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  • 特許-車両のインストルメントパネル構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両のインストルメントパネル構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B60K37/00 Z
B60K37/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020059475
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021154970
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】清水 貞明
(72)【発明者】
【氏名】ガンニカー カーター
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-55615(JP,A)
【文献】特開昭57-037024(JP,A)
【文献】特開2003-335150(JP,A)
【文献】特開平10-291447(JP,A)
【文献】特開2014-177149(JP,A)
【文献】特開2013-126795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
B60R 13/01-13/04,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前方のインストルメントパネルに車両前後方向と交叉するベース面部が固定的に設けられるインストルメントパネル構造であって、
前記ベース面部から車両前方へ曲折する後曲折部と、前記後曲折部から車両前方へ延びる中間面部と、前記中間面部の前端から前記ベース面部と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部と、前記前曲折部から前記反ベース面部側へ延びる底面部とを有し、前記ベース面部から車両前方へ凹む凹空間を区画する曲折面部と、
前記前曲折部に沿って延びるように前記底面部に形成されるスリット穴形状の底スリットと、
前記底スリットから前記前曲折部を横断して前記中間面部へ延びるように前記曲折面部に形成されるスリット穴形状の中間スリットと、を備える
ことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項2】
前記ベース面部を有する組付パネルが前記インストルメントパネルに固定される請求項1に記載のインストルメントパネル構造であって、
前記底面部には、前記インストルメントパネルに固定されるパネル取付部が設けられ、
前記底スリットは、前記パネル取付部と前記前曲折部との間を横切るように延びる
ことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項3】
車室前方のインストルメントパネルに組付パネルが固定され、前記組付パネルが車両前後方向と交叉するベース面部を有するインストルメントパネル構造であって、
前記ベース面部から車両前方へ曲折する後曲折部と、前記後曲折部から車両前方へ延びる中間面部と、前記中間面部の前端から前記ベース面部と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部と、前記前曲折部から前記反ベース面部側へ延びる底面部とを有し、前記ベース面部から車両前方へ凹む凹空間を区画する曲折面部と、
前記前曲折部に沿って延びるように前記底面部に形成されるスリット穴形状の底スリットと、を備え、
前記底面部には、前記インストルメントパネルに取付けられるパネル取付部が設けられ、
前記底スリットは、前記前曲折部と前記パネル取付部との間を横切るように延びる
ことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のインストルメントパネル構造であって、
前記底面部は、矩形状の底開口を区画する枠形状であり、
前記底スリットは、前記底面部のうち前記底開口の開口幅の内側領域に形成され、前記開口幅の外側に延出しない
ことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【請求項5】
請求項4に記載のインストルメントパネル構造であって、
前記底スリットから前記前曲折部までの距離は、前記底スリットから前記底開口の開口縁部までの距離よりも短い
ことを特徴とするインストルメントパネル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車室前方のインストルメントパネルに車両前後方向と交叉するベース面部が固定的に設けられる車両のインストルメントパネル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車室の前方で車幅方向に沿って延びる樹脂製のインストルメントパネルのインパネ後面部の上部にインパネ中央開口を形成し、インパネ中央開口にラジオやオーディオ機器等の複数の車載機器を配置する構造が記載されている。インパネ後面部には、インパネ中央開口を含む被覆領域を後方から覆うように、センタークラスタパネルが取り付けられ、センタークラスタパネルには、車載機器の後面(操作面等)を車室側へ露出させる開口が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-55615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、インストルメントパネルに固定的に設けられて車両前後方向と交叉するベース面部(例えばインパネ後面部やセンタークラスタパネルなど)の所定位置に車載機器を配置して固定する構造において、ベース面部から車両前方へ曲折する後曲折部と、後曲折部から車両前方へ延びる中間面部と、中間面部の前端からベース面部と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部と、前曲折部から反ベース面部側へ延びる底面部とを有し、ベース面部から車両前方へ凹む凹空間を区画する曲折面部を設け、凹空間に車載機器を配置して固定する場合がある。
【0005】
しかし、インストルメントパネルに上記曲折面部を設ける構造では、曲折面部(特に後曲折部)によってベース面部の面剛性が増大する。このため、車両衝突時等において乗員が前方のインストルメントパネル側(ベース面部や曲折面部)に衝突した際に、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することが好ましい。
【0006】
そこで開示は、車両の衝突時にインストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することが可能なインストルメントパネル構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様は、車室前方のインストルメントパネルに車両前後方向と交叉するベース面部が固定的に設けられるインストルメントパネル構造であって、曲折面部と底スリットと中間スリットとを備える。
【0008】
曲折面部は、ベース面部から車両前方へ曲折する後曲折部と、後曲折部から車両前方へ延びる中間面部と、中間面部の前端からベース面部と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部と、前曲折部から反ベース面部側へ延びる底面部とを有し、ベース面部から車両前方へ凹む凹空間を区画する。底スリットは、スリット穴形状であり、前曲折部に沿って延びるように底面部に形成される。中間スリットは、スリット穴形状であり、底スリットから前曲折部を横断して中間面部へ延びるように曲折面部に形成される。
【0009】
上記構成では、車両衝突時等に乗員が前方のインストルメントパネル側(ベース面部や曲折面部)に衝突し、曲折面部に前方への荷重が入力すると、底スリット及び中間スリットが拡幅して三次元的に開口する。このため、ベース面部を前方へ大きく移動させることができ、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【0010】
本開示の第2の態様は、ベース面部を有する組付パネルがインストルメントパネルに固定される第1の態様のインストルメントパネル構造であって、底面部には、インストルメントパネルに固定されるパネル取付部が設けられ、底スリットは、パネル取付部と前曲折部との間を横切るように延びる。
【0011】
上記構成では、底スリットがパネル取付部と前曲折部との間を横切るように延びるので、曲折面部に前方への荷重が入力した際に底スリットが拡幅し易い。このため、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃をさらに緩和することができる。
【0012】
本開示の第3の態様は、車室前方のインストルメントパネルに組付パネルが固定され、組付パネルが車両前後方向と交叉するベース面部を有するインストルメントパネル構造であって、曲折面部と底スリットとを備える。
【0013】
曲折面部は、ベース面部から車両前方へ曲折する後曲折部と、後曲折部から車両前方へ延びる中間面部と、中間面部の前端からベース面部と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部と、前曲折部から反ベース面部側へ延びる底面部とを有し、ベース面部から車両前方へ凹む凹空間を区画する。底スリットは、スリット穴形状であり、前曲折部に沿って延びるように底面部に形成される。底面部には、インストルメントパネルに取付けられるパネル取付部が設けられ、底スリットは、前曲折部とパネル取付部との間を横切るように延びる。
【0014】
上記構成では、車両衝突時等に乗員が前方のインストルメントパネル側(ベース面部や曲折面部)に衝突し、曲折面部に前方への荷重が入力すると、底スリットが拡幅して開口する。また、底スリットがパネル取付部と前曲折部との間を横切るように延びるので、曲折面部に前方への荷重が入力する際に底スリットが拡幅し易い。このため、ベース面部を前方へ大きく移動させることができ、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【0015】
本開示の第4の態様は、第2又は第3の態様のインストルメントパネル構造であって、底面部は、矩形状の底開口を区画する枠形状である。底スリットは、底面部のうち底開口の開口幅の内側領域に形成され、開口幅の外側に延出しない。
【0016】
上記構成では、底スリットが底開口の開口幅の外側に延出しないので、底スリットによる組付パネルの剛性の低下を抑制しつつ、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【0017】
本開示の第5の態様は、第4の態様のインストルメントパネル構造であって、底スリットから前曲折部までの距離は、底スリットから底開口の開口縁部までの距離よりも短い。
【0018】
上記構成では、底スリットから前曲折部までの距離が底開口の開口縁部までの距離よりも短く、底スリットの位置が開口縁部よりも前曲折部に近い(前曲折部側に偏在している)ので、底スリットの位置が開口縁部側に偏在している場合に比べて、ベース面部に前方への荷重が入力した際に底スリットが拡幅し易い。このため、インストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃をさらに緩和することができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、車両の衝突時にインストルメントパネル側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係るインストルメントパネルを後方から視た斜視図である。
図2】ベゼルを表面側から視た斜視図である。
図3】ベゼルの下部を裏面側から視た後面図である。
図4】ベゼルの曲折面部の断面図であり、(a)は図3のIVa-IVa矢視断面図を、(b)は図3のIVb-IVb矢視断面をそれぞれ示す。
図5図3のV-V矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。各図において、FRは車両の前方を、UPは上方をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0022】
インストルメントパネル1は、車両の車室2の前方に配置され車体側に固定されて車幅方向に延びる樹脂製のパネルであり、図1に示すように、上下方向と交叉するインパネ上面部3と、インパネ上面部3の後端縁から下方へ延びるインパネ後面部4とを有する。インパネ後面部4の車幅方向中央の上部には、オーディオ機器等の車載機器5(図4参照)が配置されるインパネ中央開口(図示省略)が形成される。インパネ後面部4には、インパネ中央開口を含む領域を後方から覆うように、ベゼル(センタークラスタベゼル)6が取り付けられる。
【0023】
ベゼル6は、インパネ後面部4に対して後方から取付けられる樹脂製の化粧パネルであり、図2図5に示すように、前後方向と交叉するベース面部10と、ベース面部10から前方へ凹んで矩形状の凹空間11を区画する曲折面部12とを一体的に有する。ベース面部10はインストルメントパネル1に固定的に設けられ、ベース面部10を有するベゼル6は組付パネルを構成する。なお、一体的とは、一体成形されていることに加え、別体で成形されたものを固定することにより一体化することを含む。また、以下の説明において、ベゼル6に関する方向は、特に説明のない限り、ベゼル6をインパネ後面部4に取り付けたベゼル取付状態における方向を示す。
【0024】
曲折面部12は、ベース面部10から前方へ凹む階段形状であり、ベース面部10から前方へ曲折する後曲折部13と、後曲折部13から前方へ延びる中間面部14と、中間面部14の前端からベース面部10と対向しない反ベース面部側へ曲折する前曲折部15と、前曲折部15から反ベース面部側へ延びる底面部16とを有する。
【0025】
底面部16は、矩形状の底開口17を区画する枠形状である。底面部16には複数のボルト挿通孔19が形成され、ボルト挿通孔19を挿通するボルト(図示省略)によって車載部品5がベゼル6に締結固定される。底開口17は、ベゼル6に固定された車載機器5の前面を前方へ露出させる。
【0026】
底面部16の前面には、複数(本実施形態では、底開口17の上方に3箇所、下方に2箇所)のクリップ(パネル取付部)20が突設される。各クリップ20をインパネ後面部4に形成された矩形状のクリップ係止孔18に後方から挿入して係止することにより、底面部16がインパネ後面部4に取付けられる。また、ベゼル6には、曲折面部12以外の位置でベゼル6をインパネ後面部4へ取付けるための他の複数(図3にその一部を示す)のクリップ21が設けられている。
【0027】
曲折面部12には、1本の底スリット22と、左右に離間した2本の中間スリット27とが形成されている。底スリット22及び中間スリット27は、曲折面部12を貫通するスリット穴形状である。底スリット22と中間スリット27とは互いに連通し、底スリット22及び中間スリット27の拡幅により両者が一体となって三次元的に開口し得る。なお、底スリット22及び中間スリット27の数は上記に限定されず、任意に設定可能である。
【0028】
底スリット22は、底開口17の下方の底面部16で、クリップ20と前曲折部15との間を横切るように、前曲折部15に沿って車幅方向に直線状に延びる。中間スリット27は、底スリット22から前曲折部15を横断し、後方の後曲折部13に向かって中間面部14を直線状に延びる。
【0029】
底スリット22は、底面部16のうち底開口17の開口幅Dの内側領域23に形成され、開口幅Dの外側に延出しない。底開口17の開口幅Dの内側領域23とは、底開口17の左右の開口縁部24を下方へ延長した左右の境界線25の間の領域であり、底スリット22は、左右の境界線25を超えて左右に延出しない(図3参照)。また、底スリット22は、前曲折部15側に偏在し、底スリット22から前曲折部15までの距離L1は、底スリット22から底開口17の下方の開口縁部26までの距離L2よりも短い。
【0030】
本実施形態によれば、車両衝突時等に乗員が前方のインストルメントパネル1側(ベース面部10や曲折面部12)に衝突し、曲折面部12に前方への荷重が入力すると、底スリット22及び中間スリット27が拡幅して三次元的に開口する。このため、ベース面部10を前方へ大きく移動させることができ、インストルメントパネル1側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【0031】
底スリット22がクリップ20と前曲折部15との間を横切るように延びるので、曲折面部12に前方への荷重が入力した際に底スリット22が拡幅し易い。このため、インストルメントパネル1側から乗員が受ける衝撃をさらに緩和することができる。
【0032】
底スリット22が底開口17の開口幅Dの外側に延出しないので、底スリット22によるベゼル6の剛性の低下を抑制しつつ、インストルメントパネル1側から乗員が受ける衝撃を緩和することができる。
【0033】
また、底スリット22から前曲折部15までの距離L1が底開口17の開口縁部26までの距離L2よりも短く、底スリット22の位置が開口縁部26よりも前曲折部15に近い(前曲折部15側に偏在している)ので、底スリット22の位置が開口縁部26側に偏在している場合に比べて、ベース面部10に前方への荷重が入力した際に底スリット22が拡幅し易い。このため、インストルメントパネル1側から乗員が受ける衝撃をさらに緩和することができる。
【0034】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0035】
例えば、上記実施形態では、ベゼル6をインストルメントパネル1に固定し、ベゼル6にベース面部10及び曲折面部12を形成する例を説明したが、インストルメントパネル1にベース面部10及び曲折面部12を形成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、底面部16に底開口17を形成し、底開口17の下方の底面部16に底スリット22を形成する例を説明したが、底開口17の下方以外の底面部16に底スリット22を形成してもよく、また底面部16に底開口17を形成せずに底スリット22を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車室にインストルメントパネルを備えた車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1:インストルメントパネル
2:車室
3:インパネ上面部
4:インパネ後面部
5:車載機器
6:センタークラスタベゼル(組付パネル)
10:ベース面部
11:凹空間
12:曲折面部
13:後曲折部
14:中間面部
15:前曲折部
16:底面部
17:底開口
18:クリップ係止孔
19:ボルト挿通孔
20:クリップ(パネル取付部)
22:底スリット
23:開口幅の内側領域
24:底開口の左右の開口縁部
25:左右の境界線
26:底開口の下方の開口縁部
27:中間スリット
D:底開口の開口幅
L1:底スリットから前曲折部までの距離
L2:底スリットから開口縁部までの距離
図1
図2
図3
図4
図5