IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-回路構成体 図1
  • 特許-回路構成体 図2
  • 特許-回路構成体 図3
  • 特許-回路構成体 図4
  • 特許-回路構成体 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】回路構成体
(51)【国際特許分類】
   H01H 47/00 20060101AFI20221125BHJP
   H02G 3/16 20060101ALI20221125BHJP
   H01H 45/00 20060101ALI20221125BHJP
   H01H 45/12 20060101ALI20221125BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20221125BHJP
   H05K 7/06 20060101ALI20221125BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01H47/00 A
H02G3/16
H01H45/00 A
H01H45/12
H05K7/20 F
H05K7/06 C
B60R16/02 610D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019084486
(22)【出願日】2019-04-25
(65)【公開番号】P2020181733
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】伊佐治 優介
(72)【発明者】
【氏名】岡本 怜也
(72)【発明者】
【氏名】竹田 仁司
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-239581(JP,A)
【文献】特開2006-087173(JP,A)
【文献】特開2008-300090(JP,A)
【文献】特開2014-079093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 47/00
H02G 3/16
H01H 45/00
H01H 45/12
H05K 7/20
H05K 7/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、
前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、
伝熱部材とを含み、
前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、
前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、
前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、
前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、
前記伝熱部材が、前記ケースを間に挟んで前記第一伝熱シートと対向配置された平板状の第二伝熱シートを含んで構成されている
回路構成体。
【請求項2】
前記プリチャージ回路を保持して前記ケースに固定される保持台座を含み、
前記ケースと前記保持台座との間に前記通電部と前記第一伝熱シートが配置され、前記保持台座が前記ケースへ固定されることによって前記通電部と前記第一伝熱シートが前記ケースに押し付けられている請求項に記載の回路構成体。
【請求項3】
負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、
前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、
伝熱部材とを含み、
前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、
前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、
前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、
前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、
前記プリチャージ回路を保持して前記ケースに固定される保持台座を含み、
前記ケースと前記保持台座との間に前記通電部と前記第一伝熱シートが配置され、前記保持台座が前記ケースへ固定されることによって前記通電部と前記第一伝熱シートが前記ケースに押し付けられている回路構成体。
【請求項4】
前記通電部が平板状のバスバーによって構成され、
前記バスバーは、前記バスバーの板厚方向両側の面が前記保持台座と前記第一伝熱シートに当接するように配置され、
前記ケースと前記保持台座のそれぞれの当接面が平板状とされており、
前記第一伝熱シートが柔軟性をもつ請求項2または請求項3に記載の回路構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の負荷とバッテリーとの間に電気的に接続される回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両では、走行用のバッテリー等と車両側の負荷との電気的接続を断続するためのリレーを含む回路構成体を含んだ電源装置が搭載されている。例えば、特許文献1には、車両側の負荷としてインバータを介して接続されるモータや発電機に対して、バッテリーの電力供給を断続するリレーを備えた回路構成体が示されている。
【0003】
このような回路構成体に用いられるリレーは、接続時には50A以上の極めて大きな電流が流れることから、電流量の二乗に比例したジュール熱が発生し、発熱量も大きくなる。そこで、特許文献1では、ケース内に収容されたリレーの接続部とケース外に配置されたバッテリーの接続端子とを接続するバスバーの中間部分を利用して、リレーの放熱を行う構造が提案されている。具体的には、リレーを収容するケース外に延出されたバスバーの中間部において絶縁性放熱シートを介してシャーシや電源装置全体を収容する筐体等に当接させることで、リレーで発生した熱をシャーシや筐体に熱伝導して放熱する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-79093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リレーとバッテリーを接続する通電部を構成するバスバーは、大電流に耐え得るように厚さや面積を大きく確保する必要がある。そのため、特許文献1の構造では、大型のバスバーを用いて放熱用の経路を追加する必要があり、材料費や加工費が上昇するという問題があった。また、大型のバスバーを放熱用にケース外に設けられた他部材まで長く引き回す必要があり、リレーの接続部と放熱部分との距離が大きくなることが避けられない。そのため、リレーでの発熱を効率よく放熱できていないという問題も内在していた。
【0006】
そこで、材料費や加工費の上昇を抑えつつ、リレーの放熱効率を高める新規な構造の回路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載される電源装置では、車両側の負荷と並列にコンデンサが接続されており、コンデンサとバッテリーの両方から安定して負荷に電力を供給できるようになっている。そして、バッテリーと負荷との断続を行うリレー(以下、メインリレーという)を含む回路構成体においては、メインリレーの他、コンデンサをプリチャージする際に使用されるプリチャージリレーおよびプリチャージ抵抗がメインリレーをバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路が含まれている。これにより、メインリレーを接続する前にプリチャージリレーを接続することでコンデンサを予め充電することができ、メインリレーを接続する際にコンデンサに大きな突入電流が流れてメインリレーの接続部が損傷することが防止されている。本開示の回路構成体は、プリチャージ回路を利用した新たな構造により、メインリレーの放熱を効率よく実現するものである。
【0008】
本開示の回路構成体は、負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、伝熱部材とを含み、前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、前記伝熱部材が、前記ケースを間に挟んで前記第一伝熱シートと対向配置された平板状の第二伝熱シートを含んで構成されている回路構成体である。
また、本開示の回路構成体は、負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、伝熱部材とを含み、前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、前記プリチャージ回路を保持して前記ケースに固定される保持台座を含み、前記ケースと前記保持台座との間に前記通電部と前記第一伝熱シートが配置され、前記保持台座が前記ケースへ固定されることによって前記通電部と前記第一伝熱シートが前記ケースに押し付けられている回路構成体である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、材料費や加工費の上昇を抑えつつ、リレーの放熱効率を高める新規な構造の回路構成体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態1に係る回路構成体を示す斜視図である。
図2図2は、バッテリーから負荷に至る経路における電気的構成を概略的に示す図である。
図3図3は、図1に示す回路構成体の分解斜視図である。
図4図4は、図1に示す回路構成体の平面図である。
図5図5は、図4におけるV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回路構成体は、
(1)負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、伝熱部材とを含み、前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、前記伝熱部材が、前記ケースを間に挟んで前記第一伝熱シートと対向配置された平板状の第二伝熱シートを含んで構成されている回路構成体である。
【0012】
本開示の回路構成体によれば、メインリレーの近傍に設けられるプリチャージ回路において、メインリレーに接続されたバスバーに接続される通電部の少なくとも一部の領域に伝熱部材が接触している。それゆえ、メインリレーの接続部の近傍において、伝熱部材を介したメインリレーの放熱を効率的に行うことができる。しかも、既存のプリチャージ回路における通電部の少なくとも一部に伝熱部材を接触するだけでよいことから、従来構造のように、大型のバスバーを放熱用に長く引き回す必要がなく、簡単な構造で、コストを抑えつつメインリレーの放熱構造を実現することができる。また、伝熱効率等の向上のためプリチャージ回路の通電部の表面積を拡大しても、メインリレーとバッテリーを接続する通電部に比べて断面積が小さいことから、コストの上昇を抑えられる。さらに、伝熱部材として平板状の第一伝熱シートが、ケースと接触していることから、メインリレーでの発熱を、空気層を介さずプリチャージ回路の通電部から第一伝熱シートおよびケースに伝熱できる。その結果、より効率的なメインリレーの伝熱経路およびそれによる放熱構造を構築することができる。しかも、ケースやプリチャージ回路の通電部は既存のものであることから、簡単な構造でスペース効率よくメインリレーの伝熱経路を構築できる。また、ケースを間に挟んで第一伝熱シートと対向配置された第二伝熱シートが設けられていることから、第二伝熱シートを介してさらに外部にメインリレーの熱を伝熱できる。これにより、より広い面積を利用したメインリレーの伝熱経路の構築や一層安定したメインリレーの放熱を実現できる。
【0013】
なお、プリチャージ回路のメインリレーに接続される通電部とは、メインリレーと、プリチャージリレーおよび/またはプリチャージ抵抗間を導通接続する部位をいうものである。さらに、通電部に接触される伝熱部材としては、空気よりも熱伝導率のよい部材で構成されたものであれば何れも採用可能であり、例えば、絶縁性伝熱シートや放熱フィンなどが採用され得る。
【0014】
【0015】
【0016】
)前記プリチャージ回路を保持して前記ケースに固定される保持台座を含み、前記ケースと前記保持台座との間に前記通電部と前記第一伝熱シートが配置され、前記保持台座が前記ケースへ固定されることによって前記通電部と前記第一伝熱シートが前記ケースに押し付けられていることが好ましい。従来から用いられていた保持台座とケースとの当接面間を利用して、通電部と第一伝熱シートとケースによって構成されるメインリレーの伝熱経路を、スペース効率よく設けることができるからである。しかも、通電部と伝熱シートが、保持台座を利用して押し付けられている。これにより、追加の部品を必要とすることなく、伝熱経路における空気層の介在等によるロスの発生を防止して、伝熱経路の安定性や性能の向上を有利に図ることができる。
【0017】
また、本開示の回路構成体は、
(3)負荷とバッテリーの間に電気的に接続されるメインリレーと、前記メインリレーと並列に接続されたプリチャージ回路と、伝熱部材とを含み、前記プリチャージ回路は前記メインリレーに接続される通電部を有し、前記伝熱部材と前記通電部とが接触しており、前記メインリレーと前記プリチャージ回路を収容するケースを含み、前記伝熱部材が、前記ケースと接触している平板状の第一伝熱シートを含んで構成されており、前記プリチャージ回路を保持して前記ケースに固定される保持台座を含み、前記ケースと前記保持台座との間に前記通電部と前記第一伝熱シートが配置され、前記保持台座が前記ケースへ固定されることによって前記通電部と前記第一伝熱シートが前記ケースに押し付けられている回路構成体である。
本態様の回路構成体によれば、メインリレーの近傍に設けられるプリチャージ回路において、メインリレーに接続されたバスバーに接続される通電部の少なくとも一部の領域に伝熱部材が接触している。それゆえ、メインリレーの接続部の近傍において、伝熱部材を介したメインリレーの放熱を効率的に行うことができる。しかも、既存のプリチャージ回路における通電部の少なくとも一部に伝熱部材を接触するだけでよいことから、従来構造のように、大型のバスバーを放熱用に長く引き回す必要がなく、簡単な構造で、コストを抑えつつメインリレーの放熱構造を実現することができる。また、伝熱効率等の向上のためプリチャージ回路の通電部の表面積を拡大しても、メインリレーとバッテリーを接続する通電部に比べて断面積が小さいことから、コストの上昇を抑えられる。さらに、伝熱部材として平板状の第一伝熱シートが、ケースと接触していることから、メインリレーでの発熱を、空気層を介さずプリチャージ回路の通電部から第一伝熱シートおよびケースに伝熱できる。その結果、より効率的なメインリレーの伝熱経路およびそれによる放熱構造を構築することができる。しかも、ケースやプリチャージ回路の通電部は既存のものであることから、簡単な構造でスペース効率よくメインリレーの伝熱経路を構築できる。また、従来から用いられていた保持台座とケースとの当接面間を利用して、通電部と第一伝熱シートとケースによって構成されるメインリレーの伝熱経路を、スペース効率よく設けることができる。しかも、通電部と伝熱シートが、保持台座を利用して押し付けられている。これにより、追加の部品を必要とすることなく、伝熱経路における空気層の介在等によるロスの発生を防止して、伝熱経路の安定性や性能の向上を有利に図ることができる。
上記(2)または(3)において、前記通電部が平板状のバスバーによって構成され、前記バスバーは、前記バスバーの板厚方向両側の面が前記保持台座と前記第一伝熱シートに当接するように配置され、前記ケースと前記保持台座のそれぞれの前記当接面が平板状とされており、前記第一伝熱シートが柔軟性をもつことが好ましい。平板状のケースと保持台座の当接面間に、平板状の通電部と第一伝熱シートを隙間なく挟持することができるからである。特に、第一伝熱シートが柔軟性をもつことから、ケースや保持台座、バスバーに生じる寸法公差を第一伝熱シートの変形により吸収でき、メインリレーの伝熱経路を構成する部材間の接触面積を確実に保持して、伝熱性能の向上を図ることができる。
【0018】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の回路構成体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1について、図1から図5を参照しつつ説明する。回路構成体10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(図示せず)に搭載されている。回路構成体10は、例えば図2に示すように、走行用バッテリーをメインリレー14を介して車両負荷16に接続するために用いられる。ここで、走行用バッテリーとはバッテリー12のことであり、車両を走行させるモータ22に電力を供給させるバッテリーとして利用される。回路構成体10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、Z方向を上方、Y方向を前方、X方向を右方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0020】
<回路構成体10>
回路構成体10の入力側には、図2に示すように、車両を走行させるモータ22に電力を供給するバッテリー12の出力側が接続されている。回路構成体10の出力側には、車両側負荷16が接続されている。回路構成体10の入力側と出力側の間には、バッテリー12を車両側負荷16に接続するメインリレー14が接続されている。加えて、回路構成体10のメインリレー14には、プリチャージリレー26およびプリチャージ抵抗28がメインリレー14をバイパスするように直列に接続されたプリチャージ回路30が接続されている。なお、本開示の実施形態1では、図2に示すように、プリチャージ抵抗28は、プリチャージリレー26の入力側および出力側の両方に接続されている。さらに、メインリレー14とプリチャージリレー26は、励磁コイルの通電状態で可動接続部を移動させて接続部をON/OFFに切り換えるリレーであり、図示しない制御回路によりON/OFF制御がなされている。
【0021】
<バッテリー12>
バッテリー12は、充電可能な複数の二次電池を直列に接続して出力電圧を高く、例えば100V~400Vとしている。また、複数の二次電池を並列に接続して電流容量を大きくすることもできる。この二次電池には、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、ニッケル水素電池などが使用できる。また、二次電池に代えて、あるいはこれに加えて、電気二重層キャパシタ(EDLC)等のキャパシタを利用することもできる。本明細書において二次電池にはキャパシタも含む。
【0022】
<車両側負荷16>
車両側負荷16は、例えば、静電容量を200μF~5000μFとする大容量のコンデンサ18を負荷のDC/ACインバータ20と並列に接続したものである。このコンデンサ18が完全に放電された状態でメインリレー14がON状態に切り換えられると、コンデンサ18を充電するために瞬間的に極めて大きなチャージ電流が流れる。極めて大きなチャージ電流はメインリレー14の接続部を損傷させる原因となることから、チャージ電流による弊害を防止するために、プリチャージ回路30を設けている。本開示の実施形態1では、図2に示すように、メインリレー14と並列にプリチャージ回路30を設けている。プリチャージ回路30は、コンデンサ18のチャージ電流を制限するために、プリチャージリレー26と直列にプリチャージ抵抗28を接続している。プリチャージ抵抗28は、プリチャージリレー26およびメインリレー14をONに切り換えた状態で、コンデンサ18の充電電流を小さく制限する。なお、2つのプリチャージ抵抗28の抵抗値は同じでもよいし異なっていてもよい。あるいは、一方のプリチャージ抵抗28のみ設けられていてもよい。
【0023】
車両側負荷16は、DC/ACインバータ20を介してバッテリー12をモータ22と発電機24とに接続している。DC/ACインバータ20は、バッテリー12の直流を交流に変換してモータ22に供給し、発電機24の交流を直流に変換してバッテリー12を充電する。なお、図2は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカーを示している。発電機を装備しない電気自動車は、DC/ACインバータ20を介してモータに電力を供給し、回生制動時には、モータを発電機とし、あるいは別に設けている発電機で電池ブロックを充電する。また、本開示の実施形態1では、DC/ACインバータ20を用いているが、DC/DCコンバータでも構わない。
【0024】
本開示の実施形態1では、図2に示すように、プリチャージリレー26を図示しない制御回路でON状態に切り換えてコンデンサ18をプリチャージする。コンデンサ18がプリチャージされた後、メインリレー14をON状態に切り換えることにより、メインリレー14の接続部がコンデンサ18のチャージ電流で損傷するのを防止している。
【0025】
回路構成体10は、例えば図1,3に示すように、ケース32と、ケース32に配設されたメインリレー14とプリチャージ回路30と、を備えている。
【0026】
<ケース32>
ケース32は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなる。ケース32を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。ケース32は、例えば図3に示すように、全体として上方に向かって開口する略矩形箱体形状をなしており、底壁34と、底壁34の端縁部から上方に向かって突設された周壁36とを有している。本開示の実施形態1においては、ケース32の外形状は、上方から見て、略長方形状をなしている。なお、ケース32の外形状は本実施形態の形状に限定されない。
【0027】
図3および図4に示すように、ケース32の底壁34における上面38の右方側には、周壁36に沿った4箇所において、円筒形状をなす第一固定部40が突設されている。また、ケース32の底壁34における上面38の左方側には、周壁36に沿った4箇所において、円筒形状をなす第二固定部42が第一固定部40よりも低い高さ寸法で突設されている。固定部40,42は、れもケース32と一体成形されており、固定部40,42の内部には、れも図示しないボルトが挿通されるようになっている。
【0028】
<第一伝熱シート44および第二伝熱シート46>
図3に示すように、ケース32の底壁34における上面38の中央付近には、伝熱部材を構成する2枚の略矩形平板状の第一伝熱シート44が、前後方向に僅かの隙間を隔てて並設されている。また、図5に示すように、ケース32の底壁34における下面48の中央付近には、伝熱部材を構成する2枚の矩形平板状の第二伝熱シート46が、前後方向に僅かの隙間を隔てて並設されている。第一伝熱シート44と第二伝熱シート46は、略同形状とされており、ケース32を間に挟んで第二伝熱シート46は第一伝熱シート44と対向配置されている。
【0029】
第一伝熱シート44と第二伝熱シート46は、上下方向に扁平なシート状をなしており、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂からなる。第一伝熱シート44は柔軟性をもっており、上下方向に加えられる力に応じて、厚さ寸法が変化できるようになっている。
【0030】
<メインリレー14>
メインリレー14は、その内部に図示しない接続部およびコイル部を有する、いわゆる機械式のものである。例えば、図1および図5に示すように、メインリレー14の左側面には、後側に設けられた第一電力端子50と、前側に設けられた第二電力端子52とが前後方向に並んで設けられている。第一電力端子50と第二電力端子52に電流を流すことにより、メインリレー14の接続部で熱が発生し、第一電力端子50および第二電力端子52に熱伝導されるようになっている。第一電力端子50および第二電力端子52には、それぞれ、ネジ孔54が形成されている(図5参照)。
【0031】
図4に示すように、メインリレー14の四隅の下端部には、上方から見て略矩形状をなす固定脚部56が突出されている。固定脚部56には上下方向に挿通孔58が形成されている(図4参照)。ケース32の右方側にメインリレー14が収容され、固定脚部56が第一固定部40上に載置された状態で、挿通孔58内に図示しないネジが挿通されることにより、メインリレー14がケース32に固定されるようになっている。
【0032】
図3に示すように、第一電力端子50には、略L字形状を有する薄肉のバスバーによって構成された第一通電部60と、略クランク形状を有する厚肉とされた第一バスバー62の一端部同士が、共締めされて固定されている。すなわち、第一通電部60と第一バスバー62の一端部の中央部に貫設された挿通孔64,64を通して、図示しないネジを第一電力端子50のネジ孔54に螺合することにより、一端部同士が共締めされて固定されている。また、図3および図5に示すように、第二電力端子52には、略L字形状を有する薄肉のバスバーによって構成された第二通電部66と、略クランク形状を有する厚肉とされた第二バスバー68の一端部同士が、共締めされて固定されている。すなわち、第二通電部66と第二バスバー68の一端部の中央部に貫設された挿通孔64,64を通して、ネジ70を第二電力端子52のネジ孔54に螺合することにより一端部同士が共締めされて固定されている。例えば、第一バスバー62が回路構成体10の入力側に接続されており、第二バスバー68が回路構成体10の出力側に接続されている。
【0033】
図3および図5に示すように、第一通電部60と第二通電部66の他端部側は、メインリレー14がケース32内に収容された状態で、ケース32の底壁34の上面38に平行に延び出しており、伝熱部材当接部72を構成している。これにより、メインリレー14がケース32に収容され組み付けられた際には、第一通電部60と第二通電部66の伝熱部材当接部72は、ケース32の底壁34の上面38に載置された第一伝熱シート44上に当接状態で配置される。加えて、伝熱部材当接部72にはそれぞれ、外方に向かって突出し上方に向かって延び出す抵抗接続部74が設けられている。
【0034】
なお、通電部60,66、およびバスバー62,68は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。通電部60,66、およびバスバー62,68を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が高く、電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。
【0035】
<プリチャージ回路30>
図3から図5に示すように、プリチャージ回路30は、保持台座76に保持されている。保持台座76は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなり、全体として扁平な略矩形板状をなしている。保持台座76を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。保持台座76の四隅には、上方から見て矩形状をなす固定部78が突設されている。固定部78には上下方向に挿通孔80が形成されている(図3参照)。図3に示すように、保持台座76の上面には、前方側および後方側においてプリチャージ抵抗装着部82が上方に向かって突設されており、左方側にはプリチャージリレー装着部84が上方に向かって突設されている。プリチャージ抵抗装着部82とプリチャージリレー装着部84にそれぞれプリチャージ抵抗28とプリチャージリレー26が装着され、プリチャージリレー26用の入力用バスバー86を含む各種バスバー保持台座76の下面から装着される。これにより、保持台座76に保持されたプリチャージ回路30が構成されている(図2参照)。
【0036】
<プリチャージ抵抗28>
例えば図3に示すように、プリチャージ抵抗28は、左右方向に細長く延びた直方体形状をなしている。プリチャージ抵抗28の左端部および右端部には、それぞれ、図示しないリード端子が下方に突出している。
【0037】
<プリチャージリレー26>
例えば図3に示すように、プリチャージリレー26は、メインリレー14よりも小さな直方体形状をなしており、内部に図示しない接続部およびコイル部を有する、いわゆる機械式のものである。プリチャージリレー26の下面からは、複数のリード端子(図示せず)が下方に突出している。
【0038】
<回路構成体10の組み付け工程>
続いて、回路構成体10の組み付け工程の一例について説明する。回路構成体10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0039】
まず、ケース32を準備する。次に、2枚の第一伝熱シート44および2枚の第二伝熱シート46を、トムソン型抜き加工等の公知の手法により所定の形状に切り出す。ケース32の底壁34における上面38の所定位置に、2枚の第一伝熱シート44を貼り付け、ケース32の底壁34における下面48の所定位置に、2枚の第二伝熱シート46を貼り付ける。
【0040】
伝熱シート44,46が貼付されたケース32に対して、上方からメインリレー14を収容する。メインリレー14の固定脚部56がケース32に設けられた第一固定部40上に載置された状態で、挿通孔58内に図示しないネジを挿通することにより、メインリレー14をケース32に固定する。第一通電部60と第二通電部66の他端部側は、メインリレー14がケース32内に収容され固定された状態において、ケース32の底壁34の上面38に平行に延び出しており、伝熱部材当接部72を構成している。これにより、第一通電部60と第二通電部66の伝熱部材当接部72は、ケース32の底壁34の上面38に載置された第一伝熱シート44上に当接して配置されている。
【0041】
続いて、ケース32の方側に上方からプリチャージ回路30が保持された保持台座76を収容する。保持台座76の固定部78がケース32に設けられた第二固定部42上に載置された状態で、挿通孔80内に図示しないネジを挿通することにより、プリチャージ回路30が保持された保持台座76をケース32に固定する。これにより、第一通電部60と第二通電部66の他端部側に設けられた抵抗接続部74が、図示しない中継端子を介してプリチャージ抵抗28の図示しないリード端子に接続されて、回路構成体10が完成する。
【0042】
この状態において、例えば図5に示すように、ケース32と保持台座76との当接面88,90間に、第一通電部60と第二通電部66の他端部側により構成されている伝熱部材当接部72と第一伝熱シート44が配置されている。すなわち、メインリレー14のバスバー62,68に接続されている、プリチャージ回路30の第一,第二通電部60,66の伝熱部材当接部72に第一伝熱シート44が接触して設けられている。ケース32と保持台座76のそれぞれの当接面88,90は何れも平板状とされており、伝熱部材当接部72は、伝熱部材当接部72の板厚方向両側の面がそれぞれ保持台座76と第一伝熱シート44に当接するように配置されている。この結果、保持台座76により、伝熱部材当接部72と第一伝熱シート44がケース32に対して押し付けられている。
【0043】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、メインリレー14の近傍に設けられたプリチャージ回路30において、メインリレー14の第一,第二電力端子50,52に接続された第一,第二通電部60,66の一部である伝熱部材当接部72に伝熱部材である第一伝熱シート44が接触して設けられている。これにより、メインリレー14の近傍において、第一伝熱シート44を介してメインリレー14で発生した熱をすみやかに伝熱して、メインリレー14の放熱を効率的に行うことができる。また、既存のプリチャージ回路30はそのままで第一,第二通電部60,66の一部である伝熱部材当接部72に伝熱部材を設けるだけであることから、従来構造のように、大型のバスバーを放熱用に長く引き回す必要がない。それゆえ、簡単な構造で、コストを抑えつつメインリレー14の放熱構造を実現することができる。しかも、伝熱効率等の向上のためプリチャージ回路30の第一,第二通電部60,66全体の伝熱部材当接部72の表面積を拡大したとしても、従来の如きメインリレー14とバッテリー12を接続する通電部の表面積を拡大した場合に比べて断面積が小さいことから、コストの上昇を抑えられる。
【0044】
また、上記の構成によれば、プリチャージ回路30においてメインリレー14の第一,第二電力端子50,52に接続された第一,第二通電部60,66の伝熱部材当接部72に接触するように設けられた平板状の第一伝熱シート44が、伝熱部材当接部72とケース32の底壁34との間で保持されている。これにより、メインリレー14で発生した熱を、空気層を介さず第一,第二通電部60,66および第一伝熱シート44を介してケース32に伝熱することができる。その結果、より効率的なメインリレー14の伝熱経路およびそれによる放熱構造を構築することができる。しかも、ケース32やプリチャージ回路30は既存のままであることから、簡単な構造でスペース効率よくメインリレー14の伝熱経路およびそれによる放熱構造を構築できる。
【0045】
さらに、ケース32を間に挟んで第一伝熱シート44と対向配置された第二伝熱シート46が設けられている。これにより、第二伝熱シート46を介してさらに効率的に外部にメインリレー14の熱を伝熱でき、より広い面積を利用したメインリレー14の伝熱経路の構築や一層安定したメインリレー14の放熱を実現できる。
【0046】
加えて、既存の保持台座76とケース32との隙間を利用して、保持台座76とケース32の当接面88,90間に、伝熱部材当接部72と第一伝熱シート44を配設する。これにより、保持台座76とケース32との隙間にメインリレー14の伝熱経路をスペース効率よく設けることができる。しかも、伝熱部材当接部72と第一伝熱シート44とが、保持台座76のケース32への固定力を利用して押し付けられている。これにより、追加の部品を必要とすることなく、上記伝熱経路における空気層の介在等によるロスの発生を防止して、伝熱経路の安定性や性能の向上を有利に図ることができる。
【0047】
また、上記の構成によれば、ケース32と保持台座76の平板状の当接面88,90間に、平板状の伝熱部材当接部72と第一伝熱シート44を隙間なく挟持することができる。しかも、第一伝熱シート44が柔軟性をもっていることから、ケース32や保持台座76や伝熱部材当接部72に生じる寸法公差を第一伝熱シート44が変形することにより吸収できる。それゆえ、メインリレー14の伝熱経路を構成する部材間の接触面積を確実に確保して、伝熱性能の向上を図ることができる。
【0048】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、プリチャージ回路30において、メインリレー14とプリチャージ抵抗28の間を接続する第一,第二通電部60,66に伝熱部材(第一伝熱シート44,第二伝熱シート46)を設けた例を示したが、これに限定されない。メインリレー14とプリチャージリレー26の間を導通接続する通電部が採用される場合には、伝熱部材当接部に伝熱部材を設けてもよい。
(2)メインリレー14からバッテリー12に至る経路にメインリレー14の伝熱経路を構成したものと組み合わせて採用することももちろん可能である。これにより、メインリレー14の伝熱経路をコンパクト化しつつ、プリチャージ回路30を利用した本開示の構成に従うメインリレー14とバッテリー12間の伝熱経路を追加的に利用することができる。
(3)加えて、第一,第二通電部60,66に設けられる伝熱部材としては、空気よりも熱伝導率のよい部材で構成されたものであれば何れも採用可能である。例えば、絶縁性の第一伝熱シート44に代えて、あるいは加えて放熱フィンを採用することも可能である。
(4)また、上記実施形態では、第一伝熱シート44および第二伝熱シート46は二枚に分割されていたが、一体化されていてもよい。これにより、作成や貼付の作業性の向上が図られる。
(5)上記の実施形態1では、コンデンサ18を並列に接続しているDC/ACインバータ20とバッテリー12間の電気的接続の断続を行う回路構成体10について本開示の構造を適用した例を示した。本開示の回路構成体10は、その他のコンデンサを並列している負荷とバッテリー12間の断続を行うすべての回路構成体に同様に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 回路構成体
12 バッテリー
14 メインリレー
16 車両側負荷(負荷)
18 コンデンサ
20 DC/ACインバータ(負荷)
22 モータ
24 発電機
26 プリチャージリレー
28 プリチャージ抵抗
30 プリチャージ回路
32 ケース
34 底壁
36 周壁
38 上面
40 第一固定部
42 第二固定部
44 第一伝熱シート(伝熱部材)
46 第二伝熱シート(伝熱部材)
48 下面
50 第一電力端子
52 第二電力端子
54 ネジ孔
56 固定脚部
58 挿通孔
60 第一通電部
62 第一バスバー
64 挿通孔
66 第二通電部
68 第二バスバー
70 ネジ
72 伝熱部材当接部
74 抵抗接続部
76 保持台座
78 固定部
80 挿通孔
82 プリチャージ抵抗装着部
84 プリチャージリレー装着部
86 入力用バスバー
88 当接面
90 当接面
図1
図2
図3
図4
図5