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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】反応型接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20221125BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20221125BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C08G18/32 015
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021175323
(22)【出願日】2021-10-27
【審査請求日】2022-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青山純也
(72)【発明者】
【氏名】金子千智
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-118623(JP,A)
【文献】特開2018-111808(JP,A)
【文献】特開昭49-122595(JP,A)
【文献】国際公開第2021/119854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、及び下記一般式(1)で表されるカテコール誘導体(C)を含む、反応型接着剤であって、
下記一般式(1)におけるR~Rのうち少なくとも一つが、水酸基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)であり、前記水酸基のうち少なくとも1つがアルキル基に結合しており、
エポキシ系シランカップリング剤の含有率が、前記ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.10質量%以下である、反応型接着剤。
一般式(1)
【化1】

[一般式(1)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基を有するアルキル基、アルケニル基、ホルミル基、アシル基、水酸基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)、アミノ基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)を表す。
ただし、R~Rが全て水素原子となることはない。]
【請求項2】
前記カテコール誘導体(C)の含有率が、ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.1~10重量%である、請求項1記載の反応型接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応型接着剤に関し、より詳細には食品、医療品、化粧品等の包装材料用積層体の形成に有用なポリウレタン系反応型接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品、化粧品等の内容物を包装する軟包装材料として、各種プラスチックフィルム同士、またはプラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔等のバリア層とが接着剤層を介して積層された積層体が利用されている。当該接着剤層における接着剤としては、ポリウレタン系の接着剤が広く用いられている。
【0003】
特に、ボイルやレトルトといった加熱滅菌処理を必要とする食品用途では、金属や無機物を含むバリア層とプラスチックフィルムとを積層した構成の積層体が使用される。当該積層体がスタンディングパウチや大容量の袋の材料として用いられる場合、加熱滅菌処理中に、折り曲げられた部分で接着剤が剥離しやすい。したがって当該分野では、ポリウレタン系接着剤には、レトルト時に折り曲げ部で接着剤が剥離しない性質が求められる。とりわけ、接着剤層と、バリア層として用いられる金属箔間での剥離が生じやすいため、ポリウレタン系接着剤には金属箔への高い密着性が必要である。
【0004】
従来、ポリウレタン系接着剤の金属箔への接着促進剤として、エポキシ系シランカップリング剤が多く用いられてきた。しかし、近年欧州を中心にエポキシ系シランカップリング剤の食品への移行量制限が厳しくなりつつある。したがって、当該カップリング剤を低減または除去し、その他の手段で金属への密着性を向上させた反応型接着剤が所望されている。
【0005】
ムール貝が産出するドーパは、ベンゼン環のオルト位に水酸基が2個隣接したカテコール構造を有し、有機・無機材料のいずれにも強力な接着力を示すことが知られており、カテコール誘導体の接着剤分野への応用が期待される。
例えば、特許文献1には、カテコール基を末端に有するポリエステル系接着剤が、有機物表面及び無機物表面との間で高いずり接着強度を示すことが開示されている。
食品包装用のラミネート接着剤においては、例えば、特許文献2や3に示すような没食子酸、または、その誘導体をウレタン系接着剤に添加することで、ラミネート包材に内容物(例えば食品)を入れて滅菌処理した後、ある程度の期間を経ても剥離が生じない性質、すなわち、耐内容物性を改良することを主眼とした開発がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開WО2012/102174号
【文献】特開2015-113411号公報
【文献】特開2020-37648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示すようなポリエステル系接着剤や、特許文献2、3に示すような没食子酸もしくはその誘導体を添加したラミネート接着剤を用いた4層構成のラミネート包材には、例えば135℃、30分間のハイレトルト滅菌処理をした場合に、折り曲げ部において、接着剤とバリア層との間で剥離が生じるという問題がある。
【0008】
本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、エポキシ系シランカップリング剤の溶出量を低減または除去しながらも、フィルムや金属に対する高い剥離強度を有し、ハイレトルト滅菌処理後に剥離強度の低下や折り曲げ部の剥離が生じない、反応型接着剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を持つカテコール誘導体を用いることにより、エポキシ系シランカップリング剤の溶出量を低減または除去しながらも、フィルムや金属に対する高い剥離強度を有し、ハイレトルト滅菌処理後に剥離強度の低下や折り曲げ部の剥離が生じない反応型接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は、以下の項目からなるものである。
1.ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、及び下記一般式(1)で表されるカテコール誘導体(C)を含む、反応型接着剤であって、
下記一般式(1)におけるR~Rのうち少なくとも一つが、水酸基、アルケニル基、ホルミル基、水酸基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)、およびアミノ基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)からなる群より選ばれる反応性官能基であり、
エポキシ系シランカップリング剤の含有率が、前記ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.10質量%以下である、反応型接着剤。
一般式(1)
【化1】
[一般式(1)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基を有するアルキル基、アルケニル基、ホルミル基、アシル基、水酸基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)、アミノ基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)を表す。
ただし、R~Rが全て水素原子となることはない。]
2. 前記カテコール誘導体(C)の含有率が、ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.1~10重量%である、上記の反応型接着剤。
3. 前記一般式(1)におけるR~Rのうち少なくとも一つが、水酸基又は水酸基を有する1価の有機基である、上記の反応型接着剤。
4. 前記水酸基を有する1価の有機基において、水酸基のうち少なくとも1つがアルキル基に結合している、上記の反応型接着剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エポキシ系シランカップリング剤の溶出量を低減または除去しながらも、フィルムや金属に対する高い剥離強度を有し、ハイレトルト滅菌処理後に剥離強度の低下や折り曲げ部の剥離が生じない、反応型接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリオール化合物(A))
本発明に用いられるポリオール化合物(A)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油又はそれらの混合物のほか、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール等のグリコール;数平均分子量200~10,000のポリアルキレングリコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3官能又は4官能の脂肪族アルコール;上記3官能又は4官能の脂肪族アルコールに、上記グリコール若しくはポリオールが付加したポリオールを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、無水フタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸およびそのエステル化合物またはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、1,9-ノナンジオール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール等のジオール類またはそれらの混合物と、をエステル化反応させて得られるポリエステルポリオール;ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール;が挙げられる。
【0014】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルトリオール等が挙げられ、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、水、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオール;が挙げられる。
【0015】
上記ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールは、さらにジイソシアネートを反応させたポリエステルウレタンポリオール又はポリエーテルウレタンポリオールであってもよいし、さらに酸無水物を反応させたものであってもよい。
【0016】
上記ジイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。これらジイソシアネートを反応させることを、以下ウレタン変性ということがある。
【0017】
上記酸無水物としては、例えば、無水トリメリット酸、トリメリット酸エステル無水物が挙げられる。トリメリット酸エステル無水物としては、例えば、エチレングリコールアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテートが挙げられる。酸無水物を反応させることを、以下酸変性ということがある。
【0018】
ポリオール化合物(A)としては、耐熱性の観点から、ポリエステルポリオールを含むことが好ましい。耐熱性に優れたポリエステルポリオールを含むことにより、よりハイレトルト滅菌耐性に優れた反応型接着剤を得ることができる。
【0019】
ポリオール化合物(A)の重量平均分子量は、好ましくは5,000~100,000であり、より好ましくは10,000~80,000であり、さらに好ましくは、10,000~50,000である。
【0020】
ポリオール化合物(A)の酸価は、特に制限されないが、好ましくは0~50mgKOH/g、より好ましくは0~40mgKOH/gである。
【0021】
ポリオール化合物(A)の水酸基価は、特に制限されないが、好ましくは5~200mgKOH/g、より好ましくは5~50mgKOH/gである。
【0022】
(ポリイソシアネート(B))
ポリイソシアネート(B)としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′-トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,3-又は1,4-キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアネート-1-メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’ ’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、2,4,6-トリイソシアネートトルエンのような有機トリイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタン-2,2’-5,5’-テトライソシアネートのような有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;上記ポリイソシアネート単量体から誘導された、ダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6-オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ポリイソシアネート(B)は、前述のポリイソシアネートに、グリコールを付加した付加体であってもよい。
上記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオール、或いは、分子量200~20,000のポリプロピレングリコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオールが挙げられる。
【0024】
ポリイソシアネート(B)としては、剥離強度およびハイレトルト滅菌耐性の観点から、ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートのような芳香環を含むイソシアネートを用いることが好ましい。これは、詳細は定かではないが、芳香環を含むイソシアネートとカテコール誘導体(C)との間で芳香環同士の相互作用が働くためと推測される。
【0025】
(配合割合)
ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート(B)との配合割合は特に制限されないが、接着強度およびハイレトルト滅菌耐性の観点から、好ましくは、前記イソシアネートが含有する全イソシアネート基と、前記ポリオールが含有する全水酸基とのモル当量比[NCOモル数/OHモル数]が0.3~5.0の範囲であり、より好ましくは0.3~2.0の範囲、さらに好ましくは0.5~2.0の範囲である。
【0026】
(カテコール誘導体(C))
本発明で使用するカテコール誘導体(C)は下記一般式(1)のように表される。
一般式(1)
【化2】
[一般式(1)中、R~Rは、各々独立して、水素原子、水酸基、アルキル基、アリール基を有するアルキル基、アルケニル基、ホルミル基、アシル基、水酸基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)、アミノ基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)を表す。
ただし、R~Rが全て水素原子となることはない。]
【0027】
本発明のカテコール誘導体(C)の含有率は、ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.1~10重量%であることが好ましい。より好ましくは0.5~5.0重量%であり、さらに好ましくは1.0~3.0重量%である。
カテコール誘導体(C)の含有量がポリオール化合物(A)の質量を基準として0.1%以上であると、金属への密着性の観点から好ましく、10%以下であると、ポリオール化合物(A)とポリイソシアネート(B)とが十分に架橋することができるため、ハイレトルト滅菌耐性の観点から好ましい。
【0028】
カテコール誘導体(C)としては、例えば、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、3,4―ジヒドロキシベンジルアルコール、3-ヒドロキシチロソール、4-アリルピロカテコール、3-ヒドロキシチラミン、(DL)―アドレナリン、イソプロテレノール、ピセアタンノール、2,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒド、ピロガロール、5-メチルピロガロール、2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン、2’,3’,4’-トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。
【0029】
中でも、前記一般式(1)におけるR~Rのうち少なくとも一つが、水酸基又は水酸基を有する1価の有機基であることがより好ましい。カテコール誘導体(C)が、カテコール基以外に水酸基又は水酸基を有する1価の有機基を有すると、酢酸エチル等の汎用溶剤への溶解性が向上するためである。
このようなカテコール誘導体(C)としては、例えば、1,2,4-トリヒドロキシベンゼン、3,4―ジヒドロキシベンジルアルコール、3-ヒドロキシチロソール、(DL)―アドレナリン、イソプロテレノール、ピセアタンノール、2,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒド、ピロガロール、5-メチルピロガロール、2,3,4-トリヒドロキシベンズアルデヒド、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン、2’,3’,4’-トリヒドロキシアセトフェノン、2,3,4,4、-テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、3,4,5-トリヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。
【0030】
より好ましくは、前記水酸基を有する1価の有機基において、水酸基のうち少なくとも1つがアルキル基に結合しているカテコール誘導体(C)である。水酸基がアルキル基に結合していると、当該水酸基とポリイソシアネート(B)におけるイソシアネート基との反応性が高いため、反応型接着剤の硬化性をより向上させることができる。このようなカテコール誘導体(C)としては、例えば、3,4-ジヒドロキシベンジルアルコール、3-ヒドロキシチロソールが挙げられる。
【0031】
カテコール誘導体(C)は、塩を形成していてもよい。このようなカテコール誘導体(C)としては、例えば、6-ヒドロキシドーパミン塩酸塩、6-ヒドロキシドーパミン臭素酸塩、3-ヒドロキシチラミン塩酸塩、3-ヒドロキシチラミン臭素酸塩が挙げられる。
【0032】
(その他の成分)
本発明の反応型接着剤は、接着剤または包装材料に要求される各種物性を満たすために、ポリオール化合物(A)及びポリイソシアネート(B)、カテコール誘導体(C)以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、リンの酸素酸またはその誘導体、硬化反応を促進させるための触媒、レベリング剤、消泡剤、シリカ、アルミナ、マイカ、タルク、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等の無機充填剤、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤等)、防錆剤、増粘剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、着色剤、フィラー、結晶核剤が挙げられる。
【0033】
(エポキシ系シランカップリング剤)
本発明の反応型接着剤には、上記に挙げたような任意の添加剤として、エポキシ系シランカップリング剤を含有させることができる。エポキシ系シランカップリング剤とは、アルコキシ基とエポキシ基を有する有機ケイ素化合物であり、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0034】
本発明の反応型接着剤におけるエポキシ系シランカップリング剤の含有率は、前記ポリオール化合物(A)の質量を基準として0.00~0.10質量%である。エポキシ系シランカップリング剤の含有率が上記範囲であることにより、接着剤を食品包装向け軟包装材料に用いた場合に、上記カップリング剤の内容物への溶出を防ぐ、または低減させることができる。前記ポリオール化合物(A)の質量を基準とした上記カップリング剤の含有率は、好ましくは、0.00~0.07質量%であり、より好ましくは、0.00~0.05質量%であり、特に好ましくは0.00~0.03質量%である。
【0035】
(溶剤)
本発明の反応型接着剤は、溶剤型又は無溶剤型の接着剤として使用することができ、必要に応じて溶剤を含有してもよい。なお本発明の「溶剤」とは、上記ポリオールやポリイソシアネートを溶解させることができる有機溶剤を指す。
上記ポリオールやポリイソシアネートを溶解させることができる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n-ヘキサン、シクロヘキサンが挙げられる。有機溶剤として好ましくは、ポリイソシアネートに対して不活性なものであり、例えば、酢酸エチル等のエステル系;メチルエチルケトン等のケトン系;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系;が挙げられる。
【0036】
(製造方法)
本発明の反応型接着剤は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート(B)及びカテコール誘導体(C)を混合することによって製造することができる。上記の通り、必要に応じてその他の成分を混合してもよい。混合方法は、本発明の反応型接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。混合する順序についても、特に限定されるものではない。本発明の反応型接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。
【0037】
(積層体)
本発明の反応型接着剤を使用して得られる積層体は、上述の反応型接着剤が、少なくとも2つの基材の間に積層されたものである。積層体を作成する方法としては、例えば、本発明の反応型接着剤をフィルムへ塗工し、必要に応じて乾燥工程を経た後に、他の基材を貼り合わせる方法が挙げられるが、この構成に限定されず、さらに接着剤層等を介して別の層が配置されていてもよい。本発明の反応型接着剤を塗工する装置としては、例えば、コンマコーター、ドライラミネーター、ロールナイフコーター、ダイコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーターが挙げられる。
フィルムへ反応型接着剤を塗工する場合、乾燥後塗布量は特に限定されないが、接着強度の観点から、無溶剤型接着剤の場合は、好ましくは1~4g/m、より好ましくは2~3.5g/mの範囲であり、溶剤型接着剤の場合は、塗布量は1~6g/mが好ましく、より好ましくは、2~5g/mの範囲である。
【0038】
(基材)
基材は特に制限されず、包装体用途に一般的に使用される、プラスチックフィルム、バリア基材、シーラント等が挙げられ、2つの基材は同種であってもよく、異種であってもよい。本発明の反応型接着剤は、特にプラスチックフィルムとバリア基材の間の接着性能に優れる。
【0039】
プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂フィルム;ポリスチレン樹脂フィルム;ナイロン6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;ポリアクリルニトリル樹脂フィルム;ポリイミド樹脂フィルム;これらの複層体(例えば、ナイロン6/MXD6/ナイロン6、ナイロン6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ナイロン6)や混合体等が用いられる。中でも、機械的強度や寸法安定性を有するものが好ましい。
プラスチックフィルムは、好ましくは5~50μm、より好ましくは10~30μmの厚さを有するものである。
【0040】
バリア基材としては、アルミニウム等の金属箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を有するプラスチックフィルムが用いられる。本発明の接着剤が基材表面の水酸基と水素結合しうる点、およびレトルト耐性の観点から、アルミニウム箔が好ましい。バリア基材の厚みは特に制限されないが、例えばアルミニウム箔の場合は、経済的な観点から3~50μmの範囲の厚みが好ましい。
【0041】
シーラントとしては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、酸変性ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、アイオノマー等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。中でもレトルト時の耐熱性の観点から、ポリプロピレン系樹脂が好ましく、ヒートシール性の観点から未延伸ポリプロピレンが特に好ましい。
シーラントの厚みは特に限定されないが、包装体への加工性やヒートシール性等を考慮して10~70μmの範囲が好ましく、40~70μmの範囲がより好ましい。また、シーラントに高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラントに滑り性や包装体の引き裂き性を付与することが可能である。
また、各種シーラントはアルミニウム等の金属箔の他、アルミニウム、シリカ、アルミナ等の蒸着層を有していてもよい。
【0042】
基材は、基材上に印刷層を有していてもよい。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層であり、ベタ印刷層も含む。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、印刷層の形成方法は特に限定されない。
一般的には、印刷層は、顔料や染料等の着色剤を含む印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗工方法は特に限定されず、グラビアコート法、フレキソコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の方法により塗布することができる。これを放置するか、必要により送風、加熱、減圧乾燥、紫外線照射等を行うことにより印刷層を形成することができる。
印刷層は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは1~5μm、さらに好ましくは1~3μmの厚さを有するものである。
【0043】
積層体の構成は、高温で加熱滅菌処理されることから、少なくとも1層以上のプラスチックフィルムやガスバリア基材と、シーラントとを積層した構成であることが好ましい。
具体的な積層体構成としては、レトルトパウチ等に好適に用いることが可能な、透明蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)/接着剤層/ナイロン(NY)/接着剤層/無延伸ポリプロピレン(CPP)、PET/接着剤層/アルミニウム箔(AL)/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/AL/接着剤層/PE、PET/接着剤層/NY/接着剤層/AL/接着剤層/CPP、PET/接着剤層/AL/接着剤層/NY/接着剤層/CPP等が挙げられる。 これら積層体は、必要に応じて、プライマー層やトップコート層等を有していてもよい。
【実施例
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において「部」及び「%」とあるものは、特に断らない限り、それぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0045】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)>
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフラン、分子量の決定はポリスチレン換算で行った。
【0046】
<ポリオール溶液の製造>
(合成例1)ポリエステルウレタンポリオール(A1)
四つ口フラスコに、イソフタル酸186部、セバシン酸141部、アジピン酸143部、エチレングリコール94部、ネオペンチルグリコール236部を仕込み、攪拌しながら220~250℃で7時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、26.66hPa以下で240~260℃で3時間脱グリコール反応を行い、数平均分子量2,500、重量平均分子量5,500、水酸基価50mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールを酢酸エチルで希釈し、不揮発分80%に調整したポリエステルポリオール溶液を得た。このポリエステルポリオール溶液の全量に対してトリレンジイソシアネート41部を徐々に添加し、90℃で3時間反応を行った。反応触媒としてジブチルスズジラウレートを0.1%添加して反応促進を行った。反応終了後、数平均分子量12,000のポリオール化合物(A1)を得た。その後、酢酸エチルで希釈し、固形分60%のポリオール化合物(A1)溶液を得た。
【0047】
(合成例2)酸変性ポリエステルウレタンポリオール(A2)
四つ口フラスコに、イソフタル酸416部、セバシン酸181部、アジピン酸26部、エチレングリコール47部、ネオペンチルグリコール176部、1,6-ヘキサンジオール155部を仕込み、攪拌しながら220~260℃で8時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1.333hPa以下、240~260℃で5時間脱グリコール反応を行い、数平均分子量2,300、重量平均分子量5,100、水酸基価58mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルポリオールを得た。さらにこのポリエステルポリオールの全量に対してイソホロンジイソシアネート38部を徐々に添加し、150℃で2時間反応を行い、数平均分子量10,000、重量平均分子量22,000、水酸基価8mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/gのポリエステルウレタンポリオールを得た。得られたポリエステルウレタンポリオールの全量に対して無水トリメリット酸9部、エチレングリコールアンヒドロトリメテート11部を徐々に添加し、180℃で2時間反応を行い、数平均分子量12,000、酸価10mgKOH/gのポリオール化合物(A2)を得た。その後、酢酸エチルで希釈し、固形分55%のポリオール化合物(A2)溶液を得た。
【0048】
(合成例3)ポリエステルポリオール(A3)
四つ口フラスコに、イソフタル酸437部、アジピン酸82部、セバシン酸114部、ジエチレングリコール251部、エチレングリコール61部、1,4-ブタンジオール53部を仕込み、攪拌しながら220~260℃で8時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1.333hPa以下、240~260℃で 5時間脱グリコール反応を行い、数平均分子量12,000、重量平均分子量25,000のポリオール化合物(A3)を得た。その後、酢酸エチルで希釈し、固形分65%のポリオール化合物(A3)の溶液を得た。
【0049】
<反応型接着剤の製造>
(実施例1~16、比較例1~12)
合成例1~3で得られたポリオール溶液(A1)~(A3)、ポリイソシアネート(B)、カテコール誘導体、必要に応じてその他の添加剤を表1、2に示す割合(質量比)で配合した後、酢酸エチルで固形分30%になるよう希釈し、反応型接着剤を得た。なお、表1、2に示すポリオール溶液の質量比は、固形分に換算したものである。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
表1、2における原料を以下に記載する。
《ポリイソシアネート(B)》
(B1):CAT-10(東洋モートン社製)
(B2):CAT-1400(東洋モートン社製)
(B3):CAT-RT86L-60(東洋モートン社製)
《カテコール誘導体》
(C1):3,4-ジヒドロキシベンジルアルコール
(C2):ピロガロール
(C3):(DL)-アドレナリン
(C4):3-ヒドロキシチラミン塩酸塩
(C5):4-アリルピロカテコール
(C’6):没食子酸
(C’7 ):3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-DL-アラニン
(C’8):ピロカテコール
(C’9):ヒドロキノン
(C’10):サリチル酸
(C’11):p-クレゾール
《その他の添加剤》
エポキシ系シランカップリング剤:γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製)
【0053】
<反応型接着剤の評価>
(製造例1~16、比較製造例1~12)
実施例および比較例で得られた反応型接着剤について、下記に示す方法で4層積層体を作製し、ラミネート強度試験、レトルト試験、および十字折り曲げ試験を行い評価した。
【0054】
[4層積層体の作製]
ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)フィルム(厚さ12μm)/印刷層/接着剤層/アルミニウム(以下、AL)箔(厚さ7μm)/接着剤層/ナイロン(以下、NY)フィルム(厚さ15μm、両面コロナ放電処理)/接着剤層/未延伸ポリプロピレン(以下、CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)の4層積層体を、以下に記載の方法で作成した。なお、未延伸ポリプロピレンは、コロナ放電処理面を貼り合せ面とした。
PETフィルム上にグラビア印刷によって印刷層を設けた後、メイヤーバーコーターを用いて該PETフィルムの印刷層上に接着剤を常温にて塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をAL箔表面と貼り合わせた。さらに、その積層体のAL箔面に同様に接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をNYフィルムと貼り合わせた。次いで、その積層体のNYフィルム面に同様に接着剤を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をCPPフィルムと貼り合わせ、40℃で4日間保温し、製造例1~16、比較製造例1~12の4層積層体を作製した。それぞれの製造例、比較製造例に用いた接着剤を表2に示す。
【0055】
[ラミネート強度]
上記のようにして作製した4層積層体から15mm×300mmの大きさの試験片を切り取って作製し、引張り試験機(島津製作所製)を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、AL/NY間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。表中の結果は、5個の試験片の平均値である。
【0056】
[レトルト処理後のラミネート強度]
各4層積層体を使用して、9cm×13cmの大きさのパウチ(CPPフィルム同士が内側に位置する)を作成し、水150mLを充填した。これらのパウチについて、熱水貯湯式レトルト殺菌装置(日阪製作所製)を用い、10r.p.m.、135℃、30分、3MPaの条件下で熱水滅菌処理を行った。処理後のパウチから15mm×300mmの大きさの試験片を切り取って作製し、上記のラミネート強度試験と同様にして、AL/NY間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。表中の結果は、5個の試験片の平均値である。なお、比較例1、2、4、6~10の接着剤を用いて作製した試験片については、熱水滅菌処理後に剥がれが生じていたため測定不能であった。
【0057】
[折り曲げ時の剥離]
パウチが折り曲げられた際の剥離については十字折り曲げ試験によって評価を行った。各4層積層体を6cm×6cmの大きさに切り出し、PET面が表に来るように半分に山折りした。次いで、長辺をさらに半分に山折りし、クリップで固定した。作成した試料について、熱水貯湯式レトルト殺菌装置(日阪製作所製)を用い、10r.p.m.、135℃、30分、3MPaの加圧下で熱水滅菌処理を行った。処理後の試料からクリップを外して折り曲げ部を開き、PET/AL間、AL/NY間における剥離状態を観察した。評価基準は以下の通りであり、〇、〇△、△が実使用可能領域である。
(評価基準)
〇:剥離なく良好
〇△:中心部のみ剥離
△:山折り部の半分以下が剥離
△×:山折り部の半分以上が剥離
×:折り曲げ部以外でも剥離
【0058】
[エポキシ系シランカップリング剤の溶出量]
PETフィルム(厚さ12μm)/接着剤層(接着剤塗布量3.5g/m)/CPPフィルム(厚さ70μm)の2層積層体を、以下に記載の方法で作成した。なお、CPPフィルムはコロナ放電処理面を貼り合せ面とした。
メイヤーバーを用いてPETフィルムのコロナ処理面上に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をCPPフィルムと貼り合せ、40℃で4日間保温した。
上記のようにして作製した2層積層体を、接触面積が50cmになるようにマイグレーションセル(FABES Forschungs-Gmbh社製)の金属板の大きさに切り出し、試験片を作製した。試験片をマイグレーションセルにセットし、食品疑似溶液としてイソオクタン25mlをマイグレーションセルの上部に添加した。当該マイグレーションセルをオーブンで100℃、1時間加熱処理した後、60℃で10日間保温した。上記処理を行ったマイグレーションセル中の溶液25mlを1mlにまで濃縮し、GC-MSにより下記の測定条件でエポキシ系シランカップリング剤を定量した。なお、エポキシ系シランカップリング剤の定量下限は0.05ppbである。
(測定条件)
GC-MS:島津製作所製 GCMS-QP2010
カラム:ジフェニルジメチルポリシロキサン系
上記定量値について、以下の評価基準に基づいて判定を行った。なお、欧州食品安全機関(EFSA)およびInternational Life Sciences Institute(ILSI)においては、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシランの安全性許容値について0.15ppbと定められているため、エポキシ系シランカップリング剤の溶出量低減または除去を目的とする本発明においては〇、△を実使用可能領域とする。
(評価基準)
〇:エポキシ系シランカップリング剤の溶出量が0.05ppb未満(検出不可)
△:エポキシ系シランカップリング剤の溶出量が0.05ppb以上、0.15ppb以下
×:エポキシ系シランカップリング剤の溶出量が0.15ppbより多い
【0059】
【表3】
【0060】
表3に示す通り、実施例で得られた反応型接着剤を使用した積層体は、すべてが実使用可能領域であった。実施例1~16の4層積層体は、ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、上記一般式(1)で表されるカテコール誘導体(C)の3成分から得られたので、熱水滅菌処理時の折り曲げ部において剥離が生じにくいとともに、エポキシ系シランカップリング剤の溶出量が少ない結果となった。
これに対し、比較例で得られた反応型接着剤を使用した積層体は、接着剤が上記記一般式(1)で表されるカテコール誘導体(C)を含まないので、熱水滅菌処理時の折り曲げ部で剥離が生じやすいという問題が生じた。または、エポキシ系シランカップリング剤の添加量が多いために、その溶出量も多く、実使用不可能であった。
【要約】      (修正有)
【課題】エポキシ系シランカップリング剤の溶出量を低減しながらも、フィルムや金属に対する高い剥離強度を有し、ハイレトルト滅菌処理後に剥離強度の低下や折り曲げ部の剥離が生じない、反応型接着剤の提供。
【解決手段】ポリオール化合物(A)、ポリイソシアネート(B)、及び一般式(1)で表されるカテコール誘導体(C)を含む反応型接着剤であって、エポキシ系シランカップリング剤の含有率がポリオール化合物(A)を基準として0.10質量%以下である反応型接着剤。
一般式(1)

式中、R~Rのうち少なくとも一つが水酸基、アルケニル基、ホルミル基、水酸基またはアミノ基を有する1価の有機基(ただしカルボキシ基を有しない)からなる群より選ばれる反応性官能基。
【選択図】なし