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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】封止構造体およびガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
F16J15/12 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021520720
(86)(22)【出願日】2020-05-12
(86)【国際出願番号】 JP2020018935
(87)【国際公開番号】W WO2020235390
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2019095506
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】柳 得徳
(72)【発明者】
【氏名】丹治 功
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2003/085293(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014017575(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面を有する第1筐体と、
第2端面を有する第2筐体と、
前記第1端面と前記第2端面との間に設置されガスケット
を具備する封止構造体であって、
前記ガスケットは、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部とを含み、
前記第1間隙は、前記第1端面と前記第2端面との間に位置する空間であり、
前記第1連結部は、前記第1環状部および前記第2環状部よりも薄い
封止構造体
【請求項2】
第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部と
を具備し、
前記第1連結部は、前記第1環状部および前記第2環状部よりも薄く、
前記第1環状部および前記第2環状部の各々は、金属で形成された板状の基体部と前記基体部を部分的に被覆する弾性層とを含む部分であり、
前記第1連結部は、前記基体部を含み、前記弾性層を含まない部分である
ガスケット。
【請求項3】
第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第2環状部との間に第2間隙をあけて当該第2環状部の内側に位置する環状の第3環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部と
前記第2間隙の一部において前記第2環状部と前記第3環状部とを連結する第2連結部とを具備し、
前記第1連結部と前記第2連結部とは、周方向における位置が同じである
ガスケット。
【請求項4】
前記第1間隙の幅と前記第2間隙の幅とは相違する
請求項のガスケット。
【請求項5】
前記第2間隙の幅は、前記第1間隙の幅よりも広い
請求項のガスケット。
【請求項6】
第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部と
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第3連結部とを具備し、
前記第1連結部と前記第3連結部との間の空間は、前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する締結具が挿入される貫通孔である
ガスケット。
【請求項7】
前記第1連結部および前記第3連結部は、平面視において前記締結具の座面における外周縁の内側に位置する
請求項のガスケット。
【請求項8】
第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部とを具備し、
前記第1環状部および前記第2環状部の少なくとも一方における内周面には、当該内周面を被覆する親水膜が形成される
ガスケット。
【請求項9】
前記第1環状部および前記第2環状部の少なくとも一方における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する突起部が形成される
請求項から請求項の何れかのガスケット。
【請求項10】
前記第1環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第1突起部が当該第1環状部の形状に沿って形成され、
前記第2環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第2突起部が当該第2環状部の形状に沿って形成される
請求項から請求項の何れかのガスケット。
【請求項11】
第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、
環状の第1環状部と、
前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、
前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部とを具備し、
前記第1環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第1突起部が当該第1環状部の形状に沿って形成され、
前記第2環状部における前記第2筐体との対向面には、前記第2筐体に向けて突出する第2突起部が当該第2環状部の形状に沿って形成される
ガスケット。
【請求項12】
前記第1連結部は、前記第1環状部および前記第2環状部と同じ厚さである
請求項3から請求項11の何れかのガスケット。
【請求項13】
前記第1環状部と前記第2環状部と前記第1連結部とは、金属で形成された板状の基体部と、前記基体部を被覆する弾性層とを含む
請求項12のガスケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止構造体およびガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の筐体の間に設置される各種のガスケットが従来から提案されている。例えば特許文献1には、内周縁に沿って一方の筐体側に突起するビード部が形成されたガスケットが開示されている。また、特許文献2には、外周縁に沿って下方に傾斜する曲げ加工部が形成されたガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-36607号公報
【文献】特開2013-61002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
筐体におけるガスケットとの接触面に腐食が発生した場合、筐体とガスケットとの間(すなわちシール面)に微細な隙間が腐食により形成され、結果的にシール性が低下する。したがって、筐体のシール面において腐食が発生した箇所とガスケットとの間に筐体の外部から液体が浸入し、筐体の内部に進行する可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、筐体の内側に向かう液体の進行を抑制することでシール性を延命することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明のひとつの態様(第1態様)に係るガスケットは、第1筐体と第2筐体との間に設置されるガスケットであって、環状の第1環状部と、前記第1環状部との間に第1間隙をあけて当該第1環状部の内側に位置する環状の第2環状部と、前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第1連結部とを具備する。以上の態様では、第1環状部と第2環状部との間に、周方向に延在する第1間隙が形成される。筐体の外部から筐体と第1環状部との間に浸入した液体は、第1環状部と第2環状部との間の第1間隙に到達すると、当該第1間隙に沿って周方向に進行する。すなわち、径方向に沿う液体の進行が抑制される。したがって、第1間隙が形成されない構成と比較して、筐体の内部に対する液体の浸入を抑制できる。すなわち、筐体のシール面の腐食に対してシール性を延命すること(長時間にわたりシール性を維持すること)ができる。
【0006】
なお、「環状(loop-shaped)」は、空間を包囲するようにループする直線または曲線により構成される形状を意味する。「環状部(「ループ部」とも表現される)」の平面的な形状は任意である。例えば第1環状部および第2環状部の各々の平面形状は、円形状および多角形状(例えば矩形状)の何れでもよい。
【0007】
また、第1態様においては、第1環状部および第2環状部を特定したが、第1環状部および第2環状部以外の環状部を具備する構成も、第1態様の範囲には当然に包含される。すなわち、第1環状部および第2環状部は、ガスケットが具備する複数の環状部のうち径方向に隣合う2個の環状部を意味する。ガスケットを構成する環状部の個数は任意である。第1環状部は、複数の環状部のうち最も外側に位置する環状部には限定されないし、第2環状部は、複数の環状部のうち最も内側に位置する環状部には限定されない。
【0008】
第1態様の好適例(第2態様)において、前記第1連結部は、前記第1環状部および前記第2環状部よりも薄い。以上の構成では、第1環状部または第2環状部の表面と第1連結部の表面との間の段差により凹部が形成される。すなわち、第1筐体と第2筐体との間にガスケットが設置された状態では、第1間隙は凹部を介して周方向に連続する。以上の構成では、第1間隙のうち周方向において第1連結部の一方側に位置する部分と他方側に位置する部分との間で液体が流通する。すなわち、液体が滞留する充分な容積が第1間隙に確保される。したがって、第1連結部が第1環状部および第2環状部と同等の厚さである構成と比較して、筐体の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。なお、第1連結部、第1環状部および第2環状部の厚さは、ガスケットの中心軸に並行な方向における寸法である。
【0009】
第2態様の好適例(第3態様)に係るガスケットは、金属で形成された板状の基体部と、前記基体部を部分的に被覆する弾性層とを具備し、前記第1環状部および前記第2環状部の各々は、前記基体部と前記弾性層とを含む部分であり、前記第1連結部は、前記基体部を含み、前記弾性層を含まない部分である。以上の構成では、弾性層が弾性的に変形した状態で筐体に接触することでシール性を向上させることが可能である。また、基体部において第1連結部に対応する部分に弾性層を形成しない簡便な構成により、第1連結部に対応する凹部が形成されるという利点もある。
【0010】
第1態様の好適例(第4態様)において、前記第1連結部は、前記第1環状部および前記第2環状部と同じ厚さである。以上の構成では、第1連結部が第1環状部および第2環状部と同じ厚さであるから、第1連結部が第1環状部および第2環状部よりも薄い構成と比較して製造コストが低減される。
【0011】
第4態様の好適例(第5態様)において、前記第1環状部と前記第2環状部と前記第1連結部とは、金属で形成された板状の基体部と、前記基体部を被覆する弾性層とを含む。以上の構成では、第1環状部と第2環状部とに加えて第1連結部も基体部と弾性層との積層で構成される。すなわち、第1環状部および第2環状部と第1連結部との間で断面構造が共通する。したがって、第1環状部および第2環状部と第1連結部とで断面構造が相違する構成と比較して、製造コストが削減されるという利点がある。
【0012】
第1態様から第5態様の何れかの好適例(第6態様)に係るガスケットは、前記第2環状部との間に第2間隙をあけて当該第2環状部の内側に位置する環状の第3環状部と、前記第2間隙の一部において前記第2環状部と前記第3環状部とを連結する第2連結部とを具備する。以上の構成においては、以上の態様では、第1環状部と第3環状部との間に、周方向に延在する第1間隙と第2間隙とが形成される。したがって、筐体の内部に対する液体の浸入を抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0013】
第6態様の好適例(第7態様)において、前記第1連結部と前記第2連結部とは、周方向における位置が同じである。また、第6態様の他の好適例(第8態様)において、周方向における前記第1連結部の位置と周方向における前記第2連結部の位置とは相違する。以上の態様では、第1連結部と第2連結部とで周方向の位置が異なるから、第1連結部に沿って進行した液体がさらに第2連結部に到達するまでに周方向に移動する必要がある。すなわち、第1連結部と第2連結部とで周方向の位置が同じである構成と比較して、第3環状部の内側に液体が到達するまで長時間が必要である。したがって、筐体の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。なお、第1連結部が第1環状部および第2環状部と同じ厚さである構成において、第1連結部と第2連結部とで周方向の位置が同じである場合、筐体の外部から浸入した液体が第1連結部と第2連結部とにわたり連続して径方向に進行し易い。したがって、第8態様は、第1連結部が第1環状部および第2環状部と同じ厚さである構成において特に有効である。
【0014】
第6態様から第8態様の何れかの好適例(第9態様)において、前記第1間隙の幅と前記第2間隙の幅とは相違する。具体的な態様(第10態様)において、前記第2間隙の幅は、前記第1間隙の幅よりも広い。以上の態様によれば、第1間隙および第2間隙のうち幅広の間隙に液体が浸入し始めてから当該間隙の内部に液体が充填されるまでの時間が充分に確保される。したがって、筐体の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0015】
第1態様から第10態様の何れかの好適例(第11態様)において、前記第1環状部には、前記第1筐体と第2筐体とを連結する締結具が挿入される貫通孔が形成され、前記第1連結部は、前記貫通孔の近傍に形成される。締結具の近傍では、第1筐体と第2筐体とが締結具により締結されることでガスケットが充分に圧縮される。すなわち、ガスケットのうち貫通孔の近傍では、他の部分と比較して液体が浸入し難いという傾向がある。他方、筐体とガスケットとの間に浸入した液体は、第1連結部に沿って径方向に進行する可能性がある。したがって、貫通孔の近傍に第1連結部を設置した構成によれば、第1連結部を介した液体の浸入を効果的に抑制することが可能である。
【0016】
第1態様から第10態様の何れかの好適例(第12態様)に係るガスケットは、前記第1間隙の一部において前記第1環状部と前記第2環状部とを連結する第3連結部とを具備し、前記第1連結部と前記第3連結部との間の空間は、前記第1筐体と前記第2筐体とを連結する締結具が挿入される貫通孔である。ガスケットのうち貫通孔の近傍では、他の部分と比較して液体が浸入し難いという傾向がある。したがって、第11態様によれば、第1連結部および第3連結部の近傍から液体が筐体の内部に浸入する可能性が低減される。さらに好適な態様(第13態様)において、前記第1連結部および前記第3連結部は、平面視において前記締結具の座面における外周縁の内側に位置する。以上の態様によれば、第1連結部および第3連結部の近傍からの液体の浸入を抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0017】
第1態様から第13態様の何れかの好適例(第14態様)において、前記第1環状部および前記第2環状部の少なくとも一方における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する突起部が形成される。以上の態様では、第1環状部および第2環状部の少なくとも一方における突起部が第1筐体に接触するから、第1筐体とガスケットとの間からの液体の浸入を抑制することが可能である。
【0018】
第1態様から第13態様の何れかの好適例(第15態様)において、前記第1環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第1突起部が当該第1環状部の形状に沿って形成され、前記第2環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第2突起部が当該第2環状部の形状に沿って形成される。以上の態様によれば、第1突起部および第2突起部が第1筐体に接触するから、第1筐体とガスケットとの間からの液体の浸入を抑制することが可能である。
【0019】
第1態様から第13態様の何れかの好適例(第16態様)において、前記第1環状部における前記第1筐体との対向面には、前記第1筐体に向けて突出する第1突起部が当該第1環状部の形状に沿って形成され、前記第2環状部における前記第2筐体との対向面には、前記第2筐体に向けて突出する第2突起部が当該第2環状部の形状に沿って形成される。以上の態様によれば、第1筐体または第2筐体とガスケットとの間からの液体の浸入を抑制することが可能である。また、第1突起部と第2突起部とが逆方向に突出するから、ガスケットの反りを低減できるという効果もある。
【0020】
第1態様から第16態様の何れかの好適例(第17態様)において、前記第1環状部および前記第2環状部の少なくとも一方における内周面には、当該内周面を被覆する親水膜が形成される。以上の態様によれば、第1間隙内に到達した液体が第1環状部の内周面に沿って進行することが親水膜により促進されるから、筐体の内部に対する液体の進行を遅延させることが可能である。
【0021】
本発明の好適な態様(第18態様)に係るガスケットは、第1筐体と第2筐体との間に設置される環状のガスケットであって、前記第1筐体または前記第2筐体に向けて突出する突起部が当該ガスケットの内周縁に沿って環状に形成され、前記突起部と当該ガスケットの外周縁との間には、当該外周縁に沿う間隙が形成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明のひとつの態様によれば、筐体の内側に向かう液体の進行を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る封止構造体の構成を例示する断面図である。
図2】第1実施形態におけるガスケットの平面図である。
図3】筐体の内部に液体が進行する様子の説明図である。
図4図2におけるa-a線の断面図である。
図5図2におけるb-b線の断面図である。
図6】第2実施形態におけるガスケットの平面図である。
図7図6におけるc-c線の断面図である。
図8図6におけるd-d線の断面図である。
図9】第3実施形態におけるガスケットの平面図である。
図10】第4実施形態におけるガスケットの平面図である。
図11】第5実施形態におけるガスケットの平面図である。
図12図11におけるe-e線の断面図である。
図13】第6実施形態におけるガスケットの平面図である。
図14】第6実施形態の変形例におけるガスケットの平面図である。
図15】第6実施形態の変形例におけるガスケットの平面図である。
図16】第7実施形態におけるガスケットの平面図である。
図17図16におけるf-f線の断面図である。
図18図16におけるg-g線の断面図である。
図19】使用状態におけるガスケットの断面図である。
図20】第8実施形態におけるガスケットの断面図である。
図21】使用状態におけるガスケットの断面図である。
図22】第9実施形態におけるガスケットの断面図である。
図23】使用状態におけるガスケットの断面図である。
図24】第10実施形態におけるガスケットの断面図である。
図25】使用状態におけるガスケットの断面図である。
図26】第11実施形態におけるガスケットの平面図である。
図27】第12実施形態におけるガスケットの部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る封止構造体100の構成を例示する断面図である。第1実施形態の封止構造体100は、自動車等の車輌の内部に設置され、当該車輌の動作を制御するための各種の電気部品を収容する。図1に例示される通り、第1実施形態の封止構造体100は、第1筐体10aと第2筐体10bと複数の締結具12とガスケット20とを具備する。
【0025】
第1筐体10aは、端面E1が開口する中空の構造体である。同様に、第2筐体10bは、端面E2が開口する中空の構造体である。第1筐体10aおよび第2筐体10bは、例えばアルミニウムまたは鉄等の金属を含む合金で形成される。第1筐体10aと第2筐体10bとは、複数の締結具12(例えばボルト)により相互に固定される。
【0026】
ガスケット20は、第1筐体10aと第2筐体10bとの間に設置される環状のシール部材である。具体的には、第1筐体10aの端面E1と第2筐体10bの端面E2との間にガスケット20が挟持される。すなわち、ガスケット20における第1筐体10a側の表面は端面E1に接触し、第2筐体10b側の表面は端面E2に接触する。以上の構成により、ガスケット20は、第1筐体10aの端面E1と第2筐体10bの端面E2との間を封止する。第1筐体10aの内部空間と第2筐体10bの内部空間とは、ガスケット20の開口を介して相互に連通する。
【0027】
図2は、ガスケット20の平面図である。図2に例示される通り、ガスケット20は、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と複数の第1連結部C1と複数の第2連結部C2とを具備する。なお、以下の説明では、ガスケット20の中心軸Oに垂直な平面内において当該中心軸Oを中心とする任意の半径の円における半径の方向を「径方向」と表記し、当該円における円周の方向を「周方向」と表記する。また、ガスケット20の中心軸Oに平行な方向から観察することを、以下では「平面視」と表記する。
【0028】
第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3との各々は、平面視で円形に形成された環状の部分である。第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3との間で厚さ(すなわち中心軸Oの方向における寸法)は同一である。また、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3との間で幅(すなわち径方向における寸法)は同一である。なお、所期のシール性が維持される限度内において、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3との間で厚さまたは幅を相違させてもよい。
【0029】
図2から理解される通り、第2環状部P2の外径は第1環状部P1の内径を下回り、第3環状部P3の外径は第2環状部P2の内径を下回る。第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3とは、同一面内において同心に位置する。したがって、第2環状部P2は第1環状部P1の内側に位置し、第3環状部P3は第2環状部P2の内側に位置する。第2環状部P2が第3環状部P3を包囲し、第1環状部P1が第2環状部P2を包囲すると換言してもよい。
【0030】
第1環状部P1と第2環状部P2との間には第1間隙D1が形成される。すなわち、第1環状部P1の内周面と第2環状部P2の外周面とは第1間隙D1をあけて対向する。第1間隙D1は、周方向に延在する空間(スリット)である。同様に、第2環状部P2と第3環状部P3との間には第2間隙D2が形成される。すなわち、第2環状部P2の内周面と第3環状部P3の外周面とは第2間隙D2をあけて対向する。第2間隙D2は、周方向に延在する空間である。第1実施形態においては、第1間隙D1の幅W1と第2間隙D2の幅W2とが相等しい(W1=W2)。例えば、第1間隙D1の幅W1および第2間隙D2の幅W2の各々は、例えば0.1mm以上かつ10mm以下の範囲内の適切な数値である。なお、幅W1は、径方向における第1間隙D1の寸法であり、幅W2は、径方向における第2間隙D2の寸法である。
【0031】
複数(例えば2個)の第1連結部C1の各々は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結する。具体的には、各第1連結部C1は、第1環状部P1の内周面と第2環状部P2の外周面とにわたり径方向に延在する。2個の第1連結部C1は、ガスケット20の中心軸Oに対して相互に反対側に位置する。複数(例えば2個)の第2連結部C2の各々は、第2間隙D2の一部において第2環状部P2と第3環状部P3とを連結する。具体的には、各第2連結部C2は、第2環状部P2の内周面と第3環状部P3の外周面とにわたり径方向に延在する。2個の第2連結部C2は、ガスケット20の中心軸Oに対して相互に反対側に位置する。
【0032】
図2に例示される通り、1個の第1連結部C1と1個の第2連結部C2とは、周方向における位置が同じである。ガスケット20の形状に沿う方向における位置が第1連結部C1と第2連結部C2とで同じであると換言してもよい。具体的には、各第1連結部C1および各第2連結部C2の双方が、ガスケット20の中心軸Oに直交する直線Lの線上に位置する。すなわち、第1連結部C1は、平面視で第2連結部C2と第1環状部P1との間に位置する。なお、第1連結部C1と第2連結部C2とを周方向の異なる位置に設置してもよい。
【0033】
封止構造体100の外装面に付着した液体が第1筐体10aと第2筐体10bとの間から当該封止構造体100の内部に浸入する可能性が想定される。例えば、封止構造体100が海浜地帯で使用される場合には、封止構造体100に塩水が付着する可能性がある。また、封止構造体100が寒冷地帯で使用される場合には、融雪剤(例えば塩化カルシウム)の水溶液が封止構造体100に付着する可能性がある。図3は、封止構造体100の内部に液体が浸入する様子の説明図である。筐体10(第1筐体10aまたは第2筐体10b)の端面E(端面E1または端面E2)にガスケット20が密着するから、基本的には封止構造体100の内部空間に液体は浸入しない。しかし、塩水等の液体の付着に起因した腐食により端面Eに微細な凹凸が形成された状態では、ガスケット20のシール性が低下するから、図3に矢印A1で図示される通り、封止構造体100の外部から筐体10の端面Eとガスケット20の第1環状部P1との間に液体が浸入する可能性がある。
【0034】
端面Eと第1環状部P1との間に浸入した液体は、第1間隙D1内に到達すると、図3に矢印A2で図示される通り、当該液体の濡れ性により、第1間隙D1(第1環状部P1の内周面と端面Eとの交差線)に沿って周方向に進行する。すなわち、液体が径方向の内側に進行することが抑制される。したがって、第1間隙D1が形成されない構成と比較して、筐体10の内側に向かう液体の進行を抑制することが可能である。以上の通り、第1実施形態によれば、筐体10の内部に対する液体の進行が遅延されるから、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。すなわち、第1間隙D1が形成されない構成と比較して、筐体10のシール面(すなわち端面E1および端面E2)の腐食に対してガスケット20のシール性を延命することが可能である。
【0035】
なお、第1間隙D1の内部に液体が充分に充填されると、図3に矢印A3で図示される通り、今度は筐体10の端面Eとガスケット20の第2環状部P2との間に液体が浸入する可能性がある。端面Eと第2環状部P2との間に浸入した液体は、第2間隙D2内に到達すると、図3に矢印A4で図示される通り、当該液体の濡れ性により、第2間隙D2(第2環状部P2の内周面と端面Eとの交差線)に沿って周方向に進行する。すなわち、液体が径方向の内側に進行することが抑制される。したがって、第2間隙D2が形成されない構成と比較して、筐体10の内側に向かう液体の進行を抑制することが可能である。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、液体が周方向に進行する状態と径方向の内側に進行する状態とが複数回にわたり反復されるから、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという前述の効果は格別に顕著である。
【0036】
以上に例示したガスケット20の断面構造について説明する。図4は、図2におけるa-a線の断面図であり、図5は、図2におけるb-b線の断面図である。図4および図5に例示される通り、第1実施形態のガスケット20は、断面視において基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23とを具備する。なお、以下の説明では、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3との各々を特に区別する必要がない場合には包括的に「環状部P」と表記する。同様に、第1連結部C1と第2連結部C2とを特に区別する必要がない場合には包括的に「連結部C」と表記する。
【0037】
基体部21は、第1面F1と第2面F2とを含む板状の硬質材であり、例えば金属で形成される。第1面F1と第2面F2とは、中心軸Oの方向において相互に反対側の表面である。基体部21は、例えばステンレス板,冷延鋼板,亜鉛めっき鋼板、またはアルミニウム合板で形成される。
【0038】
第1弾性層22は、基体部21の第1面F1を部分的に被覆する弾性膜である。同様に、第2弾性層23は、基体部21の第2面F2を部分的に被覆する弾性膜である。例えばリン酸鉛被膜処理等の下地処理が実行された第1面F1に対して第1弾性層22が接着剤により接合される。同様に、リン酸鉛被膜処理等の下地処理が実行された第2面F2に対して第2弾性層23が接着剤により接合される。第1弾性層22の表面が第1筐体10aの端面E1に密着し、第2弾性層23の表面が第2筐体10bの端面E2に密着する。第1弾性層22および第2弾性層23は「弾性層」の一例である。
【0039】
第1弾性層22および第2弾性層23は、任意の弾性材料で形成される。具体的には、例えばニトリルゴム,スチレンブタジエンゴム,フッ素ゴム,アクリルゴムおよびシリコンゴムから選択された1種以上のゴム配合物を含有する合成ゴムシート(例えば発泡ゴム)が、第1弾性層22および第2弾性層23として好適に利用される。以上の構成によれば、第1筐体10aに対する第1弾性層22の接触と第2筐体10bに対する第2弾性層23の接触とにより、ガスケット20のシール機能を向上させることが可能である。
【0040】
図4および図5に例示される通り、各環状部P(P1,P2,P3)は、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層を含む部分である。他方、図5に例示される通り、各連結部C(C1,C2)は、基体部21を含む部分である。各連結部Cには、第1弾性層22および第2弾性層23は形成されない。すなわち、第1連結部C1においては、基体部21の第1面F1が第1弾性層22から露出し、基体部21の第2面F2が第2弾性層23から露出する。以上の説明から理解される通り、基体部21は、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と各第1連結部C1と各第2連結部C2とに対応する平面形状に形成される。他方、第1弾性層22および第2弾性層23は、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3とに対応する平面形状に形成される。すなわち、第1弾性層22および第2弾性層23は、第1連結部C1および第2連結部C2に対応する部分を含まない。以上の説明から理解される通り、各連結部Cは各環状部Pよりも薄い。すなわち、各環状部Pの厚さは、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との厚さの合計であるのに対し、各連結部Cの厚さは、基体部21の単独の厚さに相当する。
【0041】
以上に例示した構成のガスケット20は、各環状部Pと各連結部Cとに対応する平面形状に成形された基体部21の表面に、各環状部Pに対応する平面形状の第1弾性層22および第2弾性層23を接合することで製造される。すなわち、第1実施形態では、成形後の基体部21の表面が弾性材料(第1弾性層22および第2弾性層23)により被覆される。
【0042】
図5に例示される通り、第1連結部C1または第2連結部C2における基体部21の第1面F1と第1弾性層22の表面との段差に相当する第1凹部R1が形成される。同様に、第1連結部C1または第2連結部C2における基体部21の第2面F2と第2弾性層23の表面との段差に相当する第2凹部R2が形成される。したがって、第1筐体10aと第2筐体10bとの間にガスケット20が設置された状態において、第1間隙D1は、第1連結部C1に対応する第1凹部R1および第2凹部R2を介してガスケット20の全周にわたり連続する。同様に、第1筐体10aと第2筐体10bとの間にガスケット20が設置された状態において、第2間隙D2は、第2連結部C2に対応する第1凹部R1および第2凹部R2を介してガスケット20の全周にわたり連続する。第1実施形態においては、第1連結部C1に第1弾性層22および第2弾性層23を形成しない簡便な構成により、第1凹部R1および第2凹部R2を形成できる。
【0043】
以上の構成では、図3の矢印A1のように第1間隙D1内に到達した液体は、第1間隙D1のうち周方向において第1連結部C1の一方側に位置する部分と他方側に位置する部分との間で第1凹部R1を介して流通する。同様に、図3の矢印A3のように第2間隙D2内に到達した液体は、第2間隙D2のうち周方向において第2連結部C2の一方側に位置する部分と他方側に位置する部分との間で第2凹部R2を介して流通する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態によれば、第1凹部R1および第2凹部R2が形成されない構成と比較して、液体が滞留する充分な容積が第1間隙D1および第2間隙D2に確保される。したがって、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという前述の効果は格別に顕著である。
【0044】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各形態において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0045】
図6は、第2実施形態におけるガスケット20の平面図である。図6に例示される通り、第2実施形態のガスケット20は、第1実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と複数の第1連結部C1と複数の第2連結部C2とを具備する。各要素の相互的な関係は第1実施形態と同様である。すなわち、第2環状部P2は第1間隙D1をあけて第1環状部P1の内側に位置し、第3環状部P3は第2間隙D2をあけて第2環状部P2の内側に位置する。また、各第1連結部C1は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結し、各第2連結部C2は、第2間隙D2の一部において第2環状部P2と第3環状部P3とを連結する。以上の通り、第2実施形態においても第1間隙D1および第2間隙D2により液体の進行が遅延されるから、第1実施形態と同様に、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を抑制できるという利点がある。
【0046】
第1実施形態では、第1連結部C1と第2連結部C2とについて周方向の位置が同じである構成を例示した。第2実施形態では、図6に例示される通り、第1連結部C1と第2連結部C2とについて周方向の位置(またはガスケット20の形状に沿う方向における位置)が異なる。具体的には、各第1連結部C1は、ガスケット20の中心軸Oに直交する直線L1の線上に位置し、各第2連結部C2は、ガスケット20の中心軸Oに直交する直線L2の線上に位置する。直線L1と直線L2とは相互に交差(例えば直交)する。すなわち、第1連結部C1は直線L2上には位置せず、第2連結部C2は直線L2上には位置しない。第2連結部C2と第1環状部P1との間には第1連結部C1が位置しないと換言してもよい。
【0047】
図7は、図6におけるc-c線の断面図であり、図8は、図6におけるd-d線の断面図である。図7および図8に例示される通り、第2実施形態では、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3とに加えて、第1連結部C1および第2連結部C2も、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。すなわち、各連結部Cの断面構造は各環状部Pの断面構造と共通する。したがって、各連結部Cは各環状部Pと同じ厚さである。以上の通り、第2実施形態では、各環状部Pと各連結部Cとで構造が共通するから、連結部Cと環状部Pとで構造が相違する構成(例えば第1実施形態)と比較して、製造コストが削減されるという利点がある。
【0048】
第2実施形態のガスケット20は、第1面F1および第2面F2の双方が全域にわたり弾性膜で被覆された板状部材を、例えばプレス加工により部分的に打抜く(すなわちガスケット20を構成する部分以外の領域を除去する)ことで製造される。すなわち、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23とが一括的に成形される。第1実施形態では、基体部21の成形後に第1弾性層22および第2弾性層23が設置されるのに対し、第2実施形態では、第1弾性層22および第2弾性層23となる弾性膜の形成後に基体部21が成形される。
【0049】
ところで、連結部Cが環状部Pと同じ厚さである構成において、第1連結部C1と第2連結部C2とで周方向の位置が同じである場合、封止構造体100の外部から浸入した液体が第1連結部C1と第2環状部P2と第2連結部C2とにわたり連続して径方向の内側に進行し易い。第2実施形態では、連結部Cと環状部Pとが同じ厚さであるが、第1連結部C1と第2連結部C2とで周方向の位置が相違する。したがって、第1連結部C1に沿って径方向に進行した液体が第2連結部C2に到達するまでには、周方向に流動する必要がある。すなわち、第2実施形態では、第1連結部C1と第2連結部C2とで周方向の位置が共通する構成と比較して、筐体10の内部に液体が到達するまでに長時間が必要である。したがって、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0050】
[第3実施形態]
図9は、第3実施形態におけるガスケット20の平面図である。図9に例示される通り、第3実施形態のガスケット20は、第1実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と複数の第1連結部C1と複数の第2連結部C2とを具備する。第1実施形態における各環状部Pの平面形状が円形の環状であるのに対し、第3実施形態における各環状部Pの平面形状は矩形(例えば正方形)の環状である。第2環状部P2は第1間隙D1をあけて第1環状部P1の内側に位置し、第3環状部P3は第2間隙D2をあけて第2環状部P2の内側に位置する。第1間隙D1の幅W1と第2間隙D2の幅W2とは相等しい。
【0051】
また、各第1連結部C1は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結し、各第2連結部C2は、第2間隙D2の一部において第2環状部P2と第3環状部P3とを連結する。第1実施形態と同様に、第1連結部C1と第2連結部C2とは、周方向における位置が同じである。ガスケット20の形状に沿う方向における位置が第1連結部C1と第2連結部C2とで同じであると換言してもよい。以上の通り、第3実施形態においても第1間隙D1および第2間隙D2により液体の進行が遅延されるから、第1実施形態と同様に、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を抑制できる。
【0052】
また、第3実施形態においては第1実施形態と同様に、各環状部Pが基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成され、各連結部Cが基体部21により構成される。すなわち、各連結部Cは、第1弾性層22および第2弾性層23を含まない。したがって、各連結部Cは各環状部Pよりも薄い。
【0053】
図9に例示される通り、第3実施形態の第1環状部P1には複数の貫通孔Hが形成される。各貫通孔Hは、第1筐体10aと第2筐体10bとを相互に固定するための締結具12が挿入される円形の開口である。具体的には8個の貫通孔Hが等間隔に形成される。図9においては複数の貫通孔Hから選択された2個の貫通孔Hに符号H1が付加されている。
【0054】
第1連結部C1および第2連結部C2は、貫通孔Hの近傍に形成される。具体的には、第1間隙D1内において1個の貫通孔H1に最も近い地点を含むように第1連結部C1が形成される。第1間隙D1内において貫通孔H1と中心軸Oとの間に第1連結部C1が形成されると換言してもよい。同様に、第2間隙D2内において1個の貫通孔H1に最も近い地点を含むように第2連結部C2が形成される。第2間隙D2内において貫通孔H1と中心軸Oとの間に第2連結部C2が形成されると換言してもよい。
【0055】
締結具12の近傍では、第1筐体10aと第2筐体10bとが締結具12により強固に締結されることでガスケット20が充分に圧縮される。したがって、ガスケット20のうち貫通孔Hの近傍では、他の部分と比較して液体が浸入し難く、結果的に筐体10の腐食が抑制されるという傾向がある。第3実施形態では、第1連結部C1および第2連結部C2が貫通孔Hの近傍に形成されるから、第1連結部C1または第2連結部C2を介して液体が筐体10の内側に進行する可能性が低減される。したがって、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0056】
[第4実施形態]
図10は、第4実施形態におけるガスケット20の平面図である。図10に例示される通り、第4実施形態のガスケット20は、第1実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と複数の第1連結部C1と複数の第2連結部C2とを具備する。各環状部Pの平面形状は、第3実施形態と同様に矩形(例えば正方形)の環状である。第2環状部P2は第1間隙D1をあけて第1環状部P1の内側に位置し、第3環状部P3は第2間隙D2をあけて第2環状部P2の内側に位置する。各第1連結部C1は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結し、各第2連結部C2は、第2間隙D2の一部において第2環状部P2と第3環状部P3とを連結する。以上の通り、第4実施形態においても第1間隙D1および第2間隙D2により液体の進行が遅延されるから、第1実施形態と同様に、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を抑制できる。
【0057】
また、第4実施形態における第1連結部C1と第2連結部C2とは、第2実施形態と同様に、周方向における位置(またはガスケット20の形状に沿う方向における位置)が異なる。また、第2実施形態と同様に、各環状部Pおよび各連結部Cの双方が、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。したがって、各連結部Cは各環状部Pと同じ厚さである。
【0058】
第3実施形態と同様に、第4実施形態の第1環状部P1には、複数の締結具12がそれぞれ挿入される複数の貫通孔Hが形成される。図10においては、複数の貫通孔Hから選択された2個の貫通孔Hに符号H1が付加され、貫通孔H1とは別個の2個の貫通孔Hに符号H2が付加されている。
【0059】
第3実施形態と同様に、第1連結部C1および第2連結部C2は、貫通孔Hの近傍に形成される。具体的には、第1間隙D1内において1個の貫通孔H1に最も近い地点を含むように第1連結部C1が形成される。第1間隙D1内において貫通孔H1と中心軸Oとの間に第1連結部C1が形成されると換言してもよい。同様に、第2間隙D2内において1個の貫通孔H2に最も近い地点を含むように第2連結部C2が形成される。第2間隙D2内において貫通孔H2と中心軸Oとの間に第2連結部C2が形成されると換言してもよい。
【0060】
第4実施形態のように各連結部Cが各環状部Pと同じ厚さである構成では、第1実施形態で説明した第1凹部R1および第2凹部R2が形成されない。したがって、封止構造体100の外部から侵入した液体は、第1連結部C1または第2連結部C2に沿って径方向の内側に進行する可能性がある。第4実施形態では、第1連結部C1および第2連結部C2が貫通孔Hの近傍に設置されることで液体の浸入が抑制されるから、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0061】
[第5実施形態]
図11は、第5実施形態におけるガスケット20の平面図である。図12は、図11におけるe-e線の断面図である。図11および図12に例示される通り、各環状部P(P1,P2,P3)には突起部25が形成される。突起部25は、図12から理解される通り、各環状部Pにおいて第1筐体10aの端面E1(または第2筐体10bの端面E2)に対向する表面から突出するフルビードである。突起部25は、平面視で周方向に延在する。具体的には、突起部25は、平面視でガスケット20の全周にわたる環状に形成される。突起部25が環状部Pに沿って延在すると換言してもよい。
【0062】
第5実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第5実施形態では、各環状部Pの突起部25が第1筐体10aの端面E1に密着するから、当該端面E1とガスケット20との間からの液体の浸入を抑制することが可能である。
【0063】
なお、図11においては、第1弾性層22および第2弾性層23が各連結部Cに形成されない第1実施形態に突起部25を追加した構成を例示したが、第1弾性層22および第2弾性層23が各連結部Cに形成される第2実施形態に、第5実施形態の突起部25を追加してもよい。また、第3実施形態または第4実施形態のように各環状部Pの平面形状が矩形の環状である構成に、第5実施形態の突起部25を形成してもよい。
【0064】
[第6実施形態]
図13は、第6実施形態におけるガスケット20の平面図である。第6実施形態のガスケット20は、第2実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3と複数の第1連結部C1と複数の第2連結部C2とを具備する。第2実施形態と同様に、周方向における第1連結部C1の位置と周方向における第2連結部C2の位置とは相違する。また、第2実施形態と同様に、各環状部Pおよび各連結部Cの双方が、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。
【0065】
図13に例示される通り、第6実施形態においては、第1間隙D1の幅W1と第2間隙D2の幅W2とが相違する(W1≠W2)。具体的には、内周側に位置する第2間隙D2の幅W2は、外周側に位置する第1間隙D1の幅W1よりも広い(W2>W1)。
【0066】
第6実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第6実施形態においては、第2間隙D2の幅W2が第1間隙D1の幅W1よりも広いから、液体が滞留する充分な容積が第2間隙D2に確保される。したがって、第2間隙D2に液体が浸入し始めてから当該第2間隙D2の内部に液体が充填されるまでの時間が充分に確保される。すなわち、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという前述の効果は格別に顕著である。
【0067】
なお、図14に例示される通り、周方向における第1連結部C1の位置と周方向における第2連結部C2の位置とが共通するガスケット20において、図13と同様に、第2間隙D2の幅W2が第1間隙D1の幅W1よりも広い構成を採用してもよい。また、図15に例示される通り、各環状部Pの平面形状が矩形の環状である第3実施形態または第4実施形態のガスケット20において、第2間隙D2の幅W2が第1間隙D1の幅W1よりも広い構成を採用してもよい。
【0068】
なお、以上の説明においては第2間隙D2の幅W2が第1間隙D1の幅W1よりも広い構成を例示したが、第1間隙D1の幅W1が第2間隙D2の幅W2よりも広い構成(W1>W2)も想定される。
【0069】
[第7実施形態]
図16は、第7実施形態におけるガスケット20の平面図である。第7実施形態のガスケット20は、第1環状部P1と第2環状部P2と複数の第1連結部C1と複数の第3連結部C3とを具備する。各環状部P(P1,P2)および各連結部C(C1,C3)の双方が、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。なお、以下の説明で参照する各断面図(図17から図25)においては、ガスケット20の積層構造の図示を便宜的に省略する。
【0070】
第1環状部P1および第2環状部P2の各々は、平面視で円形に形成された環状の部分である。第2環状部P2は、第1環状部P1との間に第1間隙D1をあけて当該第1環状部P1の内側に位置する。第1環状部P1の幅と第2環状部P2の幅とは相等しい。したがって、第1間隙D1は、ガスケット20の幅方向における中央に位置する。
【0071】
複数の第1連結部C1の各々は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結する。同様に、複数の第3連結部C3の各々は、第1間隙D1の一部において第1環状部P1と第2環状部P2とを連結する。周方向に間隔をあけて隣合う1個の第1連結部C1と1個の第3連結部C3との組は取付部30を構成する。図16から理解される通り、複数の取付部30が周方向に沿って等間隔に形成される。
【0072】
各取付部30を構成する第1連結部C1と第3連結部C3との間の空間は貫通孔Hである。貫通孔Hは、前述の通り、締結具12が挿入される円形の開口である。以上の説明から理解される通り、複数の貫通孔Hが周方向に沿って等間隔に形成される。各第1間隙D1は、周方向に相互に隣合う2個の取付部30の間において周方向に延在する。
【0073】
図17は、貫通孔Hに締結具12が挿入された状態における取付部30の近傍の断面図である。図17は、図16におけるf-f線の断面図に相当する。図16および図17に図示された円形の破線は、締結具12における座面Saの外周縁Sbである。図17には、ボルト12aと座金12bとが締結具12として例示されている。ボルト12aは貫通孔Hに挿入される。座金12b(ワッシャ)は、ボルト12aの頭部12cと第1筐体10aの表面との間に位置する環状の板状部材である。以上の構成においては、座金12bの外周縁Sbが、締結具12における座面Saの外周縁Sbに相当する。なお、座金12bが省略された構成では、ボルト12aの頭部12cにおける底面(すなわち座面)の外周縁が、座面Saの外周縁Sbに相当する。
【0074】
図16および図17から理解される通り、取付部30は、中心軸Oの方向からの平面視において、締結具12の座面Saにおける外周縁Sbの内側に位置する。具体的には、第1連結部C1および第3連結部C3は、平面視において、両者間の貫通孔Hに挿入される締結具12の外周縁Sbの内側に位置する。すなわち、第1連結部C1および第3連結部C3は、締結具12の座面Saに平面視で重なる。
【0075】
第3実施形態において前述した通り、締結具12の近傍においては、第1筐体10aと第2筐体10bとが締結具12により強固に締結されることでガスケット20が充分に圧縮される。したがって、ガスケット20のうち貫通孔Hの近傍では、他の部分と比較して液体が浸入し難く、結果的に筐体10の腐食が抑制されるという傾向がある。第7実施形態においては、第1連結部C1と第3連結部C3とで形成される貫通孔Hに締結具12が挿入されるから、取付部30の近傍から液体が筐体10の内側に進行する可能性が低減される。したがって、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという効果は格別に顕著である。第7実施形態においては特に、第1連結部C1および第3連結部C3が締結具12の座面Saにおける外周縁Sbの内側に位置するから、取付部30の近傍から液体が筐体10の内側に進行する可能性が低減されるという効果は格別に顕著である。
【0076】
図18は、図16におけるg-g線の断面図である。図18に例示される通り、第7実施形態のガスケット20は第1突起部25aと第2突起部25bとを具備する。図16には、第1突起部25aおよび第2突起部25bの各々の稜線が鎖線で図示されている。なお、以下の説明においては、図18に例示される通り、中心軸Oに沿う一方の方向を「X1方向」と表記し、他方の方向を「X2方向」と表記する。ガスケット20から見てX1方向に第1筐体10aが位置し、X2方向に第2筐体10bが位置する。
【0077】
第1突起部25aは、第1環状部P1に形成され、第1環状部P1の形状に沿って環状に延在するフルビードである。第7実施形態の第1突起部25aは、X1方向に突出する。具体的には、第1突起部25aは、第1環状部P1のうち第1筐体10aの端面E1に対向する表面から第1筐体10aに向けてX1方向に突出する。他方、第1環状部P1のうち第2筐体10bとの対向面には、第1突起部25aに対応する環状の溝部26a(凹部)が形成される。
【0078】
同様に、第2突起部25bは、第2環状部P2に形成され、第2環状部P2の形状に沿って環状に延在するフルビードである。第8実施形態の第2突起部25bは、X1方向に突出する。具体的には、第2突起部25bは、第2環状部P2のうち第1筐体10aの端面E1に対向する表面から第1筐体10aに向けてX1方向に突出する。他方、第2環状部P2のうち第2筐体10bとの対向面には、第2突起部25bに対応する環状の溝部26b(凹部)が形成される。
【0079】
以上の説明から理解される通り、第1間隙D1とガスケット20の外周縁との間に第1突起部25aが形成され、第1間隙D1とガスケット20の内周縁との間に第2突起部25bが形成される。第7実施形態における第1突起部25aと第2突起部25bとは、同方向(X1方向)に突出する。
【0080】
第7実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第7実施形態においては、第1突起部25aおよび第2突起部25bが第1筐体10aの端面E1に密着するから、当該端面E1とガスケット20との間からの液体の浸入を効果的に抑制できる。
【0081】
図19は、第1筐体10aと第2筐体10bとの間に挟持された状態(すなわち使用状態)にあるガスケット20の断面図である。図19に例示される通り、使用状態においては、ガスケット20と第1筐体10aの端面E1または第2筐体10bの端面E2との間に複数の環状の隙間Gが形成される。以上の構成においては、封止構造体100の外部から浸入した液体は、第1間隙D1に加えて隙間Gにも滞留する。したがって、第7実施形態によれば、ガスケット20が凹凸のない平坦な部材である構成と比較して、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0082】
[第8実施形態]
第8実施形態のガスケット20においては、図16に例示した第7実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と複数の第1連結部C1と複数の第3連結部C3とを具備する。各環状部P(P1,P2)および各連結部C(C1,C3)の双方が、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。締結具12の座面Saにおける外周縁Sbの内側に取付部30が位置する構成は、第7実施形態と同様である。
【0083】
図20は、第8実施形態におけるガスケット20の断面図である。第7実施形態において参照した図18に対応する断面が図20には図示されている。図20に例示される通り、第8実施形態においては、第7実施形態と同様に、第1環状部P1に環状の第1突起部25aが形成され、第2環状部P2に環状の第2突起部25bが形成される。
【0084】
第1突起部25aは、第7実施形態と同様に、X1方向に突出する環状のフルビードである。具体的には、第1突起部25aは、第1環状部P1のうち第1筐体10aの端面E1に対向する表面から第1筐体10aに向けてX1方向に突出する。第1環状部P1のうち第2筐体10bとの対向面には、第1突起部25aに対応する環状の溝部26aが形成される。
【0085】
他方、第2突起部25bは、X1方向とは反対のX2方向に突出する環状のフルビードである。具体的には、第2突起部25bは、第2環状部P2のうち第2筐体10bの端面E2に対向する表面から第2筐体10bに向けて突出する。第2環状部P2のうち第1筐体10aとの対向面には、第2突起部25bに対応する環状の溝部26bが形成される。以上の例示の通り、第8実施形態においては、第1突起部25aと第2突起部25bとが相互に反対の方向に突出する。
【0086】
第8実施形態においても第7実施形態と同様の効果が実現される。図21は、使用状態にあるガスケット20の断面図である。図21に例示される通り、ガスケット20と第1筐体10aの端面E1または第2筐体10bの端面E2との間には環状の隙間Gが形成される。以上の構成においては、封止構造体100の外部から浸入した液体が、第1間隙D1に加えて隙間Gにも滞留する。したがって、第8実施形態によれば、第7実施形態と同様に、ガスケット20が凹凸のない平坦な部材である構成と比較して、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0087】
なお、第7実施形態のように第1突起部25aと第2突起部25bとが同方向に突出する構成では、ガスケット20の内周縁から外周縁にかけて反りが発生する可能性がある。第実施形態によれば、第1突起部25aと第2突起部25bとが逆方向に突出するから、第7実施形態と比較してガスケット20の反りを低減できるという効果もある。

【0088】
[第9実施形態]
第9実施形態のガスケット20においては、図16に例示した第7実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と複数の第1連結部C1と複数の第3連結部C3とを具備する。各環状部P(P1,P2)および各連結部C(C1,C3)の双方が、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成される。締結具12の座面Saにおける外周縁Sbの内側に取付部30が位置する構成は、第7実施形態と同様である。
【0089】
図22は、第9実施形態におけるガスケット20の断面図である。第7実施形態において参照した図18に対応する断面が図22には図示されている。図22に例示される通り、第9実施形態においては、第7実施形態と同様に、第1環状部P1に環状の第1突起部25aが形成され、第2環状部P2に環状の第2突起部25bが形成される。
【0090】
第1突起部25aは、第1筐体10aに向けてX1方向に突出する折曲げビードである。図22に例示される通り、第1環状部P1は、平坦部P11と傾斜部P12とを含む。平坦部P11は環状の部分であり、傾斜部P12は、平坦部P11の外周縁に連続する環状の部分である。平坦部P11は、中心軸Oに垂直な平面(以下「基準面」という)に平行な平板状の部分である。傾斜部P12は、基準面に対して傾斜する平板状の部分である。具体的には、傾斜部P12は、内周縁が外周縁よりもX1方向に位置するように基準面に対して傾斜する。平坦部P11と傾斜部P12との境界の近傍が第1突起部25aとして機能する。
【0091】
第2突起部25bは、第1筐体10aに向けてX1方向に突出するハーフビードである。図22に例示される通り、第2環状部P2は、平坦部P21と傾斜部P22と平坦部P23とを含む。平坦部P21は環状の部分である。平坦部P23は平坦部P21を包囲する環状の部分である。傾斜部P22は、平坦部P21と平坦部P23とを連結する環状の部分である。
【0092】
平坦部P21および平坦部P23は、基準面に平行な平板状の部分である。傾斜部P22は、基準面に対して傾斜する平板状の部分である。具体的には、傾斜部P22は、内周縁が外周縁よりもX1方向に位置するように基準面に対して傾斜する。すなわち、平坦部P21は平坦部P23よりもX1方向に位置する。平坦部P21と傾斜部P22との境界の近傍が第2突起部25bとして機能する。
【0093】
第9実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第9実施形態においては、第1突起部25aおよび第2突起部25bが第1筐体10aの端面E1に密着するから、第7実施形態と同様に、当該端面E1とガスケット20との間からの液体の浸入を効果的に抑制できる。
【0094】
図23は、使用状態にあるガスケット20の断面図である。図23に例示される通り、使用状態においては、ガスケット20と第1筐体10aの端面E1または第2筐体10bの端面E2との間に複数の環状の隙間Gが形成される。以上の構成においては、封止構造体100の外部から浸入した液体が、第1間隙D1に加えて隙間Gにも滞留する。したがって、第9実施形態によれば、第7実施形態と同様に、ガスケット20が凹凸のない平坦な部材である構成と比較して、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0095】
[第10実施形態]
図24は、第10実施形態におけるガスケット40の構成を例示する断面図である。第7実施形態において参照した図18に対応する断面が図24には図示されている。第10実施形態のガスケット40は、ガスケット20aとガスケット20bとを含む。ガスケット20aおよびガスケット20bの各々の構造は、第9実施形態と同様である。ガスケット20aがガスケット20bのX1方向に位置するようにガスケット20aとガスケット20bとが積層される。
【0096】
図25は、使用状態にあるガスケット40の断面図である。ガスケット20aはガスケット20bと第1筐体10aとの間に位置し、ガスケット20bはガスケット20aと第2筐体10bとの間に位置する。図25に例示される通り、ガスケット20aにおける第1突起部25aおよび第2突起部25bが第1筐体10aの端面E1に接触し、かつ、ガスケット20bにおける第1突起部25aおよび第2突起部25bが第2筐体10bの端面E2に接触するように、ガスケット20aとガスケット20bとが積層される。以上の構成においては、ガスケット20aと第1筐体10aの端面E1との間に複数の環状の隙間Gが形成され、かつ、ガスケット20bと第2筐体10bの端面E2との間に複数の環状の隙間Gが形成される。したがって、第7実施形態と同様に、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0097】
[第11実施形態]
図26は、第11実施形態に係るガスケット20の平面図である。第11実施形態のガスケット20は、図16に例示した第7実施形態のガスケット20において、第1突起部25aに代えて第3間隙D3を形成した構成である。第3間隙D3は、周方向に延在する円弧状の空間である。周方向に相互に隣合う2個の貫通孔Hの間に第1間隙D1と第3間隙D3とが形成される。
【0098】
第2環状部P2には、第7実施形態と同様に第2突起部25bが形成される。第2突起部25bは、ガスケット20の内周縁に沿って環状に形成される。第1間隙D1は、第2突起部25bとガスケット20の外周縁との間に形成され、第3間隙D3は、第1間隙D1と当該外周縁との間に形成される。すなわち、第1間隙D1の内周側に第2突起部25bが位置し、第1間隙D1の外周側に第3間隙D3が形成される。第2突起部25bと第3間隙D3との間に第1間隙D1が位置すると換言してもよい。
【0099】
以上の構成によれば、第1間隙D1および第3間隙D3により液体の浸入を抑制できるほか、第2突起部25bが第1筐体10aの端面E1に密着する構成によっても液体の浸入が抑制される。したがって、したがって、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できるという効果は格別に顕著である。
【0100】
[第12実施形態]
図27は、第12実施形態におけるガスケット20の部分的な斜視図である。第12実施形態のガスケット20は、第1実施形態と同様に、第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3とを具備する。
【0101】
図27に例示される通り、各環状部Pの内周面には、当該内周面を被覆する親水膜50が形成される。親水膜50は、封止構造体100の内部に浸入する液体に対する親水性(濡れ性)が環状部Pの内周面と比較して高い薄膜である。親水膜50の形成には、親水性を有する任意の公知の材料が形成される。
【0102】
第12実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第12実施形態においては、環状部Pの内周面に親水膜50が形成されるから、第1間隙D1内に到達した液体が第1環状部P1の内周面に沿って矢印A2の方向に進行することが促進される。また、第2間隙D2内に到達した液体が第2環状部P2の内周面に沿って矢印A4の方向に進行することが促進される。すなわち、筐体10の内部に対する液体の進行が遅延される。したがって、第12実施形態によれば、封止構造体100の内部に対する液体の浸入を長時間にわたり抑制できる。
【0103】
なお、図27においては、複数の環状部Pの全部の内周面に親水膜50が形成される構成を例示したが、複数の環状部Pのうちの一部の内周面のみに親水膜50が形成されてもよい。例えば、第1実施形態のように第1環状部P1と第2環状部P2と第3環状部P3とを具備する構成においては、第1環状部P1および第2環状部P2の内周面に親水膜50が形成され、第3環状部P3の内周面には親水膜50が形成されない構成も想定される。また、第7実施形態のように第1環状部P1と第2環状部P2とを具備する構成においては、第1環状部P1の内周面に親水膜50が形成され、第2環状部P2の内周面には親水膜50が形成されない構成も想定される。
【0104】
また、図27においては、各環状部Pの内周面に親水膜50が形成される構成を例示したが、各環状部Pの外周面に親水膜50が形成される構成、または、各環状部Pの内周面および外周面の双方に親水膜50が形成される構成も想定される。第1間隙D1または第2間隙D2の内壁面に親水膜50が形成されると換言してもよい。
【0105】
[変形例]
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で併合してもよい。
【0106】
(1)前述の各形態では、3個の環状部P(P1,P2,P3)を具備するガスケット20を例示したが、ガスケット20を構成する環状部Pの個数は3個に限定されない。例えば第6実施形態から第11実施形態の例示のようにガスケット20が2個の環状部P(P1,P2)を具備する構成、または、ガスケット20が4個以上の環状部Pを具備する構成も想定される。したがって、間隙D(D1,D2)の個数も前述の各形態での例示(2箇所)に限定されない。例えば第6実施形態から第11実施形態のようにガスケット20に1個の間隙Dのみが形成される構成、またはガスケット20に3個以上の間隙Dが形成される構成も想定される。
【0107】
(2)前述の各形態では、2個の第1連結部C1と2個の第2連結部C2とを具備するガスケット20を例示したが、ガスケット20を構成する連結部Cの個数は以上の例示に限定されない。例えば、ガスケット20が1個の第1連結部C1のみを具備する構成、または、ガスケット20が3個以上の第1連結部C1を具備する構成も想定される。同様に、例えばガスケット20が1個の第2連結部C2のみを具備する構成、または、ガスケット20が3個以上の第2連結部C2を具備する構成も想定される。第1連結部C1の個数と第2連結部C2の個数とを相違させてもよい。
【0108】
(3)前述の各形態では、平面形状が円形および矩形である環状の環状部Pを例示したが、環状部Pの形状は以上の例示に限定されない。例えば、長円状または多角形状(例えば三角形状、六角形状)等の任意の平面形状の環状部Pが想定される。また、複数の環状部Pの各々の平面形状を相違させてもよい。例えば、第1環状部P1の平面形状が矩形であり、第2環状部P2の平面形状が円形である構成も採用される。
【0109】
(4)各環状部Pの幅と各間隙Dの幅との大小関係は任意である。例えば環状部Pの幅と間隙Dの幅とが同等である構成が想定される。また、環状部Pの幅が間隙Dの幅を上回る構成、または、環状部Pの幅が間隙Dの幅を下回る構成も採用される。
【0110】
(5)前述の各形態では、基体部21と第1弾性層22と第2弾性層23との積層で構成されたガスケット20を例示したが、ガスケット20の断面構造は以上の例示に限定されない。例えば、前述の各形態に係る形状のガスケット20を単層で形成してもよいし、ガスケット20を4層以上の積層で形成してもよい。また、第1弾性層22および第2弾性層23の一方を省略してもよい。
【0111】
(6)第5実施形態における突起部25の断面形状は図12の例示に限定されない。例えば、図12では断面形状が円弧状である突起部25を形成したが、断面形状が台形状である突起部25を形成してもよい。断面形状が階段状である突起部25(ハーフビード)を形成してもよい。また、例えば特開2013-11300号公報に開示されるように、筐体10に発生し得る鋳巣に対応する形状の突起部25を形成してもよい。
【0112】
(7)第6実施形態から第9実施形態において、第1実施形態または第3実施形態と同様に、第1連結部C1または第2連結部C2を基体部21のみの単層で構成してもよい。
【0113】
(8)自動車等の車輌内の封止構造体100に利用されるガスケット20を例示したが、ガスケット20が利用される分野は以上の例示に限定されない。例えば配管の連結等の任意の産業分野に本発明のガスケットが利用される。
【符号の説明】
【0114】
100…封止構造体、10a…第1筐体、10b…第2筐体、12…締結具、12a…ボルト、12b…座金、20,20a,20b,40…ガスケット、21…基体部、22…第1弾性層2、23…第2弾性層、25…突起部、25a…第1突起部、25b…第2突起部、30…取付部、50…親水膜、P1…第1環状部、P2…第2環状部、P3…第3環状部、C1…第1連結部、C2…第2連結部、C3…第3連結部、D1…第1間隙、D2…第2間隙、D3…第3間隙、H…貫通孔、R1…第1凹部、R2…第2凹部、Sa…座面、Sb…座面の外周縁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27