IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

特許7181956移動体の制御装置及び制御方法並びに車両
<>
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図1
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図2
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図3
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図4
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図5
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図6
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図7
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図8
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図9
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図10
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図11
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図12
  • 特許-移動体の制御装置及び制御方法並びに車両 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】移動体の制御装置及び制御方法並びに車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20221124BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20221124BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20221124BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W40/02
G08G1/16 C
G06T3/00 745
G06T1/00 330A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021049126
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147745
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 裕司
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-040521(JP,A)
【文献】特開2005-216200(JP,A)
【文献】特開2009-105741(JP,A)
【文献】特開2015-172876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
G06T 3/00
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撮影装置及び第2撮影装置を含む複数の撮影装置を有する移動体の制御装置であって、
前記複数の撮影装置から前記移動体の外界の画像を取得する画像取得手段と、
前記複数の撮影装置から取得された画像に含まれる1つ以上の領域のそれぞれについて画像の歪みを軽減するための歪み軽減処理を行う補正手段と、
前記歪み軽減処理が行われた画像に基づいて前記移動体の外界を認識する認識手段と、を備え、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、制御装置。
【請求項2】
前記複数の撮影装置は、第3撮影装置をさらに含み、
前記特定の方向は、第1方向であり、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向とは異なる第2方向の状況を含む第3領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第3撮影装置から取得された画像のうち前記第2方向の状況を含む第4領域を前記歪み軽減処理の対象とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数の撮影装置は、第3撮影装置及び第4撮影装置をさらに含み、
前記特定の方向は、第1方向であり、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向とは異なる第2方向の状況を含む第3領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、
前記第3撮影装置から取得された画像のうち前記第2方向の状況を含む第4領域を前記歪み軽減処理の対象とするとともに、
前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向及び前記第2方向とは異なる第3方向の状況を含む第5領域と、前記第4撮影装置から取得された画像のうち前記第3方向の状況を含む第6領域とを、前記歪み軽減処理の対象とする、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第2方向と前記第3方向とは、前記移動体に対して互いに反対の向きである、請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1撮影装置、前記第2撮影装置、前記第3撮影装置及び前記第4撮影装置は、
第1動作タイミングに2つのグループに分割され、一方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第1方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、他方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第4方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、
第2動作タイミングに、前記第1動作タイミングとは異なる2つのグループに分割され、一方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第2方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、他方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第3方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とする、請求項3又は4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1撮影装置は、前記移動体の前方正面、右斜め前方及び左斜め前方を撮影し、
前記第2撮影装置は、前記移動体の右方正面、右斜め前方及び右斜め後方を撮影し、
前記第3撮影装置は、前記移動体の左方正面、左斜め前方及び左斜め後方を撮影する、請求項2乃至5の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記移動体が所定の移動シーンである場合にのみ、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1領域の画像と前記第2領域の画像とを比較することによって、前記第1撮影装置による撮影及び前記第2撮影装置による撮影が正常に行われているかどうかを判定する判定手段をさらに備える、請求項1乃至7の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記特定の方向は、前記移動体の斜め方向である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記複数の撮影装置はそれぞれ、魚眼レンズが取り付けられた撮影装置である、請求項1乃至9の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記移動体は、前記複数の撮影装置よりも歪みが少ない画像を撮影する別の撮影装置をさらに有し、
前記画像取得手段は、前記別の撮影装置から前記移動体の外界の画像を取得し、
前記認識手段は、前記別の撮影装置からの画像にさらに基づいて前記移動体の外界を認識する、請求項1乃至10の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
前記移動体は車両である、請求項1乃至11の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項13】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の制御装置を備える車両。
【請求項14】
コンピュータを請求項1乃至11の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項15】
第1撮影装置及び第2撮影装置を含む複数の撮影装置を有する移動体の制御方法であって、
前記複数の撮影装置から前記移動体の外界の画像を取得する画像取得工程と、
前記複数の撮影装置から取得された画像に含まれる1つ以上の領域のそれぞれについて画像の歪みを軽減するための歪み軽減処理を行う補正工程と、
前記歪み軽減処理が行われた画像に基づいて前記移動体の外界を認識する認識工程と、を備え、
前記補正工程において、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の制御装置及び制御方法並びに車両に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のカメラを用いて車両の外界を認識する技術が実用化されている。外界の認識結果は、運転支援や自動運転に利用される。特許文献1では、広角レンズのカメラによって車両の周囲を広範囲で撮影する技術を提案する。広角レンズのカメラによって撮影された画像に対して、歪みを軽減するために座標変換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-171964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広角レンズや魚眼レンズが取り付けられたカメラによって撮影された画像の歪みを軽減するための処理は電力を消費する。そのため、車両の外界を認識するために歪みを軽減する処理を過度に実行すると、電力消費量が多くなってしまう。このような電力消費量の増加は、車両に限られず、他の移動体についても当てはまる。本発明の一部の側面は、移動体の外界を適切に認識するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて、第1撮影装置及び第2撮影装置を含む複数の撮影装置を有する移動体の制御装置であって、前記複数の撮影装置から前記移動体の外界の画像を取得する画像取得手段と、前記複数の撮影装置から取得された画像に含まれる1つ以上の領域のそれぞれについて画像の歪みを軽減するための歪み軽減処理を行う補正手段と、前記歪み軽減処理が行われた画像に基づいて前記移動体の外界を認識する認識手段と、を備え、前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
上記手段により、移動体の外界を適切に認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る車両の構成例を説明するブロック図。
図2】実施形態に係るカメラの撮影範囲を説明する模式図。
図3】実施形態に係る歪み軽減処理を説明する模式図。
図4】実施形態に係る歪み軽減処理の対象領域を説明する模式図。
図5】実施形態に係る車両の制御装置の動作例を説明するフロー図。
図6】実施形態に係る歪み軽減処理の対象候補を説明するタイミング図。
図7】実施形態に係る通常の走行シーンを説明する模式図。
図8】実施形態に係る特定の規則に従う状態遷移を説明する模式図。
図9】実施形態に係る特定の規則に従う領域の垂直方向の位置を説明する模式図。
図10】実施形態に係る特定の走行シーンを説明する模式図。
図11】実施形態に係る特定の規則に従う状態遷移を説明する模式図。
図12】実施形態に係る特定の規則に従う状態遷移を説明する模式図。
図13】実施形態に係る特定の規則に従う領域の垂直方向の位置を説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。なお、以下の実施形態では、移動体が車両であるものとして説明するが、移動体は車両に限られず飛行体やロボット等であってもよい。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両1のブロック図である。図1において、車両1の概略が平面図と側面図とで示されている。車両1は一例としてセダンタイプの四輪の乗用車である。車両1はこのような四輪車両であってもよいし、二輪車両や他のタイプの車両であってもよい。
【0010】
車両1は、車両1を制御する車両用制御装置2(以下、単に制御装置2と呼ぶ)を含む。制御装置2は車内ネットワークにより通信可能に接続された複数のECU(Electronic Control Unit)20~29を含む。各ECUは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、半導体メモリ等のメモリ、外部デバイスとのインタフェース等を含む。メモリにはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。各ECUはプロセッサ、メモリ及びインタフェース等を複数備えていてもよい。例えば、ECU20は、プロセッサ20aとメモリ20bとを備える。メモリ20bに格納されたプログラムを含む命令をプロセッサ20aが実行することによって、ECU20による処理が実行される。これに代えて、ECU20は、ECU20による処理を実行するためのASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の専用の集積回路を備えてもよい。他のECUについても同様である。
【0011】
以下、各ECU20~29が担当する機能等について説明する。なお、ECUの数や、担当する機能については適宜設計可能であり、本実施形態よりも細分化したり、統合したりすることが可能である。
【0012】
ECU20は、車両1の自動走行に関わる制御を実行する。自動運転においては、車両1の操舵と、加減速の少なくともいずれか一方を自動制御する。ECU20による自動走行は、運転者による走行操作を必要としない自動走行(自動運転とも呼ばれうる)と、運転者による走行操作を支援するための自動走行(運転支援とも呼ばれうる)とを含んでもよい。
【0013】
ECU21は、電動パワーステアリング装置3を制御する。電動パワーステアリング装置3は、ステアリングホイール31に対する運転者の運転操作(操舵操作)に応じて前輪を操舵する機構を含む。また、電動パワーステアリング装置3は操舵操作をアシストしたり、前輪を自動操舵したりするための駆動力を発揮するモータや、操舵角を検知するセンサ等を含む。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU21は、ECU20からの指示に対応して電動パワーステアリング装置3を自動制御し、車両1の進行方向を制御する。
【0014】
ECU22及び23は、車両の周囲の状況を検知する検知ユニットの制御及び検知結果の情報処理を行う。車両1は、車両の状況を検知する検知ユニットとして、1つの標準カメラ40と、4つの魚眼カメラ41~44とを含む。標準カメラ40並びに魚眼カメラ42及び44はECU22に接続されている。魚眼カメラ41及び43はECU23に接続されている。ECU22及び23は、標準カメラ40及び魚眼カメラ41~44が撮影した画像を解析することにより、物標の輪郭や、道路上の車線の区画線(白線等)を抽出可能である。
【0015】
魚眼カメラ41~44とは、魚眼レンズが取り付けられたカメラのことである。以下、魚眼カメラ41の構成について説明する。他の魚眼カメラ41~44も同様の構成を有してもよい。魚眼カメラ41の画角は、標準カメラ40の画角よりも広い。そのため、魚眼カメラ41は、標準カメラ40よりも広い範囲を撮影可能である。魚眼カメラ41によって撮影された画像は、標準カメラ40によって撮影された画像と比較して大きな歪みを有する。そのため、ECU23は、魚眼カメラ41によって撮影された画像を解析する前に、当該画像に対して歪みを軽減するための変換処理(以下、「歪み軽減処理」という)を行ってもよい。一方、ECU22は、標準カメラ40によって撮影された画像を解析する前に、当該画像に対して歪み軽減処理を行わなくてもよい。このように、標準カメラ40は、歪み軽減処理の対象とならない画像を撮影する撮影装置であり、魚眼カメラ41は、歪み軽減処理の対象となる画像を撮影する撮影装置である。標準カメラ40のかわりに、歪み軽減処理の対象とならない画像を撮影する他の撮影装置、例えば広角レンズや望遠レンズが取り付けられたカメラが使用されてもよい。
【0016】
標準カメラ40は、車両1の前部中央に取り付けられており、車両1の前方の状況を撮影する。魚眼カメラ41は、車両1の前部中央に取り付けられており、車両1の前方の状況を撮影する。図1では、標準カメラ40と魚眼カメラ41とが水平方向に並んでいるように示されている。しかし、標準カメラ40及び魚眼カメラ41の配置はこれに限られず、例えばこれらは垂直方向に並んでいてもよい。また、標準カメラ40と魚眼カメラ41との少なくとも一方は、車両1のルーフ前部(例えば、フロントウィンドウの車室内側)に取り付けられてもよい。例えば、魚眼カメラ41が車両1の前部中央(例えば、バンパー)に取り付けられ、標準カメラ40が車両1のルーフ前部に取り付けられてもよい。魚眼カメラ42は、車両1の右側部中央に取り付けられており、車両1の右方の状況を撮影する。魚眼カメラ43は、車両1の後部中央に取り付けられており、車両1の後方の状況を撮影する。魚眼カメラ44は、車両1の左側部中央に取り付けられており、車両1の左方の状況を撮影する。
【0017】
車両1が有するカメラの種類、個数及び取り付け位置は、上述の例に限られない。また、車両1は、車両1の周囲の物標を検知したり、物標との距離を測距したりするための検知ユニットとして、ライダ(Light Detection and Ranging)やミリ波レーダを含んでもよい。
【0018】
ECU22は、標準カメラ40並びに魚眼カメラ42及び44の制御及び検知結果の情報処理を行う。ECU23は、魚眼カメラ41及び43の制御及び検知結果の情報処理を行う。車両の状況を検知する検知ユニットを2系統に分けることによって、検知結果の信頼性を向上できる。
【0019】
ECU24は、ジャイロセンサ5、GPSセンサ24b、通信装置24cの制御及び検知結果あるいは通信結果の情報処理を行う。ジャイロセンサ5は車両1の回転運動を検知する。ジャイロセンサ5の検知結果や、車輪速等により車両1の進路を判定することができる。GPSセンサ24bは、車両1の現在位置を検知する。通信装置24cは、地図情報や交通情報を提供するサーバと無線通信を行い、これらの情報を取得する。ECU24は、メモリに構築された地図情報のデータベース24aにアクセス可能であり、ECU24は現在地から目的地へのルート探索等を行う。ECU24、地図データベース24a、GPSセンサ24bは、いわゆるナビゲーション装置を構成している。
【0020】
ECU25は、車車間通信用の通信装置25aを備える。通信装置25aは、周辺の他車両と無線通信を行い、車両間での情報交換を行う。
【0021】
ECU26は、パワープラント6を制御する。パワープラント6は車両1の駆動輪を回転させる駆動力を出力する機構であり、例えば、エンジンと変速機とを含む。ECU26は、例えば、アクセルペダル7Aに設けた操作検知センサ7aにより検知した運転者の運転操作(アクセル操作あるいは加速操作)に対応してエンジンの出力を制御したり、車速センサ7cが検知した車速等の情報に基づいて変速機の変速段を切り替えたりする。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU26は、ECU20からの指示に対応してパワープラント6を自動制御し、車両1の加減速を制御する。
【0022】
ECU27は、方向指示器8(ウィンカ)を含む灯火器(ヘッドライト、テールライト等)を制御する。図1の例の場合、方向指示器8は車両1の前部、ドアミラー及び後部に設けられている。
【0023】
ECU28は、入出力装置9の制御を行う。入出力装置9は運転者に対する情報の出力と、運転者からの情報の入力の受け付けを行う。音声出力装置91は運転者に対して音声により情報を報知する。表示装置92は運転者に対して画像の表示により情報を報知する。表示装置92は例えば運転席表面に配置され、インストルメントパネル等を構成する。なお、ここでは、音声と表示を例示したが振動や光により情報を報知してもよい。また、音声、表示、振動又は光のうちの複数を組み合わせて情報を報知してもよい。更に、報知すべき情報のレベル(例えば緊急度)に応じて、組み合わせを異ならせたり、報知態様を異ならせたりしてもよい。入力装置93は運転者が操作可能な位置に配置され、車両1に対する指示を行うスイッチ群であるが、音声入力装置も含まれてもよい。
【0024】
ECU29は、ブレーキ装置10やパーキングブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ装置10は例えばディスクブレーキ装置であり、車両1の各車輪に設けられ、車輪の回転に抵抗を加えることで車両1を減速あるいは停止させる。ECU29は、例えば、ブレーキペダル7Bに設けた操作検知センサ7bにより検知した運転者の運転操作(ブレーキ操作)に対応してブレーキ装置10の作動を制御する。車両1の運転状態が自動運転の場合、ECU29は、ECU20からの指示に対応してブレーキ装置10を自動制御し、車両1の減速及び停止を制御する。ブレーキ装置10やパーキングブレーキは車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。また、パワープラント6の変速機がパーキングロック機構を備える場合、これを車両1の停止状態を維持するために作動することもできる。
【0025】
図2を参照して、標準カメラ40及び魚眼カメラ41~44の撮影範囲について説明する。図2(a)は、各カメラの水平方向の撮影範囲を示し、図2(b)は車両1の前部の魚眼カメラ41の垂直方向の撮影範囲を示し、図2(c)は車両1の右側部の魚眼カメラ42の垂直方向の撮影範囲を示し、図2(d)は車両1の後部の魚眼カメラ43の垂直方向の撮影範囲を示す。本明細書において、水平方向及び垂直方向は、車両1の車体を基準とする。車両1の左側部の魚眼カメラ42の垂直方向の撮影範囲は図2(c)と同様としてよいため省略する。
【0026】
まず、図2(a)を参照して、車両1の平面図(すなわち、車両1の水平方向)における撮影範囲について説明する。標準カメラ40は、撮影範囲200に含まれる状況を撮影する。標準カメラ40の撮影中心200Cは、車両1の前方正面を向いている。撮影中心200Cは、レンズの光軸の方向によって規定されてもよい。標準カメラ40の水平方向の画角は、90°未満であってもよく、例えば45°程度又は30°程度であってもよい。
【0027】
魚眼カメラ41は、撮影範囲201に含まれる状況を撮影する。魚眼カメラ41の撮影中心201Cは、車両1の前方正面を向いている。魚眼カメラ42は、撮影範囲202に含まれる状況を撮影する。魚眼カメラ42の撮影中心202Cは、車両1の右方正面を向いている。魚眼カメラ43は、撮影範囲203に含まれる状況を撮影する。魚眼カメラ43の撮影中心203Cは、車両1の後方正面を向いている。魚眼カメラ44は、撮影範囲204に含まれる状況を撮影する。魚眼カメラ44の撮影中心204Cは、車両1の左方正面を向いている。魚眼カメラ41~44の水平方向の画角は、例えば90°よりも大きくてもよく、150°よりも大きくてもよく、180°よりも大きくてもよく、例えば180°程度であってもよい。図2(a)は、魚眼カメラ41~44の水平方向の画角が180°である例を示している。
【0028】
続いて、図2(b)~図2(d)を参照して、車両1の垂直方向における撮影範囲について説明する。図2(b)では、魚眼カメラ41の垂直方向の撮影範囲について説明し、図2(c)では、魚眼カメラ42の垂直方向の撮影範囲について説明し、図2(d)では、魚眼カメラ43の垂直方向の撮影範囲について説明する。他の魚眼カメラ44の垂直方向の撮影範囲は図2(c)と同様であってもよい。
【0029】
魚眼カメラ41~44の垂直方向の画角は、例えば90°よりも大きくてもよく、150°よりも大きくてもよく、180°よりも大きくてもよく、例えば180°程度であってもよい。図2(b)~図2(d)は、魚眼カメラ41~44の垂直方向の画角が180°となる例を示している。魚眼カメラ43の撮影中心203Cは、地面に平行な方向よりも下側(地面の側)を向いている。これにかえて、魚眼カメラ43の撮影中心203Cは、地面に平行な方向を向いていてもよいし、地面に平行な方向よりも上側(地面とは反対側)を向いていてもよい。また、魚眼カメラ41~44の撮影中心201C~204Cが、垂直方向において、個別の方向を向いていてもよい。
【0030】
標準カメラ40及び魚眼カメラ41~44が上述のような撮影範囲200~204を有することによって、車両1の正面前方及び4つの斜め方向は、2つの別個のカメラの撮影範囲に含まれる。具体的に、車両1の正面前方は、標準カメラ40の撮影範囲200と、魚眼カメラ41の撮影範囲201との両方に含まれる。車両1の右斜め前方は、魚眼カメラ41の撮影範囲201と、魚眼カメラ42の撮影範囲202との両方に含まれる。車両1の他の3つの斜め方向についても同様である。
【0031】
図3及び図4を参照して、魚眼カメラ41~44によって撮影された画像の歪み軽減処理について説明する。図3は歪み軽減処理の前後の画像を示す。図4は、歪み軽減処理の対象となる領域を示す。図4(a)は、車両1を上方から見た図を示し、図4(b)は車両1を後方から見た図を示す。画像300は、魚眼カメラ43によって撮影された車両1の右方の状況の画像である。図3に示されるように、画像300は、特に周辺部分において大きな歪みを有する。
【0032】
魚眼カメラ43に接続されているECU22は、画像300に対して歪み軽減処理を行う。具体的に、図3に示すように、ECU22は、画像300内の1点を変換中心301として決定する。図4に示すように、変換中心301は、水平方向において魚眼カメラ42から見て撮影領域202内の右側に位置し、垂直方向において地面と平行な方向を向く。
【0033】
ECU22は、画像300から、変換中心301を中心とする矩形の領域302を切り出す。この領域302は、図4に示すように、撮影範囲202のうち魚眼カメラ42から見て右側に位置する領域202Rに対応する。ECU22は、この領域302に対して歪み軽減処理を行うことによって、歪みが軽減された画像303を生成する。この画像303は、領域202Rの状況を表す画像である。
【0034】
歪み軽減処理の結果として、変換中心301に近い位置ほど歪みが軽減され、変換中心301から遠い位置では歪みが軽減されないか、歪みが増大される。画像300全体を歪み軽減処理の対象とした場合に、変換中心301から遠い位置にある領域では歪みが大きくなる。そのため、この遠い位置にある領域を利用して車両1の外界を解析したとしても、精度の良い解析を行えない。そこで、制御装置2は、解析対象の領域に変換中心301を設定し、変換中心301の周囲の領域について歪み軽減処理を行い、処理後の画像を用いて解析対象の領域の状況を解析する。
【0035】
撮影範囲201は、解析対象の領域として、車両1の左斜め前方を撮影する領域201Lと、車両1の正面前方を撮影する領域201Fと、車両1の右斜め前方を撮影する領域201Rとを含む。撮影範囲202は、解析対象の領域として、車両1の右斜め前方を撮影する領域202Lと、車両1の右方正面を撮影する領域202Fと、車両1の右斜め後方を撮影する領域202Rとを含む。撮影範囲203は、解析対象の領域として、車両1の右斜め後方を撮影する領域203Lと、車両1の後方正面を撮影する領域203Fと、車両1の左斜め後方を撮影する領域203Rとを含む。撮影範囲204は、解析対象の領域として、車両1の左斜め後方を撮影する領域204Lと、車両1の左方正面を撮影する領域204Fと、車両1の左斜め前方を撮影する領域204Rとを含む。撮影範囲201は、水平方向において、3つの領域201L、201F、及び201Rが均等となるように(すなわち、各領域の水平方向の画角が等しくなるように)分割されてもよい。他の撮影範囲202~204についても均等に3分割されてもよい。
【0036】
制御装置2は、車両1の右斜め前方の状況を解析したい場合に、魚眼カメラ42の撮影範囲202に含まれる領域202L内(例えば、領域202Lの中心)に変換中心301を設定し、変換中心301の周囲の領域について歪み軽減処理を行い、処理後の画像を用いて右斜め前方の状況を解析する。制御装置2は、車両1の右方正面の状況を解析したい場合に、魚眼カメラ42の撮影範囲202に含まれる領域202F内(例えば、領域202Fの中心)に変換中心301を設定し、変換中心301の周囲の領域について歪み軽減処理を行い、処理後の画像を用いて右方正面の状況を解析する。制御装置2は、車両1の右斜め後方の状況を解析したい場合に、魚眼カメラ42の撮影範囲202に含まれる領域202R内(例えば、領域202Rの中心)に変換中心301を設定し、変換中心301の周囲の領域について歪み軽減処理を行い、処理後の画像を用いて右斜め後方の状況を解析する。
【0037】
図5を参照して、一部の実施形態において制御装置2が車両1を制御する方法の例について説明する。この方法は、制御装置2の各ECU20~29のプロセッサ20aがメモリ20b内のプログラムを実行することによって行われてもよい。図5の方法は、制御装置2による運転支援機能又は自動運転機能がオンになったことに応じて開始されてもよい。
【0038】
ステップS501で、制御装置2は、標準カメラ40及び魚眼カメラ41~44のそれぞれから車両1の外界の画像を取得する。各画像は、車両1の外界のうち、図2で説明した範囲の状況を含む。
【0039】
ステップS502で、制御装置2は、車両1の現在の走行シーンを判定する。以下に説明する例では、車両の走行シーンとして、狭路を走行するシーンを扱う。これ以外のシーンは、通常(デフォルト)のシーンとして扱う。通常のシーンは、例えば車両1が道路を道なりに走行しているシーンを含む。
【0040】
ステップS503で、制御装置2は、車両1の現在の走行シーンに応じた規則に従って、ステップS501で取得された画像のうち歪み軽減処理の対象とする1つ以上の領域を決定する。以下、この規則を領域決定規則と呼ぶ。領域決定規則は事前に定められており、例えばメモリ20bに記憶されている。領域決定規則の具体例については後述する。
【0041】
ステップS504で、制御装置2は、図3に示したように、歪み軽減処理の対象として決定された1つ以上領域のそれぞれについて歪み軽減処理を行う。この歪み軽減処理は、魚眼カメラ41~44から取得された画像の歪みを軽減するための処理である。歪み軽減処理には既存の技術を用いてもよいため、詳細な説明を省略する。標準カメラ40から取得された画像については歪み軽減処理を行う必要はない。
【0042】
ステップS505で、制御装置2は、標準カメラ40から取得された画像及び魚眼カメラ41~44から取得され歪み軽減処理が行われた画像に基づいて車両1の外界を認識する。例えば、制御装置2は、補正された画像を、事前に学習されメモリ20bに格納されているモデルに適用することのよって、車両1の周囲の物標を特定してもよい。さらに、制御装置2は、外界の認識結果に応じて車両1の制御(例えば、自動ブレーキや運転者への通知、自動運転レベルの変更など)を行ってもよい。外界の認識結果に応じた車両1の制御には既存の技術を適用してもよいため、詳細な説明を省略する。
【0043】
ステップS506で、制御装置2は、動作を終了するかどうかを判定する。制御装置2は、動作を終了すると判定された場合(ステップS506で「YES」)に動作を終了し、それ以外の場合(ステップS506で「NO」)に動作をステップS501に戻す。制御装置2は、例えば運転支援機能又は自動運転機能がオフになったことに応じて動作を終了すると判定してもよい。
【0044】
上述のように、ステップS501~S505は繰り返し実行される。制御装置2は、ステップS501~S505の動作を周期的に実行してもよい。この実行周期は、S504の歪み軽減処理及びS505の認識処理の所要時間によって異なり、例えば100ms程度であってもよい。
【0045】
図6を参照して、制御装置2による周期的な動作について説明する。図6の丸印は、ステップS505の認識処理で使用される画像の候補を示す。図6のΔtは、ステップS501~S505を実行する周期を示す。標準カメラ40から取得された画像は歪みが少ないため、ステップS504の歪み軽減処理を行うことなくステップS505の認識処理で使用可能である。魚眼カメラ41~44から取得された画像は、ステップS504で歪み軽減処理を行った後にステップS505の認識処理で使用される。上述のように、魚眼カメラから取得された画像は、水平方向に分割された3つの領域のそれぞれについて歪み軽減処理が行われた画像を生成可能である。そのため、周期的な動作の1回の動作タイミングにおいて、制御装置2は、最大で13個の画像を用いて認識処理を実行可能である。13個の画像のうちの12個は魚眼カメラから取得されるものであるため、認識処理の前に歪み軽減処理が行われる。これら12個の領域のすべてについて歪み軽減処理を行うと、処理負荷が大きくなり、消費電力も高くなる。そこで、以下の実施形態では、車両1の走行シーンに基づいて、各動作タイミングにおいて12個の領域のうちのどの領域について歪み軽減処理を行い、認識処理に使用するかを決定する。
【0046】
図7図9を参照して、通常のシーンの領域決定規則について説明する。図7は、走行シーンの一例を示す。図7に示される例では、車両1は、直線道路を道なりに走行中である。
【0047】
図8は、各動作タイミングに解析対象となる領域を示す。制御装置2は、状態800~802を順番に繰り返す。すなわち、時刻tの動作タイミングにおいて状態800であったとすると、時刻t+Δt(上述のように、Δtは周期を示す)の動作タイミングにおいて状態801となり、時刻t+2×Δtの動作タイミングにおいて状態802となり、時刻t+3×Δtの動作タイミングにおいて状態800に戻る。後述の他の走行シーンにおける領域決定規則についても同様である。
【0048】
状態800では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Lと、魚眼カメラ42による領域202Rと、魚眼カメラ43による領域203Lと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態801では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Fと、魚眼カメラ43による領域203Fと、魚眼カメラ44による領域204Fとが解析対象となる。状態802では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Rと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203Rと、魚眼カメラ44による領域204Lとが解析対象となる。
【0049】
魚眼カメラの撮影範囲に含まれる領域が解析対象となる場合に、制御装置2は、この領域に対して上述のように歪み軽減処理を行う。したがって、領域決定規則は、歪み軽減処理の対象となる領域の水平方向の位置と、この位置にある領域を歪み軽減処理の対象とするタイミングと、を規定する。また、領域決定規則は、複数の魚眼カメラ41~44のそれぞれについて個別に規則を規定する。
【0050】
上述のように動作タイミングごとに状態を遷移することによって、制御装置2は、車両1の前方正面を1周期ごとに(すなわち、毎回)解析対象とし、車両1の右斜め前方、右方正面、右斜め後方、後方正面、左斜め後方、左方正面、及び左斜め前方のそれぞれを3周期ごとに解析対象とする。また、特定の動作タイミングで制御装置2に負荷が集中しないように、解析対象としない領域を複数の動作タイミングに分散している。さらに、車両1の前方正面について、3周期ごとに、標準カメラ40の画像と魚眼カメラの画像との両方を用いた解析が行われ、車両1の4つの斜め方向のそれぞれについて、3周期ごとに、2つの魚眼カメラの画像の両方を用いた解析が行われる。このように、各動作タイミングにおいて、歪み補正処理が行われる魚眼カメラ41~44の画像の一部を解析対象とすることによって、制御装置2の処理負荷が軽減し、消費電力が低減する。
【0051】
図9は、解析対象の領域の垂直方向における位置を示す。図9(a)は、魚眼カメラ41による領域201Fの垂直方向における位置を示す。図9(b)は、魚眼カメラ42による領域202Fの垂直方向における位置を示す。図9(c)は、魚眼カメラ43による領域203Fの垂直方向における位置を示す。魚眼カメラ44による各領域の垂直方向における位置は図9(b)と同様であってもよいため、説明を省略する。
【0052】
領域決定規則では、図9(a)に示すように、領域201Fを規定する変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ1に規定されている。θ1は、90度であってもよし、90度よりも小さな値(例えば、80度)であってもよい。領域201R及び201Lについても、変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ1に規定されていてもよい。同様に、魚眼カメラ42~44の領域についても、変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ1に規定されていてもよい。このように、領域決定規則は、歪み軽減処理の対象となる領域の垂直方向の位置を規定する。変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角をθ1(例えば、90度)とすることによって、車両1の遠方と近傍とをバランスよく解析できる。
【0053】
図10図13を参照して、車両1が狭路を走行するシーンの領域決定規則について説明する。狭路とは、車両1と障害物との距離が閾値以下(例えば、50cm以下)となる走行シーンのことであってもよい。図10は、このようなシーンの一例を示す。図10(a)は、車両1がS字カーブを走行するシーンを示す。図10(b)は、車両1がL字路を走行するシーンを示す。図10(c)は、車両1が対向車両とすれ違うシーンを示す。車両10(d)は、車両1が、右折しようとしている先行車両の横をすり抜けて走行するシーンを示す。図10(a)及び図10(b)のように、道路形状に応じて狭路が発生する場合もあり、図10(c)及び図10(d)のように、交通状況に応じて狭路が発生する場合もある。
【0054】
図11は、領域決定規則の一例において、各動作タイミングに解析対象となる領域を示す。制御装置2は、状態1100~1106を順番に繰り返す。状態1100では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202L及び202Fと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1101では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202L及び202Rと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1102では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203Lと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1103では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203Fと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1104では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203Rと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1105では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ44による領域204R及び204Lとが解析対象となる。状態1106では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ44による領域204R及び204Fとが解析対象となる。
【0055】
上述のように動作タイミングごとに状態を遷移することによって、制御装置2は、車両1の前方正面、右斜め前方、及び左斜め前方を1周期ごとに(すなわち、毎回)解析対象とし、車両1の右方正面、後方正面、及び左方正面のそれぞれを7周期ごとに解析対象とし、車両1の右斜め後方及び左斜め後方のそれぞれを7周期のうち2回、解析対象とする。また、特定の動作タイミングで制御装置2に負荷が集中しないように、解析対象としない領域を複数の動作タイミングに分散している。
【0056】
図12は、領域決定規則の一例において、各動作タイミングに解析対象となる領域を示す。制御装置2は、状態1200~1202を順番に繰り返す。状態1200では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ41による領域201Fと、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203Fと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。状態1201では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ42による領域202L及び202Fと、魚眼カメラ44による領域204F及び204Rとが解析対象となる。状態1202では、標準カメラ40による撮影範囲200と、魚眼カメラ42による領域202Lと、魚眼カメラ43による領域203L及び203Rと、魚眼カメラ44による領域204Rとが解析対象となる。
【0057】
上述のように動作タイミングごとに状態を遷移することによって、制御装置2は、車両1の前方正面、右斜め前方、及び左斜め前方を1周期ごとに(すなわち、毎回)解析対象とし、車両1の右方正面、右斜め後方、後方正面、左斜め後方、及び左方正面のそれぞれを3周期ごとに解析対象とする。また、特定の動作タイミングで制御装置2に負荷が集中しないように、解析対象としない領域を複数の動作タイミングに分散している。
【0058】
図13は、解析対象の領域の垂直方向における位置を示す。図13(a)は、魚眼カメラ41による領域201Fの垂直方向における位置を示す。図13(b)は、魚眼カメラ42による領域202Fの垂直方向における位置を示す。図13(c)は、魚眼カメラ43による領域203Fの垂直方向における位置を示す。魚眼カメラ44による各領域の垂直方向における位置は図13(b)と同様であってもよいため、説明を省略する。
【0059】
領域決定規則では、図13(a)に示すように、領域201Fを規定する変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ2に規定されている。θ2は、図9のθ1よりも小さい値であり、例えば70度であってもよい。領域201R及び201Lについても、変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ2に規定されていてもよい。魚眼カメラ42~44の領域についても、変換中心301と、車両1の垂直下向きとのなす角がθ3に規定されている。θ3は、θ2よりも小さい値であり、例えば45度であってもよい。
【0060】
このように、車両1の前方正面、右斜め前方、右方正面、右斜め後方、後方正面、左斜め後方、左方正面、左斜め前方のいずれの領域においても、車両1が狭路を走行する場合の解析対象の領域の垂直方向における位置は、車両1が狭路以外を走行する場合(例えば、上述の通常のシーンの場合)と比較して、下側にある(例えば、変換中心301が下向きである)。車両1が狭路を走行する場合に、車両1の車輪が縁石に乗り上げたり、側溝に落ちたりする可能性がある。解析対象の領域を下側に位置することによって、地面付近の状況の解析精度が向上する。また、車両1が狭路を走行する場合の領域決定規則では、魚眼カメラ41による前方正面の領域201Fが解析対象となる。これによって、図13(a)に示すように、標準カメラ40の撮影範囲200に含まれない車両1の前方正面の近傍を解析することが可能となる。また、車両1の右斜め前方の状況を、魚眼カメラ42による領域202Lに基づいて解析する。これによって、車両1の前輪近傍の領域を解析することが可能となる。左斜め前方の状況についても同様である。
【0061】
車両1が狭路を走行する場合に、車両の側方正面は障害物が近くにあるため、遠方を解析する必要性が低いが、車両の前方(右斜め前方及び左斜め前方を含む)は、ある程度遠方まで解析した方がよい。そこで、上述の例では、車両1の右斜め前方及び左斜め前方を含む領域の垂直方向における位置を、車両1の右方正面及び左方正面を含む領域の垂直方向における位置よりも上側にする(すなわち、θ2>θ3)。
【0062】
上述の何れの例においても、領域決定規則は、車両1の右斜め前方及び左斜め前方を、車両1の右方正面、左方正面、右斜め後方、左斜め後方及び後方正面よりも高い頻度で歪み軽減処理の対象とすることを規定する。車両1が狭路を走行するシーンでは、車両1が左斜め前方及び右斜め前方にある物体に接触する可能性が高い。そこで、車両1の左斜め前方及び右斜め前方を高頻度で解析対象とすることによって、制御装置2の処理負荷を低減しつつ、走行シーンに応じた適切な解析を実行可能となる。
【0063】
一部の実施形態において、制御装置2は、車両1の同じ方向について同じ動作タイミングで取得された画像に基づいて、複数の魚眼カメラ44による撮影が正常に行われているかどうかを判定してもよい。例えば、通常の走行シーンにおいて、車両1の左斜め前方の状況は、3周期ごとに同じ動作タイミングで、魚眼カメラ41による領域201Lと魚眼カメラ44による領域204Rとの両方に含まれる。制御装置2は、領域201Lの画像と領域204Rの画像とを互いに比較することによって、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ44による撮影が正常に行われているかどうかを判定してもよい。領域201Lの画像と領域204Rの画像とが一致しない場合(例えば、何らかの物体が一方の画像のみに含まれる場合)に、制御装置2は、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ44による撮影の少なくとも一方が正常に行われていないと判定してもよい。
【0064】
領域201Lの画像と領域204Rの画像との比較だけでは、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ44による撮影のどちらが正常に行われていないか特定できないことがある。例えば、魚眼カメラ41が正常に動作しておらず、特定の物体(例えば、歩行者)を撮影できない場合であっても、正常に動作している魚眼カメラ44はこの物体を撮影できる。この場合に、物体を撮影できている方の魚眼カメラ44が正常に動作している。一方、魚眼カメラ41のレンズに汚れが付着している場合に、魚眼カメラ44はこの汚れを撮影しない。この場合に、物体を撮影できてない方の魚眼カメラ44が正常に動作している。制御装置2は、魚眼カメラ41及び44のうちの一方のみに含まれる物体を解析することによって、どちらの魚眼カメラの撮影が正常に行われていないのかを判定してもよい。
【0065】
制御装置2は、車両の複数の方向において2つの画像を比較することによって、どの魚眼カメラの撮影が正常に行われていないかを判定してもよい。例えば、上述のように、制御装置2は、魚眼カメラ41による領域201Lと魚眼カメラ44による領域204Rとを比較することによって、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ44による撮影の少なくとも一方が正常に行われていないと判定してもよい。さらに、制御装置2は、車両1の右斜め前方の状況をそれぞれが含む魚眼カメラ41による領域201Rと魚眼カメラ42による領域202Lとを比較することによって、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ42による撮影の少なくとも一方が正常に行われていないかどうかを判定する。この結果として、魚眼カメラ41による撮影及び魚眼カメラ42による撮影がどちらも正常であれば、制御装置2は、魚眼カメラ44による撮影が正常に行われていないと判定できる。上述の例では、車両1の左斜め前方及び右斜め前方を利用したが、制御装置2は、車両1の他の斜め方向を利用してもよい。
【0066】
<実施形態のまとめ>
<項目1>
第1撮影装置及び第2撮影装置を含む複数の撮影装置(41~44)を有する移動体(1)の制御装置(2)であって、
前記複数の撮影装置から前記移動体の外界の画像(300)を取得する画像取得手段と、
前記複数の撮影装置から取得された画像に含まれる1つ以上の領域(302)のそれぞれについて画像の歪みを軽減するための歪み軽減処理を行う補正手段と、
前記歪み軽減処理が行われた画像(303)に基づいて前記移動体の外界を認識する認識手段と、を備え、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、制御装置。
この項目によれば、移動体の外界を適切に認識できる。
<項目2>
前記複数の撮影装置は、第3撮影装置をさらに含み、
前記特定の方向は、第1方向であり、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向とは異なる第2方向の状況を含む第3領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第3撮影装置から取得された画像のうち前記第2方向の状況を含む第4領域を前記歪み軽減処理の対象とする、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、2つの方向のそれぞれを、2つの撮影装置で同じ動作タイミングで外界を認識できる。
<項目3>
前記複数の撮影装置は、第3撮影装置及び第4撮影装置をさらに含み、
前記特定の方向は、第1方向であり、
前記補正手段は、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向とは異なる第2方向の状況を含む第3領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、
前記第3撮影装置から取得された画像のうち前記第2方向の状況を含む第4領域を前記歪み軽減処理の対象とするとともに、
前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記第1方向及び前記第2方向とは異なる第3方向の状況を含む第5領域と、前記第4撮影装置から取得された画像のうち前記第3方向の状況を含む第6領域とを、前記歪み軽減処理の対象とする、項目1に記載の制御装置。
この項目によれば、1つの動作タイミングで、2つの方向のそれぞれを、2つの撮影装置を使用して認識できる。
<項目4>
前記第2方向と前記第3方向とは、前記移動体に対して互いに反対の向きである、項目3に記載の制御装置。
この項目によれば、撮影装置の互いの死角を補完し合える。
<項目5>
前記第1撮影装置、前記第2撮影装置、前記第3撮影装置及び前記第4撮影装置は、
第1動作タイミングに2つのグループに分割され、一方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第1方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、他方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第4方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、
第2動作タイミングに、前記第1動作タイミングとは異なる2つのグループに分割され、一方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第2方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とし、他方のグループの2つの撮影装置のそれぞれが前記移動体の第3方向の状況を含む領域を前記歪み軽減処理の対象とする、項目3又は4に記載の制御装置。
この項目によれば、4つの方向について、4つの撮影装置を使用して効率的に分析できる。
<項目6>
前記第1撮影装置は、前記移動体の前方正面、右斜め前方及び左斜め前方を撮影し、
前記第2撮影装置は、前記移動体の右方正面、右斜め前方及び右斜め後方を撮影し、
前記第3撮影装置は、前記移動体の左方正面、左斜め前方及び左斜め後方を撮影する、項目2乃至5の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、移動体の様々な方向について外界を認識できる。
<項目7>
前記補正手段は、前記移動体が所定の移動シーンである場合にのみ、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、項目1乃至6の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、必要な場合に限って同一の方向を同じ動作タイミングで複数の撮影装置を使用して認識できる。
<項目8>
前記制御装置は、前記第1領域の画像と前記第2領域の画像とを比較することによって、前記第1撮影装置による撮影及び前記第2撮影装置による撮影が正常に行われているかどうかを判定する判定手段をさらに備える、項目1乃至7の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、撮影装置の動作状況を判定できる。
<項目9>
前記特定の方向は、前記移動体の斜め方向である、項目1乃至8の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、移動体の斜めの方向を重点的に分析できる。。
<項目10>
前記複数の撮影装置はそれぞれ、魚眼レンズが取り付けられた撮影装置である、項目1乃至9の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、撮影装置の撮影範囲を広くすることができる。
<項目11>
前記移動体は、前記複数の撮影装置よりも歪みが少ない画像を撮影する別の撮影装置(40)をさらに有し、
前記画像取得手段は、前記別の撮影装置から前記移動体の外界の画像を取得し、
前記認識手段は、前記別の撮影装置からの画像にさらに基づいて前記移動体の外界を認識する、項目1乃至10の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、複数のタイプの撮影装置を用いて外界を認識できる。
<項目12>
前記移動体は車両(1)である、項目1乃至11の何れか1項に記載の制御装置。
この項目によれば、車両が走行する際に外界を適切に認識できる。
<項目13>
項目1乃至11の何れか1項に記載の制御装置を備える車両。
この項目によれば、車両の形態で上記の効果が得られる。
<項目14>
コンピュータを項目1乃至11の何れか1項に記載の制御装置の各手段として機能させるためのプログラム。
この項目によれば、プログラムの形態で上記の効果が得られる。
<項目15>
第1撮影装置及び第2撮影装置を含む複数の撮影装置(41~44)を有する移動体(1)の制御方法であって、
前記複数の撮影装置から前記移動体の外界の画像(300)を取得する画像取得工程と、
前記複数の撮影装置から取得された画像に含まれる1つ以上の領域(302)のそれぞれについて画像の歪みを軽減するための歪み軽減処理を行う補正工程と、
前記歪み軽減処理が行われた画像(303)に基づいて前記移動体の外界を認識する認識工程と、を備え、
前記補正工程において、前記第1撮影装置から取得された画像のうち前記移動体の特定の方向の状況を含む第1領域を前記歪み軽減処理の対象とするときに、前記第2撮影装置から取得された画像のうち前記特定の方向の状況を含む第2領域を前記歪み軽減処理の対象とする、制御方法。
この項目によれば、移動体の外界を適切に認識できる。
【0067】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 車両、2 制御装置、40 標準カメラ、41~44 魚眼カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13