(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】保液性不織布および該不織布を含有するフェイスマスク
(51)【国際特許分類】
D04H 1/43 20120101AFI20221125BHJP
D04H 1/492 20120101ALI20221125BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
D04H1/43
D04H1/492
A61K8/02
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018208556
(22)【出願日】2018-11-06
【審査請求日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2017218361
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 修
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-061147(JP,A)
【文献】特開2017-109053(JP,A)
【文献】特開2001-049559(JP,A)
【文献】特開平06-346351(JP,A)
【文献】特開2010-116374(JP,A)
【文献】特開2006-057211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H1/00-18/04
A45D8/00-97/00
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が0.3~3.5dtexであるアクリロニトリル系繊維の含有率が30%以上であり、
不織布密度が0.10~0.20g/cm
3
であり、吊り下げ法による保液率が680~2000%であり、遠心脱水後の保液率が10~55%であ
り、並びにスパンレース不織布であることを特徴とする保液性不織布。
【請求項2】
アクリロニトリル系繊維の湿潤時のヤング率が15~80cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載の保液性不織布。
【請求項3】
アクリロニトリル系繊維の繊維長を繊維径で除したアスペクト比が、1000~6000であることを特徴とする請求項1
または2のいずれかに記載の保液性不織布。
【請求項4】
アクリロニトリル系繊維の繊維断面の形状が円形であることを特徴とする請求項1~
3のいずれかに記載の保液性不織布。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の保液性不織布を含有するフェイスマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は保液性不織布および該不織布を含有するフェイスマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフェイスマスク等に用いられる保液性不織布としては、セルロース系繊維を主体とするものが多く提案されている。例えば、特許文献1の[0016]には、フェイスマスクシートに使用される好適な不織布として、クラフトパルプ30重量%~70重量%に繊度0.8dtexを超えるレーヨン70重量%~30重量%を配合した不織布が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、セルロース系繊維を含む不織布層の一方の表面又は両方の表面に、微細セルロース繊維不織布層が少なくとも一層または多層に積層され、セルロース系繊維を含む不織布層と一体化された不織布構造体に薬液が含浸された薬液含浸シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-095223号公報
【文献】特開2014-205924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セルロース系繊維を用いた不織布は湿潤時のヘタリが大きく、ペーパーライクとなるため、保液量を増やしにくい。また、セルロース系繊維は繊維内部に液を吸い込んでしまう。このため、セルロース系繊維を用いた不織布は、例えばフェイスマスクに利用する場合、化粧水成分を多く含有できない上に、繊維内部に化粧水成分を取り込むため、肌への化粧水成分の移行量が少なくなるという問題点を有している。また、特にレーヨン繊維を用いた場合には、得られたフェイスマスクの透明性が乏しく、外観が劣るといった問題点もある。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的は、フェイスマスク等に利用した際に、優れた外観を有し、保液性が高く、かつ、保持した液を効率的に放出可能な不織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、アクリロニトリル系繊維を一定量以上含有する不織布においては、繊維間に保持される化粧水量を多くすることができるとともに、繊維内部に取り込まれる化粧水量を少なくすることができ、さらに外観の透明性に優れたものと出来ることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1) 繊度が0.3~3.5dtexであるアクリロニトリル系繊維の含有率が30%以上であり、不織布密度が0.10~0.20g/cm
3
であり、吊り下げ法による保液率が680~2000%であり、遠心脱水後の保液率が10~55%であり、並びにスパンレース不織布であることを特徴とする保液性不織布。
(2) アクリロニトリル系繊維の湿潤時のヤング率が15~80cN/dtexであることを特徴とする(1)に記載の保液性不織布。
(3)アクリロニトリル系繊維の繊維長を繊維径で除したアスペクト比が、1000~6000であることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の保液性不織布。
(4) アクリロニトリル系繊維の繊維断面の形状が円形であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の保液性不織布。
(5) (1)~(4)のいずれかに記載の保液性不織布を含有するフェイスマスク。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保液性不織布は、繊維間に保持される液を多くすることができるとともに、繊維内部に取り込まれる液を少なくすることができるという特徴を有するものである。かかる特徴を有する本発明の保液性不織布は、例えば、フェイスマスクに利用した場合、肌への化粧水の移行量を多くするという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の保液性不織布は、後述する吊り下げ法による保液率の下限が680%以上であり、好ましくは690%以上、より好ましくは700%以上を達成するものである。また、上限としては、2000%以下であり、好ましくは1500%以下、より好ましくは1300%以下である。吊り下げ法による保液率が680%に満たない場合は、取り込む液量が不十分となり、フェイスマスク用途などに利用した際に、化粧水成分による十分な効果が得られなかったり、乾燥が早く、剥がれ易くなったりする可能性がある。また、吊り下げ法による保液率が2000%を超える場合には、フェイスマスク用途などに利用した際に、着用時の化粧水の液だれが起こり易く、着用感が好ましくない。
【0011】
また、本発明の保液性不織布は、後述する遠心脱水後の保液率の下限が10%以上であり、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上である。また、上限としては、55%以下であり、好ましくは50%以下、より好ましくは45%以下である。遠心脱水後の保液率が10%未満であると、例えば、フェイスマスク等として利用した際に、不織布の肌沿いが悪くなり、剥がれ落ちやすくなる。また、遠心脱水後の保液率が55%を超える場合には、繊維内部に取り込まれる液量が多いことを表しており、吊り下げ法による保液率が仮に上記範囲を満たしていたとしても、保液した液の放出が少なくなってしまう。従って、フェイスマスクに利用するような場合においては、肌への化粧水の移行量が不十分となってしまう。
【0012】
また、本発明の保液性不織布は、アクリロニトリル系繊維の含有率が30%以上、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上であり、100%であってもよい。アクリロニトリル系繊維の含有率を30%以上とすることで、上述した吊り下げ法による保液率と遠心脱水後の保液率を前述した数値範囲内とすることが可能となる。
【0013】
これは、アクリロニトリル系繊維が、公定水分率が低く、かつ湿潤時でも高いヤング率を維持できることが理由として考えられる。かかるアクリロニトリル系繊維は、湿潤時のヤング率として、好ましくは15cN/dtex以上、より好ましくは20cN/dtex以上、さらに好ましくは30cN/dtex以上を有するものである。一方、従来よりフェイスマスク用に用いられてきている代表的なセルロース系繊維では、湿潤時のヤング率が3cN/dtexであり、高いものでも10cN/dtexにとどまっており、15cN/dtexにも満たないものである。このようなことから、かかるアクリロニトリル系繊維を採用することで、保液してもへたりにくくなり、吊り下げ法による保液率が高くなると考えられる。また、公定水分率が低いことから、繊維内部への液の取り込みが少なくなり、遠心脱水後の保液率が低くなると考えられる。なお、アクリロニトリル系繊維の湿潤時のヤング率の上限としては、フェイスマスク用途を考慮した場合、湿潤時のヤング率があまりに高いと肌触りが悪化してくるので、好ましくは80cN/dtex以下、より好ましくは70cN/dtex以下、さらに好ましくは60cN/dtex以下である。
【0014】
本発明に採用するアクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル系重合体からなるものである。かかるアクリロニトリル系重合体は、その重合組成の40重量%以上をアクリロニトリルとするものであり、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上をアクリロニトリルとするものであることが望ましい。従って、該アクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリル単独重合体のほかに、アクリロニトリルと他のモノマーとの共重合体も採用できる。共重合体における他のモノマーとしては、特に限定はないが、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン;(メタ)アクリル酸エステル(なお(メタ)の表記は、該メタの語の付いたもの及び付かないものの両方を表す);メタリルスルホン酸、p-スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー及びその塩;(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカルボン酸基含有モノマー及びその塩;アクリルアミド、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。かかるアクリロニトリル系繊維の代表的なものとしては、アクリル繊維やモダアクリル繊維が挙げられる。
【0015】
また、本発明に採用するアクリロニトリル系繊維は、上述のアクリロニトリル系重合体に加え、他の成分を含んでいるものであってもよい。かかる他の成分としては、親水性成分、抗菌剤、着色剤などを挙げることができる。該親水性成分としては、例えば、ポリアルキレンオキシド鎖、ポリエーテルアミド鎖、ポリエーテルエステル鎖などの親水性側鎖やカルボキシル基などの親水性官能基を有する有機高分子化合物、酸化チタン、酸化錫などの金属酸化物粒子や水酸基、カルボキシル基などの親水性基を有するカーボンブラック、グラファイトなどの炭素質微粒子を利用することもできる。
【0016】
本発明に採用するアクリロニトリル系繊維の繊度としては、その下限が好ましくは0.3dtex以上であり、より好ましくは0.5dtex以上である。また、上限としては、好ましくは3.3dtex以下、より好ましくは2.5dtex以下、さらに好ましくは1.0dtex以下である。繊度がかかる範囲であれば風合に優れた保液性不織布とすることができ、例えば、フェイスマスクなどに好適に利用することができる。また、前述した吊り下げ法による保液率及び遠心脱水後の保液率を前記範囲内とし易くなる点からも好ましい。一方、繊度が0.3dtexに満たない場合には、不織布形態への加工性が悪化する恐れがあるため好ましくない。また、繊度が3.3dtexを超える場合には、保液性不織布の風合いが悪化したり、吸液時に不織布中に液を十分に保持できなくなったりするため好ましくない。
【0017】
さらに、本発明に採用するアクリロニトリル系繊維は、繊維長を繊維径で除したアスペクト比の上限が、好ましくは1000以上、より好ましくは1300以上であり、下限が、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下を満足するものである。アスペクト比が、1000未満の場合、不織布からの繊維の脱落が多くなったり、毛羽が多くなったりする可能性がある。また、アスペクト比が6000を超える場合には不織布加工時にネップが発生し易くなる可能性がある。
【0018】
また、本発明に採用するアクリロニトリル系繊維の繊維断面の形状としては、円形であることが好ましい。繊維断面形状が円形であると、繊維の表面積が小さくなり光が遮られにくくなるので、本発明の保液性不織布に保液させた際の透明性が向上し、より好ましい外観を得られやすくなる。ここで、本発明において円形であるとは、真円形であることまでは要せず、長軸長/短軸長の比が1.0~1.2程度の楕円形であってもよい。一方、繊維断面形状が、そら豆型や扁平型などの場合には、乱反射が増え、透明性が低下する傾向となる。
【0019】
また、本発明に採用するアクリロニトリル系繊維は、多孔質構造を有するものであっても良い。多孔質構造とすることで、吊り下げ法による保液性を前記範囲の上限まで高めることが容易にできる。
【0020】
上述してきたアクリロニトリル系繊維の製造方法としては、例えば、上述したアクリロニトリル系重合体を溶媒に溶解させた溶液を紡糸原液とし、該紡糸原液を凝固浴中に紡出し、延伸、熱処理、乾燥を施す、従来公知の紡糸方法が挙げられる。その際、凝固浴温度を上げたり、熱処理条件を変えたりすることで、繊維を多孔質構造とすることもできる。ここで、アクリロニトリル系重合体を溶解させる溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの有機系溶媒や硝酸、塩化亜鉛水溶液、チオシアン酸ナトリウム水溶液などの無機系溶媒を挙げることができる。また、上述した他の成分を含有させる場合には、該成分を添加した紡糸原液を用いればよい。
【0021】
また、本発明の保液性不織布としては、上述したアクリロニトリル系繊維以外の繊維を含有していてもよい。かかる繊維としては、パルプ、コットン、麻、シルク、およびウールなどの天然繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アクリル、ポリエステル、ポリプロピレンなどの合成繊維などを挙げることができる。
【0022】
本発明の保液性不織布の密度の下限としては、好ましくは0.10g/cm3以上、より好ましくは0.11g/cm3以上であり、上限としては、好ましくは0.20g/cm3以下、より好ましくは0.18g/cm3以下であることが望ましい。不織布の密度が0.10g/cm3に満たない場合には、繊維間の間隙が広くなりすぎるために、取り込まれた液が流出し易く、該不織布を用いてフェイスマスクとした際には液だれし易くなる恐れがある。また、0.20g/cm3を超える場合には、間隙が狭くなりすぎるために、液の保持量が不十分となる可能性がある。
【0023】
上述してきた本発明の保液性不織布の製造方法としては、カード機や抄紙機を用いてウェブを形成した後、該ウェブを交絡させて不織布を得る方法(ニードルパンチ法、スパンレース法、ステッチボンド法)や、ウェブ内に含有させた熱融着繊維により繊維同士を接着させて不織布を得る方法(サーマルボンド法)が挙げられる。その中でも、不織布の手触りが柔らかく、着用感に優れていると言う点からウェブを交絡させて不織布を得る方法が好ましく、その中でもスパンレース法が特に好ましい。
【0024】
本発明の保液性不織布は、化粧水を含有させることで、首、肩、手など全身の様々な場所に使用することのできる美容シートとして好適に利用することができる。例えば、顔を被覆するために適した形状に切り出すことで、フェイスマスクとして利用することもできる。
【0025】
かかるフェイスマスクの構造としては、コストの面から本発明の保液性不織布1枚からなる単層であっても良いが、他の不織布と積層し、2層以上の複数層で構成されていても良い。この場合、特徴の異なる不織布を積層することが好ましく、例えば、本発明の保液性不織布を肌に触れる側に配し、その上にポリエステル不織布を積層した構造とすることで、不織布の強度が上がり、化粧水を取り込んだ湿潤状態であっても、折り曲げたり、開いたりといった取り扱いが容易となる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明の理解を容易にするために実施例を示すが、これらはあくまで例示的なものであり、本発明の要旨はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。実施例中の特性の評価方法は以下のとおりである。
【0027】
<吊り下げ法による保液率>
不織布から10cm×10cmの試験片を採取し、標準状態(20℃、相対湿度65%)においてその重量(W1[g])を測定した。該試験片を、水中に15分間以上浸漬した後、水中から試験片を取り出し、吊り下げた状態で1分間放置した。該試験片の重量(W2[g])を測定し、下記式により、吊り下げ法による保液率を算出した。
保液率[%] = (W2-W1)/W1 ×100
【0028】
<遠心脱水後の保液率>
不織布から10cm×10cmの試験片を採取し、標準状態においてその重量(W3[g])を測定した。該試験片を、水中に15分間以上浸漬した後、水中から試験片を取り出し、遠心脱水機(TOKYO KOKUSAN ENSHINKI CO., LTD製 TYPE H-110C)の内壁面に貼り付けた。遠心力1207G、脱水時間1分30秒の条件で脱水を行い、脱水後の試験片の重量(W4[g])を測定し、下記式により、遠心脱水後の保液率を算出した。
遠心脱水後の保液率[%] = (W4-W3)/W3 ×100
【0029】
<湿潤時のヤング率>
JISL1015:2010 8.7.2「湿潤時試験」に記載の方法で湿潤させた試料をJISL1015:2010 8.11「初期引張抵抗度」に従って測定、算出した初期引張抵抗度の値を湿潤時のヤング率とする。
【0030】
<繊度>
JISL1015:2010の「8.5 繊度」に準拠した方法により測定を行った。
【0031】
<不織布密度>
不織布から、10cm×10cmの試験片を採取し、標準状態においてその重量(W5[g])を測定する。さらに、試験片上のランダム10点の厚みを測定し、その平均厚み(T[cm])を算出する。下記式から不織布密度(D[g/cm3])を算出する。
D[g/cm3]=W5/(10×10×T)
【0032】
<不織布の透明性>
不織布から、10cm×10cmの試験片を採取する。該不織布を、水に浸漬し、その下に文字が記載されたプレートを配置する。不織布を上部から観察し、プレートに記載された文字の見え方により、下記の基準で透明性の評価を行った。
◎ プレートに記載の文字がはっきりと確認できる
○ やや霞んでいるが確認できる
× 霞んでおり確認しづらい
【0033】
[製造例1]
アクリロニトリル90%および酢酸ビニル10%からなるアクリロニトリル系重合体10部を48%ロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を、常法に従って紡糸、延伸(全延伸倍率:10倍)した後、乾球/湿球=120℃/60℃の雰囲気下で乾燥後、湿熱処理して単繊維繊度0.9dtexのアクリロニトリル系繊維(繊維長51mm)を得た。
【0034】
[製造例2]
製造例1において、紡糸時に用いる紡糸ノズルの孔径を変えること以外は同様にして、単繊維繊度0.5dtexのアクリロニトリル系繊維(繊維長51mm)を得た。
【0035】
[製造例3]
製造例1において、アクリロニトリル系重合体の組成をアクリロニトリル88%および酢酸ビニル12%に変更すること以外は同様にして、単繊維繊度0.9dtexのアクリロニトリル系繊維(繊維長51mm)を得た。
【0036】
[製造例4]
製造例1において、アクリロニトリル系重合体の組成をアクリロニトリル95%および酢酸ビニル5%に変更すること以外は同様にして、単繊維繊度0.9dtexのアクリロニトリル系繊維(繊維長51mm)を得た。
【0037】
[実施例1~5、比較例1~4]
製造例1のアクリロニトリル系繊維と他の繊維を表1に記載の割合で混合してカードウェブを作製し、これを水流交絡により絡合させて、目付50g/m2のスパンレース不織布を作製した。該不織布の評価結果を表1に示す。なお、表1中に他の繊維として記載されている各繊維は、レーヨン繊維(ダイワボウレーヨン社製、繊度1.7dtex、繊維長40mm)、ポリエステル繊維(帝人フロンティア社製、繊度1.6dtex、繊維長51mm)を用いた。
【0038】
[実施例6]
製造例1のアクリロニトリル系繊維の代わりに、そら豆型断面アクリロニトリル系繊維(三菱ケミカル社製、1dtex、繊維長44mm)を用いること以外は同様にして、スパンレース不織布を作製した。該不織布の評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例7~9]
製造例1のアクリロニトリル系繊維の代わりに、それぞれ製造例2~4のアクリロニトリル系繊維を用いること以外は同様にして、実施例7~9のスパンレース不織布を作製した。作成した各不織布の評価結果を表1に示す。
【0040】
【0041】
実施例1~9で開示されている保液性不織布は、吊り下げ法による保液率および遠心脱水後の保液率が、本願の範囲内であることから、化粧水などを十分に保持でき、且つ、効率的に放出することができる。また、透明性も良好で、外観も優れているため、フェイスマスクなどの美容シートに好適に利用することが出来る。一方で、比較例1~3では、アクリロニトリル系繊維の含有量が不十分であることから、吊り下げ法による保液率が低く、遠心脱水後の保液率が高い結果となった。そのため、フェイスマスクなどとして利用した際には、保持している化粧水を効率的に利用できているとは言えない。また、比較例4では遠心脱水後の保液率が低すぎるため、フェイスマスクとして着用した際には、すぐに乾燥してしまうと考えられる。また、比較例1~4の全てにおいて、透明性の評価が悪い結果となった。