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特許7181971電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20221124BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20221124BHJP
   G08B 31/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
G08B21/00 A
G08B31/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021120675
(22)【出願日】2021-07-21
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】592208806
【氏名又は名称】一般財団法人関東電気保安協会
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 英知
(72)【発明者】
【氏名】小野 賢司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山北 潤
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-064384(JP,A)
【文献】特開2018-044938(JP,A)
【文献】特開平07-159231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
G08B 19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサと、制御部及び記憶部が設けられたゲートウェイとを有するキュービクルを備え、
前記センサは、前記キュービクルの監視要素を検出可能であり、
前記記憶部は、突発型、関数型、周期型、ランダム型、正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の一部又は全部の種類を含む異常パターンを記憶
前記制御部は、前記キュービクルと外部ネットワークとの通信を中継する前記ゲートウェイに設けられ、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記キュービクルに異常があると判定する
電気設備点検システム。
【請求項2】
前記ゲートウェイは、いずれかの前記センサ内に設けられる請求項1に記載の電気設備点検システム。
【請求項3】
前記記憶部は、前記異常パターンを複数記憶する請求項1又は請求項2に記載の電気設備点検システム。
【請求項4】
前記キュービクルの情報を出力可能な出力部を備え、
前記制御部は、前記キュービクルに異常があると判定した場合に、前記キュービクルの異常を前記出力部から出力させる請求項に記載の電気設備点検システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記センサの種類に対応して異常判定に適用する前記異常パターンの種類を選択する請求項に記載の電気設備点検システム。
【請求項6】
前記センサは、高圧絶縁センサ、カメラ、温度センサ、ガスセンサ、マルチメータ、低圧絶縁センサ、粉塵センサ、振動センサ、水位センサ、湿度センサ、トラッキングセンサ、過熱感知センサ、漏液センサ、油量センサ、接地線外れセンサ及び結露センサのうちの一つ又は複数である請求項に記載の電気設備点検システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記監視要素に複数の前記異常パターンが含まれている場合に、前記キュービクルが異常であると判定する請求項に記載の電気設備点検システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記キュービクルの異常時における前記監視要素の前記異常パターンを機械学習により学習させた学習済みの判定プログラムを用いて、前記監視要素に前記異常パターンが含まれているか否かを判断する請求項に記載の電気設備点検システム。
【請求項9】
制御部及び記憶部が設けられ、複数のセンサと通信可能に接続されて該センサとともにキュービクルに設けられた電気設備点検装置であって、
前記記憶部は、突発型、関数型、周期型、ランダム型、正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の一部又は全部の種類を含む異常パターンを記憶
前記センサは、前記キュービクルの監視要素を検出可能であり、
前記制御部は、前記キュービクルと外部ネットワークとの通信を中継し、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記キュービクルに異常があると判定する
電気設備点検装置。
【請求項10】
複数のセンサと、制御部及び記憶部が設けられたゲートウェイとを有するキュービクルを備えた電気設備点検システムを用いた電気設備点検方法であって、
前記センサは、前記キュービクルの監視要素を検出可能であり
前記記憶部は、突発型、関数型、周期型、ランダム型、正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の一部又は全部の種類を含む異常パターンを記憶
前記制御部は、前記キュービクルと外部ネットワークとの通信を中継する前記ゲートウェイに設けられ、
前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記キュービクルに異常があると判定する工程を含む、
電気設備点検方法。
【請求項11】
複数のセンサと、制御部及び記憶部が設けられたゲートウェイとを有するキュービクルを備えた電気設備点検システムの電気設備点検プログラムであって、
前記センサは、前記キュービクルの監視要素を検出可能であり
前記記憶部は、突発型、関数型、周期型、ランダム型、正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の一部又は全部の種類を含む異常パターンを記憶
前記制御部は、前記キュービクルと外部ネットワークとの通信を中継する前記ゲートウェイに設けられ、
前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記キュービクルに異常があると判定する工程、をコンピュータに実行させるための電気設備点検プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気設備の異常個所を特定する装置が提案されている。例えば、特許文献1には、電気設備の状態を示す画像情報を含む設備状態情報を取得する設備状態情報取得手段と、画像情報に基づいて電気設備についての分割された複数の監視領域を設定する監視領域設定手段と、監視領域毎に設備状態情報の時間的変化に基づいて異常の発生の判定を行う異常判定手段と、異常判定手段による判定結果に基づいて異常が発生した監視領域を特定する異常個所特定手段とを備える電気設備異常個所特定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-183734
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気設備の異常とされる状態は様々な故障モードに起因することがある。そのため、特許文献1の技術のような画像異常及び温度異常についての時間的変化に基づく判定では、電気設備の様々な異常を検出することが難しい場合がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、多様な故障モードを検出可能な電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電気設備点検システムは、電気設備の監視要素を検出可能なセンサと、異常パターンを記憶する記憶部と、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記電気設備に異常があると判定する制御部と、を備える。
【0007】
また上述の電気設備点検システムとして、前記記憶部は、前記異常パターンを複数記憶してもよい。
【0008】
また上述の電気設備点検システムとして、前記電気設備の情報を出力可能な出力部を備え、前記制御部は、前記電気設備に異常があると判定した場合に、前記電気設備の異常を前記出力部から出力させてもよい。
【0009】
また上述の電気設備点検システムとして、前記異常パターンは、突発型、関数型、周期型、ランダム型、正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の一部又は全部の種類を含んでもよい。
【0010】
また上述の電気設備点検システムとして、前記制御部は、前記センサの種類に対応して異常判定に適用する前記異常パターンの種類を選択してもよい。
【0011】
また上述の電気設備点検システムとして、前記電気設備は、前記センサを含むキュービクルであり、また上述の電気設備点検システムとして、前記制御部は、前記電気設備と外部ネットワークとの通信を中継するゲートウェイに設けられていてもよい。
【0012】
また上述の電気設備点検システムとして、前記センサは、高圧絶縁センサ、カメラ、温度センサ、ガスセンサ、マルチメータ、低圧絶縁センサ、粉塵センサ、振動センサ、水位センサ、湿度センサ、トラッキングセンサ、過熱感知センサ、漏液センサ、油量センサ、接地線外れセンサ及び結露センサのうちの一つ又は複数であってもよい。
【0013】
また上述の電気設備点検システムとして、前記制御部は、前記監視要素に複数の前記異常パターンが含まれている場合に、前記電気設備に異常があると判定してもよい。
【0014】
前記制御部は、前記電気設備の異常時における前記監視要素の前記異常パターンを機械学習により学習させた学習済みの判定プログラムを用いて、前記監視要素に前記異常パターンが含まれているか否かを判断してもよい。
【0015】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電気設備点検装置は、異常パターンを記憶する記憶部を備え、電気設備の監視要素を検出可能なセンサと通信可能に接続され、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記電気設備に異常があると判定する。
【0016】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電気設備点検方法は、電気設備の監視要素を検出可能なセンサと、異常パターンを記憶する記憶部とを備える電気設備点検システムにおける電気設備点検方法であって、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記電気設備に異常があると判定する工程を含む。
【0017】
上記した目的を達成するために、本発明に係る電気設備点検プログラムは、電気設備点検プログラムであって、電気設備の監視要素を検出可能なセンサと、異常パターンを記憶する記憶部とを備える電気設備点検システムにおいて、前記センサが検出した前記監視要素を前記異常パターンと照合し、前記監視要素に前記異常パターンが含まれている場合に、前記電気設備に異常があると判定する工程、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
上記手段を用いる本発明に係る電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラムによれば、多様な故障モードを検出可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電気設備点検システムの全体構成図である。
図2】キュービクル及び外部機器の制御ブロック図である。
図3】各センサに対応する点検・測定項目、監視対象及び異常パターンの種類を示す図である。
図4】突発型、関数型、周期型及びランダム型の異常パターンを示す図である。
図5】正規分布型、バスタブ初期型、バスタブ後期型、機械故障型、飽和型及び一次関数型の異常パターンを示す図である。
図6】ゲートウェイによる異常判定を行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る電気設備点検システム1の全体構成図である。また、図2は、キュービクル2の制御ブロック図である。なお、本実施形態の説明では、各図における各装置や通信の接続関係は、模式的に示している。
【0022】
電気設備点検システム1は、電気設備であるキュービクル2と、キュービクル2に設けられる電気設備点検装置であるゲートウェイ21と、キュービクル2の情報を出力可能な出力部である出力装置3と、外部機器6とを備える。キュービクル2及び出力装置3は、ネットワーク4を介して通信可能に接続されている。また、キュービクル2は、ゲートウェイ21を介して外部のネットワーク4と接続されている。ネットワーク4に接続されるキュービクル2は複数であってもよい。また、出力装置3は複数設けられていてもよい。
【0023】
キュービクル2は、送配電線路から需要家が構内で電力を受電し、電圧を変成可能な自家用高圧受電設備である。キュービクル2は、図2に示すように、ゲートウェイ21と、制御部22と、複数のセンサ23とを備える。複数のセンサ23としては、高圧絶縁センサ23b、カメラ23c、温度センサ23d、ガスセンサ23e、マルチメータ23f、低圧絶縁センサ23g、粉塵センサ23h、振動センサ23i、水位センサ23j、湿度センサ23k、トラッキングセンサ23l、過熱感知センサ23m、漏液センサ23n、油量センサ23o、接地線外れセンサ23p、結露センサ23qの一つ又は複数(一部又は全部)を含む。センサ23は、キュービクル2の状態を示す検出値や画像データ等の監視要素を検出可能に構成される。制御部22は、各センサ23から検出値や画像データ等の監視要素を取得してゲートウェイ21に送信する。
【0024】
図3は、各センサ23に対応する点検・測定項目241、監視対象242及び異常パターンの種類243を示す図である。本実施形態におけるキュービクル2の点検・測定項目241は、各センサ23が主に点検、測定可能な項目の例を示している。
【0025】
監視対象242は、主に、キュービクル2のいずれの部位を監視可能であるかを示している。なお、監視対象242は、センサ23の種類、センサ23の配置場所、配置方法によっては、図示したものに限らない。異常パターンの種類243は、図4及び図5に示す異常パターン5a~5jのうち、センサ23の種類に応じて代表的に適用されるものを示している。
【0026】
ゲートウェイ21は、制御部211により、各センサ23から取得した監視要素(検出値、画像データ等)に基づいて、キュービクル2の異常判定を行う。ゲートウェイ21は、制御部211、記憶部212及び通信部213を備える。記憶部212は、キュービクル2の異常判定に用いる判定基準である閾値や、センサ23から取得した監視要素と照合して異常判定に用いる複数の異常パターン5a~5jを記憶する。また、記憶部212は、図6のフローチャートの説明で後述する電気設備点検方法を実行可能な電気設備点検プログラム等の各種のプログラムを記憶する。
【0027】
ここで図4及び図5を参照して異常パターン5a~5jの例について説明する。異常パターン5a~5jは、キュービクル2内のセンサ23が検出する監視要素と比較、照合することで、キュービクル2に発生したか否かの判定に用いられる。図4は、突発型の異常パターン5a、関数型の異常パターン5b、周期型の異常パターン5c、及びランダム型の異常パターン5dを示している。また、図5は、正規分布型の異常パターン5e、バスタブ初期型(ワイブル分布型)の異常パターン5f、バスタブ後期型(ワイブル分布型)の異常パターン5g、機械故障型(ワイブル分布型)の異常パターン5h、飽和型の異常パターン5i、及び一次関数型の異常パターン5jを示している。各異常パターン5a~5jにおけるx軸及びy軸の単位は、判定対象である監視要素に応じて任意に設定することができる。例えば、x軸は、時間、波長、周波数、確率変数又は任意に設定したその他の単位とすることができる。また、y軸は、電圧、電流、抵抗(インピーダンス)、温度、湿度、圧力、ガス濃度、粉塵量、アーク発生有無、水や油等の液量、後述する差分画像の変化、確率、確率密度、他の計器の状態又は任意に設定したその他の単位とすることができる。
【0028】
各異常パターン5a~5jにおける波形の具体的な形状は図示した形状に限らず、ある程度近似する異なる形状であってもよい。また、y軸は、正若しくは負の値、又は正負両方の値を評価対象に含めてもよい。さらに、図4及び図5に例示した各異常パターン5a~5jは、y軸の値が正側に変化しているが、正負反転させた負側に変化するパターン(即ち、図4及び図5においてx軸により下方に反転させた形状のパターン)としてもよいし、正負両方に変化するパターン(図4及び図5においてx軸により下方に反転輻射させた形状のパターン)としてもよい。その他、記憶部212は、各センサ23から取得した監視要素と照合して異常判定に用いる任意の異常パターンを予め設定して又は外部から取得して記憶することができる。
【0029】
通信部213は、ネットワーク4を介して外部装置(例えば、出力装置3)と通信可能に構成され、キュービクル2との通信を中継して情報の送受信を行う。制御部211は、例えば各センサ23から取得した監視要素のデータを、通信部213を介して出力装置3に送信する。また、制御部211は、通信部213を介して、出力装置3からキュービクル2に対する制御指示等を受信することができる。
【0030】
ゲートウェイ21がキュービクル2の異常判定を行う方法としては、ゲートウェイ21の制御部211が、記憶部212に予め又は動的に設定される閾値や条件に基づいて判定したり、センサ23の種類に応じて、監視要素の変化を異常パターン5a~5jと照合して、監視要素がいずれかの異常パターン5a~5jと一致するか否かを機械学習(所謂ディープラーニング)により学習済みの判定プログラムによって推定し、異常判定させる構成としてもよい。当該判定プログラムは、任意のタイミングで新たに取得した監視要素のデータを教師データとして用いて機械学習により更新しながら適用してもよい。又は、制御部211は、各センサ23の種類に応じて固定的に予め設定した異常パターン5a~5jを監視要素と照合してキュービクル2の異常判定を行ってもよい。なお、本実施形態の判定プログラムは、電気設備点検プログラムの一部として実行することができる。また、本実施形態の電気設備点検システム1は、電気設備点検プログラムを実行させるためのコンピュータ(不図示)を含む。
【0031】
外部機器6は、例えば、地中又は架空用の負荷開閉器であり、地中線用負荷開閉器(UGS(Underground Gas Switch))(例えば、スマートUGS)や、気中負荷開閉器(PAS(Pole mounted Air Switch))を適用することができる。また外部機器6は、センサ23として、高圧絶縁センサ23aを備える。
【0032】
ここで、本実施形態の各センサ23の詳細について説明する。高圧絶縁センサ23aは、外部機器6の地絡電流を検出して監視要素として(又は絶縁抵抗を監視要素として)、制御部211により異常判定を行うことができる。制御部211は、例えば、高圧絶縁センサ23aが検出した地絡電流が予め定めた閾値以上、所定の時間継続して流れた場合に異常が発生したものと判定することができる。本実施形態では、高圧絶縁センサ23aが検出する地絡電流及び検出時間に応じて、異常の判定結果を複数段階にレベル分けして(例えば、微地絡や絶縁劣化等にレベル分け)、地絡前の絶縁低下を事前に検出することができる。
【0033】
また、制御部211は、高圧絶縁センサ23aが検出した地絡電流の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b、ランダム型の異常パターン5d、又はバスタブ後期型の異常パターン5g)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって判定することができる。
【0034】
高圧絶縁センサ23bは、高圧機器の絶縁抵抗を監視要素として検出する。制御部211は、絶縁抵抗値の判定結果を複数段階にレベル分けすることもでき、例えば絶縁抵抗値が30MΩ以上である場合は正常とし、6MΩ以上30MΩ未満である場合は要注意とし、6MΩ未満である場合は異常として判定することができる。また、高圧絶縁センサ23bは、機器が発する可聴域又は不可聴域の音を監視要素として検出する集音センサとして機能してもよい。高圧機器は、絶縁劣化によってノイズとして音が発生することがある。そのため、この集音センサは、絶縁劣化に関連する周波数や音圧レベルを検出することにより、キュービクル2内に収容される高圧機器の異常を検出することができる。なお、高圧絶縁センサ23bは、集音した音を絶縁抵抗値に変換し、例えば上述した閾値を用いて異常判定を行う構成としてもよい。また、集音センサは、高圧機器に限らず、その他の機器や異常の検出に用いてもよい。
【0035】
また、制御部211は、高圧絶縁センサ23bが検出した絶縁抵抗の変化(又は音の変化)を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b、ランダム型の異常パターン5d、又は飽和型の異常パターン5i)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0036】
カメラ23cは、キュービクル2の内部に一つ又は複数の箇所に設置され、キュービクル2の内部を撮影した複数の画像の差分画像を監視要素としてキュービクル2の異常を検出する。具体的に、例えば、制御部211は、カメラ23cによって同じ範囲を異なる時期に撮影した複数の画像から差分画像を求め、差分画像の変化(例えば、差分の面積や領域の変化)が大きい場合にキュービクル2が異常状態であると判定させることができる。差分画像の変化を監視することより、例えば、キュービクル2内に侵入した動物(例えば、ねずみ、へび等)、植物、機器の汚損等の物体を検出することができる。なお、制御部211は、キュービクル2内に侵入した物体を画像処理により特定してもよい。
【0037】
また、制御部211は、カメラ23cが検出した画像の変化を、異常パターン(例えば、突発型の異常パターン5a)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0038】
温度センサ23dは、キュービクル2内の任意の部位(例えば、高圧受電設備)の温度を監視要素として検出する。制御部211は、例えば、温度センサ23dが検出した温度の変化(所定の時間間隔(例えば、1時間毎)で検出)が大きい場合、キュービクル2に異常が発生したと判定する。
【0039】
また、制御部211は、温度センサ23dが検出した温度の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び周期型の異常パターン5c)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0040】
ガスセンサ23eは、キュービクル2内の電線から発生するVOC(揮発性有機化合物)等のガス濃度を監視要素として検出する。制御部211は、ガス濃度を検出して、所定の時間間隔(例えば1時間毎)に異常判定を行い、ガス濃度が予め定めた閾値以上であった場合に、キュービクル2に異常が発生したと判定する。
【0041】
また、制御部211は、ガスセンサ23eが検出したガス濃度の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b、周期型の異常パターン、及び飽和型の異常パターン5i)と照合して、いずれの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0042】
マルチメータ23fは、バンク(変圧器の二次側の電路系統)毎の電圧及び電流を監視要素として測定する。制御部211は、例えば、電灯電圧の場合に標準電圧101Vに対して107Vを1分以上継続して超えた場合や、動力電圧の場合に標準電圧202Vに対して222Vを1分以上継続して超えた場合に、キュービクル2に異常が発生したと判定する。また、制御部211は、例えば、マルチメータ23fにより、キュービクル2内の変圧器に定格電流の120%程度以上電流が流れている状態が2時間程度以上継続したと判定した場合に、キュービクル2に異常が生じたと判定することができる。
【0043】
また、制御部211は、マルチメータ23fが検出した電圧又は電流の変化を、異常パターン(例えば、周期型の異常パターン5c)と照合して、電圧又は電流の変化がいずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0044】
低圧絶縁センサ23gは、低圧電路の絶縁抵抗(電流)を監視要素として検出する。制御部211は、低圧電路の絶縁抵抗が予め定めた閾値以下(例えば、電流値として50mA以上)であった場合にキュービクル2の低圧電路に異常があったと判定する。
【0045】
また、制御部211は、低圧絶縁センサ23gが検出した絶縁抵抗(電流)の変化を、異常パターン(例えば、突発型の異常パターン5a及び周期型の異常パターン5c)と照合して、絶縁抵抗(電流)の変化がいずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0046】
粉塵センサ23hは、キュービクル2内における空気中の粉塵量を数値化して監視要素として検出する。キュービクル2の粉塵は、キュービクル2に使用される電線や機器の汚れ、塗装剥がれ若しくは錆、又は、外部からキュービクル2内に侵入した埃、塵、砂、花粉、その他の微粉が発生した場合に検知される。制御部211は、粉塵量が予め定めた閾値以上であった場合に、キュービクル2の汚れ等が異常であると判定することができる。
【0047】
また、制御部211は、粉塵センサ23hが検出した粉塵量の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び周期型の異常パターン5c)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0048】
振動センサ23iは、振動を監視要素として検出して、主に、キュービクル2の内部における高圧機器等の絶縁劣化、変圧器の異常、遮断器・負荷開閉器等の動作を検出する。振動センサ23iは、地震、地盤沈下、建物倒壊、土砂崩れ、等のキュービクル2外で発生した異常も検出することができる。振動センサ23iは、キュービクル2の筐体(壁部や天井部)に設置してキュービクル2全体の振動を検出してもよいし、特定の機器に取り付けて監視対象に発生する振動を検出してもよい。制御部211は、振動が予め定めた閾値異常であった場合に、監視対象としているキュービクル2や機器に異常が発生したものと判定することができる。
【0049】
また、制御部211は、振動センサ23iが検出した振動の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び周期型の異常パターン5c)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0050】
水位センサ23jは、屋内や屋外(例えば、地下変電所や地上変電所)に設置されたキュービクル2内の水位を監視要素として検出する。なお、水位センサ23jは、図2では図示しないが、PAS内や、引込線マンホール内の水位を検出してもよい。水位センサ23jにより、例えば、キュービクル2内、PAS内又は引込線マンホール内における過度な雨水等の侵入を検出することができる。
【0051】
また、制御部211は、水位センサ23jが検出した水位の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び突発型の異常パターン5a)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0052】
湿度センサ23kは、キュービクル2内の湿度を監視要素として検出する。制御部211は、湿度センサ23kによる湿度の検出結果を用いることで、例えば、高圧絶縁センサ23bにより検出される絶縁抵抗値を予測し、より正確な値に補正することができる。
【0053】
また、制御部211は、湿度センサ23kが検出した湿度の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び周期型の異常パターン5c)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0054】
トラッキングセンサ23lは、キュービクル2における負荷開閉器の接続部や低圧電路の接続部等のトラッキング発生を検出可能なセンサである。トラッキングの検出は、例えば、電圧波形を監視要素として計測し、電圧波形に含まれる放電波形を検出することにより行うことができる。
【0055】
また、制御部211は、トラッキングセンサ23lが検出した電圧又は電流の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及びランダム型の異常パターン5d)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0056】
過熱感知センサ23mは、キュービクル2の機器本体や接続端子部の温度を監視要素として検出して異常判定させる。制御部211は、過熱感知センサ23mが検出した温度が予め定めた閾値以上となった場合、キュービクル2に異常が発生したと判定することができる。
【0057】
また、制御部211は、過熱感知センサ23mが検出した温度の変化を異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び突発型の異常パターン5a)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0058】
漏液センサ23nは、油入機器(例えば変圧器)や非常用発電機等の監視対象機器の周辺の油分や水分の漏液量を監視要素として検出する。制御部211は、漏液量が予め定めた閾値以上であった場合に、キュービクル2に異常が発生したと判定することができる。
【0059】
また、制御部211は、漏液センサ23nが検出した漏液量の変化を、異常パターン(例えば、関数型の異常パターン5b及び飽和型の異常パターン5i)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0060】
油量センサ23oは、油入機器(例えば変圧器)及び非常用発電機内の油量(オイル量)(監視要素)を監視する。制御部211は、油量が予め定めた閾値以下である場合に、異常が発生したと判定することができる。
【0061】
また、制御部211は、油量センサ23oが検出した油量の変化を、異常パターン(例えば、バスタブ初期型の異常パターン5f及び突発型の異常パターン5a)と照合して、油量の変化がいずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定させる構成としてもよい。
【0062】
接地線外れセンサ23pは、例えば、キュービクル2内の接地線に、電圧や電流を重畳することで接地抵抗を監視要素として監視し異常を判定することができる。
【0063】
また、制御部211は、接地線外れセンサ23pが検出した接地抵抗の変化を異常パターン(例えば、突発型の異常パターン5a及びランダム型の異常パターン5d)と照合して、いずれかの異常パターンと一致するか否かを判定プログラムによって異常判定することができる。
【0064】
結露センサ23qは、キュービクル2内の高圧機器、内壁等に付着する水分量を監視要素として検出することでキュービクル2内の異常を検出する。例えば、制御部211は、結露センサ23qが検出した水分量があらかじめ定めた閾値以上であった場合に、異常であると判定することができる。
【0065】
なお、図2に示したセンサ23に限らず、他のセンサを用いてもよい。
【0066】
図1に戻り、出力装置3は、キュービクル2の情報を出力可能に構成される。出力装置3は、ゲートウェイ21によってキュービクル2内のセンサが検出した監視要素を異常パターン5a~5jと照合し、監視要素に異常パターン5a~5jが含まれている場合、キュービクル2に異常が発生したことを出力する。出力装置3は、表示部、発光部、スピーカ及び通信部等を備えることができ、キュービクル2に異常が発生したことを表示、発光、放音又は他の装置への情報伝達等によって出力することができる。
【0067】
次に、電気設備点検システム1のゲートウェイ21が電気設備点検プログラムの実行により異常判定を行う電気設備点検方法について、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
【0068】
ステップS01において、ゲートウェイ21の制御部211は、キュービクル2内のセンサ23により検出された監視要素を取得する。
【0069】
ステップS02において、制御部211は、記憶部212に記憶される閾値や異常パターン5a~5jを用いて監視要素が異常判定の条件を満たすか否かを判定する。制御部211は、センサ23の種類に対応して異常判定に適用する閾値や異常パターン5a~5jの種類を選択する。異常パターン5a~5jにおけるx軸及びy軸の単位も、監視要素に応じて設定される。
【0070】
ステップS03において、制御部211は、監視要素に異常パターンが含まれている場合に、キュービクル2に異常が発生した旨の情報を出力装置3に送信することで、キュービクル2の異常を出力装置3から出力させる。出力装置3を管理者が監視している場合、キュービクル2の異常内容に応じて、保守、点検、調査等の必要な対応を管理者が出力装置3又はその他の装置を通じて行うことができる。
【0071】
以上のように、本実施形態では、電気設備の監視要素を検出可能なセンサ23と、異常パターン5a~5jを記憶する記憶部212と、電気設備の情報を出力可能な出力装置3(出力部)と、センサ23が検出した監視要素を異常パターン5a~5jと照合し、監視要素に異常パターン5a~5jが含まれている場合に、電気設備の異常を出力装置3から出力させる制御部211と、を備える構成について説明した。このような構成により、異常判定を、柔軟な判定基準により行うことができるため、多様な故障モードを検出可能な電気設備点検システム1、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラムを構成することができる。
【0072】
また、本実施形態の電気設備点検システム1は、キュービクル2を複数備えた場合であっても、キュービクル2に備えられているセンサ23から警報が発せられた場合、どのキュービクル2から何の種類の警報が発せられたのか(どんな問題が生じたのか)を特定することができるため、遠隔によりキュービクル2の監視および管理を容易に行うことができる。
【0073】
従来は、人が行う点検等において異常や予兆を発見することが容易ではない場合があり、点検品質や判定精度にバラつきが比較的あったが、本実施形態の電気設備点検システム1は、異常や事故に至る予兆を容易に把握することができる。また、本実施形態の電気設備点検システム1は、点検頻度の延伸化を行い、一人が点検可能なキュービクル2の件数を増加させることもできるため、人手不足を解消することもできる。
【0074】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、本実施形態では、電気設備の情報を出力可能な出力部は、キュービクル2とネットワーク4を介して接続された別体に設けられた出力装置3である例に説明したが、キュービクル2と一体に設けた構成としたり、携帯端末に構成してもよい。
【0076】
また、本実施形態の電気設備点検システム1では、ゲートウェイ21をキュービクル2内に設けた例について説明したが、ゲートウェイ21はキュービクル2外に設けてもよい。また、監視要素を異常パターン5a~5jと照合する電気設備点検装置として、ゲートウェイ21を用いた例について説明したが、電気設備点検装置は、キュービクル2を含むLAN側又は外部のWAN側に設けてもよいし、オンプレミスサーバ、クラウドサーバ又は図1に示した出力装置3に設けてもよい。
【0077】
また、本実施形態では、図2に示したように、ゲートウェイ21が各センサ23とは別構成である例について説明したが、いずれかのセンサ23内にゲートウェイ21の機能を含む構成としてもよい。例えば、低圧絶縁センサ23gがゲートウェイ21を備え、その他のセンサ23が低圧絶縁センサ23g内のゲートウェイ21を介することにより、制御部211は、各センサ23の情報や異常判定結果を外部装置に送信することができる。
【0078】
また、本実施形態では、電気設備として閉鎖型受電設備であるキュービクル2を適用した例について説明したが、電気設備としては開放型受電設備や受電機能等を有するその他の設備を適用してもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 電気設備点検システム
2 キュービクル
3 出力装置
4 ネットワーク
5a 突発型の異常パターン
5b 関数型の異常パターン
5c 周期型の異常パターン
5d ランダム型の異常パターン
5e 正規分布型の異常パターン
5f バスタブ初期型の異常パターン
5g バスタブ後期型の異常パターン
5h 機械故障型の異常パターン
5i 飽和型の異常パターン
5j 一次関数型の異常パターン
6 外部機器
21 ゲートウェイ
22 制御部
23 センサ
23a 高圧絶縁センサ
23b 高圧絶縁センサ
23c カメラ
23d 温度センサ
23e ガスセンサ
23f マルチメータ
23g 低圧絶縁センサ
23h 粉塵センサ
23i 振動センサ
23j 水位センサ
23k 湿度センサ
23l トラッキングセンサ
23m 過熱感知センサ
23n 漏液センサ
23o 油量センサ
23p 接地線外れセンサ
23q 結露センサ
211 制御部
212 記憶部
213 通信部
241 点検・測定項目
242 監視対象
243 異常パターンの種類
【要約】
【課題】多様な故障モードを検出可能な電気設備点検システム、電気設備点検装置、電気設備点検方法及び電気設備点検プログラムを提供すること。
【解決手段】電気設備点検システム1は、電気設備の監視要素を検出可能なセンサと、異常パターンを記憶する記憶部と、センサが検出した監視要素を異常パターンと照合し、監視要素に前常パターンが含まれている場合に、電気設備に異常があると判定する制御部と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6