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特許7182025運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-22
(45)【発行日】2022-12-01
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/00 20060101AFI20221124BHJP
   C02F 1/461 20060101ALI20221124BHJP
   C25B 15/023 20210101ALI20221124BHJP
【FI】
C25B15/00 302A
C02F1/461 A
C25B15/023
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022046886
(22)【出願日】2022-03-23
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 広晃
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/059321(WO,A1)
【文献】特開2002-302784(JP,A)
【文献】特開平06-073586(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0289312(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0123998(KR,A)
【文献】特開昭48-089895(JP,A)
【文献】特開平03-150384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00-15/08
C02F 1/46-1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値、および、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて、前記イオン交換膜の性能低下速度を推定する推定部を備え、
前記電解槽は、前記イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有し、
前記陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され、
前記アルカリ金属の、前記陽極室から前記陰極室にわたる濃度プロファイルは、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて変化し、
前記推定部は、前記濃度プロファイルに基づいて前記性能低下速度を推定する、
運転支援装置。
【請求項2】
前記不純物の前記イオン交換膜への蓄積位置は、前記濃度プロファイルの変化に基づいて変化し、
前記推定部は、前記蓄積位置に基づいて前記性能低下速度を推定する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転条件の実績値は、前記アルカリ金属の水溶液のpHの実績値である、請求項1または2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記推定部は、前記性能低下速度に基づいて、前記電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記不純物データは、前記イオン交換膜の実解析データである、請求項1から4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記電解槽は、前記イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有し、
前記陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され、前記陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出され、
前記不純物データは、前記アルカリ金属の塩化物の水溶液における、不純物の濃度データである、
請求項1から5のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項7】
電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、前記イオン交換膜の性能低下速度を推定する推定部と、
性能低下予測モデルを生成する複数の性能低下学習部と、
前記電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、前記不純物の蓄積速度をリアルタイムで取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記不純物の現在の蓄積速度に基づいて、前記不純物データの過去の実績値を補正する補正部と、
を備え、
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値および前記電解槽の運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係を機械学習することにより、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係に基づく、前記イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力し、
前記複数の性能低下学習部のそれぞれは、複数の前記イオン交換膜の種類のそれぞれごとに前記性能低下予測モデルを生成し、
前記イオン交換膜の種類は、前記イオン交換膜における陰イオン基の密度または前記イオン交換膜の厚さである、
運転支援装置。
【請求項8】
前記性能低下予測モデルは、複数の前記運転条件のそれぞれに対応する、複数の性能低下速度の予測量を出力する、請求項7に記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値と、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、前記生産パラメータを満たす、前記電解槽の運転条件を推定する、請求項7または8に記載の運転支援装置。
【請求項10】
前記性能低下予測モデルは、前記生産パラメータを満たす前記運転条件が存在しない場合、前記イオン交換膜の性能の回復時期および前記イオン交換膜の交換時期の少なくとも一方を推定する、請求項9に記載の運転支援装置。
【請求項11】
前記推定部は、前記実績値を第1周期で取得し、
前記取得部は、前記不純物の蓄積速度を、前記第1周期よりも短い第2周期で取得する、
請求項7から10のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項12】
前記不純物は、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ヨウ素、シリコン、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、チタンおよびリンの少なくとも一つである、請求項1から11のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【請求項13】
推定部が、電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値、および、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて、前記イオン交換膜の性能低下速度を推定する第1推定ステップを備え、
前記電解槽は、前記イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有し、
前記陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され、
前記アルカリ金属の、前記陽極室から前記陰極室にわたる濃度プロファイルは、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて変化し、
前記第1推定ステップは、前記推定部が前記濃度プロファイルに基づいて、前記性能低下速度を推定するステップである、
運転支援方法。
【請求項14】
前記不純物の前記イオン交換膜への蓄積位置は、前記濃度プロファイルの変化に基づいて変化し、
前記第1推定ステップは、前記推定部が前記蓄積位置に基づいて、前記性能低下速度を推定するステップである、
請求項13に記載の運転支援方法。
【請求項15】
前記運転条件の実績値は、前記アルカリ金属の水溶液のpHの実績値である、請求項13または14に記載の運転支援方法。
【請求項16】
前記推定部が、前記第1推定ステップにおいて推定された前記性能低下速度に基づいて、前記電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定する第2推定ステップをさらに備える、請求項13から15のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項17】
前記第1推定ステップは、複数の性能低下学習部が性能低下予測モデルを生成する性能低下学習ステップを含み、
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係を機械学習することにより、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係に基づく、前記イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力し、
前記性能低下学習ステップは、前記複数の性能低下学習部のそれぞれが、複数の前記イオン交換膜の種類のそれぞれごとに前記性能低下予測モデルを生成するステップであり、
前記イオン交換膜の種類は、前記イオン交換膜における陰イオン基の密度または前記イオン交換膜の厚さである、
請求項13から16のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項18】
前記第1推定ステップは、前記性能低下予測モデルが、前記不純物データの実績値と、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、前記生産パラメータを満たす、前記電解槽の運転条件を推定する運転条件推定ステップをさらに含む、請求項17に記載の運転支援方法。
【請求項19】
取得部が、前記電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、前記不純物の蓄積速度を取得する取得ステップと、
補正部が、前記取得ステップにおいて取得された前記不純物の蓄積速度に基づいて、前記不純物データの実績値を補正する補正ステップと、
をさらに備える請求項13から18のいずれか一項に記載の運転支援方法。
【請求項20】
コンピュータを、請求項1から12のいずれか一項に記載の運転支援装置として機能させるための運転支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「本実施形態のイオン交換膜の更新方法は、陽極側ガスケットと陰極側ガスケットとの間に前記イオン交換膜を挟む工程を有し、・・・」と記載されている(段落0052)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2019-19408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電解槽におけるイオン交換膜の性能は、電解槽の稼働時間とともに低下し得る。イオン交換膜の性能の低下速度は、電解槽の運転条件(温度、濃度、電流等)により変化し得る。このため、電解槽は最適な運転条件で稼働されることが望ましい。電解槽の予定される稼働期間のうちの一の時点における最適な運転条件と、当該稼働期間の全体を考慮した最適な運転条件とは、異なり得る。このため、電解槽は、予定される稼働期間の全体を考慮した最適な運転条件で稼働されることが望ましい。
【0004】
予定される稼働期間の全体を考慮した、電解槽の最適な運転条件を決定することは、当該稼働期間のうちの一の時点における最適な運転条件を決定することよりも、困難であり得る。このため、当該稼働期間の全体が考慮された最適な運転条件を、簡易に認知できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、運転支援装置を提供する。運転支援装置は、電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、イオン交換膜の性能低下速度を推定する推定部を備える。
【0006】
推定部は、性能低下速度に基づいて、電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定してよい。
【0007】
不純物データは、イオン交換膜の実解析データであってよい。
【0008】
電解槽は、イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有してよい。陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入されてよい。陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出されてよい。不純物データは、アルカリ金属の塩化物の水溶液における、不純物の濃度データであってよい。
【0009】
推定部は、電解槽の運転条件の実績値に基づいて、性能低下速度を推定してよい。
【0010】
運転支援装置は、性能低下予測モデルを生成する性能低下学習部をさらに備えてよい。性能低下予測モデルは、不純物データの実績値および運転条件の実績値と、性能低下速度との関係を機械学習することにより、不純物データの実績値および運転条件の実績値と、性能低下速度との関係に基づく、イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力してよい。
【0011】
性能低下予測モデルは、複数の運転条件のそれぞれに対応する、複数の性能低下速度の予測量を出力してよい。
【0012】
運転支援装置は、複数の性能低下学習部を備えてよい。複数の性能低下学習部のそれぞれは、複数のイオン交換膜の種類のそれぞれごとに、性能低下予測モデルを生成してよい。
【0013】
性能低下予測モデルは、不純物データの実績値と、電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、生産パラメータを満たす、電解槽の運転条件を推定してよい。
【0014】
性能低下予測モデルは、生産パラメータを満たす運転条件が存在しない場合、イオン交換膜の性能の回復時期およびイオン交換膜の交換時期の少なくとも一方を推定してよい。
【0015】
運転支援装置は、電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、不純物の蓄積速度を取得する取得部と、取得部により取得された不純物の蓄積速度に基づいて、不純物データの実績値を補正する補正部とをさらに備えてよい。
【0016】
推定部は、実績値を第1周期で取得してよい。取得部は、不純物の蓄積速度を、第1周期よりも短い第2周期で取得してよい。
【0017】
不純物は、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ヨウ素、シリコン、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、チタンおよびリンの少なくとも一つであってよい。
【0018】
本発明の第2の態様においては、運転支援方法を提供する。運転支援方法は、推定部が、電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、イオン交換膜の性能低下速度を推定する第1推定ステップを備える。
【0019】
運転支援方法は、推定部が、第1推定ステップにおいて推定された性能低下速度に基づいて、電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定する第2推定ステップをさらに備えてよい。
【0020】
第1推定ステップは、推定部が、電解槽の運転条件の実績値に基づいて、性能低下速度を推定するステップであってよい。
【0021】
第1推定ステップは、性能低下学習部が性能低下予測モデルを生成する性能低下学習ステップを含んでよい。性能低下予測モデルは、不純物データの実績値および運転条件の実績値と、性能低下速度との関係を機械学習することにより、不純物データの実績値および運転条件の実績値と、性能低下速度との関係に基づく、イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力してよい。
【0022】
第1推定ステップは、性能低下予測モデルが、不純物データの実績値と、電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、生産パラメータを満たす、電解槽の運転条件を推定する運転条件推定ステップをさらに含んでよい。
【0023】
運転支援方法は、取得部が、電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、不純物の蓄積速度を取得する取得ステップと、補正部が、取得ステップにおいて取得された不純物の蓄積速度に基づいて、不純物データの実績値を補正する補正ステップとをさらに備えてよい。
【0024】
本発明の第3の態様においては、運転支援プログラムを提供する。運転支援プログラムは、コンピュータを運転支援装置として機能させるための運転支援プログラム。
【0025】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一つの実施形態に係る電解装置200の一例を示す図である。
図2図1における1つの電解セル91の詳細の一例を示す図である。
図3図2に示される電解セル91におけるイオン交換膜84の近傍を拡大した図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の一例を示す図である。
図5】陽極室79、イオン交換膜84および陰極室98にわたるアルカリ金属の濃度プロファイルの一例を示す図である。
図6】イオン交換膜84のクラスター85を模式的に示す図である。
図7】イオン交換膜84のクラスター85を模式的に示す図である。
図8】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図9】性能低下予測モデル62の一例を示す図である。
図10】出力部32における出力態様の一例を示す図である。
図11】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図12】性能低下予測モデル62による予測量VLpの予測または運転条件Cdの推定の一例を示す図である。
図13】性能低下予測モデル62による、イオン交換膜84の性能の回復時期またはイオン交換膜84の交換時期の推定の一例を示す図である。
図14】本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。
図15】取得部35による不純物Imの蓄積速度の取得タイミング、および、推定部10による実績値Viの取得タイミングの一例を示す図である。
図16】本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。
図17】本発明の実施形態に係る運転支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0028】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る電解装置200の一例を示す図である。本例の電解装置200は、電解槽90、導入管92、導入管93、導出管94および導出管95を備える。
【0029】
電解装置200は、電解液を電気分解する装置である。電解槽90は、電解液を電気分解する槽である。当該電解液は、例えばNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である。電解槽90は、例えば、NaCl(塩化ナトリウム)水溶液を電気分解することにより、Cl(塩素)とNaOH(水酸化ナトリウム)とH(水素)とを生成する。電解槽90は、複数の電解セル91(電解セル91-1~電解セル91-N。Nは2以上の整数)を備えてよい。Nは、例えば50である。
【0030】
本例において、導入管92および導入管93は、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに接続されている。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれには、液体70が導入される。液体70は、導入管92を通過した後、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに導入されてよい。液体70は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。アルカリ金属は、元素周期表第1族に属する元素である。液体70は、例えばNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である。
【0031】
電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれには、液体72が導入される。液体72は、導入管93を通過した後、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに導入されてよい。液体72は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。液体72は、例えばNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。
【0032】
本例において、導出管94および導出管95は、電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれに接続されている。電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれからは、液体76および気体78(後述)が導出される。液体76および気体78(後述)は、導出管95を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。液体76は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。液体72がNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である場合、液体76はNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。気体78(後述)は、H(水素)であってよい。
【0033】
電解セル91-1~電解セル91-Nのそれぞれからは、液体74および気体77(後述)が導出される。液体74および気体77(後述)は、導出管94を通過した後、電解装置200の外部に導出されてよい。液体74は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、液体74はNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である。気体77(後述)は、Cl(塩素)であってよい。
【0034】
図2は、図1における1つの電解セル91の詳細の一例を示す図である。電解槽90は、陽極室79、陽極80、陰極室98、陰極82およびイオン交換膜84を有する。本例においては、1つの電解セル91が、陽極室79、陽極80、陰極室98、陰極82およびイオン交換膜84を有する。陽極室79および陰極室98は、電解セル91の内部に設けられている。陽極室79と陰極室98とは、イオン交換膜84により仕切られている。陽極室79には、陽極80が配置される。陰極室98には、陰極82が配置される。
【0035】
本明細書においては、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。本明細書においては、陽極室79および陰極室98の底面88と平行な面をXY面とする。本明細書において、底面88と、陽極室79および陰極室98の天井面89とを結ぶ方向(底面88に垂直な方向)をZ軸方向とする。本明細書において、陽極80から陰極82へ向かう方向をY軸方向とし、XY面内においてY軸に直交する方向をX軸方向とする。Z軸方向は重力方向に平行であってよい。Z軸方向が重力方向に平行である場合、XY面は水平面であってよい。
【0036】
陽極室79には、導入管92および導出管94が接続されている。陰極室98には、導入管93および導出管95が接続されている。陽極室79には、液体70が導入される。陰極室98には、液体72が導入される。
【0037】
イオン交換膜84は、イオン交換膜84に配置されたイオンとは異符号のイオンの通過を阻止し、且つ、同符号のイオンを通過させる、膜状の物質である。本例においては、イオン交換膜84は、Na(ナトリウムイオン)を通過させ、且つ、Cl(塩化物イオン)の通過を阻止する膜である。
【0038】
陽極80および陰極82は、それぞれ予め定められた正の電位および負の電位に維持されてよい。陽極室79に導入された液体70、および、陰極室98に導入された液体72は、陽極80と陰極82との間の電位差により、電気分解される。陽極80においては、次の化学反応が起こる。
[化学式1]
2Cl→Cl+2e
【0039】
液体70がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、NaCl(塩化ナトリウム)は、Na(ナトリウムイオン)とCl(塩化物イオン)とに電離している。陽極80においては、化学式1に示される化学反応によりCl(塩素)ガスが生成される。気体77(当該Cl(塩素)ガス)および液体74は、陽極室79から導出されてよい。Na(ナトリウムイオン)は、陰極82からの引力により、陽極室79からイオン交換膜84を経由した後、陰極室98に移動する。
【0040】
陽極室79には、液体73が滞留していてよい。液体73は、アルカリ金属の塩化物の水溶液である。本例においては、液体73はNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である。液体73のNa(ナトリウムイオン)濃度およびCl(塩化物イオン)濃度は、液体70のNa(ナトリウムイオン)濃度およびCl(塩化物イオン)濃度よりも小さくてよい。
【0041】
陰極82においては、次の化学反応が起こる。
[化学式2]
2HO+2e→H+2OH
【0042】
液体72がNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である場合、NaOH(水酸化ナトリウム)は、Na(ナトリウムイオン)とOH(水酸化物イオン)とに電離している。陰極82においては、化学式2に示される化学反応により、H(水素)ガスとOH(水酸化物イオン)が生成される。気体78(当該H(水素)ガス)および液体76は、陰極室98から導出されてよい。
【0043】
陰極室98には、液体75が滞留していてよい。液体75は、アルカリ金属の水酸化物の水溶液である。本例においては、液体75はNaOH(水酸化ナトリウム)水溶液である。本例においては、陰極室98には、化学式2に示される化学反応より生成したOH(水酸化物イオン)と、陽極室79から移動したNa(ナトリウムイオン)とが溶解した液体75が滞留している。
【0044】
図3は、図2に示される電解セル91におけるイオン交換膜84の近傍を拡大した図である。本例のイオン交換膜84には、陰イオン基86が固定されている。陰イオンは、陰イオン基86により反発されるので、イオン交換膜84を通過しにくい。本例において、当該陰イオンは、Cl(塩化物イオン)である。陽イオン71は、陰イオン基86により反発されないので、イオン交換膜84を通過できる。液体70(図2参照)がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、陽イオン71はNa(ナトリウムイオン)である。
【0045】
図4は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の一例を示す図である。運転支援装置100は、電解槽90(図1参照)の運転を支援する。運転支援装置100は、推定部10を備える。運転支援装置100は、制御部20、入力部30、出力部32および記憶部40を備えてよい。
【0046】
運転支援装置100は、一例としてCPU、メモリおよびインターフェース等を備えるコンピュータである。制御部20は、当該CPUであってよい。推定部10と制御部20とが、一つの当該CPUであってもよい。運転支援装置100がコンピュータである場合、当該コンピュータには、後述する運転支援方法を実行させるため運転支援プログラムがインストールされていてよく、当該コンピュータを運転支援装置100として機能させるための運転支援プログラムがインストールされていてもよい。
【0047】
入力部30は、例えばキーボード、マウス等である。出力部32は、推定部10による推定結果を出力する。出力部32は、例えばディスプレイ、モニタ等である。
【0048】
電解槽90(図1参照)は液体70を電気分解するので、電解槽90の稼働時間経過に伴い、不純物がイオン交換膜84に蓄積し得る。イオン交換膜84に蓄積した当該不純物を、不純物Imとする。不純物Imがイオン交換膜84に蓄積した場合、イオン交換膜84の性能が低下し得る。イオン交換膜84の性能とは、イオン交換膜84のイオン交換性能を指す。
【0049】
電解槽90(図1参照)には、原塩が溶解した塩水に対して予め定められた処理がされた液体70(図1参照)が導入される。予め定められた処理とは、例えば、クラリファイヤによる、塩水に含まれるSS(サスペンデッドソリッド)の沈殿、セラミックフィルタによる当該SSの除去、樹脂塔による、塩水に含まれるBa(バリウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)およびMg(マグネシウム)の少なくとも一つの除去、等である。
【0050】
原塩には、I(ヨウ素)、Fe(鉄)、Ti(チタン)およびP(リン)の少なくとも一つが含まれる場合がある。SS(サスペンデッドソリッド)には、Si(シリコン)およびAl(アルミニウム)の少なくとも一方が含まれる場合がある。不純物Imには、Ba(バリウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Mg(マグネシウム)、I(ヨウ素)、Fe(鉄)、Ti(チタン)、Si(シリコン)、Al(アルミニウム)およびP(リン)の少なくとも一つが含まれてよい。
【0051】
陰極82の表面には、Ni(ニッケル)が設けられる場合がある。陰極82の表面には、Ni(ニッケル)がめっきにより形成される場合がある。電解槽90の稼働時間経過に伴い、陰極82の表面に設けられたNi(ニッケル)が液体75(図2参照)に含まれる場合がある。不純物Imには、Ni(ニッケル)が含まれてよい。
【0052】
推定部10は、イオン交換膜84への不純物Imの蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、イオン交換膜84の性能低下速度を推定する。当該不純物データを、不純物データDiとする。当該実績値を、実績値Viとする。当該性能低下速度を、性能低下速度VLとする。
【0053】
不純物データDiは、イオン交換膜84の実解析データであってよい。イオン交換膜84の実解析データとは、イオン交換膜84に蓄積した不純物Imの成分および成分ごとの量を解析したデータであってよい。イオン交換膜84の実解析データとは、不純物Imの当該成分および当該成分ごとの量と、当該イオン交換膜84が電解槽90に装着された状態における当該電解槽90の稼働時間との関係を解析したデータであってもよい。イオン交換膜84の実解析データは、イオン交換膜84が電解槽90から外された状態で取得されてよく、電解槽90に装着された状態で取得されてもよい。
【0054】
イオン交換膜84の実解析データは、入力部30により入力されてよい。入力部30により入力された当該実解析データは、記憶部40に記憶されてよい。
【0055】
イオン交換膜84の性能が低下した場合、液体73に含まれるアルカリ金属の塩化物がイオン交換膜84を通過する場合がある。イオン交換膜84を通過したアルカリ金属の塩化物は、液体75に含まれる場合がある。上述したとおり、液体75はアルカリ金属の水酸化物の水溶液である。
【0056】
不純物データDiは、液体73における、不純物Imの濃度データであってもよい。液体73がNaCl(塩化ナトリウム)水溶液である場合、実績値Viは、当該NaCl(塩化ナトリウム)水溶液における不純物Imの濃度データであってよい。
【0057】
運転支援装置100において、推定部10は実績値Viに基づいて性能低下速度VLを推定する。このため、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84の将来の性能低下を認知できる。
【0058】
電解槽90の運転条件を、運転条件Cdとする。運転条件Cdとは、イオン交換膜84の状態に影響を与え得る、電解槽90の運転状況を指す。
【0059】
電流効率CEとは、電解槽90により生産される生産物の理論上の生産量に対する実際の生産量の割合を指す。当該生産物を、生産物Pとする。生産物Pの理論上の生産量を、生産量Paとする。生産物Pの実際の生産量を、生産量Prとする。電流効率CEとは、生産量Paに対する生産量Prの割合を指す。運転条件Cdには、液体70(図2参照)のpHおよび流量、液体72(図2参照)のpHおよび流量、および、液体73(図2参照)または液体75(図2参照)の温度がさらに含まれてよい。
【0060】
推定部10は、運転条件Cdの実績値に基づいて、イオン交換膜84の性能低下速度VLを推定してよい。当該実績値を、実績値Vdとする。推定部10は、実績値Viと実績値Vdとに基づいて、性能低下速度VLを推定してよい。
【0061】
実績値Vdは、電解槽90の電流の実績値、電流効率CEの実績値、電圧CVの実績値、液体70(アルカリ金属の塩化物の水溶液)のpHおよび流量の実績値、液体72(アルカリ金属の水酸化物の水溶液)のpHおよび流量の実績値、および、液体73(図2参照)または液体75(図2参照)の温度の実績値の少なくとも一つであってよい。実績値Vdは、入力部30により入力されてよい。入力部30により入力された実績値Vdは、記憶部40に記憶されてよい。
【0062】
図5は、陽極室79、イオン交換膜84および陰極室98にわたるアルカリ金属の濃度プロファイルの一例を示す図である。図5において、位置P0は陽極80(図2参照)の位置であり、位置P4は陰極82(図2参照)の位置である。図5において、位置P1は陽極室79とイオン交換膜84との界面の位置であり、位置P3は陰極室98とイオン交換膜84との界面の位置である。図5において、位置P2は、イオン交換膜84におけるアルカリ金属の濃度が最小となる(濃度C2(後述)となる)位置である。
【0063】
図5において、濃度C0は陽極室79におけるアルカリ金属の濃度であり、濃度C4は陰極室98におけるアルカリ金属の濃度ある。図5において、濃度C1は位置P1におけるアルカリ金属の濃度であり、濃度C3は位置P3におけるアルカリ金属の濃度である。図5において、濃度C2は、イオン交換膜84におけるアルカリ金属の濃度の最小値である。図5に示されるとおり、アルカリ金属の濃度は、陽極80側よりも陰極82側の方が高い。イオン交換膜84におけるアルカリ金属の濃度は、位置P1から位置P2にかけて減少し、位置P2から位置P3にかけて増加する。
【0064】
液体70(図1、2参照)のpHまたは濃度、または、液体76(図1、2参照)のpHまたは濃度が変化すると、図5に示されるアルカリ金属の濃度プロファイルが変化し得る。これにより、イオン交換膜84に供給される不純物Imの供給量、または、イオン交換膜84に蓄積する不純物Imの蓄積位置が変化し得る。これにより、イオン交換膜84の性能低下速度VLが変化し得る。推定部10は、実績値Vdに基づいて性能低下速度VLを推定する。このため、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84の将来の性能低下を認知できる。
【0065】
図6および図7は、イオン交換膜84のクラスター85を模式的に示す図である。図6および図7は、イオン交換膜84を陽極80から陰極82への方向(イオン交換膜84の厚さ方向)に見た場合における、クラスター85の模式図である。図6は、液体73(図2参照)および液体75(図2参照)が予め定められた温度範囲における一の温度T1である場合のクラスター85の模式図である。図7は、液体73および液体75が当該温度範囲外、且つ、当該温度範囲よりも高温側の他の温度T2である場合のクラスター85の模式図である。
【0066】
液体73および液体75の少なくとも一方の温度が変化した場合、図6および図7に示されるように、イオン交換膜84のクラスター85の大きさが変化しうる。クラスター85の大きさが変化することで、図5に示されるアルカリ金属の濃度プロファイルが変化し得る。これにより、イオン交換膜84に供給される不純物Imの供給量、または、イオン交換膜84に蓄積する不純物Imの蓄積位置が変化し得る。これにより、イオン交換膜84の性能低下速度VLが変化し得る。推定部10は、実績値Vd(本例においては液体73および液体75の温度の実測値)に基づいて、性能低下速度VLを推定する。このため、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84の将来の性能低下を認知できる。
【0067】
生産物Pに関する生産パラメータを生産パラメータPrとする。生産パラメータPrには、電解槽90の電流効率CE、電流効率CEの低下速度、電解槽90の電圧CV、電圧CVの増加速度、生産物Pの単位時間当たりの生産量、生産物Pの品質、および、当該生産量および当該品質に影響し得るパラメータであって電解槽90の稼働に係るパラメータの少なくとも一つが含まれてよい。生産パラメータPrには、電解装置90の稼働に伴い発生するCO(二酸化炭素)の量が含まれてもよい。電解槽90の稼働に伴い発生するCO(二酸化炭素)とは、電解槽90が電気を消費することにより発生するCO(二酸化炭素)を指す。生産パラメータPrには、電解槽90の運転コストが含まれてもよい。運転コストには、電解槽90の運転に伴う電気コスト、イオン交換膜84を交換した場合におけるイオン交換膜84のコストが含まれてよい。
【0068】
推定部10は、性能低下速度VLに基づいて、電解槽90が一の運転条件Cdで運転された場合の生産パラメータPrを推定してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84の将来の性能低下が反映された生産パラメータPrを認知できる。
【0069】
図8は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、性能低下学習部60をさらに備える点で、図4に示される運転支援装置100と異なる。性能低下学習部60は、性能低下予測モデル62(後述)を生成する。性能低下予測モデル62(後述)は、記憶部40に記憶されてよい。
【0070】
図9は、性能低下予測モデル62の一例を示す図である。性能低下予測モデル62は、イオン交換膜84への不純物Imの蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Vi、および、運転条件Cdの実績値Vdと、イオン交換膜84の性能低下速度VLとの関係を機械学習することにより、当該実績値Viおよび当該実績値Vdと、当該性能低下速度VLとの関係に基づく、性能低下速度VLの予測量を出力する。当該性能低下速度の予測量を、予測量VLpとする。
【0071】
図10は、出力部32(図8参照)における出力態様の一例を示す図である。本例の出力部32は、ディスプレイである。運転条件Cdに関するパラメータを、運転パラメータPdとする。本例の出力部32には、運転パラメータPd表示部33と生産パラメータPr表示部34とが表示されている。運転支援装置100のユーザは、入力部30(図8参照)により運転パラメータPdおよび生産パラメータPrを入力してよい。
【0072】
運転支援装置100のユーザは、運転パラメータPdのうち、電解槽90の稼働中に固定したい一または複数の運転パラメータPdを指定してよい。性能低下予測モデル62(図9参照)は、複数の運転条件Cdのそれぞれに対応する、複数の性能低下速度VLの予測量VLpを出力してよい。当該複数の運転条件Cdとは、運転パラメータPd表示部33において運転パラメータPdが入力される場合、運転支援装置100のユーザが固定したい運転パラメータPdの第1のケースと第2のケースとを指す。当該第1のケースには、運転パラメータPd表示部33に表示される運転パラメータPdの一または複数が含まれてよく、当該第2のケースには、当該運転パラメータPdの一または複数であって当該第1のケースとは別の運転パラメータPdが含まれてよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、運転条件Cdを様々に変化させた場合の予測量VLpをシミュレーションできる。
【0073】
図11は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、複数の性能低下学習部60(性能低下学習部60-1~性能低下学習部60-n)を備える点で、図8に示される運転支援装置100と異なる。
【0074】
複数の性能低下学習部60のそれぞれは、複数のイオン交換膜84の種類のそれぞれごとに、性能低下予測モデル62(図9参照)を生成してよい。イオン交換膜84の種類とは、イオン交換膜84における陰イオン基86(図3参照)の密度、イオン交換膜84の厚さ等、イオン交換膜84の個体ごとに異なり得る物理量であってよい。イオン交換膜84の種類とは、当該個体ごとの、いわゆるロット番号であってもよい。イオン交換膜84の種類とは、陰イオン基86(図3参照)の種類であってもよい。
【0075】
イオン交換膜84の性能低下の態様は、イオン交換膜84の種類ごとに異なり得る。イオン交換膜84の種類ごとに性能低下予測モデル62が生成されることにより、性能低下予測モデル62のそれぞれは、イオン交換膜84の種類が反映された、より適切な予測量VLpを出力できる。
【0076】
図12は、性能低下予測モデル62による予測量VLpの予測または運転条件Cdの推定の一例を示す図である。本例の性能低下予測モデル62は、不純物Imの蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Viおよび運転条件Cdの実績値Vdと、性能低下速度VLとの関係を機械学習済みであるとする。性能低下予測モデル62は、実績値Viと生産パラメータPr(図10参照)とに基づいて、当該生産パラメータPrを満たす運転条件Cdを推定してよい。性能低下予測モデル62は、実績値Viと生産パラメータPrとが性能低下予測モデル62に入力された場合、当該生産パラメータPrを満たす運転条件Cdを推定してよい。当該運転条件Cdを、運転条件Cd'とする。性能低下予測モデル62は、運転条件Cd'を推定し、且つ、予測量VLpを予測してもよい。
【0077】
本例においては、性能低下予測モデル62は、実績値Viを説明変数とし、生産パラメータPrを制約条件とした場合における、最適な運転条件Cd'を、目的条件として出力する。運転支援装置100のユーザは、生産パラメータPr表示部34(図10参照)に表示される生産パラメータPrのうち、満たしたい生産パラメータPrを入力部30(図8参照)により指定し、且つ、満たしたい当該生産パラメータPrに係る数値を入力部30により入力してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、当該生産パラメータPrを制約条件とした場合の最適な運転条件Cd'を認知できる。
【0078】
制約条件には、運転支援装置100のユーザが満たしたい運転条件Cdがさらに含まれてもよい。運転支援装置100のユーザは、図10の運転パラメータPd表示部33に表示される運転パラメータPdのうち満たしたい運転パラメータPdを入力部30(図8参照)により指定し、且つ、満たしたい当該運転パラメータPdに係る数値を入力部30により入力してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、生産パラメータPrおよび運転パラメータPdを制約条件とした場合の最適な運転条件Cd'を認知できる。当該運転条件Cd'は、当該運転パラメータPdと異なっていてよい。
【0079】
図13は、性能低下予測モデル62による、イオン交換膜84の性能の回復時期またはイオン交換膜84の交換時期の推定の一例を示す図である。図12に示される予測量VLpの予測または運転条件Cdの推定において、生産パラメータPrを満たす運転条件Cd'が存在しない場合、性能低下予測モデル62は、イオン交換膜84の性能の回復時期およびイオン交換膜84の交換時期の少なくとも一方を推定してよい。これにより、運転支援装置100のユーザは、イオン交換膜84の性能の回復時期およびイオン交換膜84の交換時期の少なくとも一方を、予め認知できる。
【0080】
図14は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援装置100のブロック図の他の一例を示す図である。本例の運転支援装置100は、取得部35および補正部36をさらに備える点で、図8に示される運転支援装置100と異なる。
【0081】
取得部35は、電解槽90が一の運転条件Cdで運転されている場合における、不純物Imの蓄積速度を取得する。一の運転条件Cdとは、運転支援装置100のユーザにより指定された運転条件Cdを指してよい。一の運転条件Cdで運転されている場合とは、電解槽90が当該一の運転条件Cdで稼働中である場合を指してよい。取得部35は、電解槽90が一の運転条件Cdで稼働中に、リアルタイムで不純物Imの蓄積速度を取得してよい。
【0082】
補正部36は、取得部35により取得された不純物Imの蓄積速度に基づいて、蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Viを補正する。実績値Viは、取得部35により取得された蓄積速度と異なり得る。実績値Viは、蓄積速度の過去の実績である。取得部35がリアルタイムで蓄積速度を取得する場合、当該蓄積速度は現在の測定値である。このため、実績値Viよりも、取得部35により取得された蓄積速度の方が、現在のイオン交換膜84の状態が反映された蓄積速度であり得る。本例においては、補正部36は、取得部35により取得された蓄積速度に基づいて、実績値Viを補正する。このため、実績値Viは、現在のイオン交換膜84の状態がより反映された蓄積速度の値になりやすい。
【0083】
推定部10は、補正部36により補正された実績値Viに基づいて、性能低下速度VLを推定してよい。性能低下予測モデル62(図9参照)は、運転条件Cdの実績値Vdおよび補正部36により補正された実績値Viと、性能低下速度VLとの関係を機械学習してよい。
【0084】
図15は、取得部35による不純物Imの蓄積速度の取得タイミング、および、推定部10による実績値Viの取得タイミングの一例を示す図である。図15において、取得部35による不純物Imの蓄積速度の取得タイミングが白い丸印で示され、実績値Viの取得タイミングが黒い丸印で示されている。
【0085】
本例においては、推定部10は実績値Viを第1周期T1で取得し、取得部35は不純物Imの蓄積速度を第2周期T2で取得する。実績値Viを第1周期T1で取得するとは、記憶部40(図14参照)に記憶された実績値Viを、制御部20(図14参照)が第1周期T1で読み出すことを指してよい。不純物Imの蓄積速度を第2周期T2で取得するとは、取得部35が、電解槽90が稼働中に不純物Imの蓄積速度を第2周期T2で取得することを指してよい。
【0086】
第2周期T2は、第1周期T1よりも短くてよい。補正部36(図14参照)は、第2周期T2で取得された不純物Imの蓄積速度に基づいて、第1周期T1で取得された実績値Viを補正してよい。上述したとおり、実績値Viよりも、取得部35により取得された蓄積速度の方が、現在のイオン交換膜84の状態が反映された蓄積速度であり得る。このため、第2周期T2が第1周期T1よりも短いことにより、補正部36は、実績値Viを、より現在のイオン交換膜84の状態が反映された蓄積速度に補正しやすくなる。
【0087】
図16は、本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法の一例を示すフローチャートである。本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法は、電解槽90(図1参照)の運転を支援する運転支援方法である。
【0088】
本発明の一つの実施形態に係る運転支援方法は、第1推定ステップS100を備える。運転支援方法は、第1入力ステップS90、第2入力ステップS92および第3入力ステップS94を備えてよい。
【0089】
第1入力ステップS90は、イオン交換膜84の不純物Imの実績値Viを運転支援装置100(図8参照)に入力するステップである。第2入力ステップS92は、運転条件Cdの実績値Vdを運転支援装置100に入力するステップである。第3入力ステップS94は、性能低下速度VLの実績値を運転支援装置100に入力するステップである。
【0090】
実績値Vi、実績値Vdおよび性能低下速度VLの実績値は、入力部30(図8参照)により入力されてよい。第1入力ステップS90~第3入力ステップS94は、この順に実施されてよく、この順に実施されなくてもよい。
【0091】
第1推定ステップS100は、推定部10(図4参照)が、電解槽90におけるイオン交換膜84(図2および図3参照)への不純物Imの蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Viに基づいて、イオン交換膜84の性能低下速度VLを推定するステップである。 第1推定ステップS100は、推定部10(図4参照)が、電解槽90(図1参照)の運転条件Cdの実績値Vdに基づいて、性能低下速度VLを推定するステップであってもよい。
【0092】
第1推定ステップS100は、性能低下学習部60(図8)が性能低下予測モデル62(図9参照)を生成する性能低下学習ステップS102を含んでよい。性能低下予測モデル62は、蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Viおよび運転条件Cdの実績値Vdと、性能低下速度VLとの関係を機械学習することにより、実績値Viおよび実績値Vdと、性能低下速度VLとの関係に基づく、イオン交換膜84の性能低下速度VLの予測量VLpを出力する。
【0093】
第1推定ステップS100は、第4入力ステップS104および第5入力ステップS106を含んでよい。第4入力ステップS104は、イオン交換膜84の不純物Imの実績値Viを性能低下予測モデル62に入力するステップである。第5入力ステップS106は、運転条件Cdおよび生産パラメータPrを性能低下予測モデル62に入力するステップである。
【0094】
第4入力ステップS104における実績値Vi、および、第5入力ステップS106における実績値Vdおよび性能低下速度VLの実績値は、入力部30(図8参照)により入力されてよい。運転支援方法において、第4入力ステップS104の次に第5入力ステップS106が実施されてよく、第5入力ステップS106の次に第4入力ステップS104が実施されてもよい。
【0095】
第1推定ステップS100は、運転条件推定ステップS108をさらに含んでよい。運転条件推定ステップS108は、性能低下予測モデル62(図12参照)が、実績値Viと生産パラメータPrとに基づいて、生産パラメータPrを満たす、電解槽90の運転条件Cdを推定するステップである。当該生産パラメータPrは、生産パラメータPr表示部34(図10参照)に表示される生産パラメータPrのうち、運転支援方法のユーザが満たしたい生産パラメータPrであってよい。
【0096】
運転支援方法は、第2推定ステップS120をさらに備えてよい。第2推定ステップS120は、推定部10(図4参照)が、第1推定ステップS100において推定された性能低下速度VLに基づいて、電解槽90が一の運転条件Cdで運転された場合における生産パラメータPr(図10参照)を推定するステップである。
【0097】
運転支援方法は、出力部32(図8参照)が、第1推定ステップS100において推定された性能低下速度VLおよび運転条件Cd'の少なくとも一方を出力する出力ステップS130をさらに備えてよい。出力ステップS130は、出力部32が、第2推定ステップS120において推定された生産パラメータPrをさらに出力するステップであってもよい。これにより、運転支援方法のユーザは、推定された性能低下速度VL、運転条件Cd'および生産パラメータPrの少なくとも一つを認知できる。出力ステップS130は、出力部32が、イオン交換膜84、陽極80および陰極82の少なくとも一つの状態を、運転支援装置100のユーザに出力するステップであってもよい。
【0098】
運転支援方法は、取得ステップS96および補正ステップS98をさらに備えてよい。取得ステップS96は、取得部35(図14参照)が、電解槽90(図1参照)が一の運転条件Cdで運転されている場合における、不純物Imの蓄積速度を取得するステップである。補正ステップS98は、補正部36(図14参照)が、取得ステップS96において取得された不純物Imの蓄積速度に基づいて、蓄積速度に関する不純物データDiの実績値Viを補正するステップである。
【0099】
第1推定ステップS100は、推定部10(図14参照)が、補正ステップS98において補正された実績値Viに基づいて、性能低下速度VLを推定するステップであってよい。性能低下学習ステップS102は、性能低下予測モデル62(図9参照)が、第2入力ステップS92において入力された運転条件Cdの実績値Vd、および、補正ステップS98において補正された実績値Viと、性能低下速度VLとの関係を機械学習するステップであってよい。
【0100】
本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよい。本発明の様々な実施形態において、ブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。
【0101】
特定の段階が、専用回路、プログラマブル回路またはプロセッサによって実行されてよい。特定のセクションが、専用回路、プログラマブル回路またはプロセッサによって実装されてよい。当該プログラマブル回路および当該プロセッサは、コンピュータ可読命令と共に供給されてよい。当該コンピュータ可読命令は、コンピュータ可読媒体上に格納されてよい。
【0102】
専用回路は、デジタルハードウェア回路およびアナログハードウェア回路の少なくとも一方を含んでよい。専用回路は、集積回路(IC)およびディスクリート回路の少なくとも一方を含んでもよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NORまたは他の論理操作のハードウェア回路を含んでよい。プログラマブル回路は、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでもよい。
【0103】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよい。コンピュータ可読媒体が当該有形なデバイスを含むことにより、当該デバイスに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。
【0104】
コンピュータ可読媒体は、例えば電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等であってよい。コンピュータ可読媒体は、より具体的には、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等であってよい。
【0105】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、ソースコードおよびオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。当該ソースコードおよび当該オブジェクトコードは、オブジェクト指向プログラミング言語および従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されてよい。オブジェクト指向プログラミング言語は、例えばSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等であってよい。手続型プログラミング言語は、例えば「C」プログラミング言語であってよい。
【0106】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供されてよい。汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路は、図16に示されるフローチャート、または、図4図8図11および図14に示されるブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサは、例えばコンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等であってよい。
【0107】
図17は、本発明の実施形態に係る運転支援装置100が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の一例を示す図である。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る運転支援装置100に関連付けられる操作または運転支援装置100の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、またはコンピュータ2200に、本発明の運転支援方法に係る各段階(図16参照)を実行させることができる。当該プログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載されたフローチャート(図16)およびブロック図(図4図8図11および図14)におけるブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0108】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218を含む。CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216およびディスプレイデバイス2218は、ホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200は、通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等の入出力ユニットをさらに含む。通信インターフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226およびICカードドライブ等は、入出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータは、ROM2230およびキーボード2242等のレガシの入出力ユニットをさらに含む。ROM2230およびキーボード2242等は、入出力チップ2240を介して入出力コントローラ2220に接続されている。
【0109】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作することにより、各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはRAM2214の中に、CPU2212によって生成されたイメージデータを取得することにより、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0110】
通信インターフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、読み取ったプログラムまたはデータを、RAM2214を介してハードディスクドライブ2224に提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取るか、または、プログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0111】
ROM2230は、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、または、コンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ2240は、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ2220に接続してよい。
【0112】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い、情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0113】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0114】
CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにしてよい。CPU2212は、RAM2214上のデータに対し、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0115】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理されてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示に記載された、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索または置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は、結果をRAM2214に対しライトバックしてよい。
【0116】
CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、第2の属性値を読み取ることにより、予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0117】
上述したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能である。プログラムは、当該記録媒体によりコンピュータ2200に提供されてよい。
【0118】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0119】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、前記イオン交換膜の性能低下速度を推定する推定部を備える、運転支援装置。
[項目2]
前記推定部は、前記性能低下速度に基づいて、前記電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定する、項目1に記載の運転支援装置。
[項目3]
前記不純物データは、前記イオン交換膜の実解析データである、項目1または2に記載の運転支援装置。
[項目4]
前記電解槽は、前記イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有し、
前記陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され、前記陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出され、
前記不純物データは、前記アルカリ金属の塩化物の水溶液における、不純物の濃度データである、
項目1から3のいずれか一項に記載の運転支援装置。
[項目5]
前記推定部は、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて、前記性能低下速度を推定する、項目1から4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
[項目6]
性能低下予測モデルを生成する性能低下学習部をさらに備え、
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係を機械学習することにより、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係に基づく、前記イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力する、
項目5に記載の運転支援装置。
[項目7]
前記性能低下予測モデルは、複数の前記運転条件のそれぞれに対応する、複数の性能低下速度の予測量を出力する、項目6に記載の運転支援装置。
[項目8]
複数の前記性能低下学習部を備え、
複数の前記性能低下学習部のそれぞれは、複数の前記イオン交換膜の種類のそれぞれごとに、前記性能低下予測モデルを生成する、
項目6または7に記載の運転支援装置。
[項目9]
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値と、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、前記生産パラメータを満たす、前記電解槽の運転条件を推定する、項目6から8のいずれか一項に記載の運転支援装置。
[項目10]
前記性能低下予測モデルは、前記生産パラメータを満たす前記運転条件が存在しない場合、前記イオン交換膜の性能の回復時期および前記イオン交換膜の交換時期の少なくとも一方を推定する、項目9に記載の運転支援装置。
[項目11]
前記電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、前記不純物の蓄積速度を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記不純物の蓄積速度に基づいて、前記不純物データの実績値を補正する補正部と、
をさらに備える項目1から10のいずれか一項に記載の運転支援装置。
[項目12]
前記推定部は、前記実績値を第1周期で取得し、
前記取得部は、前記不純物の蓄積速度を、前記第1周期よりも短い第2周期で取得する、
項目11に記載の運転支援装置。
[項目13]
前記不純物は、バリウム、カルシウム、ストロンチウム、ヨウ素、シリコン、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、鉄、チタンおよびリンの少なくとも一つである、項目1から12のいずれか一項に記載の運転支援装置。
[項目14]
推定部が、電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、前記イオン交換膜の性能低下速度を推定する第1推定ステップを備える、運転支援方法。
[項目15]
前記推定部が、前記第1推定ステップにおいて推定された前記性能低下速度に基づいて、前記電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定する第2推定ステップをさらに備える、項目14に記載の運転支援方法。
[項目16]
前記第1推定ステップは、前記推定部が、前記電解槽の運転条件の実績値に基づいて、前記性能低下速度を推定するステップである、項目14または15に記載の運転支援方法。
[項目17]
前記第1推定ステップは、性能低下学習部が性能低下予測モデルを生成する性能低下学習ステップを含み、
前記性能低下予測モデルは、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係を機械学習することにより、前記不純物データの実績値および前記運転条件の実績値と、前記性能低下速度との関係に基づく、前記イオン交換膜の性能低下速度の予測量を出力する、
項目16に記載の運転支援方法。
[項目18]
前記第1推定ステップは、前記性能低下予測モデルが、前記不純物データの実績値と、前記電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータとに基づいて、前記生産パラメータを満たす、前記電解槽の運転条件を推定する運転条件推定ステップをさらに含む、項目17に記載の運転支援方法。
[項目19]
取得部が、前記電解槽が一の運転条件で運転されている場合における、前記不純物の蓄積速度を取得する取得ステップと、
補正部が、前記取得ステップにおいて取得された前記不純物の蓄積速度に基づいて、前記不純物データの実績値を補正する補正ステップと、
をさらに備える項目14から18のいずれか一項に記載の運転支援方法。
[項目20]
コンピュータを、項目1から13のいずれか一項に記載の運転支援装置として機能させるための運転支援プログラム。
【符号の説明】
【0120】
10・・・推定部、20・・・制御部、30・・・入力部、32・・・出力部、33・・・運転パラメータPd表示部、34・・・生産パラメータPr表示部、35・・・取得部、36・・・補正部、40・・・記憶部、60・・・性能低下学習部、62・・・性能低下予測モデル、70・・・液体、71・・・陽イオン、72・・・液体、73・・・液体、74・・・液体、75・・・液体、76・・・液体、77・・・気体、78・・・気体、79・・・陽極室、80・・・陽極、82・・・陰極、84・・・イオン交換膜、85・・・クラスター、86・・・陰イオン基、88・・・底面、89・・・天井面、90・・・電解槽、91・・・電解セル、92・・・導入管、93・・・導入管、94・・・導出管、95・・・導出管、98・・・陰極室、100・・・運転支援装置、200・・・電解装置、2200・・・コンピュータ、2201・・・DVD-ROM、2210・・・ホストコントローラ、2212・・・CPU、2214・・・RAM、2216・・・グラフィックコントローラ、2218・・・ディスプレイデバイス、2220・・・入出力コントローラ、2222・・・通信インターフェース、2224・・・ハードディスクドライブ、2226・・・DVD-ROMドライブ、2230・・・ROM、2240・・・入出力チップ、2242・・・キーボード
【要約】      (修正有)
【課題】イオン交換膜の性能の低下を考慮した電解槽の最適な運転が可能な運転支援装置、運転支援方法および運転支援プログラムを提供する。
【解決手段】電解槽におけるイオン交換膜への不純物の蓄積速度に関する不純物データの実績値に基づいて、イオン交換膜の性能低下速度を推定する推定部を備え、推定部は、性能低下速度に基づいて、電解槽が一の運転条件で運転された場合における生産パラメータであって、電解槽により生産される生産物に関する生産パラメータを推定してよく、前記不純物データは、イオン交換膜の実解析データであってよい。電解槽は、イオン交換膜により仕切られた陽極室および陰極室を有してよく、陽極室にはアルカリ金属の塩化物の水溶液が導入され、陰極室からはアルカリ金属の水酸化物の水溶液が導出され前記不純物データは、アルカリ金属の塩化物の水溶液における、不純物の濃度データであってよい。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17