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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】熱交換器およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/18 20060101AFI20221125BHJP
   B21D 39/20 20060101ALI20221125BHJP
   B21D 53/06 20060101ALI20221125BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F28F9/18
B21D39/20 C
B21D53/06 D
B23K1/00 330J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018181272
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020051683
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】外田 義則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 楽
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 由紀子
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138851(JP,A)
【文献】特開2007-275932(JP,A)
【文献】特開2009-090313(JP,A)
【文献】特開2007-319919(JP,A)
【文献】特開2010-046697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/18
B21D 39/00 - 41/04
B21D 53/06
B23K 1/00
F28D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用媒体が内部に供給されるケースと、
このケースの側壁部に設けられている第1の孔部に端部が挿通するようにして前記ケース内から外部に引き出されている伝熱管と、
前記側壁部のうち、前記第1の孔部の周縁部に前記伝熱管を接合する第1のロウ付け部と、
を備えている、熱交換器であって、
前記伝熱管の外周面が前記第1の孔部の内周面に圧接するように前記伝熱管に設けられた拡管部と、
この拡管部の一部として形成され、かつ前記伝熱管の軸長方向において前記側壁部を挟むように前記側壁部の内側および外側にそれぞれ位置して前記側壁部に係合する第1および第2の段部と、
前記拡管部の外面と前記第1の孔部の内周面との間に、前記第1のロウ付け部のロウ材が進入する第1の隙間を形成するように、前記拡管部の外面に設けられ、かつ前記第1および第2の段部の外面にも延設されている第1の凹部と、
をさらに備えており、
前記第1のロウ付け部のロウ材の一部は、前記側壁部の外側に位置し、かつ前記第1の凹部のうちの前記第2の段部の領域に進入して、前記側壁部の外面を前記第2の段部にロウ付けしており、
前記ロウ材の他の一部は、前記第1の隙間を介して前記側壁部の内側に到達した配置にあり、かつ前記第1の凹部のうちの前記第1の段部の領域に進入し、前記側壁部の内面を前記第1の段部にロウ付けしていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記伝熱管の端部が挿通する第2の孔部が設けられ、かつ前記伝熱管の端部に第2のロウ付け部を介して接合されるヘッダ部を、備えており、
前記拡管部は、前記伝熱管の端部の外周面が前記第2の孔部の内周面にも圧接するように設けられており、
前記拡管部の外面と前記第2の孔部の内周面との間に、前記第2のロウ付け部のロウ材が進入する第2の隙間を形成するように、前記拡管部の外面に設けられた第2の凹部を、さらに備えている、熱交換器。
【請求項3】
加熱用媒体が内部に供給されるケースの側壁部に設けられている第1の孔部に、伝熱管の端部を挿通させた状態において、前記伝熱管の外周面を前記第1の孔部の内周面に圧接させるように、前記伝熱管に拡管部を設ける拡管工程と、
前記側壁部のうち、前記第1の孔部の周縁部に前記伝熱管を接合する第1のロウ付け部を設けるロウ付け工程と、
を有しており、
前記拡管工程においては、前記拡管部の一部として、前記伝熱管の軸長方向において前記側壁部を挟むように前記側壁部の内側および外側にそれぞれ位置して前記側壁部に係合する第1および第2の段部を形成する、熱交換器の製造方法であって、
前記拡管工程は、前記伝熱管内に進入された状態で前記伝熱管の半径方向に拡縮変形可能な拡縮変形可能部を有する割型パンチを用いて行ない、
前記拡縮変形可能部は、前記伝熱管をその内側から押圧するための複数のセグメントを有し、かつ前記伝熱管の拡管時には、前記複数のセグメントの外面部の相互間に離間部が形成される構成であり、この離間部を利用することによって、前記拡管部の外面には、この外面と前記第1の孔部の内周面との相互間に第1の隙間を生じさせる第1の凹部を設けるとともに、この第1の凹部を前記第1および第2の段部の外面にも延設し、
前記ロウ付け工程においては、前記第1のロウ付け部の溶融ロウ材の一部を、前記側壁部の外側に位置させて、前記第1の凹部のうちの前記第2の段部の領域に進入させることにより、前記側壁部の外面を前記第2の段部にロウ付けするとともに、前記溶融ロウ材の他の一部を、前記第1の隙間を介して前記側壁部の内側の位置に到達させて、前記第1の凹部のうちの前記第1の段部の領域に進入させることにより、前記側壁部の内面を前記第1の段部にロウ付けすることを特徴とする、熱交換器の製造方法
【請求項4】
請求項3に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記複数のセグメントのそれぞれの外面部の端縁には、前記離間部の幅を拡大する面取り部が設けられている、熱交換器の製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の熱交換器の製造方法であって、
前記伝熱管の端部にヘッダ部をロウ付けするヘッダ部取付け工程を、さらに有しており、
このヘッダ部取付け工程においては、
前記拡管工程の前に、前記伝熱管の端部を前記ヘッダ部に設けられている第2の孔部に挿通させておき、
前記拡管工程においては、前記伝熱管の端部の外周面が前記第2の孔部の内周面にも圧接するように前記拡管部を設けるとともに、この拡管部の外面には、この外面と前記第2の孔部の内周面との間に第2の隙間を生じさせる第2の凹部を設け、
前記ロウ付け工程においては、前記第2の孔部の周縁部に前記伝熱管の端部を接合する第2のロウ付け部を設けるとともに、この第2のロウ付け部の溶融ロウ材を前記第2の隙間に進入させる、熱交換器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給湯装置における湯水加熱用途などに用いられる熱交換器、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器の一例として、特許文献1に記載のものがある。
同文献に記載の構造においては、燃焼ガスが供給されるケースの側壁部に設けられている孔部に、伝熱管の端部が挿入されている。伝熱管の端部は、拡管処理が施されていることにより、前記孔部の内周面に圧接している。前記孔部の一部は、テーパ孔部とされており、このことにより孔部の内周面と伝熱管の外周面との間には、ロウ材を進入させるための凹部が形成されている。前記ロウ材により、伝熱管と取付け対象部材とのロウ付けが図られている。
このような構成によれば、伝熱管の拡管とロウ付けとが併用されているため、伝熱管をケースの側壁部に対して比較的高い強度で固定することが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善の余地がある。
【0004】
すなわち、前記従来技術においては、ケースの側壁部に対する伝熱管のロウ付け強度を高めるための手段として、側壁部の孔部の一部をテーパ孔部としている。したがって、このテーパ孔部を設けるための加工が煩雑であり、製造コストが高価となる。また、孔部の一部をテーパ孔部にすると、その分だけ、孔部の内周面と伝熱管の外周面との接触面積が小さくなり、伝熱管を拡管させた場合における孔部の内周面に対する伝熱管の圧接力を大きくするといったことも難しくなり、伝熱管の取付け強度が低くなる。このような不具合は、側壁部の厚みが小さい場合に、一層顕著となる。
また、前記孔部の一部がテーパ孔部とされて、この部分にロウ材が充填されているものの、前記テーパ孔部の内周面と伝熱管の外周面とは比較的大きい寸法で離間している。このため、テーパ孔部における伝熱管のロウ付け強度も、やや劣るものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-133491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、簡易な構成によって伝熱管の取付け強度を高くすることができ、製造作業の容易化や製造コスト低減なども好適に図ることが可能な熱交換器、およびその製造方法を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用媒体が内部に供給されるケースと、このケースの側壁部に設けられている第1の孔部に端部が挿通するようにして前記ケース内から外部に引き出されている伝熱管と、前記側壁部のうち、前記第1の孔部の周縁部に前記伝熱管を接合する第1のロウ付け部と、を備えている、熱交換器であって、前記伝熱管の外周面が前記第1の孔部の内周面に圧接するように前記伝熱管に設けられた拡管部と、この拡管部の一部として形成され、かつ前記伝熱管の軸長方向において前記側壁部を挟むように前記側壁部の内側および外側にそれぞれ位置して前記側壁部に係合する第1および第2の段部と、前記拡管部の外面と前記第1の孔部の内周面との間に、前記第1のロウ付け部のロウ材が進入する第1の隙間を形成するように、前記拡管部の外面に設けられ、かつ前記第1および第2の段部の外面にも延設されている第1の凹部と、をさらに備えており、前記第1のロウ付け部のロウ材の一部は、前記側壁部の外側に位置し、かつ前記第1の凹部のうちの前記第2の段部の領域に進入して、前記側壁部の外面を前記第2の段部にロウ付けしており、前記ロウ材の他の一部は、前記第1の隙間を介して前記側壁部の内側に到達した配置にあり、かつ前記第1の凹部のうちの前記第1の段部の領域に進入し、前記側壁部の内面を前記第1の段部にロウ付けしていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ケースの側壁部に設けられた第1の孔部の内周面と、伝熱管の拡管部の外面との間には、第1の隙間が形成され、かつこの第1の隙間に第1のロウ付け部のロウ材が進入しているため、側壁部と伝熱管とのロウ付け面積を大きくすることができる。前記ロウ材を側壁部のうち、第1のロウ付け部とは反対側の部位に廻り込ませることも可能である。このため、ロウ付けによる接合強度を高めることができる。
また、ロウ付け面積を大きくするための手段として、伝熱管の拡管部の外面に第1の凹部が設けられているが、この第1の凹部は、部分的に設ければよく、伝熱管の外周面と孔部の内周面との接触面積を大きくとることが可能である。したがって、伝熱管の拡管による取付け強度、およびロウ付け強度を、ともに高めることが可能である。
さらに、側壁部の孔部は、単なるストレート状の孔部でよく、前記従来技術とは異なり、一部にテーパ孔部を有するものとする必要はない。一方、伝熱管の拡管部には、第1の凹部が設けられているが、この第1の凹部は、伝熱管を拡管する際に、その一部を非拡管状態とすることによって簡単に設けることが可能である。したがって、製造作業も容易であり、製造コストの低減も的確に図ることができる。
【0011】
さらに、前記構成によれば、伝熱管の拡管部の第1および第2の段部の存在により、側壁部に対する伝熱管の取付け強度をより高めることが可能である。その一方、第1の凹部は、第1および第2の段部にも延設されているため、第1のロウ付け部のロウ材を、第1の凹部を介して第1の隙間に円滑に進入させることができる。第1の隙間が、第1および第2の段部によって完全に塞がれてしまう不具合を適切に回避することが可能である。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記伝熱管の端部が挿通する第2の孔部が設けられ、かつ前記伝熱管の端部に第2のロウ付け部を介して接合されるヘッダ部を、備えており、前記拡管部は、前記伝熱管の端部の外周面が前記第2の孔部の内周面にも圧接するように設けられており、前記拡管部の外面と前記第2の孔部の内周面との間に、前記第2のロウ付け部のロウ材が進入する第2の隙間を形成するように、前記拡管部の外面に設けられた第2の凹部を、さらに備えている。
【0013】
このような構成によれば、伝熱管へのヘッダ部の取付けも適切に図られる。すなわち、前記した伝熱管とヘッダ部との基本的な取付け構造は、先に述べたケースの側壁部に対する伝熱管の固定構造と共通している。このため、ヘッダ部に設けられた第2の孔部の内周面に対し、伝熱管の拡管部の外周面を広い面積で圧接させ得ることや、第2の孔部の内周面と伝熱管の外面との間に形成された第2の隙間にロウ材が進入することによって強固なロウ付けを図ることができるなど、ケースの側壁部に対する伝熱管の固定構造について述べたのと同様な効果が得られる。
【0014】
本発明の第2の側面により提供される熱交換器の製造方法は、加熱用媒体が内部に供給されるケースの側壁部に設けられている第1の孔部に、伝熱管の端部を挿通させた状態において、前記伝熱管の外周面を前記第1の孔部の内周面に圧接させるように、前記伝熱管に拡管部を設ける拡管工程と、前記側壁部のうち、前記第1の孔部の周縁部に前記伝熱管を接合する第1のロウ付け部を設けるロウ付け工程と、を有しており、前記拡管工程においては、前記拡管部の一部として、前記伝熱管の軸長方向において前記側壁部を挟むように前記側壁部の内側および外側にそれぞれ位置して前記側壁部に係合する第1および第2の段部を形成する、熱交換器の製造方法であって、前記拡管工程は、前記伝熱管内に進入された状態で前記伝熱管の半径方向に拡縮変形可能な拡縮変形可能部を有する割型パンチを用いて行ない、前記拡縮変形可能部は、前記伝熱管をその内側から押圧するための複数のセグメントを有し、かつ前記伝熱管の拡管時には、前記複数のセグメントの外面部の相互間に離間部が形成される構成であり、この離間部を利用することによって、前記拡管部の外面には、この外面と前記第1の孔部の内周面との相互間に第1の隙間を生じさせる第1の凹部を設けるとともに、この第1の凹部を前記第1および第2の段部の外面にも延設し、前記ロウ付け工程においては、前記第1のロウ付け部の溶融ロウ材の一部を、前記側壁部の外側に位置させて、前記第1の凹部のうちの前記第2の段部の領域に進入させることにより、前記側壁部の外面を前記第2の段部にロウ付けするとともに、前記溶融ロウ材の他の一部を、前記第1の隙間を介して前記側壁部の内側の位置に到達させて、前記第1の凹部のうちの前記第1の段部の領域に進入させることにより、前記側壁部の内面を前記第1の段部にロウ付けすることを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を、簡易な作業工程によって適切に製造することが可能である。
【0016】
本発明において、好ましくは、前記複数のセグメントのそれぞれの外面部の端縁には、前記離間部の幅を拡大する面取り部が設けられている。
【0017】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、割型パンチの複数のセグメントの離間部は、伝熱管の拡管部のうち、第1の凹部を設けるための部分であり、この離間部の幅を大きくすることにより、第1の凹部をも大きくすることが可能である。したがって、前記構成によれば、第1の凹部を設けることの容易化、確実化を図る上で好ましい。
【0018】
本発明において、好ましくは、前記伝熱管の端部にヘッダ部をロウ付けするヘッダ部取付け工程を、さらに有しており、このヘッダ部取付け工程においては、前記拡管工程の前に、前記伝熱管の端部を前記ヘッダ部に設けられている第2の孔部に挿通させておき、前記拡管工程においては、前記伝熱管の端部の外周面が前記第2の孔部の内周面にも圧接するように前記拡管部を設けるとともに、この拡管部の外面には、この外面と前記第2の孔部の内周面との間に第2の隙間を生じさせる第2の凹部を設け、前記ロウ付け工程においては、前記第2の孔部の周縁部に前記伝熱管の端部を接合する第2のロウ付け部を設けるとともに、この第2のロウ付け部の溶融ロウ材を前記第2の隙間に進入させる。
【0019】
このような構成によれば、ケースの側壁部に伝熱管を固定させる作業工程を有効に利用した上で、伝熱管にヘッダ部を適切に取付けることが可能である。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る熱交換器の一例を示す斜視図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】(a)は、図1のIIIa-IIIa断面図であり、(b)は、(a)のIIIb部の拡大図である。
図4】(a)は、図1図3に示す熱交換器の要部拡大断面図であり、(b)は、(a)のIVb-IVb断面図である。
図5】(a)は、伝熱管の拡管に用いる割型パンチの一例を示す正面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb断面図であり、(c)は、(b)に示す構造の作用を示す要部断面図である。
図6】(a)は、図1図3に示す熱交換器の製造方法の作業工程例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のVIb-VIb断面図である。
図7】(a)は、図1図3に示す熱交換器の製造方法の作業工程例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のVIIb-VIIb断面図である。
図8】(a)は、図1図3に示す熱交換器の製造方法の作業工程例を示す要部断面図であり、(b)は、(a)のVIIIb-VIIIb断面図である。
図9】本発明の他の実施形態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1図3に示す熱交換器HEは、たとえば給湯装置に組み込まれ、給湯用の湯水を加熱するのに用いられるものである。この熱交換器HEは、上下が開口した略矩形枠状のケース1、その内部に収容された複数の伝熱管2、これら複数の伝熱管2に取付けられた入水用および出湯用のヘッダ部6を備えている。
図示説明は省略するが、この熱交換器HEは、逆燃焼式の給湯装置における潜熱回収用であり、ケース1の上部には、燃焼ガス(加熱用媒体の一例)を発生させるバーナ、および前記燃焼ガスから顕熱を回収するための別の熱交換器が載設され、この別の熱交換器を通過した燃焼ガスからさらに潜熱を回収するのに用いられる。複数の伝熱管2を通過する湯水は、前記燃焼ガスを利用して加熱され、湯水生成がなされる。
【0024】
各伝熱管2は、蛇行状伝熱管であり、図3によく表れているように、間隔を隔てて並んだ複数の直状管体部2aが、半円弧状などの接続管体部2bを介して一連に繋がった構成である。各伝熱管2は、複数の直状管体部2aが上下高さ方向に並ぶ起立姿勢とされた上で、図2に示すように、ケース1の横幅方向に並べて設けられている。ただし、複数の伝熱管2は千鳥配列とされ、互いに隣り合う伝熱管2の相互間には高低差が設けられている。これは、複数の伝熱管2による燃焼ガスからの熱回収量を多くする上で有利である。
【0025】
図3に示すように、各伝熱管2の端部は、ケース1の側壁部10に設けられた第1の孔部11を挿通し、ケース1内からその外部に引き出されている。ヘッダ部6は、ベース部60と、入水口または出湯口として利用される開口部61aを有するカバー部61とが接合され、かつ内部には伝熱管2内に連通するチャンバ63が形成された構成である。
本実施形態においては、側壁部10に対する伝熱管2の固定構造、および伝熱管2に対するヘッダ部6の取付け構造に特徴があり、この点を以下に説明する。
【0026】
図4において、伝熱管2には、拡管部20が設けられている。また、伝熱管2をケース1の側壁部10に接合するための手段として、第1のロウ付け部Baが具備されている。
拡管部20は、伝熱管2のうち、ケース1の側壁部10よりも内側の位置から先端部にわたって設けられており、第1ないし第4の段部21~24、ならびに第1および第2の凹部25a,25bを含む凹部25を有している。凹部25は、非拡管部に相当し、伝熱管2の軸長方向に一連に延びて設けられている。この凹部25は、図5を参照して説明する拡管作業用の割型パンチ5の離間部55に対応する部位であり、図4(b)に示すように、伝熱管2の周方向に適当な間隔で複数箇所設けられている(なお、図4(a)においては、理解の容易のため、伝熱管2の上部に凹部25が設けられ、かつ下部には凹部25が設けられていない状態に示している。この点は、後述する図8も同様である)。
【0027】
第1および第2の段部21,22は、伝熱管2の軸長方向においてケース1の側壁部10を挟むように、側壁部10の内側および外側にそれぞれ位置し、かつ伝熱管2の非拡管部の外径よりも大径とされた部分である。好ましくは、第1および第2の段部21,22は、側壁部10の内外両側面に接触した配置とされる。
図4(b)に示すように、拡管部20の外周面(第1および第2の段部21,22の相互間領域の外周面)は、第1の孔部11の内周面に圧接している。ただし、第1の凹部25aの位置においては、拡管部20の外周面と第1の孔部11の内周面とは非接触であり
、第1の隙間C1が形成されている。凹部25のうち、第1の孔部11の内周面に対向する部分が、第1の凹部25aである。ただし、この第1の凹部25aは、第1および第2の段部21,22の形成箇所にも延設されている。
【0028】
第1のロウ付け部Baは、側壁部10のうち、第1の孔部11の周縁部と伝熱管2の外周面とを接合する部分であり、側壁部10の外側に設けられている。ただし、この第1のロウ付け部Baのロウ材は、第1の隙間C1に進入し、第1の孔部11の内周面と伝熱管2の外周面とを接合している。好ましくは、前記ロウ材の一部は、第1の隙間C1を介して側壁部10の内面側に到達し、側壁部10の内面側を伝熱管2に接合するロウ付け部(不図示)を構成している。
【0029】
伝熱管2の先端寄り部分は、ヘッダ部6のベース部60に設けられた第2の孔部62に挿通し、これらの部分を接合するための手段として、第2のロウ付け部Bbが設けられている。拡管部20の第3および第4の段部23,24は、伝熱管2の軸長方向においてベース部60の内側および外側にそれぞれ位置し、かつ伝熱管2の非拡管部の外径よりも大径とされた部分である。好ましくは、第3および第4の段部23,24は、ベース部60の内外両側面に接触した配置とされる。
【0030】
拡管部20の外周面は、第2の孔部62の内周面に対しても圧接している(図4(a)の伝熱管2の先端寄り領域の下側部分を参照)。ただし、第2の凹部25bの位置においては、拡管部20の外周面と第2の孔部62の内周面とは非接触であり、第2の隙間C2が形成されている。凹部25のうち、第2の孔部62の内周面に対向する部分が、第2の凹部25bである。ただし、この第2の凹部25bは、第3および第4の段部23,24の形成箇所にも延設されている。
【0031】
第2のロウ付け部Bbは、ベース部60のうち、第2の孔部62の周縁部と伝熱管2の外周面とを接合する部分であり、ベース部60の片面側に設けられている。ただし、この第2のロウ付け部Bbのロウ材は、第2の隙間C2に進入し、第2の孔部62の内周面と伝熱管2の外周面とを接合している。図示説明は省略するが、好ましくは、前記ロウ材の一部は、第2の隙間C2を介してベース部60の前記とは反対の片面側に到達し、ベース部60の前記片面側を伝熱管2に接合するロウ付け部(不図示)を構成している。
【0032】
次に、前記した熱交換器HEの製造方法の一例について説明する。
【0033】
熱交換器HEの製造に際しては、図5に示すような割型パンチ5を用いる。理解の容易のため、この割型パンチ5を先に説明する。
【0034】
割型パンチ5は、マンドレル4が内部に挿入される筒状であり、先端部から基端部側に向けて延びた複数のスリット55(離間部)を有している。このことにより、割型パンチ5は、その中心軸周りにおいて複数(たとえば4つ)のセグメント50aに分割されており、この割型パンチ5のうち、軸長方向先端寄り部分は、半径方向に拡縮変形可能な拡縮変形可能部50となっている。拡縮変形可能部50の外周面には、先に述べた第1ないし第4の段部21~24を形成するための第1ないし第4の凸状部51~54が設けられている。
【0035】
マンドレル4の先端部は、たとえば円錐状または円錐台状などとされ、先端部から基端部側に進むほど直径または幅が増大する楔部40であり、割型パンチ5の拡縮変形可能部50の内側に位置している。マンドレル4を割型パンチ5に相対させて前進させると、拡縮変形可能部50は、図5(b)に示す非拡大状態から、同図(c)に示す拡大状態に変化する。すなわち、楔部40によって複数のセグメント50aを押し広げることが可能で
ある。図5(c)に示した拡大状態では、スリット55(離間部)の幅Laが拡大しているが、このことにより、伝熱管2の拡管部20に凹部25を形成することができる。
【0036】
熱交換器HEの製造に際しては、前記した割型パンチ5を使用し、図6図8に示すような手順を経る。
【0037】
まず、図6に示すように、ケース1の側壁部10およびヘッダ部6のベース部60に設けられている第1および第2の孔部11,62に伝熱管2を挿通させた状態において、図7に示すように、割型パンチ5を伝熱管2内に挿入する。次いで、図8に示すように、割型パンチ5を拡大させ、伝熱管2の端部寄り領域を拡管する。このことにより、図4を参照して説明した拡管部20を伝熱管2に設けることができ、側壁部10への伝熱管2の仮固定、および伝熱管2へのベース部60の仮固定を適切に図ることができる。
【0038】
図8(b)によく表れているように、割型パンチ5の拡縮変形可能部50を拡大させた際には、複数のセグメント50aの相互間のスリット55(離間部)の幅が大きくなり、このスリット55に対応する箇所は、拡管されない、または他の部分と比較して十分に拡管されない。このことにより、拡管部20に凹部25を設けることが可能である。
【0039】
前記した拡管工程を終えた後には、第1および第2のロウ付け部Ba,Bbを設けるためのロウ付け工程を実施する。このロウ付け工程においては、所定のロウ付け対象部位にロウ材を塗布して、加熱炉にてロウ材を加熱溶融させる。その際、第1および第2のロウ付け部Ba,Bbを形成するための溶融ロウ材の一部は、第1および第2の隙間C1,C2に進入することとなる。
前記した一連の工程を経ることにより、熱交換器HEを適切に製造することができる。
【0040】
本実施形態の熱交換器HEにおいては、ケース1の側壁部10に設けられた第1の孔部11の内周面と、伝熱管2の外周面との間には、第1の隙間C1が形成され、かつこの第1の隙間C1に第1のロウ付け部Baのロウ材が進入しているため、側壁部10と伝熱管2とのロウ付け面積を大きくすることができる。また、ロウ材を側壁部10の内面側に廻り込ませることも可能である。したがって、側壁部10に対する伝熱管2のロウ付け強度を高くすることができる。
【0041】
側壁部10と伝熱管2とのロウ付け面積を大きくするための手段として、拡管部20の外面に第1の凹部25aが設けられているが、この第1の凹部25aは、拡管部20の周方向に部分的に設けられており、伝熱管2の外周面と第1の孔部11の内周面との接触面積(圧接領域の面積)を大きくとることが可能である。したがって、拡管による側壁部10に対する伝熱管2の取付け強度も高めることができる。
【0042】
側壁部10の第1の孔部11は、単なるストレート状の孔部でよく、たとえば一部にテーパ孔部を有するものとする必要はない。一方、伝熱管2の拡管部20には、第1の凹部25aが設けられているが、この第1の凹部25aは、割型パンチ5のスリット55(複数のセグメント50aの離間部)を利用して簡単に設けられる。
【0043】
一方、伝熱管2に対するヘッダ部6(ベース部60)の取付け構造も、その基本的な構成は、側壁部10に対する伝熱管2の取付け構造と同様であり、ヘッダ部6のロウ付け強度、拡管による固定強度をともに高めることが可能である。また、伝熱管2に対するヘッダ部6の取付け工程のうち、拡管工程は、同一の工程で行なうことが可能である。このようなことから、熱交換器HEの製造作業は容易であり、製造コストの低減を的確に図ることもできる。
【0044】
図9は、本発明の製造方法で用いられる割型パンチ5の複数のセグメント50aの他の実施形態を示している。
同図に示す実施形態においては、複数のセグメント50aのそれぞれの外面部の端縁に、面取り部50bが設けられている。
【0045】
このような構成によれば、複数のセグメント50aの離間部55(スリット)の幅Lcが、本来の幅Lbよりも大きくなる。このため、図8に示すように、伝熱管2を拡管する場合に、凹部25のサイズを大きくし、適正化することができる。また、凹部25を形成することの確実化を図ることもできる。
【0046】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。本発明に係る熱交換器の製造方法の各工程の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において変更自在である。
【0047】
伝熱管は、蛇行状のものに限らず、たとえばU字状、直管状、あるいは螺旋状などのものを用いることが可能であり、その具体的な形状は問わない。断面楕円形の伝熱管なども用いることが可能である。
本発明に係る熱交換器は、逆燃焼式に限らず、たとえば正燃焼式のものとすることが可能である。また、熱交換器は、給湯装置用のものに限らない。
本発明の熱交換器の製造方法で用いられる割型パンチの複数のセグメントは、スリットを介して分離されたものに限らない。複数のセグメントをそれぞれ別部材とした構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0048】
HE 熱交換器
Ba,Bb 第1および第2のロウ付け部
C1,C2 第1および第2の隙間
1 ケース
10 側壁部
11 第1の孔部
2 伝熱管
20 拡管部
21,22 第1および第2の段部
25 凹部
25a,25b 第1および第2の凹部
5 割型パンチ
50 拡縮変形可能部
50a セグメント
50b 面取り部
55 スリット(離間部)
6 ヘッダ部
62 第2の孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9