのラックと嵌合する円形インボリュート輪郭を有する歯車の形状に類似する。歯2は、先行側面部2aと、後続側面部2bとを有する。先行および後続の概念は、スプロケットとチェーンとの間に加えられる力に関連する。歯2は、実質的に尖っている。距離dは、接触点Mにおける圧力角αが実質的にゼロであるよう調整される。この場合、距離dは、20°または25°の基本圧力角に対応する距離よりも短い。距離dの値は、部材の寸法、特にロッド11の直径およびピッチpの関数として選択される。例えば、ピッチpは、10mm~200mmの範囲にある。モジュールmは、10/πmm~200/πmmの範囲、すなわち約3mm~64mmの範囲にある。
【0062】
以下の表において、左側の列内のピッチp(ミリメートル)および最初の行に示す歯の数の関数として、距離dの値(ミリメートル)の例をいくつか示す。
【0063】
【0064】
提案された値の組み合わせは、本発明の実施形態の一例である。これらの組み合わせは、絶対値がゼロに近い圧力角αに対応する。
図1~
図10に示す実施形態において、円形噛合面100の直径は24mmであり、ガイドローラの直径は60mmであり、ピッチは60mmである。ガイド20の2つの直線部の間の距離の半分は、85.944mmである。
【0065】
したがって、スプロケット1の歯2および嵌合する円形噛合面100を備える図示する歯車対は、実質的にゼロの圧力角αを有する。すなわち、作用線182は、チェーン10のスラスト部10aの並進運動の方向において、実質的にゼロの角度を形成する。作用線182は、軸Zと実質的に平行である。接触接線181は、チェーン10のスラスト部10aの並進運動の方向において、実質的に直角(α±π/2)を形成する。実際、機械加工公差を考慮すると、角度の絶対値は、5°よりも小さい。
【0066】
変形例において、圧力角αの絶対値は、上述した基準値よりも小さいが、0よりも大きい。例えば、圧力角αは、-10°~10°の範囲、または-5°~5°の範囲、または-2°~2°の範囲、または-1°~1°の範囲であり得る。そして、接触接線181は、チェーン10のスラスト部10aの並進運動の方向において、80°~100°の範囲、85°~95°の範囲、88°~92°の範囲、および89°~91°の範囲の角度(α±π/2)をそれぞれ形成する。
【0067】
図示する実施例において、ロッド11によって担持される円形噛合面100の間の空間は、可変である。外側のロッド11を別のロッド11に接続する「基部」は存在しない。噛み合い作動中のスプロケット1の歯2は、自由に動く。
【0068】
スプロケット1の歯2の数が少ない場合、歯2の半径方向端部は、尖るように機械加工される。歯2の半径方向端部は、平坦化されない。スプロケット1の歯2の数が多い場合、歯は平坦化される。これにより、同時接触の数を制限することができ、振動や騒音を低減することができる。さらに、図の上部に示すように、接触点Mn+1が歯2n+1の端部に近づくと、歯2nと後続の円形噛合面100nとの間のペアリングにおいて、新しい接触点Mnが確立され、以降も同様に続く。この新しいペアリング2n/100nによって、接触点Mn+1に高い応力が加わる前に、力が伝達される。
【0069】
図示する実施例において、スプロケット1の歯2の谷部は、円形噛合面100の直径に等しいまたはそれよりも大きい直径の実質的に円形の輪郭を有するように機械加工される。したがって、各円形噛合面100は、機械加工公差に関係なく、下流の歯によって前進される前に、2つの歯2の間の谷部に収容される。
【0070】
ここで説明する実施例において、ロッド11は、チェーン10のリンク12に対して空転するように取り付けられる。これにより、噛み合い中の歯1の噛合面に対する外側のロッド11の回転が促進されて、摩擦と、ロッド11および歯1の摩耗とが低減される。変形例において、ロッド11は、ロッドによって接続された2つのリンク12の一方に固定されて取り付けられる。この場合、また、回転が防止された円形噛合面100に直接接触する場合、噛み合い中にスリップ現象が生じる。いずれの場合においても、チェーン10の製造は容易になる。例えば、リンク12と外側のロッド11は、単一の部材として形成されてもよく、互いを溶接して形成されてもよい。
【0071】
上述した装置によって、歯車対で生じる半径方向の力を大幅に低減することができる。半径方向の力は、主にy方向に向けられる。これにより、移動中のチェーン10をさらに回転させることができ、特に高速で移動しているスプロケット1によってチェーン10に伝達される振動が低減される。したがって、既知の設備と比較して作動中に騒音が生じる回数および騒音レベルが低減される。このような性能は、個人用エレベータや、劇場、音楽ホールおよびオペラ座のような娯楽産業で使用される貨物用エレベータを含む装置への適用に特に適している。また、この性能は、自宅や医療施設において個人の移動を容易にするのにも適している。
【0072】
作動中のチェーン10で生じる半径方向の力が低減されることによって、トランスミッションアセンブリ1を構成する部材に加わる複合応力も低減される。スプロケット1からロッド11に伝達される力は、主にチェーン10の並進運動の方向に向けられる。接線成分は増加するが、半径方向成分はわずかである。したがって、伝達率は100%に近い。そのため、半径方向におけるチェーン10の動きに対抗するガイド部材には、既知のシステムよりも少ない応力が加わる。ブラケットのようなガイド部材は、通常使用される金属よりも低い機械的強度特性を有する材料から形成され得る。例えば、ポリウレタンやポリエチレンのようなプラスチック材料を使用して、作動中の破損のリスクを低く抑えることができる。これにより、原材料を節約することができ、また、金属間の接触を制限することができる。特に、ガタガタ音のような騒音が低減される。
【0073】
以下において、前、後、上、下、左および右という用語を相対的な意味で用いる。図において、左から右に向かう横方向をxとし、前から後ろに向かう深さ方向をyとし、下から上に向かう垂直方向をzとする3次元の座標系を示す。チェーンは実質的に線状の部材であり、2つの端部を識別するためにヘッドおよびテールという用語を用いる。
【0074】
主要動作の原理および特に装置の動きについては、仏国特許発明第2786476号に開示されているため、詳細についてはこれを参照されたい。
【0075】
チェーン10は、互いに平行なスラスト部10aおよびハウジング部10bを有する。スラスト部10aおよびハウジング部10bは、湾曲した接続部10cによって互いに接続される。一方の側でスラスト部10aがスプロケット1の歯2によって担持され、直径方向に反対側でハウジング部10bがスプロケット1の歯2によって担持される。接続部10cは、スプロケット1の下方で180°の曲線を形成する。接続部10cは、スラスト部10aとハウジング部10bとによって担持される。スプロケット1は、接続部10cに対して内側からチェーン10のスラスト部10aと噛み合う。スプロケット1は、接続部10cに対して内側からハウジング部10bと噛み合う。
【0076】
チェーン10は、リンク12を含む。これらのリンク12は、互いに接合されてチェーン10を形成する。本装置において使用されるチェーン10は、運動伝達部材を形成する。以下、リンク12を、カップリングプレートを担持するテールリンク121からヘッドリンク12Nまで、1~Nという数字で示す。nという数字は、リンク12nまたはリンク12nの一部を示す。例えば、参照符号121nは、リンク12nのプレート121nの1つを示す。本明細書において、リンクという用語は、チェーン10に沿って同様に再現される基本的な機械的パターンであることに留意されたい。1<n<Nとすると、リンク12nの一方の側がリンク12n-1に接続され、他方の側がリンク12n+1に接続される。
【0077】
上昇中、すなわちスプロケット1が時計回りに回転されている間、リンク12nは、順に、チェーン10のハウジング部10b、接続部10cおよびスラスト部10aに属し、下降中はその逆となる。
【0078】
また、本装置は、固定ガイド20を有する。ガイド20は、以下で説明するガイドローラ171のための揺動面を形成する。ガイド20は、ポリウレタンやポリアミドのような摩耗の少ない合成材料から形成される揺動面を構成する部分であり得る。ガイド20は、スラスト部10aに対応する第1の直線部と、ハウジング部10bに対応する第2の直線部と、接続部10cに対応する湾曲部とを有する。ガイド20には、外方向に向けられた揺動面が設けられる。湾曲部は、凸状であり、湾曲部の一方の端部が第1の直線部に滑らかにすなわち特定の分岐点なしで接続され、他方の端部が第2の直線部に滑らかに接続される。湾曲部は、戻り部材21を形成する。また、
図1~
図5に示す実施形態において、湾曲部は、一定の半径を有する半円である。
【0079】
性能をさらに向上させるために、本出願人は、ガイド20の湾曲部の輪郭に対して試験を実施した。チェーン10およびスプロケット1の機械加工公差は非常に厳しく、摩耗および騒音を低減させる。騒音の源を特定するために、ハウジング部10b側の噛み合いを確認した。水平面XYに対して40°の位置に歯が1つあり、0°の位置に後続の歯がある9つの歯が付いたスプロケットの場合、先行側面部2aまたは後続の歯の上流の側面部との接触があり、後続または下流の側面部2bとの接触がない。この状況は、正常であるとみなされる。
図3、
図4および
図5がそれぞれ示す45°、50°および55°の位置では、後続の歯の先行側面部2aとの接触が失われ、下流または後続側面部2bとの接触が再確立される。この接触の再確立時に、騒音が生じる。
【0080】
その一方で、接触面の連続性も確認した。
図6~
図10に示す実施形態において、湾曲部は、180°にわたって延在しながら一定でない半径を有する。湾曲部は、平面XZに関して対称である。湾曲部は、2つの同一の四分円部からなる。これは、製造を容易にする。各四分円部は、平面XZに対する45°の平面に関して対称であり、軸Xと平行である。各四分円部は、第1の直線部または第2の直線部を延ばす上部直線状領域と、平面XYに位置する下部直線状領域であって、別の四分円部の下部直線状領域を延ばす下部直線状領域と、上部直線状領域と下部直線状領域との間の丸みを帯びた領域とを有する。
【0081】
湾曲部は、同一の半径を有し且つ互いに水平方向に離間して配置されてそれぞれの中心がずらされた2つの円弧部を有することができる。それらの半径は、
図1~
図5に示す実施形態における半径よりも小さくてもよい。半径は、2つの上部直線状領域の間の距離の半分よりも小さくてもよい。2つの円弧部は、より小さい下部直線状領域によって互いに接続される。
【0082】
丸みを帯びた領域の半径は、第1の直線部と第2の直線部との間の距離の半分よりも大きく、その中心は、上部直線状領域に垂直な線すなわち上部直線状領域の端部における割線と、下部直線状領域に垂直な線すなわち下部直線状領域の端部における割線との交点に位置するとみなされる。比較の便宜上、ガイド20を全体として参照すると、理論上の中心は、下部直線状領域から、第1の直線部と第2の直線部との間の距離の半分に等しい距離だけ離間して、ガイド20の対称面XZに位置する。湾曲部は、例えば四分円部ごとに略インボリュート曲線状の形状を有する。丸みを帯びた領域は、接続部の下部に配置された実際のスプロケット1と同一の仮想スプロケット周りに幾何学的に構築される。
【0083】
スプロケット1の角度が40°、45°、50°および55°の場合のチェーン10の位置を
図7~
図10に示す。これらの角度において、後続する歯の先行側面部2aとの接触があり、後続側面部2bとの接触がない。したがって、少なくとも15°の可動域にわたって、接触は一定である。実際、40°の角度にわたって先行側面部との接触は一定である。より一般的には、360°/歯の数にわたって、接触は一定である。
【0084】
スプロケット1が反時計回りに回転されているとき、チェーン10は、チェーン10と接触している各歯2によって、ハウジングに向けて押される。スプロケット1が時計回りに回転されているとき、チェーン10は、チェーン10と接触している各歯2を押す。噛み合いの開始時には接触があり、噛み合いの終了時には接触が失われ、スラスト部10aに負荷がかかる。
【0085】
図11に示す実施形態において、戻り部材21は、ガイドローラ171のための凸状揺動面22を有する部材である。チェーンをより全体的に示すために、図の右側部分では戻り部材21が省略されている。戻り部材21は、チェーンのリンクの経路を妨げないようにx方向に向けて薄くなっている。
図6と同様に、凸状揺動面22は、可変半径を有する。凸状揺動面22は、固定されていてもよく、移動可能であってもよい。移動可能である場合、z方向にプッシャー23が設けられる。プッシャー23は、伸縮性を有してもよい。プッシャー23は、チェーン10に圧縮力を加える。
【0086】
チェーン10は、仏国特許発明第2780472号に開示されているタイプのものであってもよい。詳細についてはこれを参照されたい。
【0087】
図11~
図13に示す実施形態において、チェーン10は、連続した複数のリンク12を有する。リンク12は、ロッド11周りに接合されて横方向のピンを形成する。各リンク12は、本質的に平行な2つの面12aを有する。各面12aには、接合ピンを受容する2つの孔が形成される。各面12aには、横方向アクティブ前面および横方向アクティブ後面を画定する延在部12bが設けられる。横方向アクティブ前面および横方向アクティブ後面は、リンク12が特にチェーン10のスラスト部の内側において直線状に整列されるときに、前方のリンクの表面12aの横方向アクティブ後面および後方のリンクの表面の横方向アクティブ前面にそれぞれ当接する。各表面12aは、横方向にずらされた上流部分および下流部分を有する。プレス装置によって、このずれを形成することができる。上流部分と下流部分は、互いに平行である。上流部分と延在部12bは、同一平面内に位置する。下流部分は、リンクの内側に向けてずらされる。下流部分は、同じロッド11に接合された別のリンク12の上流部分に隣接する。
【0088】
リンク12の各接合ピンの両端部には、ガイドローラ171が設けられる。ガイドローラ171は、表面の外側に配置される。ガイドローラ171は、ハウジング部およびスラスト部において部分的にガイド20を形成するケースの横方向フランジに設けられた横方向ガイドレールと、接続部内の戻り部材21と協働する。
【0089】
図14に示す実施形態において、チェーン10は、弾性テンショナー15をさらに有する。弾性テンショナー15を示すために、3つのガイドローラ171が省略されている。弾性テンショナー15は、リンク12の間の遊びを除去するために役立つ。弾性テンショナー15は、例えばポリウレタンのような柔軟な材料から形成される。各弾性テンショナー15は、一体形成された部品である。各テンショナー15には、接合ピンを形成するロッド11を受容する3つの孔16が形成される。各テンショナー15は、リンク12の厚さと同様の厚さを有する平行六面体である。同一平面上の2つのテンショナーが接触しないよう、テンショナー15の長さは、リンク12の長さよりも短い。延在部を有さないテンショナー15の高さは、リンク12の高さよりも小さい。各テンショナー15は、隣接する2つのロッド11に取り付けられる。各テンショナー15は、リンク12を越えてロッド11の端部に取り付けられる。偶数番のテンショナーと奇数番のテンショナーとがロッド11の第1の端部に取り付けられ、反対側では、偶数番のテンショナーと奇数番のテンショナーとが同じロッド11の第1の端部の反対側の第2の端部に取り付けられる。
【0090】
奇数番のテンショナーは、同一平面上に存在する。偶数番のテンショナーは、奇数番のテンショナーの平面と平行な平面において、同一平面上に存在する。奇数番のテンショナーは、連続する2つのリンク12の表面と接触する。偶数番のテンショナーは、奇数番のテンショナーと接触する。奇数番のテンショナーは、リンク12と偶数番のテンショナーとの間に存在する。偶数番のテンショナーは、奇数番のテンショナーとガイドローラ171との間に存在する。
【0091】
トランスミッションアセンブリは、モジュールまたは複数の部品からなるアセンブリキットであり得る。例えば、同一の駆動部が取り付けられた2つの同一のシャーシを、長さが異なるハウジングおよび/またはチェーンに適用することができる。キットは、着脱可能な任意選択のチェーンまたはリンクを複数備えることができる。
【0092】
本発明は、単に一例として上述したトランスミッションアセンブリおよびその装置に限定されず、当業者が想定することができるすべての変形例を包含する。