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特許7181921基本負荷曲線の集計を包含する負荷曲線の平滑化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】基本負荷曲線の集計を包含する負荷曲線の平滑化
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20221124BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/00 130
H02J13/00 301B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020503790
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-08
(86)【国際出願番号】 FR2018051179
(87)【国際公開番号】W WO2019025673
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】1757323
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513293016
【氏名又は名称】ヴォルタリ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビノー,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】オートール,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ピナール,バンジャマン
(72)【発明者】
【氏名】タン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ウリー,ジャン マルク
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ,ブルーノ
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0030391(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0238156(US,A1)
【文献】特開2005-224023(JP,A)
【文献】特開昭59-005307(JP,A)
【文献】特開2013-074698(JP,A)
【文献】特開2002-199623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷消費量を管理および/または監視するためのシステムにより取得される複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を平滑化する方法であって、各基本負荷曲線が周期的調整負荷iの消費量の時間的変化に相当し、前記消費量の時間的変化は、調整周期d i の周期的パターンに従っており、
以下のステップすなわち、
前記対応する周期的調整負荷iに関連付けられた前記調整周期diを決定するステップと、
各調整周期diの約数であるサンプリング周期Techで複数の測定消費量サンプルを取得することにより各基本負荷曲線を決定および記憶するステップと、
前記負荷のすべてに共通する基準時点t0を始点として、サンプリング周期Techと、前記周期的調整負荷iについて決定された調整周期diと、前記周期的調整負荷iと関連するランダム整数値Niとに応じたランダムシフトΔtiにより、各周期的調整負荷iの動作と記憶された各基本負荷曲線の少なくとも一部とのうちいずれかを時間シフトするステップと、
を包含する方法。
【請求項2】
周期的調整負荷iの動作を時間シフトする前記ステップが、前記負荷のすべてに共通する前記基準時点t0を始点として、各周期的調整負荷iについて、前記周期的調整負荷iの動作を停止させる命令と、次に前記周期的調整負荷iの動作を再始動させる命令とを連続的に発行することを包含することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記周期的調整負荷iの動作を再始動する前記命令が、
【数1】

の関係により求められるランダム再始動時点に発行され、
0 repiが、以下の二つの関係
【数2】

(PGCDは最大公約数関数である)
を満たす時点であることと、
前記周期的調整負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記負荷のすべてに共通する前記基準時点t0より大きいか等しく、前記ランダム再始動時点ti repより小さい停止時点に発行されることと、
を特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記周期的調整負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記基準時点t0に前記負荷のすべてについて発行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記周期的調整負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記負荷のすべてに共通する前記基準時点t0と前記ランダム再始動時点ti repとの間の間隔内で任意に選択される時点に発行されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記周期的調整負荷iの動作を停止させる前記命令が、同じ調整周期diを有するいかなる負荷についても前記ランダムシフトΔtiが同一であるように選択される時点に発行されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプリング周期Techに等しくなるように前記ランダムシフトΔtiが設定されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
記憶された各基本負荷曲線の一部を時間シフトする前記ステップが、前記負荷のすべてについて同一である第1時点を始点として取得される測定サンプルを包含する各曲線の前記一部を選択することと、前記第1時点より遅い第2時点と前記始点を一致させるように選択された前記一部をシフトさせることとを包含することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
記憶された各基本負荷曲線の一部を時間シフトする前記ステップが、停止のシミュレーションである第1時点と、再始動のシミュレーションであって前記第1時点に続く第2時点とを決定することを包含し、各曲線の前記一部の選択が、前記基準時点に対応する第3時点と前記負荷の前記調整周期に対応する値との和に続いて取得されるサンプルの測定と、前記始点を前記第2時点と一致させるように選択された前記一部をシフトさせることと、前記第1時点と前記第2時点との間に位置する曲線部分を削除することとを包含することとを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2時点が、
【数3】

の関係により求められるランダム時点であり、
0 repiが以下の二つの関係
【数4】

(PGCDは最大公約数関数)
を満たす時点であることと、
前記負荷のすべてについて共通の前記基準時点t0より大きいか等しく、前記第2時点より小さくなるように前記第1時点が選択されることと、
を特徴とする、請求項8および9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
前記周期的調整負荷iに関連付けられた前記調整周期diが、前記関連の負荷曲線に基づいて前記調整周期diを推定することにより、または前記調整周期を所定値に設定することにより決定されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ランダム整数値Niが0より大きいか等しく、「(di/Tech)-1」より小さいか等しいことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定できるように負荷消費量を管理および/または監視するシステムであって、各基本負荷曲線が周期的調整負荷iの前記消費量の時間的変化に相当し、前記消費量の時間的変化は、調整周期d i の周期的パターンに従っており、
以下のステップすなわち、
前記対応する周期的調整負荷iに関連付けられた前記調整周期diを決定するステップと、
各調整周期diの約数であるサンプリング周期Techで複数の測定消費量サンプルを取得することにより各基本負荷曲線を決定および記憶するステップと、
前記負荷のすべてに共通する基準時点t0を始点として、前記サンプリング周期Techと、前記周期的調整負荷iについて決定された前記調整周期diと、前記周期的調整負荷iと関連するランダム整数値Niとに応じたランダムシフトΔtiにより、各周期的調整負荷iの動作と記憶された各基本負荷曲線の少なくとも一部のいずれかを時間シフトするステップと、
を適用することにより前記総合負荷曲線を平滑化できる手段を有するシステム。
【請求項14】
負荷の電気エネルギー消費量を管理および/または監視でき、複数の消費者の家庭に置かれて配電網に接続される家庭用電気器具を包含する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
第一に、各消費者(11,...1i,...1N)の家庭において、接続された少なくとも一つの電気器具(21 i,22 i,23 i)の電気消費量を測定するとともに、動作を停止させる命令と動作を再始動させる命令とを前記少なくとも一つの電気器具(21 i,22 i)に発行することが可能な少なくとも一つの第1電子機器(31,...3i,...3N)と、前記少なくとも一つの第1電子機器に接続される少なくとも一つの第2電子通信機器(41,...4i,...4N)と、第二に、前記サンプリング周期Techで前記複数の測定消費量サンプルをリアルタイムで取得するため前記少なくとも一つの第2電子通信機器(41,...42,...4N)によって前記少なくとも一つの第1電子機器と通信できる少なくとも一つの中央サーバ(5)とを有するシステムであることを特徴とする、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも一つの第1電子機器および前記少なくとも一つの第2電子機器が単一のハウジングに一体化されることを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定できるように負荷の集合のエネルギー消費量を管理および/または監視するための方法およびシステムに関し、各基本負荷曲線は、前記集合に属しており動作が周期的に調整される負荷の前記消費量の時間的変化に相当する。
【背景技術】
【0002】
本発明が排他的にではなく特に対象とする一つの適用分野は、特に多数の電気器具、例えば多数の消費者の家庭に置かれて配電網に接続される家庭用電気器具の電気消費量を管理および/または監視することである。
【0003】
少なくとも一つの電気器具の電気消費量を好ましくは継続的に測定できるように監視されるこのような電気器具に局所的に接続される少なくとも一つの電子機器を複数の箇所(家庭、商業ビル、コミュニティ等)に設置することは、このようなシステムでは従来から行われている。そして一つ以上のサーバの形の専用集中プラットフォームが測定電気消費量サンプルをリアルタイムで取得し、前記システムの各局所的電子機器によりこれが通信される。こうしてプラットフォームは、監視される負荷つまり前記電気器具での相対的消費量の時間的変化であると言える前記基本負荷曲線を決定し、これらの基本負荷曲線を集計することにより総合負荷曲線をこれから推測することができ得る。
【0004】
出願人は、多数の利用者の前記家庭に置かれる非常に多数の電気器具で構成される前記集合の消費量を管理するためのこのようなシステムを提案し、取得される様々な前記負荷曲線はとりわけ、拡散抑制サービスと呼ばれるものを提案することを可能にし、このサービスによって、集合のエネルギー消費量を所与の設定値まで減少させるように、前記システム、とりわけ中央プラットフォームが動作を一時的に停止させる命令を送る先である電気器具の小集合を前記電気器具の集合からリアルタイムで選択することを可能にする。このタイプのシステムは、例えば特許文献1または特許文献2に見られる。このシステムは、停止および再始動の命令を介して、多数の利用者の消費量を分析することにより、或る電気器具への電力の供給を選択的に調節することも可能にして、所与の時点で利用可能な電気生産量に前記電気消費量を適応させることを可能にする。
【0005】
上に記載した前記システムにおいて、前記集中プラットフォームは、概しておよそ10分程度のサンプリング周期で測定電気消費量サンプルを取得する。
【0006】
さらに、サンプリング周期を短縮することにより、一層正確な総合負荷曲線を決定できることも望ましい。しかしながら、一般的にはおよそ10秒程度のはるかに短いサンプリング周期を使用すると、前記基本負荷曲線を集計した後に取得される前記総合負荷曲線が干渉に大きく影響されるという状況に出願人は直面した。図1は、10秒に等しいサンプリング周期Techで測定電気消費量サンプルを得ることによりおよそ1時間の周期にわたって取得される負荷曲線CTOTの例を図示しており、前記負荷曲線CTOTの上に重ねられた太い不連続線のトレースで示されているように、およそ10分程度のサンプリング周期の使用では不可視であった大きな変動がこの負荷曲線から明らかになる。
【0007】
これらの変動の存在は、前記総合負荷曲線を正確に推定することをより一層困難にする。加えてこれらの変動は、拡張が不可能な際に送電線の劣化または混雑を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/017754号
【文献】国際公開第2012/172242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、この問題の解決法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これを目的として、本発明の一つの主題は、負荷消費量を管理および/または監視するためのシステムにより取得される複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を平滑化する方法であり、各基本負荷曲線は周期的調整負荷iの消費量の時間的変化に相当し、この方法は以下のステップすなわち、
前記対応の負荷iと関連する調整周期diを決定するステップと、
各調整周期diの約数であるサンプリング周期Techで複数の測定消費量サンプルを取得することにより各基本負荷曲線を決定および記憶するステップと、
前記負荷のすべてに共通する基準時点t0を始点として、前記サンプリング周期Techと前記負荷iについて決定された前記調整周期diと前記負荷iと関連するランダム整数値Niとに応じたランダムシフトΔtiにより、各負荷iの動作と記憶された各基本負荷曲線の少なくとも一部のいずれかを時間シフトするステップと、
を包含する。
【0011】
上の段落で述べたばかりの主な特徴に加えて、本発明による方法は、以下すなわち
各負荷iの動作を時間シフトする前記ステップが、前記負荷のすべてに共通する基準時点t0を始点として、前記負荷iの動作を停止させる命令と、それから前記負荷iの動作を再始動させる命令とを各負荷iについて連続的に発行することと、
前記負荷iの動作を再始動させる前記命令が好ましくは、
【数1】
(t0 repiは以下の二つの関係を満たす時点である。)
【数2】
の関係により求められるランダム再始動時点に発行され、
PGCDが最大公約数関数であり、前記負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記負荷のすべてに共通の前記基準時点t0より大きいか等しく前記ランダム再始動時点ti repより小さい停止時点に発行されることと、
前記負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記基準時点t0に前記負荷のすべてについて発行され、変形例として、前記負荷iの動作を停止させる前記命令が、前記負荷のすべてに共通する前記基準時点t0と前記ランダム再始動時点ti repとの間の間隔内において任意で選択される時点に発行されることと、
前記サンプリング周期Techと等しくなるように同じ調整周期diを有する何らかの負荷、例えば集合について前記ランダムシフトΔtiが同一であるように選択された時点に、前記負荷iの動作を停止させる前記命令が発行されることと、
別の可能な実施形態において、記憶された各基本負荷曲線の一部を時間シフトする前記ステップが、前記負荷のすべてについて同一である第1時点を始点として取得される測定サンプルを包含する各曲線の前記一部を選択することと、前記第1時点より遅い第2時点と前記始点を一致させるように選択された前記一部をシフトさせることとを包含することと、
変形例として、記憶された各基本負荷曲線の一部を時間シフトする前記ステップが、停止のシミュレーションである第1時点と、再始動のシミュレーションである前記第1時点に続く第2時点とを決定し、各曲線の前記一部の選択が、前記基準時点に対応する第3時点と前記負荷の前記調整周期に対応する値との和に続いて取得される測定サンプルを包含することと、前記始点を前記第2時点と一致させるように選択された前記一部をシフトすることと、前記第1時点と前記第2時点との間に位置する曲線部分を削除することとを包含することと、
前記第2時点が好ましくは、関係
【数3】
(t0 repiは以下の二つの関係を満たす時点である。)
【数4】
(PGCDは最大公約数関数)
により求められるランダム時点であることと、
前記負荷のすべてに共通する前記基準時点t0より大きいか等しく前記第2時点より小さくなるように前記第1時点が選択されることと、
前記負荷iと関連する前記調整周期diが、前記関連の負荷曲線に基づいて前記調整周期diを推定することにより、または前記調整周期を所定値に設定することにより決定されることと、
前記ランダム整数値Niが、0より大きいか等しく「(di/Tech)-1」より小さいか等しい何らかの整数であることと、
のうち一つ以上の追加特徴を有しうる。
【0012】
本発明の別の主題は、複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定できるように負荷消費量を管理および/または監視するためのシステムであり、各基本負荷曲線は周期的調整負荷iの前記消費量の時間的変化に相当し、このシステムは以下のステップすなわち、
前記対応の負荷iと関連する調整周期diを決定するステップと、
各調整周期diの約数であるサンプリング周期Techで複数の測定消費量サンプルを取得することにより各基本負荷曲線を決定および記憶するステップと、
前記負荷のすべてに共通する基準時点t0を始点として、前記サンプリング周期Techと、前記負荷iについて決定される前記調整周期diと、前記負荷iと関連する前記ランダム整数値Niとに応じたランダムシフトΔtiにより、各負荷iの動作または記憶された各基本負荷曲線の少なくとも一部のいずれかを時間シフトするステップと、
を適用することにより前記負荷曲線を平滑化できる手段を有する。
【0013】
このシステムは例えば、負荷の電気エネルギー消費量を管理および/監視でき、複数の消費者の家庭に置かれて配電網に接続される家庭用電気器具を包含するシステムである。
【0014】
これは、第一に、各消費者の前記家庭において、接続される少なくとも一つの電気器具の前記電気消費量を測定して、動作を停止させる命令と動作を再始動させる命令とを少なくとも一つの電気器具へ発行することのできる少なくとも一つの第1電子機器と、前記第1電子機器に接続される少なくとも一つの第2電子通信機器、そして第二に、前記サンプリング周期Techで前記複数の測定消費量サンプルをリアルタイムで取得するため前記第2電子通信機器によって前記第1機器と通信できる少なくとも一つの中央サーバとを有する。
【0015】
前記第1および第2電子機器は単一のハウジングに一体化されうる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図を参照して行われる以下の説明を読むと本発明がより良く理解されるだろう。
図1】すでに上に記載したが、10秒まで短縮されたサンプリング周期で作動する先行技術による基本負荷曲線を集計するためのシステムを使用して取得される負荷曲線の一例が挙げられている。
図2】3台の電気ラジエータについて負荷曲線の三つの例を図示する。
図3】集計で取得された負荷曲線部分が三つの信号に分解されている。
図4】本発明の一つの可能な実施形態による平滑化方法のステップを概略的に示す。
図5】本発明による平滑化の適用の前と後に取得される集計後の負荷曲線の比較を示す。
図6】デジタル処理を使用して、本発明の別の可能な実施形態による平滑化方法の原理を図示する。
図7】本発明によるデジタル処理を使用する平滑化方法の変形例を図示する。
図8】本発明による複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定できるように、負荷消費量を管理および/監視するためのシステムの例示的な構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
残りの開示では、複数の電気器具の電気消費量の時間的展開に相当する基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定するという面において本発明が記載される。しかしながら、例えば検討対象の負荷が周期的調整を受ける時には、検討対象の負荷がオール・オア・ナッシングモードで作動して前記消費量が周期的パターンを取るとすぐに本発明の原理が他のタイプの消費エネルギーに概して適用されうることが分かるだろう。
【0018】
図1を参照して上で指摘されたように、残りの開示ではTechと記される多数の消費者の前記家庭に置かれる電気器具により形成される前記負荷について測定された電気消費量を取得するための前記サンプリング周期がおよそ10秒程度まで短縮された時に、複数の基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線についての大きな変動の現象が出願人により観察された。また試験とシミュレーションから、例えば配電網での全体的停電のケースのように、監視対象の電気器具の少なくとも幾つかが同時または事実上同時に再始動される時にはこの現象が増幅されることが分かっている。
【0019】
この現象のより詳しい分析により、現時点で、ラジエータ、空調システム、冷蔵庫、冷凍庫、ハロゲン照明システムのような多数の家庭用電気器具が周期的調整によるオール・オア・ナッシング状態を有するという事実を認識することにより、原因をより正確に判断することが可能になる。例を挙げると、図2は、3台の市販ラジエータについて取得された3本の負荷曲線C1,C2,C3を図示している。前記ラジエータの各々により消費される電力、それぞれP1cons,P2cons,P3consの時間的変化を表すこれらの曲線C1,C2、C3が、ラジエータごとに異なるそれぞれd1,d2,d3の調整周期とサイクル期間とを持つオール・オア・ナッシングモードで前記ラジエータの各々の動作を示すことは明白である。これらの器具が停電の後に、または時間指示(タリフ信号、クロック等)の後に始動する状況ではとりわけ、多数の電気器具が同時に作動することがあるので、この周期的調整挙動は集計後の負荷曲線で観察される大きな変動の事実上の原因である。
【0020】
こうして、同時にオンになる周期的調整による電気負荷の集合から始めると、図3に示されているノイズの影響による曲線部分CTOTのような前記集計後の負荷曲線が三つの信号つまり
非周期的傾向Tと、
前記電気負荷の周期的調整から生じる第1構造化ノイズB1と、
従来のフィルタリングにより容易に除去されうる第2非構造化低振幅ノイズB2と、
に分解されうると示すことが可能である。
【0021】
前記総合負荷曲線を可能な限り平滑化するため、つまり前記第1構造化ノイズB1を可能な限り減衰させるため、このノイズは以下ではdiと記される前記調整周期での同じ周期的調整による多数の電気負荷iの同期化から生じるのであるが、本発明は、前記負荷のすべてに共通の基準時点t0を始点として、前記サンプリング周期Techと、前記負荷iについて決定される前記調整周期diと、前記負荷iと関連する前記ランダム整数値Niとに応じたランダム時間シフトΔtiを負荷iについて適用することにより前記負荷の非同期化を強制的に行うことを提案する。
【0022】
各負荷に固有の前記ランダム時間シフトは、
前記電気負荷の動作に直接的に作用することと、
すでに取得および記憶された負荷曲線部分のデジタル処理を実施すること、
のいずれかにより、以下で詳しく記載される二つの手法で適用される。
【0023】
<負荷iの動作の時間シフト>
前記負荷のすべてに共通の基準時点t0を始点として各負荷iの動作にランダム時間シフトを適用するという一般原則は、前記負荷iの動作を停止させる命令、それから前記負荷iの動作を再始動させる命令を各負荷iに対し連続的に発行することにより具現される。
【0024】
以下の表記と特定の特徴がこれから使用される。
iは、消費量が監視される負荷を表し、指数の形で所与のパラメータに代入された時にはこのパラメータが負荷に関係する。
iは負荷iと関連する調整周期である。
echは、負荷の測定消費量サンプルを取得するためのサンプリング周期であり、Techは各調整周期diの約数、例えば10秒である。
0は、負荷のすべてに共通の基準時点である。
i coupは、負荷iの停止時点、つまり負荷iに停止命令が発行される時点である。
i repは、負荷iの再始動時点、つまり負荷iに再始動命令が発行される時点である。
「Δti=ti rep-ti coup」は、負荷iの動作の停止期間である。
0 repiは、可能な再始動時点のうち最初のものである。
iは、0に等しいランダム整数値である。
【0025】
負荷iの前記再始動時点ti repは、
【数5】
の関係により求められるランダム時点であり、
0 repi(可能な再始動時刻のうち最初のもの)は以下の二つの関係を満たす。
【数6】
PGCDは最大公約数関数である。
【0026】
前記停止時点ti coupは、間隔[t0;ti rep]内で任意に選択される一部についてのものであり、ゆえに負荷ごとに異なる。
【0027】
しかしながら以下が選択されることが好ましい。
実行容易性を優先することが望ましい場合には、前記基準時点t0と一致する停止時点ti coup
前記停止時点の調和が望ましい場合には、Δtiが前記負荷のすべてについて同一であるように前記再始動時点に先行する停止時点ti coup。前記負荷の動作の中断の短縮を優先するのと同時に前記システムのサンプリング頻度を維持することが望ましい場合には、この期間はTechに等しい。
【0028】
最速プロセスは、限定された値の間隔[0;(di/Tech)-1]内で整数値Niをランダムに選択することである。
【0029】
純粋に例示的な一つの例で、前記共通の基準時点t0が毎日03:00になるように選択され、10秒のサンプリング周期が選択され、20秒の停止時間Δtiが選択される場合には、例えば、60秒に等しい調整周期の電気負荷iについて03:00:30の第1停止時点を選択することが可能である。この同じ負荷は、03:00:30(Ni=0)から、03:01:20(Ni=1)から、03:02:10(Ni=2)から、03:03:00(Ni=3)から、03:03:50(Ni=4)から、または03:04:40(Ni=5)からランダムに始まって20秒間停止される動作を有するだろう。
【0030】
上の方程式を適用した複数の基本負荷曲線Ciの集計を包含する前記総合負荷曲線を平滑化するための方法の一例は、図4に概略的に示されているステップにより要約されうる。前記ステップはここでは或る順序で示されているが、最初の二つのステップが交換されてもよい。第1ステップS1で、負荷iと関連する調整周期diが決定される。この決定は、監視される負荷のタイプと関連の調整周期との先験的な知識を通して実施されうる。第2ステップS2では、各調整周期の約数である単一のサンプリング周期Techで複数の測定消費量サンプルを取得することにより、各負荷iの前記基本負荷曲線が決定される。
【0031】
変形例(不図示)として、ステップS1とS2が交換される。ゆえに、例えば前記基本負荷曲線の二つの立ち上がりエッジの間の平均期間を測定することにより、前記基本負荷曲線を使用して前記関連の調整周期diを推定することが可能である。この測定が可能でない場合、例えば前記負荷曲線がゼロである(所与の時点で負荷が消費を行っていない)場合には、検討対象の前記負荷に既定の調整周期が割り当てられる。最終ステップS3は、前記サンプリング周期Techと前記調整周期diと前記ランダム整数値とに応じたランダムシフトΔtiにより各負荷iの前記動作を時間シフトするように停止および再始動シーケンスを各負荷iに適用するという段階に相当する。前記停止および再始動時点は、方程式1および2のグループにより定義される。前記共通の調整周期のため本発明による前記時間シフト処理の前に同期化される可能性のある前記負荷は、非同期化される。このプロセスの後に採取される測定消費量サンプルから取得される前記基本負荷曲線すべては、非常に正確な推定を行うことが可能な平滑化集計曲線をリアルタイムで取得することを可能にする。前記負荷の動作に作用するこのプロセスは、好ましくは、例えば毎日同じ時刻に規則的に反復される。変形例として、幾つかの負荷が同期化動作を行っているという先行の検出に続いてこのプロセスが開始され、この検出は例えば前記基本負荷曲線を分析することにより実施される。
【0032】
図5は、図4による方法を適用した後に、前記得られた総合負荷曲線CTへの平滑化作用(図の右側部分)を示す例を図示している。処理の前に存在した変動の作用(図5の左側部分)は本発明によって大きく軽減されることが観察可能である。
【0033】
<負荷曲線部分のデジタルシフト>
上に記載した前記負荷の動作の時間シフトは、当然ながら、監視している前記負荷の動作に対して前記システムが停止および再始動命令により効果的に作用できることを前提としている。これが当てはまらない場合には、前記すでに取得および記憶された基本負荷曲線に純デジタル処理を実施することが同じように可能である。この目的のため、前記停止時点のシミュレーションである第1時ti 1に続く各記憶負荷曲線の一部を選択することにより、そして前記再始動時点のシミュレーションである前記第1時点に続く第2時点ti 2と前記始点が一致するようにこの選択された一部をシフトすることにより、各負荷iについての再始動命令に続く停止命令をシミュレーションするだけで充分である。言い換えると、前記時点ti 1およびti 2が上に記載したti coupおよびti repにそれぞれ置き換わる様々なデジタル処理操作を適用することが可能である。それゆえ、前記負荷のすべてに同一の停止時点を付与することにより、上に挙げた方程式1および2を使用することが可能である。
【0034】
図6は、部分(a)での処理前の基本負荷曲線と、部分(b)での処理の結果の基本負荷曲線との例により、このデジタル処理を概略的に示す。
【0035】
前記負荷のすべてに共通する上述の基準時点を表すために、この図6で表記t0が再使用されている。前記基準時点t0と前記停止のシミュレーションである前記第1時点t1との間で部分(a)に位置する前記負荷曲線の部分は、部分(b)では無変化のままである。対照的に、前記停止のシミュレーションである前記第1時点t1に続いて部分(a)に位置する前記負荷曲線の部分は、その始点が再開のシミュレーションである前記第2時点t2と一致するように部分(b)では右にシフトされている。前記第1時点t1と前記第2時点t2との間に位置する処理後の前記曲線の空間は、ゼロの値を持つサンプルを包含する。
【0036】
デジタル処理を使用する平滑化方法の一つの変形例が図7に図示されており、部分(a)での処理前の基本負荷曲線と、部分(b)での前記処理の結果生じる基本負荷曲線との例をやはり含む。このケースでも、前記基準時点t0と前記停止のシミュレーションである前記第1時点t1との間で部分(a)に位置する前記負荷曲線の部分は、部分(b)では無変化のままである。対照的に、部分(a)で時点t0+dに始まる前記曲線の部分(dは前記負荷の調整周期)は、部分(b)では前記再始動のシミュレーションである前記時点t2に戻されている。前記停止のシミュレーションである前記第1時点t1と前記第2時点t2との間で部分(a)に位置する前記負荷曲線の部分は、部分(b)では削除されてゼロの値を持つサンプルと置き換えられている。図6に示された前記変形例と対照的に、前記停止のシミュレーションである前記第1時点t1が前記負荷のすべてに共通することを求めるのはここでは必要ない。
【0037】
リアルタイム処理が望ましい場合には、図6による前記デジタル処理変形例が優先されるべきである。
【0038】
観察されたものに近い処理が実際には前記負荷の動作の停止であることが望ましい場合には、図7による前記デジタル処理変形例が優先されるべきである。
【0039】
可能性のある別のデジタル処理は、前記基本負荷曲線のすべてが刻時されるので、共通の基準時点t0を始点として、Niechに等しい値(Ni
【数7】
の集合からランダムかつ均一に選択される整数)により調整周期diの各負荷の前記刻時をシフトすることが可能であるという事実を用いる。
【0040】
図8は、上で概説した方法の一つに従った、本発明による平滑化方法を具現できるように電気負荷消費量を監視および/または管理するためのシステムの例示的な構造を挙げている。
【0041】
この図は様々な家庭11,...1i,...1Nを示し、その各々が、配電網(不図示)に接続される監視対象の一つ以上の電気器具、例えば電気暖房システム、空調システムその他を備えている。ゆえに非限定的な例として、前記家庭11は単一の電気器具21 iを有し、前記家庭1は3台の電気器具21 i,22 i,23 iを有し、前記家庭1Nは2台の電気器具21 N,22 iNを有する。前記システムはさらに、各消費者の前記家庭において、
前記様々な電気器具により消費される電圧および電流を好ましくは継続的に測定するとともに、動作を停止させる命令と動作を再始動させる命令とを前記家庭での監視対象の電気器具の各々に選択的に送るように、前記家庭で監視される前記電気器具に電気接続される少なくとも一つの第1電子機器31,...3i,...3Nと、
前記第1機器に接続される少なくとも一つの第2電子通信機器41,...4i,...4Nと、
を有する。
【0042】
最後にシステムは、前記サンプリング周期Techの複数の測定消費量サンプルをリアルタイムで取得するため前記第2電子通信機器によって前記第1電子機器と通信できる少なくとも一つの中央サーバ5を有する。前記基本負荷曲線の集計を包含する前記総合負荷曲線の取得は、この中央サーバで行われる。
【0043】
前記第1電子機器と前記第2電子機器と前記中央サーバ5とはそれぞれ、例えば前記出願人の名による文献である国際公開第2008/017754号に記載された変調器ハウジングと制御ハウジングと遠隔外部プラットフォームに対応する。本件のケースでは、各変調器ハウジングにより実施される前記消費量測定は、前記サンプリング周期Techで前記制御ハウジングを介して外部プラットフォームへ送信される。この測定値の周期的送信は、前記システムの前記制御ハウジングに一体化される無線通信モデムによって実施され、前記無線通信モデムは、GPRS、3G、4Gのようなパケット交換電話網を通して前記外部プラットフォームに接続することを可能にする。代替的に、前記中央サーバへの接続はADSLリンクを介して行われうる。前記制御ハウジングは好ましくは図8に示されているような前記変調器ハウジングから分離されており、好ましくは電力線通信またはPLCを通し、有線リンクを介してこれに接続される。この目的のため、前記変調器と制御ハウジングの各々はPLCモデムを備えている。こうして前記制御ハウジングは複数の変調器ハウジングに接続され、前記外部プラットフォームへ送信するため測定値をこのハウジングから収集する。短距離無線モデムまたは温度センサなどの追加モジュールの接続の受容を可能にするUSBポートを前記制御ハウジングが有すると有利である。ゆえに、この無線周波数チャネルを介して前記変調器ハウジングから前記測定値が送信されるための用意を設けることも可能である。
【0044】
変形例として、前記第1および第2電子機器が単一のハウジングに一体化されうる。
【0045】
これらの様々な変形例で上に提示したような本発明による平滑化方法は、図8の前記システムにより様々な手法で具現されうる。
【0046】
第1の可能な具現例によれば、各第2電子機器4,4,...4が、接続される各電気器具の前記基本負荷曲線を局所的に決定および記憶するとともに関連の調整周期を推定することを可能にするための用意が設けられうる。
【0047】
各第2電子機器41,...4i,...4Nは、上に概説した原理に従って、記憶された基本負荷曲線部分と前記電気器具の動作のいずれかを対応のランダムシフトにより時間シフトすることも可能である。例えば、各第2電子機器41,...4i,...4Nは、この電気器具に連続的に発行される動作停止命令と動作再始動命令とを送信することにより前記対応のランダムシフトで前記電気器具の動作を時間シフトする。
【0048】
第二の具現例によれば、各電気器具の基本負荷曲線を局所的に決定および記憶するというタスクとその関連の調整周期の推定とを担当するのは、前記中央サーバ5である。そして前記中央サーバ5は、接続された前記第1電子機器によりこの1台の電気器具に連続的に発行される動作停止命令と動作再始動命令とを送信することにより、対応のランダムシフトで前記電気器具の動作を時間シフトする。このケースでは、動作を停止させる命令と、次に動作を再始動させる命令との前記送信が引き継がれ、前記第2電子通信機器により前記第1電子機器へ中継される。
【0049】
複数の電気器具の電気消費量の時間的展開に相当する基本負荷曲線の集計を包含する総合負荷曲線を決定するという面において本発明が記載されたが、前記負荷消費量の概念は、示量変数によって測定されうるとともに流量と関連しうる何らかの物理現象に相当する。それゆえ本発明は、例えば検討対象の負荷が周期的な調整を受ける時に、前記検討対象の負荷がオール・オア・ナッシングモードで作動して前記消費量が周期的パターンを取るとすぐに、ガス、水、電子、光子など他のタイプの消費エネルギーに適用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8