(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】吸水剤、及び吸水剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20221124BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221124BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221124BHJP
A61L 15/24 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/30
B01J20/28 Z
A61L15/24 200
(21)【出願番号】P 2020565223
(86)(22)【出願日】2020-01-10
(86)【国際出願番号】 JP2020000645
(87)【国際公開番号】W WO2020145383
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2019003361
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 一樹
(72)【発明者】
【氏名】中津留 玲子
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-272349(JP,A)
【文献】特開2006-297373(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170501(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/132861(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/040530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/26
B01J 20/28
B01J 20/30
C08L 101/14
C08J 3/12
A61L 15/24
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂100質量部に対して、0.
1質量部以上
3質量部以下の無機酸アルカリ金属塩粉末を混合する、吸水剤の製造方法
であって、以下の1~3を満たす吸水剤の製造方法。
1.前記表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂の比表面積が25m
2
/kg以上、かつ、目開き150μmの篩を通過する吸水性樹脂の粒子の割合が吸水性樹脂全体に対して3質量%以下、
2.前記無機酸アルカリ金属塩粉末が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、無リン酸二水素ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む無機酸アルカリ金属塩粉末、
3.前記無機酸アルカリ金属塩粉末の篩分級で規定される質量平均粒子径D50が200μm以下
【請求項2】
上記吸水性樹脂の含水率が10質量%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を発泡重合して得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂である、請求項1
又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時又は重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体について、7J/g以上40J/g以下のゲル粉砕エネルギー2でゲル粉砕する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂である、請求項1~
3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時若しくは重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体又はその乾燥物を造粒する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂である、請求項1~
4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
上記吸水性樹脂に、更に通液性向上剤を添加する、請求項1~
5の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する前の吸水性樹脂中のダスト量に対する、添加後のダスト量で規定される低減後ダスト割合が100%未満である、請求項1~
6の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記吸水性樹脂は、多価アルコール又はその誘導体、アミノアルコール、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物並びにエポキシ化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機表面架橋剤で表面架橋されている、請求項1~
7の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、
篩分級で規定される質量平均粒子径D50が200μm以下の無機酸アルカリ金属塩粉末
を表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上3質量部以下添加して得られる吸水剤
であって、且つ以下の1~2を満たす吸水剤。
1.前記吸水剤の比表面積が25m
2
/kg以上であり、かつ、目開き150μmの篩を通過する吸水性樹脂の粒子の割合が吸水剤全体に対して3質量%以下、
2.前記無機酸アルカリ金属塩粉末が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、無リン酸二水素ナトリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む無機酸アルカリ金属塩粉末
【請求項10】
上記吸水剤の含水率が10質量%以下である、請求項
9に記載の吸水剤。
【請求項11】
上記吸水剤中の多価アルコール量が質量基準で100ppm以上15000ppm以下である、請求項
9又は10に記載の吸水剤。
【請求項12】
上記吸水剤の促進試験後の着色度がL値で80以上である、請求項
9~
11の何れか1項に記載の吸水剤。
【請求項13】
ホイバッハ・ダストメータによる30分値で規定される上記吸水剤のダスト量が150mg/kg以下である、請求項
9~
12の何れか1項に記載の吸水剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水剤、及び吸水剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使い捨てオムツ、生理用ナプキン、いわゆる失禁パット等の衛生材料には、体液を吸収させることを目的として吸水性樹脂を使用した吸水剤が幅広く利用されている。この吸水性樹脂の原料として様々な単量体や親水性高分子が採用されており、特にアクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と表記する。)を単量体として用いたポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が汎用されている。
【0003】
上記吸水性樹脂の物性として、吸収倍率、加圧下吸収倍率、水可溶分、粒度等がWSP(Worldwide Strategic Partners standards) やERT(EDANA Recommended Test Methods)で規定されている。その物性のひとつとしてダスト量が規定されている(非特許文献1、2)。
【0004】
なお、吸水剤の製造工程の処理や工程間の移送時に含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」という。)や吸水性樹脂が摩耗、損傷するため、これらに起因して発生したダストが浮遊して作業環境が悪化することが知られている。
上記ダスト量の低減方法として、これまで以下の技術が提案されている。具体的には、吸水性樹脂の微粉やダストのバインダーとして吸水性樹脂に水を添加する技術(特許文献1、2)、界面活性剤を添加する技術(特許文献3~5)、デンドリマーを添加する技術(特許文献6)、ポリシロキサンやポリオールを添加する技術(特許文献7)、ポリアルキングリコールを添加する技術(特許文献8)、熱可塑性接着剤を添加する技術(特許文献9)、親水性高分子及び安定化剤を添加する技術(特許文献10)、ワックスで吸水性樹脂を被覆する技術(特許文献11)、C3~C6のジオールを添加する技術(特許文献12)、ハイドロタルサイト類を添加する技術(特許文献13)、尿素類及び多価金属塩を添加する技術(特許文献14)、明礬等の多価金属塩を吸水性樹脂に融着させる技術(特許文献15)、無機粉末とオキシアルキレンエーテルとの混合物を使用する技術(特許文献16)が知られている。
また、上記吸水性樹脂のダスト量以外の物性向上として、残存モノマーの低減、着色又は劣化の防止を目的に、還元制の無機酸アルカリ金属塩を使用することが知られている(特許文献17~22)。また、吸水性樹脂の酸基の中和剤(特許文献23、24)や表面架橋剤水溶液の混合助剤(特許文献25、26)として、非還元性の無機酸アルカリ金属塩を使用することが知られている。更に、血液吸収向上剤として、無機酸アルカリ金属塩が使用されることが知られている(特許文献27)。更に、上記吸水性樹脂の通液性向上やAnti-Cakingを目的に、水不溶性多価金属塩を混合する技術(特許文献28)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第4734478号
【文献】国際公開第1991/017200号
【文献】国際公開第1994/022940号
【文献】国際公開第1997/030109号
【文献】国際公開第1997/037695号
【文献】国際公開第2005/061014号
【文献】欧州特許第0679678号
【文献】国際公開第2007/121941号
【文献】国際公開第2005/011860号
【文献】国際公開第2014/034667号
【文献】欧州公開第0755964号
【文献】国際公開第1995/027739号
【文献】国際公開第2014/054656号
【文献】欧州公開第1616581号
【文献】国際公開第2004/069293号
【文献】特開昭63-039934号
【文献】欧州公開第0249391号
【文献】国際公開第1991/03497号
【文献】国際公開第2004/061010号
【文献】国際公開第2005/005549号
【文献】国際公開第2003/059962号
【文献】国際公開第2006/088115号
【文献】特開平01-131209号
【文献】特開平06-298841号
【文献】国際公開第2002/100451号
【文献】国際公開第1998/004922号
【文献】米国特許第4693713号
【文献】国際公開第2002/060983号
【非特許文献】
【0006】
【文献】WSP280.2及び290.2
【文献】EDANA ERT480.2(02)及び490.2(02)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~16で提案されるダスト低減方法は、いずれもダストの発生は抑制できるものの、一方で吸水性能が低下したり、原料コストが増加したりする等の問題が生じていた。具体的に、上記特許文献1、2では製造過程の吸水性樹脂の含水率を高めることでダストの発生を抑制できるが、含水率を高くすると吸水に寄与する吸水性樹脂成分の割合が少なくなり吸水性能が低下するという問題が生じた。また、特許文献3~16では各種の添加剤によってダストの発生を抑制できるが、界面活性剤や水溶性ポリマー、水不溶性ポリマー等は表面張力の低下、ワックスや熱融着性接着剤等は吸水速度の低下、多価金属塩は加圧下吸収倍率、耐尿性、経時着色の低下といった問題が生じた。更にこれらの添加剤は高粘度のものも多く、吸水性樹脂への均一な混合が困難であるという問題が生じていた。
【0008】
そこで、本発明者らがダストの発生要因について検討したところ、本発明で得られる吸水剤は、不定形破砕状の吸水性樹脂を主成分とするものであり、そのため製造過程において、吸水性樹脂の端部が摩耗等で欠け易く、その結果ダストが発生することが判明した。なお、吸水性樹脂の含水率がダスト発生量に影響し、含水率が低いほど顕著に多くなることが分かった。また、吸水性樹脂の比表面積の大きさもダスト発生量に影響し、比表面積が大きいほど発生量が顕著に多くなることも分かった。
【0009】
また、上記特許文献17~27は、残存モノマーの低減等を目的として無機酸アルカリ金属塩を使用することを開示した文献であり、ダスト低減を目的とした無機酸アルカリ金属塩の使用については開示も示唆もない。更に特許文献28では、水不溶性の多価金属塩粉末を使用することでダスト量が増加するという問題が生じていた。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、不定形破砕状の吸水性樹脂でのダスト問題を解決することである。更に本発明の目的は、低含水率であって、表面張力等の諸物性の低下がなく、安価に簡便なダスト発生量が少ない吸水剤の製造方法、及び吸水剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従前のダスト低減技術では、水や液状バインダー、常温で固体のバインダー溶液、溶融液を用いることで、ダストを低減又は固着するのに対し、本発明は、無機酸アルカリ金属塩の粉末を吸水性樹脂に添加することを特徴とする。当該無機酸アルカリ金属塩の粉末を用いることで、吸水性樹脂の表面張力や物性の低下もなく、ダスト量を特異的に低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
上記課題を解決し得た本発明の吸水剤の製造方法は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂100質量部に対して、0.06質量部以上5質量部以下の無機酸アルカリ金属塩粉末を混合するに要旨を有する。
本発明の製造方法は、下記(A)~(J)の少なくとも1以上を含むことも好ましい実施態様であり、下記(A)~(J)は任意に選択可能である。
(A)上記吸水性樹脂の含水率が10質量%以下であること
(B)上記吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上であり、かつ、目開き150μmの篩を通過する吸水性樹脂の粒子の割合が吸水性樹脂全体に対して3質量%以下であること
(C)上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を発泡重合して得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
(D)上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時又は重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体について、7J/g以上40J/g以下のゲル粉砕エネルギー2でゲル粉砕する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
(E)上記吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時若しくは重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体又はその乾燥物を造粒する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
(F)上記吸水性樹脂に、更に通液性向上剤を添加すること
(G)上記無機酸アルカリ金属塩粉末が、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩及びこれらの塩化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種であること
(H)上記無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する前の吸水性樹脂中のダスト量に対する、添加後のダスト量で規定される低減後ダスト割合が100%未満であること
(I)上記吸水性樹脂は、多価アルコール又はその誘導体、アミノアルコール、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物並びにエポキシ化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機表面架橋剤で表面架橋されていること
(J)上記無機酸アルカリ金属塩粉末の質量平均粒子径D50が200μm以下であること
【0013】
本発明の吸水剤は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、上記吸水剤の表面に無機酸アルカリ金属塩粉末が配置されている吸水剤が含まれる。
【0014】
本発明の吸水剤は、下記(a)~(h)の少なくとも1以上を含むことも好ましい実施態様であり、下記(a)~(h)は任意に選択可能である。
(a)上記吸水剤の含水率が10質量%以下であること
(b)上記吸水剤の比表面積が25m2/kg以上であり、かつ、目開き150μmの篩を通過する吸水性樹脂の粒子の割合が吸水剤全体に対して3質量%以下あること
(c)上記吸水剤中の多価アルコール量が質量基準で100ppm以上15000ppm以下であること
(d)上記吸水剤の促進試験後の着色度がL値で80以上であること
(e)ホイバッハ・ダストメータによる30分値で規定される上記吸水剤のダスト量が150mg/kg以下であること
(f)上記吸水剤中の無機酸アルカリ金属塩粉末量が、吸水剤100質量部に対して0.06質量部以上5質量部以下であること
(g)上記無機酸アルカリ金属塩粉末が、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩及びこれらの塩化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属塩であること
(h)上記無機酸アルカリ金属塩粉末の質量平均粒子径D50が200μm以下であること
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、含水率が低く、かつ、ダストの発生量が少ない、不定形破砕状の吸水性樹脂を主成分とする吸水剤、及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らがダストについて検討した結果、製造過程で破砕された含水ゲルや吸水性樹脂は形状が不定形であるため、含水率が低いと当該含水ゲルや吸水性樹脂の端部が摩耗等で欠け易く、その結果、ダストが発生することがわかった。このようなダストは上記したように含水率を高めることで抑制できるが、例えば、1g当たり50gの水溶液を吸収する吸水性樹脂に2%の水を添加すると、同じ1gあたりの生理食塩水の吸収量は、理論上、1g少なくなる。市販の子供用使い捨てオムツには1枚当たり約10gの吸水剤が含まれていることから、当該オムツ1枚あたりの吸収量は約10g低下することになる。この場合、消費者にとって漏れの原因につながるおそれがある。
【0017】
また、吸水性樹脂は加熱することで含水率を低減できるが、乾燥工程の追加はコスト増を招くだけでなく、該加熱に伴って吸水性樹脂中の水が蒸発し、水分子を介したカルボキシル基の水素結合が壊れるため、粘着性が弱まり、その結果としてダストが再発生するという問題が生じるおそれがある。
【0018】
本発明で適用される重合形態として、水溶液重合、逆相懸濁重合、バルク重合、沈殿重合等が挙げられるが、何れの重合形態でも所望する粒径以上の粒子が得られることがある。その場合、所望する粒径となるまで含水ゲル又は吸水性樹脂を粉砕することになるが、その際に粒径が1μm以下のダストが発生することがある。なお、逆相懸濁重合は、気相液滴重合、噴霧重合、液相液滴重合を含む概念である。
【0019】
本発明者らが鋭意検討した結果、上記不定形破砕状の吸水性樹脂100質量部に対して0.06質量部以上5質量部以下の粉末状の無機酸アルカリ金属塩(以下、「無機酸アルカリ金属塩粉末」という)を添加すると、含水率が低くてもダスト発生量が少ないことを見出し、本発明に至った。
【0020】
以下、本発明の吸水剤の製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれら説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0021】
[1]用語の定義
[1-1]吸水性樹脂、吸水剤
本明細書における「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味し、一般的に粉末状である。また、「水膨潤性」とは、WSP241.3(10)で規定される無加圧下吸収倍率(以下、「CRC」と表記する場合がある。)が5g/g以上であることを、「水不溶性」とは、WSP270.3(10)で規定される可溶分(以下、「Ext」と表記する場合がある。)が50質量%以下であることを、それぞれ意味する。
【0022】
上記「吸水性樹脂」は、好ましくはカルボキシル基を有する不飽和単量体を架橋重合させてなる親水性の架橋重合体であるが、その全量、すなわち、100質量%が架橋重合体である必要はなく、上記CRCやExtなどの性能を満たす範囲内で添加剤等を含有することもできる。
【0023】
また、上記「吸水性樹脂」は、「内部のみが架橋された重合体、つまり、内部と表面の架橋密度が実質的に同じである重合体」又は「内部と表面とが架橋された重合体、つまり、表面の架橋密度が内部の架橋密度に対して相対的に高い重合体」を指す場合がある。
【0024】
本明細書においては、上記「内部のみが架橋された重合体」と上記「内部と表面とが架橋された重合体」は原則、区別することなく、何れも「吸水性樹脂」と表記する。ただし、表面架橋の有無について明確に区別する必要がある場合は、上記「内部のみが架橋された重合体」は表面架橋が施される前であるため「表面架橋前の吸水性樹脂」と、上記「内部と表面とが架橋された重合体」は表面架橋が施された後であるため「表面架橋後の吸水性樹脂」と、それぞれ表記する。なお、「表面架橋前」とは、「表面架橋剤を添加する前」又は「表面架橋剤が添加された後であっても加熱処理による架橋反応が始まる前」のことを意味する。
【0025】
また、上記「吸水性樹脂」は、樹脂成分のみを指す場合もあるが、添加剤等の樹脂以外の成分を含んでいてもよい。
【0026】
本明細書における「吸水剤」とは、上記「吸水性樹脂」と「無機酸アルカリ金属塩粉末」とを混合したもの(以下、「吸水性樹脂組成物」と表記する場合がある。)を意味する。したがって上記「吸水剤」には、無機酸アルカリ金属塩粉末を含む吸水性樹脂組成物が、そのまま最終製品として出荷可能な状態にある場合と、無機酸アルカリ金属塩粉末を含む吸水性樹脂組成物に、更に任意の処理が施されている状態にある場合の両方が含まれる。
【0027】
上記「吸水剤」は、吸水性樹脂を主成分として含む。当該「主成分」とは、吸水剤全体に対する吸水性樹脂の質量割合が、好ましくは50質量%以上、以下順に、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上であって、100質量%以下であることを意味する。また、上記「吸水剤」は、その他の成分として、好ましくは無機酸アルカリ金属塩粉末や水、微量成分を含む。
【0028】
[1-2]ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
本明細書における「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸及び/又はその塩(以下、「アクリル酸(塩)」と表記する。)を原料とする架橋重合体を意味する。つまり、「ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂」とは、アクリル酸(塩)由来の構造単位を有する架橋重合体であり、任意成分としてグラフト成分を有する架橋重合体である。
具体的には、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂は、重合反応に関与する単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下、特に好ましくは実質100モル%のアクリル酸(塩)を含む、架橋重合体である。
【0029】
[1-3]「EDANA」及び「WSP」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称である。また「WSP」は、Worldwide Strategic Partnersの略称であり、EDANAが提供する、吸水剤又は吸水性樹脂の世界標準の測定法を示すものである。本発明では、特に断りのない限り、WSP原本(2010年改定)に準拠して、吸水剤又は吸水性樹脂の物性を測定する。なお、本発明では別途言及しない限り、下記実施例での測定方法に従う。
【0030】
[1-4]「CRC」(WSP241.3(10))
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacityの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の無加圧下での吸収倍率を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9質量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して吸水剤又は吸水性樹脂を自由膨潤させ、その後、遠心分離機(遠心力:250G)を用いて脱水した後の吸収倍率(単位:g/g)のことである。
【0031】
[1-5]「Ext」(WSP270.3(10))
「Ext」は、Extractablesの略称であり、吸水剤又は吸水性樹脂の水可溶分、すなわち、水可溶成分量を意味する。具体的には、吸水剤又は吸水性樹脂1.0gを0.9質量%塩化ナトリウム水溶液200mlに添加し、250rpmで1時間又は16時間攪拌した後の溶解ポリマー量(単位:質量%)のことをいう。溶解ポリマー量の測定は、pH滴定を用いて行う。攪拌時間は結果の報告時に記載される。
【0032】
[1-6]ゲル粉砕エネルギー
本発明における「ゲル粉砕エネルギー」とは、含水ゲルをゲル粉砕するときに、ゲル粉砕装置が必要とする含水ゲルの単位質量あたりの機械的エネルギーを意味する。したがって、ゲル粉砕装置を加熱したり冷却したりするエネルギー並びにゲル粉砕装置に投入される水及びスチームのエネルギーは含まれない。
なお、「ゲル粉砕エネルギー」は、英語表記の「Gel Grinding Energy」から「GGE」と略称する。上記GGEは、ゲル粉砕装置が三相交流電力で駆動する場合、以下の(式1)によって算出される。
GGE(J/g)=(√3×電圧×力率×モーター効率)/(1秒間に投入される含水ゲルの質量)・・・(式1)
【0033】
上記「力率」及び上記「モーター効率」は、ゲル粉砕装置の稼動条件等によって変化する装置固有の値であり、0~1までの値をとる。また、ゲル粉砕装置が単相交流電力により駆動する場合、上記GGEは、上記(式1)中の「√3」を「1」に変更して算出することができる。なお、「電圧」の単位は[V]、「電流」の単位は[A]、「1秒間に投入される含水ゲルの質量」の単位は[g/s]である。
【0034】
また、複数のゲル粉砕装置を用いて含水ゲルのゲル粉砕を行うこともできる。この場合には個々のゲル粉砕装置についてのGGEを算出すればよい。
【0035】
含水ゲルに対して加えられる機械的エネルギーは重要な因子の一つであるため、ゲル粉砕装置が空運転時の電流値を差し引いて、上記ゲル粉砕エネルギーを計算することが好ましい。特に複数の装置でゲル粉砕を行う場合、空運転時の電流値の合計が大きくなるため、空運転時の電流値を差し引いて計算する方法が好適である。この場合のゲル粉砕エネルギーは以下の(式2)によって算出される。なお、上記GGEと区別するため、下記の(式2)により算出されるゲル粉砕エネルギーをGGE2と表記する。
GGE2(J/g)=(√3×電圧×(ゲル粉砕時の電流-空運転時の電流)×力率×モーター効率)/(1秒間に投入される含水ゲルの質量)・・・(式2)
【0036】
上記(式2)における「力率」及び「モーター効率」は、ゲル粉砕時の値を採用する。なお、空運転時の力率及びモーター効率の値は、空運転時の電流値が小さいため、近似的に上記(式2)のように定義する。また、上記(式1)及び(式2)における「1秒間に投入される含水ゲルの質量」について、含水ゲルが定量フィーダーで連続的に供給される場合、その供給量が[t/hr]であれば、[g/s]に換算して算出する。
【0037】
[1-7]その他
本明細書において、「~酸(塩)」は「~酸及び/又はその塩」を意味し、「(メタ)アクリル」は「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0038】
[2]吸水剤の製造方法
本発明に係る吸水剤は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂に無機酸アルカリ金属塩粉末を添加したものであり、上記吸水性樹脂として好ましくはポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂が使用される。以下、上記吸水性樹脂の製造方法に関して詳細に説明する。
【0039】
[2-1]単量体水溶液の調製工程
本工程は、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体及び1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を調製する工程である。上記「主成分」とは、重合反応に供される単量体のうち、内部架橋剤を除いた部分に対して、アクリル酸(塩)の含有量が、50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上であって、好ましくは100モル%以下であることを意味する。なお、最終製品として得られる吸水剤の吸水性能に影響しない範囲内で、単量体のスラリー液を使用することもできるが、本明細書では便宜上、単量体水溶液について説明する。
【0040】
[2-1-1]アクリル酸(塩)
本発明では、吸水剤又は吸水性樹脂の物性及び生産性の観点から、公知のアクリル酸(塩)を単量体(以下、「重合性単量体」ということがある。)として用いることが好ましい。公知のアクリル酸には、重合禁止剤や不純物等の成分が微量含まれている。
上記重合禁止剤として、好ましくはメトキシフェノール類、より好ましくはp-メトキシフェノール類が使用される。当該重合禁止剤のアクリル酸中での濃度は、アクリル酸の重合性や吸水剤又は吸水性樹脂の色調等の観点から、質量基準で好ましくは10ppm以上、より好ましくは20ppm以上であって、好ましくは200ppm以下、より好ましくは160ppm以下、更に好ましくは100ppm以下である。
【0041】
上記不純物として、酢酸やプロピオン酸、フルフラール等の有機化合物の他、米国特許出願公開第2008/0161512号に記載された化合物が挙げられる。
【0042】
また、アクリル酸塩としては、上述したアクリル酸を下記塩基性化合物で中和した塩が挙げられる。当該アクリル酸塩は、市販のアクリル酸塩でもよく、アクリル酸を中和して得られる塩でもよい。
【0043】
[2-1-2]塩基性化合物
本発明における「塩基性化合物」とは、塩基性を示す化合物を意味する。具体的には水酸化ナトリウムが該当する。なお、市販の水酸化ナトリウムには、亜鉛、鉛、鉄等の重金属がppmオーダー(質量基準)で含まれているため、厳密には組成物ということもできる。本発明では、このような組成物に関しても塩基性化合物の範疇に含めることとして扱う。
【0044】
上記塩基性化合物の具体例として、アルカリ金属の炭酸塩や炭酸水素塩、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア、有機アミンが挙げられる。中でも、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、強塩基性の化合物が選択される。従って、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。なお、当該塩基性化合物は、取り扱い性の観点から、水溶液とされることが好ましい。
【0045】
[2-1-3]中和
上記アクリル酸塩として、アクリル酸を中和して得られる塩を使用する場合、中和を行う時機としては、重合前、重合中、重合後の何れでもよく、複数の時機又は箇所で中和してもよい。また、吸水剤又は吸水性樹脂の生産効率の観点から、連続式で中和することが好ましい。
【0046】
本発明においてアクリル酸(塩)を用いる場合、その中和率は、単量体の酸基に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上であって、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、特に好ましくは75モル%以下である。当該中和率の範囲とすることで、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の低下をより一層、抑制しやすくなる。
【0047】
なお、上記中和率の範囲は、上述した重合前、重合中、重合後の何れの中和においても適用される。また、吸水性樹脂の酸基のみならず、最終製品としての吸水剤の酸基に対しても同様に適用される。
【0048】
[2-1-4]他の単量体
本発明において、上述したアクリル酸(塩)以外の単量体(以下、「他の単量体」と表記する。)を、必要に応じてアクリル酸(塩)と併用することができる。
上記他の単量体として具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、ビニルスルホン酸、アリルトルエンスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート等のアニオン性不飽和単量体及びその塩;メルカプタン基含有不飽和単量体;フェノール性水酸基含有不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体;N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体が挙げられる。また、当該他の単量体には、水溶性又は疎水性の不飽和単量体が含まれる。当該他の単量体を用いる場合、その使用量は内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下である。
【0049】
[2-1-5]内部架橋剤
本発明の好ましい製造方法において、内部架橋剤が使用される。当該内部架橋剤として具体的には、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの内部架橋剤の中から、反応性等を考慮して1種類以上の内部架橋剤が選択される。また、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤、より好ましくは後述する乾燥温度で熱分解性を有する内部架橋剤、更に好ましくは(ポリ)アルキレングリコール構造を有する重合性不飽和基を二つ以上有する内部架橋剤が選択される。
【0050】
上記重合性不飽和基として具体的には、アリル基、(メタ)アクリレート基が挙げられる。中でも、(メタ)アクリレート基が好ましい。また、上記(ポリ)アルキレングリコール構造を有する内部架橋剤として具体的には、ポリエチレングリコールが挙げられる。なお、アルキレングリコール単位の数(以下、「n」と表記する場合がある。)は、好ましくは1以上、より好ましくは6以上であって、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下、特に好ましくは10以下である。
【0051】
上記内部架橋剤の使用量は、内部架橋剤を除く単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.001モル%以上、更に好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下、更に好ましくは1モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水剤又は吸水性樹脂がより一層、得られ易くなる。一方、当該範囲外の使用量では、ゲル強度の低下に伴う水可溶分の増加や吸収倍率の低下が見られることがある。
【0052】
上記内部架橋剤は、単量体水溶液の作製時に予め添加しておくことが好ましく、この場合、重合反応と同時に架橋反応が行われる。一方、内部架橋剤を添加せずに重合反応を開始し、当該重合反応中又は当該重合反応後に内部架橋剤を添加して架橋反応することもできる。また、これら手法を併用することもできる。また、上記内部架橋剤を使用しない自己架橋とすることもできる。
【0053】
[2-1-6]単量体水溶液に添加される物質
本発明では、上記単量体水溶液の作製時、上記重合反応及び架橋反応の期間中、又は上記重合反応及び架橋反応の後の何れか1箇所以上で、吸水剤又は吸水性樹脂の物性向上の観点から、下記物質を単量体水溶液に添加することができる。
当該物質として具体的には、澱粉、澱粉誘導体、セルロース、セルロース誘導体、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」ということがある。)、ポリアクリル酸(塩)、ポリアクリル酸(塩)の架橋体等の親水性高分子、炭酸塩、アゾ化合物、気泡を生じる発泡剤、界面活性剤、キレート剤、連鎖移動剤等の化合物が挙げられる。
【0054】
上記親水性高分子の添加量は、上記単量体水溶液に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。また、上記化合物の添加量は、上記単量体水溶液に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であって、好ましくは0質量%以上、より好ましくは0質量%超である。
【0055】
上記親水性高分子として水溶性樹脂又は吸水性樹脂を用いると、澱粉-アクリル酸(塩)共重合体、PVA-アクリル酸(塩)共重合体等のグラフト重合体又は吸水性樹脂組成物が得られる。これらグラフト重合体又は吸水性樹脂組成物も、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の範疇に含まれる。
【0056】
[2-1-7]不定形破砕状の吸水性樹脂
本発明に係る吸水剤の製造方法は、ダストが生じ易い不定形破砕状の吸水性樹脂に適用される。当該不定形破砕状の吸水性樹脂としては、低含水率のものが好ましく、含水率が10質量%以下のものがより好ましい。また、当該不定形破砕状の吸水性樹脂として、「発泡形状」又は「多孔質形状」、「造粒物」の吸水性樹脂も対象となる。
上記「不定形破砕状」の吸水性樹脂を得る方法として具体的には、下記(a)~(c)よりなる群から選ばれる1つ以上の工程を選択することが好ましい。
(a)吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液を発泡重合して得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
(b)吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時又は重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体について、7J/g以上40J/g以下のゲル粉砕エネルギー2でゲル粉砕する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
(c)吸水性樹脂が、アクリル酸(塩)を主成分とする単量体水溶液の重合と同時若しくは重合後に得られる含水ゲル状架橋重合体又はその乾燥物を造粒する工程を経て得られるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂であること
【0057】
[2-1-8]単量体成分の濃度
上述した各物質や各成分(以下、「単量体成分」と表記する。)を目的に応じて種々選択し、上記範囲を満たすようにそれぞれの量を規定して互いに混合することによって、単量体水溶液が作製される。なお、本発明では、単量体を水溶液とすること以外に、水と親水性溶媒との混合溶液とすることもできる。
【0058】
また、単量体成分の合計の濃度は、吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上であって、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。当該単量体成分の濃度は、下記式(3)から算出される。
単量体成分の濃度(質量%)=〔(単量体成分の質量)/(単量体水溶液の質量)〕×100 … 式(3)
なお、上記式(3)中、「単量体水溶液の質量」には、グラフト成分や吸水性樹脂、逆相懸濁重合における疎水性有機溶媒の質量は含まれない。
【0059】
[2-2]重合工程
本工程は、上記単量体水溶液の調製工程で得られた、アクリル酸(塩)を主成分として含む単量体及び1種類以上の重合性内部架橋剤を含む単量体水溶液を重合させて、含水ゲルを得る工程である。
【0060】
[2-2-1]重合開始剤
本発明においては、重合時に重合開始剤が使用される。当該重合開始剤としては、熱分解型重合開始剤、光分解型重合開始剤、又は、これら重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用したレドックス系重合開始剤が挙げられる。当該重合開始剤として具体的には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、t-ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤の中から、重合形態等を考慮して1種類以上の重合開始剤が選択される。また、重合開始剤の取り扱い性や吸水剤又は吸水性樹脂の物性の観点から、当該重合開始剤として、好ましくは過酸化物又はアゾ化合物、より好ましくは過酸化物、更に好ましくは過硫酸塩が選択される。また、酸化性ラジカル重合開始剤を用いる場合は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤を併用してレドックス重合を行ってもよい。
【0061】
上記重合開始剤の使用量は、内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは0.001モル%以上、より好ましくは0.01モル%以上であって、好ましくは1モル%以下、より好ましくは0.5モル%以下、更に好ましくは0.1モル%以下である。また、上記還元剤の使用量は、内部架橋剤を除いた単量体に対して、好ましくは0.0001モル%以上、より好ましくは0.0005モル%以上であって、好ましくは0.02モル%以下、より好ましくは0.015モル%以下である。当該範囲内の使用量とすることで、所望する吸水性能を有する吸水剤又は吸水性樹脂がより一層、得られ易くなる。
【0062】
また、本発明においては、上記重合反応を、放射線、電子線、紫外線等の活性エネルギー線の照射によって開始させてもよい。また、活性エネルギー線の照射と上記重合開始剤とを併用してもよい。
【0063】
[2-2-2]重合形態
本発明に適用される重合形態としては、水溶液重合、逆相懸濁重合、噴霧重合、液滴重合、バルク重合、沈澱重合等が挙げられる。中でも、重合の制御の容易性や吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは水溶液重合又は逆相懸濁重合、より好ましくは水溶液重合、更に好ましくは連続水溶液重合が選択される。逆相懸濁重合は国際公開第2007/004529号、国際公開第2012/023433号等に記載されている。また当該連続水溶液重合は、米国特許第4893999号、米国特許第6906159号、米国特許第7091253号、米国特許第7741400号、米国特許第8519212号、特開2005-36100号公報等に記載された連続ベルト重合や、米国特許第6987151号等に記載された連続ニーダー重合が挙げられる。
【0064】
上記連続水溶液重合の好ましい形態として、高温開始重合、高濃度重合、発泡重合等が挙げられる。当該「高温開始重合」とは、重合開始時の単量体水溶液の温度を、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上であって、上限を単量体水溶液の沸点とする重合形態をいう。また「高濃度重合」とは、重合開始時の単量体濃度を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であって、上限を単量体水溶液の飽和濃度とする重合形態をいう。更に「発泡重合」とは、発泡剤又は気泡を含む上記単量体水溶液を重合する重合形態をいう。なお、これらの重合形態は、それぞれ単独で実施してもよいし、二つ以上を併用してもよい。
【0065】
上記各重合は、空気雰囲気下で実施可能であるが、吸水剤又は吸水性樹脂の色調の観点から、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましく、酸素濃度が1容積%以下の雰囲気下で実施することがより好ましい。なお、単量体水溶液中の溶存酸素に関しても、不活性ガスを用いて十分に置換することが好ましく、溶存酸素量を1mg/L未満にしておくことがより好ましい。
【0066】
[2-2-2-1]発泡重合
本発明の重合工程において、重合形態として上記「発泡重合」を選択することが好ましい。当該発泡重合によって、発泡形状又は多孔質形状の含水ゲルや吸水性樹脂、吸水剤が得られる。当該吸水剤又は吸水性樹脂は比表面積が大きく、そのため吸水速度が速くなる。また、吸水剤の吸収性物品への固定化も容易になるため、好ましい。なお、発泡形状又は多孔質形状であることは、電子顕微鏡での粒子表面の孔で確認することができる。また、孔の大きさとしては、直径1μm以上、100μm以下の孔が例示される。当該孔は、吸水剤又は吸水性樹脂一粒あたり、好ましくは1個以上、より好ましくは10個以上であって、好ましくは10000個以下、より好ましくは1000個以下である。当該孔は、上記発泡重合で制御することができる。
【0067】
上記発泡形状又は多孔質形状の含水ゲルや吸水性樹脂、吸水剤は、その形状に由来して機械的ダメージに弱く、ダストを生じ易い。本発明は、かような形状を有する含水ゲルや吸水性樹脂、吸水剤のダスト低減を目的として、好ましく適用される。以下、ダスト低減方法の一つとしての発泡重合 について、詳細に説明する。
【0068】
上記発泡重合として、下記(a-1)~(a-3)から選択される1以上の手法が適用される。
(a-1)手法1:単量体水溶液への気体の導入
(a-2)手法2:単量体水溶液中での溶存気体からの気泡の発生
(a-3)手法3:単量体水溶液への発泡剤の使用
【0069】
(a-1)手法1:単量体水溶液への気体の導入
上記単量体水溶液に対して、好ましくは0.0015ml/g以上の気体を該単量体水溶液に導入することで上記効果が得られる。単量体水溶液に対する気体の導入量は、より好ましくは0.0035ml/g以上、更に好ましくは0.0050ml/g以上であって、好ましくは0.030ml/g以下、より好ましくは0.025ml/g以下、更に好ましくは0.020ml/g以下である。なお、上記気体の導入量は、20℃、1気圧での値である。
【0070】
単量体水溶液へ気体を導入する方法として具体的には、バブリング方式、スタティックミキサー方式、キャビテーション方式、ベンチュリー方式が挙げられる。これらの方法は併用することもできる。上記気体として具体的には、酸素、空気、窒素、炭酸ガス、オゾン、及びこれらの混合気体が挙げられる。中でも、重合性及びコストの観点から、好ましくは窒素又は炭酸ガス等の不活性ガス、より好ましくは空気又は窒素が使用される。気体を導入する際、又は導入後の圧力は、常圧、加圧又は減圧のいずれでもよい。
【0071】
(a-2)手法2:単量体水溶液中での溶存気体からの気泡の発生
本発明において、単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させ、単量体水溶液中に気泡を発生させる過程で重合を開始すると、含水ゲル中に気泡を包含させることができる。溶存気体の溶解度低下手法は、目的の物性及び製造コスト等に応じて適宜決定できる。界面活性剤及び/又は分散剤を添加した単量体水溶液を用いると、気泡を安定的に分散できるため、更に好ましい。
【0072】
溶存気体の溶解度低下手法として具体的には、単量体水溶液の温度を上昇させる手法及び水溶性有機物を添加する手法等があるが、単量体水溶液の温度を上昇させる手法が最も好ましい。導入気泡量を制御するために、予め単量体水溶液中の溶存気体量を制御してもよい。
【0073】
(a-3)手法3:単量体水溶液への発泡剤の使用
本発明において、単量体水溶液に発泡剤を添加して発泡させる場合、当該発泡剤として具体的には、加熱により気体を発生するアゾ化合物、有機若しくは無機のカーボネート溶液、分散液又は粒径0.1μm以上1000μm以下の粉末が挙げられるが、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭酸水素塩が使用される。
【0074】
上記発泡剤の使用量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下であり、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.1質量%以上である。当該発泡剤の使用量が多過ぎると、気泡が大量に発生して気泡が合一し易くなり、その結果得られる吸水剤の比表面積が小さくなり吸水速度が低下することがある。
【0075】
上記工程(a-1)~(a-3)は、単独、又は2以上組み合わせて行ってもよく、組み合わせとしては工程(a-1)と工程(a-2);工程(a-1)と工程(a-3);工程(a-2)と工程(a-3);工程(a-1)と工程(a-2)と工程(a-3)である。なお、上記2工程、及び上記3工程の組み合わせにおいて工程順序は限定されず、また同時に行ってもよい。上記工程は単独で行うよりも好ましくは2工程、より好ましくは3工程を組み合わせることで単量体水溶液中の気泡量をより一層高めることができる。製造コストを考慮すると工程(a-1)及び/又は工程(a-2)である。また工程(a-1)は重合時の中和に起因する昇温を利用することができるため好ましい。更に工程(a-1)と工程(a-2)を組み合わせると、単量体水溶液の溶解度の低下に伴って、より一層容易に単量体水溶液中に気泡を発生及び含有させることが可能となるため特に好ましい。
【0076】
上記(a-1)~(a-3)で述べた発泡剤又は気泡を含む上記単量体水溶液において、気泡を安定的に保持させるために界面活性剤を使用することもできる。当該界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、有機金属界面活性剤が挙げられる。具体的には、国際公開第97/017397号や米国特許第6107358号に記載された界面活性剤が挙げられる。
【0077】
上記界面活性剤及び/又は分散剤の種類及び/又は量を適宜調整することで、所望の物性を有する吸水剤が得られる。なお、当該界面活性剤は、非高分子界面活性剤であることが好ましく、分散剤は高分子分散剤であることが好ましい。また、界面活性剤及び/又は分散剤は、重合前又は重合時の単量体水溶液の温度が50℃以上となる以前の段階で添加されていることが好ましい。
【0078】
界面活性剤及び/又は分散剤の種類は、目的の物性に応じて適宜決定できる。具体的な界面活性剤としては国際公開第2011/078298号に例示されているものが好適に用いられる。その中でも、非イオン性界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレン鎖を分子内に有する非イオン性界面活性剤が更に好ましく、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが最も好ましい。
【0079】
これら界面活性剤の使用量は、使用する界面活性剤の種類や目的とする物性によって適宜調整すればよいが、使用されるモノマーの量に対して、好ましくは0質量%超であって、好ましくは2質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、更に好ましくは0.015質量%以下、更により好ましくは0.01質量%以下、特に好ましくは0.008質量%以下である。上記界面活性剤の使用量は重合後の含水ゲルにも適用できる。なお、界面活性剤を複数使用する場合の使用量は、その合計量とする。更に必要により後述の「(2-6)表面架橋工程」に記載の界面活性剤の被覆を行った後に得られる最終製品としての吸水剤にも適用することができる。
【0080】
[2-3]ゲル粉砕工程
本工程は、上記重合工程で得られた含水ゲルをゲル粉砕して、粒子状の含水ゲル(以下、「粒子状含水ゲル」と表記する。)を得る工程である。なお、後述する粉砕工程での「粉砕」と区別するために、本工程での粉砕は「ゲル粉砕」と表記する。
上記「ゲル粉砕」とは、ニーダー、ミートチョッパー、カッターミル等のゲル粉砕機を用いて、含水ゲルを所定の大きさに調整することを意味する。
【0081】
ゲル粉砕の実施形態や稼働条件等に関しては、国際公開第2015/030129号及び国際公開第2015/030130号に記載された内容が本発明に好ましく適用される。なお、重合形態がニーダー重合である場合には、重合工程とゲル粉砕工程とが同時に実施されていることになる。また、逆相懸濁重合、噴霧重合又は液滴重合等、粒子状含水ゲルが重合工程で得られる場合には、ゲル粉砕工程が当該重合工程と同時に実施されているとみなされる。また、本発明でゲル粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂や吸水剤を得ることができる。なお、不定形破砕状であることは電子顕微鏡写真等の粒子破断面からも確認できる。
【0082】
ゲル粉砕工程によって細粒化されたゲルの粒子径は、一般に0.1mm以上、10mm以下の範囲が好ましい。ゲルを細粒化し過ぎると得られる吸水性樹脂の物性の低いものとなる恐れがある。一方、ゲルの粒子径が大き過ぎると乾燥が不十分になる恐れがある。
【0083】
また、上記粒子状含水ゲルの質量平均粒子径D50は好ましくは300μm以上、より好ましくは350μm以上であって、好ましくは1700μm以下、より好ましくは1000μm以下である。上記質量平均粒子径D50が大きすぎると粒子状含水ゲルが受けるせん断力及び圧縮力が不均一であったり、不十分であったりすることがある。更に、粒子状含水ゲルは、表層部から内部に向かって乾燥されていくため、質量平均粒子径D50が大きすぎると、表層部と内部とでの乾燥度が異なる状態で粉砕されてしまい、物性が不均一な粒子が生成してしまう。その結果、得られる吸水剤全体の物性が低下するため好ましくない。
【0084】
上記質量平均粒子径D50が上記範囲内である場合、粒子状含水ゲルの表面積との関係で過度な乾燥が抑制されてモノマーが含水ゲル中に残存しにくくなり、残存モノマーの減少に寄与するため好ましい。更に、乾燥後の粉砕で多量の微粉が生成することがないため、粒度制御が容易となるだけでなく、通液性等の物性が低下しないため、好ましい。
【0085】
上記粒子状含水ゲルの粒度として、その粒度分布の狭さを示す対数標準偏差σζは、好ましくは0.2以上であって、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.2以下である。粒度分布の対数標準偏差σζは、その値が小さいほど均一な粒径となり、より均等に乾燥させることができるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差σζを0.2未満とするには、ゲル粉砕前の重合時における粒度制御や、ゲル粉砕後における粒子状含水ゲルの分級等の特殊な操作を必要とするため、生産性やコストを考慮すると0.2以上とすることが好ましい。
【0086】
本発明では表面架橋前の吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上となるように発泡重合条件、ゲル粉砕条件及び粒度分布を制御することが望ましい。つまり、本発明のゲル粉砕工程を国際公開第2015/030129号や国際公開第2015/030130号に記載されたゲル粉砕方法で実施することで、表面架橋前の吸水性樹脂の比表面積を25m2/kg以上に高めることができる。
【0087】
また、ミートチョッパー等の粉砕装置のダイス孔径、孔数、ダイス厚み、温水添加量、スクリュー軸の回転数等を適切に制御することで所望の比表面積が得られる。また、該ゲル粉砕技術を前述の発泡重合と組み合わせても良い。
【0088】
上記粒子状含水ゲルの質量平均粒子径D50や粒度分布の対数標準偏差σζの測定法は、国際公開第2016/111223号に記載された方法で行われる。
【0089】
本発明では、ゲル粉砕エネルギー2(以下、「GGE2」と表記する。)が7J/g以上40J/g以下である動力によって含水ゲルを細粒化することによって、表面架橋前の吸水性樹脂の比表面積を25m2/kg以上とすることが容易にできる。当該GGE2は、好ましくは7J/g以上、より好ましくは8J/g以上であって、好ましくは32J/g以下、より好ましくは25J/g以下である。本発明においては上記GGE2で処理される含水ゲルが上記好適な範囲に制御されていることも好ましい。
【0090】
[2-4]乾燥工程
本工程は、上記重合工程及び/又はゲル粉砕工程で得られた含水ゲル及び/又は粒子状含水ゲルを所望する樹脂固形分まで乾燥させて乾燥重合体を得る工程である。
該乾燥重合体の樹脂固形分は、吸水性樹脂1gを180℃で3時間加熱した際の質量変化から求められ、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、特に好ましくは92質量%以上であって、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0091】
上記含水ゲル及び/又は粒子状含水ゲルの乾燥方法として具体的には、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、流動層乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水による乾燥、高温の水蒸気を利用した高湿乾燥等が挙げられる。中でも乾燥効率の観点から、熱風乾燥が好ましく、通気ベルト上で熱風乾燥を行うバンド乾燥がより好ましい。
【0092】
上記熱風乾燥における乾燥温度は、吸水性樹脂の色調や乾燥効率の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上であって、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下である。なお、熱風乾燥における乾燥温度は熱風の温度で規定される。また、熱風の風速や乾燥時間等、上記乾燥温度以外の乾燥条件については、乾燥に供する粒子状含水ゲルの含水率や総質量及び目的とする樹脂固形分に応じて、適宜設定すればよく、バンド乾燥を行う際には、国際公開第2006/100300号、同第2011/025012号、同第2011/025013号、同第2011/111657号等に記載される諸条件が適宜適用される。
【0093】
本発明における乾燥時間は、好ましくは1分間以上、より好ましくは5分間以上、更に好ましくは10分間以上であって、好ましくは10時間以下、より好ましくは3時間以下、更に好ましくは1時間以下である。当該範囲内の乾燥温度及び乾燥時間とすることで、得られる吸水剤の物性を所望する範囲とすることができる。また、乾燥を熱風乾燥で行う場合、熱風の風速としては、好ましくは0.5m/s以上であって、好ましくは3.0m/s以下、より好ましくは2.0m/s以下である。なお、その他の乾燥条件については、乾燥を行う粒子状含水ゲルの含水率及び総重量、並びに目的とする固形分等に応じて、適宜設定すればよい。
【0094】
上記乾燥の諸条件を上記範囲内に制御することで、乾燥重合体の物性にムラが生じにくく、固形分を所定の範囲に制御することができ、更に得られる吸水性樹脂の色調悪化及び吸水性能の低下を抑えることができる。
【0095】
[2-5]粉砕工程、分級工程
本工程は、上記乾燥工程を経て得られる乾燥後の乾燥重合体を、粉砕工程で粉砕し、所望する範囲の粒度に分級工程で調整して、比表面積が25m2/kg以上の表面架橋前の吸水性樹脂を得る工程である。乾燥後の粉砕工程を経ることで、不定形破砕状の吸水性樹脂や吸水剤を得ることができる。
【0096】
上記粉砕工程で使用される粉砕機としては、ロールミル、ハンマーミル、スクリューミル、ピンミル等の高速回転式粉砕機や、振動ミル、ナックルタイプ粉砕機、円筒型ミキサー等が挙げられる。中でも、粉砕効率の観点から、好ましくはロールミルが選択される。また、これら粉砕機を複数併用することもできる。
【0097】
上記分級工程での粒度の調整方法としては、JIS標準篩(JIS Z8801-1(2000))を用いた篩分級や気流分級等が挙げられる。中でも、分級効率の観点から、好ましくは篩分級が選択される。なお、吸水剤又は吸水性樹脂の粒度の調整は、粉砕工程や分級工程での実施に限定されず、重合工程、特に逆相懸濁重合や液滴重合等や、その他の工程、例えば、造粒工程や微粉回収工程で実施することもできる。
【0098】
分級後の表面架橋前の吸水性樹脂に含まれる(i)粒子径が150μm未満の吸水性樹脂の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0099】
また(ii)表面架橋前の吸水性樹脂の質量平均粒子径D50は、好ましくは300μm以上であって、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下、更に好ましくは400μm以下である。
【0100】
更に(iii)表面架橋前の吸水性樹脂の粒度分布は、質量平均粒子径D50が上記(ii)の範囲内であり、かつ150μm未満の粒子の割合が上記(i)の範囲内であることがより好ましい。
【0101】
更に、(iv)表面架橋前の吸水性樹脂粒度分布の狭さを示す対数標準偏差σζは、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、更に好ましくは0.27以上であって、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.40以下、更に好ましくは0.35以下である。粒度分布の対数標準偏差σζは、その値が小さいほど均一な粒径となり、粒子の偏析が少なくなるという利点がある。しかしながら、当該粒度分布の対数標準偏差σζを過度に小さくするには、粉砕と分級を繰り返して粗粒子と微粒子を除去することが必要になり、生産性やコストの観点から不利益をもたらす恐れがある。
【0102】
更に、(v)表面架橋前の吸水性樹脂の比表面積は、好ましくは25m2/kg以上、より好ましくは27m2/kg以上、更に好ましくは30m2/kg以上であって、好ましくは50m2/kg以下、より好ましくは47m2/kg以下、更に好ましくは45m2/kg以下である。比表面積を増大させると使用時に液体との接触率が高くなって吸水速度などの特性を向上に有利である。なお、表面架橋前の吸水樹脂の比表面積は粒度が小さいほど大きくなる。
【0103】
上述した粒度等、即ち上記(i)~(v)は、表面架橋前の吸水性樹脂のみならず、表面架橋後の吸水性樹脂や吸水剤についても適用される。そのため、表面架橋前の吸水性樹脂で調整された上記範囲の粒度を維持するように、表面架橋工程において、表面架橋処理されることが好ましく、表面架橋工程以降に整粒工程を設けて粒度調整されることがより好ましい。また本発明では上記(i)~(v)を任意に組み合わせることができる。すなわち、(i)~(v)は単独で調整することも好ましいが、2以上を組み合わせることも好ましく、複数組み合わせる場合は相乗的な効果が得られる。また2以上を組み合わせる場合はいずれの組み合わせであっても上記各好適な範囲を選択することができる。勿論、(i)~(v)を全て組み合わせてもよい。これらの中でも、(i)と(ii)の組み合わせである(iii)が好ましく、(iii)と(iv)の組み合わせがより好ましく、(iii)及び(iv)、(v)の組み合わせが更に好ましい。当該組み合わせが本発明に適用される。
【0104】
[2-6]表面架橋工程
本工程は、上述した各工程を経て得られる表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に、更に架橋密度の高い部分を設ける工程であり、混合工程、熱処理工程、冷却工程等を含む構成となっている。当該表面架橋工程において、表面架橋前の吸水性樹脂の表面でラジカル架橋や表面重合、表面架橋剤との架橋反応等が起こり、表面架橋された吸水性樹脂が得られる。
【0105】
[2-6-1]混合工程
本工程は、表面架橋剤を含む溶液(以下、「表面架橋剤溶液」と表記する)を混合装置内で表面架橋前の吸水性樹脂と混合することで、加湿混合物を得る工程である。
【0106】
[2-6-1-1]表面架橋剤
本発明においては、表面架橋時に表面架橋剤が使用される。表面架橋剤としては多価アルコール又はその誘導体、アミノアルコール、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物、及びエポキシ化合物よりなる群から選ばれる1種以上の有機表面架橋剤が好ましい。また、表面架橋剤としては、カルボキシル基との間でエステル結合を形成しうる有機表面架橋剤が好ましい。ポリカルボン酸系吸水性樹脂の官能基、例えばカルボキシル基とエステル結合、好ましくは脱水エステル結合を形成する表面架橋剤としては、多価アルコール又はアミノアルコール等の分子内に水酸基を有する有機表面架橋剤や、アルキレンカーボネート、オキサゾリジノン、オキセタン、エポキシ化合物等の開環によって水酸基を発生する有機表面架橋剤が例示される。
【0107】
上記表面架橋剤として、より具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピレン、オキシエチレン-オキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、meso-エリスリトール、D-ソルビトール、ソルビトール等の多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリシドール等のエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物及びこれらの無機塩又は有機塩、例えばアジリジニウム塩等;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多価イソシアネート化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等の多価オキサゾリン化合物;N-アシルオキサゾリジノン、2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン化合物;1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキソパン-2-オン等のアルキレンカーボネート化合物;環状尿素化合物;オキセタン、2-メチルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等のオキセタン化合物;エタノールアミン等のアミノアルコール化合物;亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、ジルコニウム等の水酸化物又は塩化物等の多価金属化合物等が挙げられる。
【0108】
これらの表面架橋剤の中でも、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物及びそれらの塩、オキセタン化合物並びにアルキレンカーボネート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適である。より好ましくは、表面架橋剤は、炭素数3以上6以下でかつ分子内に含有する水酸基が2以上3以下の多価アルコール、炭素数6以上12以下のエポキシ化合物、炭素数3以上5以下のアルキレンカーボネート及び炭素数3以上10以下のオキセタン化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物である。
【0109】
また上述した表面架橋剤は、その反応性や熱処理工程での加熱温度を考慮して、1種又は2種類以上が用いられる。なお、表面架橋工程は、その効果を考慮して2回以上行ってもよく、その場合、2回目以降の工程は1回目と同一の表面架橋剤を用いて行ってもよく、異なる表面架橋剤を用いて行ってもよい。
【0110】
上記表面架橋剤の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下である。表面架橋剤の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成することができ、より一層、高物性の吸水性樹脂や吸水剤が得られ易くなる。なお、複数の表面架橋剤を使用する場合の使用量は、その合計した量とする。
【0111】
上記表面架橋剤は、水溶液として表面架橋前の吸水性樹脂に添加することが好ましい。この場合、水の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であって、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。水の使用量を当該範囲内とすることで、表面架橋剤溶液の取り扱い性がより一層、向上し、表面架橋前の吸水性樹脂に対して表面架橋剤を均等に混合し易くなる。
【0112】
表面架橋剤溶液中の表面架橋剤の濃度は適宜決定されるが、本発明の対象である比表面積の高い表面架橋前の吸水性樹脂を表面架橋して表面架橋前の吸水性樹脂の表面層に最適な架橋構造を形成して物性向上効果を得るためには、表面架橋剤溶液中の表面架橋剤の濃度は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であって、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0113】
また、親水性有機溶媒を必要に応じて上記水と併用して、上記表面架橋剤溶液とすることもできる。この場合、親水性有機溶媒の使用量は、表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。当該親水性有機溶媒として具体的には、メチルアルコール等の低級アルコール類;アセトン等のケトン類;ジオキサン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;エチレングリコール等の多価アルコール類等が挙げられる。しかしながら、これらの親水性有機溶媒は、必要最小限に抑えるべきであり、使用する場合でもできるだけ少ない使用量に制限されることが好ましく、使用しないことが最も好ましい。
また、下記「[2-7]添加剤とその添加工程」で添加される各種の添加剤を、5質量部以下の範囲内で、上記表面架橋剤溶液に添加したり、混合工程で別途添加したりすることもできる。
【0114】
[2-6-1-2]混合方法、混合条件
上記表面架橋前の吸水性樹脂と上記表面架橋剤溶液との混合方法としては、表面架橋剤溶液を予め作製しておき当該溶液を表面架橋前の吸水性樹脂に対して、好ましくは噴霧又は滴下して、より好ましくは噴霧して、混合する方法が挙げられる。
上記混合を行う混合装置として、表面架橋前の吸水性樹脂と表面架橋剤とを均一かつ確実に混合するのに必要なトルクを有している混合装置が好ましい。当該混合装置は、高速攪拌型混合機が好ましく、高速攪拌型連続混合機がより好ましい。なお、当該高速攪拌型混合機の回転数は、好ましくは100rpm以上、より好ましくは300rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0115】
本工程に供給される表面架橋前の吸水性樹脂の温度は、表面架橋剤溶液との混合性や加湿混合物の凝集性の観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは17℃以上、更に好ましくは20℃以上であって、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。また、混合時間は、好ましくは1秒間以上、より好ましくは5秒間以上であって、好ましくは1時間以下、より好ましくは10分間以下である。
【0116】
[2-6-2]熱処理工程
本工程は、上記混合工程で得られた加湿混合物に熱を加えて、表面架橋前の吸水性樹脂の表面上で架橋反応させる工程である。
上記加湿混合物の熱処理は、当該加湿混合物を静置状態で加熱してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で加熱してもよいが、加湿混合物全体を均等に加熱できる点において、攪拌下で加熱することが好ましい。上記熱処理を行う熱処理装置として具体的には、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。
【0117】
本工程における加熱温度は、表面架橋剤の種類及び量、並びに吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能の観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、更に好ましくは180℃以上であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは230℃以下である。また、加熱時間は好ましくは5分間以上、より好ましくは7分間以上である。
加熱温度と加熱時間とを上記範囲内に制御することにより、得られる吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能が向上するため好ましい。
【0118】
[2-6-3]冷却工程
本工程は、上記熱処理工程の後に必要に応じて設けられる任意の工程である。本工程は、上記熱処理工程を終えた表面架橋後の吸水性樹脂を所定の温度まで強制冷却し、表面架橋反応を速やかに終了させる工程である。
【0119】
上記表面架橋後の吸水性樹脂の冷却は、静置状態で冷却してもよく、攪拌等の動力を用いて流動状態で冷却してもよいが、吸水性樹脂全体を均等に冷却できる点において、攪拌下で冷却することが好ましい。上記冷却を行う冷却装置として具体的には、パドルドライヤー、マルチフィンプロセッサー、タワードドライヤー等が挙げられる。なお、これら冷却装置は、熱処理工程で使用される熱処理装置と同じ仕様とすることもできる。熱処理装置の熱媒を冷媒に変更することで、冷却装置として使用できるからである。
【0120】
本工程における冷却温度は、熱処理工程での加熱温度、吸水剤又は吸水性樹脂の吸水性能に応じて適宜設定すればよい。表面架橋後、吸水性樹脂に無機酸アルカリ金属塩粉末を添加するときの吸水性樹脂の温度が好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下、更に好ましくは90℃以下、特に好ましくは70℃以下であって、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上となるように冷却することが望ましい。吸水性樹脂の温度が上記範囲内であれば無機酸アルカリ金属塩粉末と良好な混合性が得られる。
【0121】
表面架橋して得られた吸水性樹脂の形状は造粒などを行わなければ不定形破砕状であるため高比表面積を有しており高吸水速度である。なお、表面架橋後に吸水性樹脂粒子に破砕等を行ってもよいが、破砕等を行うと表面架橋効果が減少する。不定形破砕状の吸水性樹脂、より好ましくは不定形状、かつ高比表面積を有する吸水性樹脂は重合時の発泡重合、含水ゲル又は乾燥重合体に対して粉砕を行うことで得ることができる。
【0122】
表面架橋後の吸水性樹脂に含まれる(i)目開き150μmの篩を通過する粒子の割合は吸水性樹脂全体に対して3質量%以下であることが好ましい。目開き150μmの篩を通過する粒子、すなわち粒子径が150μm未満の粒子は吸水性樹脂を上記分級工程と同様の粒度の調整方法を採用することで適切に調整できる。150μm未満の粒子の割合以外にも上記した分級後の表面架橋前の吸水性樹脂と同じように(ii)質量平均粒子径D50が好ましくは300μm以上500μm以下であること、(iii)質量平均粒子径D50と150μm未満の粒子が好ましくは上記各範囲内であること、(iv)対数標準偏差σζが好ましくは0.20以上0.50以下であること、(v)比表面積が好ましくは25m2/kg以上50m2/kg以下であることが望ましい。また(i)~(v)の各好適な範囲、及び組み合わせなども上記分級後の表面架橋前の吸水性樹脂と同じである。本発明では表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上であり、かつ、目開き150μmの篩を通過する粒子の割合が吸水性樹脂全体に対して3質量%以下であることが好ましい。
【0123】
[2-7]添加剤とその添加工程
本発明では、表面架橋後の吸水性樹脂に対して、添加剤を添加する。換言すれば、吸水剤は、吸水性樹脂の他に、添加剤を含有し得る。添加剤としては、通液性向上剤又は同成分剤、その他の添加剤などが含まれ、これらは1種を用いてもよく2種以上を組み合わせてもよい。
【0124】
[2-7-1]通液性向上剤又は同成分剤
本発明で使用される通液性向上剤として、吸水剤又は吸水性樹脂の食塩水流れ誘導性(以下、「SFC」という。)、荷重又は無荷重下のゲル床透過性(以下、「GBP」という。)を向上する機能を有する添加剤が挙げられ、多価金属塩、カチオン性ポリマー、無機微粒子から選ばれる1種類以上の化合物を使用することができ、必要に応じて2種類以上を併用できる。
【0125】
これらの添加剤は、通液性の向上を目的とせず、吸湿下のAnti-Caking剤、粉体の流れ制御剤、吸水性樹脂のバインダー等のその他の機能を発揮するために使用してもよい。なお、その他の機能を目的として添加される場合は、同成分剤という。
上記通液性向上剤又は同成分剤の添加量は、選択される化合物に応じて、適宜設定される。なお、これら添加剤を単独で用いる場合だけでなく、2種以上を併用する場合のそれぞれの好適な添加量の範囲は以下の記載の範囲内で適宜選択できる。
【0126】
上記「SFC」とは、Saline Flow Conductivityの略称であり、2.07kPa荷重下での、吸水剤又は吸水性樹脂に対する0.69質量%塩化ナトリウム水溶液の通液性であり、米国特許第5669894号に記載されたSFC試験方法に準拠して測定される値である。
【0127】
また、上記「GBP」とは、Gel Bed Permeabilityの略称であり、荷重下又は自由膨潤での、吸水剤又は吸水性樹脂に対する0.9質量%塩化ナトリウム水溶液の通液性であり、国際公開第2005/016393号に記載されたGBP試験方法に準拠して測定される値である。
【0128】
[2-7-1-1]多価金属塩
多価金属塩を使用する場合、多価金属塩の多価金属カチオンは、好ましくは2価以上、より好ましくは3価以上であって、好ましくは4価以下である。また、使用できる多価金属としては、アルミニウム、ジルコニウム等が挙げられる。従って、本工程で使用することができる多価金属塩としては、乳酸アルミニウム、乳酸ジルコニウム、硫酸アルミニウム、硫酸ジルコニウム等が挙げられる。中でも、SFCの向上効果の観点から、乳酸アルミニウム又は硫酸アルミニウムがより好ましく、硫酸アルミニウムが更に好ましい。
上記多価金属塩の添加量としては、吸水性樹脂1gに対して、好ましくは0モル以上3.6×10-5モル未満、より好ましくは0モル以上1.4×10-5モル未満、更に好ましくは0モル以上1.0×10-5モル未満である。
【0129】
[2-7-1-2]カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーを使用する場合、カチオン性ポリマーとしては、米国特許第7098284号に記載されている物質が挙げられる。中でも、SFCやGBPの向上効果の観点から、ビニルアミンポリマーがより好ましい。また、カチオン性ポリマーの質量平均分子量は、5000以上1000000以下が好ましい。
【0130】
上記カチオン性ポリマーの添加量は、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは2.5質量部未満、より好ましくは2.0質量部未満、更に好ましくは1.0質量部未満である。
【0131】
[2-7-1-3]無機微粒子
無機微粒子を使用する場合、無機微粒子としては、米国特許第7638570号に記載されている物質が挙げられる。中でも、SFCやGBPの向上効果の観点から、二酸化ケイ素が好ましい。
【0132】
上記無機微粒子は、一次粒子径が20nm未満である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは1.2質量部未満、より好ましくは1.0質量部未満、更に好ましくは0.5質量部未満となるように添加すればよい。また、一次粒子径が20nm以上である場合、吸水性樹脂100質量部に対して、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0質量部超であって、好ましくは2.0質量部未満、より好ましくは1.5質量部未満、更に好ましくは1.0質量部未満となるように添加すればよい。なお、選択される無機微粒子の種類や量によってはダストが著しく増えるものがあり、本発明の製法ではダストが低減できないことがあるため、適宜選択・調整すれば良い。
【0133】
[2-7-2]その他の添加剤
その他の添加剤として具体的には、キレート剤、無機還元剤、芳香性物質、有機還元剤、ヒドロキシカルボン酸化合物、界面活性剤、リン原子を有する化合物、酸化剤、金属石鹸等の有機粉末、消臭剤、抗菌剤、パルプや熱可塑性繊維等が挙げられる。これらのその他の添加剤は1つ又は2つ以上を使用できる。中でも、キレート剤が好ましく、アミノ多価カルボン酸又はアミノ多価燐酸がより好ましい。当該キレート剤として具体的には、特開平11-060975号、国際公開第2007/004529号、国際公開第2011/126079号、国際公開第2012/023433号、特表2009-509722号、特開2005-097519号、特開2011-074401号、特開2013-076073号、特開2013-213083号、特開昭59-105448号、特開昭60-158861号、特開平11-241030号、特開平2-41155号等に記載のキレート剤が挙げられる。
【0134】
その他の添加剤、特にキレート剤は、単量体又は吸水性樹脂に対して、0.001質量%以上、1質量%以下の範囲で添加又は含有されるのが好ましく、できるだけ固形分を低下させることのない添加法を選択することがより好ましい。
【0135】
[2-7-3]添加剤の添加工程
上記添加剤は、上記の単量体水溶液の調製工程、重合工程、ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程から選ばれる1つ以上の工程の前、後、又はその工程の途中で添加することができる。好ましくは、重合工程以降のいずれかの工程の前、後、又はその工程の途中で添加される。
【0136】
上記添加剤を吸水性樹脂に添加する場合、添加剤が液体又は水等の水性媒体の溶液の時には、該液体又は溶液を吸水性樹脂に対して噴霧し、十分なトルクをかけて吸水性樹脂と添加剤とを均一かつ確実に混合することが好ましい。一方、上記添加剤が粉状等の固体状である場合には、吸水性樹脂とドライブレンドしてもよく、水等の水性液体をバインダーとして使用してもよい。
【0137】
上記混合に使用する装置として具体的には、攪拌型混合機、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、流動型ロータリーディスク型混合機、気流型混合機、双腕型ニーダー、内部混合機、粉砕型ニーダー、回転式混合機、スクリュー型押出機等が挙げられる。攪拌型混合機を用いる場合には、その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0138】
[2-8]無機酸アルカリ金属塩粉末とその添加工程
本工程は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂に対して、無機酸アルカリ金属塩粉末を混合する工程である。この処理を本発明の下記条件に従って行うことでダストの発生量が低くなる。
【0139】
無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する対象となる吸水性樹脂は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂であるが、より好ましくは以下の(i)~(iii)の何れか一つ以上を満足するものである。
(i)表面架橋前の吸水性樹脂を有機表面架橋剤で表面架橋した不定形破砕状の吸水性樹脂、
(ii)吸水性樹脂の含水率が10質量%以下、
(iii)吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上、かつ、目開き150μmの篩を通過する粒子の割合が吸水性樹脂全体に対して3質量%以下とする。
【0140】
(i)表面架橋前の吸水性樹脂を有機表面架橋剤で表面架橋した不定形破砕状の吸水性樹脂
上記したように表面架橋剤として有機表面架橋剤を使用することが好ましい。
【0141】
(ii)吸水性樹脂の含水率が10質量%以下
不定形破砕状の吸水性樹脂は、含水率が10質量%以下となると摩擦等による破損に起因してダストが発生しやすくなることが、一般的に知られている。しかしながら、無機酸アルカリ金属塩粉末を吸水性樹脂に添加することでダストの発生量が無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しない場合と比べて低いという驚くべき結果が得られた。この効果は、吸水性樹脂の含水率が好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは4質量%以下としても得られる。
【0142】
(iii)吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上、かつ、目開き150μmの篩を通過する粒子の割合が吸水性樹脂全体に対して3質量%以下
吸水性樹脂は上記破砕によって比表面積が高くなるが、樹脂端部は摩耗等によって損壊しやすくなる。特に吸水性樹脂の比表面積が25m2/kg以上になるとダストが発生しやすくなるが、所定の粒径を有する無機酸アルカリ金属塩粉末を吸水性樹脂に添加することでダストの発生量が、無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しない場合と比べて低くなる。このような効果は吸水性樹脂の比表面積が好ましくは25m2/kg以上、より好ましくは27m2/kg以上、更に好ましくは30m2/kg以上でも得られる。なお、吸水性樹脂の強度を保って形状を保持することを考慮することが好ましくは50m2/kg以下、より好ましくは45m2/kg以下である。
吸水性樹脂や吸水剤の比表面積は粒度が小さいほど大きくなるが、本発明では好ましくは上記微粉の少ない吸水性樹脂、特に150μm未満の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下が使用される。
【0143】
上記(i)~(iii)は適宜組み合わせて使用でき、好ましくは(i)~(iii)のいずれか一つ、或いは(i)~(iii)のいずれか2つ、或いは全部である。例えば(ii)と(iii)の場合、ダストはより発生し易い状態であるが、所定の粒径を有する無機酸アルカリ金属塩粉末を添加した場合は、無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しない場合と比べてダストの発生量が低くなる。
【0144】
[2-8-1]無機酸アルカリ金属塩
無機酸アルカリ金属塩としては、水不溶性塩又は水溶性塩が使用され、好ましくは水溶性塩、特に25℃の水100gに1g以上溶解する無機酸アルカリ金属塩が使用される。
無機酸アルカリ金属塩は酸化性塩でもよく、還元性塩でもよく、非酸化性非還元性塩でもよいが、好ましくは還元性又は非酸化性非還元性の無機酸アルカリ金属塩が使用される。無機酸アルカリ金属塩は無機酸の酸基のすべてが塩になってもよく、一部が塩である水素塩であってもよい。
【0145】
還元性の無機酸アルカリ金属塩としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム等の亜硫酸のアルカリ金属塩;亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素リチウム等の亜硫酸水素のアルカリ金属塩;ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸リチウム等のピロ亜硫酸のアルカリ金属塩;硫酸水素ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等の硫酸のアルカリ金属塩;チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸リチウム等のチオ硫酸のアルカリ金属塩(及びその水和物);亜リン酸ナトリウム、亜リン酸水素ナトリウム等の亜リン酸のアルカリ金属塩;次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸水素ナトリウム等の次亜リン酸のアルカリ金属塩、等が挙げられる。
非還元性の無機酸アルカリ金属塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等の炭酸のアルカリ金属塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム等の炭酸水素のアルカリ金属塩;炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム等上記炭酸のアルカリ金属塩と上記炭酸水素のアルカリ金属塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等の塩酸のアルカリ金属塩;無リン酸二水素ナトリウム、無リン酸二水素リチウム等の無リン酸二水素のアルカリ金属塩等が例示される。
これらの中でもダストの発生抑制効果とコストを考慮すると亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、及びその水和物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム、無リン酸二水素ナトリウム等のナトリウム塩;炭酸カリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム塩;炭酸リチウム等のリチウム塩が好ましい。
【0146】
また還元性無機酸アルカリ金属塩、具体的には亜硫酸水素のアルカリ金属塩、亜硫酸のアルカリ金属塩、ピロ亜硫酸のアルカリ金属塩、硫酸のアルカリ金属塩、チオ硫酸のアルカリ金属塩等の硫黄含有アルカリ金属塩は経時着色防止効果やゲル劣化防止効果を有すると共にダストの発生量も抑えることができるため好ましい。本発明では、上記無機酸アルカリ金属塩粉末が、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩及びこれらの塩化物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0147】
本発明では上記無機酸アルカリ金属塩の粉末を使用する。本発明者らが粒度の異なるアルカリ金属塩粉末を使用して検討した結果、微細な無機酸アルカリ金属塩粉末を使用した場合にのみ本発明の効果、すなわち、ダストの発生が少なかった。上記無機酸アルカリ金属塩粉末の篩分級で規定される質量平均粒子径D50は、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。下限は、取扱性を考慮すると50μm以上、より好ましくは75μm以上である。
【0148】
無機酸アルカリ金属塩粉末、但し、2種以上を併用する場合は合計量の添加量は、無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する前の吸水性樹脂100質量部に対して、必須に0.06質量部以上、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であって、5質量部以下、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0149】
無機酸アルカリ金属塩粉末の使用量が少なすぎると十分なダスト抑制効果が得られないことがある。一方、無機酸アルカリ金属塩粉末の使用量が多すぎるとダスト量が増加し、吸水性能が低下することがある。本発明では無機酸アルカリ金属塩粉末添加前のダスト量に対する、無機酸アルカリ金属塩粉末添加後のダスト量で規定される低減後ダスト割合は好ましくは100%未満、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。
【0150】
上記吸水性樹脂に対して無機酸アルカリ金属塩粉末を混合するに際し、具体的な混合方法としては、公知の攪拌装置を用いて混合することができる。具体的には、パドルブレンダー、リボンミキサー、ロータリーブレンダー、ジャータンブラー、プラウジャーミキサー、モルタルミキサー等を用いて混合することができる。その回転数は、好ましくは5rpm以上、より好ましくは10rpm以上であって、好ましくは10000rpm以下、より好ましくは2000rpm以下である。
【0151】
これらの攪拌装置は、上記吸水性樹脂と上記無機酸アルカリ金属塩粉末との混合物を加熱する加熱装置を備えていてもよいし、加熱装置によって加熱した上記混合物を冷却する冷却装置を備えていてもよい。攪拌時間は特に限定されないが、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下である。
【0152】
また無機酸アルカリ金属塩粉末の混合方法として、別途、混合工程を設けずに、表面架橋後の各工程で無機酸アルカリ金属塩粉末を混合してもよい。吸水性樹脂の製造工程では各工程間を空気輸送やスクリューダーフィダー等の搬送機で連結される場合が多いが、これら搬送工程で吸水性樹脂の搬送と同時に無機酸アルカリ金属塩粉末を混合してもよいし、表面架橋後の分級工程や凝集物の破砕工程で無機酸アルカリ金属塩粉末を混合してもよい。
【0153】
また、上記吸水性樹脂及び無機酸アルカリ金属塩粉末は粒子状の粉体であり、混合を行う際に凝集を防止することが重要である。そのため、上記無機酸アルカリ金属塩粉末と吸水性樹脂とを混合する際又は混合した後に、上記無機酸アルカリ金属塩粉末と吸水性樹脂とを空気輸送することが好ましい。空気輸送することによって、吸水性樹脂及び無機酸アルカリ金属塩粉末の凝集を防止できる。したがって、無機酸アルカリ金属塩粉末を吸水性樹脂に対しより均一に混合でき、得られる吸水剤の物性を高めることができる。
【0154】
なお、無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する際に、無機酸アルカリ金属塩粉末と共に、あるいは無機酸アルカリ金属塩粉末とは別に、更に後述するキレート剤、植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩等の他の添加剤よりなる群から選ばれる1種以上を含んでもよい。また必要により水やポリオール等のバインダーを使用してもよい。その場合の添加剤の含有量は、必要により適宜選択されるが、無機酸アルカリ金属塩粉末の0.001質量%以上50質量%以下にする。上記キレート剤としては、Fe及びCuに対するイオン封鎖能やキレート能が高いキレート剤が好ましく、具体的にはFeイオンに対する安定度定数が10以上のキレート剤、好ましくは20以上のキレート剤、更に好ましくはアミノ多価カルボン酸及びその塩、特に好ましくはカルボキシル基を3個以上有するアミノカルボン酸及びその塩が挙げられる。これら多価カルボン酸は、具体的には、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、シクロヘキサン-1,2-ジアミンテトラ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、エチレングリコールジエチルエーテルジアミンテトラ酢酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酢酸、N-アルキル-N’-カルボキシメチルアスパラギン酸、N-アルゲニル-N’-カルボキシメチルアスパラギン酸及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩が挙げられる。塩は完全中和でもよく、部分中和でもよく、混合物でもよい。中でも、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸及びその塩が最も好ましい。また、その使用量は吸水性樹脂100質量部に対して好ましくは0.00001質量部以上、より好ましくは0.0001質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。
【0155】
上記の植物成分は、消臭性を発揮するために、吸水性樹脂100質量部に対して好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.001質量部以上、更に好ましくは0.002質量部以上であって、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下の範囲で配合し得る。植物成分は、好ましくはポリフェノール、フラボン及びその類、カフェインから選ばれる少なくとも1種の化合物であるのが好ましく、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子及び没食子酸から選ばれる1種以上の化合物であるのが更に好ましい。また、上記の抗菌剤としては、抗菌性を有するこれまでの公知の抗菌剤であり、特開平11-267500号に記載された抗菌剤が挙げられる。なお、これらのキレート剤、植物成分、抗菌剤、水溶性高分子、無機塩等を吸水性樹脂に添加する際には、できるだけ固形分を低下させることのない添加法を選択することが好ましい。
【0156】
本発明では無機酸アルカリ金属塩粉末を添加・混合した後の上記吸水性樹脂に対しては、必要に応じて加熱乾燥処理を行えばよい。すなわち、吸水性樹脂の含水率が10質量%を超えている場合は加熱乾燥処理を行ってもよいが、本発明では無機酸アルカリ金属塩粉末をドライブレンドしているため、従来の水溶液添加と比べて吸水性樹脂の含水率が低い。特に従来は吸水性樹脂の含水率を10質量%以下にするために加熱乾燥処理が必須的に行われていたが、上記したように本発明の吸水性樹脂は含水率が低く、好ましくは10質量%以下であるため、加熱乾燥処理は必須な処理ではない。したがって本発明によれば加熱乾燥処理に必要な操業コストを低減できる。また加熱乾燥処理を行う場合であっても吸水性樹脂の含水率は従来よりも低くなっているため、短時間の加熱乾燥処理で含水率を低減できる。また、無機酸アルカリ金属塩粉末を添加・混合した後の上記吸水性樹脂に対して、水又は水性液を添加しないことも、含水率を10質量%以下とする方策として有用である。
【0157】
[2-9]その他の工程
本発明においては、上述した工程以外に、造粒工程、整粒工程、微粉除去工程、微粉回収工程、微粉の再利用工程、除鉄工程等を、必要に応じて実施することができる。また、輸送工程、貯蔵工程、梱包工程、保管工程等から選択される少なくとも1種類の工程をさらに含んでいてもよい。
【0158】
なお、上記造粒工程は、微粉回収工程で得られた微粉の含水ゲル化工程などであってもよい。上記整粒工程は、表面架橋工程以降で微粉を分級して除去する工程;吸水性樹脂が凝集して所望の大きさを超えた場合に分級、粉砕を行う工程;等を含む。上記微粉の再利用工程は微粉をそのまま、又は上記造粒工程で大きな含水ゲルにして、吸水性樹脂の製造工程の何れかの工程で原料である含水ゲル等に添加する工程であってもよい。
【0159】
例えば無機酸アルカリ金属塩粉末を添加した後の吸水剤から粒子径150μm未満の粒子を分離除去し、除去した粒子を吸水性樹脂の製造工程で再利用してもよく、好ましくは上記硬化を行った後に粒子径が150μm未満の粒子を分離し、150μm未満の粒子を吸水性樹脂の製造工程に戻して吸水性樹脂の原料として再利用することである。好ましくはゲル粉砕前の工程に該微粒子を供給することである。
【0160】
また無機酸アルカリ金属塩粉末を添加した後の吸水剤を貯蔵槽に保存してもよい。本発明には上記硬化後、得られた吸水剤を好ましくは1分間以上、20時間以下の間、貯蔵槽で保持する工程を含んでいることが好ましい。貯蔵槽での保持時間はより好ましくは5分以上、さらに好ましくは10分以上であって、より好ましくは18時間以下、さらに好ましくは15時間以下である。上記貯蔵時間が長すぎると、生産量に対して貯蔵槽のサイズが大きくなりすぎ、経済的に不利となる。一方、貯蔵時間が短すぎると生産量にもよるが、貯蔵槽を設置する目的であるクッションタンクとしての役割を果たさなくなるため好ましくない。
【0161】
本発明では上記貯蔵槽での保持後、吸水剤を製品出荷用容器に充填する工程を含むことができる。貯蔵槽から所定量分離して吸水剤を最終製品として袋や容器に充填する。
【0162】
[3]吸水性樹脂及び吸水剤
以上の様にして製造した吸水剤は出荷可能な状態であれば最終製品となる。本発明の吸水剤は、表面架橋された不定形破砕状の吸水性樹脂を主成分とする吸水剤であって、吸水剤の表面に無機酸アルカリ金属塩粉末が配置されている吸水剤である。
「吸水剤の表面に無機酸アルカリ金属塩粉末が配置されている」とは、吸水剤の表面に無機酸アルカリ金属塩粉末が付着、又は、無機酸アルカリ金属塩粉末の少なくとも一部が吸水性樹脂の表面に顕出していることをいう。本発明では走査型電子顕微鏡(SEM)によって吸水性樹脂の表面にアルカリ金属塩粉末が粒状で存在していることを確認できる。
【0163】
[3-1]吸水性樹脂と吸水剤の関係
吸水剤が含む吸水性樹脂の量は、吸水剤全量に対して上記[1-1]の範囲であり、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、特に好ましくは100質量%であってもよい。なお、100質量%とならない場合、残りの成分には、例えば、上記各種添加剤が含まれ得る。
【0164】
[3-2]吸水剤の特性
本発明の吸水剤は、以下の(a)~(m)の特性の少なくとも1つを備えているのが好ましい。
(a)質量平均粒子径D50、(b)粒子径150μm未満の粒子の割合、(c)無加圧下吸収倍率CRC、(d)加圧下吸収倍率(AAP)、(e)含水率、(f)吸水速度(Vortex法)、(g)多価アルコール量、(h)比表面積、(i)着色度、(j)無機酸アルカリ金属塩粉末含有量、(k)無機酸アルカリ金属塩粉末の種類、(l)表面張力、(m)ダスト量
【0165】
また上記特性(a)~(m)のうち、何れか2以上を組み合わせて備えていてもよい。好ましくは少なくとも特性(e)であり、より好ましくはこれらに加えて特性(b)と特性(h)である。更に好ましくはこれらに加えて特性(g)、及び/又は特性(m)を備えていてもよく、これらに加えて特性(k)、及び/又は特性(l)を備えていてもよい。最も好ましくは上記特性(a)~特性(m)の全てを備えていることである。
【0166】
[3-2-1]質量平均粒子径D50
吸水剤の質量平均粒子径D50は、好ましくは200μm以上、より好ましくは250μm以上、更に好ましくは300μm以上であって、好ましくは600μm以下、より好ましくは550μm以下、更に好ましくは500μm以下である。詳細な測定条件は実施例を参照する。吸水剤の質量平均粒子径D50を上記範囲内とすることで、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率AAP、Vortex法による吸水速度をより一層、バランスよく制御することができる。質量平均粒子径D50が小さすぎる場合には、ゲル嵩密度が高くなりすぎたり、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率AAPが低くなりすぎたりする恐れがある。一方で、質量平均粒子径D50が大きすぎる場合には、好ましい吸収特性であるVortex法による吸水速度が早くなり過ぎる恐れがある。また、吸水剤の粒子の粗さが目立つようになり、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品に用いたときに、肌触りや装着感が悪化することがある。
【0167】
[3-2-2]粒子径150μm未満の粒子の割合
吸水剤100質量%中の150μm未満の粒子の割合は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下であって、特に好ましくは0質量%である。なお、連続商業生産においては150μm未満の粒子の割合を0質量%にすることは、生産効率の観点から非常に難しい場合がある。そのため、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上である。150μm未満の粒子の割合を上記の範囲内とすることで、加圧下吸収倍率AAPや、Vortex法による吸水速度をより一層、バランスよく制御し易くなる。150μm未満の粒子の割合が多すぎる場合には、好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率AAPが低くなりすぎたりする恐れがあるだけでなく、ダストの絶対量も増加するため、本発明による無機酸アルカリ金属塩でのダスト飛散抑制効果を適用した吸水剤であっても、当該吸水剤を取り扱う場所において、ダストの飛散による作業環境の悪化や、微粒子の装置内堆積によって取り扱い性が困難になる恐れがあるため好ましくない。
【0168】
また、吸水剤は上記範囲の質量平均粒子径D50を満足し、かつ、上記範囲の150μm未満の粒子の割合を満足することが好ましい。両者を満足することで上記効果が相乗的に得られる。なお、吸水剤の質量平均粒子径D50や150μm未満の粒子の割合は、実施例に記載した方法で測定される。
【0169】
[3-2-3]無加圧下吸収倍率CRC
吸水剤の無加圧下吸収倍率CRCは、好ましくは25g/g以上であって、好ましくは40g/g以下、より好ましくは38g/g以下、更に好ましくは35g/g以下、特に好ましくは32g/g以下、最も好ましくは30g/g以下である。上記無加圧下吸収倍率CRCが低すぎると、該吸水剤の吸収倍率が低下し、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に適さないおそれがある。一方、上記無加圧下吸収倍率CRCが高すぎると、ゲル強度が弱くなる恐れがある。本発明の無加圧下吸収倍率CRCは実施例に記載の測定方法による値である。
【0170】
[3-2-4]加圧下吸収倍率AAP
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水剤の加圧下での吸収倍率を意味する。
本発明において、吸水剤の加圧下吸収倍率AAPは、好ましくは20g/g以上、より好ましくは21g/g以上、更に好ましくは22g/g以上、特に好ましくは23g/g以上であって、好ましくは30g/g以下、より好ましくは28g/g以下である。加圧下吸収倍率AAPを上記範囲内とすることで、吸収体に圧力が加わったときの液の戻り量をより一層低減できるため、使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体用途に好適な吸水性樹脂又は吸水剤となる。
【0171】
[3-2-5]Vortex法による吸水速度
吸水剤のVortex法による吸水速度は、好ましくは45秒以下、より好ましくは40秒以下、更に好ましくは35秒以下であって、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上である。上記Vortex法による吸水速度が遅すぎる場合、得られる吸水剤の尿や血液等の体液等の吸水速度が長くなり、使い捨てオムツ等の吸収性物品の吸収体として適さないことがある。なお、Vortex法による吸水速度は発泡重合や粒度分布等で制御することができる。本発明のVortex法による吸水速度は実施例に記載の測定方法による値である。
【0172】
[3-2-6]含水率
吸水剤の含水率は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、特に好ましくは7質量%以下であって、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。当該含水率が低すぎると吸水剤の耐ダメージ性が低下することがある。一方、含水率が高すぎると吸水性能が低下したり、粘着性が増し扱い難くなることがある。本発明の含水率は実施例に記載の測定方法による値である。
【0173】
[3-2-7]多価アルコール量
吸水剤中の多価アルコールの総量は、吸水剤全量に対して、質量基準で好ましくは15000ppm以下、より好ましくは12000ppm以下、更に好ましくは10000ppm以下であって、好ましい下限は0ppmである。多価アルコール又はアルキレンカーボネートから選ばれる1種以上の表面架橋剤を用いる場合、0ppmにするためには、別途、水や有機溶媒での洗浄といった除去工程が必要となるため、商業生産では生産効率が低下することから、0ppmでなくともよく、例えば100ppm以上であってもよい。一方、残存多価アルコール量が吸水剤に対して多すぎる場合、残存物による肌荒れの原因になるリスクが高まることがある。
【0174】
[3-2-8]比表面積
吸水剤の比表面積は好ましくは25m2/kg以上とすることで、より一層優れたVortex法による吸水速度が得られる。比表面積はより好ましくは27m2/kg以上、更に好ましくは30m2/kg以上である。吸水速度向上の観点からは比表面積は高いほど望ましいが、比表面積が高くなりすぎると重合工程における過度な発泡重合や、ゲル粉砕工程における細かすぎるゲル粉砕が必要となり、結果として好ましい吸収特性である加圧下吸収倍率AAPが低くなる恐れがある。比表面積は好ましくは50m2/kg以下、より好ましくは47m2/kg以下、更に好ましくは45m2/kg以下である。本発明の比表面積は実施例に記載の測定方法による値である。
【0175】
特に本発明では吸水剤の比表面積が25m2/kg以上であり、かつ、目開き150μmの篩を通過する粒子の割合が吸水剤全体に対して3質量%以下であることが好ましい。また上記好適な範囲は本組み合わせにも適用される。
【0176】
[3-2-9]着色度
吸水剤は、使い捨てオムツ等に含有された状態で高温高湿下、例えば熱帯・亜熱帯地域の倉庫等に機密性が低い状態で長時間曝露されると、吸水剤中のFeカチオンや多価金属カチオンの影響で着色し、着色度が低下することがある。
この着色度の低下は経時着色とも呼ばれ、着色度はハンターLab表色系のL値(Lightness)で表すことができ、値が大きいほど着色が少ないことを示す。その着色度の低下は、実際の環境よりも厳しい条件に設定した促進試験で評価することができる。吸水剤の促進試験後の着色度は例えば、吸水性樹脂に着色防止剤を添加する、着色原因物質である鉄量を制御する技術などにより上記範囲内とすることができる。吸水剤は、通常、使い捨てオムツなどの吸収性物品において高濃度又は高重量で使用されるため、上記促進試験後の着色度のL値が低すぎると、吸水剤を使い捨てオムツ等の吸収性物品における吸収体に適用した場合に、高い湿度や温度条件下での長期貯蔵時において吸収性物品の外観を悪化させ、商品価値を低下させてしまうことがある。吸水剤の促進試験後の着色度のL値は好ましくは80以上、より好ましくは81以上、さらに好ましくは83以上である。詳細な測定条件は実施例を参照する。
【0177】
[3-2-10]無機酸アルカリ金属塩粉末含有量
上記吸水剤中の無機酸アルカリ金属塩粉末含有量は、吸水剤100質量部に対して好ましくは0.06質量部以上、5質量部以下である。後述する測定方法で規定される無機酸アルカリ金属塩の含有量は吸水剤中、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上であって、好ましくは3質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。上記過剰に無機酸アルカリ金属塩成分が検出される場合、吸収物性が低下することに加えて、吸収剤に付着しなかったアルカリ金属塩がダストとなり、ダスト量が増加するため好ましくない。
【0178】
[3-2-11]無機酸アルカリ金属塩粉末の種類
本発明では、吸水剤中の上記無機酸アルカリ金属塩粉末が、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸水素塩及びこれらの塩化物よりなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0179】
また本発明の吸水剤の形状は既に述べたように不定形破砕状であることが好ましい。
【0180】
[3-2-12]ダスト量
本発明の吸水剤は、ホイバッハ・ダストメータによる30分値ダスト量が、150mg/kg以下であることが好ましい。ダスト量はより好ましくは140mg/kg以下、更に好ましくは130mg/kg以下である。すなわち、本発明の吸水剤はこのダスト量が少ない作業環境で製造されることが好ましい。吸水剤の製造時に、好ましくはダスト量が150mg/kg以下であれば作業環境へのダストの揮散は目視では確認できないレベルであり、また集塵機のフィルターの詰まり等の問題が起こりにくくなって作業性も向上する。なお、上記ダスト量は、上記観点から0mg/kgとすることが理想的ではあるが、コスト面から好ましくは10mg/kg以上、より好ましくは20mg/kg以上、更に好ましくは30mg/kg以上とすればよい。更に安全衛生上問題となる作業雰囲気の空気中のダスト量も低減できる。なお、ダスト量は、ホイバッハ・ダストメータ(Heubach DUSTMETER)、測定モードTypeIIでの測定値を示す。詳細な測定条件は実施例を参照する。
【0181】
このような吸水剤は低ダスト性に優れるため、安全衛生上問題となる作業者が暴露されるダスト量を低減でき、吸水剤を使用した製品、例えば紙おむつの製造の際に作業環境を向上できる。
【0182】
[3-2-13]表面張力
得られた吸水剤の表面張力は好ましくは60N/m以上、より好ましくは65N/m以上、更に好ましくは70N/m以上である。本発明の方法では、表面張力の低下もなく、ダスト量を低減できる。
【0183】
[4]吸水剤の用途
本発明に係る吸水剤は、主に使い捨てオムツや生理用ナプキン等の吸収性物品の吸収体または吸収層(以下、まとめて「吸収体」という)として使用されることが好ましく、吸収性物品1枚当たりの使用量が多い、吸収性物品の吸収体として使用されることがより好ましい。
【0184】
上記吸収体は、粒子状吸水剤をシート状や繊維状、筒状などに成形したものを意味し、好ましくはシート状に成形されて吸収層となる。本発明に係る吸水剤の他に、パルプ繊維等の吸収性材料や接着剤や不織布などを成形に併用することもできる。この場合、吸収体中の吸水剤の量(以下、「コア濃度」と表記する)は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上であって、好ましくは100質量%以下である。
コア濃度を適切に制御することで、上記吸収体を吸収性物品に用いると、尿を吸収して吸水剤がゲル化しても、ゲル粒子間に適度な空間を形成し易くなる。
【0185】
[5]吸収性物品
本発明に係る吸収性物品は、上記吸収体を含み、通常、液透過性を有する表面シート及び液不透過性を有する背面シートを備える。吸収性物品として、使い捨てオムツや生理用ナプキン等が挙げられる。
【0186】
吸収性物品が例えば使い捨てオムツである場合には、装着したときに人の肌に触れる側に位置する液透過性のトップシートと、装着したときに外側に位置する液不透過性のバックシートとの間に、本発明の吸水剤を含む吸収体を挟持することにより、当該使い捨てオムツが作製される。なお、使い捨てオムツには、装着後の使い捨てオムツを固定するための粘着テープ等の、当業者にとって公知の部材がさらに設けられている。
【0187】
本発明に係る吸収性物品は、吸収体が液体を吸収して吸水剤が膨潤してゲル化する際に、ゲル粒子間に適度な空間を作り、その空間を通じて好適な芳香を発することで、装着者やその介護者にとって快適な吸収性物品を提供することができる。
なお、本発明に係る吸水剤は、上記使い捨てオムツや生理用ナプキン以外に、ペット尿吸収剤、携帯トイレの尿ゲル化剤等の用途にも、好適に利用することができる。
【0188】
本発明における上記各物性の測定方法は、特に言及がない場合は実施例に記載の測定方法に基づくものである。
【0189】
本願は、2019年1月11日に出願された日本国出願第2019-003361号に基づく優先権の利益を主張するものである。日本国出願第2019-003361号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0190】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0191】
<吸水性樹脂の製造>
[製造例1]
以下の製造条件で吸水性樹脂を製造した。
【0192】
単量体溶液の調整工程
アクリル酸421.7g、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均ポリエチレングリコールユニット数(平均n数);9)2.4g、1.0質量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液11.3g、48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液140.4g、及び脱イオン水、すなわち、イオン交換水394.7gを容量2Lのポリプロピレン製容器に投入後、混合して単量体水溶液(a’)を作製した。該単量体水溶液(a’)は、作製直後の1段目の中和熱によって、液温が62.5℃まで上昇した。
【0193】
続いて上記単量体水溶液(a’)を攪拌しながら冷却し、液温が38℃となった時点で40℃に調温した48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液211.9gを約30秒間かけて上記単量体水溶液(a’)に加え、混合して単量体水溶液(a)を作製した。該単量体水溶液(a)は、作製直後の2段目の中和熱によって液温が81.0℃まで上昇した。48.5質量%の水酸化ナトリウム水溶液を混合し始めたときは析出物が見られたが、次第に溶解し透明な均一溶液となった。
【0194】
重合工程
上記単量体水溶液(a)に木下式ガラスボールフィルター(フィルター粒子No.4/木下理化工業社製)を用いて、該単量体水溶液(a)中に窒素ガスを0.1L/分で5秒間導入した。さらに攪拌状態の上記単量体水溶液(a)に4.0質量%の過硫酸ナトリウム水溶液17.6gを加えた後、約5秒間攪拌した。その後、ステンレス製バット型容器(底面:340×340mm、高さ:25mm、内面:テフロン(登録商標)コーティング)に大気開放系で注いだ。なお、該バット型容器は、ホットプレートを用いて、事前に表面温度が50℃となるまで加熱しておいた。
【0195】
上記単量体水溶液(a)をバット型容器に注いでから57秒後に重合反応が開始した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら四方八方に膨脹発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズまで収縮した。重合反応の開始から3分間経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(1)を取り出した。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、重合時のピーク温度は110℃であった。
【0196】
ゲル粉砕工程
上記重合反応で得られた含水ゲル(1)は、ミートチョッパー(HL-G22S、プレート孔径:8.0mm/レマコム社製)を用いてゲル粉砕され、粒子状の含水ゲル(1)とした。なお、上記ミートチョッパーへの含水ゲル(1)の投入量は230g/分とした。また、該含水ゲル(1)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を50g/分で添加した。
【0197】
製造例1のゲル粉砕工程におけるゲル粉砕エネルギー2(GGE(2))は9J/g、粒子状の含水ゲル(1)の質量平均粒子径D50は900μm、粒度分布の対数標準偏差σζは1.10であった。
【0198】
乾燥工程
上記操作で得られた粒子状の含水ゲル(1)を目開き300μm、すなわち50メッシュのステンレス製金網上に広げて載せ、190℃で30分間、熱風を通気させることで乾燥し、乾燥重合体(1)を得た。
【0199】
分級工程
続いて、該乾燥操作で得られた乾燥重合体(1)をロールミル(WML型ロール粉砕機/井ノ口技研社製)を用いて粉砕した後、目開き710μm及び目開き45μmのJIS標準篩を用いて分級した。
【0200】
表面架橋工程
上記で得られた表面架橋前の吸水性樹脂100質量部に対して、炭酸エチレン0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部、脱イオン水、すなわち、イオン交換水3.0質量部及びポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王社製)0.001質量部すなわち、表面架橋前の吸水性樹脂に対して10ppmからなる表面架橋剤溶液(1)を添加して均一に混合し、混合物(1)とした。その後、該混合物(1)を208℃で40分程度、加熱処理することで表面架橋を行った。得られた吸水性樹脂を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面架橋後の吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)の諸物性を表1に示す。また、表面架橋後の吸水性樹脂(1)の促進試験後の着色度はL値81.9、a値1.8、b値12.3であった。表面架橋後の吸水性樹脂(1)の多価アルコールの総量は、4970ppmであり、本多価アルコールの総量は、後述の実施例にて無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しても変化しなかった。
【0201】
[製造例2]
27質量%の硫酸アルミニウム水溶液(酸化アルミニウム換算で8質量%)0.91質量部、60質量%の乳酸ナトリウム水溶液0.27質量部及びプロピレングリコール0.02質量部からなる混合溶液(2)を作製した。
【0202】
製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)100質量部に対して、上記混合溶液(2)1.2質量部を攪拌しながら添加して1分間均一に混合した。その後、無風条件下、60℃で30分間乾燥し、続いて、目開き850μmのJIS標準篩を通過させて、表面架橋後の吸水性樹脂(2)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(2)の諸物性を表1に示す。
【0203】
[製造例3]
製造例1において、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)を2.4gから1.8gに、脱イオン水、すなわち、イオン交換水394.7gから395.3gにそれぞれ変更し、目開き710μm及び45μmのJIS標準篩に代えて、目開き850μm及び45μmのJIS標準篩を用いて分級した以外は、製造例1と同様の操作を行って、不定形破砕状の表面架橋前の吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋前の吸水性樹脂(3)に製造例1と同様の処理を行って表面架橋後の吸水性樹脂(3)を得た。得られた表面架橋後の吸水性樹脂(3)の諸物性を表1に示す。表面架橋後の吸水性樹脂(3)の多価アルコールの総量は、4820ppmであり、本多価アルコールの総量は、後述の実施例にて無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しても変化しなかった。
【0204】
【0205】
[実施例1]
製造例1で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(1)100質量部に、亜硫酸水素ナトリウム(関東化学社製/特級)0.5質量部を混合した。具体的には容量225mlのガラス容器に上記吸水性樹脂30g、及び亜硫酸水素ナトリウムを入れた後、ペイントシェーカー(東洋精機製作所社製)で振動(振動時間:室温下で3分間)させて混合し、吸水剤(1)を得た。得られた吸水剤(1)の諸物性を表3に示した。また、吸水剤(1)の促進試験後の着色度はL値85.0、a値1.5、b値13.4であった。
【0206】
[実施例2]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を0.5質量部から1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って、吸水剤(2)を得た。得られた吸水剤(2)の諸物性を表3に示した。また、吸水剤(2)の促進試験後の着色度はL値84.6、a値1.5、b値15.3であった。
【0207】
[実施例3]
上記実施例1において、表面架橋後の吸水性樹脂(1)を製造例3で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(3)に変更し、亜硫酸水素ナトリウムの添加量を0.5質量部から1.0質量部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(3)を得た。得られた吸水剤(3)の諸物性を表3に示した。
【0208】
[実施例4]
上記実施例1において、表面架橋後の吸水性樹脂(1)を製造例2で得られた表面架橋後の吸水性樹脂(2)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(4)を得た。得られた吸水剤(4)の諸物性を表3に示した。
【0209】
[実施例5]
上記実施例2において、亜硫酸水素ナトリウムを亜硫酸ナトリウム(関東化学社製/特級)に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って吸水剤(5)を得た。得られた吸水剤(5)の諸物性を表3に示した。
【0210】
[実施例6]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(6)を得た。得られた吸水剤(6)の諸物性を表3に示した。
【0211】
[実施例7]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムをチオ硫酸ナトリウム五水和物(関東化学社製/特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(7)を得た。得られた吸水剤(7)の諸物性を表3に示した。
【0212】
[実施例8]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(8)を得た。得られた吸水剤(8)の諸物性を表3に示した。
【0213】
[実施例9]
上記実施例4において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に、添加量を0.5重量部から1.0重量部に変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行って吸水剤(9)を得た。得られた吸水剤(9)の諸物性を表3に示した。
【0214】
[実施例10]
上記実施例2において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って吸水剤(10)を得た。得られた吸水剤(10)の諸物性を表3に示した。
【0215】
[実施例11]
上記実施例4において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に、添加量を0.5質量部から1.0質量部に変更したこと以外は、実施例4と同様の操作を行って吸水剤(11)を得た。得られた吸水剤(11)の諸物性を表3に示した。
【0216】
[実施例12]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウム0.5質量部を炭酸ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)0.279質量部及び炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)0.221質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(12)を得た。得られた吸水剤(12)の諸物性を表3に示した。
【0217】
[実施例13]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを無水リン酸二水素ナトリウム(和光純薬工業社製/薬添規)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(13)を得た。得られた吸水剤(13)の諸物性を表3に示した。
【0218】
[実施例14]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸カリウム(和光純薬工業社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(14)を得た。得られた吸水剤(14)の諸物性を表3に示した。
【0219】
[実施例15]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを塩化カリウム(キシダ化学社製/特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(15)を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表3に示した。
【0220】
[実施例16]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを硫酸カリウム(関東化学社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(16)を得た。得られた吸水剤(16)の諸物性を表3に示した。
【0221】
[実施例17]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを炭酸リチウム(関東化学社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って吸水剤(17)を得た。得られた吸水剤(17)の諸物性を表3に示した。
【0222】
[比較例1]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを硫酸バリウム(和光純薬工業社製/和光一級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って比較吸水剤(1)を得た。得られた比較吸水剤(1)の諸物性を表3に示した。
【0223】
[比較例2]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを硫酸マグネシウム(関東化学社製/試薬特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って比較吸水剤(2)を得た。得られた比較吸水剤(2)の諸物性を表3に示した。
【0224】
[比較例3]
上記実施例2において、亜硫酸水素ナトリウムをリン酸三カルシウム(和光純薬工業社製/食品添加物)に変更したこと以外は、実施例2と同様の操作を行って比較吸水剤(3)を得た。得られた比較吸水剤(3)の諸物性を表3に示した。
【0225】
[比較例4]
上記実施例1において、亜硫酸水素ナトリウムを酸化亜鉛(キシダ化学社製/特級)に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行って比較吸水剤(4)を得た。得られた比較吸水剤(4)の諸物性を表3に示した。
【0226】
[比較例5]
特許文献1,2を参考に水添加で制ダストを試みたが、10%水添加で吸水性樹脂の一部凝集が見られ、また添加水(10%)だけ吸水剤の吸水倍率が10%低下した。
【0227】
[比較例6]
特許文献3~6を参考に界面活性剤で制ダストを試みたが、界面活性剤の添加で吸水性樹脂の表面張力が60N/m以下に低下した。表面張力の低下はおむつでの戻り量の増加となる。
【0228】
[比較例7]
特許文献8を参考にポリアルキレングルコールで制ダストを試みたが、ポリアルキレングルコールの添加で吸水性樹脂の表面張力が60N/m以下に低下した。表面張力の低下はおむつでの戻り量の増加となる。
【0229】
表中の各物性の測定方法は以下の通りである。なお、例えば、測定対象が表面架橋前の吸水性樹脂である場合、以下の記載中の「吸水剤」を「表面架橋前の吸水性樹脂」に読み替えて適用する。
【0230】
[含水率]
本発明に係る吸水剤の含水率は、EDANA法(WSP230.3(10))に準拠して測定した。なお、本発明においては、WSP230.3(10)で規定される測定条件のうち、試料である吸水剤の量を1.0g、乾燥時の温度を180℃にそれぞれ変更して測定した。また、「100-含水率(質量%)」で算出される値を、吸水剤の固形分(単位:質量%)とした。
【0231】
[質量平均粒子径D50]
本発明に係る吸水剤の質量平均粒子径D50は、米国特許第7638570号に記載された測定方法に準拠して測定した。
一方、粒子状含水ゲル状架橋重合体の質量平均粒子径D50については、以下の手法で測定した。
先ず、容量1Lのポリプロピレン製円筒型容器(直径8cm×高さ21cm)に、0.08質量%の界面活性剤(花王社製エマール20C)を含む20質量%の塩化ナトリウム水溶液(以下、「エマール水溶液」と称する)500gを投入し、そこに固形分α質量%の粒子状含水ゲル(温度20℃以上25℃以下)20gを添加した。
続いて、スターラーチップ(直径7mm×長さ50mm)を用いて、300rpmで60分間、上記エマール水溶液を攪拌し、分散液とした。
上記攪拌終了後、回転盤上に設置したJIS標準篩、具体的には直径21cm、篩の目開き:8mm/4mm/2mm/1mm/0.60mm/0.30mm/0.15mm/0.075mmを使用し、篩の中央部に上記分散液を注ぎ込み、更にエマール水溶液100gを用いて、上記円筒型容器内に残存した全粒子状含水ゲルを該篩上に洗い出した。
その後、上記篩を手で回転、具体的には20rpmで回転させながら、エマール水溶液6000gを30cmの高さからシャワーノズル(孔数:72、液量:6.0L/分)を用いて篩全体が注水範囲(50cm2)となるように、満遍なく注ぎ、粒子状含水ゲルを分級した。
上記操作後、篩ごとに、篩上に残留した粒子状含水ゲルを約2分間水切りした後に秤量した。その後、各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量から下記(式4)及び(式5)に基づいて、質量%を算出した。
X(質量%)=(w/W)×100 ・・・ (式4)
R(α)(mm)=(20/W)^(1/3)×r ・・・ (式5)
ここで、
X:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの質量%(単位:質量%)
w:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの各々の質量(単位:g)
W:分級及び水切り後の各篩上に残留した粒子状含水ゲルの総質量(単位:g)
R(α):固形分α質量%の粒子状含水ゲルに換算したときの篩の目開き(単位:mm)
r:20質量%の塩化ナトリウム水溶液中で膨潤した粒子状含水ゲルが分級された篩の目開き(単位:mm)
である。
【0232】
[粒度分布の対数標準偏差σζ]
本発明に係る吸水剤の粒度分布の対数標準偏差σζは、米国特許第7638570号に記載された測定方法に準拠して測定した。
また、粒子状含水ゲル状架橋重合体の粒度分布の対数標準偏差σζについては、上記[質量平均粒子径D50]と同様の手法で測定した結果(粒度分布)を対数確率紙にプロットすることで、求めた。
上記プロットにおいて、積算篩上%R=84.1質量%(これをX1とする)と、積算篩上%R=15.9質量%(これをX2とする)の粒子径を求め、下記(式6)に基づいて、対数標準偏差σζを算出した。なお、σζの値が小さいほど粒度分布が狭いことを意味する。
対数標準偏差σζ=0.5×ln(X2/X1) ・・・ (式6)
【0233】
[比表面積]
本発明に係る吸水剤の比表面積は、マイクロフォーカスX線CTシステム(島津製作所製inspeXio SMX-100CT)を用いて取得した吸水剤の3次元画像データを、高速3次元解析ソフト(ラトックシステムエンジニアリング社製TRI/3D-VOL-FCS64)で解析することにより求めた値である。
具体的には、まず内径約1cm、高さ約5cmのプラスチック製の蓋付き円柱状容器に吸水剤1gを投入し、粒度に偏りがないようよく振り混ぜた。続いて、上記円柱状容器の底面に両面テープを貼り付け、上記マイクロフォーカスX線CTシステムの試料台上に固定した後、下記表2の条件で3次元画像データを取得した。
【0234】
【0235】
続いて、上記高速3次元解析ソフトを用いて、下記手順に沿って解析を実施した。
1.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子>粒子分離>巨大粒子分離を選択した。
2.EVCパネル上のBinarizeタブで、L-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から1大きな値に変更し、円形の計測対象領域を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した画像データを(A)とする。
3.EVCパネル上のBinarizeタブで、L-Wを選択し、W値は初期値のままで、L値を初期値から37580に変更し、計測対象領域における全粒子を抽出した。続いて、全てのスライス画像にこの処理を適用した。この操作により抽出した粒子画像データを(B)とする。
4.粒子画像データ(B)をもとに、まずは、EVCパネル上のBinaryタブで、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上のBinaryタブで、Invertを選択し、粒子が抽出されている領域とされていない領域とを反転させた。続いて、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去した。続いて、EVCパネル上の3Dタブで、Labelingを選択し、更に体積およびMaxを選択し、最も体積の大きな領域のみを抽出した。最後に、EVCパネル上のBinaryタブで、再度Invertを選択することで、計測対象領域において、ノイズを除去するとともに全粒子をVoidが埋まった状態で抽出した。これらの操作により抽出した粒子画像データを(C)とする。なお、ここでいうVoidとは、吸水性樹脂の内部に存在する外界とは接していない空洞のことを指す。
5.L Opタブ(チャンネル間論理演算処理)で、粒子画像データ(C)から粒子画像データ(B)を引いた後、EVCパネル上のBinaryタブで、Ers Smlを選択し、粒子サイズ10voxcel以下のノイズと考えられる粒子を除去することで、Voidを抽出した。
6.粒子画像データ(C)をもとに、巨大粒子分離パネル上で小粒子抽出を選択し(大粒子抽出は選択しない)、くびれ割合、Repair Filter Size、Repair Mrg Sml Diameterをいずれも0に設定して、粒子の分離・色分けを行った。
7.EVCパネル上の3Dタブで、Labelingを選択し、更に座標値(サイクル)を選択すると共に微小粒子サイズを10に設定し、粒子の分離操作を行った。
8.メニュー欄から、粒子計測>3D粒子中Void>分離後計測を選択した。続いて、分離後計測パネル上で単位はvoxcel、エッジ粒子は除去、計測項目としては表面積計算およびVoid計算、計測ROI指定としては上記2の操作で抽出された画像データ(A)を選択し、計算処理を行った。以上の操作により、計測対象領域における全粒子の総表面積(単位:mm2)と見掛け総体積(単位:mm3)、及びVoid総体積(単位:mm3)を算出した。なお、見掛け総体積とは、粒子内部にVoidがないものとして算出された全粒子の総体積のことをさす。上記画像解析によって得られた値を用い、且つ吸水剤の真密度を1.7g/cm3として、下記式から吸水剤の比表面積を算出した。
比表面積(m2/kg)=全粒子の総表面積(mm2)/((見掛け総体積(mm3)-Void総体積(mm3))×1.7(g/cm3)
【0236】
[ダスト量]
本発明に係る吸水剤の国際公開第2006/098271号の段落[0281]~[0282]の記載に準じて、下記の条件で所定時間にガラス繊維濾紙に吸引され捕捉されたダストの質量増をもって、吸水剤のダスト量を測定した。測定装置は独国Heubach Engineering GmbH製ホイバッハ・ダストメータ(Heubach DUSTMETER)を使用し、測定条件TypeIIで測定した。また、測定時の雰囲気の温度は23℃(±2℃)、相対湿度20%以上40%以下、常圧で行った。以下の手順(1)~(6)にしたがって測定した。
(1)回転ドラムに、測定サンプルの吸水剤50.00g入れた。
(2)保留粒子径0.5μm(JIS P3801)で、直径50mmのガラス繊維濾紙(GLASS FIBER GC-90/ADVANTEC製、又はその相当品を直径50mmに加工したもの)の質量(Da[g]とする)を0.00001g単位まで測定した。
(3)回転ドラムに大型粒子分離機を取り付け、ガラス繊維濾紙を装着したフィルターケースを取り付けた。
(4)ダストメータにおける制御部の測定条件を、下記のように設定し測定した。
ドラム回転数:30rpm
吸引風量:4L/分
測定時間:30分
(5)所定時間後、ガラス繊維濾紙の質量(Db[g]とする)を0.00001g単位まで測定した。
(6)上記Da[g]及び上記Db[g]を用いて、下記(式7)に従い、ダスト量を算出した。
ダスト量(mg/kg)=(Db-Da)/100×1000000 ・・・ (式7)
また、無機酸アルカリ金属塩粉末添加前のダスト量に対する、添加後のダスト量の割合(低減後ダスト割合)は、下記(式8) に従い、算出した。
添加後のダスト量の割合(低減後ダスト割合)(%)=添加後のダスト量(mg/kg)/無機酸アルカリ金属塩粉末添加前のダスト量(mg/kg)×100・・・(式8)
【0237】
[促進試験後の着色度(経時着色)]
本発明に係る吸水剤の促進試験後の着色度は、70±1℃、相対湿度75±1%の雰囲気に7日間曝露した後の吸水剤の分光式色差計によるハンターLab表色系のL値(Lightness)を測定することで調べることができる。
具体的には、上記雰囲気に調整した恒温恒湿機(エスペック社製、小型環境試験器、形式SH-641)の中に、吸水性樹脂組成物13gを充填した蓋付きプラスチック製シャーレ(内径90mm、深さ約12mm)を入れ、7日間静置後、HUNTER Lab社製の分光式色差計(LabScanXE型)を用いて測定した。反射測定で、LabScanEXに備え付けの白色標準板を標準とし、備え付けの試料台を用いた。備え付けの試料台に、上記促進試験後のシート状となった吸水性樹脂組成物を、室温(温度:20~25℃)、湿度50%RHの条件下で、上記分光式色差計にて表面色(L,a,b)を測定した。
【0238】
【0239】
(まとめ)
表3に示す様に、吸水性樹脂に無機酸アルカリ金属塩粉末を添加した場合(実施例1~17)は、吸水性樹脂にさらに無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しているにもかかわらず、無機酸アルカリ金属塩粉末添加前よりもダスト量は最大半減まで減少した。
一方、比較例1~4に示す様に無機酸アルカリ金属塩粉末以外の添加剤粉末を添加するとダスト量は1.35倍~6.63倍にまで増加した。このように無機酸アルカリ金属塩粉末を添加した場合にのみ、ダストの発生量低減効果が得られる。通常、ダストの抑制は液体を吸水性樹脂に加えることによって得られていたため、添加剤が粉末であるにもかかわらず、液体の添加剤、すなわち添加剤溶液を添加した場合と同様の効果が得られる点で、本発明の効果は従来とは異なる。特に無機酸アルカリ金属塩粉末を添加する場合は、添加剤溶液を添加する場合と比べても吸水性樹脂の含水率を低く維持できるため、吸収性能低下を起こさない点で有利である。
【0240】
また本発明の製造方法、表面架橋処理をした吸水性樹脂、表面架橋処理後に更にAl等で処理した吸水性樹脂のいずれに無機酸アルカリ金属塩粉末を添加しても、ダストの発生量低減効果が得られる。したがって特定の工程での添加に限定されない点で、製造条件の選択肢が多い点で有利である。