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特許7182078殺菌状態検出方法、殺菌方法、殺菌状態検出装置、殺菌装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】殺菌状態検出方法、殺菌方法、殺菌状態検出装置、殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A61L2/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019066930
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020162913
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135190(WO,A1)
【文献】特開2017-168252(JP,A)
【文献】特開2018-114197(JP,A)
【文献】特表2014-508612(JP,A)
【文献】特開2018-102635(JP,A)
【文献】特開2018-102976(JP,A)
【文献】特開2017-109535(JP,A)
【文献】特開2003-211173(JP,A)
【文献】特開2019-115525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00- 2/28
A61L 9/00- 9/22
A61L11/00-12/14
B01J10/00-12/02
B01J14/00-19/32
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対して、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線を照射する工程(a)と、
前記工程(a)の後、前記対象物から放出される分解生成物を検出する工程(b)と、
前記工程(b)で検出された前記分解生成物の検出濃度に応じた検出信号の強度である検出強度が閾値を超えている場合には、前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定する工程(c)とを有することを特徴とする、殺菌状態検出方法。
【請求項2】
前記分解生成物がアルデヒド類であることを特徴とする、請求項1に記載の殺菌状態検出方法。
【請求項3】
前記工程(b)は、アルデヒド類の含有濃度に応じた信号を示すセンサが、前記分解生成物としてのアルデヒド類を検出する工程であることを特徴とする、請求項2に記載の殺菌状態検出方法。
【請求項4】
前記工程(a)の前に、前記対象物から放出される前記分解生成物と同種の物質を検出する工程(d1)と、
前記工程(d1)と前記工程(a)の間に、前記工程(d1)で検出された前記分解生成物の検出濃度に応じた検出信号の強度である基準強度を記憶する工程(d2)とを有し、
前記工程(c)において、前記閾値は、前記基準強度に対して所定の許容度が加算されて得られた値であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の殺菌状態検出方法。
【請求項5】
前記工程(b)は、前記工程(a)の後、所定時間経過後に前記分解生成物を検出する工程であり、
前記所定時間は、前記対象物に対する殺菌処理が完了している場合における前記検出強度が前記基準強度に実質的に一致するのに要する時間以上に設定されていることを特徴とする、請求項4に記載の殺菌状態検出方法。
【請求項6】
前記工程(c)において、前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定されると、所定の警告信号を出力する工程(e)を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の殺菌状態検出方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の殺菌状態検出方法を含む殺菌方法であって、
前記工程(c)において前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定されると、前記第一紫外線、又は主たる発光波長が前記第一紫外線よりも長波長で280nm以下の第二紫外線を、前記工程(a)よりも長い時間にわたって前記対象物に対して照射させて殺菌処理を行う工程(f)を有することを特徴とする、殺菌方法。
【請求項8】
主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線を出射可能な第一光源と、
前記第一紫外線が菌に対して照射されることで前記菌から放出される分解生成物の含有濃度に応じた強度を示す検出信号を出力するセンサと、
前記第一紫外線が照射された後に前記センサから出力された検出信号の強度である検出強度が閾値を超えている場合には、殺菌処理が必要であると判定する判定部とを備えることを特徴とする、殺菌状態検出装置。
【請求項9】
前記分解生成物は、アルデヒド類であり、
前記センサは、アルデヒド類の含有濃度に応じた強度を示す検出信号を出力することを特徴とする、請求項8に記載の殺菌状態検出装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第一紫外線の出射前において前記センサから出力された検出信号の強度である基準強度と、前記検出強度との差が閾値を超えている場合には、殺菌処理が必要であると判定することを特徴とする、請求項8又は9に記載の殺菌状態検出装置。
【請求項11】
前記検出強度は、前記第一紫外線が照射された後に、所定時間経過後に前記センサから出力された検出信号の強度であることを特徴とする、請求項8~10のいずれか1項に記載の殺菌状態検出装置。
【請求項12】
前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、所定の警告信号を出力する警告信号出力部を備えることを特徴とする、請求項8~11のいずれか1項に記載の殺菌状態検出装置。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1項に記載の殺菌状態検出装置と、
主たる発光波長が、前記第一紫外線よりは長波長であって、波長200nm以上280nm以下の第二紫外線を出射可能な第二光源と、
光源制御部とを備え、
前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、前記光源制御部は、前記第二光源に対して前記第二紫外線を出射する制御を行うことを特徴とする、殺菌装置。
【請求項14】
請求項8~12のいずれか1項に記載の殺菌状態検出装置と、
光源制御部とを備え、
前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、前記光源制御部は、前記第一光源に対して、前記センサにおいて前記分解生成物を検出するために前記第一紫外線を照射した時間よりも、長い時間にわたって前記第一紫外線を照射する制御を行うことを特徴とする、殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に対する殺菌状態が完了しているか否かを検出する、殺菌状態検出方法及び殺菌状態検出装置に関する。また、本発明は、かかる殺菌状態検出機能を有する殺菌方法及び殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAは、波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すことが知られている。また、低圧水銀ランプは、波長254nm付近に高い発光スペクトルを示す。このため、従来、低圧水銀ランプからの紫外線を照射して殺菌を行う技術が広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-048968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に紫外線を利用する殺菌方法は、処置の前後において目視により観察しうる変化が少なく、殺菌の効果を確認しにくい。このため、紫外線が照射された後でも対象物に対して確実に殺菌が完了できているかどうかが分からない。
【0005】
例えば、菌が対象物に対して多量に付着していると、対象物の面上に厚く菌が積層された状態となる。このとき、紫外線を対象物の面に対して照射すると、表層に近い菌に対しては殺菌できるものの、菌による層の深い位置、すなわち、対象物の面に近い位置には充分な光量の紫外線が到達せず、確実に殺菌できていない場合があり得る。このように、対象物に対して多量の菌が付着しているときには、例えば拭き取り清掃などの紫外線照射とは別の方法で殺菌処理を行う方が効果的な場合がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、対象物に対する殺菌状態を検出する方法、及びかかる方法を実現する殺菌状態検出装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような殺菌状態を検出する機能を含む殺菌方法、及び殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る殺菌状態検出方法は、対象物に対して主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線を照射する工程(a)と、
前記工程(a)の後、前記対象物から放出される分解生成物を検出する工程(b)と、
前記工程(b)で検出された前記分解生成物の検出濃度に応じた検出信号の強度である検出強度が閾値を超えている場合には、前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定する工程(c)とを有することを特徴とする。
【0008】
上述したように、菌の核内に含まれるDNAは、波長260nm付近に最も高い吸収特性を示すため、従来、電気-光変換効率が高く、且つ波長254nm付近にピーク波長を有する低圧水銀ランプを用いた殺菌技術が広く用いられていた。
【0009】
本発明者は、鋭意研究により、主たる発光波長(ピーク波長)が200nm以上230nm以下の紫外線(以下、「第一紫外線」という。)を菌に対して照射した場合、照射前には感じなかった臭いが発生することを新たに発見した。この理由につき、本発明者は、第一紫外線が、菌に含まれるタンパク質に吸収されることでタンパク質の分子結合の一部が切断され、これに伴って新たな物質(分解生成物)が生成されたことに起因するものと考えている。なお、本発明者は、前記研究の過程において、低圧水銀ランプから出射される波長254nm付近にピーク波長を有する紫外線を菌に対して照射した場合には、照射前後で臭いの変化がほとんど生じないことも確認した。
【0010】
菌量が多いほど菌に含まれるタンパク質の量が多いことから、分解生成物の生成量は多くなる。従って、分解生成物の検出濃度に応じた信号の強度(検出強度)が高いことは、菌量が多いことを意味する。一方、対象物に対して殺菌処理が完了している場合には、対象物に菌がほとんど含まれていないため、第一紫外線が照射されることによる分解生成物の生成量は少ない。よって、工程(c)において、検出強度が閾値を超えている場合には、対象物は殺菌処理が完了しておらず、(追加的な)殺菌処理が必要な状態であると判定することができる。
【0011】
ところで、波長200nm以上230nm以下の紫外線(第一紫外線)は、人体の皮膚に対して照射されても、皮膚の角質層で吸収され、それよりも内側(基底層側)には進行しない。角質層に含まれる角質細胞は細胞としては死んだ状態であるため、波長250nm程度の紫外線を照射する場合のように、有棘層、顆粒層、真皮など、生きた細胞に吸収されてDNAが破壊されるというリスクがほとんど存在しない。すなわち、第一紫外線は、低圧水銀ランプからの紫外線と比較して、人体への影響が大幅に低い。
【0012】
よって、上記方法によれば、万一人間が近くに存在するタイミングで第一紫外線が対象物に対して照射されて検査が行われたとしても、かかる第一紫外線に伴う人体へのリスクをほとんど考慮する必要がない。更に、かかる第一紫外線を出射する光源を含む殺菌検出装置を操作者が把持しながら、対象物に対して第一紫外線を照射することにより、殺菌状態の検出を行うことも可能である。
【0013】
前記対象物としては、殺菌処理が必要なものであれば特に限定されるものではないが、セラミックス、金属、プラスチック等の樹脂、パッキン等のゴム類、木材、ガラス、布や紙等の繊維からなる物である。
【0014】
前記分解生成物はアルデヒド類であるものとしても構わない。本明細書において、「アルデヒド類」とは、分子内に少なくとも1つのアルデヒド基(「ホルミル基」とも呼ばれる。)を有する化合物を指し、例えば、メチルプロパナール、メチルブタナール、ブタナール、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ペンタナール、アクロレイン、ベンズアルデヒドなどが挙げられる。
【0015】
この場合、前記工程(b)は、アルデヒド類の含有濃度に応じた信号を示すセンサが、前記分解生成物としてのアルデヒド類を検出する工程であるものとしても構わない。このようなセンサとしては、高感度酸化スズ系熱線型焼結半導体式センサ、超高感度酸化亜鉛系基板型薄膜半導体式センサ、QCM(Quartz Crystal Microbalance:水晶振動子マイクロバランス)センサ、光イオン化検知器(PID)、ショットキーダイオード、MOS電界効果トランジスタ、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、表面プラズモン共鳴センサ、カンチレバーなどを用いることができる。
【0016】
前記殺菌状態検出方法は、
前記工程(a)の前に、前記対象物から放出される前記分解生成物と同種の物質を検出する工程(d1)と、
前記工程(d1)と前記工程(a)の間に、前記工程(d1)で検出された前記分解生成物の検出濃度に応じた検出信号の強度である基準強度を記憶する工程(d2)とを有し、
前記工程(c)において、前記閾値は、前記基準強度に対して所定の許容度が加算されて得られた値であるものとしても構わない。
【0017】
上記方法によれば、第一紫外線が照射されることで対象物に含まれる菌から生成された分解生成物とは別に、対象物そのものや大気中に含まれる、前記分解生成物と同一の物質の量が事前に測定されて基準強度として記憶される。これにより、比較基準となる閾値を、対象物が設置されている雰囲気にそもそも含まれている分解生成物の濃度を考慮した上で設定することができるため、工程(c)において真に菌から生成された分解生成物の量に基づいた対象物の殺菌状態を検出することができ、検出精度が高められる。
【0018】
前記工程(b)は、前記工程(a)の後、所定時間経過後に前記分解生成物を検出する工程であり、
前記所定時間は、前記対象物に対する殺菌処理が完了している場合における前記検出強度が前記基準強度に実質的に一致するのに要する時間以上に設定されているものとしても構わない。
【0019】
対象物に対して殺菌処理を行った後であっても、対象物に菌が全く存在しない状態ということは社会通念上、想定しにくい。つまり、追加的な殺菌処理が必要なほどではない場合であっても、対象物には一定程度の菌が存在するという状況は一般的に起こり得る。このような状況において対象物に対して第一紫外線が照射されると、対象物に含まれる菌(少量の菌)に吸収されて分解生成物が放出されるため、分解生成物の検出濃度は瞬間的に上昇する。しかし、この分解生成物の量はそれほど多くないため、時間経過と共に検出濃度は低下し、やがて第一紫外線の照射前における検出濃度の値と実質的に同一となる。すなわち、検出強度は基準強度に実質的に一致する。なお、ここでいう「実質的に一致する」とは、基準強度と検出強度との差分値の、基準強度に対する比率が5%以下であることを指す。
【0020】
つまり、菌の存在量が少なく、追加的な殺菌処理が必要ではない場合、第一紫外線が照射された後、測定された分解生成物の検出濃度に対応する信号の強度(検出強度)は、所定時間T1が経過すると、第一紫外線が照射される前に測定された分解生成物の検出濃度に対応する信号の強度(基準強度)に実質的に一致する。この点は、図3を参照して後述される。
【0021】
これに対し、対象物に多くの菌が含まれている場合には、対象物に対して第一紫外線が照射されると、対象物に含まれる多量の菌から多くの分解生成物が放出され、対象物の近傍における雰囲気に含まれる分解生成物の濃度は著しく高まる。
【0022】
よって、対象物に多くの菌が含まれている場合には、追加的な殺菌処理が必要なほどではない場合と比べて、検出強度の値はそもそも高い。この結果、対象物に多くの菌が含まれている場合、第一紫外線が照射されてから、前記所定時間T1が経過した後であっても、検出強度は基準強度よりも高い値を示す。
【0023】
前記殺菌状態検出方法は、
前記工程(c)において、前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定されると、所定の警告信号を出力する工程(e)を有するものとしても構わない。
【0024】
警告信号は、音信号、光信号、振動信号の他、特定のコンピュータやスマートフォンなどの操作端末又はサーバに対して送信される情報信号であっても構わない。
【0025】
本発明に係る殺菌方法は、
上記の殺菌状態検出方法を含み、
前記工程(c)において前記対象物に対する殺菌処理が必要であると判定されると、前記第一紫外線、又は前記第一紫外線よりも長波長で波長280nm以下の第二紫外線を、前記工程(a)よりも長い時間にわたって前記対象物に対して照射させて殺菌処理を行う工程(f)を有することを特徴とする。
【0026】
かかる方法によれば、殺菌状態が検出された後、追加的な殺菌処理が必要であると判定された場合に限って、殺菌用の紫外線照射処理が行われる。これにより、殺菌に必要な紫外線の照射時間を実質的に削減でき、光源の長寿命化が図られる。
【0027】
本発明に係る殺菌状態検出装置は、
主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線を出射可能な第一光源と、
前記第一紫外線が菌に対して照射されることで前記菌から放出される分解生成物の含有濃度に応じた強度を示す検出信号を出力するセンサと、
前記第一紫外線が照射された後に前記センサから出力された検出信号の強度である検出強度が閾値を超えている場合には、殺菌処理が必要であると判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0028】
上記の構成によれば、対象物に対して殺菌状態検出装置から第一紫外線を照射することで、対象物に対して殺菌処理が完了しているか、追加的に殺菌処理が必要であるかを、簡易に検出できる。
【0029】
前記分解生成物は、アルデヒド類であり、
前記センサは、アルデヒド類の含有濃度に応じた強度を示す検出信号を出力するものとしても構わない。
【0030】
前記判定部は、前記第一紫外線の出射前において前記センサから出力された検出信号の強度である基準強度と、前記検出強度との差が閾値を超えている場合には、殺菌処理が必要であると判定するものとしても構わない。
【0031】
前記検出強度は、前記第一紫外線が照射された後に、所定時間経過後に前記センサから出力された検出信号の強度であるものとしても構わない。
【0032】
前記殺菌状態検出装置は、前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、所定の警告信号を出力する警告信号出力部を備えるものとしても構わない。
【0033】
本発明に係る殺菌装置は、
前記殺菌状態検出装置と、
主たる発光波長が、前記第一紫外線よりは長波長であって、波長200nm以上280nm以下の第二紫外線を出射可能な第二光源と、
光源制御部とを備え、
前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、前記光源制御部は、前記第二光源に対して前記第二紫外線を出射する制御を行うことを特徴とする。
【0034】
また、本発明に係る殺菌装置は、
前記殺菌状態検出装置と、
光源制御部とを備え、
前記判定部によって殺菌処理が必要であると判定されると、前記光源制御部は、前記第一光源に対して、前記センサにおいて前記分解生成物を検出するために前記第一紫外線を照射した時間よりも、長い時間にわたって前記第一紫外線を照射する制御を行うことを別の特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、簡易な方法で、対象物に対する殺菌状態を検出することができる。また、本発明によれば、追加的に殺菌処理が必要な場合に限って殺菌処理を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係る殺菌状態検出装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】本発明に係る殺菌状態検出方法の一手順を説明する、フローチャートである。
図3】第一紫外線が照射された後の、分解生成物の検出濃度の信号(検出信号)の強度Yiの経時的な変化を示すグラフである。
図4】本発明に係る殺菌状態検出方法の別の一手順を説明する、フローチャートである。
図5】本発明に係る殺菌装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図6】本発明に係る殺菌方法の一手順を説明する、フローチャートである。
図7】本発明に係る殺菌装置の別の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図8】本発明に係る殺菌方法の別の一手順を説明する、フローチャートである。
図9】本発明に係る殺菌状態検出方法の別の一手順を説明するための、分解生成物の検出濃度の信号(検出信号)の強度Yiの経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る殺菌状態検出方法、殺菌方法、殺菌状態検出装置、及び殺菌装置の各実施形態につき、以下、適宜図面を参照して説明する。
【0038】
[第一実施形態]
図1は、本発明に係る殺菌状態検出装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。殺菌状態検出装置1は、第一光源10、センサ2、判定部3、光源制御部5、及び警告信号出力部6を備える。なお、図1には、殺菌状態を検出する対象である対象物40の面上に菌41が多く存在する場合が模式的に描かれている。
【0039】
第一光源10は、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線L1を出射可能な光源である。例えば、第一光源10は、KrClを発光ガスとするエキシマランプで構成される場合、主たる発光波長が222nmの第一紫外線L1を出射する。ただし、第一光源10は、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線L1を出射可能な光源である限りにおいて、その態様は限定されず、KrBrなどの他の物質を発光ガスとするエキシマランプで構成されていても構わないし、LEDやレーザダイオードなどの固体光源素子であっても構わない。更に、第一光源10は、波長230nmを超える光成分を遮断するフィルタを有しているものとしても構わない。
【0040】
なお、本明細書において「主たる発光波長」とは、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を発光スペクトル上で規定した場合において、発光スペクトル内における全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。エキシマランプなどのように、半値幅が極めて狭く、且つ、特定の波長においてのみ光強度を示す光源においては、通常は、相対強度が最も高い波長(主ピーク波長)をもって、主たる発光波長として構わない。
【0041】
センサ2は、菌41に対して第一紫外線L1が照射されると、菌41が分解されることで生成される分解生成物A1を検出し、その検出濃度に応じた強度(検出強度)の信号を出力する機能を有する。一例として、センサ2は、分解生成物A1としてのアルデヒド類を検出するアルデヒドセンサであり、更に具体的には、高感度酸化スズ系熱線型焼結半導体式センサ、超高感度酸化亜鉛系基板型薄膜半導体式センサ、QCMセンサ、PID、ショットキーダイオード、MOS電界効果トランジスタ、SAWデバイス、表面プラズモン共鳴センサ、又はカンチレバーなどで構成される。
【0042】
判定部3は、センサ2から出力される信号(検出信号)に基づいて、対象物40に対する追加的な殺菌処理が必要な状態であるか否かを判定する演算処理手段であり、ソフトウェア又は専用のハードウェアで構成される。
【0043】
光源制御部5は、第一光源10に対する通電制御を行って発光制御を行う手段であり、不図示の電気回路を含む構成である。
【0044】
警告信号出力部6は、判定部3において対象物40に対する追加的な殺菌処理が必要であると判定された場合に、その旨の情報を報知するための警告信号を出力する手段である。例えば、警告信号は、音信号、光信号、振動信号、又は情報信号とすることができ、警告信号出力部6はかかる警告信号の種類に応じた態様を示す。すなわち、警告信号出力部6は、スピーカ、可視光のLEDなどの可視光光源、バイブレータ、又は情報送信部とすることができる。ここで、警告信号を情報信号とする場合には、「対象物40に対して追加的な殺菌処理が必要である」旨の情報が記載された情報信号が、有線又は無線通信を介して、特定のコンピュータやスマートフォンなどの操作端末、又はサーバに送信されるものとして構わない。
【0045】
殺菌状態検出装置1によって対象物40の殺菌状態を検出する方法につき、図2に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の各ステップの符号は、図2内の各ステップの符号に対応している。
【0046】
(ステップS1)
光源制御部5からの制御に基づき、第一光源10を発光させて第一紫外線L1を対象物40に対して照射する。なお、殺菌状態検出装置1は、第一光源10から出射される第一紫外線L1を当該殺菌状態検出装置1の外側に放射させるための窓部(不図示)を設けているものとして構わない。
【0047】
本ステップS1において、第一光源10の発光時間は光源制御部5において適宜設定される。一例として、1秒以上、3分以下であり、より好ましくは10秒以上、2分以下である。
【0048】
ステップS1が工程(a)に対応する。
【0049】
(ステップS2)
センサ2が、雰囲気に含まれる、対象物40から放出される分解生成物A1を検出する。上述したように、例えば、センサ2がアルデヒドセンサである場合、センサ2は分解生成物A1としてのアルデヒド類の検出濃度に応じた強度を示す検出信号を判定部3に対して出力する。
【0050】
ステップS2が工程(b)に対応する。
【0051】
(ステップS3~S5)
判定部3は、検出信号の強度(検出強度)と閾値を比較する。判定部3には、予め比較基準としての閾値に関する情報が記憶されているものとして構わない。
【0052】
検出強度が閾値を上回っている場合(ステップS3においてYes)、分解生成物A1の放出量が高いため、対象物40に多量の菌41が含まれていることから、判定部3において対象物40に対する追加的な殺菌処理が必要であると判定される。本実施形態では、判定部3からの指示信号に基づいて、警告信号出力部6が警告信号を出力する(ステップS4)。警告信号としては、上述したように、音信号、光信号、振動信号、又は情報信号とすることができる。一方、検出強度が閾値以下である場合には(ステップS3においてNo)、警告信号出力部6は警告信号を出力しない(ステップS5)。
【0053】
図3は、対象物40に含まれる菌41の量が異なる4種類の状況(Ya,Yb,Yc,Yd)において、第一紫外線L1を照射した後の、分解生成物A1の検出強度Yiの経時的な変化を示すグラフであり、横軸が時間、縦軸が検出強度Yiに対応する。図3では、時刻taにおいて第一紫外線L1を対象物40に対して照射した後の、分解生成物A1の検出強度Yiの経時的な変化が示されている。
【0054】
第一紫外線L1が対象物40に照射されると、菌41の量が比較的少ない場合には(Yc,Yd)、一時的に検出強度Yiが上昇した後、時間経過と共に検出強度Yiが低下する。これは、雰囲気に含まれる分解生成物A1の量すなわち分解生成物A1の濃度が少ないことから、時間の経過と共に拡散された結果、センサ2で検出される分解生成物A1の濃度が低下することによるものである。
【0055】
一方、菌41の量が比較的多い場合には(Ya,Yb)、ある程度の時間T1が経過した後であっても、検出強度Yiは高い値を示している。これは、雰囲気に含まれる分解生成物A1の濃度が高いことによるものである。つまり、時間T1が経過した後であっても、菌41の量が比較的少ない場合(Yc,Yd)と比べて、依然として高い検出強度Yiを示す。
【0056】
よって、判定部3は、所定の時間T1が経過した後に、検出強度Yiを閾値Ythと比較し、閾値Ythを上回っている場合には対象物40に対して多くの菌41が含まれており、追加的な殺菌処理が必要な状態であると判定できる。
【0057】
ステップS3が工程(c)に対応し、ステップS4が工程(e)に対応する。
【0058】
なお、ステップS1の実行前、すなわち、第一紫外線L1の照射前に、センサ2が分解生成物A1と同種の物質を検出し、検出濃度に応じた信号(基準信号)を測定しておくものとしても構わない(図4参照)。図4は、本発明に係る殺菌状態検出方法の別の一手順を説明する、フローチャートである。
【0059】
(ステップS0a,ステップS0b)
第一紫外線L1を照射するステップS1よりも前段階で、センサ2が雰囲気に含まれる分解生成物A1と同種の物質を検出する(ステップS0a)。そして、センサ2は分解生成物A1と同種の物質の検出濃度に応じた強度を示す信号(基準信号)を判定部3に対して出力する。判定部3は、この基準信号の強度を基準強度Y0として記憶する(ステップS0b)。
【0060】
ステップS0aが工程(d1)に対応し、ステップS0bが工程(d2)に対応する。
【0061】
このように、判定部3が基準強度Y0を記憶している場合、ステップS3において比較基準とされる閾値Ythは、基準強度Y0に基づいて設定されるものとしても構わない。例えば、閾値Ythを、基準強度Y0に対して許容可能な所定の値(許容度)だけ加算した値に設定することができる。一例として、閾値Ythは、基準強度Y0の150%の値とすることができる。
【0062】
殺菌状態検出装置1によれば、警告信号出力部6から警告信号が出力されている場合には、対象物40に対して殺菌処理が不充分であり、追加的な殺菌処理が必要であることを簡易に知らせることができる。
【0063】
なお、図3を参照して上述したように、菌41の量が比較的少ない場合には(Yc,Yd)、第一紫外線L1が対象物40に照射されると、検出濃度Yiが瞬間的に少し上昇するものの、時間の経過と共に検出濃度Yiが低下し、やがて照射前とほぼ同等の値となる。図3の例では、状況Ydの場合には、第一紫外線L1が照射された後、時間T1が経過すると、照射前とほぼ同等の検出濃度Yiまで低下していることが分かる。
【0064】
これに対し、菌41の量が比較的多い場合には(Ya,Yb)、第一紫外線L1が対象物40に照射されると、検出濃度Yiが著しく上昇した後、時間の経過と共に検出濃度Yiは緩やかに低下するものの、第一紫外線L1の照射前の時点における検出濃度Yiになるまでにはかなりの時間を必要とする。
【0065】
よって、例えば所定時間を前記時間T1とし、検出強度と閾値との比較(ステップS3)が、第一紫外線L1が照射されてから前記所定時間(時間T1)だけ経過した後に実行されるものとしても構わない。このとき、対象物40に含まれる菌41が少ない場合には、測定された検出濃度Yiは第一紫外線L1の照射前における検出濃度(すなわち基準強度Y0)とほぼ同等の値を示すことになるため、追加的な殺菌が不要であり、殺菌が完了された状態であると判断することができる。なお、この場合には、当然に検出濃度Yiは閾値Ythよりは下回る。
【0066】
一方で、対象物40に含まれる菌41が多い場合には、第一紫外線L1が照射されてから、所定時間(上記の例であれば時間T1)だけ経過した後であっても、検出濃度Yiが依然として高い値(閾値Ythより高い値)を示すため、追加的な殺菌が必要な状態であると判定できる。
【0067】
[第二実施形態]
図5は、本発明に係る殺菌装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。なお、第一実施形態と共通の要素については同一の符号を付し、説明は適宜割愛される。
【0068】
本実施形態の殺菌装置1aは、第一光源10、センサ2、判定部3、及び光源制御部5を備える。なお、図5においても、図1と同様に、殺菌状態を検出する対象である対象物40の面上に菌41が多く存在する場合が模式的に描かれている。
【0069】
殺菌装置1aによって対象物40を殺菌する方法につき、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図2と共通のステップについては、共通のステップの符号が付されている。
【0070】
第一実施形態と同様の方法により、ステップS1~S3が実行される。なお、図6に示すように、ステップS1の前にステップS0a及びS0bが実行されるものとしても構わない。
【0071】
(ステップS4a,ステップS5a)
第一実施形態では、判定部3において検出強度が閾値を上回っていると判定された場合(ステップS3においてYes)、警告信号出力部6が警告信号を出力した(ステップS4)。本実施形態では、このステップS4に替えて、光源制御部5が第一光源10を制御して、殺菌用の第一紫外線L1を対象物40に対して照射させるステップS4aが実行される。なお、このステップS4aは、工程(f)に対応する。
【0072】
第一光源10から出射される、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線L1は、DNAの吸収スペクトルのピーク波長からは少し離れているものの、菌41を殺菌させる機能を有している。ただし、殺菌状態を検出するために、ステップS1において菌41に含まれるタンパク質の結合を切って分解生成物A1を生成するのに必要な光量(照射光量)に比べると、菌41を殺菌させるのに必要な照射光量は多い。このため、ステップS4aでは、ステップS1と比べて、長い時間にわたって、及び/又は、高い発光強度を有した第一紫外線L1が対象物40に照射される。
【0073】
一方、検出強度が閾値以下である場合には(ステップS3においてNo)、第一光源10から第一紫外線L1を照射させることなく、処理が終了する(ステップS5a)。
【0074】
本実施形態の殺菌装置1aによれば、事前にステップS3において対象物40に対して殺菌処理が必要であるかどうかが判定された後、必要である場合に限って、殺菌に必要な照射光量の第一紫外線L1が照射される。一方で、上述したように、ステップS1において対象物40の殺菌状態を検出するために照射される第一紫外線L1の光量は、ステップS5aで殺菌のために照射される第一紫外線L1の光量より大幅に低い。この結果、殺菌が完了しているのにもかかわらず、殺菌目的で第一紫外線L1が照射される場合と比較して、第一光源10の長寿命化が図られる。
【0075】
なお、殺菌装置1aにおいても、図1に示す殺菌状態検出装置1と同様に、警告信号出力部6を備えるものとしても構わない。この場合、殺菌装置1aを、第一実施形態の殺菌状態検出装置1としても利用することができる。
【0076】
例えば対象物40の面上に多量の菌41が積層されていると、菌41が重なり合っている領域には紫外線が照射されにくい場合があり、このような場合には、対象物40の面上をアルコールなどで拭き取る処理を行った方が効果的である。かかる事情の下、判定部3が、センサ2において検出された検出強度の大きさに応じて、第一紫外線L1による殺菌を行うか、警告信号を出力するかについても判定するものとしても構わない。
【0077】
[第三実施形態]
図7は、本発明に係る殺菌装置の一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。なお、第一実施形態と共通の要素については同一の符号を付し、説明は適宜割愛される。
【0078】
本実施形態の殺菌装置1bは、第二実施形態の殺菌装置1aと比較して、更に第二光源20を備えている。
【0079】
第二光源20は、主たる発光波長が第一紫外線L1よりは長波長であって、波長200nm以上280nm以下の第二紫外線L2を出射可能な光源である。一例として、第二光源20は、電気-光変換効率に優れている観点から、好適には低圧水銀ランプで構成される。ただし、第二光源20は、LEDやレーザダイオードなどの固体光源素子であっても構わない。
【0080】
この第二光源20は、第一光源10と共に、光源制御部5によって発光制御が行われる。
【0081】
殺菌装置1bによって対象物40を殺菌する方法につき、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、図6と共通のステップについては、共通のステップの符号が付されている。
【0082】
図8に示すフローチャートは、図6に示すフローチャートと比較して、ステップS4aに替えてステップS4bが実行される点のみが異なる。
【0083】
(ステップS4b)
第二実施形態では、判定部3において検出強度が閾値を上回っていると判定された場合(ステップS3においてYes)、光源制御部5が第一光源10を制御して、殺菌用の第一紫外線L1を対象物40に対して照射させた(ステップS4a)。これに対し、本実施形態では、判定部3において検出強度が閾値を上回っていると判定された場合、光源制御部5が第二光源20を制御して、殺菌用の第二紫外線L2を対象物40に対して照射させる(ステップS4b)。このステップS4bは、工程(f)に対応する。
【0084】
第二光源20から出射される第二紫外線L2の主たる発光波長は、第一紫外線L1と比較すると、DNAの吸収スペクトルのピーク波長に近い。特に第二光源20を低圧水銀ランプで構成する場合には、第一光源10と比較して電気-光変換効率が高く、また安価に入手することができる。
【0085】
第二実施形態と同様に、本実施形態においても、事前にステップS3において対象物40に対して殺菌処理が必要であるかどうかが判定された後、必要である場合に限って、殺菌目的の紫外線(ここでは第二紫外線L2)が照射される。第一光源10と比較して第二光源20は、効率的な殺菌が可能であるため、殺菌用の第二光源20を別途備えることで、第一光源10の長寿命化が図られる。
【0086】
なお、殺菌装置1bにおいても、図1に示す殺菌状態検出装置1と同様に、警告信号出力部6を備えるものとしても構わない。この場合、殺菌装置1bを、第一実施形態の殺菌状態検出装置1としても利用することができる。
【0087】
例えば対象物40の面上に多量の菌41が積層されていると、菌41が重なり合っている領域には紫外線が照射されにくい場合があり、このような場合には、対象物40の面上をアルコールなどで拭き取る処理を行った方が効果的である。かかる事情の下、判定部3が、センサ2において検出された検出強度の大きさに応じて、第二紫外線L2による殺菌を行うか、警告信号を出力するかについても判定するものとしても構わない。
【0088】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0089】
〈1〉上記第一実施形態では、殺菌状態検出装置1を用いて、ステップS1~S5の各ステップが実行されることで、対象物40に対する殺菌状態が検出される場合について説明した。しかし、ステップS1~S5が実行される限りにおいて、殺菌状態検出装置1が利用されなくても構わない。すなわち、第一紫外線L1を照射する第一光源10と、分解生成物A1を検出するセンサ2と、センサ2からの検出信号に基づいて対象物40の殺菌状態を判定する判定部3と、警告信号出力部6とは、必ずしも同一の装置内に搭載されていなくても構わない。
【0090】
〈2〉第一実施形態の殺菌状態検出装置1は、不図示の人感センサを備えるものとしても構わない。この場合において、光源制御部5は、予め定められた時間間隔で定期的に第一光源10を発光させて、上記ステップS1~S5を実行するものとする一方、人感センサによって人間が近くにいることが確認された場合には第一光源10の発光を停止させる制御を行うものとしても構わない。
【0091】
上述したように、主たる発光波長が200nm以上230nm以下の第一紫外線L1は、人体の皮膚に対して照射されても人体への影響が小さいが、紫外線であることから抵抗を感じる人間も少なからず存在する。上記の構成によれば、人間が近くにいる場合には第一紫外線L1の照射が自動的に停止されるため、人間が出入りするような場所への殺菌状態検出装置1の導入がしやすくなる。
【0092】
なお、殺菌装置(1a,1b)においても、同様の構成とすることができる。
【0093】
〈3〉上記実施形態では、ステップS1において第一紫外線L1を照射した後、所定時間の経過後におけるセンサ2の検出強度Yiと閾値Ythとを比較して、対象物40に対する追加的な殺菌が必要か否かが判定されるものとした。しかし、上述したように、対象物40に含まれる菌41の量が多い場合には(図3における状況Ya,状況Yb)、第一紫外線L1が照射された直後においても、検出強度Yiの値が著しく上昇する。このため、図9に示すように、第一紫外線L1の照射後又は照射中のいずれかにかかわらず、検出強度Yiが所定の閾値Yth2を上回っている場合には、追加的な殺菌が必要であると判定しても構わない。すなわち、この場合には、ステップS2~S3が、第一紫外線L1の照射中に行われても構わない。
【0094】
ただし、この方法によって殺菌の必要性の判定が行われる場合には、設定される閾値Yth2の値は、上記実施形態で説明した方法が用いられる場合における、閾値Ythよりは高い値とされる。
【符号の説明】
【0095】
1 : 殺菌状態検出装置
1a,1b : 殺菌装置
2 : センサ
3 : 判定部
5 : 光源制御部
6 : 警告信号出力部
10 : 第一光源
20 : 第二光源
40 : 対象物
41 : 菌
A1 : 分解生成物
L1 : 第一紫外線
L2 : 第二紫外線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9