(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】微生物学的試験装置、該装置の提供方法および使用
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20221124BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20221124BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C12M1/34 B
B01D61/14 500
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2019555829
(86)(22)【出願日】2018-04-10
(86)【国際出願番号】 FR2018050902
(87)【国際公開番号】W WO2018189478
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-09
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】304043936
【氏名又は名称】ビオメリュー
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル, フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】フーコー, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ローザンド, クリスティーヌ
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-114175(JP,A)
【文献】特開2004-344874(JP,A)
【文献】特開2009-172454(JP,A)
【文献】特開昭60-180577(JP,A)
【文献】特表2014-532432(JP,A)
【文献】特表2002-506632(JP,A)
【文献】特表平09-505890(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0176048(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/34
B01D 61/14
C12Q 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置(10)であって、
- チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間(12)であり、分析対象液体を受け入れるように構成された閉じられた内部空間(12)と、
- 閉じられた内部空間(12)内に配置された微生物学的濾過部材(32)であり、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画(12a)を閉じられた内部空間の第2の区画(12b)から分離する微生物学的濾過部材(32)と、
- 分析対象液体のための入口ポート(40)であり、閉じられた内部空間の第1の区画(12a)に開いた入口ポート(40)と
を備えるタイプの微生物学的試験装置(10)において、
微生物学的試験装置(10)が、閉じられた内部空間の内側に、微生物学的培地の組成物を含む栄養層(36)を備え、栄養層(32)が濾過部材(32)と接触していること、微生物学的試験装置の入口ポート(40)が開放/閉鎖部材(46)を備えること、ならびに、使用前の微生物学的試験装置(10)を提供するための構成において、
- 入口ポート(40)の開放/閉鎖部材(46)が、入口ポート(40)および閉じられた内部空間(12)を空気を通さないよう密に閉鎖するための閉鎖状態にあり、
- 開放/閉鎖部材(46)の第1の開放中に、この装置が入口ポートを通した吸引を生じさせることができるように、温度25℃に対する閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧が、25℃における標準大気圧1バールよりも厳密に低いこと
を特徴とする微生物学的試験装置(10)。
【請求項2】
使用前の微生物学的試験装置(10)を提供するための構成において、閉じられた内部空間(12)が一切の外部吸引源から隔離されていることを特徴とする、請求項1に記載の微生物学的試験装置。
【請求項3】
使用前の装置(10)を提供するための構成において、栄養層(36)の微生物学的培地が脱水されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の微生物学的試験装置。
【請求項4】
濾過部材(32)および栄養層(36)のための支持体(48)を備えることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項5】
栄養層(36)が、濾過部材(32)と濾過部材(32)のための支持体(48)との間に局所的に固定されていることを特徴とする、請求項4に記載の微生物学的試験装置。
【請求項6】
濾過部材(32)のための支持体(48)が、第2の区画(12b)内に配置された支持仕切り(50)を含むことを特徴とする、請求項4または5に記載の微生物学的試験装置。
【請求項7】
濾過部材(32)のための支持体(48)が、閉じられた内部空間を横切って第1の区画(12a)と第2の区画(12b)の間に広がるスクリーン(49)を備えることを特徴とする、請求項4または5に記載の微生物学的試験装置。
【請求項8】
第2の区画(12b)内に吸水材が配置されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項9】
入口ポート(40)の開放/閉鎖部材(46)が弁を備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項10】
微生物学的試験装置のチャンバが、第2の区画(12b)の境界を少なくとも部分的に画定する少なくとも1つの本体(14)を備え、第1の区画(12a)の境界を少なくとも部分的に画定するカバー(16)を備え、本体とカバーが、微生物学的試験装置を形成するために一緒に組み立てられる別個の部分から形成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項11】
微生物学的試験装置のチャンバが少なくとも1つの透明部分を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項12】
入口ポート(40)が、分析対象液体のための別個のいくつかの通路を備える分配器(
56)を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項13】
使用前の微生物学的試験装置(10)を提供するための構成において、閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧が、所定の体積の分析対象試料の進入を、所定の体積の分析対象試料の進入中に内部空間から流体を排出することなしに可能にするような絶対ガス圧であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項14】
使用前の微生物学的試験装置(10)を提供するための構成において、閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧が、所定の体積の分析対象試料の進入後の内部空間内の最終的な自由容積を内部空間の全容積で除した比を標準大気圧に乗じた積よりも厳密に低いことを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項15】
使用前の微生物学的試験装置(10)を提供するための構成において、温度25℃に対する閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧が、絶対圧力600ミリバールよりも厳密に低く、好ましくは絶対圧力300ミリバールよりも厳密に低く、より優先的には絶対圧力200ミリバールよりも厳密に低いことを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置。
【請求項16】
少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置を提供するための方法であって、
- 分析対象液体を受け入れるように構成された閉じられた内部空間(12)の境界を画定するように提供されたチャンバと、
- 閉じられた内部空間内に配置されるように、および、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画(12a)を閉じられた内部空間の第2の区画(12b)から分離するように提供された微生物学的濾過部材(32)と、
- 分析対象液体のための入口ポート(40)であり、閉じられた内部空間(12)の第1の区画(12a)に開いた入口ポート(40)と
を備える微生物学的試験装置(10)を提供することを含むタイプの方法において、
この方法が、閉じられた内部空間(12)の内側に受け入れられるように提供された栄養層(32)であり、微生物学的培地の組成物を含む栄養層(32)を提供することを含み、栄養層(36)が濾過部材(32)と接触していること、および、
この方法が、微生物学的試験装置(10)を分析対象液体の容器に接続する前に、
- 温度25℃に対する閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧を、1バールよりも厳密に低い圧力まで下げる減圧工程と、
- 閉じられた内部空間(12)を空気を通さないよう密に閉鎖する閉鎖工程と
を逐次的にこの順序で含むこと
を特徴とする方法。
【請求項17】
所定の体積の分析対象試料の進入を、所定の体積の分析対象試料の進入中に内部空間から流体を排出することなしに可能にするような値まで、減圧工程が、閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧を下げることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
所定の体積の分析対象試料の進入後の内部空間内の最終的な自由容積を内部空間の全容積で除した比を標準大気圧に乗じた積よりも厳密に低い値まで、減圧工程が、閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧を下げることを特徴とする、請求項16または17に記載の微生物学的試験方法。
【請求項19】
絶対圧力600ミリバールよりも厳密に低く、好ましくは絶対圧力300ミリバールよりも厳密に低く、より優先的には絶対圧力200ミリバールよりも厳密に低い値まで、減圧工程が、温度25℃に対する閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧を下げることを特徴とする、請求項16から18のいずれか一項に記載の微生物学的試験方法。
【請求項20】
少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための方法における請求項1から15のいずれか一項に記載の微生物学的試験装置の使用。
【請求項21】
- 分析対象液体の容器を入口ポート(40)に接続することにある工程と、
- 受器から閉じられた内部空間(12)に向かって分析対象液体が通過することを可能にするために入口ポート(40)の開放/閉鎖部材(46)を開放することにある工程と
含むことを特徴とする、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
- 入口ポート(40)の開放/閉鎖部材(46)を閉鎖することにある後続の工程と、
- 分析対象液体の容器を外すことにある後続の工程と、
- 分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を、微生物学的試験装置(10)内でインキュベートすることにある後続の工程と
を含むことを特徴とする、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
微生物学的試験装置(10)のチャンバの透明部分を通して見ることにより、分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を視覚的に検出し、計数し、同定し、かつ/またはその特徴を明らかにすることにある後続の工程を含むことを特徴とする、請求項22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に微生物学的分析の分野に関する。より詳細には、本発明は、分析対象の液体を試験するための微生物学的試験装置に関し、この液体は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある。本発明はさらに、該装置を提供するための方法、および少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象の液体を試験するための方法における該装置の使用に関する。
【0002】
より詳細には本発明は、食品加工、医薬品または化粧品産業の微生物学的試験の分野を対象としている。
【0003】
本発明は、Centre National d’Etudes Spatiales(CNES)(フランス国立宇宙研究センター)の参加により恩恵を得た研究に従って開発されたものである。
【背景技術】
【0004】
液体中の少なくとも1種類の微生物の存在を、一般にその微生物が存在しないことを示すことができるようことを目的にして、試験することが試みられる状況は数多く存在する。
【0005】
言うまでもなく、分析対象液体は、生体液(全血、血清、血漿、尿、脳脊髄液、器官分泌物など)であることがある。それにもかかわらず、この液体はさらに、工業用液体、特に食品液体(水、飲料一般、特に果汁、乳、ソーダなど)または製薬もしくは化粧品液体であることもある。
【0006】
液体に潜在的に含まれる微生物を集め、それらの微生物を培養して、続いてそれらを検出し、それらを計数し、それらの特徴を明らかにし、かつ/またはそれらを同定することができるようにするために、分析対象液体を濾過することを可能にする数多くの試験室技法が知られている。それらの技法は、試験技師にはよく知られているある数のハンドリング操作を必要とする。
【0007】
これらの技法ではしばしば、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間を備える濾過装置であって、分析対象液体を受け入れるように構成された濾過装置を使用する必要がある。そのような技法は特に「膜濾過」と呼ばれている。この閉じられた内部空間内に、微生物学的濾過部材、例えば濾過膜が配置され、この微生物学的濾過部材は、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画を閉じられた内部空間の第2の区画から分離する。この装置は、分析対象液体のための入口ポートを備え、この入口ポートは、閉じられた内部空間の第1の区画に開いている。
【0008】
文献EP-1.783.494の濾過装置など、知られている濾過装置には、外部吸引源に接続されるように構成された吸引ポートが提供されている。したがって、そのような装置の使用では、分析対象液体を入口ポートを通して装置に導入するときに閉じられた内部空間の内側に陰圧を発生させるため、外部吸引源を吸引ポートに接続する必要がある。この陰圧は濾過を促進し、または濾過のために必要でもある。
【0009】
濾過が実行され、濾過部材上に微生物が保持された後、濾過部材を回収するために装置が開けられ、濾過部材は、微生物のインキュベーションを可能にするために培養装置に移される。
【0010】
このような技法を試験室で実行することは容易である。
【0011】
しかしながら、このような技法を、液体が生産、梱包、配送または使用される操業環境、特に工業環境で実行することは困難である。実際、この文脈では、望んでいない微生物による液体の潜在的汚染を検出するための要素を有することができることが有益である。しかしながら、上述の通常の技法では、通常の方法を実行することができる試験室に分析対象液体の試料を輸送する必要がある。実際、これらの通常の操作を、液体の生産、梱包、配送または使用のための工業サイトにおいてin situで実行することを想定することは難しい。これは、このような環境内での汚染された液体の取扱いは、取扱いが不適切であった場合に、汚染を広げる危険性があるためである。さらに、存在する可能性がある微生物を培養する工程は、栄養培地の存在を必要とし、栄養培地の存在は、字義通り、微生物の増殖を促進する。言うまでもなく、このような工業的文脈でそのような栄養培地が導入されることは望ましくない。さらに、通常の検出技法はさらに、偽陽性を防ぐため、分析対象試料を外部の汚染から保護すること、したがってできるだけ無菌の環境で作業することを要求する。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、分析対象液体の微生物学的試験のための装置および方法であって、工業的環境を含む微生物学試験室外で使用または実行することも想定可能な特に単純化された試験操作を可能にする装置および方法を提案することにある。
【0013】
この目的のため、本発明は最初に、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置であって、
- チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間であり、分析対象液体を受け入れるように構成された閉じられた内部空間と、
- 閉じられた内部空間内に配置された微生物学的濾過部材であり、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画を閉じられた内部空間の第2の区画から分離する微生物学的濾過部材と、
- 分析対象液体のための入口ポートであり、閉じられた内部空間の第1の区画に開いた入口ポートと
を備えるタイプの微生物学的試験装置を提供する。
【0014】
該装置は、使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、微生物学的試験装置が、閉じられた内部空間の内側に、微生物学的培地の組成物を含む栄養層を備え、栄養層が濾過部材と接触していること、微生物学的試験装置の入口ポートが開放/閉鎖部材を備えること、ならびに、使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、
- 入口ポートの開放/閉鎖部材が、入口ポートおよび閉じられた内部空間を空気を通さないよう密に閉鎖するための閉鎖された状態にあり、
- 開放/閉鎖部材の第1の開放中に、この装置が入口ポートを通した吸引を生じさせることができるように、温度25℃に対する閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧が、25℃における標準大気圧1バールよりも厳密に低いこと
を特徴とする。
【0015】
本発明に基づく装置の他の任意選択の特徴によれば、単独でまたは組合せで以下のことが可能である:
- 使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、閉じられた内部空間は一切の外部吸引源から隔離されている。
- 閉じられた内部空間の第2の区画は、閉じられた内部空間の外側と流体連通したポートを持たない。
- 使用前の装置を提供するための構成において、栄養層の微生物学的培地は脱水されている。
- 閉じられた内部空間の第1の区画と第2の区画の間の流体交換は濾過部材を通して起こる。
- 微生物学的試験装置は、濾過部材および栄養層のための支持体を備える。
- 濾過部材のための支持体は、閉じられた内部空間を横切って第1の区画と第2の区画の間に広がるスクリーン、例えば多孔プレートの形態に製作されたスクリーンを備える。
- 栄養層は、濾過部材と濾過部材のための支持体との間に配置されている。
- 栄養層は、濾過部材と濾過部材のための支持体との間に局所的に固定されている。
- 濾過部材のための支持体は、第2の区画内に配置された支持仕切りを含む。
- 第2の区画内の支持仕切りの両側の流体の流れを可能にするため、前記仕切りには孔があけられている。
- 第2の区画内に吸水材が配置されている。
- 入口ポートの開放/閉鎖部材は弁を備える。
- 入口ポートの開放/閉鎖部材は、漏れが生じない密な膜を備え、この膜を破ることによって、入口ポートの開放/閉鎖部材は開放状態に置かれる。
- 微生物学的試験装置のチャンバは、第2の区画の境界を少なくとも部分的に画定する少なくとも1つの本体を備え、第1の区画の境界を少なくとも部分的に画定するカバーを備え、本体とカバーは、微生物学的試験装置を形成するために一緒に組み立てられる別個の部分から形成されている。
- 微生物学的試験装置のチャンバは少なくとも1つの透明部分を含む。
- 入口ポートは、分析対象液体のための別個のいくつかの通路を備える分配器を備える。
- 入口ポートは、閉じられた内部空間の第1の区画に開いた内側部分と、分析対象液体の容器に接続するための外側部分とを備え、入口ポートの開放/閉鎖部材は、入口ポートの内側部分と外側部分の間に挿入されている。
- 使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧は、所定の体積の分析対象試料の進入を、所定の体積の分析対象試料の進入中に内部空間から流体を排出することなしに可能にするような絶対ガス圧である。特に、閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧は、所定の体積の分析対象試料の進入後の内部空間内の最終的な自由容積を内部空間の全容積で除した比を標準大気圧に乗じた積よりも厳密に低いことが好ましい。実際問題として、使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧は、絶対圧力600ミリバールよりも厳密に低く、好ましくは絶対圧力300ミリバールよりも厳密に低く、より優先的には絶対圧力200ミリバールよりも厳密に低い。
【0016】
本発明はさらに、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置を提供するための方法であって、
- 分析対象液体を受け入れるように構成された閉じられた内部空間の境界を画定するように提供されたチャンバと、
- 閉じられた内部空間内に配置されるように、および、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画を閉じられた内部空間の第2の区画から分離するように提供された微生物学的濾過部材と、
- 分析対象液体のための入口ポートであり、閉じられた内部空間の第1の区画に開いた入口ポートと
を備える微生物学的試験装置を提供することを含むタイプの方法において、
この方法が、閉じられた内部空間の内側に受け入れられるように提供された栄養層であり、微生物学的培地の組成物を含浸させた栄養層を提供することを含み、栄養層が濾過部材と接触していること、および、
この方法が、微生物学的試験装置を分析対象液体の容器に接続する前に、
- 閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧を下げる減圧工程と、
- 閉じられた内部空間を空気を通さないよう密に閉鎖する閉鎖工程と
を逐次的にこの順序で含むこと
を特徴とする方法に関する。
【0017】
本発明はさらに、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための方法における、上に挙げた特徴のうちのいずれか1つの特徴を有する微生物学的試験装置の使用に関する。
【0018】
この使用はさらに、
- 分析対象液体の容器を入口ポートに接続することにある工程と、
- 受器から閉じられた内部空間に向かって分析対象液体が通過することを可能にするために入口ポートの開放/閉鎖部材を開放することにある工程と
を含むことができる。
【0019】
この使用はさらに、
- 入口ポートの開放/閉鎖部材を閉鎖することにある後続の工程と、
- 分析対象液体の容器を外すことにある後続の工程と、
- 分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を、微生物学的試験装置内でインキュベートすることにある後続の工程と
を含むことができる。
【0020】
この使用は、微生物学的試験装置のチャンバの透明部分を通して見ることにより、分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を視覚的に検出し、計数し、同定し、かつ/またはその特徴を明らかにすることにあるさらなる後続の工程を含むことができる。
【0021】
他のさまざまな特徴は、添付図面に関する以下の説明から明らかになる。添付図面は、非限定的な例によって本発明の主題の実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に基づく装置の第1の例示的実施形態の分解透視図であり、分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置10の例示的実施形態を示し、前記液体は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある。
【
図2】組み立てられた
図1の装置の透視図であり、分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置10の例示的実施形態を示し、前記液体は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある。
【
図3】
図2の装置の断面図である。切断面は
図1に示されている。分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置10の例示的実施形態を示し、前記液体は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある。
【
図4】
図1の装置のカバーを下から見た透視図であり、分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置10の例示的実施形態を示し、前記液体は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある。
【
図5】本発明に基づく装置の第2の例示的実施形態の分解透視図である。
【
図6】本発明に基づく装置の第2の例示的実施形態の本体および追加された底部を下から見た透視図である。
【
図7】
図5の装置の断面図である。切断面は
図5に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の目的上、微生物という用語は、特にグラム陽性またはグラム陰性細菌、酵母、アメーバ、ウイルスを包含し、より一般的には、肉眼では見えない単細胞生物であって、試験室内で取り扱うことおよび増やすことができる単細胞生物を包含する。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態によれば、微生物が、グラム陰性もしくはグラム陽性細菌または酵母である。
【0025】
その第1の例示的実施形態が
図1から4に示されており、その第2の例示的実施形態が
図5から7に示されているこの微生物学的試験装置は、第1の例示的実施形態に関しては
図2および3に、第2の例示的実施形態に関しては
図7に示されたその動作状態において、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12であり、分析対象液体を受け入れるように構成された内部空間12を有する。本質的に、図示されたこれらの2つの例示的実施形態は同時に説明される。これらの例示的実施形態を互いから区別する特徴については該当箇所において言及する。
【0026】
図示された例では、微生物学的試験装置のチャンバが、少なくとも1つの本体14およびカバー16を備える。本体14とカバー16は、微生物学的試験装置のチャンバを形成するために一緒に組み立てられる別個の部品から形成されている。カバー16は、微生物学的試験装置10の閉じられた内部空間12の境界を画定するように本体14を閉じる。したがって、カバー16は、本体14の閉鎖を提供するために本体14の形態と相補的な形態を有する。
【0027】
図示された例では、本体14が、底壁18および周囲側壁20を、本体の底壁18とは反対側の端部を通して本体14が開いているような態様で有する。図示された例では周囲側壁20が中心軸A1を有する。図示されたケースの底壁18は、本体14の中心軸A1に対して直角な横断壁である。第1の例示的実施形態では、底壁18が、周囲側壁20とともに単一の部品として製作されているが、第2の例示的実施形態では、底壁18が、閉じられた内部空間12を底側から閉じる別個の部品の形態で製作されている。底壁18が別個の部品の形態で製作されているケースでは、底壁18を、知られている手段によって、例えば単純な滑りばめ(snug fitting)、接着結合(adhesive bonding)、溶接、機械的取付け用のクリップを用いたねじ留めなどによって周囲側壁20に組み付けることができ、次いで、底壁18が周囲側壁20に組み付けられたときに、底壁18が、閉じられた内部空間12を漏れが生じないよう密に閉じることを保証するため、シールを提供することができる。
【0028】
説明を明瞭にするため、この説明の残りの部分では、中心軸A1が垂直方向を向いており、底壁18が、微生物学的試験装置の下端に配置されており、周囲側壁20が、底壁18から軸A1の方向に沿って上方へ延びていると考える。しかしながら、垂直、水平の概念、ならびに「頂部」、「底部」、「上部」および「下部」の概念は、図に示された微生物学的試験装置の向きだけに関して互いに対して相対的に使用され、本発明の範囲または使用中の微生物学的試験装置の向きを限定する効果を持たない。
【0029】
周囲側壁20は例えば、中心軸A1の周りの回転面(surface of revolution)である。図示された例では側壁20が実質的に円筒形である。しかしながら、他の形態を提案することもできる。
【0030】
その結果、カバー16は、中心軸A1に対して直角な横断壁22を有し、この事例では、横断壁22が、本体14の周囲側壁20の上縁24の幾何学的形状に対応する実質的に円形の形態を有する。図示された例では、カバー16が、カバーの横断壁22の下面から下方へ延びる円筒形のスカート26、この事例では中心軸A1の周りの回転円筒形のスカート26を有する。円筒形のスカート26は、中心軸A1の垂直方向に沿って、本体14の周囲側壁20の上端の内側で係合するように構成されている。
【0031】
第1の例示的実施形態では、本体の周囲側壁20の上端が、中心軸A1の上向きの環状座面28の境界を画定する横断方向の凹部を内面に有することに留意されたい。円筒形のスカート26は下縁30を有し、下縁30は、カバー16が本体14に組み付けられたときに環状座面28と向き合う。
【0032】
本発明に基づく微生物学的試験装置10は、閉じられた内部空間12内に配置された微生物学的濾過部材32であって、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間12の第1の区画12aを閉じられた内部空間12の第2の区画12bから分離している微生物学的濾過部材32を備える。
【0033】
図示された例では、第1の区画12aの境界が、少なくとも部分的にカバー16によって画定されており、第2の区画12bの境界が、少なくとも部分的に本体14によって画定されている。
【0034】
実際、微生物学的濾過部材32は、閉じられた内部空間12内において、閉じられた内部空間のあらゆる断面に沿って実質的に横断方向に広がっている。この例では、微生物学的濾過部材32が実質的に平らな形態、このケースでは円板の形態を有する。微生物学的濾過部材32は、中心軸A1に対して直角に配置されていることが好ましい。
【0035】
図示されたこの第1の例では微生物学的濾過部材32が周縁34を有し、周縁34は、本体14の周囲側壁20の内面の断面と同じ形態および同じ寸法を有する。図示されたこの第1の例では、周縁34が、直接的または間接的に、本体14の環状座面28を軸方向下方へ押すように構成されている。後に示すが、図示されたこの第1の例では、微生物学的濾過部材32の周縁34が、カバー16の円筒形のスカート26の下縁30と本体14の環状座面28との間に軸方向に動かないよう固定されるように提供されることが好ましい。
【0036】
微生物学的試験装置は、閉じられた内部空間12の内側に、微生物学的培地の組成物を含浸させた栄養層36を備え、栄養層36は、微生物学的濾過部材32と接触している。
【0037】
図示された実施形態では、栄養層36が、微生物学的濾過部材32と接触した、微生物学的濾過部材32とは別個の要素である。前記装置が組み立てられた後、栄養層36と微生物学的濾過部材32は、微生物学的試験装置内において互いに接触している。
【0038】
このケースでは、上述の条件で、栄養層36が、微生物学的濾過部材32よりも下に位置することが好ましい。このケースでは、栄養層36が、閉じられた内部空間12の第2の区画12b内に位置する。しかしながら、上述の条件で栄養層が微生物学的濾過部材32よりも上に位置するとすることを妨げる理由はない。この特定のケースでは、栄養層が、標的微生物の酵素または代謝活性の直接または間接検出を可能にすることを可能にする少なくとも1種類のクロモジェニック(chromogenic)および/またはフルオロジェニック(fluorogenic)基質を含むと有利である。次いで、前記少なくとも1種類の基質によって生成された視覚的信号が、栄養層の厚さの少なくとも一部分を通して目に見える。
【0039】
図示された例では、栄養層36が、実質的に平らな形態、このケースでは円板の形態を有する。栄養層36は周縁38を有し、周縁38は、微生物学的濾過部材32の周縁34と一致していることが好ましい。したがって、栄養層36と濾過部材32は同じ形態を有する。このことは、図示されたこの第1の例では、周縁38が、本体14の環状座面28と微生物学的濾過部材32の周縁34との間に挿入されているときに、環状座面28を軸方向下方へ押すことができることを意味する。図示されたこの第1の例では、栄養層36の周縁38が、微生物学的濾過部材32の周縁34と一緒に、カバー16の円筒形のスカート26の下縁30と本体14の環状座面28との間に軸方向に動かないよう固定されるように提供されることが好ましい。
【0040】
本発明の目的上、栄養層36は、微生物学的培地を含む担体を含む。
【0041】
この担体は、さまざまな吸収性化合物、好ましくは、レーヨン、綿、天然セルロース繊維、化学的に改質されたセルロース繊維、例えばカルボキシメチルセルロース、吸収性または超吸収性(superabsorbent)化学ポリマー、例えばポリアクリル酸塩、アクリル酸/アクリルアミド共重合体などの非常に高い保水能力を有する吸収性化合物に基づくものとすることができる。この担体は、液体の形態の微生物学的培地を含浸させたものとすることができる。有利には、この微生物学的培地を脱水することができる。すなわち、この微生物学的培地は、微生物増殖と両立しない「AW」(水分活性(water activity))を有することができる。あるいは、この担体を、乾燥条件下で、粉末の形態の微生物学的培地もしくは微生物学的培地の成分で覆うこと、またはこの担体に、乾燥条件下で、粉末の形態の微生物学的培地もしくは微生物学的培地の成分を含浸させることもできる。あるいは、液体を含浸させ、脱水後に、補足として粉末を加えることもできる。
【0042】
「微生物学的培地」は、微生物の生存および/または増殖に必要な栄養素、特に糖を含む炭水化物、ペプトン、増殖因子、鉱物塩および/またはビタミンなどのうちの1つまたは複数の栄養素を含む培地を意味するように構成されている。実際問題として、当業者は、標的微生物に応じて、完全に十分に知られている判定基準に従って、および当業者の理解の範囲内で、微生物学的培地を選択する。
【0043】
栄養層36は、任意選択の添加物要素(additive element)、例えば
- 特定の1つの微生物種/株の増殖および発生を別の微生物種/株よりも促進する、抑制因子または抗生物質などの1種類または数種類の選択的作用因子、
- 緩衝剤、染色剤
を含むことができる。
【0044】
一般的に言って、栄養層36はさらに、直接的または間接的に検出可能な信号による標的微生物の酵素または代謝活性の検出を可能にする基質を含むことができる。直接検出のために、この基質を、蛍光標識またはクロモジェニック標識の役目を果たす部分に接続することができる。間接検出のために、本発明に基づく栄養層はさらにpH指示薬を含むことができ、pH指示薬は、基質の消費によって引き起こされたpHの変化に対して感受性であり、標的微生物の増殖を明らかにする。前記pH指示薬は、クロモフォア(chromophore)またはフルオロフォア(fluorophore)とすることができる。クロモフォアの例としては、ニュートラルレッド、アニリンブルー、ブロモクレゾールブルーが挙げられる。フルオロフォアは例えば、4-メチルウンベリフェロン、ヒドロキシクマリン誘導体またはレゾルフィン誘導体を含む。したがって、本発明に基づく方法を実行するために優先的に使用される蛍光PC-PLC基質は、4-メチルウンベリフェリルコリンフォスフェート(4MU-CP)に対応する。
【0045】
本発明の好ましい一実施形態によれば、使用前の微生物学的試験装置を提供するための構成において、栄養層36の微生物学的培地は脱水されている。このケースでは、脱水された微生物学的培地を用いた栄養層の担体の乾式含浸の後、栄養層36をカレンダ加工操作にかけることができる。カレンダ加工は、生成される圧力および加熱温度によって、栄養層の担体内の脱水された微生物学的培地の経時的に安定した保持および維持を可能にし、栄養層内の栄養素および任意選択の添加物要素の保持を保証する。
【0046】
栄養層36のカレンダ加工はさらに、栄養層の滑らかで平らな表面を得ることを可能にする。カレンダ加工はさらに、カレンダ加工によって引き起こされる栄養層の圧縮により、カレンダ加工されていない栄養層に比べて栄養層の再水和を速めることを可能にする。担体が繊維から形成されているケースでは、この圧縮が、栄養層36内に脱水された培地が存在することと相俟って、前記栄養層の毛管能力を大きく増大させ、栄養層を実質的に瞬時に再水和させる。このことは、栄養層の表面に接して配置された別個の微生物学的濾過部材32の吸引現象にも寄与する可能性がある。したがって、微生物学的濾過部材32を栄養層36に押し付けることができ、それによってこれらの2つの要素間に空間がないことまたは要素間の空間が低減することを保証することができる。このことは、微生物学的濾過部材32の表面全体にわたる微生物の最適な増殖および/または生存にとって有益である。それによって、微生物学的濾過部材32と栄養層36とが別個の要素であるときに、それらの要素間の結合部材の存在を回避すること(例えば結合層の存在を回避すること)が可能である。そのような結合部材が、再水和させた栄養層36から微生物学的濾過部材32上に存在する微生物への栄養素および任意選択の添加物要素の移動を遅らせ、それによってそれらの微生物の増殖および/または生存の可能性を低減させる限りにおいて、このことは重大な利点となる。
【0047】
微生物学的濾過部材32は透水性フィルタを備え、この透水性フィルタは、特にその表面に微生物を保持する。微生物学的濾過部材32が栄養層36とは別個であるケースでは、微生物学的濾過部材32が、微生物学的濾過部材32の下に位置する栄養層36に含まれる栄養素および任意選択の添加物要素に対して透過性である。このフィルタは多孔体を含むことができ、この多孔体は、その性質、そのサイズ、その立体配置によってこれらの特性を有する材料から形成されたものとすることができる。この多孔体は、細孔の配置によってこれらの特性を有するものとすることができる。
【0048】
微生物学的濾過部材32は例えば、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(ビニリデン)フロリド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロース、セルロースとニトロセルロースの混合物のうちの1つもしくは複数の材料またはこれらの材料の誘導体に基づくものとすることができる。優先的には、微生物学的濾過部材32は、栄養層36に含まれる栄養素および任意選択の添加物要素に対して透過性の多孔膜の形態で製造され、その表面に微生物を保持することができる。微生物学的濾過部材32は栄養層36の全体を覆っていることが好ましい。水(および一般的に言って液体)用の現在販売されている精密濾過膜は一般に微生物学的濾過部材32として使用するのに必要な特性を有していることを本出願の出願人は見出した。それらの精密濾過膜は、取扱い中の引き裂きに対する良好な抵抗性、制御された空隙率、滑らかな表面、薄さ、および大部分の時間の高水準の親水性を得ることを可能にする。一般に白色である精密濾過膜の色は、膜の表面の有色のコロニーの区別を最適化することを可能にする。そのような濾過膜の濾過能力および親水性は、微生物学的濾過部材32の上面の濾過された細菌、酵母などの反対方向の移動を防止または制限しつつ、(任意選択で再水和後の)栄養層中に存在する栄養素および任意選択の添加物要素の微生物学的濾過部材32の上面に向かっての移動を可能にし、そのような移動を最適化するために利用される。本出願の目的上、上述の濾過膜は、区別なしに、「濾過膜」、「精密濾過膜」またはそうでなければ「フィルタリング膜」と呼ばれ、これらの表現は互いに同義である。これらの濾過膜は、多孔膜から形成されたグループに含まれる。
【0049】
微生物学的濾過部材32は、栄養培地の要素の移動および選択的作用因子または試薬の移動を可能にする。細菌、酵母および糸状菌を濾過部材の表面に保持するために、濾過部材が、0.01から0.8ミクロンの間、優先的には0.2ミクロンから0.6ミクロンの間の直径を有する細孔を含むと有利である。特定の実施形態によれば、濾過部材が、0.25ミクロンから0.6ミクロンの間、例えば0.3ミクロンから0.6ミクロンの間またはそうでなければ0.4ミクロンから0.6ミクロンの間の直径を有する細孔を含む。あるいは、濾過部材を、測定可能な細孔を持たない透析膜などの層とすることもできる。
【0050】
微生物学的濾過部材は例えば、Fisher Scientific Company L.L.C(300 Industry Drive,Pittsburgh,PA 15275,USA)によって販売されている「Fisherbrand(商標) General Filtration Membrane Filters」濾過膜、またはそうでなければZefon International,Inc.(5350 SW 1st Lane,Ocala,FL 34474、USA)によって製造されている「Nitrocellulose Membrane Filters」濾過膜、または同種の膜とすることができる。
【0051】
いくつかの変形実施形態では、栄養層が、微生物学的濾過部材32と統合されており、微生物学的濾過部材32が微生物学的培地の担体の役目を果たす。このケースでは、栄養層が微生物学的濾過部材32と接触していることが理解される。
【0052】
本発明に基づく微生物学的試験装置10は、分析対象液体のための入口ポート40を備える。入口ポート40は、閉じられた内部空間の境界をチャンバが画定するような態様で微生物学的試験装置10が組み立てられたときに、例えばカバー16が本体14に組み付けられたときに、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間の内側に、閉じられた内部空間12の外側から分析対象液体を導入することを可能にする。
【0053】
図示された例示的実施形態では、入口ポート40が、閉じられた内部空間12の第1の区画12aに開いた内側部分42と、分析対象液体の容器に接続するための外側部分44とを備える。この容器はおそらく、例えば注射器、管、パウチ、漏斗などである。
【0054】
図示された例では、入口ポート40が、中心軸A1に沿って垂直に配置されている。有利には、この入口ポートがカバー16上に配置されており、この事例では例えばカバー16の横断壁22の中心に配置されている。
【0055】
入口ポート40の内側部分42は、分析対象液体のための別個のいくつかの通過を備える分配器56を備えることができる。このような分配器56は、入口ポート40を介して導入された分析対象液体を、微生物学的濾過部材32の表面積のより大きな部分にわたって分配することを促進する。特に、この例示的実施形態のこの構成のケースでは、入口ポート40の内側部分42が、オリフィスを有する分配器56を備えることができる。オリフィスはそれぞれ、中心軸A1に関して半径方向に沿って少なくとも部分的に開いており、オリフィスは、入口ポート40の中心軸A1の周りを角度に関して一周して分布していることが好ましい。
【0056】
入口ポート40の外側接続部分44は、容器に連結するための要素を備えることができる。外側接続部分44はそれ自体が漏斗の形状を有することができる。外側接続部分44はさらに、入口ポート40に容器をドッキングさせるための機械式ドッキング部材を備えることができる。
【0057】
入口ポート40を封鎖するため、微生物学的試験装置10は、例示的実施形態では入口ポートの内側部分42と外側部分44の間に挿入された、開放/閉鎖部材46を備え、開放/閉鎖部材46は、開放/閉鎖部材の閉鎖状態において、入口ポート40を通した微生物学的試験装置10の閉じられた内部空間12と外側との間のガスの流通を防ぐ。
【0058】
入口ポート40は再閉鎖が可能なポートであることが好ましい。図示のケースであるこのケースでは、開放/閉鎖部材46が弁を備えることができる。このような弁は、開放状態から閉鎖状態に、および閉鎖状態から再び開放状態に逐次的に何度か切り換えることができるものであることが好ましい。
【0059】
いくつかのケースでは、開放/閉鎖部材が、漏れが生じない密な膜を備えることができ、この膜を破くことによって開放/閉鎖部材は開放状態に置かれることができる。このシナリオではこの膜を再び閉鎖することはできない。このケースでは、外側接続部分44に2次的開放/閉鎖部材を追加することにより、入口ポート40を再び閉鎖することを可能にすることができる。このような2次的開放/閉鎖部材(図示せず)は例えば、キャップ、漏れが生じない密な膜または栓によって形成することができる。
【0060】
このような2次的開放/閉鎖部材は、上述の弁型開放/閉鎖部材が存在する場合にも提供することができることに留意されたい。このような2次的開放/閉鎖部材は例えば、弁のガスを通さない性質(gas-tightness)、特に空気を通さない性質(airtightness)を補強すること、特に使用前の装置10の保管期間中の長期にわたるガスを通さない性質を補強することを可能にする。
【0061】
両方のケースにおいて、このような2次的開放/閉鎖部材は、使用前の装置10の保管期間中、入口ポートを汚染から保護することを可能にする。
【0062】
図示された例では、組み立てられた後に、微生物学的試験装置10が、閉じられた内部空間12と外側との間の流体連通のための単一のポート、このケースでは入口ポート40だけを備える。図示された例では、閉じられた内部空間12の第2の区画12bに、閉じられた内部空間の外側と流体連通したポートがないことに留意されたい。しかしながら、このことは、微生物学的試験装置10が、入口ポート40を含む流体連通のためのいくつかのポートであって、その全てが閉じられた内部空間の第1の区画12aに開いたいくつかのポートを備えることができることを妨げない。
【0063】
これらの例示的実施形態では、微生物学的濾過部材32の厚さが、微生物学的濾過部材32の広がりに比べて小さい。例えば、濾過部材の直径は50ミリメートルよりも大きく、例えば80から100ミリメートルの間にある。濾過部材の厚さは数ミリメートル程度であり、一般に5ミリメートル未満である。
【0064】
微生物学的試験装置10が、微生物学的濾過部材32および栄養層36のための支持体48を備えることも有利である。
【0065】
支持体48は、微生物学的濾過部材32および栄養層36を、第1の区画12aと第2の区画12bの間のそれらの位置に保持することを可能にする。
【0066】
図示された第1の例示的実施形態では、微生物学的濾過部材32および栄養層36のための支持体48が、第2の区画12b内に配置された支持仕切り50を含む。
【0067】
例えば、支持仕切り50は、平らな形態を有することができ、それぞれ、中心軸A1を含む半径方向平面(radial plane)内に配置することができる。支持仕切り50は例えば、本体14の底壁18から延びることができ、微生物学的濾過部材32および栄養層36が直接的または間接的に垂直方向下方へ押すことができる上縁52を有することができる。図示されたこの第1の例では、それぞれの支持仕切り50が、直径に沿って第2の区画12bの全体を横切って延びており、したがって、本体14の周囲側壁20の直径に沿って対向する2つの部分によって横断方向の限界が定められている。この特定の実施形態では、支持仕切り50が、その上縁52を介してその支持機能を果たすことが理解される。図示された例では、支持仕切り50の上縁52が全て、中心軸A1に対して直角な同じ横断面内にある。
【0068】
それにもかかわらず、支持仕切り50自体の間で、支持仕切り50は、支持仕切り50自体の間で、第2の区画12b内において、この第2の区画12bの下位区画(subdivision)の境界を画定している。第2の区画12b内のこのような支持仕切り50の両側の流体の流れを可能にするため、前記仕切りに孔をあけることができる。図示された例では、支持仕切り50に貫通開口54を設けることが選択されており、貫通開口54は、これらの支持仕切り50のうちの1つの支持仕切り50によって分離された第2の区画12bの隣り合う2つの下位区画間の流体連通を可能にする。これらの貫通開口54は任意選択である。図示された例では、貫通開口54が、実質的に中間に位置する低い1つの点から中心軸A1の方向に沿って第2の区画12b内を上方へ延びるスリットの形態で形成されており、上縁52で開く形で開いている。これらの貫通開口は全体的に見て異なる幾何学的形状を有することができ、例えば穴、特に丸穴の形態で形成することができる。貫通開口は必ず上縁52で開いているとは限らない。
【0069】
図示された例では、支持仕切り50がさらに、装置のチャンバを機械的に補強すること、特に、チャンバの内側と外側の間の圧力の差に対するチャンバの抵抗性をより高めることを可能にする。
【0070】
微生物学的濾過部材32のための支持体48はさまざまに製作することができる。例えば、中心軸A1に対して直角な横断面内に広がるスクリーンの形態で支持体48を製作することができる。そのようなスクリーンは例えば、本体14の座面28に載せることによって支持することができる。微生物学的濾過部材32のための支持体は、本体14の横断方向の底壁18から軸A1の方向に沿って垂直に延びる1本または複数本の柱の形態で製作することができる。微生物学的濾過部材32のための支持体は、周囲側壁20の内面から横断方向に延びる1本または複数本の腕木(bracket)の形態で製作することもできる。
【0071】
図5から7に示された第2の例では、濾過部材のための支持体48がスクリーン49を構成している。このようなスクリーンは、交差したワイヤのネットワークによってまたは交差したバーのネットワークによって形成することができる。
図5から7に示された例では、このスクリーンが、第1の区画と第2の区画の間に中心軸A1に対して直角に広がる多孔プレート(perforatred plate)によって形成されている。図示されたケースでは、このスクリーン49が、本体14の周囲側壁20とともに単一の部品として製作されている。多孔プレートの形態のこのスクリーン49は、特に微生物学的濾過部材32があまり硬くない場合に、微生物学的濾過部材32のためのより良好な支持を提供することが理解される。その結果、特に濾過工程を実行するときに、微生物学的濾過部材32および栄養層36の平面度がより良好になる。
【0072】
図示された例では、このプレートが、本体14内で、本体14の内径の全体にわたって広がっている。このプレートは、周囲側壁20の円筒形の内面から中心軸A1に向かって半径方向に広がる環状外周部分51を有する。プレートの外周部分51は中実である。すなわち孔があけられていない。このプレートは、この外周部分の中心に、孔のあいた中心部分を有し、この部分がスクリーン49を形成している。孔のあいた中心部分49の上面は、外周部分の上面から一段下がっている。このようにすると、外周部分51が、プレートの上面に、凹部の境界を画定し、凹部の直径は、孔のあいた中心部分49の直径に一致する。図示された例では、濾過部材32および栄養層36が、凹部の直径に等しいかまたはそれよりも小さい外径を有する。したがって、この凹部に、濾過部材32および栄養層36を収容することができ、この凹部に入れられた濾過部材32および栄養層36は半径方向に動かない。第1の例示的実施形態とは違い、この第2の例示的実施形態では、濾過部材32および栄養層36が、カバー16と本体14の間に締め付けられていないことに留意されたい。
【0073】
下から見た図である
図6では、第2の例示的実施形態が、第2の区画12b内に仕切り53を備えていることに留意されたい。仕切り53は、濾過部材を直接に支持する機能に加えて、第1の例示的実施形態の支持仕切りと同じ機能および実質的に同じ幾何学的形状を有する。
【0074】
支持体48は、閉じられた内部空間の第1の区画と第2の区画の間の流体の流れに対して限られた抵抗または無視できる抵抗を形成するように寸法が決められる。多孔プレートのケースでは、例えば、中心軸A1に沿った投影内の孔55の累積の全表面積が、濾過部材32の表面積の少なくとも30%、好ましくは濾過部材の表面積の少なくとも50%に相当することが保証される。多孔プレートは、濾過部材32の表面積の少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%に相当する画定された円の内側に分布した多数の孔55を有する(より小さな円が全ての孔を含む)。想定される例では、孔55の数が20よりも多く、好ましくは50よりも多い。しかしながら、より大きな孔を使用したり、任意選択で例えば星形、扇形などの異なる幾何学的形状を使用したりすれば、より少数の孔を使用することもできる。
【0075】
図示された例では、微生物学的濾過部材32のための支持体48が、本体14とともに単一の部品として製作されている。しかしながら、この支持体を、1つまたは複数の独立した部品の形態で製作することもできる。そのような部品は、単純に第2の区画12bの内側に置くことができ、または、例えば接着結合によって、溶接によって、スナップ留めによって、もしくはインタロッキングによって本体14に組み付けることができる。
【0076】
図示された例では、微生物学的濾過部材32と濾過部材のための支持体48との間に栄養層36が配置されていることに留意されたい。
【0077】
有利には、栄養層36は、微生物学的濾過部材32と微生物学的濾過部材32の支持体48との間に局所的に固定されると規定することが可能である。例えば、カバー16が支持要素を備えることができ、これらの支持要素は例えば、微生物学的試験装置が組み立てられたときにカバー16のこれらの支持要素と支持体48との間に微生物学的濾過部材32および栄養層36が固定されるような態様で、1つまたは複数の支持仕切り50の上縁に対応する。図示された例では、微生物学的試験装置の中心で微生物学的濾過部材32および栄養層36を支持体48に押し付けるためのそのような支持要素を、分配器56が下面に有する。
【0078】
図示された例では、閉じられた内部空間12の第2の区画12bの容積が閉じられた内部空間の第1の区画12aの容積よりも大きい。閉じられた内部空間12の第2の区画12bの容積は、閉じられた内部空間の第1の区画12aの容積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも3倍であることが好ましい。一実施形態では、100ミリリットル試料を分析するように構成された装置に関して、この体積の分析対象液体の全体を含むことができるようにするために、閉じられた内部空間12の第2の区画12bの容積が、例えば少なくとも100ミリリットル、好ましくは100ミリリットル超、150ミリリットル未満である。チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間の全容積は例えば120から300ミリリットルの間であり、この全容積は例えば150ミリリットルである。
【0079】
使用前の微生物学的試験装置10を提供するための構成では、開放/閉鎖部材46が、入口ポート40および閉じられた内部空間12を空気を通さないよう密に閉鎖する閉鎖状態にある。
【0080】
したがって、提供するためのこの構成では、微生物学的試験装置10が、漏れが生じないよう密に閉鎖されており、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12と外側との間の可能なガス連通がない。提供するためのこの構成では、チャンバによって境界が画定されたこの閉じられた内部空間12の内側に、微生物学的濾過部材32および栄養層36が含まれており、それによって、分析対象液体からの潜在的な微生物を微生物学的濾過部材32上に集めるため、ならびに検出、計数、特徴付けおよび/または同定目的でそれらの微生物を増殖させることを可能にするために分析対象液体を濾過するための、そのまま使用できる微生物学的試験装置を形成している。
【0081】
さらに、使用前の微生物学的試験装置10を提供するためのこの構成では、閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧が、開放/閉鎖部材46の第1の開放中に、この装置が、入口ポートを通した吸引を生じさせることができるような初期減圧圧力値にある。
【0082】
上の2つの段落の結果は、使用前の微生物学的試験装置10を提供するためのこの構成においては、チャンバによって境界が画定されたこの閉じられた内部空間12に試料を導入する前に、チャンバによって境界が画定されたこの閉じられた内部空間12の内側に、微生物学的濾過部材32および微生物学的培地の組成物を含む栄養層36が含まれており、閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧が、開放/閉鎖部材46の第1の開放中に、この装置が、入口ポートを通した吸引を生じさせることができるような初期減圧圧力値にあるというものである。
【0083】
この目的のため、温度25℃に対する閉じられた内部空間(12)の内側の絶対ガス圧の初期減圧圧力値が、25℃における標準大気圧1バールよりも厳密に低い。
【0084】
実際問題として、この吸引現象を反映して、開放/閉鎖部材の最初の開放中の所定の体積の液体の装置の内部空間への進入は、内部空間内の初期圧力が大気圧に等しいケースよりも迅速になる。
【0085】
初期減圧圧力の精確な値が精確に分かっている必要はないことに留意されたい。実際、この値はとりわけ、所定の体積の分析対象試料の少なくとも一部または全部を装置の内側に吸引するのに十分なものとなるように決定される。
【0086】
この値は、装置の内側に分析対象試料を入れるために標準大気圧よりも高い圧力を分析対象試料にかける必要なしに、所定の体積の分析対象試料の全体を装置が装置の内側に吸引することができる十分なものとなるように決定されることが好ましい。
【0087】
この初期減圧圧力値は、所定の体積の分析対象試料の進入中に内部空間から流体を排出することなしに所定の体積の分析対象試料の全体が内部空間に進入すること可能にする十分に低いものであることが好ましい。このことは、装置内への試料全体の容易な進入を保証することを可能にする。このことはさらに、装置内への試料の進入中に、装置内に最初から含まれている要素、特に培地の要素が外部へ広がることを防ぐことを可能にする。
【0088】
当業者は、任意選択の少数の試験によって補足された初期評価により、装置の所望の初期減圧圧力を、装置を使用するために想定される条件(装置のチャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12の全容積、試料の体積、装置を使用するときの温度および圧力条件など)に応じて決定することができる。
【0089】
実際問題として、所望の初期減圧圧力は以下のように求めることができる。チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12の全容積VTを考える。続いて、分析を実行するために装置10に導入することができることが望まれる分析対象試料の所定の体積VEを決定する。続いて、これらの値から、所定の体積の分析対象試料が内部空間に進入した後の内部空間内の最終的な自由容積VLを導き出す。したがって、この最終的な自由容積VLは、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12の全容積VTから、分析を実行するために装置10に導入することができることが望まれる分析対象試料の所定の体積VEを引いたものに等しい。
VL=VT-VE
【0090】
次いで、試料を含む液体だけが導入され、温度はあまり変動しないと仮定して、試料の進入の直前の瞬間とこの試料の進入の直後の瞬間との間のチャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12内の条件の変動に、理想気体の法則を近似として適用する。試料のこの進入を反映して、提供するためのこの構成における閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧の値である初期減圧圧力値Piから、所定の体積の分析対象試料の進入後の内部空間の内側の絶対ガス圧値である最終的な値Pfに圧力が変動する。
【0091】
したがって、下式が得られ、
Pf×VL=Pf×(VT-VE)=Pi×VT
この式は下式を与える。
Pi=Pf×(VT-VE)/VT=Pf×VL/VT
【0092】
この式から、使用前の微生物学的試験装置10を提供するための構成では、初期減圧圧力と呼ばれる閉じられた内部空間12の内側の絶対ガス圧が、所定の体積の分析対象試料の進入後の内部空間内の最終的な自由容積を内部空間の全容積で除した比を大気圧に乗じた積よりも厳密に低いことが好ましいことが導き出される。
【0093】
実際問題として、標準大気圧の値は、25℃において1バールに任意に固定することができる。
【0094】
実際問題として、試料の体積VEは一般に、少なくとも20ミリリットル、好ましくは少なくとも50ミリリットル、より優先的には少なくとも100ミリリットルでなければならないと考えられる。他方、試料の体積VEは一般に、300ミリリットル以下、好ましくは200ミリリットル以下、より優先的には150ミリリットル以下でなければならないと考えられる。
【0095】
内部空間の全容積VTが150ミリリットルである装置のケースでは、100ミリリットルの試料体積VEに対して、上記の迅速な計算が、絶対圧力333ミリバールよりも厳密に低い、使用前の装置を提供するための構成における閉じられた内部空間12の内側の絶対ガス圧の所望の初期減圧圧力を与える。しかしながら、実際問題として、定式化されたこの仮説と実験の現実との間の相違に関連する近似を考慮して、絶対圧力300ミリバールよりも厳密に低い初期減圧圧力を提供することが好ましい。より優先的には、特に装置内への試料の急速な進入を促すために、絶対圧力200ミリバールよりも厳密に低い初期圧力を提供することが好ましい。
【0096】
したがって、内部空間の全容積VTが300ミリリットルである装置に関しては、絶対圧力666ミリバールよりも厳密に低い所望の初期減圧圧力が決定され、好ましくは、絶対圧力600ミリバールよりも厳密に低い初期減圧圧力、より優先的には絶対圧力400ミリバールよりも厳密に低い初期減圧圧力が決定されることが好ましいことに留意されたい。
【0097】
上記の値は、所与の装置および所与の使用条件に対するものを含む、指示的な値であることに留意されたい。実際、装置内の初期減圧圧力が上記の値よりも現実に低い方がよりいっそう好都合であろう。
【0098】
実際問題として、これらの値は、本発明に基づく装置を開発するための基礎の役目を果たすことができ、装置の適切な動作を可能にする製造条件は、少数のルーチンの試験によって容易に決定される。
【0099】
したがって、上記の値は、たとえそれが、不確実性が50ミリバールという大きなものになる場合を含め、初期減圧圧力の実際の値に関する不確実性に帰着する場合であっても、入口ポートの入り口に開放/閉鎖部材46にできるだけ近づけてマノメータを接続することによって測定することができる。
【0100】
このことは、微生物学的試験装置を準備するときに、閉じられた内部空間内に少なくとも部分的な真空が生み出されることを意味する。この少なくとも部分的な真空は例えば、真空下での組立て、または少なくとも、いずれのケースでも25℃において1バールよりも厳密に低い所望の初期減圧圧力よりも低い圧力もしくは所望の初期減圧圧力に等しい圧力の下での組立てによって生み出されたもの、あるいは微生物学的試験装置の組立て後の閉じられた内部空間の減圧によって生み出されたものとすることができる。
【0101】
使用前の微生物学的試験装置10を提供するためのこの構成では、閉じられた内部空間が一切の外部吸引源から隔離されていることが理解される。したがって、このことは、閉鎖状態にあるチャンバおよび入口ポート40が、ガスを通さない、特に空気を通さないものであると規定する必要性を説明する。このことは、当業者に知られている手段によって達成される。
【0102】
したがって、図示された例では、カバー16と本体14が、空気を通さないよう密に組み立てられている。
【0103】
この組立てを、例えば微生物学的濾過部材32を取り出すために使用後に破壊することなく微生物学的試験装置を開けることを可能にする、分解することができる組立てとすることができる。分解することができる組立ては、例えばカバー16上および本体16上にそれぞれ配置された相補的なねじ山を使用して生み出すことができる。図示された構成では、このような相補的なねじ山(図示せず)をそれぞれ、カバー16の円筒形のスカート26の外面および本体14の周縁側壁20の上端の内面に適合することができる。分解することができる組立ての別の可能な例は、バヨネット組立てのシステムによって得ることができる。分解することができる組立てのさらに別の例は、外部組立てフランジを提供することによって、または本体14にカバー16を組み付けるためのねじを提供することによって得ることができる。
【0104】
この組立てを、使用後に破壊することなく微生物学的試験装置10を開けることを可能にしない、例えば接着結合による、溶接によるまたはリベット締めによる、分解することができない組立てとすることもできる。
【0105】
必要なガスを通さない性質、特に空気を通さない性質を提供するため、特に分解することができる組立てのケースでは、本体14とカバー16の間に1つまたは複数のシール(図示せず)を提供することが可能である。
【0106】
使用前に微生物学的試験装置を提供するための構成では、栄養層36の微生物学的培地が脱水されていると有利である。次いで、使用時にこの微生物学的培地が再水和されると規定される。この再水和は、分析対象液体自体によって達成されてもよい。
【0107】
実際、微生物学的濾過部材32および栄養層36は、閉じられた内部空間の第1の区画12aと第2の区画12bとの間の流体交換が、微生物学的濾過部材32および栄養層36を通して起こるように配置される。したがって、流体が、微生物学的濾過部材32または栄養層36を迂回して、第1の区画12aから第2の区画12bに移動することを不可能にすることが可能である。図示された実施形態では、このことが、微生物学的濾過部材32および栄養層36が、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12の断面の全体にわたって、閉じられた内部空間の第1の区画12aと第2の区画12bの間に広がっていることによって可能になる。
【0108】
有利には、第2の区画内に吸水材が配置されていると規定することができる。図示された例では、支持仕切り50間の第2の区画12bの1つ、いくつかまたは全ての下位区画にそのような材料を配置することができる。吸収材は、さまざまな吸収性化合物、好ましくは、レーヨン、綿、天然セルロース繊維、化学的に改質されたセルロース繊維、例えばカルボキシメチルセルロース、吸収性または超吸収性化学ポリマー、例えばポリアクリル酸塩、アクリル酸/アクリルアミド共重合体などの非常に高い保水能力を有する吸収性化合物に基づくものとすることができる。したがって、このような材料は、Technical Absorbents Limited(1 Moody Lane,Great Coates、Grimsby,DN31 2SS,United Kingdom)から、「Super Absorbent Fibre(SAF(登録商標))」の商品名のものを入手することができる。
【0109】
有利には、微生物学的試験装置のチャンバをポリマー材料でできたものとすることができる。しかしながら、少なくとも部分的にガラスから製作することを含め、他の材料からチャンバを製作することも可能である。図示された例では、本体14、カバー16および支持体48を、同じ材料でできたものまたは異なる材料でできたものとすることができる。
【0110】
微生物学的試験装置のチャンバは、少なくとも1つの透明部分を含むことが好ましい。特に、この透明部分は、第1の区画12aの方を向いた微生物学的濾過部材32の上面の少なくとも一部分を観察者が見ることができるように配置することができる。この透明部分は、第1の区画12aの方を向いた微生物学的濾過部材32の上面の全体を観察者が見ることができるように配置されていることが好ましい。これが好ましいのは、この面が、インキュベーション後に潜在的微生物が目に見える面であるためである。したがって、図示された例では、チャンバの透明部分が、少なくともカバー16の横断壁22に配置されていることが好ましい。カバー16の全体を透明とすることができる。いくつかの実施形態では、チャンバの全体が透明な材料でできていると規定される。チャンバの透明部分は例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)またはガラスでできている。
【0111】
したがって、上述の微生物学的試験装置は、少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための方法において使用されるように構成されている。
【0112】
そのような使用では、微生物学的試験装置が、前もって、使用前に提供するための構成で提供される。上に示したとおり、この構成では、微生物学的試験装置が、閉じられた内部空間12内に漏れが生じないよう密に含まれる微生物学的濾過部材32および栄養層36を有し、この閉じられた内部空間内では、いずれのケースでも、温度25℃に対する閉じられた内部空間の内側の絶対ガス圧に対して、初期減圧圧力に対応する、1バールよりも厳密に低い陰圧レベルが優勢である。
【0113】
少なくとも1種類の微生物を含む傾向がある分析対象液体を試験するための微生物学的試験装置を提供するためには、最初に、
- 分析対象液体を受け入れるように構成された閉じられた内部空間12の境界を画定するように提供されたチャンバであり、例えば本体14およびカバー16の形態のチャンバと、
- 閉じられた内部空間12内に配置されるように、および、閉じられた内部空間内において、閉じられた内部空間の第1の区画12aを閉じられた内部空間の第2の区画12bから分離するように提供された微生物学的濾過部材32と、
- 閉じられた内部空間の第1の区画12aに開くように提供された、分析対象液体のための入口ポート40であり、例えば、閉じられた内部空間の第1の区画12aに開くように提供された内側部分42と外側接続部分44とを備えることができる入口ポート40と
を上述のとおり備える微生物学的試験装置を提供する必要がある。
【0114】
さらに、使用前に提供するための方法は、閉じられた内部空間の内側に受け入れられるように提供された栄養層36であり、微生物学的培地の組成物を含む栄養層36を提供することを含み、栄養層36は濾過部材と接触するように構成されている。上に示したとおり、この栄養層36は、微生物学的濾過部材32とは別個のものとすることができ、または、変形実施形態として、栄養層と微生物学的濾過部材とが互いに統合されていると規定することが可能である。
【0115】
本発明によれば、提供するための構成にある微生物学的試験装置を提供するための方法は、使用する前に、したがって分析対象液体の容器に接続する前に、
- 閉じられた内部空間12の内側の絶対ガス圧を下げる減圧工程と、
- 閉じられた内部空間12を空気を通さないよう密に閉鎖する閉鎖工程と
を逐次的にこの順序で含む。
【0116】
この減圧工程の時点で、上述の要素を備える微生物学的試験装置10は、チャンバが閉鎖されており、上記の要素を含むような形で既に組み立てられたものとすることができることに留意されたい。このケースでは、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12を吸引源、例えば真空ポンプに、例えば入口ポート40を通して接続することにより、減圧工程を実行することができ、したがって入口ポート40は開放状態にある。それによって、所望の初期減圧圧力まで圧力を下げる。この初期減圧圧力は、いずれのケースでも温度25℃に対して1バールよりも厳密に低い。
【0117】
別の変形実施形態では、減圧工程が組立工程に付随して実行される。実際、図示された例では例えば、チャンバを閉鎖することを可能にする、したがって閉じられた内部空間12の境界を画定することを可能にする、本体14へのカバー16の組付けを、所望の初期減圧圧力に等しいかまたはそれよりも低い絶対ガス圧下で、すなわち特に温度25℃に対する1バールよりも厳密に低い圧力下で実行することができると規定することが可能である。
【0118】
上記第1のケースでは、閉鎖工程が、所望の初期減圧圧力に等しいかまたはそれよりも低い絶対ガス圧がまだ存在している間に、入口ポート40の弁を閉じること、またはシール膜を配置することにあることができる。上記第2のケースでは、閉鎖工程が、本体14にカバー16を漏れが生じないよう密に組み付けることにあることができる。このことはチャンバを閉鎖することを可能にする。このケースでは、入口ポート40の開放/閉鎖部材が予め閉鎖状態にあることが好ましい。
【0119】
このようにして、チャンバによって境界が画定された閉じられた内部空間12の内側に微生物学的濾過部材32および栄養層36が位置し、閉じられた内部空間12が、初期減圧圧力と呼ばれる所定の初期陰圧レベルにある、提供するための構成にある微生物学的試験装置10を得る。この所定の初期陰圧レベルは、所定のしきい値よりも低い閉じられた内部空間内のガス圧に対応し、この所定のしきい値は、それ自体が標準大気圧よりも厳密に低く、この所定のしきい値は例えば、25℃に対して絶対圧力200ミリバールである。
【0120】
提供するためのこの構成で微生物学的試験装置の保管、輸送などを実施することができること、および提供するためのこの構成では、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12に分析対象液体が導入されていないことに留意されたい。
【0121】
本発明に基づく微生物学的試験装置の使用は、閉じられた内部空間12の内側に入口ポート40を介して分析対象液体を導入することに対応する。この導入は一般に、分析対象液体が入った容器を入口ポート40に接続することに対応する。このような接続は、容器と入口ポート40との間に流体接続が確立されていると単純に仮定するさまざまな形態をとることができる。この接続は、流体を通さない接続、好ましくはガスを通さない接続、特に空気を通さない接続であることが好ましい。この接続は、容器と入口ポート40との間の機械的ドッキングを含むことができる。
【0122】
したがって、本発明に基づく微生物学的試験装置の使用は、
- 分析対象液体の容器を入口ポート40に、特に例示的実施形態では入口ポート40の外側接続部分42に接続することにある工程と、
- 容器から微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12に向かって分析対象液体が通過することを可能にするために入口ポートの開放/閉鎖部材46を開放することにある工程と
を含む。
【0123】
入口ポートの開放/閉鎖部材46を開放するこの工程は、提供するための方法中の閉じられた内部空間12を漏れが生じないよう密に閉鎖するための閉鎖工程後の開放/閉鎖部材の第1の開放である。
【0124】
所定の初期陰圧レベルが特に重要な役割を有するのはこの工程においてである。実際、この陰圧の存在は、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12への分析対象液体の導入を促進する。このことは、一方で、分析対象液体が初期に例えば大気圧である場合に、分析対象液体に吸引現象が加えられることによる。他方では、このことが、この所定の陰圧レベルを反映して、分析対象液体の導入前に微生物学的試験装置内に存在するガスが、分析対象液体の導入中に対応する量のガスを微生物学的試験装置が排出する必要がないよう、少量であることによる。このことは、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間内への分析対象液体の進入を容易にするだけでなく、最初に微生物学的試験装置内に含まれていた粒子または分子が外部へ放出されることも防ぐ。
【0125】
微生物学的試験装置の使用の、開放/閉鎖部材の開放が容器から閉じられた内部空間12への分析対象液体の通過を可能にするこの工程の間、閉じられた内部空間12を一切の外部吸引源から隔離することができることに留意されたい。実際、この吸引は、提供するための方法中に閉じられた内部空間12を空気を通さないよう密に閉鎖するための閉鎖工程後の装置の最初の開放の前に装置内に初期減圧圧力が存在するおかげで有利に得られる。
【0126】
したがって、本発明に基づく微生物学的試験装置10への入口ポート40を通した分析対象液体の導入は、最初に、閉じられた内部空間12の第1の区画12aに液体が導入され、次いで、分析対象液体が、微生物学的濾過部材32とおのずと接触することを可能にする。したがって、分析対象液体は、潜在的微生物のうちの少なくとも一部、特に想定される試験の標的である微生物が微生物学的濾過部材32によって保持されるような形で、この微生物学的濾過部材32によって濾過される。他方、分析対象液体の液体部分は、閉じられた内部空間12の第2の区画12bの方へ移動する。そのためには、少なくともこの工程に関しては、微生物学的試験装置が、図に示された向きを向いており、閉じられた内部空間12の第2の区画12bが第1の区画よりも下に位置し、これらの2つの区画が、図示された例ではそのときには水平な1つの平面に沿って広がっている微生物学的濾過部材32によって互いに分離されていることが有利であることが理解される。
【0127】
分析対象液体は栄養層36の再水和を可能にする。栄養層36は濾過部材と接触しているため、栄養素および任意選択の添加物要素は、微生物学的濾過部材32によって保持されている微生物の方へ移動することができる。したがって、微生物学的試験装置10が有利な環境、特に有利な温度の下に置かれている場合、微生物学的試験装置10を開ける必要なしに、いずれにしても微生物学的試験装置10のチャンバから微生物学的濾過部材32を取り出す必要なしに、微生物学的試験装置10自体の内側で微生物のインキュベーションを達成することが可能である。
【0128】
したがって、本発明に基づく微生物学的試験装置10の使用は、微生物学的試験装置の閉じられた内部空間12の内側に分析対象液体を導入する工程の後に、
- 入口ポート40の開放/閉鎖部材46を閉鎖することにある後続の工程と、
- 分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を、微生物学的試験装置内でインキュベートすることにある後続の工程と
を含むことができる。
【0129】
そのようなインキュベーション期間の後、この使用は、特に微生物学的試験装置のチャンバの透明部分を通して見ることにより、分析対象液体中に潜在的に最初に含まれる微生物を視覚的に検出し、計数し、同定し、かつ/またはその特徴を明らかにすることにある後続の工程を含むことができる。ここでも、微生物学的試験装置10を開ける必要なしにこの試験工程を実行することができ、したがって、潜在的微生物がその上に位置する微生物学的濾過部材32は、微生物学的試験装置10の閉じられた内部空間内に留まる。
【0130】
本発明には本発明の範囲を逸脱しないさまざまな変更が加えられる可能性があるため、本発明は、記載された例および図示された例だけに限定されない。