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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】水素化分解触媒、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/80 20060101AFI20221124BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221124BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221124BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B01J29/80 M
B01J37/08
B01J35/10 301A
C10G47/20
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021533597
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-03
(86)【国際出願番号】 CN2019124803
(87)【国際公開番号】W WO2020119754
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】201811521961.1
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201811522285.X
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】518405289
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司大連石油化工研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】唐兆吉
(72)【発明者】
【氏名】杜艶澤
(72)【発明者】
【氏名】樊宏飛
(72)【発明者】
【氏名】王継鋒
(72)【発明者】
【氏名】於正敏
(72)【発明者】
【氏名】孫暁燕
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102441427(CN,A)
【文献】特表2002-542929(JP,A)
【文献】特表2010-510060(JP,A)
【文献】特表2009-545441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C10G 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、担体上に担持されたシリカ及び活性成分とを含み、
前記担体は、Y分子篩とSAPO-34分子篩とを含有し、担体重量を基準として、Y分子篩の含有量は2wt%~35wt%であり、SAPO-34分子篩の含有量は2wt%~25wt%であり、
前記活性成分は、第VIB族金属元素及び/又は第VIII族金属元素を含み、触媒の重量を基準として、担体上に担持されたシリカ含有量は0.5wt%~5wt%であり、第VIB族金属の酸化物換算の含有量は10wt%~25wt%であり、第VIII族金属の酸化物換算の含有量は4wt%~10wt%である、水素化分解触媒。
【請求項2】
前記第VIB族金属元素はモリブデン及び/又はタングステンであり、第VIII族金属元素はコバルト及び/又はニッケルである、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
担体重量を基準として、Y分子篩の含有量は8wt%~25wt%であり、SAPO-34分子篩の含有量は2wt%~8wt%であり、触媒の重量を基準として、担体上に担持されたシリカ含有量は1wt%~4wt%であり、第VIB族金属の酸化物換算の含有量は15wt%~20wt%であり、第VIII族金属の酸化物換算の含有量は5wt%~8wt%である、請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
担体重量を基準として、Y分子篩の含有量は10wt%~20wt%であり、SAPO-34分子篩の含有量は2.5wt%~6wt%であり、触媒の重量を基準として、担体上に担持されたシリカ含有量は1.5wt%~3wt%である、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記シリカ及び活性成分は前記担体の外面と細孔の内面とに同時に分布している、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記Y分子篩の性質は、SiO/Alモル比25~150、比表面積550m/g~1000m/g、総細孔容積0.3mL/g~0.6mL/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記SAPO-34分子篩は、SiO/Alモル比0.05~0.5、比表面積200m/g~800m/g、総細孔容積0.3mL/g~0.6mL/gである、請求項1~のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
前記担体はバインダーをさらに含有し、担体重量を基準として、担体中のバインダーの含有量は15wt%~85wt%でる、請求項1~7のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項9】
記バインダーは、アルミナ、アモルファスシリカアルミナ及びシリカのうちの1種又は複数種である、請求項に記載の触媒。
【請求項10】
該触媒は、比表面積が120~500m/gであり、細孔容積が0.30~0.65mL/gであり、孔径4~10nmの細孔容積が総細孔容積の65%~95%を占める、請求項1~のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
該触媒は、比表面積が170~300m /gであり、細孔容積が0.35~0.60mL/gであり、孔径4~10nmの細孔容積が総細孔容積の70%~90%を占める、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
(1)Y分子篩とSAPO-34分子篩とを含有する材料に対して、成形、乾燥及び焙焼を行い、担体を得るステップと、
(2)ステップ(1)で製造された担体にシランと、第VIB族及び/又は第VIII族金属である活性成分とを導入した後、乾燥及び焙焼を行うステップとを含む、ことを特徴とする水素化分解触媒の製造方法。
【請求項13】
ステップ(1)では、前記材料中にバインダー又はその前駆体が含有され、又は成形過程においてバインダー又はその前駆体が添加され、前記バインダーはアルミナ、アモルファスシリカアルミナ及びシリカのうちの1種又は複数種である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップ(1)では、前記材料中に微結晶性セルロースが含有され、材料中の微結晶性セルロースの含有量は0.2wt%~6wt%である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(1)では、乾燥条件は、温度60℃~180℃、時間0.5h~20hであることを含み、焙焼条件は、温度350℃~750℃、焙焼時間0.5h~20hであることを含む、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(1)では、乾燥条件は、温度90℃~120℃、時間3h~6hであることを含み、焙焼条件は、温度500℃~650℃、焙焼時間3h~6hであることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記Y分子篩の性質は、SiO/Alモル比25~150、比表面積550m/g~1000m/g、総細孔容積0.3mL/g~0.6mL/gであり、前記SAPO-34分子篩は、SiO/Alモル比0.05~0.5、比表面積200m/g~800m/g、総細孔容積0.3mL/g~0.6mL/gである、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)では、前記シランは、アミノシラン、アルキルシラン、及び硫黄含有シランのうちの1種又は複数種である、請求項12~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記アミノシラン化合物は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジエチレントリアミンプロピルメチルジメトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランのうちの1種又は複数種であり、前記アルキルシラン化合物は、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、セチルトリメトキシシランのうちの1種又は複数種であり、前記硫黄含有シラン化合物はビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-テトラスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランのうちの1種又は複数種である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(2)では、シラン及び活性成分は浸漬法により同時又はバッチ式で担体上に導入され、浸漬液中のシランと第VIB族金属とのモル比は0.01:1~10:1である、請求項12~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記浸漬液中の溶媒は水であり、浸漬液中にグリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クエン酸アンモニウムのうちの1種又は複数種がさらに含有され、前記グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クエン酸アンモニウムのうちの1種又は複数種と第VIII族金属元素とのモル比は0.01:1~8:1である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ステップ(2)では、乾燥温度は60℃~200℃であり、乾燥時間は0.5h~20hであり、焙焼温度は300℃~500℃であり、焙焼時間は0.5h~20hである、請求項12~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(2)では、乾燥温度は90℃~130℃であり、乾燥時間は1h~6hであり、焙焼温度は380℃~450℃であり、焙焼時間は1h~6hである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
水素化分解条件下、重質原料油と請求項1~11のいずれか1項に記載の水素化分解触媒とを接触させるステップを含む、ジェット燃料の生産方法。
【請求項25】
前記水素化分解条件は、反応温度が340℃~430℃であり、水素分圧が5~20MPaであり、水素と油の体積比が500~2000:1であり、液空間速度が0.5~1.8h あることを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水素化分解条件は、反応温度が355℃~385℃であり、水素分圧が8~15MPaであり、水素と油の体積比が750~1500:1であり、液空間速度が0.7~1.5h -1 であることを含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化分解触媒、その製造方法及び使用に関し、具体的には、ジェット燃料の収率を向上させ得る水素化分解触媒、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際石油市場で中間留分油の需要量が絶えずに増えるに伴い、重質留分油からより多くの中間留分油、特に航空用灯油を得る必要があり、水素化分解過程は重質油の軽質化のための重要な手段の1つである。水素化分解は、原料に対する適応性が高く、製品の質量が高く、調整柔軟性が高く、中間留分の収率が高くて、製品の構造が柔軟であるなどの特徴を有し、それにより、水素化分解技術がますます重要になり、特に、石油資源不足、ますます厳格になる環境保全要件、市場の需要に対応できい石油製品の構造など、中国が現在直面する問題に対しては、水素化分解技術の使用は、石油製品の品質を向上させ、環境汚染を低減させ、市場の対応能力を高めるのに有効な対策の1つであり、現代化の製油所の最も重要なプロセスとなっている。これらの要素からこそ、高中油選択性の水素化分解技術が大きく発展し、水素化分解触媒はこの該技術を発展させるためのキーである。
【0003】
水素化分解触媒は、担体と活性成分との2つの部分を含み、担体は主に、金属活性成分を分散させる場所として機能し、また、担体自体が触媒反応過程を適切な酸性を提供し、活性成分とともに反応全体を実施する。水素化分解触媒は二重機能触媒であり、酸性成分と水素添加成分の両方を同時に含み、水素添加成分が周期表の第VIII族及び第VIB族から選ばれる金属酸化物であり、酸性成分が主に分子篩及び無機酸化物である。現在、水素化分解触媒の担体は分子篩、アモルファスシリカアルミナ及びアルミナからなる。
触媒の活性成分の分散性が高く、活性金属と担体との間に弱いファンデルワールス力、及び使用性能に優れた分子篩を担体として、触媒反応活性及び目的とする製品の収率を効果的に向上させることができる。高活性、高安定性、良好な選択性、低コスト、製造過程における無汚染化は、従来から本分野の触媒の研究において突破しようとするボトルネックであり、上記特徴を有する触媒が工業的に使用されると、目的とする製品をより多く生産できるとともに、反応を穏やかな条件で行うことを可能とし、運行周期を延ばし、生産コストを削減させる。
【0004】
CN200810012212.6は、水素化分解触媒担体及びその製造方法を開示している。この担体では、変性Y分子篩は、結晶度が高く、シリカ-アルミナ比が大きく、総酸量及び酸分布が適切であり、アモルファスシリカ-アルミナとともに酸性成分として機能し、特に水素化分解触媒担体として好適である。該担体を用いて製造された触媒は、窒素耐性が高まる反面、触媒の活性が悪く、ある程度では工業的要件を満足できない。
【0005】
CN201410603837.5は、水素化分解触媒の製造方法を開示し、変性Y分子篩、アモルファスシリカアルミナ及び/又はアルミナを一定の配合比で均一に混合し、希硝酸を加えてスラリーとした後、押出成形、乾燥、焙焼を行い、変性Y分子篩含有のシリカ-アルミナ担体を得た後、活性成分を浸漬させて、乾燥、焙焼を行い、水素化分解触媒を得ることを含む。
【0006】
CN85109634Aは、水素の存在下で原油原料を加工する方法を開示し、プロセスの有効な操作条件で原油原料と水素とを、少なくとも1種の水素添加触媒と少なくとも1種の米国特許4440871号のアルミノシリコホスフェート(SAPO)を有効量で含む転化触媒と接触させることを含み、該アルミノシリコホスフェートは、焼成の形態では分圧100トル、温度-186℃で少なくとも4%(重量)の酸素を吸着させることを特徴とする。前記方法は、特定のアルミノシリコホスフェート(SAPO)を用いることにより、ガソリン留分であるイソパラフィンとノルマルパラフィンとの比を明らかに向上できる。
【0007】
従来の水素化分解触媒は、水素化分解反応に用いると、反応活性、中間留分油の選択性の一致性、高品質の製品の産量、特に水素化分解産物中のジェット燃料の収率を向上させる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術に存在する問題に対して、本発明は、水素化分解触媒、その製造方法及び使用を提供する。該触媒を水素化分解反応に用いると、ジェット燃料の収率が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は水素化分解触媒を提供し、前記触媒は、担体と、担体上に担持されたシリカ及び活性成分とを含み、前記担体は、Y分子篩とSAPO-34分子篩とを含有し、担体重量を基準として、Y分子篩の含有量は2wt%~35wt%、好ましくは8wt%~25wt%、さらに好ましくは10wt%~20wt%であり、SAPO-34分子篩の含有量は2wt%~25wt%、好ましくは2wt%~8wt%、さらに好ましくは2.5wt%~6wt%であり、前記活性成分は第VIB族金属及び/又は第VIII族金属を含み、第VIB族金属はモリブデン及び/又はタングステンであり、第VIII族金属はコバルト及び/又はニッケルであり、触媒の重量を基準として、担体上に担持されたシリカの含有量は0.5wt%~5wt%、好ましくは1wt%~4wt%、さらに好ましくは1.5wt%~3wt%であり、第VIB族金属の酸化物換算の含有量は10wt%~25wt%、好ましくは15wt%~20wt%であり、第VIII族金属の酸化物換算の含有量は4wt%~10wt%、好ましくは5wt%~8wt%である。
【0010】
本発明の別の態様は、水素化分解触媒の製造方法を提供し、該方法は、
(1)Y分子篩とSAPO-34分子篩とを含有する材料に対して、成形、乾燥及び焙焼を行い、担体を得るステップと、
(2)ステップ(1)で製造された担体に、第VIB族及び/又は第VIII族金属である活性成分とシランとを導入した後、乾燥及び焙焼を行うステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水素化分解触媒担体中にY分子篩とSAPO-34分子篩が含有され、担体にシランを焙焼して形成したシリカが導入されており、このように、Y分子篩とSAPO-34分子篩が酸性及び孔構造の点において互いに協力し、それぞれの性能の特性を生かすとともに、2種類の分子篩は優れた相乗触媒作用を果たし、それにより、本発明の水素化分解担体で製造された触媒は、ジェット燃料の収率を大幅に向上させ、一般的な30程度から40%程度に上げ、また、高品質の水素化分解テールオイルを生産できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で開示された範囲の端点及びいずれかの値はこの正確な範囲又は値に制限されず、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点の値同士、各範囲の端点値と単独の点値、及び単独の点値同士は互いに組み合わせられて1つ又は複数の新しい数値の範囲としてもよく、これらの数値の範囲は本明細書において具体的に開示されたものとみなすべきである。
【0013】
本発明によれば、前記触媒の担体はY分子篩とSAPO-34分子篩とを含有し、前記シリカは担体上に浸漬されたシランを焙焼した後原位置で生成され、担体上に担持され、且つ前記シリカ及び活性成分は前記担体の外面と細孔の内面とに同時に分布している。
【0014】
好ましくは、上記触媒では、前記Y分子篩の性質は、SiO/Alモル比25~150、比表面積550m/g~1000m/g、総細孔容積0.30mL/g~0.60mL/gである。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記触媒では、前記SAPO-34分子篩は、SiO/Alモル比0.05~0.5、比表面積200m/g~800m/g、総細孔容積0.30mL/g~0.60mL/gである。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記触媒では、Pをさらに含有し、触媒の総量を基準として、酸化物換算で、Pの含有量は1.2~1.6重量%である。それによって、水素化分解の効果をさらに向上させ、ジェット燃料の収率を向上させることができる。その原因としては、Pの存在、特に浸漬液中にPを導入することにより、浸漬液が安定的なリンモリブデンヘテロポリ酸系となり、活性成分が担体の表面に均一に分散しており、より多くの反応活性中心が形成されることが考えられる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、成形触媒では、前記担体はバインダーをさらに含有し、前記バインダーは、例えばアルミナ、アモルファスシリカアルミナ、及び酸化ケイ素のうちの1種又は複数種であり、担体重量を基準として、担体中のバインダーの含有量は15wt%~85wt%、好ましくは25wt%~80wt%、さらに好ましくは30wt%~50wt%である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記触媒では、水素化分解触媒の性質は、比表面積が120~500m/g、好ましくは170~300m/g、さらに好ましくは180~200m/gであり、細孔容積が0.30~0.65mL/g、好ましくは0.35~0.60mL/g、さらに好ましくは0.35~0.4mL/gであり、孔径4~10nmの細孔容積が総細孔容積の65%~95%、好ましくは70%~90%、好ましくは75%~85%を占める。
【0019】
本発明において、特に断らない限り、SiO/Alモル比は化学分析法によって、日本理学社製のZSX100eのXRF装置を用いて測定される。
【0020】
比表面積、細孔容積、細孔分布は、低温液体窒素物理吸着法GB/T-19587-2004によって、米国のマイクロメリティクス社製のASAP2420型の低温窒素吸着装置を用いて測定される。
【0021】
本発明において、触媒の組成は投入量から算出される。
【0022】
本発明による水素化分解触媒の製造方法によれば、該方法は、
(1)Y分子篩とSAPO-34分子篩とを含有する材料に対して、成形、乾燥及び焙焼を行い、担体を得るステップと、
(2)ステップ(1)で製造された担体に、第VIB族及び/又は第VIII族金属である活性成分とシランとを導入した後、乾燥及び焙焼を行うステップとを含む。
【0023】
好ましい場合、ステップ(1)では、前記材料中にバインダー又はその前駆体がさらに含有され、又は成形過程にバインダー又はその前駆体が添加される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記方法ステップ(1)では、前記材料中に微結晶性セルロースが含有される。好ましくは、材料中の微結晶性セルロースの含有量は0.2wt%~6wt%、好ましくは0.5wt%~4wt%である。微結晶性セルロースを含有することにより、担体の孔構造を改善し、該担体を含有する触媒がジェット燃料の収率をさらに向上できるようにする。本発明では、微結晶性セルロースの物性について特に制限がなく、市販された各種の規格の微結晶性セルロースは本発明に利用できる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、上記方法ステップ(1)では、乾燥条件は、60℃~180℃、好ましくは90℃~120℃、時間0.5h~20.0h、好ましくは3.0h~6.0hであり、焙焼条件は、350℃~750℃、好ましくは500℃~650℃で0.5h~20.0h、好ましくは3.0h~6.0h焙焼することである。担体の形状は、必要に応じて、例えば歯状球形、三葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形や円柱ストリップ形など、適切な形状に成形してもよい。焙焼は酸素含有雰囲気にて行われ、酸素ガス濃度について特に限制がなく、純粋な酸素の雰囲気であってもよいし、空気雰囲気などであってもよい。乾燥は空気雰囲気にて行われてもよく、不活性ガス、例えば窒素ガス雰囲気などにて行われてもよい。
【0026】
本発明では、前記シランは、後で焙焼されてシリカとなり、担体の外面と細孔の内面とに付着するものであり、このため、上記の条件を満たせるシリコーン化合物であればよい。好ましくは、上記方法ステップ(2)では、前記シランはアミノシラン、アルキルシラン、硫黄含有シラン、シロキサンのうちの1種又は複数種である。前記アミノシランはアミノ基とケイ素原子を分子中に同時に含有し、且つN、H、Si、O及びCの5種類の元素だけを含む有機化合物であり、前記アミノは、第一級アミン基、第二級アミン基及び第三級アミン基のうちの1種又は複数種であり、前記アミノの数は1つ又は複数であってもよく、好ましくは前記アミノシランの炭素原子数が9以下又は分子量が230以下であり、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ジエチレントリアミンプロピルメチルジメトキシシラン、N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランのうちの1種又は複数種の組み合わせであってもよい。前記アルキルシランは、H、Si、O及びCの4種類の元素だけを分子に含有する有機化合物であり、好ましくは前記アルキルシランの炭素原子数は19以下であり、例えば、ジフェニルジメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、セチルトリメトキシシランのうちの1種又は複数種の組み合わせであってもよい。前記硫黄含有シランは、S、H、Si、O及びCの5種類の元素だけを分子中に含有する有機化合物であり、好ましくは前記硫黄含有シランの炭素原子数は18以下であり、例えば、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-テトラスルフィド、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシランのうちの1種又は複数種の組み合わせであってもよい。前記シロキサンは、主鎖がSi-O-Si、繰り返し単位がRSiOのポリマーであり、ここでRは様々な炭素原子数1~4のアルキルであってもよい。
【0027】
上記方法のステップ(2)では、シラン又は活性成分は浸漬法によって担体上に導入され、等体積浸漬であってもよく、過量浸漬であってもよいし、段階的浸漬であってもよく、共浸漬であってもよく、好ましくは等体積浸漬である。浸漬方法は当業者が公知するものである。
【0028】
前記活性成分は、好ましくは、各活性成分の水溶性塩、例えば塩化物及び/又は硝酸塩を用いる。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、該方法は、ステップ(1)で得られた担体上にPを担持するステップをさらに含む。前記Pは、活性成分及びシランと同時に、又は段階的に担体上に浸漬してもよく、好ましくは同時に浸漬する。好ましくはリン酸はPを提供するために使用される。
【0030】
シラン又は活性成分を含有する溶液で担体を浸漬した後、乾燥及び焙焼を行い、最終的な触媒を得る。前記乾燥条件は全て一般的なものであり、乾燥温度は60℃~200℃、好ましくは90℃~130℃であり、乾燥時間は0.5h~20h、好ましくは1h~6hである。焙焼温度は300℃~500℃、好ましくは380℃~450℃であり、焙焼時間は0.5h~20h、好ましくは1h~6hである。
【0031】
上記方法のステップ(2)では、活性成分及びシランは同時に導入してもよく、バッチ式で導入してもよく、好ましくは同時に導入し、同時に導入する場合、浸漬液中のシランと第VIB族金属とのモル比は0.01:1~10:1、好ましくは0.01:1~5:1である。
【0032】
本発明の方法は、活性成分と類似の担持方式によって、シランを担体上に浸漬し、次に焙焼し、シリカを原位置で生成して担体上に担持させ、且つ、前記シリカ及び活性成分は前記担体の外面と細孔の内面とに同時に分布しており、それにより、水素化分解産物中のジェット燃料の収率を大幅に向上できる。
【0033】
前記浸漬液中の溶媒は好ましくは水であり、さらに好ましくは浸漬液中に、グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クエン酸アンモニウムのうちの1種又は複数種が含有され、前記グリセロール、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、クエン酸アンモニウムのうちの1種又は複数種と第VIII族金属とのモル比は、好ましくは0.01:1~8:1、好ましくは0.01:1~4:1である。
【0034】
本発明の水素化分解触媒は、ジェット燃料を生産する水素化分解プロセスに適用でき、操作条件は、反応温度が340℃~430℃、好ましくは355℃~385℃であり、水素分圧が5~20MPa、好ましくは8~15MPaであり、水素と油の体積比が500~2000:1、好ましくは750~1500:1であり、液空間速度が0.5~1.8h-1、好ましくは0.7~1.5h-1である。
【0035】
本発明の水素化分解触媒は、減圧留分油、コークス化軽油、接触分解軽油、接触分解循環油などのうちの1種又は複数種の組み合わせを含む重質原料油の処理に適用できる。好ましくは、重質原料油は沸点300~600℃の炭化水素類であり、窒素含有量が一般には50~2800mg/gである。
【0036】
本発明をよりよく説明するために、以下、実施例及び比較例を参照して本発明の作用及び効果をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に制限されない。以下の実施例及び比較例では、特に断らない限り、%はすべて質量百分率であり、アルミナは全てγアルミナである。SiO/Alモル比は化学分析法によって、日本理学社製のZSX100eのXRF装置を用いて測定され、比表面積、細孔容積、細孔分布は低温液体窒素物理吸着法GB/T-19587-2004によって、米国のマイクロメリティクス社製のASAP2420型の低温窒素吸着装置を用いて測定される。触媒組成は投入量から算出される。
【0037】
〔実施例1〕
(1)水素化分解触媒の製造
Y分子篩(SiO/Alモル比85、比表面積756m/g、総細孔容積0.38mL/g)20g、SAPO-34分子篩(SiO/Alモル比0.25、比表面積728m/g、総細孔容積0.32mL/g)8g、アルミナ80g、微結晶性セルロース4.2gを圧砕機に加えて圧砕し、5分間ドライミックスした後、硝酸3.85gを含有する水溶液85gを加えて、20分間圧砕して糊状とし、押し出して、押し出したストランドを120℃の条件で3h乾燥させ、500℃で3h焙焼して、担体Z1を得た。
【0038】
(2)触媒の製造
ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-テトラスルフィドと最終触媒のMo含有量とのモル比が0.05:1、N,N-ジメチルホルムアミドと最終触媒のNi含有量とのモル比が0.04:1となるように、Mo、Ni、P、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]-テトラスルフィド(CAS#:40372-72-3)、N,N-ジメチルホルムアミド、及び水を含有する浸漬液で担体Z1を等体積浸漬し、120℃で3h乾燥させ、390℃で2h焙焼して、最終的に得られた触媒をC-1とし、触媒性質を表1に示す。
【0039】
〔実施例2〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
Y分子篩(SiO/Alモル比65、比表面積750m/g、総細孔容積0.48mL/g)25g、SAPO-34分子篩(SiO/Alモル比0.05、比表面積550m/g、総細孔容積0.35mL/g)6g、酸化ケイ素70g、微結晶性セルロース2.8gを圧砕機に加えて圧砕し、6分間ドライミックスした後、硝酸3.54gを含有する水溶液80gを加えて、25分間圧砕して、材料を糊状とし、押し出して、押し出したストランドを120℃の条件で3h乾燥させ、550℃で3h焙焼して、担体Z2を得た。
【0040】
(2)触媒の製造
N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシランと最終触媒のMo含有量とのモル比が0.08:1、グリセロールと最終触媒のNi含有量とのモル比が0.08:1となるように、Mo、Ni、P、N-アミノエチル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(CAS#:3069-29-2)、グリセロール及び水を含有する浸漬液で担体Z2を等体積浸漬し、120℃で3h乾燥させ、410℃で2h焙焼し、最終的に得られた触媒をC-2とし、触媒性質を表1に示す。
【0041】
〔実施例3〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
Y分子篩(SiO/Alモル比150、比表面積1000m/g、総細孔容積0.6mL/g)25g、SAPO-34分子篩(SiO/Alモル比0.5、比表面積500m/g、総細孔容積0.55mL/g)7g、アモルファスシリカアルミナ(比表面積425m/g、細孔容積1.2mL/g)75g、微結晶性セルロース2.0gを圧砕機に加えて圧砕し、5分間ドライミックスした後、酢酸9.5gを含有する水溶液88gを加えて、30分間圧砕して、材料を糊状とし、押し出して、押し出したストランドを120℃の条件で3h乾燥させ、560℃で3h焙焼して、担体Z3を得た。
【0042】
(2)触媒の製造
メチルトリアセトキシシランと最終触媒のMo含有量とのモル比が0.08:1、ジメチルスルホキシドと最終触媒のNi含有量とのモル比が0.1:1となるように、Mo、Ni、P、メチルトリアセトキシシラン(CAS#:4253-34-3)、ジメチルスルホキシド及び水を含有する浸漬液で担体Z3を等体積浸漬し、120℃で3h乾燥させ、380℃で2h焙焼し、最終的に得られた触媒をC-3とした。触媒性質を表1に示す。
【0043】
〔実施例4〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
Y分子篩(SiO/Alモル比60、比表面積750m/g、総細孔容積0.52mL/g)26g、SAPO-34分子篩(SiO/Alモル比0.08、比表面積685m/g、総細孔容積0.38mL/g)8g、アルミナ75g、微結晶性セルロース4.0gを圧砕機に加えて圧砕し、5分間ドライミックスした後、酢酸(濃度36重量%)10gを含有する水溶液80gを加えて、18分間圧砕して、材料を糊状とし、押し出して、押し出したストランドを110℃の条件で3h乾燥させ、580℃で4h焙焼して、担体Z4を得た。
【0044】
(2)触媒の製造
メルカプトプロピルトリメトキシシランと最終触媒のMo含有量とのモル比が0.1:1、シュウ酸と最終触媒のNi含有量とのモル比が0.12:1となるように、Mo、Ni、P、メルカプトプロピルトリメトキシシラン(CAS#:4420-74-0)、シュウ酸及び水を含有する浸漬液で担体Z4を等体積浸漬し、120℃で3h乾燥させ、440℃で2h焙焼し、最終的に得られた触媒をC-4とし、触媒性質を表1に示す。
【0045】
〔実施例5〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
Y分子篩(SiO/Alモル比62、比表面積746m/g、総細孔容積0.53mL/g)25g、SAPO-34分子篩(SiO/Alモル比0.07、比表面積722m/g、総細孔容積0.51mL/g)9g、アルミナ86g、微結晶性セルロース4gを圧砕機に加えて圧砕し、6分間ドライミックスした後、酢酸5gと硝酸1.54gを含有する水溶液78gを加えて、20分間圧砕して、材料を糊状とし、押し出して、押し出したストランドを100℃の条件で6h乾燥させ、600℃で3h焙焼して、担体Z5を得た。
【0046】
(2)触媒の製造
ドデシルトリエトキシシランと最終触媒のMo含有量とのモル比が0.2:1、ジエタノールアミンと最終触媒のNi含有量とのモル比が0.2:1となるように、Mo、Ni、P、ドデシルトリエトキシシラン(CAS#:3069-21-4)、ジエタノールアミン及び水を含有する浸漬液で担体Z5を等体積浸漬し、120℃で3h乾燥させ、400℃で2時間焙焼し、最終的に得られた触媒をC-5とした。触媒性質を表1に示す。
【0047】
〔実施例6〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
微結晶性セルロースを加えない以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体Z6を得た。
【0048】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体Z6に変更した以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をC-6とした。触媒性質を表1に示す。
【0049】
〔実施例7〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
担体の製造方法は実施例5と同様であった。
【0050】
(2)触媒の製造
浸漬液中にジエタノールアミンが含有されない以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をC-7とし、触媒性質を表1に示す。
【0051】
〔比較例1〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
微結晶性セルロースを加えない以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体DZ1を得た。
【0052】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体DZ1に変更し、且つ浸漬液中にジエタノールアミンとドデシルトリエトキシシランが含有されない以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をDC-1とし、触媒性質を表1に示す。
【0053】
〔比較例2〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
微結晶性セルロースを加えず、且つ、SAPO-34分子篩を同重量のY分子篩に変更し、即ちY分子篩の添加量が34gであった以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体DZ2を得た。
【0054】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体DZ2に変更した以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をDC-2とし、触媒性質を表1に示す。
【0055】
〔比較例3〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
微結晶性セルロースを加えず、且つY分子篩を同重量のSAPO-34分子篩に変更し、即ちSAPO-34分子篩の添加量が34gであった以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体DZ3を得た。
【0056】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体DZ3に変更した以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をDC-3とし、触媒性質を表1に示す。
【0057】
〔比較例4〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
微結晶性セルロースを加えず、且つSAPO-34分子篩を、同重量のSAPO-11(SiO/Alモル比0.3、比表面積735m/g、総細孔容積0.52mL/g)分子篩に変更した以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体DZ4を得た。
【0058】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体DZ4に変更した以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をDC-4とし、触媒性質を表1に示す。
【0059】
〔実施例8〕
(1)水素化分解触媒担体の製造
前記Y分子篩1.7-10nmの二次孔が占める細孔容積が総細孔容積の50%であった以外、実施例5のステップ(1)の方法によって行って、担体Z8を得た。
【0060】
(2)触媒の製造
担体Z5を上記担体Z8に変更した以外、実施例5のステップ(2)の方法によって行って、最終的に得られた触媒をC-8とした。触媒性質を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
上記実施例及び比較例で製造された触媒について活性評価試験を行った。実験は200ml小規模試験装置にて、タンデムプロセス(即ち、水素添加精製と水素化分解をタンデムにしたプロセス)を用いて行われ、水素添加精製触媒の組成として、MoO含有量は23.3重量%、NiO含有量は3.7重量%、P含有量は1.38重量%、残量はアルミナ担体である。使用した原料油の性質を表2に示し、操作条件として、反応器の入口圧力は14.7MPaであり、反応器の入口での水素と油の体積比は1200:1であり、精製セクションでは、液体毎時容積空間速度は1.0h-1であり、平均反応温度は375℃であり、分解セクションでは、液体毎時容積空間速度は1.4h-1であり、平均反応温度は383℃であり、触媒活性の結果を表3に示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
表3の評価結果から分かるように、本発明の触媒は、ジェット燃料の収率が高く、製品の性質に優れ、テールオイルのBMCI値が低いなどの特徴を有する。