(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】熱測定を伴う測定システム
(51)【国際特許分類】
G01B 21/02 20060101AFI20221124BHJP
G01B 11/02 20060101ALI20221124BHJP
G01N 25/16 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01B21/02 Z
G01B11/02 H
G01N25/16 Z
(21)【出願番号】P 2020519707
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2018077068
(87)【国際公開番号】W WO2019068840
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-03
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】520114812
【氏名又は名称】オサケユキチュア マップヴィジョン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ユスリン,ヤンネ
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-524136(JP,A)
【文献】特表2014-527170(JP,A)
【文献】特開2014-228402(JP,A)
【文献】特開2004-138449(JP,A)
【文献】特開2010-169590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/02-21/32
G01B 11/00-11/30
G01N 25/00-25/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定構成を用いて対象物を測定する方法であって、
少なくとも1つの対象物を測定するステップであって、前記少なくとも1つの対象物の寸法及び熱分布を測定するステップを含む、ステップと、
前記の測定された熱分布を記憶された複数の熱補償プロファイルと比較するステップと、
前記の測定された熱分布を表す少なくとも1つの熱補償プロファイルを特定するステップと、
前記の特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルに関連付けられた少なくとも一組の補償係数を受け取るステップと、
前記の受け取られた一組の熱補償プロファイルを前記の測定された少なくとも1つの対象物の寸法に適用し、熱補償プロファイル補償された寸法を生成するための、ステップと、
特定された少なくとも2つの熱補償プロファイルから補償係数を計算するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記方法はさらに、
少なくとも1つの熱補償プロファイルを特定するときに、前記の特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルを閾値と比較するステップと、
前記の測定された熱分布中の少なくとも1つの対応点と前記の特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルとの間の偏差が閾値を超えるときに、前記の測定された熱分布に対応する熱補償プロファイルを生成するステップと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記の熱補償プロファイルを生成するステップは、
前記の測定された寸法及び熱分布を熱補償プロファイルに記憶するステップと、
前記の測定された少なくとも1つの対象物を冷却するために移送するステップと、
前記の移送された対象物の戻りを受け取るステップと、
前記の受け取られた対象物を測定するステップと、
補償係数を計算するステップと、
前記の計算された補償係数を前記熱補償プロファイルへと関連付けるステップと、
を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
コンピュータプログラムがコンピュータデバイス内で実行されるときに、請求項1乃至3いずれか1項記載の方法を実行させるように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラム。
【請求項5】
少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリとを有するコントローラであって、前記少なくとも1つのプロセッサは、請求項1乃至3いずれか1項記載の方法を実行させるように構成されている、
コントローラ。
【請求項6】
請求項5記載のコントローラを有する測定システム。
【請求項7】
ハウジングと、
前記ハウジングの内部に複数のカメラを有するカメラシステムと、
前記ハウジングの内部に複数の照明デバイスを有する照明システムと、
少なくとも1つの熱測定デバイスと、
少なくとも1つのプロセッサ及び少なくとも1つのメモリを有するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、マシンビジョンシステムに接続されており、請求項1乃至
3いずれか1項記載の方法を実行するように構成されている、
測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景の説明
以下の開示は、測定システムに関する。特に、本発明は、品質管理又は対象物の測定を必要とする他の同様のタスクにおいて使用されるマシンビジョンシステムの測定に関する。コンピュータ制御の測定システムが、種々の用途で用いられる。1つの代表的用途は、製造工業において製造された対象物の品質管理である。1つ以上のカメラを使用して、製造された対象物を撮像することによって、対象物の種々の特性を測定することが可能である。測定は、対象物全体又は対象物のいくつかの選択された特徴を測定することを含み得る。したがって、測定は、一次元、二次元又は三次元であることができ、又は選択された特徴に応じて、次元又は寸法(dimensions)の組み合わせで実施することさえできる。サイズ及び形状に加えて、色、粗さ又は他の特徴などの他の特性を測定することも可能である。測定マシンビジョンシステムなどの測定システムの測定は、典型的には、製造された対象物をモデル対象物と比較することによって行われる。達成される結果は、典型的には、測定された対象物と使用されたモデル対象物との相対的な差異を与える。
【背景技術】
【0002】
三次元座標を測定するには、2つのカメラしか必要としない。三次元座標は、測定点が両方の画像において視認可能であれば、2つの二次元画像から計算することができるからである。しかしながら、一般的には、カメラの数はより多い。これは、より多くのカメラは測定の範囲と精度を増加させるためである。カメラは、一般的には、測定対象物の全ての特徴、又は少なくとも可能な限り多くの特徴を視認できるように配置される。これに対応して、測定された特徴が全てのカメラによって視認できるわけではないことが一般的である。カメラの数を増加させることに加えて、正確な較正及び画像処理アルゴリズムのような複数の他の概念が、測定精度を改善することが知られている。さらに、所望の特徴から取得された画像の品質を改善するために、特定の対象物のためのカメラ位置を計画するか、より正確なカメラ又は特定の照明を使用することが可能である。
【0003】
測定カメラシステムに代えて又は加えて、プローブ及び他の機械的測定ツールなどの他の測定機器を使用することも可能である。
【0004】
不正確さ(inaccuracies)の原因の1つは測定温度である。製造及び測定された対象物は、製造ラインから出てくるとき、特に製造された対象物が製造直後に測定されたときには、依然として温かいか又は熱いことさえある。例えば、対象物は溶接ロボットを用いて製造されることができ、溶接点及び周囲は、おそらく温かいか又は熱いことさえ意味する。さらに、対象物のいくつかは、いくつかの溶接ロボットなどの、いくつかの作業セルを通過する。かかる場合、製造経路の早い段階で溶接された点又は継ぎ目のいくつかは、後の溶接点又は継ぎ目がまだ熱い一方で、著しく冷却されているかもしれない。
【0005】
しかしながら、製造された対象物は、それらが常温に冷却された後に使用され、それらは、所定の温度、例えば室温において許容誤差を満たす必要がある。熱膨張及び熱膨張が、張力とその他の変形を引き起こしたため、製造された製品は、たとえ冷却後にそれらを満たしたとしても、まだ温かい場合、これらの許容誤差を満たすことができない場合がある。
【0006】
これらの不正確さを減少させるための従来のアプローチは、測定対象物が所望の温度に冷却されるように、製造と測定との間で別々の冷却段階を使用することである。これを実施するためのいくつかのアプローチがある。例えば、受動的冷却を使用する別個の冷却コンベア又はストレージが存在してもよい。受動的なものに代えて、空調付き、又は、水スプレー若しくは他の冷却剤による冷房付きの能動的冷却ルームを考慮することもできる。
【0007】
これらの従来のアプローチの一般的な欠点は、コストがかさみ、スペースを必要とする別個の構成を必要とすることである。さらに、一般的に知られているように、冷却は遅いプロセスであり、対象物が測定の準備ができるまでに長い時間を要することがある。能動的冷却の使用は、より迅速であり得るが、典型的には、高価であり、水スプレー又は他の冷却剤を使用することは、全ての材料に適しているわけではない。さらに、速すぎる冷却は材料の構造を変化させる可能性があるため、一部の材料はどの能動冷却方法にも適さない可能性がる。
【発明の概要】
【0008】
熱膨張に起因する不正確さを補正するための熱補償プロファイルを用いた測定システムが開示されている。異なる熱分布を伴う対象物の測定は、対応する熱分布を伴う熱補償プロファイルの使用を含む。熱補償プロファイルは、熱補償プロファイルによる熱分布を有する対象物と冷却された対象物との偏差を表す一組の補償係数を有する。測定された対象物に補償係数を適用すると、結果として得られる測定値は、対象物物が冷却された後の測定結果に相応する。
【0009】
以下の説明において、熱補償プロファイルの表現は、製造された対象物の形状及び熱特性に関する情報を含むプロファイルを意味する。熱補償プロファイルは、製造された対象物の温度及び熱分布に関連する任意の情報を含むことができる。複数の対象物が製造されることが一般的であり、実際に製造される対象物の数は非常に多くなり得る。したがって、1つの対象物種類は、多数の熱補償プロファイルに関連付けられることができ、これらの熱補償プロファイルは、全てが少なくとも部分的に異なる熱分布又は他の熱関連パラメータ値を含み得る。さらに、熱補償プロファイルは、熱補償係数、補正係数、又は他の類似の値を含み、これらの値から、冷却された対象物の最終形態を予測することができる。プロファイルは、メタデータ又は類似の付加的情報を含み得る。
【0010】
一態様では、コンピュータ制御された測定構成(arrangement)を用いて対象物を測定する方法が開示される。方法は、少なくとも1つの対象物を測定するステップであって、少なくとも1つの対象物の寸法及び熱分布を測定するステップを含む、ステップと、測定された熱分布を記憶された複数の熱補償プロファイルと比較するステップと、測定された熱分布を表す少なくとも1つの熱補償プロファイルを特定するステップと、特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルに関連付けられた少なくとも一組の補償係数を受け取るステップと、受け取られた一組の熱補償プロファイルを測定された前記少なくとも1つの対象物の寸法に適用し、熱補償プロファイルの補償された寸法を生成するための、ステップと、を含む。
【0011】
方法の例示的実施形態においては、方法はさらに、少なくとも1つの熱補償プロファイルを特定するときに、特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルを閾値と比較するステップと、測定された熱分布中の少なくとも1つの対応点と特定された少なくとも1つの熱補償プロファイルとの間の偏差が閾値を超えるときに、測定された熱分布に対応する熱補償プロファイルを生成するステップと、
を含む。
【0012】
熱補償プロファイルを生成するステップの例示的実施形態において、測定された寸法及び熱分布を熱補償プロファイルに記憶するステップと、測定された少なくとも1つの対象物を冷却するために移送するステップと、移送された対象物の戻りを受け取るステップと、受け取られた対象物を測定するステップと、補償係数を計算するステップと、計算された補償係数を熱補償プロファイルへと(into)関連付けるステップと、
がさらに含まれる。
【0013】
方法の例示的実施形態において、方法はさらに、特定された少なくとも2つの熱補償プロファイルから補償係数を計算するステップを含む。方法の例示的実施形態において、方法はさらに、熱補償プロファイルの補償された寸法を基準対象物と比較するステップを含む。方法の例示的実施形態において、熱補償プロファイルは少なくとも1つの測定点を含む。一態様において、上述の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラムコードを含むコンピュータプログラムが開示されている。
【0014】
一態様において、コントローラが開示されている。少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリとを有するコントローラであって、少なくとも1つのプロセッサは上述の方法を実行するように構成される。
【0015】
一態様において、上述したようなコントローラを有する測定システムが開示されている。
【0016】
例示的実施形態において、測定システムはさらに、ハウジングと、ハウジング内部に複数のカメラを有するカメラシステムと、少なくとも1つの熱測定デバイスと、ハウジング内部に複数の照明デバイスを有する照明システムと、を有し、コントローラは、マシンビジョンシステムに接続されており、上述したように実行するように構成されている。
【0017】
上述の熱補償プロファイルを用いた測定システムは、種々の温度において対象物を測定する場合に有利である。熱補償プロファイルを用いた測定システムの利点は、製造直後に対象物を測定できることである。測定システムの利点は、コストがかさむ冷却フェーズを避けることができることである。これは、対象物がより速く測定されることができるため、測定効率を増加させる。さらに、これは、測定されたすべての対象物を冷却するための別個の構成を提供する必要がないため、コストを削減する。これらの構成は、高価であり、全ての対象物を冷却するのに適した構成としてスペースを必要とするが、典型的には容易に行うことができない。さらに、測定システムの利点は、種々の温度において対象物を測定できることである。したがって、関心点の温度を低下又は上昇させる(decreasing or increasing)可能性のある追加の一時停止及び他の事象が考慮され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
測定システムのさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、実施形態を図示し、説明と共に測定システムの原理を説明するのに役立つ。
【
図3】熱補償プロファイルを生成するための方法の一例を示す図である。
【
図4】対象物を推定する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、添付の図面に例示されている例示的な実施形態を詳細に参照する。
【0020】
以下の記述では、熱補償プロファイルと熱分布について述べる。熱分布の表現は、測定された対象物の測定された熱分布を意味する。例えば、測定されるべき対象物が測定ステーションに到着したとき、それは、熱カメラ又は類似の熱測定デバイスを含むいくつかの異なる測定ツールを使用して測定され得る。熱測定デバイスを用いて、対象物の熱分布を測定することができる。プローブ型熱測定デバイスが使用される場合、いくつかの点の温度を測定することができるが、用途によっては、1つの所定の点の温度を測定すれば十分である。
【0021】
熱分布は、測定対象物に対して行われる操作と、製造から測定までの待ち時間に依存する。さらに、当業者は、熱分布が必ずしも均等に分布しているわけではないことを理解する。例えば、対象物が測定前に溶接ロボットを使用して溶接された場合、対象物が冷却される前には、溶接位置が対象物の残りの部分よりも温かいことは明らかである。温かい点における温度は常に同一ではないが、測定前の溶接操作及び冷却時間によって変化するす。用途によっては、周囲温度が冷却に重大な影響を与えることもある。
【0022】
熱分布が測定されると、熱補償プロファイルが測定された分布に基づいて作成されることができる。熱補償プロファイルは、熱分布を示す測定結果と、一組の補償係数とを含む。測定された熱分布及び対応する熱補償プロファイルは、対象物全体をカバーする必要はないが、測定されるべき部分のみはカバーする必要がある。
【0023】
以下の説明では、複数のカメラを含むマシンビジョンシステムについて説明する。しかしながら、カメラの表現は、従来のデジタルカメラが象徴的に目的に適しているので、理解をもたらすためにのみ使用される。従来のカメラに代えて、比較に適した画像を生成することができる他のタイプの観察センサを使用することもできる。これらには、様々な種類の特殊用途カメラ、例えば、熱カメラ、スキャナーデバイス、デジタルX線画像化装置、屈曲可能な画像化ユニット、三次元カメラなどが含まれる。以下の説明では、熱補償プロファイルを測定するために熱カメラを使用し、測定すべき対象物を画像化するために通常のデジタルカメラを使用する。また、他の適切な組み合わせを使用してもよい。さらに、以下の実施例において、マシンビジョンアプローチのみについて述べた場合でも、この原理を機械的測定装置に適用できる。
【0024】
図1には、マシンビジョンシステムの一実施例を示すブロック図が開示されている。
図1には、測定ステーション102が開示されている。測定ステーション102は、2つのカメラ100a及び100bと、3つの照明デバイス101a~101cとを含む。
図1の実施例は、さらに、2つの熱カメラ109a及び109bを含む。カメラ、熱カメラ、照明デバイスの数は、2台及び3台に限らず、自由に選択できる。通常は、カメラ、熱カメラ及び照明デバイスの数はより多い。カメラ、熱カメラ及び照明デバイスは、測定ステーション102にさらに取り付けられた1つ以上のフレームに取り付けることができる。フレームの代わりに、カメラ及び照明デバイスは、測定ステーション102の壁に直接取り付けられることもできる。カメラ及び必要に応じて照明デバイスも、従来の較正方法を用いて選択された座標系に較正される。
【0025】
測定ステーション102は、測定ステーション内部に測定されるべき対象物103を持ち込むために使用されるコンベア104をさらに含む。コンベアは単なる一例であり、測定対象物は、産業用ロボット等の他の手段を用いて持ち込まれることもできるし、測定を行う者によって配置されることもできる。
【0026】
本明細書では、周辺光は、測定ステーションが設置されているホール又は施設の照明条件であると仮定する。周辺光は、施設内の窓又は照明デバイスからの自然光であってもよい。測定ステーション102は周辺光が測定値を妨害しないように閉鎖されることができると有益であるが、これは必須ではない。例えば、測定が正確に定義された照明構成からの利益をもたらす場合、周辺光は補償されることができる。いくらかの漏れ周辺光が測定条件に何らかの変化を引き起こす可能性がある場合でも、パワフルな照明デバイスを使用すると、測定ステーション102を使用することが可能である。測定ステーション102の閉鎖は、例えば、コンベアが使用される場合には、コンベア開口部にドア又はカーテンを使用することによって提供することができる。測定対象物が人によって測定プラットフォームに置かれると、周辺光を完全に除去した密閉測定ステーションを容易に製造することができる。周辺光が完全に除去できない場合、周辺光を補償するために使用される追加の照明デバイスを使用してもよい。
【0027】
測定ステーション102は、ネットワーク接続108を使用してコントローラ105に接続される。ネットワーク接続は、有線又は無線であることができる。コントローラは、測定ステーションに配置されるか、又は遠隔位置に配置されることができる。コントローラ105が測定ステーション102に配置されている場合、コントローラは、例えば製造現場のいくつかのシステムを制御するための制御室から、遠隔操作することができる。コントローラ105は、少なくとも1つのプロセッサ106及び少なくとも1つのメモリ107を備える。プロセッサは、測定を実行するためにコンピュータプログラムコードを実行するように構成される。少なくとも1つのメモリ107は、コンピュータプログラムコード及び関連データ、例えば取得された測定画像及び基準ビュー、を記憶するように構成される。コントローラ105は、通常は、例えば測定画像及び測定条件の可能な長期間の記憶のために、さらなる計算デバイスに接続される。
【0028】
図2は、マシンビジョンシステムの例示的方法を開示している。この方法では、
図1の測定ステーションなどのマシンビジョンベースの測定ステーションを使用することができる。
【0029】
この方法は、測定対象物を受け取るステップから始まる。測定対象物は、例えばコンベアを使用することによって受け取られ、マシンビジョンシステムを使用して測定される:ステップ200。従来のマシンビジョンベースの測定構成は、受け取った対象物の寸法を測定するために使用することができる。
【0030】
測定は、その後、受け取った対象物の熱分布を測定することによって補われる。これは、例えば、熱カメラまたは他の類似の赤外光ベースの測定デバイスを使用することによって行うことができる。いくつかの用途では、対象物上の点を測定するための測定プローブを用いてもよいが、普通は非接触構成が好ましい。次に、測定された熱分布が、所定の熱補償プロファイルと比較される:ステップ201。所定の熱補償プロファイルの数は多くてもよいが、それは用途に基づいて決定され、より多くの数の熱補償プロファイルが有益であると認められる場合は、時間を通じて(over a time)変更することができる。上述のように、熱補償プロファイルは、熱分布測定及び一組の補償係数を含む。比較は、格納された熱分布に基づいて行われる。
【0031】
比較の結果、少なくとも1つの熱補償プロファイルが選択される:ステップ202。選択された熱補償プロファイルは、測定された熱分布を表すように決定されるが、測定された熱補償プロファイルは、測定された熱分布と正確に一致しないことが一般的である。熱補償プロファイルは、可能な限り測定された熱分布に対応するように選択される。したがって、1つの対象物に対して複数の熱補償プロファイルが選択されることが可能である。これらの選択された熱補償プロファイルは、対象物全体又は対象物の選択された部分を表すことができる。熱補償プロファイルが、測定された熱分布と近接し又は正確に一致する場合、良好な結果を達成するために、1つの熱補償プロファイルのみを使用することができる。表現の精度要件(The accuracy requirement of the representation)は、測定対象物、材料、全体的温度、最終測定の要求精度などに依存する。例えば、熱膨張に起因する重要な(essential)変化がないように精度を選択することが可能である。例えば、特定の点を表す熱補償プロファイルは、5℃の精度を有し得る。実際には、これは、例えば、一組の熱補償プロファイルにおいて、少なくとも5℃毎に熱補償プロファイルが存在し、2つの続く(subsequent)熱補償プロファイルの間の変化が、最終結果に関連しない程に小さいことを意味し得る。
【0032】
図2の実施例では、1つの熱補償プロファイルのみが選択されると仮定されている。複数の熱補償プロファイルを使用する可能性については後述する。熱補償プロファイルを選択した後、対応する補償係数が受け取られる:ステップ203。係数は、温度又は他の基準温度を用いて、測定された熱分布に基づく対象物と、例えば意図された最終測定温度である常温に冷却された後の同一の対象物との間の差を表す。
【0033】
次に、受け取られた補償係数が測定された寸法(dimensions)に適用される。通常は、これは、測定された寸法が、熱膨張のために小さな値に調整されることを意味する。しかしながら、しかし、この方法は基準温度以下に冷却される対象物にも適用できる。したがって、補償係数を適用すると、測定後のオブジェクトが製造後に温かくなって熱膨張により大きくなる場合に、寸法がより大きな値に調整される。補償係数を適用した後、調整された測定結果は、同じ対象物を基準温度で測定した場合の結果と一致する。その後、調整された寸法は、測定された対象物が品質要件を満たしているかどうかを判定するのに使用されることができる。この判定は、あたかも測定が基準温度の対象物上で行われたかのように、既知の方法を用いて行うことができる。この判定は、それ以上の測定がなく、対象物が許容される(accepted)ことを意味する測定の最終結果として使用されることができる。別の実施形態では、結果は、予備スクリーニングのためのものであり、したがって、品質要件に明らかに合致しない対象物が製造プロセスの可能な初期段階で取り除かれる。
【0034】
図3において、補償係数を特定するための方法の例が開示されている。
図3の方法は、測定者によって開始されるが、適切な熱補償プロファイルが見つからない場合に、部分的又は完全に自動的な、熱補償プロファイルを生成するシステムを含むことが可能である。この点については、基本的な原理の後に詳しく説明する。
【0035】
図3の方法は、対象物の寸法を測定することによって開始される:ステップ300。測定システムは、任意の従来のマシンビジョン測定システムである。さらに、本方法においては、熱分布も測定される:ステップ301。ステップ300及び301は、この特有の順序である必要はなく、並行して実施されてもよい。例えば、通常のデジタルカメラを用いて寸法を測定し、同時に、熱カメラを用いて熱分布を測定する。
【0036】
対象物が測定されると、対象物は常温に冷却される:ステップ302。本明細書では、常温とは最終的な品質管理が行われる温度を意味する。これは、例えば、室温又は用途に基づいて選択される他の温度であり得る。
【0037】
対象物は、常温で再度測定される:ステップ303。上述したように、通常の用途では、対象物は熱歪のためにわずかに小さい。しかしながら、対象物を常温に温めて、わずかに大きくすることも可能である。
【0038】
必要な測定が実施された後、補償係数を計算することができる:ステップ304。補償係数は、温かい対象物と冷たい対象物との間の差異を表す。補償係数は、最も簡単には、例えば冷却された対象物の測定結果を温かい対象物の測定結果で割ることによって、計算される。これにより、一組の(a set of)補償係数が得られる。温かい対象物が測定されるときに、対応する冷却された対象物の結果は、暖温かい対象物の結果に補償係数を乗じることによって計算的に提供され得る。測定結果は、いくつかの測定点を含むことができ、通常各測定点は補償係数を有する。補償係数が欠落している場合、測定点は無視されることができ、又は、補償係数は、例えば、補間又は他の計算方法を使用することによって計算されることができる。
【0039】
最後に、計算された補償係数は、測定された熱分布に関連付けられる:ステップ305。熱分布と関連する補償係数との組み合わせは、
図2を参照して上述したように、温かい対象物を測定する際に使用され得る熱補償プロファイルを形成する。
【0040】
方法3では,1つの熱補償プロファイルを生成する例を説明した。複数の熱補償プロファイルは、手動で又は自動的に生成することができる。例えば、新しい測定されるべき対象物が測定ステーションに到着すると、適切な熱補償プロファイルが存在するかどうかを判定することができる。既存の熱補償プロファイルへの偏差が測定ステーションのオペレータによって設定された制限を超える場合、受け取られた温かい対象物は、ステップ300及び301のように測定される。その後、測定ステーションは、測定対象物が測定ステーションから取り除かれる必要があることをオペレータに知らせる。取り除かれた対象物は、後に再び測定され、測定結果は、補償係数の計算に使用され得る。別の実施形態では、測定ステーションは、所定の期間にわたって測定対象物を除去するための自動的手段を有し、その後、対象物は第2の測定を行うために測定ステーションに戻される。
【0041】
熱補償プロファイルの数は用途に依存する。多数の熱補償プロファイルが必要とされる場合は、完全に自動的なアプローチが好ましい。自動的なアプローチは、学習フェーズの後で、必要とされる多数の熱補償プロファイルを生成し、新しいプロファイルは、例外的にのみ生成される。熱補償プロファイルの数は自動的に管理されることができる。例えば、1つ又は複数の点を、例えば、全ての対象物から測定されるグリッドの形態で特定することが可能である。その後、各点の閾値が決定される。閾値は、例えば摂氏差の絶対目盛、又は、例えば、ヒートカメラ画像内の測定点のパーセンテージ又は強度の相対スケールで表すことができる。正確な温度を検出する必要はない。熱膨張に関して影響を及ぼす重大な変化があるかどうかを検出すれば十分である。特定された点のいずれかの閾値が超過されたときに、いつも、新しい熱補償プロファイルが生成されるように選択することができる。閾値の超過を自動的に検出することができる。この場合、測定結果が記憶され、ロボットが対象物を冷却のためにピックアップし、又は、対象物は他の手段を用いて冷却トラックに導かれることができる。対象物が冷却されると、ロボットは対象物を測定ステージに戻し、冷却された対象物を測定する。その後、補償係数を上述のように計算することができる。したがって、新しい熱補償プロファイルを生成するプロセスは、完全に自動的であってもよい。
【0042】
上記において冷却構成が開示されている。熱補償プロファイル生成によって必要とされる冷却構成は、手動又は自動であってもよいことを理解されたい。冷却構成は、測定対象物の各々を冷却する必要がないので、冷却構成は、従来のソリューションよりもかなり小さくなり得る。さらに、いくつかの実施形態及び使用例では、十分な数の熱補償プロファイルを生成した後では、冷却構成は必要とさえされない。したがって、自動的冷却構成が使用される場合、十分な数の熱補償プロファイルに到達した後に、自動的冷却構成を除去することができる。かかる場合、新たな熱補償プロファイルが必要とされる可能性は低いと推定されるが、さらなる熱補償プロファイルの必要性が生じた場合にスタッフが警告されるように、構成にアラームを設けることが可能である。かかる場合、手動で追加の熱補償プロファイルを生成することが便利である。
【0043】
上記の説明で、冷却が新しい熱補償プロファイルの作成に関連してのみ説明されている場合でも、測定前に一部の対象物を冷却する必要がある場合がある。例えば、溶接された対象物を測定する場合、溶接点は依然として、測定を妨げる煙を発生させるほどに高温であり得る。そのため、対象物が煙を出さないように冷却する必要があり得る。温度自体は、測定にとって問題ではない。例えば、成型された(molded)対象物は、かなり高温であり得、問題なく測定されることができる。
【0044】
図4では、熱補償を伴う方法の別の実施例が述べられる。本方法は、対象物を測定することによって再び開始される:ステップ400。その後、対象物の熱分布が測定される:ステップ401。その後、測定された熱分布を、既知の熱分布と比較する:ステップ402。比較に基づいて、冷却プロセスがどのフェーズであるかを特定することが可能である:ステップ403。これは、冷却時に測定対象物が相応のする方法で挙動するので行うことができる。したがって、冷却プロセスの推定された段階に基づいて、基準温度における対象物の形状を推定することが可能である:ステップ404。これは、対象物が製造された直後の品質管理が容易にする。
【0045】
上述の方法は、外部デバイスと通信可能なコンピュータデバイス内で実行されるコンピュータプログラムコードを含むコンピュータソフトウェアとして実施することができる。ソフトウェアがコンピュータデバイス内で実行される場合、上述の本発明の方法を実行するように構成される。ソフトウェアは、
図1のコントローラ105のようなコンピュータデバイスに提供されることができるように、コンピュータ読み取り可能媒体上で実施される。
【0046】
上記では、熱歪によって生じる変形を補償するための系統的アプローチが開示されている。製造された対象物は、対象物の大きさ及び形状が、品質管理測定で使用される基準温度にある対象物の大きさ及び形状に対応するように補償され得るので、任意の温度で測定することができる。上述の原理は、対象物全体又は対象物の部分に適用することができる。例えば、対象物は、特定の関心を有する特徴を有することができ、対象物の残りの部分は測定される必要はない。
【0047】
上記では、マシンビジョンシステムを用いた熱補償について詳しく説明した。しかし、温かい又は熱い対象物の測定を含む他の測定構成に、同じ原理を適用することができる。さらに、異なる測定構成を組み合わせることもできる。
【0048】
上述のように、例示的な実施形態の構成要素は、本発明の教示に従ってプログラムされた命令を保持し、本明細書に記載のデータ構造、テーブル、記録、及び/又は他のデータを保持するための、コンピュータ可読媒体又はメモリを含むことができる。コンピュータ読み取り可能媒体は、実行のためのプロセッサへの命令の提供に関与する任意の適切な媒体を含むことができる。コンピュータ読み取り可能媒体の一般的な形態としては、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、他の任意の適当な磁気媒体、CD-ROM、CD±R、CD±RW、DVD、DVD-RAM、DVD±RW、DVD±R、HD DVD、HD DVD-R、HD DVD-RW、HD DVD-RAM、Blu-ray(登録商標) Disc、任意の他の適当な光媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、任意の他の適当なメモリチップ又はカートリッジ、搬送波、又はコンピュータが読み取ることができる任意の他の適当な媒体が挙げられる。
【0049】
技術の進歩に伴い、測定システムの基本的な考え方が様々な形で実施されることは当業者にとって自明である。したがって、測定システム及びその実施形態は、上述の実施例に限定されず、むしろ、特許請求の範囲の範囲内で変化し得る。