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特許7182076滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法
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  • 特許-滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法 図1
  • 特許-滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/62 20060101AFI20221125BHJP
   B28B 11/06 20060101ALI20221125BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20221125BHJP
   C04B 26/18 20060101ALI20221125BHJP
   E01C 7/14 20060101ALI20221125BHJP
   E01C 11/24 20060101ALI20221125BHJP
   E04F 11/17 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C04B41/62
B28B11/06
C04B22/08 Z
C04B26/18 B
E01C7/14
E01C11/24
E04F11/17 100L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019058512
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020158331
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】安久 憲一
(72)【発明者】
【氏名】野村 博史
(72)【発明者】
【氏名】青木 真材
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104098291(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107500713(CN,A)
【文献】特開昭52-012729(JP,A)
【文献】実開昭61-135954(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-1157782(KR,B1)
【文献】特開2003-335586(JP,A)
【文献】特開2000-234304(JP,A)
【文献】特開平11-293901(JP,A)
【文献】特開平06-057929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0022979(US,A1)
【文献】特開2017-180006(JP,A)
【文献】特開2016-108236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B41/00-41/72
C04B103/00-111/94
E01C 7/14,11/24
E04F 11/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程と、
打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に滑り抑制剤を散布する散布工程と、を備え、
前記滑り抑制剤は、カルシウムアルミネートであって、12CaO・7Al を70質量%以上含む急結成分を含み、かつ、粉末状である
舗装コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記滑り抑制剤は、粒子径が0.6mm以下である
請求項1に記載の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項3】
前記滑り抑制剤は、粒子径が0.3mmを上回る
請求項2に記載の舗装コンクリートの製造方法。
【請求項4】
前記散布工程において、硬化体となる前の前記コンクリート組成物の表面に前記滑り抑 制剤を100g/m以上散布する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の舗装コンクリートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法に関する。より詳しくは、硬化体となる前のセメント組成物の表面に散布する滑り抑制剤、及び、散布された前記滑り抑制剤により滑りが抑制された舗装コンクリートを製造する舗装コンクリートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、供用中の舗装コンクリートにおいて、舗装コンクリート表面での滑りを抑制することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
舗装コンクリート表面での滑りを抑制する方法としては、打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に前記コンクリート表面に滑りを抑制する機能を付与する方法(以下、硬化前滑り抑制付与法という)と、打設後のコンクリート組成物が硬化体となった後に前記コンクリート表面に滑りを抑制する機能を付与する方法とがある。
【0004】
そして、硬化前滑り抑制付与法としては、一般に、箒目仕上げや真空コンクリート工法が採用されている。
上記箒目仕上げでは、硬化体となる前のコンクリート組成物の表面を箒で掃いて、硬化体となる前のコンクリート表面に箒目を付けることにより、舗装コンクリート表面に滑り抑制機能を付与している。
また、上記真空コンクリート工法では、複数個のリング状の型を所定の間隔を空けて硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から埋め込み、余剰水分を硬化体となる前のコンクリート組成物から減圧下にて除去し、埋め込まれた複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から抜き取って、硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側に窪みを形成することにより、舗装コンクリート表面に滑り抑制機能を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-179800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような箒目仕上げや真空コンクリート工法で表面に滑り抑制機能が付与された舗装コンクリートでは、降雨などで路面が濡れた場合に、車両のタイヤなどが路面で滑ることがあり、必ずしも、十分な滑り抑制機能が発揮されているとは言えない。
また、箒目仕上げにおいて、硬化体となる前のコンクリート表面に箒目を入れる適切なタイミングを判断することは難しく、このような適切なタイミングの判断には作業者の熟練度を要する。
さらに、真空コンクリート工法において、複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から埋め込む作業は、作業者にとって煩わしいものであり、また、埋め込まれた複数個のリング状の型を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面側から抜き取る適切なタイミングを判断するには作業者の熟練度を要する。
【0007】
そこで、本発明は、比較的簡便でありながら、表面が濡れた場合でも舗装コンクリート表面に比較的高い滑り抑制機能を発揮することができる滑り抑制剤、及び、該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、急結成分を含み、かつ、粉末状である滑り抑制剤を硬化体となる前のコンクリート組成物の表面に散布するという比較的簡便な方法により製造されたコンクリートが、表面が濡れた場合においても比較的高い滑り抑制機能を発揮できることを見出して、本発明を想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る滑り抑制剤は、
急結成分を含み、且つ、粉末状である。
【0010】
斯かる構成によれば、前記滑り抑制剤は粉末状であるため、打設後のコンクリート組成物の表面に散布させることができる。
また、前記滑り抑制剤は急結成分を含んでいるため、打設後のコンクリート組成物が硬化する前に、該コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を散布すると、硬化後のコンクリート表面、すなわち、得られる舗装コンクリート表面は、降雨などで濡れた場合でも比較的高い滑り抑制機能を発揮するものとなる。
【0011】
前記滑り抑制剤においては、
粒子径が0.6mm以下であってもよい。
【0012】
斯かる構成によれば、打設後のコンクリート組成物が硬化する前に、該コンクリート組成物の表面に散布すると、硬化後のコンクリート表面、すなわち、得られる舗装コンクリート表面は、降雨などで濡れた場合でもより高い滑り抑制機能を発揮するものとなる。
【0013】
また、本発明に係る舗装コンクリートの製造方法は、
水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程と、
打設したコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を散布する散布工程と、を備える。
【0014】
斯かる構成によれば、前記散布工程において、打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を散布するという比較的簡便な方法で、降雨などで表面が濡れた場合でも比較的高い滑り抑制機能を発揮することができる舗装コンクリートを得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る舗装コンクリートの製造方法においては、
前記散布工程において、硬化体となる前の前記コンクリート組成物の表面に前記滑り抑制剤を100g/m以上散布してもよい。
【0016】
斯かる構成によれば、降雨などで表面が濡れた場合でもより高い滑り抑制機能を発揮することができる舗装コンクリートを得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、比較的簡便でありながら、表面が濡れた場合でも舗装コンクリート表面に比較的高い滑り抑制機能を発揮することができる滑り抑制剤、及び、該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る舗装コンクリートの製造方法を示すフロー図。
図2】粗面化された舗装コンクリート表面を模式的に示した図。(a)は、箒目仕上げされた舗装コンクリート表面を示す図。(b)は、真空コンクリート工法を施された舗装コンクリート表面を示す図。(c)は、滑り抑制剤で処理された舗装コンクリート表面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0020】
[滑り抑制剤]
本実施形態に係る滑り抑制剤は、急結成分を含み、かつ、粉末状である。急結成分とは、上記滑り抑制剤を散布するコンクリート組成物中のセメントよりも水和反応が速い成分を意味する。滑り抑制剤は、急結成分を含むことにより、打設後のコンクリート組成物の表面に散布した場合に、コンクリート組成物に含まれる表面のセメントの水和反応を促進させる。滑り抑制剤としては、例えば、鉱物系の急結成分を含み、かつ、粉末状である無機材を用いることができる。このような無機材としては、鉱物系の急結成分としてカルシウムアルミネート成分(以下、CA成分ともいう)を含み、かつ、粉末状であるカルシウムアルミネート材(以下、CA材ともいう)を用いることができる。
【0021】
CA材は、CaO及びAlを主成分として含む。CA材としては、CA成分として、12CaO・7Al、CaO・Al、CaO・2Al、3CaO・Al、11CaO・7Al・CaF、4CaO・3Al・SO等を含むものが挙げられる。CA材は、上記CA成分を単独で(単相として)含んでいてもよいし、複数(混合相として)含んでいてもよい。上記のようなCA材としては、例えば、アルミナセメントが挙げられる。アルミナセメントは、上記CA成分のうち、CaO・Al、CaO・2Al、及び12CaO・7Alの少なくとも一方を含んでいる。CA材は、上記CA成分を、CA材の総質量に対して50質量%以上含んでいることが好ましく、60質量%以上含んでいることがより好ましく、70質量%以上含んでいることがさらに好ましい。
なお、CA材中のCA成分の含有割合は、例えば、X線回折/リートベルト法(X線回折パターンをリートベルト法により解析する方法)によって求めることができる。X線回折/リートベルト法の詳細については、後述する実施例の項にて説明する。
【0022】
CA材としては、上記CA成分のうち、C12A7系(ただし、CはCaOを意味し、AはAlを意味する)のもの(以下、C12A7系CA材という)を含んでいることが好ましい。C12A7系CA材は、C12A7系CA材の総質量に対してC12A7系成分を70質量%以上含んでいることがより好ましく、83質量%以上含んでいることがさらに好ましい。C12A7系CA材の総重量に対してC12A7系成分が70質量%以上含まれていることにより、打設後のコンクリート組成物の表面に散布した場合に、コンクリート組成物に含まれる表面のセメントの水和反応をより促進させることができる。上記C12A7系成分としては、C12A7、C11A7・CaX(ただし、Xは、F、Cl、Brなどのハロゲン)が挙げられる。
【0023】
C12A7系CA材中のC12A7系成分の含有割合は、例えば、X線回折/リートベルト法によって求めることができる。C12A7系CA材は、実質的にアーウィン(3CaO・3Al・CaSO)を含んでいないことが好ましい。
なお、実質的にアーウィンを含んでいないとは、上記のX線回折/リートベルト法によって、C12A7系CA材の鉱物組成を求めたときに、C12A7系CA材中のアーウィンの含有割合が1.0質量%未満であることを意味する。
【0024】
上記滑り抑制剤は、粒子径が0.6mm以下であることが好ましく、0.3mmを上回り0.6mm以下であることがより好ましい。このような粒子径の上記滑り抑制剤を散布することにより、後述の実施例の項に示したように、降雨などで舗装コンクリートの表面(路面)が濡れた場合であっても、舗装コンクリート表面での滑りをより十分に抑制することができる。
なお、上記滑り抑制剤の粒子径は、ステンレス篩(JIS Z 8801)により分級することにより測定された値を意味する。すなわち、上記滑り抑制剤の粒子径が0.6mm以下とは、上記滑り抑制剤が目開き0.6mmの篩を通過することを意味し、上記滑り抑制剤の粒子径が0.3mmを上回るとは、上記滑り抑制剤が目開き0.3mmの篩を通過しないことを意味する。
【0025】
[舗装コンクリートの製造方法]
次に、上記滑り抑制剤を用いて舗装コンクリートを製造する方法について説明する。
図1に示したように、本実施形態に係る舗装コンクリートの製造方法は、水とセメントと骨材とを有するコンクリート組成物を打設する打設工程(S1)と、
打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布する散布工程(S2)と、を備える。
【0026】
(打設工程S1)
打設工程S1は、上記コンクリート組成物を型枠内に打ち込むことによって行う。
打設するコンクリート組成物に含まれるセメントとしては、上記滑り抑制剤よりも水和反応が遅いものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱などの各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの各種混合セメントなどのJISに規定されたセメント、白色ポルトランドセメントなどのJISに規定されていない特殊なセメントなどが挙げられる。これらのセメントは、単独で使用してもよいし、複数を選択して使用してもよい。
また、打設するコンクリート組成物は、骨材として、細骨材及び粗骨材の両方を含む。細骨材及び粗骨材としては、各種公知のものを用いることができる。
【0027】
打設後のコンクリート組成物を型枠の隅々まで行き渡らせ、かつ、コンクリート組成物を空隙の少ない密実なものとするために、打設工程S1後に、打設後のコンクリート組成物を締め固める締固め工程を行ってもよい。締固め工程は、通常、打設後のコンクリート組成物にバイブレータなどで振動を与えながら行われる。
ここで、打設後のコンクリート組成物に締固め工程を行う前に散布工程S2を行うと、打設後のコンクリート組成物の表面側に散布された上記滑り抑制剤が、振動によって打設後のコンクリート組成物の内部に入り込む虞がある。このように、上記滑り抑制剤が打設後のコンクリート組成物の内部に入り込むことを抑制するために、締固め工程を行う場合には、散布工程S2は締固め工程後に行うことが好ましい。
【0028】
(散布工程S2)
散布工程S2は、各種公知の粉体散布装置を用いて、上記滑り抑制剤を散布することにより行うことができる。
散布工程S2においては、打設後のコンクリート組成物が硬化体となる前に、該コンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布することが重要である。これにより、硬化後のコンクリート組成物、すなわち、舗装コンクリートにおいて、降雨などで表面(路面)が濡れた場合であっても、該舗装コンクリート表面での滑りを比較的抑制することができる。
降雨などで舗装コンクリート表面が濡れた場合であっても、該舗装コンクリート表面での滑りが比較的抑制される理由について、本発明者らは以下のように考えている。
【0029】
すなわち、上記のように、本実施形態に係る滑り抑制剤は、急結成分、すなわち、コンクリート組成物中のセメントよりも水和反応が速い成分を含んでいるので、打設後のコンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布した場合に、上記滑り抑制剤と接触しているコンクリート組成物を、上記滑り抑制剤と接触していないコンクリート組成物よりも速く硬化させることができる(急結させることができる)。
このように、上記滑り抑制剤と接触しているコンクリート組成物が上記滑り抑制剤と接触していないコンクリート組成物よりも速く硬化される分だけ、硬化後のコンクリート組成物、すなわち、舗装コンクリートにおいては、上記滑り抑制剤と接触しているコンクリート組成物の組織構造の方が、上記滑り抑制剤と接触していないコンクリート組成物の組織構造よりも粗な構造になっていると考えられる。すなわち、舗装コンクリートの表面に、コンクリート組成物の組織構造が粗な部分と密な部分とが存在することにより、舗装コンクリート表面が粗面化されていると考えられる。
そして、上記滑り抑制剤は、コンクリート組成物の表面に散布されているので、舗装コンクリートの表面には、箒目仕上げで付けられた箒目間の間隔(図2(a)参照)や真空コンクリート工法で形成された窪み間の間隔(図2(b)参照)よりも狭い間隔で、上記滑り抑制剤によってコンクリート組成物の組織構造が粗になったことが原因となる空隙が形成されていると考えられる(図2(c)参照)。
このように、比較的狭い間隔で空隙が形成されていると考えらえるため、箒目仕上げされた舗装コンクリートや真空コンクリート工法を施された舗装コンクリートに比べて、降雨などで舗装コンクリート表面(路面)が濡れた場合に路面上の水がより多く空隙内に浸入すると考えられる。その結果、舗装コンクリート表面に残存する水が少なくなり、舗装コンクリート表面に水膜が形成され難くなると考えられる。これにより、降雨などで舗装コンクリート表面が濡れた場合でも、舗装コンクリート表面での滑りを比較的抑制できると考えられる。
【0030】
なお、打設したコンクリート組成物が硬化体となった後にコンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布したとしても、該コンクリート組成物では上記滑り抑制剤による水和反応の促進効果を享受し難いので、舗装コンクリート表面が濡れた場合における該舗装コンクリート表面での滑りは十分に抑制されないと考えられる。
【0031】
散布工程S2において、打設後のコンクリート組成物に、該コンクリート組成物の表面に上記滑り抑制剤を散布するタイミングは、打設後のコンクリート組成物が硬化する前であればいつでもよいが、上記滑り抑制剤と打設後のコンクリート組成物の表面の水分とを反応させる必要があるため、打設後のコンクリート組成物の表面の水分が減少して、打設後のコンクリート組成物の表面を平滑に仕上げることができなくなるタイミングまで行うことができる。また、上記コンクリート組成物に含まれているセメントの種類、気温、及び、日照条件によって、上記タイミングが異なることもあるため、特に限定されるものではないが、締固め工程を行わない場合には、打設工程S1後60分以内に散布工程S2を行うことが好ましく、締固め工程を行う場合には、締固め工程後60分以内に散布工程S2を行うことが好ましい。
なお、打設後のコンクリート組成物が硬化体となっているか否かは、使用するセメントの種類に応じて適宜判断することができる。
【0032】
散布工程S2で散布する上記滑り抑制剤は、粒子径が0.6mm以下であることが好ましく、0.3mmを上回り0.6mm以下であることがより好ましい。このような粒子径の上記滑り抑制剤を散布することにより、後述の実施例の項に示したように、降雨などで舗装コンクリートの表面(路面)が濡れた場合であっても、舗装コンクリート表面での滑りをより十分に抑制することができる。
【0033】
散布工程S2においては、硬化体となる前の上記コンクリート組成物の表面に、上記滑り抑制剤を100g/m以上散布することが好ましい。上記滑り抑制剤の散布量を上記範囲とすることにより、後述の実施例の項に示したように、降雨などで舗装コンクリートの表面(路面)が濡れた場合であっても、該舗装コンクリート表面での滑りをより十分に抑制することができる。
【0034】
なお、散布工程S2後のコンクリート組成物を、所定温度(例えば、20℃)で所定時間(セメントが普通ポルトランドセメントの場合には、28日間)養生することにより、舗装コンクリートを得ることができる。
【0035】
なお、本発明に係る滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。本発明に係る滑り抑制剤及び該滑り抑制剤を用いた舗装コンクリートの製造方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【実施例
【0036】
次に、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
[実施例1及び2に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
以下の表1に示した材料を用いて、以下の表2の配合にてコンクリート組成物を調製した。コンクリート組成物の調製は、二軸強制練りミキサを用いて行った。具体的には、セメント、細骨材、及び粗骨材を上記ミキサ内に投入して10秒間空練りを行った後、水及び減水剤を上記ミキサ内に投入して90秒間練り混ぜることにより調製した。
調製したコンクリート組成物を平板供試体用型枠(30cm×30cm×5cm)内に打設し、打設後のコンクリート組成物の表面に軽くコテ仕上げを施し、コテ仕上げを施した直後のコンクリート組成物の一方の半面の表面に、C12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)の目開き5mmの篩の篩上品を散布し(実施例1)、他方の半面の表面に、目開き2.5mmの篩と目開き5mmの篩を用いて分級することにより粒子径を、2.5mmを上回り5mm以下に調整したC12A7系CA材(総質量に対してC12A7系成分を70%以上含む)を散布し(実施例2)、さらに、打設後のコンクリート組成物の表面が型枠と水平となるようにコテ仕上げを施した。材齢28日まで気中養生して、実施例1及び2に係るコンクリート供試体を作製した。
C12A7系CA材中のC12A7系成分は、X線回折/リートベルト法によって求めた。X線回折/リートベルト法は、以下のようにして行った。

(1)まず、粉末状のC12A7系CA材をX線回折装置(X’Pert MPD、パナリティカル社製)を用いて分析し、X線回折パターンを得た。X線回折測定は、線源としてCuKαを用い、管電圧を45kV、管電流を40mAとし、測定角度範囲2θを10~140°とする条件で行った。
(2)次に、専用解析ソフト(HighScorePlus、パナリティカル社製)を用いて得られたX線回折パターンをリートベルト解析することにより、C12A7系成分の含有割合を求めた。なお、C12A7系成分の含有割合は、X線回折分析で検出できたC12A7系CA材中の全成分を100質量%としたときのC12A7系成分の質量割合として求めた。

また、各例において、C12A7系CA材の散布量は、200g/mとした。
【0038】
なお、以下の表2において、細骨材率とは、全骨材の絶対容積に対する細骨材の占める絶対容積の割合を意味し、C×%とは、セメントの質量に対する減水剤の質量割合を意味している。
また、表2において、空気量は、JIS A 1128「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法」に準拠して測定し、スランプは、JIS A 1101「コンクリートのスランプ試験方法」に準拠して測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
(滑り抵抗の評価)
実施例1及び2に係るコンクリート供試体について、滑り抵抗を評価した。滑り抵抗の評価は、舗装調査・試験法便覧(平成19年6月版、日本道路協会編)のS021-2「振り子スキッドレジスタンステスタによるすべり抵抗測定方法」に準拠して、表面全域を水道水で濡らした各例に係るコンクリート供試体について、表面のBPN値(滑り抵抗値)を測定することにより行った。すべり抵抗試験は4回行い、1回目を除いた3回の目盛りの読みをBPN単位として記録し、その算術平均値を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。ただし、測定値が大きく変動する場合は、変動が小さくなるまで繰り返し測定を行い、変動が小さくなった後に3回の測定値の読みをBPN単位として記録し、その算術平均を各例に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値とした。実施例1及び2に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値を以下の表3に示した。
なお、上記方法は、株式会社高速道路総合技術研究所(NEXCO総研)で推奨されている、車道用の舗装コンクリート表面のすべり抵抗の評価方法である。
【0042】
[実施例3及び4に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.3mmの篩と目開き0.6mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.3mmを上回り0.6mm以下に調整したC12A7系CA材を用い(実施例3)、コンクリート組成物の他方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩と目開き0.15mmの篩を用いて分級することにより粒子径0.075mmを上回り0.15mm以下に調整したC12A7系CA材を用いた(実施例4)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例3及び4に係るコンクリート供試体を作製した。
【0043】
(滑り抵抗の評価)
実施例3及び4に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例3及び4に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
【0044】
[実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体の作製]
(コンクリート供試体の作製)
コンクリート組成物の一方の半面に散布するC12A7系CA材として、目開き0.075mmの篩の篩下品を用い(実施例5)、コンクリート組成物の他方の半面に、何らのCA材をも散布しなかった(比較例1)以外は、実施例1及び2と同様にして、実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体を作製した。
【0045】
(滑り抵抗の評価)
実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例5及び比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表3に示した。
【0046】
【表3】
【0047】
表3より、C12A7系CA材を散布することにより作製された、各実施例に係るコンクリート供試体は、比較例1に係るコンクリート供試体に比べて、BPN値が高くなること、すなわち、滑り抵抗が高くなることが確認された。
また、実施例3~5に係るコンクリート供試体のBPN値は、実施例1及び2に係るコンクリート供試体のBPN値よりも高くなることが分かった。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を0.6mm以下とすることにより、より滑り抵抗を高めることができることが分かった。
さらに、各実施例の中でも、実施例3に係るコンクリート供試体のBPN値は特に高い値を示していた。このことから、散布するC12A7系CA材の粒子径を、0.3mmを上回り0.6mm以下とすることにより、特に、滑り抵抗を高めることができることが分かった。
【0048】
[実施例6及び7に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を150g/mとした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例6に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/mとした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に実施例7に係るコンクリート供試体を作製した。
【0049】
(滑り抵抗の評価)
実施例6及び7に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例6及び7に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。
【0050】
[実施例8に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材の散布量を50g/mとした以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に実施例8に係るコンクリート供試体を作製した。
【0051】
(滑り抵抗の評価)
実施例8に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例8に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表4に示した。なお、以下の表4にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
【0052】
【表4】
【0053】
表4から、C12A7系CA材の散布量を、50g/m(実施例8)、100g/m(実施例7)及び150g/m(実施例6)としたコンクリート供試体の場合においても、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて滑り抵抗が向上することが確認された。
また、C12A7系CA材の散布量を100g/m以上とすることにより、何らのCA材をも散布しなかったコンクリート供試体と比べて滑り抵抗が大きく向上することが確認された。
さらに、C12A7系CA材の散布量を150g/mとした場合には、旧日本道路公団の出来形基準値であるBPN値60以上を満足するようになり、特に優れた滑り抵抗性を示すことが確認された。
【0054】
[実施例9に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材をアルミナセメント(JIS R 2511(1995)3種相当品)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面(実施例8の一方の半面と隣り合う半面)側に実施例9に係るコンクリート供試体を作製した。
【0055】
(滑り抵抗の評価)
実施例9に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。実施例9に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。
【0056】
[比較例2及び3に係るコンクリート供試体の滑り抵抗の評価]
(コンクリート供試体の作製)
C12A7系CA材を珪砂(三久海運製)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の一方の半面側に、比較例2に係るコンクリート供試体を作製した。
また、C12A7系CA材を早強ポルトランドセメント(JIS R5210に定める早強ポルトランドセメント)に代えた以外は、実施例3と同様にして、打設後のコンクリート組成物の他方の半面側に、比較例3に係るコンクリート供試体を作製した。
【0057】
(滑り抵抗の評価)
比較例2及び3に係るコンクリート供試体について、実施例1及び2と同様にして、滑り抵抗を評価した。比較例2及び3に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を以下の表5に示した。なお、以下の表5にも、比較例1に係るコンクリート供試体の滑り抵抗値(BPN値)を示した。
【0058】
【表5】
【0059】
表5から、アルミナセメントを散布して作製されたコンクリート供試体(実施例9)は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて、滑り抵抗が大きく向上することが確認された。
また、珪砂を散布して作製された比較例2に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と同程度の滑り抵抗を示すことが確認された。
さらに、早強ポルトランドセメントを散布して作製された比較例3に係るコンクリート供試体は、何らのCA材をも散布しなかった比較例1に係るコンクリート供試体と比べて、滑り抵抗が低下することが確認された。
【符号の説明】
【0060】
S1 打設工程
S2 散布工程
図1
図2