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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/57 20110101AFI20221125BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20221125BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01R12/57
H01R12/71
H01R13/42 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019111752
(22)【出願日】2019-06-17
(65)【公開番号】P2020205166
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 健司
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128949(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0201222(US,A1)
【文献】実開平02-056373(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第04104215(DE,A1)
【文献】特開2015-210899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/55-12/58
H01R 12/71-12/73
H01R 13/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに設置される端子金具とを備え、
前記端子金具は、相手端子金具に接続される端子接続部と、回路基板に接続される基板接続部と、前記端子接続部および前記基板接続部の間に位置する軸部とを有しており、
前記ハウジングは、前記軸部と係合して前記端子金具を回動可能に支持する支持部を有し、
前記端子金具は、前記軸部より前記基板接続部側に重心を有し、
前記端子金具は、前記端子接続部と前記基板接続部とにわたって延びる基部と、前記基部と並んで設けられ、前記基部側に向かって撓み変形可能な弾性部とを有し、
前記軸部は、前記弾性部に設けられているコネクタ。
【請求項2】
前記軸部は、前記弾性部における前記端子接続部側の端部に設けられている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性部は、前記端子金具の回動方向と直交する方向に撓み変形する請求項1又は 請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記軸部は、前記弾性部に設けられる第1軸部と、前記基部における前記弾性部に臨む側とは反対側の面に突出して設けられる第2軸部とを有している 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子金具は、前記端子接続部および前記基板接続部の間でかつ前記軸部とは異なる位置に、前記端子接続部および前記基板接続部の相対変位を許容するストレインリリーフ部を有している 請求項から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記端子接続部、前記基板接続部および前記軸部は、金属板の折り曲げによって一体に設けられている 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記端子接続部側は、前記金属板を2重以上に配置して構成される 請求項6に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコネクタは、縦壁を有するハウジングと、縦壁の第1孔に圧入される第1端子と、縦壁の第2孔に圧入される第2端子とを備えている。第1端子および第2端子は、それぞれ実装先部材(以下、回路基板という)側に延びる第1脚部および第2脚部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-210899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コネクタがリフロー炉などの加熱装置を用いて加熱処理されると、ハウジングおよび回路基板が熱負荷で反るように変形することがある。ハウジングと回路基板との間には熱膨張率に差があるため、ハウジングおよび回路基板が変形すると、ハウジングの一部が回路基板から浮き上がり、第1脚部および第2脚部が回路基板から離れる懸念がある。その結果、第1脚部および第2脚部が同一平面上に位置するように調整することが難しくなり、回路基板に対する接続信頼性を確保することができないおそれがある。
【0005】
そこで、回路基板に対する接続信頼性を確保することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、ハウジングと、前記ハウジングに設置される端子金具とを備え、前記端子金具は、相手端子金具に接続される端子接続部と、回路基板に接続される基板接続部と、前記端子接続部および前記基板接続部の間に位置する軸部とを有しており、前記ハウジングは、前記軸部と係合して前記端子金具を回動可能に支持する支持部を有し、前記端子金具は、前記軸部より前記基板接続部側に重心を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路基板に対する基板接続部の接続信頼性を確保することが可能なコネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1にかかるコネクタにおいて、ハウジングが回路基板に設置された状態を側方から見た断面図である。
図2図2は、実施例1にかかるコネクタにおいて、軸部が支持部に支持され、スタビライザが溝部に収容された状態を上方から見た断面図である。
図3図3は、実施例1にかかるコネクタにおいて、軸部が支持部に支持され、スタビライザが溝部に収容された状態を斜め上後方から見た一部破断斜視図である。
図4図4は、実施例1にかかるコネクタにおいて、ハウジングの内部における第1支持部を斜め上前方から見た一部破断斜視図である。
図5図5は、実施例1にかかるコネクタにおいて、ハウジングの内部における第2支持部および溝部を斜め上前方から見た一部破断斜視図である。
図6図6は、実施例1にかかるコネクタにおいて、端子金具を右側の斜め上後方から見た斜視図である。
図7図7は、実施例1にかかるコネクタにおいて、端子金具を左側の斜め上後方から見た斜視図である。
図8図8は、実施例1にかかるコネクタにおいて、端子金具を上方から見た平面図である。
図9図9は、実施例2にかかるコネクタにおいて、ハウジングが回路基板に設置された状態を側方から見た断面図である。
図10図10は、実施例2にかかるコネクタにおいて、端子金具を斜め上前方から見た斜視図である。
図11図11は、実施例2にかかるコネクタにおいて、端子金具を斜め上後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)ハウジングと、前記ハウジングに設置される端子金具とを備え、
前記端子金具は、相手端子金具に接続される端子接続部と、回路基板に接続される基板接続部と、前記端子接続部および前記基板接続部の間に位置する軸部とを有しており、前記ハウジングは、前記軸部と係合して前記端子金具を回動可能に支持する支持部を有し、前記端子金具は、前記軸部より前記基板接続部側に重心を有する。端子金具は、軸部より基板接続部側に重心を有しているため、基板接続部が常に回路基板に接する方向に回動しようとする。したがって、仮に、リフロー工程などの高熱環境下でハウジングや回路基板が変形しても、基板接続部が回路基板に接する状態を維持することができ、回路基板に対する基板接続部の接続信頼性を確保することができる。
【0010】
(2)前記端子金具は、前記端子接続部と前記基板接続部とにわたって延びる基部と、前記基部と並んで設けられ、前記基部側に向かって撓み変形可能な弾性部とを有し、前記軸部は、前記弾性部に設けられているのが好ましい。軸部が撓み変形可能な弾性部に設けられているので、端子金具のハウジングへの装着工程において、弾性部を撓ませながら取り付けることができ、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0011】
(3)前記軸部は、前記弾性部における前記端子接続部側の端部に設けられていると良い。この構成によれば、弾性部の重量によって端子金具の重心を軸部より基板接続部側に位置させることができる。したがって、端子金具の重心を調整するための専用構造を設ける必要がなく、全体の構成が複雑になるのを回避することができる。
【0012】
(4)前記弾性部は、前記端子金具の回動方向と直交する方向に撓み変形すると良い。この構成によれば、弾性部の撓み動作が端子金具の回動動作に与える影響を少なくすることができ、基板接続部が回路基板に接する状態を良好に維持することができる。
【0013】
(5)前記軸部は、前記弾性部に設けられる第1軸部と、前記基部における前記弾性部に臨む側とは反対側の面に突出して設けられる第2軸部とを有していると良い。第1軸部は、弾性部の撓み動作を伴うことにより、対応する支持部に深い掛かり代で支持される。一方、弾性部が撓み変形し得るため、第1軸部が対応する支持部に安定して支持されない懸念がある。しかるに上記構成の場合、軸部が第1軸部に加えて第2軸部を有し、第2軸部が基部おける弾性部に臨む側とは反対側の面に突出して設けられているため、第2軸部が対応する支持部に安定して支持され、全体として軸部が支持部に良好に支持される。
【0014】
(6)前記端子金具は、前記端子接続部および前記基板接続部の間でかつ前記軸部とは異なる位置に、前記端子接続部および前記基板接続部の相対変位を許容するストレインリリーフ部を有していると良い。端子金具が回動したときに、端子接続部が相手端子金具に接続される所定位置から位置ずれする懸念がある。この場合、端子接続部に相手端子金具を誘い込む誘い込み構造などを設けることで対処することは可能であるが、相手端子金具から受ける応力が大きくなり、基板接続部に負荷がかかるという事情がある。その点、上記構成によれば、端子接続部が相手端子金具に接続される部分に作用する応力がストレインリリーフ部によって緩和され、ひいては基板接続部に作用する負荷も緩和される。その結果、端子金具全体の接続信頼性を確保することができる。
【0015】
(7)前記端子接続部、前記基板接続部および前記軸部は、金属板の折り曲げによって一体に設けられていると良い。この構成によれば、端子金具を折り曲げ加工によって容易に製造することができる。
【0016】
(8)前記端子接続部側は、前記金属板を2重以上に配置して構成されると良い。この構成によれば、端子接続部側の強度を上げて、相手端子との接続に耐えられるようにすることができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施例1>
実施例1にかかるコネクタは、図1に示すように、ハウジング60と、ハウジング60に設置される端子金具10とを備えている。ハウジング60は合成樹脂製であって、相手ハウジング80と嵌合される。端子金具10は導電金属製であって、相手ハウジング80に設けられた相手端子金具90と電気的に接続される。相手端子金具90は、筒状の箱部91を有する雌型端子金具であって、電線95の端部に接続される。
【0019】
<ハウジング60>
ハウジング60は回路基板100の上面に設置される。図1に示すように、ハウジング60は、上下方向に沿って配置される奥壁61と、奥壁61の外周縁から前方(図1の左方)に突出する角筒状の周壁62とを有している。ハウジング60は、内部に、前方に開放された嵌合空間部63を有している。相手ハウジング80は、嵌合空間部63に適合して挿入される。
【0020】
奥壁61は、複数の挿入孔64を有している。各挿入孔64は、奥壁61における前後厚みの大きい部分に、上下二段に設けられている。端子金具10は、挿入孔64に後方から挿入される。図4および図5に示すように、挿入孔64は、奥壁61を前後方向に貫通する主孔部65と、主孔部65の底面に開口する副孔部66とを有している。副孔部66は、前後方向に延び、前端が主孔部65の前後中間部に位置し、後端が奥壁61の後面に開口している。副孔部66は、下面(底面)に、後方へ向けて下り勾配に傾斜する領域67を有している。主孔部65は、上面における副孔部66の傾斜領域67と対向する位置に、後方へ向けて上り勾配で傾斜する領域68を有している。
【0021】
奥壁61は、挿入孔64の主孔部65の両側面に、第1支持部71および第2支持部72を有している。図4に示すように、第1支持部71は、主孔部65の一側の側面に突出する凸形状をなしている。第1支持部71は、円柱部分における先端側の後部に、斜めに切り欠かれた形状の斜面69を有している。
【0022】
図5に示すように、第2支持部72は、主孔部65の他側の側面に開口する凹形状をなしている。図2に示すように、第2支持部72は、主孔部65の前部において、第1支持部71と前後方向で重なる位置に配置されている。第2支持部72は、平坦な側面(底面)を有し、一定の高さ寸法で前後方向に延びて、奥壁61の前面に開口している。第2支持部72の後面は、湾曲状をなしている。
【0023】
主孔部65は、他側の側面に、干渉部73を有している。主孔部65の他側の側面における干渉部73を挟んだ前後両側のうち、前側には上述した第2支持部72が設けられ、後側には凹所74が設けられている。凹所74は、平坦な側面(底面)を有し、前後方向に延びて、奥壁61の後面に開口している。
【0024】
また、図5に示すように、主孔部65は、他側の側面において、凹所74の側面(底面)に開口する溝部75を有している。溝部75は、平坦な側面(底面)を有し、前後方向に延びて、奥壁61の後面に開口している。溝部75の前面は、凹所74の前後中間部において、左右方向に沿って平坦に形成されている。図2に示すように、溝部75は、第2支持部72および凹所74より側方へ深く凹む形態になっている。
【0025】
<端子金具10>
端子金具10は、一枚の導電性の金属板を所定形状に打ち抜いた後、曲げ加工などして一体に成形される。図6図8に示すように、端子金具10は、板面が上下方向に沿って配置され、全長にわたって延びる基部11と、板面が上下方向に沿って配置され、基部11の一側の側面と対向して配置される弾性部12とを有している。弾性部12は、基部11に連なり、板厚方向(左右方向)に関して基部11と並んで配置されている。
【0026】
基部11は、前後方向に延びる差し込み部13と、差し込み部13の後端側から下方に延びる延出部14と、延出部14の下端側から後方に延びる基板接続部15とを有している。差し込み部13は、後端側を除いて、板厚方向(左右方向)に2重に密着して重ね合わさる板材によって構成され、上端に、前後方向に沿った折り返し部16を有している。
【0027】
図7に示すように、差し込み部13は、前後中間部において、他側の板材に後方に開く門型の切り込みが入れられ、切り込み内の板片部分を外側に曲げ起こすことで、第2軸部17が形成されている。第2軸部17は、差し込み部13の他側の側面において、後方へ向けて片持ち状に突出する矩形の板片部分として構成される。第2軸部17は、平面視において後方へ向けて外側に傾斜した後、先端側(自由端側)が前後方向に沿った形態になっている。図2に示すように、第2軸部17は、第2支持部72に進入して、第2支持部72に支持される。
【0028】
図7に示すように、差し込み部13は、第2軸部17より後方において、他側の板材における第2軸部17より後方部分に上方に開く門型の切り込みが入れられ、切り込み内の板片部分を外側に曲げ起こすことで、スタビライザ18が形成されている。スタビライザ18は、差し込み部13の他側の側面において、側方に突出する矩形の板片部分であって、全体が前後方向に沿って配置される。スタビライザ18の側方への突出量は、第2軸部17の側方への突出量より大きくされている。図2に示すように、スタビライザ18は、溝部75に進入する。
【0029】
基部11における第2軸部17より前側の部分は、端子接続部19として構成される。端子接続部19は、左右で密着する板材で構成され、側面(板面)が上下方向に沿って配置されている。図1に示すように、端子接続部19は、前端縁に、先端へ向けてテーパ状に傾斜する誘い込み部21を有している。端子接続部19は、コネクタ嵌合時に、誘い込み部21に誘導されつつ相手端子金具90の箱部91内に挿入される。端子接続部19の側面は、相手端子金具90の箱部91内に設けられた接続部分に接触する接点部分となる。
【0030】
延出部14は、差し込み部13の一側の板材に連続して延びる板材で構成されている。延出部14は、上部に、他側へ斜めに屈曲する屈曲部22を有している。延出部14における屈曲部22を挟んだ上下両側のうち、下側の部分は、基板接続部15とともに、上側の部分より他側に位置ずれして配置されている。
上段の挿入孔64に挿入される端子金具10の場合、上述のとおり、屈曲部22は、他側へ屈曲している。一方、図示しないが、下段の挿入孔64に挿入される端子金具10の場合、屈曲部22は、一側へ屈曲している。
【0031】
延出部14の下端部は、後方へ向けて下り勾配に傾斜している。図1に示すように、下段の挿入孔64に挿入される端子金具10の場合、延出部14は、上下方向に垂直に延びる部分を有さず、全体が後方へ向けて下り勾配に傾斜して構成される。
【0032】
基板接続部15は、延出部14の下端部の後端に屈曲して連なり、前後方向に長い板片部分として構成される。基板接続部15の下端は、前後方向に沿った板厚面であって、回路基板100の表面に沿って配置される。図2および図3に示すように、基板接続部15の下端は、回路基板100の表面に形成された導電部101にリフロー半田付けして接続される。
【0033】
図6に示すように、弾性部12は、差し込み部13における他側の板材の下端から上方へ折り返され、差し込み部13の一側の側面に密着して配置される固定端部23と、固定端部23から前方に突出する弾性本体部24とを有している。固定端部23は、前後方向に延びる下側部分と下側部分の後端側に突出する上側部分とを有している。
【0034】
弾性本体部24は、固定端部23の上側部分から前方へ向けて差し込み部13から離れつつ突出する突出部25と、突出部25の前端に連なり前後方向に沿って配置される第1軸部26とを有している。第1軸部26は、円環状をなし、差し込み部13の一側の側面との間に間隔を置いて、差し込み部13と平行に配置されている。弾性本体部24は、突出部25が固定端部23と連なる部位を起点として、第1軸部26が板厚方向(左右方向)に撓み変形可能とされている。第1軸部26は、中心部に、板厚方向に貫通する円形の軸受孔27を有している。図2に示すように、第1軸部26は、軸受孔27に第1支持部71が進入して嵌合されることで、第1支持部71に支持される。
【0035】
第1軸部26および第2軸部17は、差し込み部13の前後中間部を挟んだ左右両側において、前後方向に関して重なる位置に配置されている。弾性部12における第1軸部26を除く部分(固定端部23および突出部25)は、差し込み部13の後部において、第1軸部26より後方に位置している。端子金具10は、第1軸部26および第2軸部17より後方でかつ下方となる基板接続部15側に重心が位置することになる。
【0036】
<コネクタの全体構造>
端子金具10の差し込み部13は、ハウジング60の対応する挿入孔64に後方から差し込まれる。差し込み部13が挿入孔64に挿入される過程で、第2軸部17は凹所74に進入して奥壁61と干渉するのが回避される。また、弾性部12は第1支持部71の後方の空間に進入し、スタビライザ18は溝部75に進入することで、同様に奥壁61と干渉するのが回避される。さらに、差し込み部13の後側下部および固定端部23の下側部分は、副孔部66に進入して逃がされる。
【0037】
差し込み部13が挿入孔64に正規に挿入される直前に、第1軸部26が第1支持部71と干渉し、弾性本体部24が第1支持部71の斜面69を摺動して撓み変形する。差し込み部13が挿入孔64に正規に挿入されると、弾性本体部24が弾性的に復帰し、第1軸部26の軸受孔27に第1支持部71が嵌まり込む(図2および図3を参照)。また、第2軸部17は、干渉部73を弾性的に乗り越えて、第2支持部72に進入する。スタビライザ18は、溝部75の前面に当たり、端子金具10の差し込み動作(挿入動作)を停止させる。差し込み部13の前部における端子接続部19は、ハウジング60の嵌合空間部63に突出して配置される。
【0038】
端子金具10の差し込み部13のうち、第1軸部26および第2軸部17を有する前後中間部から延出部14側の所定範囲は、挿入孔64に挿入される挿入部28となる。固定端部23の後端側は、挿入孔64に挿入されず、奥壁61の後方に露出して配置される。挿入部28は、挿入孔64(主孔部65および副孔部66)の上下面との間に上下方向に隙間を置いて配置される。この隙間は、図1に示すように、主孔部65および副孔部66の各傾斜領域67、68において、後方へ向けて次第に大きくなる。
【0039】
端子金具10は、ハウジング60の奥壁61に対し、第1軸部26が第1支持部71と係合し、かつ第2軸部17が第2支持部72と係合する回動中心位置を中心として、上記隙間の範囲で回動可能(揺動可能)となっている。端的には、回動中心位置は、第1軸部26および第2軸部17の位置に対応している。
端子金具10は、第1軸部26および第2軸部17より後方に重心位置が設定されていることにより、回動中心位置を中心として、基板接続部15が回路基板100に接する方向に回動可能な状態になる。このため、コネクタが回路基板100に設置されると、基板接続部15は、回路基板100の表面に当たって回路基板100との接触状態を常に維持するようになる。
【0040】
コネクタが図示しないリフロー炉内に搬入され、回路基板100の表面に塗布された半田が加熱されて溶融されると、基板接続部15に半田が付着する。その後、半田が冷却して固化されることにより、基板接続部15は、回路基板100の表面の導電部101に電気的に接続される。仮に、ハウジング60および回路基板100がリフロー炉内の熱により変形しても、基板接続部15は端子金具10の回動方向で回路基板100の表面に弾性的に押さえつけられ、回路基板100の表面に接する状態を維持する。
【0041】
なお、端子金具10が回転中心位置を中心として回動すると、第1支持部71は第1軸部26の軸受孔27内を周方向に摺動し、第2軸部17の先端側は第2支持部72の後面の湾曲部分に沿って変位する。このとき、差し込み部13の後部は、振れ幅が大きくなるが、その回動方向に、主孔部65および副孔部66の各傾斜領域67、68が対向位置するため、挿入孔64の上下面と干渉することはない。また、端子金具10の回動時、スタビライザ18は、溝部75内を変位するため、溝部75の壁面と干渉することはない。その結果、端子金具10の回動動作の円滑性が担保される。
【0042】
以上説明したように、本実施例1によれば、端子金具10の重心が軸部17、26より後方に設定され、基板接続部15が回路基板100に接する方向に端子金具10の回動方向が設定されている。このため、端子金具10が支持部71、72に支持された状態で、基板接続部15が回路基板100の表面に接する状態を維持することができる。その結果、回路基板100に対する基板接続部15の接続信頼性を確保することができる。
【0043】
また、端子金具10は、基部11と並んで弾性部12を有している。ハウジング60に対する端子金具10の装着過程では、弾性部12の弾性本体部24が第1支持部71と干渉して基部11側に向かって撓み変形し、装着完了時には、弾性本体部24が復帰し、第1軸部26に第1支持部71が嵌合する。ここで、第1軸部26は、弾性部12の前側部分(端子接続部19側の部分)に設けられている。このため、端子金具10の重心を弾性部12の重量によって後方(基板接続部15側)に設定することができる。したがって、端子金具10の重心を調整するための専用構造を設ける必要がない。
【0044】
また、弾性本体部24が端子金具10の回動方向と直交する方向に撓み変形するため、弾性本体部24の撓み動作と端子金具10の回動動作が互いに干渉するのを防止することができ、基板接続部15が回路基板100に接する状態をより良好に維持することができる。
【0045】
また、基部11の一側の側面に配置された弾性部12に第1軸部26が設けられ、基部11の他側の側面に第2軸部17が突出して設けられ、第1軸部26が第1支持部71に深い掛かり代で支持され、第2軸部17が第2支持部72に安定して支持されるため、端子金具10が全体としてハウジング60に良好に支持される。
【0046】
さらに、端子金具10は、端子接続部19、基板接続部15および軸部17、26を含めて、一枚の金属板を折り曲げ加工することによって一体に設けられている。このため、端子金具10を容易に製造することができる。
【0047】
<実施例2>
図9図11は、実施例2のコネクタを示す。コネクタは、図9に示すように、ハウジング60Aと、ハウジング60Aに設置される端子金具10Aとを備え、端子金具10Aの形状が実施例1と異なる。端子金具10A以外の部分は、実施例1と共通する部分が多く、実施例1と重複する説明を省略する。
【0048】
端子金具10Aは、一枚の導電性の金属板を所定形状に打ち抜いた後、曲げ加工などして一体に成形される。図10および図11に示すように、端子金具10Aは、板面が左右方向に沿って配置される基部11Aと、基部11Aの一側の縁部から起立し、板面が上下方向に沿って配置される弾性部12Aと、基部11Aの他側の側縁から起立する対向部29とを有している。
【0049】
基部11Aは、端子金具10Aの全長にわたって延び、全体として前後方向に延びる差し込み部13Aと、差し込み部13Aの後端側から下方に延びる延出部14Aと、延出部14Aの下端側から後方に延びる基板接続部15Aとを有している。
【0050】
差し込み部13Aは、前端部に、前後方向に沿った端子接続部19Aを有し、後部に、前後方向に沿った挿入部28Aを有している。端子接続部19Aは、上下の板面に、相手ハウジング80Aに設けられた相手端子金具90Aの接続部分が接触し、相手端子金具90Aに電気的に接続される。図9に示すように、挿入部28Aは、ハウジング60Aの挿入孔64Aに挿入される。そして、差し込み部13Aは、端子接続部19Aと挿入部28Aとの間に、ストレインリリーフ部31を有している。ストレインリリーフ部31は、端子接続部19Aの後端から挿入部28Aの前端にかけて側面視S字形に湾曲する形態になっている。端子接続部19A側と挿入部28A側とは、ストレインリリーフ部31を介して上下方向の相対的な変位が許容されている。
【0051】
延出部14Aは、差し込み部13Aの後端から屈曲して下方へ垂直に延びる部分と、下端側にて後方へ向けて下り勾配に傾斜する部分とを有している。延出部14Aの前後面は板面となる。
基板接続部15Aは、延出部14Aの下端に屈曲して連なり、板面を上下に向けた板片部分として構成される。基板接続部15Aの下面(板面)は、回路基板100の表面に沿って配置され、回路基板100の表面に形成された導電部分にリフロー半田付けして接続される。
【0052】
図10および図11に示すように、弾性部12Aは、挿入部28Aの一側の側縁に直角に連なって立ち上がる固定端部23Aと、固定端部23Aの後端側の上側部分から前方へ向けて突出する突出部25Aと、突出部25Aの前端に連なり前後方向に沿って配置される第1軸部26Aとを有している。突出部25Aと第1軸部26Aとは弾性本体部24Aを構成している。弾性本体部24Aは、突出部25Aが固定端部23Aと連なる後端部位を起点として、左右方向(弾性本体部24Aの板厚方向)に撓み変形可能とされている。第1軸部26Aは、中心部に、左右方向に貫通する円形の軸受孔27Aを有している。対向部29は、前後方向に長い矩形板状をなし、前後方向に関して軸受孔27Aと重なる位置に、第2軸部17Aを有している。第1軸部26Aおよび第2軸部17Aは、ハウジング60Aに設けられた支持部71A、72Aと係合して支持され、回動中心位置を規定する。なお、支持部は、実施例1と同様、第1軸部26Aに対応する第1支持部71Aと第2軸部17Aに対応する第2支持部72Aとからなり、ハウジング60Aに設けられている。図10および図11では、支持部71A、72Aを簡易的に図示している。
【0053】
第1軸部26Aが弾性部12Aの前端部に設けられ、第2軸部17Aが対向部29の前端部に設けられている。このことから、端子金具10Aの重心は、第1軸部26Aおよび第2軸部17Aより後方となる基板接続部15A側に設定される。
【0054】
ここで、端子金具10Aは、挿入部28Aが挿入孔64Aに挿入され、第1軸部26Aおよび第2軸部17Aが支持部71A、72Aに係合することにより、回動中心位置を中心として回動可能な状態になる。このとき、ストレインリリーフ部31は、端子接続部19Aとともにハウジング60Aの嵌合空間部63内に突出して配置される。
【0055】
リフロー工程の高熱環境下で、ハウジング60Aおよび回路基板100が変形しても、実施例1と同様、端子金具10Aが回路基板100側に回動可能となっていることにより、基板接続部15Aが回路基板100の表面に接する状態が維持され、回路基板100に対する基板接続部15Aの接続信頼性を確保することができる。
【0056】
さらに、実施例2の場合、端子接続部19Aが相手端子金具90Aに接続された状態でこの接続部分に応力が作用しても、ストレインリリーフ部31が柔軟に変形して上記応力を緩和することができる。その結果、相手端子金具90Aから基板接続部15Aに伝達される負荷も緩和され、回路基板100に対する基板接続部15Aの接続信頼性を高めることができる。
【0057】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施例1および実施例2の場合、軸部は第1軸部26、26Aおよび第2軸部17、17Aで構成されていたが、他の実施形態としては、軸部は第1軸部および第2軸部のいずれか1つで構成されるものであっても良い。この場合、ハウジングも、第1支持部および第2支持部のいずれか1つで構成されると良い。
上記実施例1および実施例2の場合、端子金具10、10Aは一定の回動中心位置を中心として回動可能となっていたが、他の実施形態としては、端子金具は所定範囲に変位する回動中心位置を中心として回動可能となっていても良い。
実施例1の場合、第2軸部17は差し込み部13における切り込み内の板片部分を曲げ起こすことで形成されていたが、他の実施形態としては、第2軸部は差し込み部を外側に叩き出して形成されてもよい。
実施例2の場合、ストレインリリーフ部31は差し込み部13Aにおける端子接続部19Aと挿入部28Aとの間に設けられていたが、他の実施形態としては、ストレインリリーフ部は、端子接続部と基板接続部との間に設けられていれば特に限定されず、例えば、延出部の上下中間部などに設けられていても良い。
実施例1の場合、基板接続部15の板厚面が回路基板100の表面に接するように構成されていたが、他の実施形態としては、実施例2と同様、基板接続部の板面が回路基板の表面に接するように構成されても良い。相手端子金具またはハウジングには、端子接続部を相手端子金具と接続可能な位置に誘導する誘い込み構造を設けると良い。
実施例1の場合、端子接続部側が金属板(板材)を2重に配置して構成されたが、他の実施形態としては、端子接続部側が金属板を3重以上に配置して構成されても良い。また、こうした多重に配置された金属板は、隣接する板面間に隙間を有していても良い。
【符号の説明】
【0058】
10、10A…端子金具
11、11A…基部
12、12A…弾性部
13、13A…差し込み部
14、14A…延出部
15、15A…基板接続部
16…折り返し部
17、17A…第2軸部(軸部)
18…スタビライザ
19、19A…端子接続部
21…誘い込み部
22…屈曲部
23、23A…固定端部
24、24A…弾性本体部
25、25A…突出部
26、26A…第1軸部(軸部)
27、27A…軸受孔
28、28A…挿入部
29…対向部
31…ストレインリリーフ部
60…ハウジング
61…奥壁
62…周壁
63…嵌合空間部
64…挿入孔
65…主孔部
66…副孔部
67…副孔部の傾斜領域
68…主孔部の傾斜領域
69…斜面
71、71A…第1支持部(支持部)
72、72A…第2支持部(支持部)
73…干渉部
74…凹所
75…溝部
80、80A…相手ハウジング
90、90A…相手端子金具
91…箱部
95…電線
100…回路基板
101…導電部
図1
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図10
図11