(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】Z強度を向上した保護カバーアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20221124BHJP
C09J 7/10 20180101ALI20221124BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20221124BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20221124BHJP
【FI】
H04R1/00 311
H04R1/00 321
C09J7/10
C09J201/00
C09J7/26
(21)【出願番号】P 2020524135
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(86)【国際出願番号】 US2017059482
(87)【国際公開番号】W WO2019089021
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(73)【特許権者】
【識別番号】000107387
【氏名又は名称】日本ゴア合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ライアン ケナリー
(72)【発明者】
【氏名】中村 涼介
(72)【発明者】
【氏名】ダスティン ペラン
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-044187(JP,A)
【文献】特開2009-044731(JP,A)
【文献】特開2015-139134(JP,A)
【文献】国際公開第2017/004331(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/216084(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の孔と、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域が、該結合領域に含まれる複数の孔を通して該第一の表面から該第二の表面へ延在するブリッジを形成する接着剤材料を含み、かつ、前記多孔質延伸膜に隣接する裏材が存在しないことを特徴とする、
音響トランスデューサ用の保護カバーアセンブリ。
【請求項2】
前記接着剤材料は前記第一の表面の平面を越えて延在しない、請求項1に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項3】
前記第一の表面と前記第二の表面との間の距離は20μm以下である、請求項1または2に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項4】
前記第一の表面または前記第二の表面に隣接する少なくとも一つの剥離ライナーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項5】
前記結合領域の第一剥離強度は前記活性領域の第二剥離強度より高い、請求項4に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項6】
前記結合領域の第一剥離強度は1×10
8Pa以上である、請求項4に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項7】
前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が3g/m
2以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項8】
前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が0.2~3g/m
2の範囲にある、請求項1~6のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項9】
前記多孔質延伸膜は延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィンを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項10】
前記接着剤材料は10
-2ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項11】
前記接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項12】
前記結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項13】
前記多孔質延伸膜を圧縮したときに複数の孔は開放されたままである、請求項1~12のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項14】
開口部を有する筐体と、
該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、
該開口部を覆うように配置された、請求項1~13のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリと
を含んでなる電子デバイス。
【請求項15】
複数の孔を有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜は活性領域と結合領域とを含み、かつ、該結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含
み、かつ、前記多孔質延伸膜に隣接する裏材が存在しないことを特徴とする
、音響トランスデューサ用の保護カバーアセンブリ。
【請求項16】
前記結合領域の第一剥離強度は前記活性領域の第二剥離強度より高い、請求項15に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項17】
前記結合領域の第一剥離強度は1×10
8Pa以上である、請求項15または16に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項18】
前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が3g/m
2以下である、請求項15~17のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項19】
前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が0.2~3g/m
2の範囲にある、請求項15~17のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項20】
前記多孔質延伸膜は延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィンを含む、請求項15~19のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項21】
前記接着剤材料は10
-2ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である、請求項15~20のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項22】
前記接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項23】
前記多孔質延伸膜は、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有し、そして前記接着剤材料は、前記多孔質延伸膜の第一または第二のいずれか一方の表面からその他方の表面へ延在するブリッジを形成する、請求項15~22のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項24】
前記結合領域に含まれる複数の孔の70%以上が前記接着剤材料を含む、請求項15~23のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項25】
前記活性領域に含まれる複数の孔の1%未満が前記接着剤材料を含む、請求項15~24のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
【請求項26】
開口部を有する筐体と、
該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、
該開口部を覆うように配置された、請求項15~25のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリと
を含んでなる電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に保護カバーアセンブリに関する。より具体的には、Z強度を向上するため接着剤ブリッジのような接着剤浸透を有する多孔質延伸膜を含む保護カバーアセンブリを説明するものである。
【背景技術】
【0002】
現代の電子デバイス、例えばラジオ、テレビ、コンピュータ、タブレット、カメラ、おもちゃ、無人車両、携帯電話その他のマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)は、開口部を介して外部環境と連絡するための内部トランスデューサ、例えばマイクロフォン、リンガー、スピーカ、ブザー、センサ、加速度計、ジャイロスコープ、等を含む。これらのトランスデューサに近接配置される開口部は、音を透過させ、または受信することができるだけでなく、液体や、屑、粒子などの進入点にもなり、電子デバイスの故障の原因となりかねない。こうした開口部からの液体や、屑、粒子などの進入に起因する損傷からトランスデューサをはじめとする内部エレクトロニクスを保護するため、保護カバーアセンブリが開発されている。
【0003】
従来、保護カバーは多孔質布帛材料で構成され、空気流に対する当該材料の抵抗を抑えることのみで構築されている。空気流を高めるための手段として有効孔径を大きくすることで、材料をより厚くしている。材料の音減衰量は、材料の孔径に反比例する。すなわち、孔径が増大するにつれて音の減衰量は小さくなる。しかしながら、材料の耐水性に対しては、孔径は反対に作用する。孔径が非常に小さい、または全く無い材料は、耐水性が高くなる。耐水性を高めると、音の減衰量が増大し、すなわち3dBを超え、音質が損なわれることになる。
【0004】
保護カバーには、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような膜も用いられている。保護カバーの通音には二通りある。第一に、抵抗型保護カバーとして知られる、音波が膜内を通過する方式と、第二に、振動音響型または反応型保護カバーとして知られる、振動により音波を発生させる方式とである。ここでもまた、音響保護アセンブリの膜の水浸透に対する弾力性を高めることは、アセンブリの適切な通音性能を低下させ得ることになる。加えて、膜は機械的完全性に欠けることがあり、それを高めるべく、膜を厚くしたり、布帛や織物のような支持層を併用したりする必要がある。こうした厚膜化や支持層は、音質性能の改善にとっては望ましくないものである。
【0005】
保護カバーには、二つの接着剤支持システムの間に膜を結合する保留(captive)構造が用いられている。米国特許第6,512,834号明細書に、マイクロフォン、拡声器、ブザー、リンガー等のようなトランスデューサ装置を周知環境から保護するための通音カバーアセンブリが開示されている。カバーアセンブリは、二つの接着剤支持システムの間に、外部領域の縁部付近において保留された微孔質保護膜を有する。結合された外部領域に囲まれた内側の未結合領域を設けることで、保護膜は、音響圧力波に応じて変位する、または動くことができる。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0138181号明細書に、音を通すが異物の通過は防止する通音膜が開示されている。その通音膜は、支持部材を含み、さらにその支持部材の上に積層され、かつ主成分としてポリテトラフルオロエチレンを含有する多孔質樹脂膜を含む。支持部材は、エラストマーを含有する不織布である。
【0007】
米国特許出願公開第2016/0376144号明細書に、超音波トランスデューサのためのマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムの保護カバーであって、3g/m2未満の低い質量/面積を有する保護カバーが開示されている。
【0008】
米国特許第5,828,012号明細書に、保護膜層と多孔質支持材料層とを、少なくとも外部領域の縁部付近において選択的に結合させたカバーアセンブリが開示されている。結合された外部領域に囲まれた内側の未結合領域を設けることで、保護膜と多孔質支持層は、それらを通る音響エネルギーに応じて、独立して振動する、または動くことができる。アセンブリの実施態様として、複数の層の独立した動きを妨げないように層の一方または双方に取り付けられた少なくとも一つの音響ガスケットが挙げられる。
【0009】
米国特許第4,949,386号明細書に、円筒状側壁と、一つの開放端と、閉鎖端とを有するスピーカ筐体を含む防水地面オーディオスピーカが開示されている。中空の円筒状内部筐体は、一対の開放端を有し、その壁部と当該スピーカ筐体の壁部との間に間隔を設けて当該スピーカ筐体に取り付けられることで、その内部筐体の壁部とスピーカ筐体の壁部との間に通路を形成している。スピーカ筐体の開放端の外部へ音響エネルギーを指向させるため、内部筐体内にその一つの開放端に面するように拡声器を搭載し、さらにスピーカの後方伝搬波を、中空の内部筐体および内部筐体とスピーカ筐体との間の通路を通してスピーカ筐体の開放端へ指向させている。スピーカ筐体の開口部上にはドーム型の硬質支持カバーが拡張しており、またスピーカ筐体の開放端をフィルター膜が覆うことで、スピーカ構内を保護している。スピーカ筐体の両端の円環状フランジが、スピーカ筐体を地中に支持すると共に、積層ポリエステルとポリテトラフルオロエチレンシートとでできた特殊フィルター膜を支持している。ポリテトラフルオロエチレンシートは、音響エネルギーを通過させると共に、流体その他の物質がスピーカ筐体に進入するのを防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
保護カバーアセンブリには、依然として音質の向上という課題が存在する。上述の事例は、電子デバイス用に現存する保護カバーアセンブリに当てはまる欠点を例示している。したがって、上述の欠点の一つ以上を克服するような改善された保護カバーアセンブリを提供することができれば有利であることは明白である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によると、電子デバイスのための保護カバーアセンブリが開示される。一実施態様において、複数の孔と、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域が、該結合領域に含まれる複数の孔を通して該第一の表面から該第二の表面へ延在するブリッジを形成する接着剤材料を含む、そのような保護カバーアセンブリが開示される。該接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む粘性材料であってよい。一実施態様において、結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含み、好ましくは結合領域に含まれる複数の孔の70%以上が接着剤材料を含む。対照的に、活性領域に含まれる複数の孔の1%未満が接着剤材料を含む。一実施態様において、接着剤材料は10-2ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である。接着剤材料は膜の内部に存在することができ、第一の表面および/または第二の表面の平面を越えて延在しない。第一の表面と第二の表面との間の距離は20μm以下である。
【0012】
一実施態様において、延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィン膜のZ強度を向上させることができる。該膜は質量/面積比が3g/m2以下、好ましくは1g/m2以下であってよい。接着剤を孔中に流入させる一実施態様において、多孔質延伸膜を圧縮したときに複数の孔は開放されたままである。接着剤を使用するとき、結合領域の第一剥離強度は活性領域の第二剥離強度より高い。一実施態様において、結合領域の第一剥離強度は1×108Pa以上、好ましくは3×108Pa超である。
【0013】
別の実施態様として開示される筐体は、開口部と、該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、保護カバーアセンブリとを有する。該保護カバーアセンブリは、複数の孔と、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有する多孔質延伸膜を含んでなり、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域が、該結合領域に含まれる複数の孔を通して該第一の表面から該第二の表面へ延在するブリッジを形成する接着剤材料を含む。結合領域の第一剥離強度は活性領域の第二剥離強度より高いことができる。一実施態様において、結合領域の第一剥離強度は1×108Pa以上、好ましくは3×108Pa超である。多孔質延伸膜、例えば延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィンは、質量/面積比が3g/m2以下、好ましくは1g/m2以下である。
【0014】
さらに別の実施態様において、複数の孔を有する多孔質延伸膜を含む保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域に含まれる複数の孔の10%以上、好ましくは70%以上が接着剤材料を含む保護カバーアセンブリが開示される。一実施態様において、活性領域に含まれる複数の孔の1%未満が接着剤材料を含む。該接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む粘性材料であってよい。一実施態様において、接着剤材料は10-2ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である。接着剤材料は膜の内部に存在することができ、第一の表面および/または第二の表面の平面を越えて延在しない。第一の表面と第二の表面との間の距離は20μm以下である。
【0015】
一実施態様において、延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィン膜のZ強度を向上させることができる。該膜は質量/面積比が3g/m2以下、好ましくは1g/m2以下であってよい。接着剤を孔中に流入させる一実施態様において、多孔質延伸膜を圧縮したときに複数の孔は開放されたままである。接着剤を使用するとき、結合領域の第一剥離強度は活性領域の第二剥離強度より高い。一実施態様において、結合領域の第一剥離強度は1×108Pa以上、好ましくは3×108Pa超である。該多孔質延伸膜は、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有し、そして接着剤材料は、該多孔質延伸膜の第一または第二のいずれか一方の表面からその他方の表面へ延在するブリッジを形成する。
【0016】
さらに別の実施態様において、開口部を有する筐体と、該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、複数の孔を有する多孔質延伸膜を含む保護カバーアセンブリとを含んでなる電子デバイスが開示される。該多孔質延伸膜は活性領域と結合領域とを含み、該結合領域に含まれる複数の孔の10%以上、好ましくは70%以上が接着剤材料を含む。
【0017】
これらの実施態様その他について、その利点および特徴と共に、下記の記述および添付の図面において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、限定を意図しない添付の図面に鑑み、理解が深まるであろう。
【0019】
【
図1】
図1は、本明細書に開示された実施態様による保護カバーアセンブリを有する電子デバイスを示す前面図である。
【0020】
【
図2】
図2は、本明細書に開示された実施態様による保護カバーアセンブリを示す上面図である。
【0021】
【
図3】
図3は、
図2の線A-Aに沿った保護カバーアセンブリを示す横断面図である。
【0022】
【
図4】
図4は、
図1の線B-Bに沿った電子デバイスの筐体内に含まれる保護カバーアセンブリを示す横断面図である。
【0023】
【
図5】
図5は、
図1の線B-Bに沿った電子デバイスの筐体に直接搭載された保護カバーアセンブリを示す横断面図である。
【0024】
【
図6】
図6は、本明細書に開示された実施態様による剥離可能ライナーを有する保護カバーアセンブリを示す横断面図である。
【0025】
【
図7】
図7A~7Dは、本明細書に開示された実施態様による、対向する二つの表面から接着剤材料を結合領域の孔に浸透させる処理工程を示す詳細な横断面図である。
【0026】
【
図8】
図8A~7Dは、本明細書に開示された実施態様による、一方の表面から接着剤材料を結合領域の孔に浸透させる処理工程を示す詳細な横断面図である。
【0027】
【
図9】
図9は、本明細書に開示された実施態様による結合領域に接着剤を有する保護カバーを示すSEM画像である。
【0028】
【
図10】
図10は、本明細書に開示された実施態様による、熱処理工程を施していない接着剤を有する保護カバーの結合領域を示すSEM画像である。
【0029】
【
図11】
図11は、本明細書に開示された実施態様による、熱処理工程を施した接着剤を有する保護カバーの結合領域を示すSEM画像である。
【0030】
【
図12】
図12は、熱処理工程を施していない接着剤を有しない保護カバーの結合領域を示すSEM画像である。
【0031】
【
図13】
図13は、熱処理工程を施した接着剤を有しない保護カバーの結合領域を示すSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に記載された各種実施態様は、音響性能および強度が向上した多孔質延伸膜を含む電子デバイスのための保護カバーアセンブリに関する。一実施態様において、保護カバーアセンブリは、軽量材である多孔質延伸膜を含む。多孔質延伸膜は、質量/面積比が3g/m2以下であって、例えば、2g/m2以下、1g/m2以下または0.5g/m2以下である。軽量材をはじめとする延伸膜は、X方向およびY方向の強度は良好であるが、Z方向(厚さ方向)の強度が不十分になり易い。Z強度が不十分であると、膜の層剥離および引裂きをもたらすおそれがある。膜を小片部品に加工する際に通常は型抜きを経る上、末端用途基準(高水圧による剥離伝播)によってはZ方向の膜の粗鬆化力が関係するため、層剥離を防止するために膜のZ強度を強化することが望まれる。したがって、これらの軽量材は、その音響性能にもかかわらず、Z強度に欠けるため保護カバーとしては用いられていない。
【0033】
本発明者等は、軽量材の制限を克服するため、一実施態様において、膜の結合領域に接着剤ブリッジを形成することにより、活性領域の音響性能を損なうことなくZ強度が向上することを見出した。接着剤ブリッジまたは単にブリッジとは、膜の一方の表面から反対の表面に至る接着剤の連続経路のことをさす。接着剤ブリッジは、膜の多孔質空隙スペース(孔)を通して延在する。したがって、一実施態様において、電子デバイスの筐体または電子デバイスに膜を付着させるための結合領域と、音響経路を差し渡す活性領域とを含む多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリが提供される。結合領域は、その複数の孔を通して第一の表面から第二の表面まで延在する一以上のブリッジを形成する接着剤材料を含む。音響妨害を防ぐため、接着剤ブリッジは結合領域にあり、活性領域には存在しない。別言すれば、接着剤ブリッジのための領域が結合領域を画定し、そして接着剤を含まない残りの領域が活性領域を画定することができる。膜の多孔性によって、複数の接着剤ブリッジが存在し得ることを理解されたい。Z強度性能は剥離強度の上昇によって実証され、そして支持層を設けない軽量材の単独使用を可能ならしめる補強が得られる。
【0034】
開示された実施態様によるZ強度を向上させる別の方法は、結合領域に含まれる孔の少なくとも一部が接着剤材料を含むことである。少なくとも一部の接着剤材料を孔に含めることで、必ずしもブリッジを形成させなくても、Z強度の向上に有益となり得る。したがって、別の実施態様において、複数の孔を有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含むものが提供される。別の実施態様において、該接着剤は、結合領域に含まれる孔の20%以上、例えば30%以上、または50%以上を充填する。膜を付着させるため、接着剤材料は対向する表面に沿って存在すべきである。さらなる実施態様において、接着剤材料が孔内を充填することで、接着剤ブリッジを創出することができる。
【0035】
結合領域の完全性を測定する値の一つが、Z強度の向上に関係する高い剥離強度である。意外なことに、本明細書に記載のとおり接着剤または接着剤ブリッジを有する多孔質延伸膜は、厚さ方向におけるZ強度が高くなり、よって抵抗性が増大することが見出された。Z強度の測定には剥離強度を採用することができる。活性領域は、接着剤が存在しないことにより、結合領域より低いZ強度を示す。一実施態様において、本明細書に記載の方法により試験した場合に、保護カバーアセンブリのZ強度は結合領域において1×108Pa以上を示すことが有用であり得る。別の実施態様において、本明細書に記載の方法により試験した場合に、結合領域のZ強度は、1×108Pa以上、例えば3×108Pa超、5×108Pa超、または1×108Pa~1×1010Paの間である。対照的に、本明細書に記載の方法により試験した場合に、活性領域のZ強度は低く、1×108Pa未満となり得る。したがって、結合領域の剥離強度は活性領域の剥離強度より高い。
【0036】
膜は、強度の増大に加え、接着剤が充填されていない活性領域を有する。活性領域は良好な音響性能を有する。一実施態様において、活性領域の伝搬損失は、周波数50Hz~20KHzにおいて3dB未満である。
【0037】
膜の強度を高めるために求められていた従来法に、膜の孔内に等方性ポリマーを吸収させる方法がある。強度を高めることはできるが、この方法にはいくつかの問題点がある。吸収法は空気流量の減少を引き起こす。さらに、吸収された等方性ポリマーの弾性挙動により、外部応力に対する感度が高くなる。したがって、吸収法は、膜の強度向上にとって望ましい方法ではない。接着剤浸透と接着剤ブリッジは、空気流量の減少に関連せず、かつ外部応力に対する抵抗性が高い点で、独特である。
【0038】
多孔質膜
本明細書に記載する多孔質延伸膜は、延伸フルオロポリマー、例えば延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)であるか、または延伸オレフィン、例えば延伸ポリエチレンまたは延伸ポリプロピレンであることができる。他のフルオロポリマーとして、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン系コポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレン-(ペルフルオロアルキル)ビニルエーテル系コポリマー(PFA)等を挙げることができる。これらのフルオロポリマーは、ePTFEと同様、疎水性であり、化学的に不活性であり、耐熱性があり、そして加工性が良好なためである。必要な保護を提供するため、多孔質延伸膜は水分その他の液体に対して抵抗性を有する必要がある。一実施態様において、多孔質延伸膜は疎水性であるが、コーティングまたは層を付加することで親水性にすることができる。同時に、多孔質延伸膜は、有意な音響減衰を伴うことなく、空気を通過させることができる。一実施態様において、米国特許出願公開第2007/0012624号および同第2013/0183515号明細書(開示内容を本明細書の一部とする)に記載されているePTFE膜を使用することができる。好適な膜は、高い強度と小さな孔径を有することができる。他の高度にフィブリル化された膜を使用してもよい。膜を目立たせないようにするため、膜の片面に着色処理を施してもよい。
【0039】
上述したように、本明細書に記載の実施態様においては、質量/面積比が3g/m2以下である軽量の多孔質延伸膜が用いられる。質量/面積比が3g/m2を上回る場合、膜が重厚になるため十分なZ強度が得られ易く、結合領域に含まれる接着剤材料またはブリッジの存在がZ強度を更に増強することはない。しかしながら、より重厚な膜は、より軽量な膜のもつ音響特性に欠ける。本明細書に記載の軽量膜を使用した場合、接着剤材料または接着剤ブリッジの存在により、Z強度が有意に向上する。軽量膜の質量/面積比は、0.2~3g/m2の範囲、例えば0.2~2g/m2、0.2~1g/m2、または0.2~0.5g/m2の範囲にあることができる。質量/面積比は、接着剤を付加する前または接着剤ブリッジを形成する前に決定される。膜の活性領域は、元の膜の質量/面積比を保持する。本明細書に開示される実施態様に適した軽量膜の有利な特性の一つは、孔の閉鎖または緻密化を伴わずに圧縮またはクラッシュされ得ることである。このため、膜が圧縮された場合でも接着剤材料は孔内に浸透でき、孔の崩壊が回避される。接着剤材料を孔内に流入させるため、加熱と共に圧縮を利用することができる。
【0040】
多孔質膜は、軽量特性を備えると共に、薄くすることができる。このため、外形の小さな電子デバイスにおける膜の使用が可能となる。一実施態様において、多孔質膜の第一の表面から反対側の表面、すなわち第二の表面までの厚さは20μm以下、例えば10μm以下、5μm以下、または2μm以下である。接着剤材料を結合領域に浸透させて接着剤ブリッジを創出するため、膜はより薄い方が有利である。より薄い膜は良好な音響性能にも寄与する。より粘性の高い接着剤を用い、または接着剤を結合領域内に強制浸透させる高温高圧を利用する製法を用い、より厚い膜を使用してもよい。
【0041】
膜は、その薄さと軽量性に加え、水の浸入を防止しつつ通音に適した特性をも有する。膜は、広範囲の孔径を有し得る非常に開放的な構造を有することができる。このような膜の公称孔径は0.05~5μmの範囲、例えば0.05~1μmの範囲内にあることができる。孔容積は20~99%の範囲、例えば好ましくは50~95%の範囲内にあることができる。一実施態様において、膜は、連続シート状の材料であって、少なくとも50%ポーラス(すなわち、孔容積≦50%)で、孔の50%以上が公称直径5μm以下であることができる。空気透過性は0.15~50ガーレー秒の範囲、例えば1~10ガーレー秒の範囲内にあることができる。水浸入圧耐性は5~200psiの範囲、例えば20~150psiの範囲内にあることができる。これらの膜の長期間水浸入圧は、水圧1メートルにおいて0.5時間より長期間、例えば水圧1メートルにおいて4時間超であることができる。
【0042】
他で提案されているように、多孔質延伸膜に機械強度を付与するために裏材または支持層をラミネートすることがある。しかしながら、裏材または支持層は、良好な音響性能が要求される用途に使用した場合、音の減衰または歪みを引き起こすおそれがあり、厚さを増加させ、そして膜のZ方向に強度を付与する。支持層による音響性能の低下は、ほとんどの用途において好ましくなく、軽量多孔質延伸膜を使用する利点を制限する。裏材または支持層を使用しなくても、接着剤材料、特に接着剤ブリッジが結合領域に存在することで、裏材または支持層を不要にするに十分なZ強度が得られる。裏材を使用しないことで、膜をガスケット、筐体または支持体に直接付着することができる。このため、全体厚が薄くなり、音響性能がより良好となる。
【0043】
二つの外部接着剤支持システムを使用する保留構造は、Z強度を提供できないため、本明細書に開示される軽量膜には適さない。膜の質量/面積が3g/m2以下に減少すると、保留構造の接着剤支持システムでは軽量膜に必要なZ強度を提供することができない。さらに、保留構造においては、接着剤材料の孔内への浸透はほとんどなく、例えば10%未満であり、接着剤支持システムは膜の外部に留まる。したがって、接着剤がほとんど浸透しないため、保留構造において接着剤ブリッジは形成され得ない。
【0044】
接着剤材料
本明細書に開示される実施態様において使用される接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリシリコーン等の部類から選ぶことができる。接着剤材料を膜の孔に浸透させるためには、10-2ラジアン/秒における損失正接(損失弾性率G″の貯蔵弾性率G′に対する比率)の値が0.4以上、例えば0.42以上、0.44以上、0.46以上または0.5以上である接着剤を使用すればよい。10-2ラジアン/秒における損失正接の範囲は0.4~0.8、例えば0.42~0.65であることができる。10-2ラジアン/秒における損失正接が0.2未満である硬質な接着剤は、加熱および/または加圧することなく接着剤を浸透させることが困難であるため、使用しない方がよい。特に本明細書に開示される実施態様においては、損失正接が高く、かつ粘度が低いアクリル系およびポリシリコーン系の接着剤が好適である。
【0045】
一実施態様において、接着剤は、孔内に浸み込み膜を貫通して接着剤ブリッジを形成することを促進する親和性を有する。接着剤材料は、表面エネルギーが50ダイン/cm以上、例えば65ダイン/cm以上または70ダイン/cm以上であることができる。膜は、親水性であるか、またはその親水性を高めるためにコーティングされていてもよい。
【0046】
これらのタイプの接着剤材料が多孔質延伸膜の内部に浸透することは驚くべきことである。何故なら、これらの膜は、水分の浸入や、油分のような表面張力の低い他の流体に対し、抵抗性を示すことが典型的だからである。一実施態様において、接着剤材料は、アクリル系またはポリシリコーン系のような感圧接着剤であることができる。膜の孔内に流入する層として両面感圧テープを使用してもよい。感圧接着剤は良好な剥離強度を有する。硬化するまでは粘性を有する熱硬化性またはUV硬化性の接着剤を使用してもよい。
【0047】
接着剤材料は、膜の結合領域の孔を貫通して接着剤ブリッジを創出することができる。接着剤ブリッジは、膜の一方の表面から、その対向する表面まで延在し、そして接着剤材料は表面上に存在する。このため、接着剤ブリッジによって膜を電子デバイスまたは筐体に付着させることができる。
【0048】
保護カバーアセンブリ
保護カバーアセンブリは、向上されたZ強度性能を維持しながら音響エネルギーを最小減衰量で通過させることを可能にする。その膜には結合領域と活性領域とが含まれる。結合領域は接着剤材料が浸透する孔を有し、対向する面の間に1以上の接着剤ブリッジが存在し得る。活性領域は音響経路内にあって、音の通過を可能にする。活性領域のZ強度は結合領域より低い。一実施態様において、膜は円形であり、結合領域が活性領域を取り囲みフレームを創出することができる。活性領域のZ強度は向上しないが、結合領域のフレームによって多孔質膜は層剥離をしない。一般に、ほとんど用途について、保護カバーアセンブリの機械的および音響的要件が許す程度に、結合領域の面積を最小に、そして活性領域を最大にすることが好ましい。
【0049】
図1に、携帯電話に代表される、小さな開口部12を有する電子デバイス10の外部前面図を示す。開口部は、狭いスロット状であるか、円形開口部であることができる。一つの開口部12が示されているが、電子デバイス10の開口部の数、大きさ、形状が変更し得ることは理解されよう。一実施態様において、開口部12の最大直径は0.1mm~500mm、例えば0.3mm~25mm、または0.5mm~13mmである。保護カバーアセンブリ100は、電子デバイス10への水分、屑その他の粒子の侵入を防止するため開口部12を覆うように示される。保護カバーアセンブリ100は、いかなる大きさの開口部にも適合し、特段の制限はない。本明細書に開示される構造は、ラップトップコンピュータ、タブレット、カメラ、携帯電話、等のような同様のいかなる電子デバイスの保護カバーにおける通音用開口部に同等に応用することができる。保護カバーアセンブリ100を搭載するため、保護カバーアセンブリの大きさは当該開口部の最大直径より大きい。音を発生または受信するためのトランスデューサ18(
図4に図示)は、保護カバーアセンブリ100がトランスデューサ18を覆うように、開口部12の下方に配置される。
【0050】
図2および
図3に保護カバーアセンブリ100を詳細に図示する。保護カバーアセンブリ100は、活性領域104を取り囲む結合領域102を有する多孔質延伸膜106を含む。多孔質延伸膜106は複数の孔108を有する。多孔質延伸膜106は軽量であり、かつ、質量/面積比が3g/m
2以下である。延伸膜106の構造は、内部接続されたマトリックスあるいはノードおよび/またはフィブリルの構造であることができる。膜106の構造は、孔108を相互依存性にさせる。独立孔、すなわち連結されていない孔が存在する場合はあるが、空気の流通または接着剤の浸透には適さない。高度にフィブリル化した構造を有する多孔質延伸膜を使用してもよい。接着剤材料110は、結合領域102の孔内に存在し、かつ、第一の表面112から第二の表面114まで延在する。この接着剤材料110は、結合領域102を貫通する1以上の接着剤ブリッジ116を形成することができる。
【0051】
図4に、電子デバイス10の内部にある保護カバーアセンブリ100の横断面図を図示する。開口部12が筐体14の内部に示され、そして保護カバーアセンブリ100が音響キャビティ30を差し渡すように配置されてトランスデューサ18を覆う。トランスデューサ18は基板16の上に搭載されることができる。一実施態様において、トランスデューサ18は、マイクロフォンその他の音響センサ、スピーカ、圧力センサ、その他同類のセンサであることができる。トランスデューサ18は、マイクロフォン、音響センサまたは音響スピーカのようなマイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム(MEMS)デバイスであることができる。さらに、
図4には1個のトランスデューサ18が示されているが、1以上のトランスデューサが存在してもよい。基板16は電子回路基板、例えばフレックス回路基板その他の適当な材料であることができる。
【0052】
図4に示したように、上部ガスケット材料20が保護カバーアセンブリ100を筐体14に連結し、そして下部ガスケット材料22が保護カバーアセンブリ100を基板16に連結する。活性領域104とトランスデューサ18との間の距離によって音響キャビティ30を画定することができる。この距離は、下部ガスケット材料22の厚さを調整することによって、またはトランスデューサ18において圧縮もしくは隆起し得る基板16のトポロジーによって、調節することができる。筐体14はプラスチック製または金属製のケースであることができる。筐体14は、水、屑または粒子の侵入を防止するため封止されていてもよい。結合領域102における多孔質延伸膜106の孔108には接着剤材料110が含まれているため、
図5に図示したように、結合領域における接着剤材料を介して保護カバーアセンブリ100を筐体14に直接付着させてもよい。別の実施態様において、保護カバーアセンブリは、基板16に直接付着させてもよく、またはガスケット層20、22を必要とせずに、基板および筐体14の双方に直接付着させてもよい。
【0053】
音響波は、筐体14の外側の外部環境とトランスデューサ18との間で、音響キャビティ30を通過し、さらに膜106の活性領域104を通過することができる。これにより音響経路が画定され、活性領域104が音響経路を横切ることができる。音響経路は通気孔を提供することもできる。通気孔は、外部環境、または音響デバイスを含む筐体の内部環境のような、音響キャビティの外側の環境と音響キャビティとの間を均圧化する。電子デバイス10の使用中に差圧が生じて保護カバーアセンブリ100の音響波通過能に影響を及ぼすような場合に、通気孔は有用となる。例えば、音響キャビティ30の内部の温度変化が音響キャビティ内の空気の膨張または収縮を引き起こす可能性があり、そうすると特に活性領域104において保護カバーアセンブリ100が変形し易くなり、ひいては音響の歪みを生ぜしめるであろう。活性領域104に多孔質または微多孔質の材料を付与することによって、均圧化のために通気を可能ならしめる保護カバーアセンブリ100を作製することができる。保護カバーアセンブリの均圧レートは、このような歪みを実質的に防止または軽減するため通気孔を介して音響キャビティに空気を出入りさせるのに十分に高いものとすることができる。加えて、Z強度の向上によって歪みに対する抵抗性が付与される。
【0054】
図4および
図5においては一直線上に並べられているが、活性領域104は音響経路より小さくまたは大きくてもよく、また結合領域102の一部が音響経路内に部分的に延在してもよい。一実施態様において、十分な音響カバーを提供するため、活性領域104の最小直径は開口部12の最大直径と少なくとも同等であるか、またはそれよりも大きい。このような大きさの関係を有することにより、保護カバーアセンブリ100が音響経路を十分に横切り、流体または水分が音響キャビティ30内に侵入し、更には電子デバイス10内に侵入することを防止できる。音響伝達方向は膜106のZ方向である。
【0055】
一実施態様において、保護カバーアセンブリ100およびガスケット20、22の全体厚さは、0.1μm~6μm、例えば0.1μm~3μmであることができる。限定するものではないが、一部の例示的用途において、保護カバーアセンブリは、厚さのオーダーが100μm~1000μmのように比較的薄いMEMSトランスデューサとの組み合わせで使用される場合がある。このため、保護カバーアセンブリ100を含む電子デバイスは0.2~1.2mmのように極薄であることができ、携帯型電子デバイスのような多くの小型用途において適したものとなる。
【0056】
下部および上部のガスケット材料としては、当該技術分野において従来から市販されている材料が公知であり、適したものである。例えば、シリコーンゴムやシリコーンゴムフォームのような軟質弾性材料または発泡エラストマーを使用することができる。好適なガスケット材料は、微多孔質PTFE材料であり、より好ましくは米国特許第3,953,566号、同第4,187,390号および同第4,110,392号明細書(これらを本明細書の一部とする)に記載されているようなノードとフィブリルとが相互接続された微小構造を有する微多孔質ePTFEである。最も好ましくは、ガスケット材料は、弾性材料を部分充填できる微多孔質ePTFEマトリックスを含む。ガスケット材料は、多孔質延伸膜の孔に含まれる接着剤によって付着されることができ、また筐体および/または基板に結合されることもできる。
【0057】
その他の適当なガスケット材料として、スチレン系熱可塑性エラストマー(SBC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)およびアミド系熱可塑性エラストマー(TPAE)をはじめとする熱可塑性エラストマーが挙げられる。具体例としては、スチレン-ブタジエン-スチレン系ブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン系ブロック共重合体(SIS)、エチレンビニルアセテート系エラストマー(EVA)、ポリアミド系エラストマーおよびポリウレタン系エラストマーが挙げられる。
【0058】
意外なことに、本明細書に記載の軽量膜は質量/面積比が3g/m2以下である一方で、外圧変動および/または音響キャビティ内の温度変動によって引き起こされる圧力下での破裂に抵抗するに十分なZ強度を示す。この特徴は、従来の設計思想、すなわち厚いおよび/または重い膜を使用することに反するものである。さらに、膜が薄いことで、音響エネルギーの遮蔽が最小となり、より良好な音響性能を示すことができるようになる。
【0059】
上述のように、Z強度の向上は、保護カバーアセンブリ100の製造・組立てのための処理工程においても有益である。
図6に図示したように、音響膜には剥離ライナーを使用する場合が多い。例えば、保護カバーアセンブリを電子デバイスに集成する前に、保護カバーアセンブリ100の結合領域102に剥離ライナー120、122を暫定的に取り外し可能に付着しておくことがある。剥離ライナー120、122は、例えば、保護カバーアセンブリ100を保護し、保護カバーアセンブリが付着される部品を保護し、当該部品の取扱いを容易にすることができる。結合領域102は接着剤材料110を含み、これを利用して保護カバーアセンブリ100を剥離ライナーに付着させることができるため、剥離ライナーの表面に沿って追加の接着剤を付与する必要はない。したがって、剥離ライナーは活性領域104に付着しないため、剥離ライナーを保護カバーアセンブリ100から取り外す際、活性領域はZ強度が結合領域102と比較して低いにもかかわらず、活性領域において破損が引き起こされることがない。剥離ライナーは、エチレンビニルアセテート系エラストマー(EVA)、シリコーン材料、ポリエチレンテレフタレートその他類似の材料から作製することができる。
【0060】
一実施態様において、上面ライナー120が膜106の第一の表面112に隣接し、かつ、底面ライナー122が膜106の第二の表面114に隣接する。上面ライナー120および底面ライナー122は、結合領域102に含まれる接着剤によって膜106に接合されることができる。ライナーは、電子デバイスに取り付けられる前の膜106を被覆するために使用することが多い。ライナー120、122は、Z方向における応力を増加する膜106から離れる方向において剥離することによって取り外される。製造時の引裂きや破損を減らすことは、廃棄物を避けるために望ましい。結合領域102において接着剤を孔内に浸透させ、および/または接着剤ブリッジを設けることにより、Z強度が向上し、膜106の全体にわたり引裂きや破損が防止される。
【0061】
接着剤ブリッジを創出するための方法を
図7および
図8に示す。
図7A~7Dは、膜106の対向する両側にある接着剤層140、142を合併させることによって接着剤ブリッジを創出する方法である。
図8A~8Dは、膜106の片側から接着剤層140を没入させることによって接着剤ブリッジを創出する方法である。接着剤層140、142から接着剤を膜106の孔内に流入させるために熱および/または圧力を使用してもよい。一実施態様において、接着剤層140、142は、当該接着剤材料の融点または流動点より高い温度、但し175℃以下、例えば150℃以下にまで加熱される。膜106は、当該加熱温度に十分耐えうる耐熱性を有する。温度の他、接着剤層140、142の接着剤材料は、150kPaより高い圧力、例えば300kPaより高い圧力を加えることで、孔内に浸透し得る。ローラまたはプレートで接着剤層140を加圧することができる。膜106は、1500kPa以下、例えば500kPa以下の高圧においても孔が開放されたままであるように加圧に対して十分な弾力性を有するため、活性領域104の多孔性は保持され、かつ、結合領域102の孔は開放されたまま接着剤材料を受容する。一具体的実施態様において、50℃~175℃の加熱および150kPa~500kPaの加圧によって、接着剤材料を孔内に浸透させることができる。他の実施態様において、接着剤材料は、加熱もしくは減熱および/または加圧もしくは減圧をしなくても孔内に流入するのに十分な粘性を有する。
【0062】
膜の中には、加熱による温度上昇により孔が圧縮されて接着剤の浸透を妨げるものがある。本明細書に記載の質量/面積比が3g/m2以下である軽量膜は、圧縮に対して十分な耐性を有するため、孔は開放されたまま接着剤の浸透を可能にする。さらに、膜材料は、その構造体の変形を防止するために耐熱性である。
【0063】
図7Aから始まり、接着剤材料の層140、142を、膜106のそれぞれ第一の表面112と第二の表面114に隣接配置する。一実施態様において、層140、142は両面感圧接着剤である。裏材層を使用しないため、層140、142は膜106に直接隣接する。
図7Bに示したように、膜106の孔108の内部への接着剤材料110の浸透を促進するため、加熱および/または加圧する。
図7Cに示したように、加熱/加圧が継続している間、接着剤材料110は浸透し続け、ブリッジ116を形成し始める。接着剤材料110は、層140、142が表面112および114の平面を越えて拡張することがなくなるまで、孔108の中に流入し続ける。接着剤材料110が孔108の内部に収まると、結合領域102が創出されて膜106のZ強度が向上する。接着剤が含まれない領域は活性領域104として示される。一実施態様において、結合領域内の孔の10%以上、例えば20%以上、30%以上、50%以上または70%以上が、接着剤材料を含有する。一般に、接着剤材料を含有する孔が10%未満であると、軽量膜のZ強度は向上しない。接着剤の量を増加することで、膜のZ方向の強度を更に高めることができる。接着剤が存在することによって、結合領域における音響波伝搬性は有意に低下し得るが、代わりに音響波は活性領域を通るように向けられる。
【0064】
一実施態様において、層140、142は同種の接着剤材料を含む。しかしながら、本発明は、対向する双方の表面上に別種の接着剤を使用することも企図する。
【0065】
図7Aは、接着剤浸透前の状態であるが、接着剤層が多孔質膜の表面に付着したままの状態にある従来の保留カバーの構造に類似する。保留構造では、膜の質量を増加するか、または裏材層を付与するかしないと、必要な補強が得られない。この集成体は、接着剤材料の硬度が高過ぎて孔に流入しない場合には、保留構造にとどまるであろう。
図7Bおよび7Cに示したように、接着剤材料が合流することで、1以上の接着剤ブリッジが形成されて、膜を更に補強し、かつ、Z強度を高めることになる。
【0066】
接着剤材料は結合領域の孔内に含めることが好ましいが、接着剤材料が若干側方に浸透して活性領域の孔の1%未満に浸入してしまうことはある。このことは、接着剤材料を含む層に加える熱および圧力を制御することによって最小限に抑えることが可能である。
【0067】
一実施態様として、電子デバイス内に配置された後に接着剤材料が結合領域内に浸透する、結合領域の現場形成と呼ばれる態様がある。別の実施態様において、電子デバイス内に保護アセンブリを配置する前に結合領域を形成することができる。
【0068】
一実施態様において、接着剤材料は熱硬化性であり、そして接着剤材料の合流を引き起こすために加えられる熱は当該硬化温度未満であることができる。接着剤材料を多孔質膜に浸入させた後、接着剤材料を硬化させることができる。
【0069】
層140を第一の表面112上に配置したことを除き、同様の処理工程を
図8A~8Dに示す。膜106の一方の表面上に熱と圧力を加える。
図8Cに示したように、接着剤材料110が表面114に到達するとブリッジ116が形成される。
【0070】
別の実施態様において、結合領域は、各表面上に開口部を有するように膜を貫通する大きな通路を有していてもよい。大きな通路は、ニードルパンチまたは同等の方法で形成することができる。大きな通路のサイズは、膜の孔より大きく、例えば100μmより大きい。接着剤材料が大きな通路を貫通して充填することで、接着剤ブリッジを創出することができる。大きな通路で創出されるブリッジは画定可能であるため、ブリッジの位置および本数を制御することができる。孔も存在するため、接着剤材料はそれらの孔内に進入することもできる。
【実施例】
【0071】
後述する非限定的な実施例および試験結果を考慮することで、本発明の理解が深まる。
試験方法
【0072】
挿入損失検出テスト
【0073】
挿入損失は、被検体膜をサンプル保持板のオリフィスに接合し、当該集成体を完全に包囲し、そしてそのオリフィスと集成体を通過した後のスピーカ発生音を測定することによって、検出することができる。
【0074】
各サンプルを、内径1.6mm(活性領域)を有する円形状音響カバーの形にし、サンプル保持板の直径1mmの円形状開口部の上に配置した。そのサンプルを、B&Kタイプ4232無エコー性試験箱の内側の、内部ドライバまたはスピーカから6.5cm離れた所に配置した。Knowles(登録商標)SPA2410LR5H MEMS測定マイクロフォンを使用した。
【0075】
スピーカを励起して、周波数範囲100Hz~11.8kHzにわたり音圧1Pa(94dB SPL)の外部刺激を発生させた。測定マイクロフォンで、上記周波数範囲にわたり音圧レベル(dB)として音響応答を測定した。損失検出テストを較正するため、開口部を被覆しないで、すなわちサンプルのない状態で測定値を得た。各実施例をサンプルとして紹介することによって測定値を得た。
【0076】
ATEQ空気流テスト
【0077】
ATEQ空気流は、膜サンプルを通過する空気の体積層流量を測定する試験法である。各実施例について、面積2.0cm2の膜状サンプルを作製した。サンプルを2枚のプレート間に、流通路を横切るサンプルを封止するように締め付けた。ATEQ社のPremier D Compact Flow Testerを用い、流通路を通過する空気圧の差圧を1.2kPa(12ミリバール)に設定して、各音響膜サンプルを通過する空気流量(L/時)を計測した。
【0078】
入水圧(WEP)テスト
【0079】
試験用集成体のサンプルにかかる、流通路を横切る水の差圧を34.5kPaおよび500kPaに設定して、ATEQ空気流テストと同様にWEPを測定した。
【0080】
泡立ち点テスト
【0081】
Porous Materials社製のCapillary Flow Porometer CFP-1500を用いて、泡立ち点を測定した。
【0082】
厚さ
【0083】
Keyence LS-7010Mデジタル式マイクロメータを用いて、サンプルを計測した。
【0084】
Z強度
【0085】
膜のZ強度は、TAPPI T-541 om-05に基づき下記の変更を加えて測定した。サンプル面積を0.713cm2とし、クロスヘッド速度0.67cm/秒を採用した。TAPPIプロトコルによる試験前のサンプルが状態調節されていない間、255kPaの圧力下で保持しながらサンプルを20分間49℃に加熱し、両面テープ(3M(登録商標)Very High Bond(VHB)テープ)とサンプルとの間の良好な接着を確保した。3個のサンプルを試験し、最大応力の平均値をZ強度として報告した。
【0086】
面積当たりの質量
【0087】
サンプルの質量/面積を、Mettler-Toledo Scale、Model 1060を用い、ASTM D 3776(布帛の単位面積当たりの質量(重量)に関する標準試験法)試験法(Option C)に従い測定した。試験片の秤量前に目盛りを較正し、結果を平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で報告した。
【0088】
実施例1
【0089】
多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレンとして、質量/面積比が1.4g/m
2、泡立ち点が31.1kPa(4.6psi)、ATEQが763L/時、入水圧が49.9kPa(7.25psi)、および厚さが16μmのものを使用した。三種類の接着剤材料:Nitto 5610R(ポリエステルフィルムを含むアクリル系両面接着剤);Nitto 5610 BN(アクリル系両面接着剤);およびアクリル系接着剤TPA 107(Tesa, 4972)を試験に供し、接着剤が、異なる圧力(0、500kPaおよび1500kPa)下で膜の孔内に浸透するかどうかを測定した。
図7Aに示したような接着剤/膜/接着剤の積層体を、最短5秒間、2枚の平板間に締め付けた。圧縮力はインストロン機器で測定した。試験とサンプル調製はすべて室温で行った。圧縮力を適用した後、膜の剥離強度を測定した。表1に結果を示す。
【表1】
【0090】
表1に示したように、いずれの接着剤も0kPaでは孔内に流入せず、剥離強度は低かった。500kPaでは、粘性の高い接着剤である5610 BNおよびTPA 107が孔内に流入し、良好なZ強度を示す剥離強度を実証した。1500kPaでは、三種類すべての接着剤が孔に浸透した。このように高い圧力においても、膜は圧縮力に抵抗し、孔の開放性が十分に保持された。
【0091】
実施例2
【0092】
実施例1と同様の膜および試験構成を採用し、表2に報告したように、接着剤5605 BRN(日東電工)について各種の操作圧力および温度において試験した。実施例2では、流入を示したサンプルは無かった。
【表2】
【0093】
実施例3
【0094】
実施例1と同様の膜および試験構成を採用し、表3に報告したように、接着剤5605 BRN(日東電工)について各種の操作圧力および温度において試験した。室温(25℃)において、400kPaの高圧下では流入が認められたが、それより低い圧力下では流入がなかった。より高温の100℃および150℃では、各圧力において流入が認められた。
【表3】
【0095】
実施例4
【0096】
実施例1と同様の膜および試験構成を採用し、表4に報告したように、接着剤TPA 107(Tesa 4972)について各種の操作圧力および温度において試験した。試験した圧力および温度のそれぞれで十分な流入が認められた。
【表4】
【0097】
実施例5
【0098】
実施例1と同様の膜および試験構成を採用し、表5に報告したように、接着剤TPA 107(Tesa 4972)について各種の操作圧力および温度において試験した。より高温の100℃および150℃において十分な流入が認められたが、室温(25℃)では流入がなかった。
【表5】
【0099】
実施例6
【0100】
接着剤の流入およびZ強度を検査するため膜のSEM画像を撮影した。
図9に、結合領域902に接着剤材料910を含み、活性領域904には接着剤材料を含まない膜906を示す。膜は、質量/面積比が0.5g/m
2で、泡立ち点が351.6kPa(51.0psi)で、ATEQが110L/時で、厚さが3.2μmである多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレンである。接着剤材料はTPA 107(Tesa 4972)である。Z強度が低いことによる離層の問題を例証するため、膜の片側に結合領域を配置した。離層は、活性領域で発生したが、結合領域では発生しなかった。さらに、結合領域の表面は、当該膜を電子デバイス内に付着させることができた。
【0101】
実施例7
【0102】
実施例6と同じ質量/面積比が0.5g/m
2であるePTFEを用いて、各種接着剤材料の流入を観察するためにSEM画像を撮影した。
図10および
図11において、接着剤はTPA 107であり、熱処理なしの孔内流入を
図10に、そして熱処理を施した場合を
図11に、それぞれ示した。
図12および
図13においては、接着剤はTPA 122であり、熱処理の有無にかかわらず、膜の孔内への流入は認められなかった。
【0103】
実施例8
【0104】
膜の粘弾性について、回転式レオメータ(ARES-G2回転式レオメータ、New Castle DE、米国)上で小振幅振動せん断(SAOS)を用いて測定した。直径8mmおよび公称厚さ約1mmの円盤状の接着剤試験片を調製した。回転式レオメータに直径8mmの複数の平行板を付属した。これらの平行板をレオロジー測定の目標温度、この場合25℃に予備加熱し、さらに目標温度においてゼロギャップ参照した。調製した試験片をレオメータ平行板上に搭載し、そのギャップを約1mmまで低下させた。
【0105】
用いたSAOS手順は発振周波数掃引とした。これは、小振幅正弦歪みを適用して対応する正弦応力を計測することからなる。入力(この場合、歪み)信号と出力(この場合、応力)信号との間の位相シフト(位相角デルタ)も計測する。適用した周波数範囲は、5点/ディケードにおいて102~10-2ラジアン毎秒(rad/s)とした。
【0106】
デルタの正接は、下記の方程式(X)に示すように、粘弾性材料の粘性応答(粘性せん断モジュラスG”)の弾性応答(弾性せん断モジュラスG’)に対する比率を示す。
損失正接(tanδ)=G”/G’
【0107】
低周波数(長期挙動に相当)における接着剤の損失正接(tanδ)応答を比較することで、粘性/弾性応答比を明らかにする。周波数10
-2rad/sにおける損失正接(tanδ)を、最も代表的な流動値とした。損失正接(tanδ)が高いほど、接着剤の粘性が高いことを示す。損失正接(tanδ)が低いほど、接着剤の固体挙動が高いことを示す。表6に各種接着剤について結果を示す。この表に示されるように、剛性が高い接着剤(5605Rおよび5610R)は損失正接(tanδ)値が低くなる。この点、これらの接着剤は、温度および/または圧力を高めても膜の孔内に流入し難いという先の試験結果と相関する。
【表6】
【0108】
実施例9
【0109】
膜は、質量/面積比が9.9g/m2で、泡立ち点が342.6kPa(49.7psi)で、ATEQが7L/時で、厚さが12.9μmである多孔質延伸ポリテトラフルオロエチレンである。接着剤材料はTPA 107(Tesa 4972)である。この重厚な膜では、スタッドプル(stud pull)試験におけるZ強度の増強は認められなかった。
【0110】
本発明について、明瞭化と理解を図るために詳細に説明してきた。しかしながら、当業者であれば、特許請求の範囲に包含される一定の変更が可能であることを認識する。
【0111】
本明細書には、説明目的で、本発明の各種実施態様の理解のための多くの詳細事項が記載されている。しかしながら、当業者であれば、これらの細部の一部を含まずに、または追加の細部を含みつつ、一定の実施態様が可能であることを認識する。
【0112】
いくつかの実施態様を開示したので、当業者であれば、これら実施態様の精神から逸脱することなく各種の変更、別の構造および均等物を使用できることを認識する。さらに、本発明を不必要に不明瞭にしないように、周知のプロセスや要素のいくつかについては説明を省いている。したがって、上述の説明は本発明の範囲を制限するものではない。
【0113】
数値範囲を提供した場合、別段の定めがない限り、当該範囲の上限値と下限値の間における下限値の最小分数単位での各中間値についても具体的に開示されているものと理解すべきである。記載された範囲内の記載された数値または記載されていない中間数値と、当該範囲内の他の記載された数値または中間数値との間にある、いずれの狭い範囲もすべて包含される。これらのより狭い範囲の上限値および下限値は、当該範囲において別個独立に包含または除外されることができ、当該記載範囲において特段除外されることを条件として、各範囲は、当該より狭い範囲に含まれる限界値がいずれかであるか、いずれもないか、両方であるかにかかわらず、本発明の範囲に包含される。記載された範囲が限界値の一方または両方を含む場合、含まれる限界値の一方または両方を除外する範囲もまた包含される。
【0114】
本明細書中および特許請求の範囲における用語の単数形「a」、「an」および「the」は、別段の定めがない限り、複数の参照を含むこととする。また、本明細書中および特許請求の範囲における用語「comprise」、「comprising」、「contains」、「containing」、「include」、「including」および「includes」は、記載された特徴、完全体、成分または工程の存在を明示することを意図し、その他の特徴、完全体、成分、工程、行為もしくは群の一以上の存在または付加を排除するものではない。
以下、本発明の好適な態様を列挙する。
(1)複数の孔と、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜が活性領域と結合領域とを含み、該結合領域が、該結合領域に含まれる複数の孔を通して該第一の表面から該第二の表面へ延在するブリッジを形成する接着剤材料を含むことを特徴とする、保護カバーアセンブリ。
(2)前記接着剤材料は前記第一の表面の平面を越えて延在しない、(1)に記載の保護カバーアセンブリ。
(3)前記第一の表面と前記第二の表面との間の距離は20μm以下である、(1)または(2)に記載の保護カバーアセンブリ。
(4)前記第一の表面または前記第二の表面に隣接する少なくとも一つの剥離ライナーをさらに含む、(1)~(3)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(5)前記結合領域の第一剥離強度は前記活性領域の第二剥離強度より高い、(4)に記載の保護カバーアセンブリ。
(6)前記結合領域の第一剥離強度は1×10
8
Pa以上、好ましくは3×10
8
Pa超である、(4)に記載の保護カバーアセンブリ。
(7)前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が3g/m
2
以下、好ましくは1g/m
2
以下である、(1)~(6)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(8)前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が0.2~3g/m
2
の範囲、好ましくは0.2~1g/m
2
の範囲にある、(1)~(6)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(9)前記多孔質延伸膜は延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィンを含む、(1)~(8)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(10)前記接着剤材料は10
-2
ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(11)前記接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む、(1)~(10)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(12)前記結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含み、好ましくは結合領域に含まれる複数の孔の70%以上が接着剤材料を含む、(1)~(11)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(13)前記多孔質延伸膜を圧縮したときに複数の孔は開放されたままである、(1)~(12)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(14)前記多孔質延伸膜に隣接する裏材が存在しない、(1)~(13)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(15)開口部を有する筐体と、
該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、
該開口部を覆うように配置された、(1)~(14)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリと
を含んでなる電子デバイス。
(16)複数の孔を有する多孔質延伸膜を含んでなる保護カバーアセンブリであって、該多孔質延伸膜は活性領域と結合領域とを含み、かつ、該結合領域に含まれる複数の孔の10%以上が接着剤材料を含むことを特徴とする保護カバーアセンブリ。
(17)前記結合領域の第一剥離強度は前記活性領域の第二剥離強度より高い、(16)に記載の保護カバーアセンブリ。
(18)前記結合領域の第一剥離強度は1×10
8
Pa以上、好ましくは3×10
8
Pa超である、(16)または(17)に記載の保護カバーアセンブリ。
(19)前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が3g/m
2
以下、好ましくは1g/m
2
以下である、(16)~(18)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(20)前記多孔質延伸膜は、質量/面積比が0.2~3g/m
2
の範囲、好ましくは0.2~1g/m
2
の範囲にある、(16)~(18)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(21)前記多孔質延伸膜は延伸フルオロポリマーまたは延伸ポリオレフィンを含む、(16)~(20)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(22)前記接着剤材料は10
-2
ラジアン/秒(rad/s)における損失正接(tanδ)が0.4以上である、(16)~(21)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(23)前記接着剤材料は、アクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはポリシリコーンを含む、(16)~(22)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(24)前記多孔質延伸膜は、第一の表面と、該第一の表面の反対側にある第二の表面とを有し、そして前記接着剤材料は、前記多孔質延伸膜の第一または第二のいずれか一方の表面からその他方の表面へ延在するブリッジを形成する、(16)~(23)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(25)前記結合領域に含まれる複数の孔の70%以上が前記接着剤材料を含む、(16)~(24)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(26)前記活性領域に含まれる複数の孔の1%未満が前記接着剤材料を含む、(16)~(25)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリ。
(27)開口部を有する筐体と、
該筐体内の該開口部の近くに配置された音響トランスデューサと、
該開口部を覆うように配置された、(16)~(26)のいずれか一項に記載の保護カバーアセンブリと
を含んでなる電子デバイス。