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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】害鳥忌避装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/06 20110101AFI20221125BHJP
   A01M 29/16 20110101ALI20221125BHJP
【FI】
A01M29/06
A01M29/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018190482
(22)【出願日】2018-10-05
(65)【公開番号】P2020058256
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】518290386
【氏名又は名称】株式会社CrowLab
(74)【代理人】
【識別番号】100144358
【弁理士】
【氏名又は名称】藤掛 宗則
(72)【発明者】
【氏名】塚原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】永田 健
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-9868(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116404(JP,U)
【文献】実開平4-82972(JP,U)
【文献】実開平5-88281(JP,U)
【文献】国際公開第2005/067378(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/108069(WO,A1)
【文献】中国実用新案第207854893(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外方に伸びる第1のアーム部と、当該第1のアーム部とは異なる方向に伸びる第2のアーム部と、
前記第1、第2のアーム部をそれぞれ揺動させる揺動機構を有する筐体と、
前記筐体を地面に置いた状態で、少なくとも前記第1、第2のアーム部の一部と、当該筐体とを覆う被覆体と、
所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知する検知手段と、
前記検知手段の検知結果に基づいて前記第1、第2のアーム部の揺動動作を制御する制御手段と、を有し、
前記被覆体は、当該被覆体と被覆対象である前記第1、第2のアーム部の一部と前記筐体との間に空間を設けて当該被覆対象を覆い、
前記被覆体から外方に延出した第1、第2のアーム部の所定の部位に前記忌避対象の害鳥の羽が接続され、
前記制御手段は、前記被覆体の表面にしわが複雑、且つ、ランダムに変化して生じるように、前記揺動機構を介して前記第1、第2のアーム部動作させることを特徴とする、
害鳥忌避装置。
【請求項2】
前記被覆体は、可視光の透過を制限する素材を用いて形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の害鳥忌避装置。
【請求項3】
前記被覆体は、当該被覆体の表面にしわが生じることに伴い音が生じる硬度を有する素材を用いて形成されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載の害鳥忌避装置。
【請求項4】
前記検知手段は、前記忌避対象の害鳥が前記害鳥忌避装置に所定の距離まで近接したことを検知することを特徴とする、
請求項1乃至3いずれか一項に記載の害鳥忌避装置。
【請求項5】
前記被覆体は、密閉空間を形成してその空間の内部に少なくとも前記第1、第2のアーム部の一部と、前記筐体とを収容することを特徴とする、
請求項1乃至4いずれか一項に記載の害鳥忌避装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラスなどの害鳥を追い払うための害鳥忌避装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各家庭から出される所定の場所に集められ、ゴミは収集車によって回収されるまではそのまま放置され、この放置されたゴミに害鳥、特にカラスが群がって周囲に散らかしてしまうことがある。近年、特に都会ではこのカラス対策が問題となっている。
例えば、特許文献1に開示されたカラスの忌避具は、黒いゴム製のカラス模型と爆竹を取り付ける携帯式簡易空砲筒から成り、カラス模型は頭部を上にして両翼を垂れ下げた状態で吊具を介して吊設され、上記携帯式簡易空砲筒は爆竹を収容してセットする空砲筒と該空砲筒に持ち手を取り付けている、というものである。
【0003】
また、特許文献2に開示された装置は、釣糸に錘を通し、1つ以上のサルカンを介して釣糸、錘を通してその端に鳥の羽根を吊るす構成によりカラスを近寄せない、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3116404号公報
【文献】実用新案登録第3088593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、忌避対象の害鳥の死体を模したものでは、特に忌避対象が優れた視覚を有するカラスである場合には忌避効果に大きな期待ができない。また、従来の忌避具などでは形状が一定であり見た目が変わらない、もしくは単純な変化であることから忌避対象の害鳥が慣れやすく警戒を抱く期間が短くなる、という問題が残る。なお、忌避効果があるとされるカラスの死体を設置する方法ではカラスの死体が腐乱するため取り扱いが難しく、また、入手することも難しいため忌避効果を維持させるために要する費用がかさんでしまう。
【0006】
また、大きな音や忌避対象の害鳥が嫌う音などにより当該忌避対象の害鳥を追い払うものもあるが、天敵の姿が無いのに天敵の鳴き声や天敵を恐れる鳴き声が流れるなど状況に違和感がある場合が多く、そのため忌避対象の害鳥が慣れやすく警戒を抱く期間が短くなる、という課題がある。
【0007】
本発明は、忌避対象の害鳥が慣れにくく当該忌避対象が警戒を抱く期間を長くすることができる害鳥忌避装置を提供することを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の害鳥忌避装置は、外方に伸びる第1のアーム部と、当該第1のアーム部とは異なる方向に伸びる第2のアーム部と、前記第1、第2のアーム部をそれぞれ揺動させる揺動機構を有する筐体と、前記筐体を地面に置いた状態で、少なくとも前記第1、第2のアーム部の一部と、当該筐体とを覆う被覆体と、所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知する検知手段と、前記検知手段の検知結果に基づいて前記第1、第2のアーム部の揺動動作を制御する制御手段と、を有し、前記被覆体は、当該被覆体と被覆対象である前記第1、第2のアーム部の一部と前記筐体との間に空間を設けて当該被覆対象を覆い、前記被覆体から外方に延出した第1、第2のアーム部の所定の部位に前記忌避対象の害鳥の羽が接続され、前記制御手段は、前記被覆体の表面にしわが複雑、且つ、ランダムに変化して生じるように、前記揺動機構を介して前記第1、第2のアーム部動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、忌避対象の害鳥が慣れにくく当該忌避対象が警戒を抱く期間を長くすることができる害鳥忌避装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る害鳥忌避装置の基本的な構成の一例を説明するための概念図。
図2】(a)、(b)は、害鳥忌避装置の動作を説明するための図。
図3】それぞれのアーム部の搖動動作の一例を説明するための図。
図4】(a)、(b)は、被覆体によりアーム部の一部と筐体とが覆われている様子の一例を説明するための図。
図5】(a)、(b)は、被覆体によりアーム部の一部と筐体とが覆われている様子の一例を示す図。
図6】制御部による主要な動作制御手順の一例を説明するためのフローチャート。
図7図3とは異なる害鳥忌避装置のアーム部の搖動動作の一例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一例として、本発明に係る害鳥忌避装置の実施形態について、図を用いて説明する。本実施形態では忌避対象の害鳥のうちカラスを対象とする場合を例に挙げて説明する。また、本発明に係る害鳥忌避装置では、瀕死の状態のカラスの動きを模した動き、罠に捉えられてそこから逃げ出そうとしているカラスの動きを模した動きにより忌避効果を生じさせる。また、本発明に係る害鳥忌避装置は、例えば家庭ゴミの集積場所、畜産農家の畜舎、果樹農家の果樹園、鉄塔、電線、ゴルフ場などに設置され、この場所に向けて飛来する忌避対象の害鳥を追い払う。
なお、本発明に係る害鳥忌避装置は、カラス以外の忌避対象の害鳥として例えばハト、ムクドリ、ヒヨドリ、スズメ、カワウなどを対象としても利用することができる。
【0012】
[実施形態例]
[害鳥忌避装置の構成]
図1は、本実施形態に係る害鳥忌避装置の基本的な構成の一例を説明するための概念図である。
本実施形態に係る害鳥忌避装置100は、後述する搖動機構を有する筐体10、搖動機構に接続された一対のアーム部11、アーム部11に接続される忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)15、少なくともアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)とを覆うことが可能なサイズに形成された被覆体20、センサ30、スピーカなどの出力装置40、制御部50を含んで構成される。
なお、制御部50は、一種のコンピュータとして機能し、害鳥忌避装置100の動作を統括的に制御する。例えば制御部50は、センサ30の検知結果に基づいて、揺動機構を介してアーム部11それぞれの搖動動作の開始又はその停止を制御する。また制御部50は、被覆体20の表面形状に所定の変化が生じるように、揺動機構を介してアーム部11の動作パターンを制御する。
【0013】
筐体10は、前述したように搖動機構を有しており、当該搖動機構は一対のアーム部11をそれぞれ搖動させる。また、アーム部11には忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)15が取り付け可能に構成される。
【0014】
被覆体20は、例えば厚みの薄いアルミなどの金属類、可視光の透過が制限されるような加工が施された合成樹脂(例えば、黒色の合成樹脂シート)、紙などの可視光の透過を制限する素材を用いて所定のサイズ、厚みで形成される。また例えば、300[nm]から800[nm]の波長域の光の反射率が透過率に比べて十分に大きく、被覆対象が透けて見えないような素材を用いて被覆体20を形成する。
また被覆体20は、アーム部11の搖動動作に伴う表面形状の変化に伴い音が生じる硬度を有する素材を用いて形成することもできる。なお、アーム部11の搖動動作に伴う被覆体20の表面形状の変化については後述する。
【0015】
センサ30は検知手段として機能し、例えば害鳥忌避装置100が配置された位置を基準にした所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知する。また、センサ30は、忌避対象の害鳥が害鳥忌避装置100に所定の距離まで近接したことを検知するように構成してもよい。なお、センサ30の検知結果は制御部50に伝達される。また、所定の領域は予め設定しておき、例えば家庭ゴミの集積場所を含む一定の範囲などである。害鳥忌避装置100はこの範囲に飛来する忌避対象の害鳥を追い払うことになる。
【0016】
なお、画像あるいは音声などの検知結果に基づいて飛来してきた害鳥がカラスであることを検知する検知システムを採用することもできる。
この場合、画像に基づく検知システムでは、撮像装置(例えば、カメラ)で捉えた撮像結果(画像)に対して動体検知のアルゴリズムを用いて移動体(カラス)の変位を検知し、その移動体の中心座標の軌跡から移動体が忌避対象とする特定の害鳥(カラス)であることを検知する。また、所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知することもできる。
【0017】
また、音声による検知システムでは、集音装置(例えば、マイク)が捉えた音声(検知結果)に対して忌避対象とする特定の害鳥(カラス)の鳴き声の周波数成分などの音響学的特徴から判別したり、機械学習の手法を用いて判別する方法を用いて忌避対象とする特定の害鳥(カラス)の鳴き声を検知したりする。また、所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知することもできる。
【0018】
これにより、忌避対象とする特定の害鳥以外の害鳥では害鳥忌避装置100が動作しないように制御することが可能になる。そのため、害鳥忌避装置100の消費電力を抑制することが可能になるため、例えば供給電源が蓄電池である場合などには害鳥忌避装置100の稼働時間が大幅に伸びることになる。
【0019】
なお、前述した撮像装置を用いた検知システムでは、忌避対象の特定や所定の領域に忌避対象の害鳥が侵入したことを検知する検知手段として機能させる他にも、例えば忌避対象害鳥の追い払い結果を記録する記録手段として用いることもできる。
【0020】
出力装置40は、例えばカラスが逃避する際に発する音(鳴き声)、カラスが警戒する際に発する音(鳴き声)などの所定の音声を出力する出力手段として機能する。なお、所定の音声は音声データとして記録部(不図示)に記録しておき、センサ30の検知結果に基づいて制御部50によりその出力が制御されるように構成することができる。
【0021】
図2は、害鳥忌避装置100の動作を説明するための図である。
図2(a)は害鳥忌避装置100の主たる構成を含む平面図であり、図2(b)は害鳥忌避装置100の主たる構成を含む正面図である。
【0022】
筐体10が有する搖動機構は、図2(a)に示すように、モータなどで構成される駆動部M、駆動部Mからの駆動力をアーム部11に伝達する駆動軸S、リンク機構Lを含んで構成される。
【0023】
ここで、一対のアーム部11の一方を第1のアーム部、他方を第2のアーム部と称す。
それぞれのアーム部11は、図2(a)に示すように、その一部が筐体10内部に存在し、残部が筐体10の外方へ向けて延出して配設される。
また、それぞれのアーム部11は、図2(b)に示すように、図正面から見て上又は下方向に向けて搖動可能となるように筐体10に接続される。つまり、それぞれのアーム部11は、駆動部Mからの駆動力を受けたときには筐体10との接続箇所を支点にした搖動動作を行うことになる。なお、各アーム部の動作の詳細については、後述する図3を用いて説明する。
【0024】
本実施形態に係る害鳥忌避装置100は、それぞれのアーム部11の突端に忌避対象の害鳥の生体や剥製の各部位の一部又は全部を接続するための装着部11aが配設されている。ここでは、装着部11aに忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)15を取り付けることができるものとする。
例えば、アーム部11の搖動動作を効率化ならしめるためには当該アーム部11を軽量化する必要がある。その場合、例えばアーム部11を細身のアルミ棒材で形成しても装着部11aを介して取り付けることで忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)などを容易に、且つ、搖動動作時の脱落・回転などを防ぐことが可能になる。
【0025】
図3は、それぞれのアーム部11の搖動動作の一例を説明するための図である。また、図4は、被覆体20によりアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)とが覆われている様子の一例を説明するための図である。なお、図4(a)は被覆体20によりアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)とが覆われている様子を示す平面図であり、図4(b)は被覆体20によりアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)とが覆われている様子を示す正面図である。飛来する忌避対象の害鳥は主として図4(a)に示す害鳥忌避装置100の状態を視認することになる。
以下、図3図4を用いてアーム部11の搖動動作の動作パターンと、忌避対象の害鳥が飛来する際に視認することになる被覆体20の表面形状の変化とについて説明する。
なお、図3図4では説明の便宜上、装着部11aに忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)15を取り付けていない状態を示している。
【0026】
初めに図3(a)に示すアーム部11の搖動動作について説明する。
図3(a)に示す搖動動作は、それぞれのアーム部11が水平方向を基準にして同一方向(上方向又は下方向)に向けて搖動する動作パターンである。また、図4(b)に示すように、被覆体20と、当該被覆体20により覆われるアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)との間には空間が形成されている。このような空間を設けることで、アーム部11の搖動に伴う被覆体20の表面形状の変化を大きくすることができる。
【0027】
図3(a)に示す動作パターンでは、それぞれのアーム部11が上方向に向けて搖動したときの被覆体20の表面形状(図4(a)に示す被覆体20の表面)と、下方向に向けて搖動したときの被覆体20の表面形状との間に相対的に大きな変化が生じる。
具体的には、それぞれのアーム部11が上方向に向けて搖動したときには被覆体20の表面にはいわゆる「しわ」が多く形成された形状となり、下方向に向けて搖動したときには上方向に向けて搖動したときに被覆体表面に形成された「しわ」が延ばされた形状になる。
【0028】
このような動作パターンとなるようにアーム部11の動きを制御することで、被覆体20の表面形状の大きな変化に伴い音を生じさせたり光の反射方向を変化させたりすることができる。また、アーム部11が搖動してその後元の位置に戻ってきた場合であっても被覆体20の表面形状の状態は同じ状態に戻るものではない。つまり、被覆体20の表面の「しわ」などの形状は複雑、且つ、ランダムに変化することになる。
そのため、忌避対象が害鳥忌避装置100の形状や動きに慣れてしまうことを防ぎ、忌避効果を持続させることができる。このように害鳥忌避装置100では忌避効果をより高めることができる。
【0029】
次に図3(b)に示すアーム部11の搖動動作について説明する。
図3(b)に示す搖動動作は、一方のアーム部11と他方のアーム部11が互いに逆方向に搖動する動作パターンである。
図3(b)に示す動作パターンでは、図3(a)において説明した被覆体20の表面形状の変化と比べて相対的にその変化は少ないものとなる。しかしながら、アーム部11の搖動動作に伴う被覆体表面(図4(a)に示す被覆体20の表面)が向く方向は左右に大きく揺らされることになる。
【0030】
このような動作パターンとなるようにアーム部11の動きを制御することで、被覆体20の表面に照射された光の反射方向を大きく変化させることができる。そのため、害鳥忌避装置100による忌避効果をより高めることができる。また、忌避対象が害鳥忌避装置100の形状や動きに慣れてしまうことを防ぎ、忌避効果を持続させることができる。
【0031】
また、図3(a)に示す搖動動作における筐体10の動きは、アーム部11の搖動に応じて上下動する動きが主たる動作になる。これに対し、図3(b)に示す搖動動作における筐体10の動きは、アーム部11の搖動に応じて左右に傾斜する動きが主たる動作になる。筐体10の動きと、上述した動作パターンを害鳥忌避装置100の動作として適宜組み合わせて制御することにより、忌避対象が害鳥忌避装置100の形状や動きに慣れてしまうことを防ぎ、忌避効果を持続させることができる。このようにして害鳥忌避装置100による忌避効果をより高めることができる。
【0032】
なお、被覆体20は、図4(b)に示すように、筐体10を地面に置いた状態で少なくともアーム部11の一部と筐体10(揺動機構)とを覆うように構成する他にも、被覆体20により密閉空間を形成してその空間の内部に少なくともアーム部11の一部と、筐体10とを収容するように構成してもよい。この場合、害鳥忌避装置100が有する機器に対する防水・防滴効果をより高めることができる。
【0033】
図5は、被覆体20によりアーム部11の一部と筐体10とが覆われている様子の一例を示す図。
図5(a)は、被覆体20から外方に延出したアーム部11の所定の部位(装着部11a)にカラスの羽15を接続した状態である。
また、図5(a)に示す被覆体20では、その表面には多数の「しわ」が予め形成された状態で被覆対象を被覆している。予め多数の「しわ」を形成しておくことにより、アーム部11を搖動させた際の被覆体20の表面形状の変化に伴う「しわ」がさらに複雑、且つ、ランダムに変化するようになる。そのため、忌避対象が害鳥忌避装置100の形状や動きに慣れてしまうことを防ぎ、忌避効果を持続させることができる。
【0034】
図5(b)は、図5(a)に示す領域Pに含まれる所定の個所からカラスのクチバシを突出させた状態の一例を示している。被覆体20、あるいは筐体10にカラスのクチバシを接続し、当該被覆体20から外方に延出させる。このように害鳥忌避装置100の構成品として羽以外の生体部位を取り入れることで視覚面からも忌避効果をより高めることができる。また、カラスのクチバシと共に、あるいは単独で例えばカラスの尾羽を被覆体20から突出させるように構成してもよい。
【0035】
[害鳥忌避装置の動作制御手順]
次に、本実施形態の害鳥忌避装置100の動作を制御するための処理手順について説明する。図6は、制御部50による主要な動作制御手順の一例を説明するためのフローチャートである。
制御部50は、害鳥忌避装置100の設置者による起動指示の入力受付を契機に、センサ30を介して、忌避対象の害鳥が所定の領域に侵入したか否かの検知を開始する(S100)。
【0036】
制御部50は、忌避対象の害鳥が所定の領域に侵入したと検知した場合(S100:Yes)、搖動機構を介して、それぞれのアーム部11を所定の動作パターンに基づいて搖動させる(S101)。なお、アーム部11の動作パターンは、例えば害鳥忌避装置100の設置環境や忌避対象などに応じて予め決定しておき、その情報を記録部(不図示)に記録し、検知結果に応じて制御部50が選択して読み出すように構成することができる。
【0037】
制御部50は、搖動開始から所定時間が経過したか否かを判別する(S102)。所定時間(例えば、1[分])が経過したと判別した場合(S102:Yes)、ステップS103の処理へ進む。
制御部50は、センサ30を介して、忌避対象の害鳥が所定の領域に侵入しているか否かを検知する(S103)。侵入していない場合、つまり非検知の場合(S103:Yes)、制御部50は搖動機構を介して、アーム部11の搖動動作を停止させる。
このようにステップ102、103の処理を行うことにより、常にセンサ30の検知結果を取得する必要がなくなるため、害鳥忌避装置100の消費電力を抑制することができる。
【0038】
このように、本実施形態に係る害鳥忌避装置100では、アーム部11の動作パターンを任意に選択、組み合わせすることが可能であり、また、それに応じて被覆体20の表面形状も大きく変化させることができる。
これにより、忌避対象の害鳥が慣れにくく当該忌避対象が警戒を抱く期間を長くすることができる。
【0039】
また、それぞれのアーム部11が搖動することにより、被覆体20が上方へ持ち上げられるような変化や下方へ押し下げられるような変化を任意に組み合わせることが可能になるため、被覆体20の表面形状を多様に変化させることができる。これにより、忌避対象の害鳥が慣れにくく当該忌避対象が警戒を抱く期間を長くすることができる。
なお、アーム部11の動作パターンは上述した動作パターンに限るものではない。例えば、搖動動作に加えて、アーム部11それぞれを水平方向に内側から外側に向けて押し広げるような動作も可能となるように構成してもよい。
【0040】
また、被覆体20に忌避対象の害鳥の生体や剥製の各部位の一部又は全部を取り付けることにより忌避効果を高めることができる。この場合、忌避対象の害鳥に害鳥忌避装置100を同類であると強く誤認させるために装置の構成品として忌避対象の害鳥の羽(カラスの羽)など本物を使用する必要がある。そのような場合であっても、被覆体20により装置の一部や全部を覆い隠されるため必要な本物の羽や生体の量は相対的に少なくてよいため、装置の製造コストを抑制することができる。
また、本実施形態では第1、第2のアーム部それぞれに忌避対象の害鳥の生体や剥製の各部位の一部又は全部を取り付ける場合を例に挙げて説明した。これに限らず、例えば製造コスト面から第1、第2のアーム部の一方に取り付けたりする場合であっても一定の効果を得られる。
【0041】
害鳥忌避装置100を畜産農家が使用する場合、ウシへの咬傷や餌の盗食、伝染病の伝播などを防ぐことができる。また、果樹農家では、果樹への食害を軽減することができる。その他にも露地栽培の野菜全般への食害、電力会社での鉄塔への営巣、太陽光発電事業での鳥の石落としによる太陽光パネルの破損、ゴルフ場での芝のほじくり、ボール持ち去り、カート荒らしなど想定される害鳥被害の発生を抑制することができる。
【0042】
[第1変形例]
図7は、図3とは異なる害鳥忌避装置100のアーム部の搖動動作の一例を説明するための図である。
図3では、アーム部11が水平方向を基準にして上方向又は下方向に向けて搖動する動作パターンについて説明した。アーム部の動作パターンは、例えば図7に示すように水平方向に平行に回動動作をする動作パターンが生じるように害鳥忌避装置100を構成することもできる。なお、筐体10が有する搖動機構は、駆動部Mからの駆動力を受けたときにはそれぞれのアーム部を筐体10との接続箇所を支点にした水平方向に平行する搖動動作(回動動作)も行えるように構成される。
このように構成した害鳥忌避装置100では、図3に示す動作パターンの場合と比べて相対的に被覆体20の表面形状の変化が少ない場合もある。しかしながら、他の動作パターンと組み合わせることで忌避対象が害鳥忌避装置100の形状や動きに慣れてしまうことを防ぎ、忌避効果を持続させることができる。このように害鳥忌避装置100では忌避効果をより高めることができる。
【0043】
また、図7に示す害鳥忌避装置100では、搖動機構に接続されたアーム部12、13、それぞれのアーム部の突端に忌避対象の害鳥の生体の各部位の一部又は全部を接続するための装着部12a、13aが配設されている。アーム部12、13は水平方向に平行に回動動作をする動作パターンが生じるように構成され、例えばアーム部12(装着部12a)にはカラスのクチバシ、アーム部13(装着部13a)にはカラスの尾羽を装着する。
【0044】
なお、図7に示すアーム部11、12、13等はその一部又は全部を害鳥忌避装置100の構成として任意に選択可能である。例えば、装置を製造する際のコスト面からカラスのクチバシ、カラスの尾羽のみを採用する場合などにはアーム部11(装着部11a)やこれに関する構成部品を含まずに害鳥忌避装置100を制作する。
このように害鳥忌避装置100の構成品として羽以外の生体部位を取り入れたり、搖動動作や回動動作などの動作パターンを組み合わせたりすることなどで忌避効果をより高めることができる。
【0045】
[第2変形例]
畜産農家や果樹農家、ゴルフ場などで使用するユースケースの場合、害鳥を忌避させる対象面積が大きくなるため害鳥忌避装置100を複数設置する場合がある。この場合、害鳥忌避装置100に通信機能を付加して複数の害鳥忌避装置をネットワークを介して一元管理可能な害鳥忌避システムとして構成してもよい。そのように構成する場合、各害鳥忌避装置100との情報の授受を行うための機器、例えばパーソナルコンピュータや情報端末(例えば、スマートフォン)などを介して各装置の管理を行うことが可能になる。
【0046】
この様に害鳥を追い払う対象面積が大きくなった場合であっても、本実施形態に係る害鳥忌避装置100であれば、例えばカラスの死体を設置する方法と比べた場合、相対的に設置・維持管理のためのコストを非常に低減させることが可能になる。
【0047】
上記説明した実施形態は、本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲が、これらの例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
10・・・筐体、11、12、13・・・アーム部、11a、12a、13a・・・装着部、15・・・カラスの羽、20・・・被覆体、30・・・センサ、40・・・出力装置、50・・・制御部、100・・・害鳥忌避装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7