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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】外装部材及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20221125BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20221125BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20221125BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 623U
H01B7/00 301
F16L57/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018242160
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020108184
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】足立 英臣
(72)【発明者】
【氏名】小久江 健
(72)【発明者】
【氏名】鶴 正秀
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博之
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲生
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-315138(JP,A)
【文献】特開2013-165561(JP,A)
【文献】特開2018-181775(JP,A)
【文献】特開2018-143019(JP,A)
【文献】特開2018-120743(JP,A)
【文献】米国特許第5661263(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
B60R 16/02
H01B 7/00
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数本の導電路を中心にして該導電路を囲うようにそれぞれ遊挿状態に配設される少なくとも三本の樹脂製の保護用筒部と、
該保護用筒部の間に配設、及び/又は、一番内側の前記保護用筒部よりも更に内側に配設される性能確保部材とを備え、
該性能確保部材は、ワイヤハーネスに係る耐衝撃性、ノイズシールド性、耐熱性、耐水性、耐振動性、及び形状保持性のうち少なくとも一つの性能を確保するための部材として形成される
ことを特徴とする外装部材。
【請求項2】
請求項1に記載の外装部材において、
前記保護用筒部は、全本とも蛇腹管になるコルゲートチューブの形状、又は、少なくとも一番外側のものが可撓管部及びストレート管部を有するコルチューブの形状に形成される
ことを特徴とする外装部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の外装部材と、該外装部材の内側に挿通される一又は複数本の導電路とを備えて自動車に配索される
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側に導電路が挿通される外装部材、及び、この外装部材を備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車に配索されるワイヤハーネスは、一又は複数本の導電路と、この導電路が挿通される管体形状の外装部材とを備えて構成される。下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスは、外装部材として管軸方向に複数のコルゲートチューブを有し、隣り合うコルゲートチューブは、この端部同士がプロテクタにて連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-51042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、蛇腹管となるコルゲートチューブを備え、蛇腹管は比較的薄肉に形成されることから、一定以上の荷重が加わった場合にコルゲートチューブの破損が懸念される。また、蛇腹管となるコルゲートチューブは曲げ易くなる反面、形状保持をしたい場合には、その形状保持をしたい部分の形状に合わせて例えばプロテクタ等を付加する必要がある。別な言い方をすれば、形状保持性を確保する必要がある。尚、ワイヤハーネスに係る性能としては様々なものがある。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、破損し難く高性能な外装部材、及び、この外装部材を備えるワイヤハーネスの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の本発明の外装部材は、一又は複数本の導電路を中心にして該導電路を囲うようにそれぞれ遊挿状態に配設される少なくとも三本の樹脂製の保護用筒部と、該保護用筒部の間に配設、及び/又は、一番内側の前記保護用筒部よりも更に内側に配設される性能確保部材とを備え、該性能確保部材は、ワイヤハーネスに係る耐衝撃性、ノイズシールド性、耐熱性、耐水性、耐振動性、及び形状保持性のうち少なくとも一つの性能を確保するための部材として形成されることを特徴とする。
【0007】
このような請求項1の特徴を有する本発明によれば、少なくとも三重になる保護用筒部を備える構造であることから、外部から一定以上の荷重が加わった場合であっても破損し難くすることができる。また、本発明によれば、少なくとも三重になる保護用筒部をそれぞれ遊挿状態に配設する構造であることから、保護用筒部同士の間に空気層を持たせるようにすることができ、以て上記荷重が加わった場合であっても、空気層を持たせた構造であれば、保護用筒部同士で段階的に荷重を受けてこの荷重を緩和させることができる(荷重を軽減させることができる)。また、本発明によれば、ワイヤハーネスに係る性能を確保するための性能確保部材を備える構造であることから、性能確保部材によりワイヤハーネスの性能向上を図ることができる。また、本発明によれば、性能確保部材を保護用筒部の間に配設したり、一番内側の保護用筒部よりも更に内側に配設したりする構造であることから、例えば専用の部品を外装部材の外側に後付けしたりする場合と比べて、コスト低減、重量低減、小型化等を図ることができる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の外装部材において、前記保護用筒部は、全本とも蛇腹管になるコルゲートチューブの形状、又は、少なくとも一番外側のものが可撓管部及びストレート管部を有するコルチューブの形状に形成されることを特徴とする。
【0009】
このような請求項2の特徴を有する本発明によれば、コルゲートチューブやコルチューブの形状に形成される保護用筒部であることから、少なくとも蛇腹管になる部分を衝撃吸収部分(クッション部分)として活用することができる。また、コルチューブであれば、性能確保部材とは別にストレート管部に最初から形状保持性を持たせることができる。
【0010】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3に記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は2に記載の外装部材と、該外装部材の内側に挿通される一又は複数本の導電路とを備えて自動車に配索されることを特徴とする。
【0011】
このような請求項3の特徴を有する本発明によれば、請求項1又は2に記載の外装部材を備えることから、より良いワイヤハーネスの提供をすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、破損し難く高性能な外装部材、及び、この外装部材を備えるワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す模式的な図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す図である。
図2】ワイヤハーネスの構成を示す図(外装部材の最外層にコルゲートチューブを採用)である。
図3】ワイヤハーネスの構成を示す図(外装部材の最外層にコルチューブを採用)である。
図4図2の外装部材の構成を断面にて示す図である。
図5図3の外装部材の構成を断面にて示す図である。
図6図4のA-A線位置でのワイヤハーネスの構成を示す図である。
図7】衝撃吸収の作用を示す図である。
図8】衝撃吸収の作用を示す図である。
図9】衝撃吸収の作用を示す図である。
図10】衝撃吸収の作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ワイヤハーネスは、外装部材と、この外装部材の内側に挿通される一又は複数本の導電路とを備えて構成される。外装部材は、少なくとも三本の樹脂製の保護用筒部と、性能確保部材とを備えて構成される。少なくとも三本の保護用筒部は、導電路を中心にしてこれを囲うようにそれぞれ遊挿状態に配設される。また、性能確保部材は、保護用筒部の間に配設、及び/又は、一番内側の保護用筒部よりも更に内側に配設される。性能確保部材は、ワイヤハーネスに係る耐衝撃性、ノイズシールド性、耐熱性、耐水性、耐振動性、及び形状保持性のうち少なくとも一つの性能を確保するための部材として形成される。少なくとも三本の保護用筒部は、蛇腹管になるコルゲートチューブの形状に形成される。又は、少なくとも一番外側のものがコルチューブの形状に形成される。
【実施例
【0015】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの一実施形態を示す模式的な図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す図である。また、図2図3はワイヤハーネスの構成を示す図、図4図5は外装部材の構成を断面にて示す図、図6図4のA-A線位置でのワイヤハーネスの構成を示す図、図7図10は衝撃吸収の作用を示す図である。
【0016】
本実施例においては、ハイブリッド自動車に配索されるワイヤハーネスに本発明を採用するものとする。尚、ハイブリッド自動車に限らず、PHVや電気自動車のようなモータを駆動源とする自動車、或いは、エンジンのみで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする。また、エンジンに関しては、発電のためだけに用いられるものであってもよいものとする。この他、燃料電池自動車や自動運転車両であってもよいものとする。
【0017】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内の位置に搭載してもよいものとする)。
【0018】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0019】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0020】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni-MH系やLi-ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車等に使用可能な高電圧用のものであれば特に限定されないのは勿論である。
【0021】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。ワイヤハーネス15における引用符号19はハーネス本体を示す。また、引用符号20はコネクタを示す。
【0022】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。これら高圧のワイヤハーネス9及び低圧のワイヤハーネス15は、長尺なものである。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として高圧のワイヤハーネス9を挙げて以下に説明をする。先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0023】
<ワイヤハーネス9の構成について>
図1(a)及び図2(b)において、車両床下11を通って配索される長尺なワイヤハーネス9は、ハーネス本体21と、このハーネス本体21の両端末(ハーネス端末13)にそれぞれ配設されるシールドコネクタ14とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス9は、これ自身を所定位置に配索するためのクランプC(図2及び図3参照)と、図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0024】
<ハーネス本体21の構成について>
図2及び図3において、ハーネス本体21は、二本の長尺な導電路22(図6参照)を備えて構成される。また、ハーネス本体21は、図2の場合に外装部材23を、図3の場合には外装部材24を更に備えて構成される。このような構成のハーネス本体21は、二本の導電路22が外装部材23又は外装部材24の内側に挿通された状態のものに形成される。ハーネス本体21(ワイヤハーネス9)は、以下の説明で分かるようになるが、外装部材23、外装部材24の構成及び構造に特徴を有する。
【0025】
<導電路22について>
図6において、導電路22は、導電性の導体25と、この導体25を被覆する絶縁性の絶縁体26と、シールド機能を発揮させるための編組27(シールド部材)とを備えて構成される。すなわち、導電路22は、シースの存在しないものが採用される(一例であるものとする)。導電路22は、これにシースが存在しないことから、その分、軽量になるのは勿論である(導電路22は長尺であることから、従来例に比べ大幅に軽量化を図ることができるのは勿論である)。
【0026】
<導体25について>
図6において、導体25は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体25に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば丸単心となる導体構造であり、この場合、導電路自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体25は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体26が押出成形される。
【0027】
<絶縁体26について>
図6において、絶縁体26は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体25の外周面に押出成形される。絶縁体26は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体26は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0028】
<編組27について>
図6において、編組27は、導電路22の最外層として設けられる。このような編組27は、導電性を有する極細の素線を編んで筒状に形成される。また、編組27は、絶縁体26の一端から他端にかけて外周面全体を覆うような形状及びサイズに形成される。尚、編組27に限らず金属箔等をシールド部材として用いてもよいものとする。本実施例の編組27は、導電路22の最外層として設けられるが、二本の導電路22を一括して覆うようなものであってもよいものとする。
【0029】
<外装部材23、外装部材24について>
図2及び図4において、外装部材23は、三本のコルゲートチューブ28~30(保護用筒部)と、二つの性能確保部材31、32とを備えて構成される。外装部材23は、多層構造のものとなるように構成される。図3及び図5において、一方、外装部材24は、一番外側のコルチューブ33(保護用筒部)と、この内側となる二本のコルゲートチューブ29、30(保護用筒部)と、二つの性能確保部材31、32とを備えて構成される。外装部材24も多層構造のものとなるように構成される。外装部材23、24は、例えば車両の仕様に合わせて適宜選択されるものとする。
【0030】
外装部材23、外装部材24に関し、以下では、先ず一番外側のコルゲートチューブ28について説明をし、次に同じく一番外側のコルチューブ33について説明をするものとする。また、この後に、外装部材23、外装部材24に共通となる二本のコルゲートチューブ29、30について説明をし、最後に二つの性能確保部材31、32について説明をするものとする。
【0031】
<一番外側のコルゲートチューブ28について>
図2及び図4において、一番外側のコルゲートチューブ28は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、一本の真っ直ぐな管体形状に形成される(使用前は真っ直ぐである)。また、コルゲートチューブ28は、腹割きなしの形状に形成される(別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される))。さらに、コルゲートチューブ28は、二本の導電路22の配置及び形状に合わせて断面長円形状に形成される(形状は一例であり、円形状や楕円形状、矩形状等であってもよいものとする)。
【0032】
コルゲートチューブ28は、二本の導電路22を中心にして、この導電路22と、二本のコルゲートチューブ29、30及び二つの性能確保部材31、32とを囲うような形状に形成される。また、コルゲートチューブ28は、この内側の上記部材を保護することができるような形状に形成される。コルゲートチューブ28は、真ん中のコルゲートチューブ29に対し遊びを持たせた挿通状態、すなわち遊挿状態となるように配置形成される。別な言い方をすれば、コルゲートチューブ28は、真ん中のコルゲートチューブ29に対し密着せずに、空気層が介在するような状態に配置形成される。
【0033】
コルゲートチューブ28は、この全体が可撓性の可撓管部34になるような形状に形成される。可撓管部34は、ワイヤハーネス9の梱包状態や輸送時、さらには車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができるような部分に形成される。すなわち、可撓管部34は、撓ませて曲げ形状にすることができるような部分に形成される。また、真っ直ぐな元の状態(樹脂成形時の状態)に戻すこともできるような部分に形成される。可撓管部34は、図示の如く蛇腹管形状に形成される。すなわち、外面35の側から見て(外部から見て)周方向の蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37を有するような図示形状に形成される。また、可撓管部34は、蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37が管軸CL方向に交互に連続するような形状に形成される。尚、可撓管部34は、この内面38の側から見ると、上記蛇腹凹部36が凸状となるような形状に、また、上記蛇腹凸部37は凹状となるような形状に形成されるものとする。
【0034】
<一番外側のコルチューブ33について>
図3及び図5において、一番外側のコルチューブ33は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、一本の真っ直ぐな管体形状に形成される(使用前は真っ直ぐである)。また、コルチューブ33は、腹割きなしの形状に形成される。さらに、コルチューブ33は、二本の導電路22の配置及び形状に合わせて断面長円形状に形成される(形状は一例であり、円形状や楕円形状、矩形状等であってもよいものとする)。
【0035】
コルチューブ33は、二本の導電路22を中心にして、この導電路22と、二本のコルゲートチューブ29、30及び二つの性能確保部材31、32とを囲うような形状に形成される。また、コルチューブ33は、この内側の上記部材を保護することができるような形状に形成される。コルチューブ33は、この内側のコルゲートチューブ29に対し、遊挿状態となるように配置形成される。別な言い方をすれば、コルチューブ33は、コルゲートチューブ29に対し密着せずに、空気層が介在するような状態に配置形成される。以上から分かるように、コルチューブ33は、上記コルゲートチューブ28(図2及び図4参照)と同様の部分に形成される。
【0036】
コルチューブ33は、可撓性の可撓管部34と、導電路22をストレートに配索する部分としてのストレート管部39とを有するような、図示形状に形成される。コルチューブ33は、可撓管部34とストレート管部39とが管軸CL方向に複数形成される。また、これら可撓管部34とストレート管部39とが交互になるように配置形成される。コルチューブ33は、可撓管部34やストレート管部39が取付対象40の形状に合わせて配置形成される。また、取付対象40に合わせた長さにも形成される(取付対象40の形状に合わせて必要な長さにそれぞれ形成される)。コルチューブ33の可撓管部34は、上記コルゲートチューブ28の可撓管部34(図2及び図4参照)と同様の部分に形成される。尚、コルチューブ33は、コルゲートチューブ28の可撓管部34と同様の部分を部分的に有する管体であることから、ここでは「コルチューブ」と呼ぶものとする(この他、「部分形成コルゲートチューブ」などと呼んでもよいものとする)。
【0037】
ストレート管部39は、可撓管部34のような可撓性を持たない部分として形成される。また、ストレート管部39は、梱包状態や輸送時、さらには経路配索時において曲がらない部分としても形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。ストレート管部39は、長い直管形状に形成される。このようなストレート管部39の外周面(外面)は、凹凸のない形状に形成される(一例であるものとする)。ストレート管部39は、可撓管部34と比べ、リジッドな部分に形成される。このようなストレート管部39は、取付対象40に合わせた位置や長さに形成される。尚、複数あるうちの一番長いストレート管部39は、本実施例において、車両床下11に配置されるような部分として形成される。
【0038】
<二本のコルゲートチューブ29、30について>
図2ないし図5において、二本のコルゲートチューブ29、30は、絶縁性を有する樹脂成形品であって、それぞれ真っ直ぐな管体形状に形成される(使用前は真っ直ぐである)。また、二本のコルゲートチューブ29、30は、それぞれ腹割きなしの形状に形成される。さらに、二本のコルゲートチューブ29、30は、二本の導電路22の形状、及び、コルゲートチューブ28やコルチューブ33の形状に合わせて、断面長円形状に形成される。二本のコルゲートチューブ29、30は、二本の導電路22を中心にして、この導電路22を囲うような形状に形成される。このような二本のコルゲートチューブ29、30は、コルゲートチューブ28又はコルチューブ33の内側において、それぞれ遊挿状態に配設される。二本のコルゲートチューブ29、30は、互いに密着せずに、空気層が介在するような状態に配置形成される。
【0039】
二本のコルゲートチューブ29、30は、この全体が可撓性の可撓管部34になるような形状に形成される。二本のコルゲートチューブ29、30のそれぞれの可撓管部34は、上記コルゲートチューブ28の可撓管部34と同様の部分に形成される(蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37のサイズは小さくなるものとする)。
【0040】
尚、本実施例の外装部材23、外装部材24においては、コルゲートチューブ28やコルチューブ33の内側に二本のコルゲートチューブ29、30を配設する構成になっているが、これは一例であるものとする。すなわち、さらに内側にコルゲートチューブを追加して全体を四本構成にすることでもよいものとする。
【0041】
<二つの性能確保部材31、32について>
図4及び図5において、二つの性能確保部材31、32は、ワイヤハーネス9(図2及び図3参照)に係る性能を確保するための部材として備えられる。本実施例においては二つ備えられる(一例であるものとする)。二つのうちの一方の性能確保部材31は、コルゲートチューブ28とコルゲートチューブ29との間や、コルチューブ33とコルゲートチューブ29との間に配設される。他方の性能確保部材32は、コルゲートチューブ29、30の間に配設される。二つの性能確保部材31、32は、外装部材23、外装部材24の一端から他端にかけての範囲や、性能確保に必要な箇所のみに配設される。尚、一端から他端にかけての範囲の配設に関しては、性能確保部材31、32を筒状に形成すれば配設し易くなるのは勿論である。また、必要な箇所のみの配設に関しては、コルゲートチューブ29やコルゲートチューブ30の外周面に巻き付けてテープ等で固定すればよいものとする。この他、性能確保部材31のみ、又は、性能確保部材32のみで、上記位置に配設してもよいものとする。また、特に図示しないが、一番内側のコルゲートチューブ30よりも更に内側に性能確保部材を配設してもよいものとする。
【0042】
二つのうちの一方の性能確保部材31は、本実施例において耐衝撃性を確保するための部材として形成される。また、他方の性能確保部材32は、耐振動性を確保するための部材として形成される。尚、上記性能の他には、ノイズシールド性、耐熱性、耐水性、及び形状保持性が挙げられ、これらのうちの少なくとも一つの性能を確保することができるように形成されるものとする(上記性能は一例であるものとする)。本実施例においては、導電路22の構成に編組27(図6参照)を含むことから、上記ノイズシールド性を確保する必要性はないが、仮に編組27なしの導電路22を採用するのであれば、性能確保部材31は編組や金属箔で形成されるものとする。
【0043】
上記耐衝撃性を確保することに関しては、例えばスポンジやゴムシート等の衝撃吸収材(衝撃緩和材)の採用が可能であるものとする。また、上記耐振動性を確保することに関しては、例えば導電路22が走行中の振動でばたつかないようにするためのものや、導電路22とコルゲートチューブ30との擦れを低減するようなものの採用が可能であるものとする。また、上記耐熱性や耐水性を確保することに関しては、例えば耐熱性シートや耐水性シートの採用が可能であるものとする。また、上記形状保持性を確保することに関しては、例えば管軸CL方向にのびる添え木状のものや、ストレートな管体の採用が可能であるものとする。
【0044】
<耐衝撃性に係る効果について>
本実施例においては、図4及び図5に示す如く耐衝撃性を確保するための部材として、性能確保部材31がコルゲートチューブ28とコルゲートチューブ29との間や、コルチューブ33とコルゲートチューブ29との間に配設される。耐衝撃性のある性能確保部材31が配設されることにより、外部から一定以上の荷重が加わった場合であっても(衝撃が加わった場合であっても)、ワイヤハーネス9の(外装部材23、外装部材24の)破損をし難くすることができる。尚、破損をし難くすることができるのは、性能確保部材31があるのは勿論のこと、この他に別な要因もある。すなわち、外装部材23が三本のコルゲートチューブ28~30にて三重となる構造、且つ、空気層が介在する構造になっていることや、外装部材24がコルチューブ33と二本のコルゲートチューブ29、30にて三重となる構造、且つ、空気層が介在する構造になっていることが要因として挙げられる。以下、三重で空気層のある構造の作用について説明をする。
【0045】
<三重で空気層のある構造の作用について>
以下、外部から一定以上の荷重が加わった場合の(衝撃が加わった場合の)、三重で空気層のある構造の作用について説明をする。尚、ここでは性能確保部材31が存在しない状態での説明になるものとする。この他、図7ないし図10に、コルゲートチューブ29よりも内側に配設される部材(コルゲートチューブ30等)が示されていないが、これは便宜上そのようにしているものとする。
【0046】
図7(a)において、一番外側のコルゲートチューブ28(図中では上側)と、この内側のコルゲートチューブ29(図中では下側)との間には、空気層が存在する。つまり、これらは遊挿状態に配置される。このような配置の状態において、コルゲートチューブ28に対し外部から一定以上の荷重が加わった場合、先ずコルゲートチューブ28は樹脂製であることから撓みが生じ、そして図中下方に移動するようになる(撓みの図示は省略するものとする)。この時、コルゲートチューブ28の撓みによって上記荷重が軽減されることになる。
【0047】
次にコルゲートチューブ28が下方に移動するように撓むと、図7(a)の下向きの矢印に示す如く、コルゲートチューブ28はこの蛇腹凹部36がコルゲートチューブ29の蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37間の斜面に当接するようになる。この時、上記荷重がコルゲートチューブ29の側に伝わり、樹脂製のコルゲートチューブ29にも撓みが生じるようになる。コルゲートチューブ28の当接を受けてコルゲートチューブ29に撓みが生じることは、上記荷重が更に軽減されることになる。そして、ここでは図示していないが、コルゲートチューブ29の内側に(図中下側に)、更にコルゲートチューブ30が空気層を介在させた状態で存在することから、上記荷重は一層軽減されることになる。従って、図7(a)に示す構造は、段階的に荷重を軽減させることができるようになることから、外装部材23の破損は起こらず、結果、導電路22にまで影響が及んでしまうことはない。
【0048】
図7(b)において、一番外側のコルゲートチューブ28(図中では上側)と、この内側のコルゲートチューブ29(図中では下側)との間には、空気層が存在する。つまり、これらは遊挿状態に配置される。また、図7(a)と比べて蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37の位置関係が左右に若干ずれた状態に配置される。このような配置となる状態において、コルゲートチューブ28に対し外部から一定以上の荷重が加わった場合、先ずコルゲートチューブ28は樹脂製であることから撓みが生じ、そして図中下方に移動するようになる(撓みの図示は省略するものとする)。この時、上記荷重はコルゲートチューブ28の撓みによって軽減されることになる。
【0049】
次にコルゲートチューブ28が下方に移動するように撓むと、図7(b)の下向きの矢印に示す如く、コルゲートチューブ28はこの蛇腹凹部36の底部がコルゲートチューブ29の蛇腹凸部37の頂部に当接するようになる。この時、上記荷重がコルゲートチューブ29の側に伝わり、樹脂製のコルゲートチューブ29にも撓みが生じるようになる。コルゲートチューブ28の当接を受けてコルゲートチューブ29に撓みが生じることは、上記荷重が更に軽減されることになる。そして、ここでは図示していないが、コルゲートチューブ29の内側に(図中下側に)、更にコルゲートチューブ30が空気層を介在させた状態で存在することから、上記荷重は一層軽減されることになる。従って、図7(b)に示す構造は、段階的に荷重を軽減させることができるようになることから、外装部材23の破損は起こらず、結果、導電路22にまで影響が及んでしまうことはない。
【0050】
図8(a)及び(b)において、ここでの例は、図7(a)及び(b)の例に対しコルゲートチューブ29の蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37の形状を断面略円弧状に変更したものである。このような形状変更となる図8(a)及び(b)の例は、図7(a)及び(b)の例と同様の作用・効果が得られるのは勿論である。
【0051】
図9において、一番外側のコルチューブ33(図中では上側)と、この内側のコルゲートチューブ29(図中では下側)との間には、空気層が存在する。つまり、これらは遊挿状態に配置される。このような配置の状態において、コルチューブ33の可撓管部34に対し外部から一定以上の荷重が加わった場合、図7(a)及び(b)の例と同様の作用・効果が得られるのは勿論である。一方、コルチューブ33のストレート管部39に対し外部から一定以上の荷重が加わった場合、コルチューブ33は樹脂製であることから撓みが生じ、ストレート管部39は図中下方に移動するようになる(撓みの図示は省略するものとする)。この時、上記荷重はストレート管部39の撓みによって軽減されることになる。
【0052】
次にストレート管部39が下方に移動するように撓むと、図9の下向きの矢印に示す如く、ストレート管部39の近傍の可撓管部34はこの蛇腹凹部36がコルゲートチューブ29の蛇腹凹部36及び蛇腹凸部37間の斜面に当接するようになる。また、ストレート管部39もコルゲートチューブ29の蛇腹凸部37に当接又は近傍位置で対向するようになる。この時、上記荷重がコルゲートチューブ29の側に伝わり、樹脂製のコルゲートチューブ29にも撓みが生じるようになる。可撓管部34(及びストレート管部39)の当接を受けてコルゲートチューブ29に撓みが生じることは、上記荷重が更に軽減されることになる。そして、ここでは図示していないが、コルゲートチューブ29の内側に(図中下側に)、更にコルゲートチューブ30が空気層を介在させた状態で存在することから、上記荷重は一層軽減されることになる。従って、図9に示す構造も段階的に荷重を軽減させることができるようになることから、外装部材24の破損は起こらず、結果、導電路22にまで影響が及んでしまうことはない。
【0053】
尚、図7図9と同様の効果を得るために、図10に示す如くの構造を採用してもよいものとする。すなわち、一番外側のコルゲートチューブ28の例えば蛇腹凹部36の位置や、コルチューブ33の例えば蛇腹凹部36の位置に、編組41(性能確保部材)が一体化するような構造を採用してもよいものとする。
【0054】
<外装部材23、24及びワイヤハーネス9の効果について>
以上、図1ないし図10を参照しながら説明してきたように、外装部材23、24によれば、少なくとも三重になる保護用筒部(外装部材23の場合はコルゲートチューブ28~30、外装部材24の場合はコルチューブ33及びコルゲートチューブ29、30)を備える構造であることから、外部から一定以上の荷重が加わった場合であっても破損し難くすることができる。また、外装部材23、24によれば、少なくとも三重になる上記保護用筒部をそれぞれ遊挿状態に配設する構造であることから、保護用筒部同士の間に空気層を持たせるようにすることができ、以て上記荷重が加わった場合であっても、空気層を持たせた構造であれば、保護用筒部同士で段階的に荷重を受けてこの荷重を緩和させることができる(荷重を軽減させることができる)。また、外装部材23、24によれば、ワイヤハーネス9に係る性能を確保するための性能確保部材31、32を備える構造であることから、性能確保部材31、32によりワイヤハーネス9の性能向上を図ることができる。また、外装部材23、24によれば、性能確保部材31、32を上記保護用筒部の間に配設したり、一番内側の保護用筒部(コルゲートチューブ30)よりも更に内側に配設したりする構造であることから、例えば専用の部品を従来の外装部材の外側に後付けしたりする場合と比べて、コスト低減、重量低減、小型化等を図ることができる。
【0055】
従って、外装部材23、24によれば、破損し難く高性能なものを提供することができるという効果を奏する。また、ワイヤハーネス9によれば、上記効果の外装部材23、24を備えることから、より良いものを提供することができるという効果を奏する。
【0056】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0057】
1…ハイブリッド自動車(自動車)、 2…エンジン、 3…モータユニット、 4…インバータユニット、 5…バッテリー、 6…エンジンルーム、 7…自動車後部、 8、9…ワイヤハーネス、 10…中間部、 11…車両床下、 12…ジャンクションブロック、 13…ハーネス端末、 14…シールドコネクタ、 15…ワイヤハーネス、 16…低圧バッテリー、 17…自動車前部、 18…補器、 19…ハーネス本体、 20…コネクタ、 21…ハーネス本体、 22…導電路、 23、24…外装部材、 25…導体、 26…絶縁体、 27…編組、 28~30…コルゲートチューブ(保護用筒部)、 31、32…性能確保部材、 33…コルチューブ(保護用筒部)、 34…可撓管部、 35…外面、 36…蛇腹凹部、 37…蛇腹凸部、 38…内面、 39…ストレート管部、 40…取付対象、 41…編組(性能確保部材)、 C…クランプ、 CL…管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10