(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】温水システム及び外部サーバ
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20221125BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20221125BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20221125BHJP
【FI】
G01M99/00 A
G01H17/00 Z
F24H1/00 Z
(21)【出願番号】P 2018181145
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】金山 吉彦
【審査官】奥野 尭也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-010415(JP,A)
【文献】特開2018-066526(JP,A)
【文献】特開平07-128134(JP,A)
【文献】特開平07-286892(JP,A)
【文献】特開平10-288546(JP,A)
【文献】特開平05-296888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0035885(US,A1)
【文献】特開2000-146771(JP,A)
【文献】特開平07-218333(JP,A)
【文献】特開平09-257562(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108426691(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103454113(CN,A)
【文献】特開2003-288401(JP,A)
【文献】特開2013-029484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M13/00-13/045
G01M99/00
G01H 1/00-17/00
F24D18/00
F24H 1/00
F24H 1/18- 1/20
F24H 4/00- 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部サーバと、
一棟の集合住宅に設置され且つ前記外部サーバにネットワークを介して
夫々接続された複数の給湯装置とを備えた温水システムであって、
前記給湯装置は、外気温度センサや給水温度センサを含む複数の温度センサと、器具内を流れる温水流量を検知する流量検知センサと、ポンプやファンを駆動する電動モータの回転数を検知する回転数センサと、器具の振動を検知する振動センサとを備えると共に、
前記センサ類によって検知された温度データ、前記流量データ、回転数データ及び振動データを含む運転情報を前記サーバに送信可能に構成された制御手段を備え、
前記外部サーバは、
前記複数の給湯装置から送信された前記運転情報を記憶すると共に、回転数データと振動データに関する相関分布を作成し、その相関分布を用いて前記電動モータの異常発生を判定するための判定閾値を設定し、その判定閾値を前記制御手段に送信することを特徴とする温水システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電動モータの異常発生を判定するための予め設定された判定閾値を有し、前記外部サーバから新たな判定閾値が送信された際には、その新たな判定閾値でもって前記予め設定された判定閾値を更新することを特徴とする請求項1に記載の温水システム。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の温水システムに適用されることを特徴とする外部サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して外部サーバに接続された複数の給湯装置を備えた温水システム及びこの温水システムに適用される外部サーバに関し、この温水システムの複数のポンプの回転数データと振動データを用いてポンプの異常を判定可能にしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置は、複数のポンプやファンと、それらを駆動する複数の電動モータを有し、
これら電動モータが長期間使用されると摺動部の摩耗等により故障し、異常に振動しやすくなる。上記の電動モータの異常検知が遅れると、電動モータに関連する機器の故障が連鎖的に発生し易くなり、メンテナンスコストが高価になる。
【0003】
給湯装置のポンプやファン等を駆動する電動モータの回転数や、給湯装置の構成機器の振動から電動モータの異常を検知する種々の技術が提案されている。
特許文献1に記載の摺動部の異常診断システムにおいては、圧縮機にAE信号を検知するAEセンサと、回転振動信号を検知する加速度ピックアップとを組み込んだ複合的センサを取付けて、AE信号と回転振動信号を取得し、これら信号を処理して摺動部の異常を診断している。
【0004】
特許文献2に記載のヒートポンプ式給湯装置においては、異常振動の発生を回避するように圧縮空気の回転数を制御し、その回避回数から防振性能の低下を検知している。
【0005】
ここで、給湯装置のポンプやファンを駆動する電動モータの回転数データと、機器の振動データとを用いて電動モータの異常を判定する場合、判定閾値をどのような値に設定するかが非常に重要である。判定閾値が過小である場合には正常な電動モータを異常と判定するし、判定閾値が過大である場合には異常な電動モータを異常と判定することができない。他方、判定閾値を適切な値に設定する場合には、異常が発生した電動モータだけでなく、近い将来に異常が発生する電動モータをも適切に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平6-92913号公報
【文献】特許第4663534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1組の給湯装置に組み込まれているポンプやファンの数は少数で、電動モータの回転数データ等のデータ数が少数であるため、回転数データや振動データを統計的に処理して判定閾値を適切な値に設定することは非常に難しい。
【0008】
本発明の目的は、複数の給湯装置をネットワークを介して外部サーバに接続し、それら給湯装置に装備された複数のポンプやファンを駆動する複数の電動モータの回転数データと複数の振動データを用いて判定閾値を適切な値に設定可能にした温水システム及びこの温水システムに適用される外部サーバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の温水システムは、外部サーバと、一棟の集合住宅に設置され且つ前記外部サーバにネットワークを介して夫々接続された複数の給湯装置とを備えた温水システムであって、前記給湯装置は、外気温度センサや給水温度センサを含む複数の温度センサと、器具内を流れる温水流量を検知する流量検知センサと、ポンプやファンを駆動する電動モータの回転数を検知する回転数センサと、器具の振動を検知する振動センサとを備えると共に、前記センサ類によって検知された温度データ、前記流量データ、回転数データ及び振動データを含む運転情報を前記サーバに送信可能に構成された制御手段を備え、前記外部サーバは、前記複数の給湯装置から送信された前記運転情報を記憶すると共に、回転数データと振動データに関する相関分布を作成し、その相関分布を用いて前記電動モータの異常発生を判定するための判定閾値を設定し、その判定閾値を前記制御手段に送信することを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、外部サーバは、一棟の集合住宅に設置された複数の給湯装置から送信された前記運転情報に含まれる回転数データと振動データに関する相関分布を作成し、その相関分布を用いて前記電動モータの異常発生を判定するための判定閾値を設定し、その判定閾値を複数の給湯装置の各制御手段に送信するため、一棟の集合住宅にほぼ同一の施工条件で設置された複数の給湯装置に装備された多数のポンプやファンを駆動する多数の電動モータの回転数データ及び振動データを統計的に処理して、適切な判定閾値を設定することができる。
また、ポンプ類は、経年的に性能が低下していくが、この経年変化に応じた運転情報を時々刻々取得して、判定閾値を設定していくため判定閾値の信頼性を高めることができる。
【0011】
請求項2の温水システムは、請求項1において、前記制御手段は、前記電動モータの異常発生を判定するための予め設定された判定閾値を有し、前記外部サーバから新たな判定閾値が送信された際には、その新たな判定閾値でもって前記予め設定された判定閾値を更新することを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、各給湯装置の制御手段は、外部サーバから新たな判定閾値が送信された際には、その新たな判定閾値でもって予め設定された判定閾値を更新するため、複数の給湯装置における複数の電動モータに対する異常判定の信頼性を高めることができる。
【0013】
【0014】
請求項3の外部サーバは、請求項1又は2に記載の温水システムに適用されることを特徴としている。
上記の構成によれば、複数の給湯装置から送信される運転情報を用いて判定閾値を設定するため判定閾値の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明は種々の作用、効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯湯給湯装置の構成図である。
【
図2】貯湯給湯装置の制御系の一部のブロック図である。
【
図3】ネットワークに接続された温水システムの構成図である。
【
図5】ポンプの異常判定制御のフローチャートである。
【
図6】判定閾値演算送信制御のフローチャートである。
【
図7】ポンプ回転数と振動振幅の相関分布の線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図面に基づいて説明する。
【0018】
最初に、ヒートポンプ式貯湯給湯装置1の全体構成について説明する。
図1に示すように、貯湯給湯装置1は、貯湯給湯ユニット2と、ヒートポンプ熱源機3とを有し、貯湯給湯ユニット2は、貯湯タンク4、ガス燃焼式の補助熱源機5、その他の機器(配管、バルブ、温度センサ等々)と、貯湯給湯ユニット2を覆う外装ケース2aとを備えている。この貯湯給湯ユニット2は、ヒートポンプ熱源機3を駆動して加熱した湯水を貯湯タンク4に貯留し、この貯留した湯水を給湯や浴槽6の湯張りに使用する。また、必要に応じて貯湯タンク4から取り出した湯水を補助熱源機5により加熱して給湯や風呂追焚や暖房等に使用可能である。
【0019】
貯湯タンク4の上部には、貯湯タンク4に貯留した湯水を出湯するための出湯通路7が接続されている。貯湯タンク4の下部には、貯湯タンク4に上水源から上水を供給するための給水通路8が接続されている。この給水通路8から分岐したバイパス通路9が出湯通路7に接続され、この接続部に出湯通路7の湯水とバイパス通路9の上水を混合する混合比率を調整可能な湯水混合弁10が介装されている。
【0020】
湯水混合弁10には給湯通路11が接続され、湯水混合弁10で混合された湯水は、給湯通路11を流通して図示外の給湯栓等に給湯可能であり、給湯通路11から分岐して追焚通路12に接続する湯張り通路13を介して浴槽6に湯張り可能である。湯張り通路13には、湯張り用の開閉弁13aが設けられている。
【0021】
貯湯タンク4の下部にはヒートポンプ熱源機3に湯水を供給する往き側湯水通路16が接続され、このヒートポンプ熱源機3で加熱された湯水を貯湯タンク4に戻す戻り側湯水通路17が貯湯タンク4の上部に接続されて、貯湯タンク4とヒートポンプ熱源機3の間で湯水が循環可能な循環加熱通路15が形成されている。
【0022】
往き側湯水通路16には、貯湯タンク4からヒートポンプ熱源機3に入水する湯水の入水温度を検知する入水温度センサ18と循環ポンプ19と切換弁20が接続されている。戻り側湯水通路17には、ヒートポンプ熱源機3で加熱された湯水の温度を検知する加熱温度センサ21が接続され、往き側湯水通路16と戻り側湯水通路17とを接続するバイパス通路22が設けられ、往き側湯水通路16とバイパス通路22との接続部には切換弁20が接続されている。
【0023】
ヒートポンプ熱源機3の起動直後等の加熱温度が低い場合に、切換弁20を切換えてヒートポンプ熱源機3で加熱した湯水を再びヒートポンプ熱源機3に送って再加熱することができる。ヒートポンプ熱源機3は、圧縮機と、凝縮熱交換器と、膨張弁と、蒸発熱交換器とを冷媒配管により接続してなるヒートポンプ回路を有する一般的なものである。尚、蒸発熱交換器の近傍には外気温センサ3bが設けられている。
【0024】
貯湯タンク4の外周には、貯留された湯水の温度を検知する複数の温度センサ4a~4dが上下方向に所定間隔おきに設けられている。これら温度センサ4a~4d及び貯湯タンク4は図示外の保温材により覆われている。出湯通路7には、湯水混合弁10に供給される湯水の出湯温度を検知するための出湯温度センサ7aが接続されている。給水通路8には、上水源から供給される上水の温度を検知するための給水温度センサ8aが接続されている。給湯通路11のうちの湯水混合弁10よりも下流側には、給湯する湯水の流量を検出する流量計11bと、給湯温度を検知するための給湯温度センサ11aが接続されている。
【0025】
貯湯タンク4の湯水を補助熱源機5で加熱するための補助加熱通路23が、出湯通路7から分岐して補助熱源機5に接続されている。補助熱源機5で加熱した湯水を出湯するための補助出湯通路24には調整弁25が介装され、この補助出湯通路24は出湯通路7に接続されている。補助出湯通路24には温度センサ24aが設けられている。調整弁25は、補助出湯通路24を通って出湯通路7に供給される湯水流量を調整する。補助加熱通路23には、三方弁26と補助熱源機5に湯水を送るためのポンプ27が介装されている。
【0026】
補助出湯通路24から分岐した熱交換通路28には三方弁26が接続され、熱交換通路28には温度センサ28tが介装されている。三方弁26は、貯湯タンク4の湯水又は熱交換通路28の湯水を補助熱源機5に供給可能となるように切換えられる。熱交換通路28の上流側部分は、補助出湯通路24から分岐した上流側通路28a,28bを有し、上流側通路28aには風呂追焚用の熱交換器29と開閉弁30とが介装されている。上流側通路28bには暖房用の熱交換器37と開閉弁38とが介装されている。
【0027】
追焚通路12は循環ポンプ31を有すると共に熱交換器29に接続され、浴槽6から導入した湯水を熱交換器29で加熱してから浴槽6へ戻すことで、追い焚き可能になっている。追焚通路12には浴槽の湯水の温度を検出する湯水温度センサ14が設けられている。
【0028】
暖房端末と熱交換器37との間で熱媒を循環させる熱媒通路は、熱媒戻り通路39と、熱媒往き通路40,41を有する。熱媒戻り通路39にはポンプ47が介装されている。熱媒往き通路40は高温用暖房端末に接続され、熱媒往き通路41は床暖房等の低温用暖房端末に接続されている。熱媒往き通路41は逆止弁42を介して熱媒往き通路40に接続されると共に流量調整弁43を介して熱媒戻り通路39に接続されている。
【0029】
給水通路8には、逆止弁32と、給水通路8から分岐して熱交換通路28に接続する分岐通路部33が接続されている。バイパス通路9には逆止弁34が介装され、バイパス通路9から分岐して給湯通路11に接続された高温出湯回避通路35には、高温出湯回避電磁弁36が介装されている。
【0030】
以上説明した種々の機器(ポンプ、弁類、センサ類)は制御ユニット44に電気的に接続され、制御ユニット44により制御される。この制御ユニット44は、貯湯給湯ユニット2を操作する操作端末45と、ヒートポンプ熱源機3の制御部3aと、補助熱源機5と、浴室の操作端末46等に接続されている。尚、制御ユニット44の回路基板には貯湯給湯ユニット2の振動を検出する振動センサ48が設けられ、制御ユニット44に接続されている。
【0031】
次に、制御ユニット44と、この制御ユニット44に接続されているポンプやセンサ類に関する制御系について説明する。
図2に示すように、制御ユニット44には、センサ類として、給水温度センサ8a、外気温センサ3b、流量計11b、温度センサ4a~4d、湯水温度センサ14、入水温度センサ18、加熱温度センサ21、温度センサ24a,28t、出湯温度センサ7a、給湯温度センサ11a、振動センサ48等が接続されている。
【0032】
また、制御ユニット44には、ポンプ類として、循環ポンプ19,31,ポンプ27,47が接続されている。これらポンプ19,27,31,47はサーボモータで駆動されるポンプであり、各サーボモータの電動モータ(M)とエンコーダ(E)が制御ユニット44に接続されている。尚、上記のエンコーダ(E)がポンプの回転数を検出する回転数センサに相当する。尚、制御ユニット44にはバルブ類も接続されているが図示省略する。
【0033】
次に、温水システム50について説明する。
図3に示すように、この温水システム50は、外部サーバ52と、この外部サーバ52にインターネット通信網51(ネットワーク)を介して接続された複数の貯湯給湯装置1とを備えている。複数の貯湯給湯装置1は、一棟の集合住宅に設置された貯湯給湯装置1を対象としてグループされており、以下に説明する制御は、このグループ化された複数の貯湯給湯装置1を対象とするものである。
【0034】
各貯湯給湯装置1の制御ユニット44は、熱源機3の制御部3aと、操作端末45,46に接続され、台所用操作端末45は、回線終端装置53を介してインターネット通信網51に接続されている。前記の外部サーバ52は、多量のデータを記憶するメモリと、種々の制御プログラムに基づいて演算処理する機能を有するものである。
【0035】
次に、各貯湯給湯装置1の制御ユニット44が実行する運転情報取得制御について説明する。
図4に示すように、所定のサンプリング周期(例えば1時間間隔)になると(S1:Yes)、各種温度センサ、外気温センサ、流量計からの検出データを読み込んで、制御ユニット44内の所定のメモリに記憶する(S2)。
【0036】
次に、各ポンプから発生する振動のデータを取得するため、各ポンプ19,27,31,47が単独運転されていることを条件として、そのポンプ19,27,31,47の回転数データと振動データを次のように取得する。
【0037】
S3においてポンプ19が単独運転中か否か判定し、その判定がYesのときはS4において、ポンプ19の回転数データと振動センサ48の振動データを読み込んで、それら回転数データと振動データをメモリの専用のエリアに記憶する。S4の終了後又はS3の判定がNoのときはS5移行する。
【0038】
次に、S5においてポンプ27が単独運転中か否か判定し、その判定がYesのときはS6において、ポンプ27の回転数データと振動センサ48の振動データを読み込んで、それら回転数データと振動データをメモリの専用のエリアに記憶する。S6の終了後又はS5の判定がNoのときはS7移行する。
【0039】
次に、S7においてポンプ31が単独運転中か否か判定し、その判定がYesのときはS8において、ポンプ31の回転数データと振動センサ48の振動データを読み込んで、それら回転数データと振動データをメモリの専用エリアに記憶する。S8の終了後又はS7の判定がNoのときはS9移行する。
【0040】
次に、S9においてポンプ47が単独運転中か否か判定し、その判定がYesのときはS10において、ポンプ47の回転数データと振動センサ48の振動データを読み込んで、それら回転数データと振動データをメモリの専用エリアに記憶する。S10の終了後又はS9の判定がNoのときはS11へ移行する。
【0041】
次に、S11においては、所定の送信タイミング(例えば6時間間隔)になったか否か判定し、その判定がYesのときはS12において、貯湯給湯装置1の運転情報である、各種温度、外気温、流量のデータ及び4つのポンプ19,27,31,48の回転数と振動振幅のデータを外部サーバ52へ送信し、その後制御はリターンする。S11の判定がNoの場合もリターンする。
【0042】
次に、各制御ユニット44が実行するポンプの異常判定制御について説明する。
図5に示すように、S20において、最後に外部サーバ52へ送信したポンプ19の回転数と振幅のデータ(複数回のサンプリング分のデータ)をメモリから読み込み、次にS21において、振幅は判定閾値以下か否か判定し、その判定がYesのときはS23へ移行する。尚、デフォルトの判定閾値は、制御ユニット44に予め設定されているが、S33において逐次更新される。
【0043】
尚、
図7に基づいて後述する第2の特性線V=aN+bが上記の判定閾値に相当するものであり、ポンプ回転数Nをパラメータとする判定閾値(振幅V)であり、振動振幅Vが第2の特性線V=aN+bよりも下方にある場合には判定閾値以下とされる。
S21の判定がNoの場合は、S22においてポンプ19が異常であると判定して操作端末45の画面に、ポンプ19が異常である旨の報知が表示され、S22からS23へ移行する。
【0044】
次に、S23において、最後に外部サーバ52へ送信したポンプ27の回転数と振幅のデータ(複数回のサンプリング分のデータ)をメモリから読み込み、次にS24において、振幅は判定閾値以下か否か判定し、その判定がYesのときはS26へ移行する。尚、S24の判定閾値はS21の判定閾値と同じのものである。S24の判定がNoの場合は、S25においてポンプ27が異常であると判定して操作端末45の画面に、ポンプ27が異常である旨の報知が表示され、S25からS26へ移行する。
【0045】
次に、S26において、最後に外部サーバ52へ送信したポンプ31の回転数と振幅のデータ(複数回のサンプリング分のデータ)をメモリから読み込み、次にS27において、振幅は判定閾値以下か否か判定し、その判定がYesのときはS29へ移行する。尚、S27の判定閾値はS21の判定閾値と同じのものである。S27の判定がNoの場合は、S28においてポンプ31が異常であると判定して操作端末45の画面に、ポンプ31が異常である旨の報知が表示され、S28からS29へ移行する。
【0046】
次に、S29において、最後に外部サーバ52へ送信したポンプ47の回転数と振動振幅のデータ(複数回のサンプリング分のデータ)をメモリから読み込み、次にS30において、振幅は判定閾値以下か否か判定し、その判定がYesのときはS32へ移行する。尚、S30の判定閾値はS21の判定閾値と同じのものである。S30の判定がNoの場合は、S31においてポンプ47が異常であると判定して操作端末45の画面に、ポンプ47が異常である旨の報知が表示され、S31からS32へ移行する。
【0047】
次に、S32において、外部サーバ52から判定閾値のデータを受信したか否か判定し、その判定がYesのときは、受信したデータでもって判定閾値を更新し、その後リターンする。尚、S32の判定がNoの場合もリターンする。
【0048】
次に、外部サーバ52が実行する判定閾値演算送信制御について説明する。
図6に示すように、S40において各制御ユニット44からの送信データ(運転情報)を受信しメモリに記憶する。
【0049】
次に、S41において複数の貯湯給湯装置1の全部のポンプについて、上記の受信データを用いて回転数Nと振動振幅Vのデータテーブルを更新し、メモリに記憶する。
このデータテーブルは、各貯湯給湯装置1におけるポンプ19,29,31,47別に分類して回転数データと振動データを更新しながら格納されている。これは、後述のように異常と判定されたポンプを特定可能とするためである。
【0050】
次に、S42において判定閾値演算タイミング(例えば1日間隔)か否か判定し、その判定がNoの場合はリターンし、S42の判定がYesの場合はS43において、前記データテーブルに格納されている最新の所定期間の回転数Nと振動振幅Vのデータを用いて、
図7に示すような第1の特性線V=aN、第2の特性線V=aN+bを演算し、メモリに記憶する。尚、第1の特性線が、「回転数データと振動データに関する相関分布」に相当し、第2の特性線が、回転数をパラメータとする振動振幅の「判定閾値」に相当する。
【0051】
ここで、
図7において、第1の特性線V=aNは、多数の点(N,V)の平均値を表す特性であり、傾きaは多数の点(N,V)における傾きV/Nの平均値として演算することができる。
【0052】
本実施形態の場合、多数の点(N,V)のうちの所定比率(例えば、98%)の点が第2の特性線V=aN+bの下側に位置するように定数bの値が演算される。つまり、第2の特性線V=aN+bの上側に位置する点(N,V)は振幅が過大であるため故障した異常なポンプであるとする。
【0053】
次に、S44において、送信タイミング(例えば1日間隔)か否か判定し、その判定がNoの場合はリターンし、S44の判定がYesの場合は第2の特性線V=aN+bの係数aと定数bを各制御ユニット44へ送信し、その後リターンする。
【0054】
次に、以上説明した温水システム50の作用、効果について説明する。
外部サーバ52は、複数の貯湯給湯装置1から送信された運転情報に含まれる回転数データと振動データに関する相関分布を作成し、その相関分布を用いてポンプを駆動する電動モータの異常発生を判定するための判定閾値を設定し、その判定閾値を複数の貯湯給湯装置1の各制御ユニット44に送信するため、多数の貯湯給湯装置1に装備された多数のポンプを駆動する多数の電動モータの回転数データ及び振動データを統計的に処理して、適切な判定閾値を設定することができる。
【0055】
また、ポンプ類は、経年的に性能が低下していくが、この経年変化に応じた運転情報を時々刻々取得して、判定閾値を設定していくため、判定閾値の信頼性を高めることができる。また、前記の第2の特性線の定数bを決める際の所定比率を適切な値(例えば、96%)に設定する場合には、異常が発生した電動モータの他に、近い将来に異常が発生する可能性のある電動モータをも検出することが可能になる。
【0056】
各貯湯給湯装置1の制御ユニット44は、外部サーバ52から新たな判定閾値が送信された際には、その新たな判定閾値でもって予め設定された判定閾値を更新するため、複数の貯湯給湯装置1における複数の電動モータに対する異常判定の信頼性を高めることができる。
【0057】
複数の貯湯給湯装置1は、一棟の集合住宅に設置された貯湯給湯装置を対象としてグループ化されており、外部サーバ52は、そのグループ化された複数の貯湯給湯装置1を対象として相関分布を作成するため、ポンプやファンの種類が制約されて多種類にバラつくことがないから、判定閾値の信頼性を高めることができる。
【0058】
次に、前記実施形態を部分的に変更する例について説明する。
1)前記実施形態では、ポンプ類を駆動する電動モータを対象にし、ファンを駆動する電動モータについての記載を省略したが、補助熱源機5に装備されたファンを駆動する電動モータも対象とすることができる。
【0059】
2)前記実施形態では、電動モータの設置後の期間(稼働期間)に関係なしに相関分布を作成したが、例えば稼働期間、0~3年未満、3年以上~6年未満、6年以上~のように、稼働期間をパラメータとしてグループ化した電動モータ毎に相関分布を作成し、稼働期間の長いグループの判定閾値ほど小さく設定するようにしてもよい。こうすると、稼働期間を加味して異常発生を判定することができる。
【0060】
3)前記実施形態では、1棟の集合住宅に設置された複数の貯湯給湯装置のグループを対象として前記相関分布を作成したが、これに限るものではなく、複数棟の集合住宅に設置された複数の貯湯給湯装置のグループを対象として前記相関分布を作成してもよく、また、新規の分譲団地の複数の住宅に設置された複数の貯湯給湯装置のグループを対象として前記相関分布を作成してもよく、その他のグルーピング手法でグループ化された複数の貯湯給湯装置のグループを対象として前記相関分布を作成してもよい。
【0061】
4)前記貯湯給湯装置1は一例を示すもので、その他の形式や種類の給湯装置にも本発明を適用可能である。
5)その他、当業者ならば、前記実施形態に種々の変更を付加して実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0062】
1 貯湯給湯装置
3b 外気温センサ
4a~4d 温度センサ
7a 出湯温度センサ
8a 給水温度センサ
11a 給湯温度センサ
11b 流量計
14 湯水温度センサ
18 入水温度センサ
21 加熱温度センサ
24a,28t 温度センサ
19,27,31,47 ポンプ
44 制御ユニット
48 振動センサ
50 温水システム
51 インターネット通信網
52 外部サーバ