(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20221124BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20221124BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20221124BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221124BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221124BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20221124BHJP
H01M 10/6566 20140101ALI20221124BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6566
B60N2/06
(21)【出願番号】P 2020180760
(22)【出願日】2020-10-28
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 大悟
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-285070(JP,A)
【文献】特開2020-172224(JP,A)
【文献】特開2018-34751(JP,A)
【文献】特開2018-30447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06, 1/04,
B62D 25/20,
B60N 2/06,
H01M 10/613,10/625,10/6563,10/6566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルに支持部材を介して支持されたシートと、
前記シートの後方に配置されるバッテリパックと、
吸気口を有し、前記吸気口から取り入れた空気を前記バッテリパックに供給する吸気ダクトと、を備える電動車両であって、
前記吸気ダクトは、
前記シートの下方を前後方向に延びるダクト本体と、
前記ダクト本体から車幅方向に延びる分岐部と、を備え、
前記ダクト本体には、第1吸気口が設けられ、
前記分岐部には、第2吸気口が設けられ、
前記
第2吸気口は、
上方から見て前記支持部材と重なる位置に配置され、
上下方向において前記フロアパネルと前記支持部材との間に位置する、電動車両。
【請求項2】
請求項
1に記載の電動車両であって、
前記ダクト本体の上部には、カーペットが設けられ、
前記第2吸気口の周囲には、前記カーペットが前記第2吸気口を塞ぐのを規制する突起部が前記分岐部と一体又は別体に設けられている、電動車両。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載の電動車両であって、
前記第1吸気口は、
前記上下方向で上方を向く上方開口部と、
前記上方開口部から前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜面に設けられる前方開口部と、を備え、
前記前方開口部の前端部は、前記シートの前端部と同じ位置、又は前記シートの前端部よりも後方に配置されている、電動車両。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の電動車両であって、
前記支持部材は、前記シートを前後方向に案内する一対のシートレールのいずれか一方である、電動車両。
【請求項5】
請求項
4に記載の電動車両であって、
前記一方のシートレールは、車幅方向で最も外側に位置するシートレールである、電動車両。
【請求項6】
請求項
4又は
5に記載の電動車両であって、
前記吸気ダクトは、前記一対のシートレールの間に配置されている、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリパックとしての電力機器ユニットを覆うカバー部材に吸気口と排水口を設け、吸気口が塞がれた場合に、排水口をエマージェンシー吸気口として利用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カバー部材に吸気口及び排水口を設けた場合、カーペット等によりこれら吸気口及び排水口が塞がれてしまう虞がある。一方、シート下に配置された吸気ダクトを介してバッテリパックを冷却することも検討されているが、吸気ダクトの吸気口も塞がれないように改善する必要がある。
【0005】
本発明は、吸気ダクトの吸気口が塞がれることを抑制できる電動車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
フロアパネルに支持部材を介して支持されたシートと、
前記シートの後方に配置されるバッテリパックと、
吸気口を有し、前記吸気口から取り入れた空気を前記バッテリパックに供給する吸気ダクトと、を備える電動車両であって、
前記吸気ダクトは、
前記シートの下方を前後方向に延びるダクト本体と、
前記ダクト本体から車幅方向に延びる分岐部と、を備え、
前記ダクト本体には、第1吸気口が設けられ、
前記分岐部には、第2吸気口が設けられ、
前記第2吸気口は、
上方から見て前記支持部材と重なる位置に配置され、
上下方向において前記フロアパネルと前記支持部材との間に位置する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸気ダクトの吸気口が塞がれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の車室後部及び荷室を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、運転者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0010】
[車両]
図1及び
図2に示すように、本実施形態の電動車両V(以下、車両Vと称する)は、例えばハイブリッド車であり、バッテリ(図示せず)を収容するバッテリパック1が搭載されている。
【0011】
車両VのフロアパネルFは、車室11の床部を構成するフロントフロアパネル部12と、後部座席17下の床部及び荷室13の床部を構成するリヤフロアパネル部14と、フロントフロアパネル部12とリヤフロアパネル部14とを段差状に連結するキックアップ部15と、を含む。
【0012】
フロントフロアパネル部12の車幅方向中央部には、前後方向に沿ってセンタートンネル(図示せず)が形成されている。センタートンネルは、フロントフロアパネル部12が上方に凸となるように屈曲しており、下方に台形状のトンネル空間が形成される。このトンネル空間には、内燃機関からの排気を車両Vの後方へ排気する排気管(図示せず)等が配置される。
【0013】
荷室13下のリヤフロアパネル部14には、バッテリパック1を収容する収容凹部14aが凹設され、バッテリパック1がこの収容凹部14aに配置される。
【0014】
リヤフロアパネル部14の前側上部には、前後方向に沿う複数のシートレール16を介して後部座席17が支持されている。後部座席17は、左側後部座席17a及び中央後部座席17bを一体的に構成する左側後部座席ユニット17L(以下、単に後部座席17と称する場合がある)と、右側後部座席17cを構成する右側後部座席ユニット17R(以下、単に後部座席17と称する場合がある)と、を備える。
【0015】
シートレール16には、左側後部座席ユニット17Lを前後方向に案内する一対の左側シートレール16La、16Lb(以下、単にシートレール16と称する場合がある)と、右側後部座席ユニット17Rを前後方向に案内する一対の右側シートレール16Ra、16Rb(以下、単にシートレール16と称する場合がある)と、が含まれる。各シートレール16は、リヤフロアパネル部14の上面部に所定の間隔を介して取り付けられている。
【0016】
[バッテリパック]
図1に示すように、バッテリパック1は、バッテリケース2と、バッテリケース2の開口を覆うバッテリカバー3と、を備え、内部にバッテリ、バッテリECU等の制御装置(図示せず)、及び冷却ファン等の冷却用部品を収容する。
【0017】
バッテリカバー3は、吸気ダクト4を介して車室11から冷却用の空気を導入する導入口3aと、バッテリの冷却に使用した冷却用の空気を排気ダクト5を介して荷室13に排出する排出口3bと、を備える。以下、本発明の要部である吸気ダクト4及びその配置構成について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0018】
[吸気ダクト]
図3に示すように、吸気ダクト4は、第1吸気口41a(メイン吸気口)を有するダクト本体41と、バッテリパック1の導入口3aに接続されるバッテリ接続部42と、ダクト本体41とバッテリ接続部42を連結する連結部43と、ダクト本体41から分岐して車幅方向に延びる分岐部44と、を備える。吸気ダクト4は、リヤフロアパネル部14の上面に沿って配置される。また、吸気ダクト4の上方は、リヤフロアパネル部14の上面に敷設されるカーペット18によって覆われる。
【0019】
図1及び
図4に示すように、吸気ダクト4のうち、少なくともダクト本体41は、後部座席17の下方空間において、一対のシートレール16Ra、16Rbの間に配置されている。このようにすると、一対のシートレール16Ra、16Rbの間の空間を有効に利用してダクト本体41を配置することが可能になる。
【0020】
図2~
図4に示すように、第1吸気口41aは、ダクト本体41の前端部に設けられており、上下方向で上方を向く上方開口部41cと、上方開口部41cから前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜面41dに設けられる前方開口部41eと、を備える。また、前方開口部41eの前端部は、後部座席17の前端部と同じ位置、又は後部座席17の前端部よりも後方に配置される。
図2中、符号50は、前方開口部41e及び上方開口部41cを覆う、吸気グリルである。このような構成によれば、第1吸気口41aに対する水や異物の侵入を防止しつつ、第1吸気口41aの開口面積を大きくできるので、吸気に伴う圧損、ノイズ音等の発生を低減できる。
【0021】
図3~
図5に示すように、吸気ダクト4は、ダクト本体41から車幅方向(本実施形態では右方)に延びる分岐部44を備え、その先端部に第2吸気口41b(エマージェンシー吸気口)が設けられる。第2吸気口41bは、上方から見てシートレール16と重なる位置に配置され、上下方向においてリヤフロアパネル部14とシートレール16との間に位置する。このような構成によれば、メイン吸気口であるダクト本体41の第1吸気口41aが塞がれた場合であっても、シートレール16によって第2吸気口41bが塞がれることを抑制できるので、第2吸気口41bをエマージェンシー吸気口として機能させることができる。また、第2吸気口41bは、前後方向に延びるシートレール16の下方に配置されるので、前後方向位置を適宜選択することができ、設計の自由度が高いという利点がある。
【0022】
図1に示すように、第2吸気口41bは、車幅方向で最も外側に位置するシートレール16Rbの下方に配置される。比較的閉鎖され空気循環の少ない後部座席17の下の車幅方向中央部に比べて車幅方向で最も外側に位置するシートレール16Rbの下方は、低温のエアコン循環気流が到達しやすく、第2吸気口41bから温度がコントロールされた車室11の空気を取り込みやすい。また、車両中央には排気管等の発熱体が配置されることが多いため、第2吸気口41bを車幅方向で最も外側に位置するシートレール16の下方に配置することで、温度の低い空気を吸い込むことができる。なお、ダクト本体41が一対のシートレール16La、16Lbの間に配置されるとともに、第2吸気口41bがシートレール16Laの下方に配置されてもよい。また、これに限らず、第2吸気口41bがシートレール16Lb又はシートレール16Raの下方に配置されてもよい。
【0023】
図5に示すように、第2吸気口41bの周囲には、カーペット18が第2吸気口41bを塞ぐのを規制する突起部41gが分岐部44と一体又は別体に設けられている。具体的に説明すると、突起部41gは、カーペット18の車幅方向の端部に係合し、カーペット18が車幅方向にずれて第2吸気口41bを塞ぐことを防止している。本実施形態では、突起部41gは、分岐部44の周囲に設けられた発泡目地材(エプトシーラー)であり、吸気ダクト4を覆うカーペット18の移動を規制する。これにより、カーペット18からダクト本体41が露出することを回避しつつ、カーペット18が第2吸気口41bを塞ぐことを防止できる。なお、突起部41gは、後部座席17下のリヤフロアパネル部14を覆うカーペット19と上下方向の高さを揃えることで、カーペット19が第2吸気口41bを塞ぐことも防止する。
【0024】
なお、前述した実施形態は、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、シートは、後部座席に限定されず、前部座席であってもよい。また、シートを支持する支持部材は、シートレールに限定されず、シートを固定的に支持する部材であってもよい。
【0025】
さらに、第2吸気口41bの数は、一つに限らず、複数あってもよく、第2吸気口41bをメイン吸気口として利用してもよい。第2吸気口41bをメイン吸気口として利用する場合、第1吸気口41aは必ずしも必要ではない。
【0026】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0027】
(1) フロアパネル(リヤフロアパネル部14)に支持部材(シートレール16)を介して支持されたシート(後部座席17)と、
前記シートの後方に配置されるバッテリパック(バッテリパック1)と、
吸気口(第2吸気口41b)を有し、前記吸気口から取り入れた空気を前記バッテリパックに供給する吸気ダクト(吸気ダクト4)と、を備える電動車両(電動車両V)であって、
前記吸気口は、
上方から見て前記支持部材と重なる位置に配置され、
上下方向において前記フロアパネルと前記支持部材との間に位置する、電動車両。
【0028】
(1)によれば、吸気ダクトの吸気口は、上方から見て前記支持部材と重なる位置に配置されているので、吸気口が塞がれるのを抑制することができる。
【0029】
(2) (1)に記載の電動車両であって、
前記吸気ダクトは、
前記シートの下方を前後方向に延びるダクト本体(ダクト本体41)と、
前記ダクト本体から車幅方向に延びる分岐部(分岐部44)と、を備え、
前記ダクト本体には、第1吸気口(第1吸気口41a)が設けられ、
前記分岐部には、前記吸気口である第2吸気口(第2吸気口41b)が設けられている、電動車両。
【0030】
(2)によれば、メインの吸気口であるダクト本体の第1吸気口が塞がれた場合であっても、支持部材の下方に配置された第2吸気口がエマージェンシー吸気口として機能する。
【0031】
(3) (2)に記載の電動車両であって、
前記ダクト本体の上部には、カーペット(カーペット18)が設けられ、
前記第2吸気口の周囲には、前記カーペットが前記第2吸気口を塞ぐのを規制する突起部(突起部41g)が前記分岐部と一体又は別体に設けられている、電動車両。
【0032】
(3)によれば、カーペットにより吸気ダクトが露出するのを避けつつ、第2吸気口の周囲に設けられた突起部によりカーペットが第2吸気口を塞ぐのを防止できる。
【0033】
(4) (2)又は(3)に記載の電動車両であって、
前記第1吸気口は、
前記上下方向で上方を向く上方開口部(上方開口部41c)と、
前記上方開口部から前方に向かって斜め下方に傾斜した傾斜面(傾斜面41d)に設けられる前方開口部(前方開口部41e)と、を備え、
前記前方開口部の前端部は、前記シートの前端部と同じ位置、又は前記シートの前端部よりも後方に配置されている、電動車両。
【0034】
(4)によれば、前方開口部の前端部は、シートの前端部と同じ位置、又はシートの前端部よりも後方に配置されているので、乗員が水をこぼしたり、異物を落とした場合でも、水、異物が第1吸気口に侵入するのを防止できる。さらに、第1吸気口が上方開口部及び前方開口部を備えるので、荷物等により前方開口部が塞がれた場合でも、上方開口部から空気を吸い込むことができる。
【0035】
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の電動車両であって、
前記支持部材は、前記シートを前後方向に案内する一対のシートレール(シートレール16)のいずれか一方である、電動車両。
【0036】
(5)によれば、吸気口は、前後方向に延びる一方のシートレールの下方に配置されるので、前後方向位置を適宜選択することができ、設計の自由度が高い。
【0037】
(6) (5)に記載の電動車両であって、
前記一方のシートレールは、車幅方向で最も外側に位置するシートレールである、電動車両。
【0038】
(6)によれば、比較的閉鎖され空気循環の少ないシート下の車幅方向中央部に比べて車幅方向で最も外側に位置するシートレールの下方は、低温のエアコン循環気流が到達しやすい。また、車両中央には排気管等の発熱体が配置されることが多い。そのため、吸気口を車幅方向で最も外側に位置するシートレールの下方に配置することで、温度の低い空気を吸い込むことができる。
【0039】
(7) (5)又は(6)に記載の電動車両であって、
前記吸気ダクトは、前記一対のシートレールの間に配置されている、電動車両。
【0040】
(7)によれば、一対のシートレールの間の空間を有効に利用できる。
【符号の説明】
【0041】
V 電動車両
1 バッテリパック
4 吸気ダクト
14 リヤフロアパネル部
16 シートレール
17 後部座席
18 カーペット
41 ダクト本体
41a 第1吸気口
41b 第2吸気口
41c 上方開口部
41d 傾斜面
41e 前方開口部
41f 分岐部
41g 突起部