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特許7181906ターゲット、検出システムおよび検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ターゲット、検出システムおよび検出方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
B66C13/22 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004807
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021109776
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】東 貴弘
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-044190(JP,U)
【文献】特表2002-525254(JP,A)
【文献】特開平10-063335(JP,A)
【文献】特開2014-234994(JP,A)
【文献】米国特許第05491549(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表面に設置されるターゲットにおいて、
地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を備えていて、
第二方向を軸方向とする基準位置部材を備えることを特徴とするターゲット。
【請求項2】
地表面に設置されるターゲットにおいて、
地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を備えていて、
平面視で四角形の枠体と、この枠体の内部に配置される複数の前記棒状部材とを有していて、
第二方向に隣接する前記棒状部材どうしが、第二方向に予め定められた間隔をあけて配置される構成を有することを特徴とするターゲット。
【請求項3】
地表面に設置されるターゲットにおいて、
地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置されるとともに互いに厚さの異なる複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を備えていて、
第二方向の一方側から他方側に向けて前記棒状部材の厚さが段階的に大きくなる状態に複数の前記棒状部材が配置されることを特徴とするターゲット。
【請求項4】
地表面に設置される際に鉛直上向きに突出する厚さを有する前記板状部材で構成される請求項1~3のいずれかに記載のターゲット。
【請求項5】
地表面に設置されるターゲットと、クレーンに設置されて前記ターゲットを検出するセンサとを備える検出システムにおいて、
地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を有する前記ターゲットと、
このターゲットにレーザ光を照射して距離を測定する前記センサと、このセンサで得られる値に基づき前記クレーンの位置を算出する演算機構とを備えることを特徴とする検出システム。
【請求項6】
第一方向に間隔をあける状態で地表面に設置される一対の前記ターゲットを備える請求項5に記載の検出システム。
【請求項7】
地表面に設置されるターゲットをクレーンに設置されているセンサで検出する検出方法において、
地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を有する前記ターゲットが地表面に予め設置されていて、
前記センサから照射されるレーザ光により前記センサから前記ターゲットまでの距離が測定されて、前記センサで得られる値に基づき前記クレーンの位置が算出されることを特徴とする検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの位置合わせを行う際に使用するターゲット、このターゲットを含む検出システムおよび検出方法に関するものであり、詳しくは検出精度を向上できるターゲット、このターゲットを含む検出システムおよび検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
門型クレーンの位置合わせを行う検出システムが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の検出システムは、地表面に引かれた白線をカメラで検出してクレーンの位置合わせを行う構成を有していた。
【0003】
特許文献1に記載の門型クレーンは、白線に基づき走行方向の位置を検出することは可能であったが、この走行方向を直角に横断する横行方向における位置を検出することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開平08-324959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は検出精度を向上できるターゲット、このターゲットを含む検出システムおよび検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するためのターゲットは、地表面に設置されるターゲットにおいて、地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を備えていて、第二方向を軸方向とする基準位置部材を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成するための検出システムは、地表面に設置されるターゲットと、クレーンに設置されて前記ターゲットを検出するセンサとを備える検出システムにおいて、地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を有する前記ターゲットと、このターゲットにレーザ光を照射して距離を測定する前記センサと、このセンサで得られる値に基づき前記クレーンの位置を算出する演算機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成するための検出方法は、地表面に設置されるターゲットをクレーンに設置されているセンサで検出する検出方法において、地表面に平行な板状部材で構成されていて、平面視において第一方向と平行となる軸方向を有するとともに第一方向を直角に横断する第二方向に並べて配置される複数の棒状部材を有していて、かつ第二方向における前記棒状部材の数および配置位置の少なくとも一方が第一方向に沿って変化する構成を有する前記ターゲットが地表面に予め設置されていて、前記センサから照射されるレーザ光により前記センサから前記ターゲットまでの距離が測定されて、前記センサで得られる値に基づき前記クレーンの位置が算出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クレーンに設置されるセンサによりターゲットの位置を測定することで、棒状部材の数および配置位置から第一方向におけるクレーンの位置を算出できて、ターゲットまでの距離から第一方向を直角に横断する第二方向におけるクレーンの位置を算出できる。第一方向および第二方向からなる平面におけるクレーンの位置を高い精度で検出するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ターゲットを例示する説明図である。
図2】検出システムを例示する説明図である。
図3】検出システムの作動状態を例示する平面図である。
図4図3のAA断面を例示する説明図である。
図5図3の吊具にスキューが発生した状態を例示する平面図である。
図6】センサにより取得される情報を例示する説明図である。
図7】スキューの発生時にセンサにより取得される情報を例示する説明図である。
図8】ターゲットの変形例を例示する説明図である。
図9図8のターゲットの変形例を例示する説明図である。
図10図9のターゲットの変形例を例示する説明図である。
図11図1のターゲットの変形例を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、ターゲット、このターゲットを含む検出システムおよび検出方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。図中ではクレーンの走行方向を矢印y、この走行方向yを直角に横断する横行方向を矢印x、上下方向を矢印zで示している。
【0012】
図1に例示するようにターゲット1は、板状部材で構成されている。ターゲット1は第一方向である走行方向yと平行となる軸方向を有する棒状部材1aを有している。この実施形態では平面視で四角形に構成される底板1bと、この底板1bの上面に配置される四本の棒状部材1aをターゲット1は有している。ターゲット1は少なくとも棒状部材1aを有していればよく、底板1bは必須要件ではない。
【0013】
複数の棒状部材1aは第二方向である横行方向xに沿って並べて配置されている。横行方向xに隣接する棒状部材1aどうしは、横行方向xに予め定められた間隔dをあけて配置されている。複数の棒状部材1aは横行方向xに間隔dをあけずに互いに接触する状態で配置されていてもよい。
【0014】
四本の棒状部材1aはそれぞれ軸方向における長さが異なる。横行方向xにおける棒状部材1aの数および配置位置の少なくとも一方が走行方向yに沿って変化する状態に、複数の棒状部材1aは配置されている。
【0015】
ターゲット1は横行方向xおよび走行方向yと略平行となる地表面に設置して使用される。ターゲット1は例えば走行方向yの長さが200mm、横行方向xの長さが150mm、厚さが50mmに構成することができる。ターゲット1の厚さとは上下方向zにおける長さをいい、棒状部材1aと底板1bとを含む長さをいう。ターゲット1の大きさは上記に限定されない。ターゲット1が大きいほど検出精度を向上しやすくなる。ターゲット1が小さいほどターゲット1を地表面に設置した際に地表面を走行する車両の走行の妨げになり難くなる。ターゲット1の厚さは上記に限定されない。ターゲット1の厚さは例えば10mm以上80mm以下の範囲で適宜設定することができる。ターゲット1の厚さは、雨天時に水没しない程度であり、且つ車両の走行の妨げになり難い程度に設定されることが望ましい。
ターゲット1を構成する材料は特に限定されない。例えば鋼板や繊維強化プラスチック等で構成できる。
【0016】
図2に例示するように検出システム2は、地表面に設置されるターゲット1と、クレーン3に設置されていてターゲット1を検出するセンサ4と、センサ4で得られる値に基づき演算を行う演算機構5とを備えている。
【0017】
コンテナターミナルの地表面には複数のターゲット1が設置されている。この実施形態ではコンテナCが載置される目標位置Sごとに二つずつターゲット1が設置されている。説明のため図2では目標位置Sを破線で示している。
【0018】
クレーン3は例えば門型クレーンで構成される。クレーン3は門型クレーンに限らない。クレーン3は、コンテナCを荷役する構成を有していればよく、例えば岸壁クレーンやストラドルキャリアやリーチスタッカーなどの荷役機器を含む概念である。
【0019】
センサ4はクレーン3に設置されている。この実施形態ではクレーン3の吊具6にセンサ4が設置されている。平面視で略長方形に形成される吊具6において、走行方向yと平行となる一対の辺にそれぞれ二つずつのセンサ4が設置されている。
【0020】
センサ4が設置される位置は上記に限定されない。クレーン3を構成するトロリ7やクレーン3の運転室の下面等にセンサ4が設置される構成にしてもよい。センサ4がクレーン3のトロリ7等に設置される場合は、ターゲット1に対するトロリ7等の相対位置を取得できる。クレーン3を構成する脚部材にセンサ4を設置してもよい。ターゲット1に対するクレーン3の相対位置を取得できる。
【0021】
センサ4は例えば横行方向xに沿ってレーザ光を走査する2Dレーザセンサで構成される。センサ4は2Dレーザセンサに限らない。センサ4は、地表面に設置されているターゲット1の位置を検出できる構成を有していればよく、例えば3Dレーザセンサやレーザ距離計を含む概念である。
【0022】
演算機構5はクレーン3に設置されている。この実施形態ではクレーン3のトロリ7に演算機構5が設置されている。演算機構5が設置される位置は上記に限定されない。クレーン3の運転室や、コンテナターミナルの管理棟などに演算機構5が設置される構成にしてもよい。演算機構5はセンサ4と有線または無線で接続されている。
【0023】
図3に例示するように、この実施形態では棒状部材1aの配置が逆向きになる状態で、地表面に一対のターゲット1が設置されている。一対のターゲット1における棒状部材1aの配置は横行方向xに沿う直線に対して線対称となる状態である。上記の構成に限らず棒状部材1aの配置が互いに同じ向きになる状態で、地表面に一対のターゲット1が設置される構成であってもよい。
【0024】
検出システム2のセンサ4は、ターゲット1に対してレーザ光を照射する。センサ4は横行方向xに沿ってターゲット1の形状を取得する構成を有している。センサ4から横行方向xに沿って走査されるレーザ光により、ターゲット1において走行方向yと直交する断面の形状がセンサ4で取得される。図3においてセンサ4から伸びる矢印はレーザ光の走査方向を示している。
【0025】
図4に例示するように厚さのあるターゲット1は地表面から鉛直上向きに突出する状態で配置されている。センサ4が2Dレーザセンサで構成されている場合は、センサ4の真下から横行方向xに沿って複数のレーザ光が照射角度αを変化させながら照射される。2Dレーザセンサは、照射角度αとレーザ光が反射される地点までの距離Lとを組み合わせたデータを複数取得する。
【0026】
照射角度αが0°のとき、センサ4は吊具6の高さHを取得できる。センサ4による測定を常時行っていて吊具6の高さHが予め設定された値以下となったときに、センサ4で得られる値に基づく演算を演算機構5で行う構成としてもよい。またトロリ7に設置されるエンコーダなどの他の機器で吊具6の高さHを監視しておき、吊具6の高さHが予め設定された値以下となったときに、センサ4による計測および演算機構5による演算を開始させる構成にしてもよい。
【0027】
図3に例示するように検出システム2は、まずセンサ4により一対のターゲット1までの距離を測定する。このとき例えばターゲット1の底板1bの縁部の座標P1、P2の値を利用できる。演算機構5は二つのターゲット1の座標P1と座標P2に基づき、吊具6のスキューを演算機構5で算出する。スキューとは、上下方向zを中心軸とする吊具6の回転をいう。例えば座標P1と座標P2の値が等しい場合は、スキューが発生していない状態であることがわかる。
【0028】
図5に例示するように平面視において吊具6から座標P1までの距離の方が、座標P2までの距離よりも小さい場合は、吊具6が時計回りに回転していることがわかる。図5では説明のため、スキューが発生していない状態の吊具6を一点鎖線で示している。座標P1および座標P2の値の差から、吊具6のスキューの角度を算出できる。算出されるスキューの角度に基づき、センサ4で得られるターゲット1の形状からスキューの影響を取り除く補正を演算機構5が行う。
【0029】
次に検出システム2の演算機構5は、二つのターゲット1の座標P1と座標P2の少なくとも一方に基づき、横行方向xにおける吊具6の位置を算出する。吊具6にスキューが発生していない場合は座標P1と座標P2の値は等しくなるため、いずれか一方を利用して横行方向xにおけるターゲット1の位置を算出すればよい。吊具6にスキューが発生している場合は、前述の補正により座標P1と座標P2の値が等しくなっている。この場合も座標P1または座標P2のいずれか一方を利用して横行方向xにおけるターゲット1の位置を算出すればよい。
【0030】
図6に例示するようにターゲット1の形状は走行方向yに沿って変化する。そのためセンサ4で得られるターゲット1の形状は、ターゲット1に対する吊具6の走行方向yにおける相対位置に応じて異なる形状となる。例えば図6の左方に示す領域Q1にセンサ4のレーザ光が照射される場合には、図6の右方に示すQ1に対応するターゲット1の形状を取得できる。領域Q1では一つの棒状部材1aの形状がセンサ4により検出される。センサ4により検出される棒状部材1aの数に基づき、レーザ光が照射されている範囲が領域Q1~Q4のいずれであるかを、検出システム2は取得できる。
【0031】
演算機構5によりスキューの影響を取り除いた後に、横行方向xおよび走行方向yにおける吊具6の位置を算出する方法について上記説明したが、演算機構5による処理はこれに限らない。横行方向xおよび走行方向yにおける吊具6の位置を算出する途中で、スキューの影響を補正する処理を行う構成としてもよい。
【0032】
走行方向yに沿って棒状部材1aの数または配置位置の少なくとも一方が変化するターゲット1により、検出システム2は横行方向xおよび走行方向yからなる平面においてターゲット1に対する吊具6の相対位置を高い精度で検出することができる。目標位置Sに対してターゲット1は予め定められた位置に配置されているため、目標位置Sに対する吊具6の相対位置も高い精度で検出できる。検出結果に基づき吊具6の位置を調整することで、目標位置SにコンテナCを正確に載置させることができる。クレーン3の荷役を自動化する際には特に有利である。
【0033】
厚さのあるターゲット1を地表面から鉛直上向きに突出する状態で配置しているため、雨天の際にターゲット1が水没する不具合を回避しやすくなる。雨天でもターゲット1の位置を高い精度で検出することができる。地表面に引かれた白線をターゲットとする場合は、雨天で白線が水没すると検出精度が著しく低下する不具合があった。
【0034】
ターゲット1が厚さの比較的薄い板状部材で構成されているため、地表面を走行する車両やクレーンがターゲット1に乗り上げても悪影響がほとんどない。ターゲット1が車両等の走行を妨げることがない。
【0035】
検出システム2は、板状部材で構成されるターゲット1にレーザ光を照射して検出する構成であるため、周囲の明るさの影響をほとんど受けない。昼夜でターゲット1の検出精度が変動する不具合を回避するには有利である。地表面に引かれた白線をカメラで撮影する場合は、周囲の明るさの影響で白線を認識できない不具合があった。また従来は車両のスリップ痕などの影響で白線を認識でない不具合があったが、検出システム2ではスリップ痕の影響を受けない。
【0036】
一つの目標位置Sに対して一対のターゲット1を配置する構成は必須の構成要件ではない。一つの目標位置Sに対して一つのターゲット1を配置する構成にしてもよい。例えばストラドルキャリアなどスキューがほとんど発生しないクレーン3の場合は、ターゲット1を一つとしてもターゲット1に対する吊具6の相対位置を検出する精度がほとんど低下しない。
【0037】
図4に例示するように隣の目標位置Sに設置されているターゲット1を同時に検出することで、スキューの影響を取得する構成としてもよい。このとき横行方向xにおいて吊具6の両側に配置されているセンサ4をそれぞれ利用して、それぞれ対応するターゲット1を検出する。
【0038】
図7の左方に例示するように横行方向xにおける棒状部材1aどうしの間隔dの長さからスキューの影響を取得する構成としてもよい。図7の右方に例示するようにセンサ4により得られる間隔が予め定められた間隔dと等しい値であればスキューが発生していない状態であることがわかる。センサ4により得られる間隔d‘が予め定められた間隔dよりも大きい値であればスキューが発生していることがわかる。センサ4により取得される間隔d’と予め定められた間隔dとの比較から、吊具6のスキューの角度を算出できる。算出されるスキューの角度に基づき、センサ4で得られるターゲット1の形状からスキューの影響を取り除く補正を演算機構5が行う。
【0039】
横行方向xにおける棒状部材1aの長さと、センサ4により得られる棒状部材1aの長さとの比較から、吊具6のスキューの角度を算出する構成にしてもよい。
【0040】
ターゲット1において配置される棒状部材1aのパターンは上記に限らない。走行方向yに沿って棒状部材1aの数や配置位置が変化する構成であれば適宜採用できる。
【0041】
図8に例示するように領域Q1~Q7に向かって棒状部材1aの数および配置位置が二進数で変化する構成にしてもよい。この実施形態ではターゲット1は、平面視で四角形に形成される枠体1cと、枠体1cの内部に配置される棒状部材1aを備えている。枠体1cの内部には走行方向yに延設される複数の支持材1dが配置されていて、棒状部材1aは支持材1dにより枠体1cに固定されている。棒状部材1aおよび支持材1dは円柱形状または円筒形状の部材で構成されている。この実施形態ではターゲット1は底板1bを有していない。
【0042】
図8の下方では領域Q1~Q7における断面の状態を模式的に示している。図8の下方に例示するように棒状部材1aの数および配置位置は、二進数と同じ状態で走行方向yに向かって段階的に変化していく。このターゲット1は、横行方向xに三列に並べて配置される棒状部材1aにより、領域Q1~Q7を区別することができる。棒状部材1aが四列に配置される図4のターゲット1に比べて、図8のターゲット1は小型化するには有利である。
【0043】
図9に例示するように棒状部材1aを横行方向xに四列並べて配置すると、走行方向yにおいて領域Q1~Q15を区別することができる。図9の下方には参考のため領域Q6における断面を模式的に示している。この実施形態では棒状部材1aおよび支持材1dは角柱形状または平板形状の部材で構成されている。棒状部材1aは支持材1dの上面に配置されている。横行方向xにおける棒状部材1aの列を増やすことで、走行方向yにおける検出システム2の分解能を向上できる。
【0044】
図10に例示するように、領域Q1~Q15の位置を走行方向yに入れ替えることで、棒状部材1aが可能な限り軸方向である走行方向yに細分化されない状態にターゲット1を構成してもよい。
【0045】
図10に例示するように横行方向xを軸方向とする基準位置部材1eをターゲット1が備える構成にしてもよい。この実施形態では棒状部材1aおよび支持材1dの上方となる位置に基準位置部材1eが配置されている。
【0046】
ターゲット1に対して吊具6が正しい位置に停止しているときに、センサ4から走査されるレーザ光が通過する位置に基準位置部材1eは配置されている。この構成によれば、吊具6が正しい位置にあるとき、センサ4により取得されるターゲット1の断面の形状は他の場合とは明らかに異なる状態で検出される。吊具6の位置合わせが完了していることを検出システム2は検出しやすくなる。特にクレーン3による荷役を自動化する際には有利である。
【0047】
基準位置部材1eの形状は上記に限定されない。横行方向xを軸方向として延設される部材であればよい。例えば横行方向xに複数に分割されていて、棒状部材1aの間を埋める状態で配置される構成を基準位置部材1eが備えていてもよい。
【0048】
図11に例示するように棒状部材1aの厚さを段階的に異なる大きさとしてもよい。この実施形態では横行方向xにおいて一方側から他方側に向けて棒状部材1aの厚さが段階的に大きくなる状態に構成されている。例えばレーザ光を照射するセンサ4から近い側に厚さの小さい棒状部材1aが配置される状態にターゲット1を設置できる。
【0049】
センサ4から照射されるレーザ光が他の棒状部材1aに遮られて目的の棒状部材1aが検知されない状態を回避しやすくなる。ターゲット1から吊具6が横行方向xに比較的離れている場合であっても、すべての棒状部材1aを精度良く検出することができる。棒状部材1aの厚さの大きさをそれぞれ異ならせることで、棒状部材1aの順番を把握することができる。棒状部材1aの厚さを段階的に異なる大きさとする構成は、図1に例示する実施形態のみならず、図8図10に例示する実施形態においても同様に採用することができる。棒状部材1aの長さ及び厚みの両方を異ならせ、検出した情報を併用することでより確実に精度良く位置検出が可能となる。
【符号の説明】
【0050】
1 ターゲット
1a 棒状部材
1b 底板
1c 枠体
1d 支持材
1e 基準位置部材
2 検出システム
3 クレーン
4 センサ
5 演算機構
6 吊具
7 トロリ
x 横行方向
y 走行方向
z 上下方向
d 間隔
C コンテナ
S 目標位置
α 照射角度
L 距離
H 高さ
P1、P2 座標
Q 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11