(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】化粧料インク、これを含むインクジェット印刷用インク、およびインクカートリッジ、ならびに化粧用シート、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20221125BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20221125BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20221125BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20221125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221125BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221125BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221125BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20221125BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/19
A61K8/25
A61K8/29
A61K8/37
A61K8/73
A61K8/81
A61Q1/02
A61Q19/00
B41J2/01 125
B41J2/01 501
B41M5/00 100
B41M5/00 120
C09D11/322
C09D11/40
(21)【出願番号】P 2019527592
(86)(22)【出願日】2018-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2018021636
(87)【国際公開番号】W WO2019009002
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2017130382
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017245242
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 真里
(72)【発明者】
【氏名】篠田 雅世
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-105373(JP,A)
【文献】特開2015-193604(JP,A)
【文献】国際公開第2015/191823(WO,A2)
【文献】特表2005-505505(JP,A)
【文献】特開2016-216675(JP,A)
【文献】特開2017-057261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/02
A61K 8/19
A61K 8/25
A61K 8/29
A61K 8/37
A61K 8/73
A61K 8/81
A61Q 1/02
A61Q 19/00
B41J 2/01
B41M 5/00
C09D 11/322
C09D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒子径が125nm以上2μm以下、かつ粒度分布の積算値の90%の値(D90)が3000nm以下の反射剤と、
(B)
グリセリン、または炭素数3以上
5以下の2価アルコールと、
(C)精製水と、
(D)皮膜形成剤と、
(F)粒子径が、30nm以上150nm以下である
(メタ)アクリル系樹脂からなる粒子と、
を含み、
前記(D)皮膜形成剤が
、前記(B)グリセリン、または炭素数3以上5以下の2価アルコール、および/または前記(C)精製水に可溶な化合物であり、かつアクリル系ポリマー、多糖類系ポリマー
、およびダイマージリノール酸ジリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)・水添ロジン酸トリグリセリルからなる群から選ばれる、一種以上の化合物である、
化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項2】
前記反射剤(A)は、白色顔料、白色体質粉体、光輝性粉体、有機低分子性粉体、天然有機粉体、金属粉体、微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、および酸化亜鉛含有二酸化珪素からなる群から選ばれる、一種以上の化合物である、
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項3】
(E)色材をさらに含む、
請求項1または請求項2に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項4】
前記(E)色材の平均粒子径が125nm以上2μm以下である、
請求項
3に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項5】
コーンプレート型粘度計にて、せん断速度1000(1/s)にて測定したときの25℃における粘度が50mPa・s以下である、
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項6】
pHが6~10である、
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項7】
表面張力が50mN/m以下である、
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インク。
【請求項8】
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インクを含む、
インクジェット印刷用インク。
【請求項9】
請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インクを含む、
インクカートリッジ。
【請求項10】
組成の異なる複数のインクを順次、被印刷体上に塗布して、化粧用シートを製造する工程と、
前記被印刷体に塗布されたインクを乾燥させる工程と、
を含み、
前記複数のインクのうち、少なくとも1つのインクが、請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インクである、化粧用シートの製造方法。
【請求項11】
前記被印刷体の厚みが、10μm以下である、
請求項
10に記載の化粧用シートの製造方法。
【請求項12】
得られる化粧用シートの波長380~780nmの光の透過率が70%以下である、
請求項
10に記載の化粧用シートの製造方法。
【請求項13】
シートと、
前記シート上に形成された、請求項1に記載の化粧用シート形成用化粧料インクの固化物からなる皮膜と、
を有する、化粧用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、隠蔽性もしくは乾燥性が良好な化粧料インク、これを含むインクジェット印刷用インク、およびインクカートリッジ、ならびに化粧用シート、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、色材と、グリセリン等の湿潤剤と、を含む水性インクが知られている。従来の一般的な水性インクは、例えば紙等、吸液性の高い基材に印刷することを前提としており、低吸液性の基材に印刷した場合には、印字濃度や、耐擦過性等を十分に満足できるものではなかった。
【0003】
このような課題に対し、例えば特許文献1には、顔料を含有する、不溶性ポリマー粒子と、顔料と、有機溶媒と、水と、を含有するインクジェットインクが開示されている。
【0004】
一方、従来、皮膚に直接塗布する化粧料として、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、固形油、高級アルコール、精製水等を含む化粧料が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-13990号公報
【文献】特開2010-256470号公報
【発明の概要】
【0006】
近年、非常に薄く、かつ可視光透過性を有する被印刷体に印刷を行い、これを化粧用シートとして皮膚に貼り付けること等が、本発明者らによって検討されている。そこで、このような化粧用シートの作製に際し、シートへの化粧料として、従来の紙へ印刷するインク、例えば、特許文献1に記載のインクジェットインク等を使用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載の従来のインクジェットインク等では、可視光透過性を有する被印刷体に塗布した際、塗膜が光を透過しやすい。
【0007】
一方、従来の化粧料、例えば特許文献2に記載の化粧料等を、被印刷体に直接印刷することも考えられる。しかしながら、従来の化粧料を印刷しただけでは、乾燥に時間がかかるなどの課題がある。
【0008】
本開示の化粧料インクは、(A)反射剤と、(B)炭素数3以上の高級アルコールと、(C)精製水と、(F)バインダと、を含む。
【0009】
本開示の化粧シートは、シートと、前記シート上に形成された、前記化粧料インクの固化物からなる皮膜と、を有する。
【0010】
本開示の化粧料インクの一態様によれば、透過性の高いシート上に、隠蔽性の高い画像を形成可能である。また、本開示の他の態様の化粧料インクによれば、印刷後のインクの乾燥性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】標準肌模型上に形成したシミ模型を示す写真である。
【
図2】比較例Aおよび実施例Aの化粧料インクからスキージで作製した塗膜をシミ模型上にかざした場合の写真である。
【
図3】比較例Aおよび実施例Aの化粧料インクからスキージで作製した塗膜の波長380nm~780nmの光の透過率を示すグラフである。
【
図4A】比較例Aの化粧料インクからインクジェット装置で作製した塗膜をシミ模型上にかざした場合の写真である。
【
図4B】実施例Aの化粧料インクからインクジェット装置で作製した塗膜をシミ模型上にかざした場合の写真である。
【
図5】比較例Aおよび実施例Aの化粧料インクからインクジェット装置で作製した塗膜の波長200nm~1000nmの光の透過率を示すグラフである。
【
図6】化粧料インク中の(D)皮膜形成剤(鎖状化合物および環状化合物)の合計体積に対する、環状化合物の体積分率と、化粧料インクの乾燥時間との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の実施形態の基礎となった知見)
近年、非常に薄く、かつ可視光透過性を有する被印刷体に印刷を行い、これを化粧用シートとして皮膚に貼り付けること等が、本発明者らによって検討されている。そこで、このような化粧用シートの作製に際し、特許文献1に記載のインクジェットインク等を使用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のインクジェットインク等では、可視光透過性を有する被印刷体に塗布した際、塗膜が光を透過しやすく、化粧用シートを貼着した部材(例えば肌)の色等が透けやすかった。つまり、シミ等に対して隠蔽性の高い化粧用シートが得られ難かった。また、特許文献1に記載のインクジェットインクは、吸液性の少ない被印刷体に印刷した場合には、乾燥までに時間がかかる、との課題もあった。
【0013】
一方、従来の化粧料、例えば特許文献2に記載の化粧料等を、被印刷体に直接印刷することも考えられる。しかしながら、従来の化粧料を印刷しただけでは、乾燥に時間がかかったり、塗膜の耐擦過性等が十分ではない等の課題があった。さらに、従来の化粧料では、各種印刷装置によって印刷することが難しく、隠蔽性の高い化粧用シート等を安定して作製することが難しい、との課題もあった。
【0014】
本開示の実施形態は、このような課題を鑑みてなされたものである。本開示の実施形態は、光透過性の高いシートに印刷した際に、隠蔽性の高い画像を形成可能な化粧料インクや、これを用いた化粧用シートの製造方法、等を提供する。また、本開示は、乾燥性が良好な化粧料インク、およびこれを用いた化粧用シートの製造方法等を提供する。
【0015】
1.化粧料インク
本開示の化粧料インクは、化粧用シートを作製するためのインクである。当該インクを用いて形成された化粧用シートは、例えば肌に貼着して用いられ、肌の彩色や、美化等に用いられる。ただし、当該化粧料インクは、メイクアップ等の化粧用途のみならず、日焼け止め等のスキンケア用途、医療用途、さらにはプラスチックフィルムの加飾などの工業的な用途にも利用可能である。本開示の化粧料インクは、その組成により、2つの実施形態がある。以下、2つの実施形態について、それぞれ説明する。
【0016】
1-1.第1の実施形態
本開示の第1の実施形態の化粧料インクには、(A)反射剤と、(B)炭素数3以上の高級アルコールと、(C)精製水と、(F)バインダと、が含まれる。前述のように、化粧用シートを作製するためのインクには、当該インクから得られる印刷物の光透過性が低いこと(隠蔽性が高いこと)が求められるが、従来の一般的なインクジェットインク等では、作製される印刷物の光透過性が高く、隠蔽性の高い印刷物を得ることが難しかった。また、従来の一般的な化粧料は、各種印刷装置により安定して印刷することが難しく、この場合にも隠蔽性の高い膜を有する化粧シートを安定して作製することは難しかった。
【0017】
これに対し、本実施形態の化粧料インクには(A)反射剤が含まれている。化粧料インクに(A)反射剤が含まれると、(A)反射剤が光を散乱もしくは反射する。したがって、作製される印刷物の可視光透過性が非常に低くなり、例えばシミ等を十分に隠蔽することが可能な、化粧用シートを得ることが可能となる。
【0018】
なお、本実施形態の化粧料インクには、上記の各成分以外に、必要に応じて(E)色材や皮膜形成剤、各種添加剤等がさらに含まれていてもよい。以下、本実施形態の化粧料インクに含まれる各成分について詳しく説明する。
【0019】
<(A)反射剤>
本実施形態の化粧料インクに含まれる(A)反射剤は、紫外光および可視光(例えば、波長200~780nmの光)を散乱もしくは反射する粒子であり、印刷物(作製される画像)の隠蔽性を高めることが可能なものであれば特に制限されない。
【0020】
(A)反射剤は、皮膚刺激性がないものであることが好ましく、その例には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、硫酸バリウム等の白色顔料;タルク、白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、合成雲母、絹雲母(セリサイト)、合成セリサイト、カオリン、炭化珪素、ベントナイト、スメクタイト、無水ケイ酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、珪ソウ土、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の白色体質粉体;ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆ガラス末、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆マイカ、二酸化チタン被覆タルク、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化鉄被覆ガラス末、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末等の光輝性粉体;N-アシルリジン等の有機低分子性粉体;シルク粉末、セルロース粉末等の天然有機粉体;アルミニウム粉、金粉、銀粉等の金属粉体;微粒子酸化チタン被覆雲母チタン、微粒子酸化亜鉛被覆雲母チタン、硫酸バリウム被覆雲母チタン、酸化チタン含有二酸化珪素、酸化亜鉛含有二酸化珪素等の複合粉体;等が含まれる。化粧料インクには、(A)反射剤が一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。これらの中でも、隠蔽性の高い化粧用シートが得られやすいとの観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、および酸化マグネシウムが好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、および酸化セリウムが特に好ましい。
【0021】
また、(A)反射剤の形状は特に制限されず、球状であってもよく、板状や針状等であってもよい。ただし、(A)反射剤の平均粒子径は125nm以上2μm以下であることが好ましい。平均粒子径が125nm以上であると、得られる印刷物の隠蔽性が高まりやすく、例えばシミを隠蔽する化粧用シート等を得やすくなる。一方、平均粒子径が2μm以下であると、各種印刷装置(例えば、インクジェット装置等)から化粧料インクを塗布することが可能となる。上記平均粒子径は、レーザ回折法で測定される粒度分布の積算値の中央値(D50)である。なお、(A)反射剤の平均粒子径は、平均粒子径(D50)が125nm以上1000nm以下であることがより好ましく、平均粒子径(D50)が125nm以上1000nm以下、かつ当該粒度分布の積算値の90%の値(D90)が3000nm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
化粧料インク100質量部に含まれる(A)反射剤の量は、10~30質量部であることが好ましい。(A)反射剤の量が10質量部以上であると、塗膜の隠蔽性が高まりやすくなる。一方、(A)反射剤の量が30質量部以下であると、化粧料インクの粘度が過度に高まらず、各種印刷装置によって印刷しやすくなる。
【0023】
<(B)高級アルコール>
本実施形態の化粧料インクに含まれる高級アルコールは、炭素数が3以上であり、(C)精製水と相溶する高級アルコールであれば特に制限されない。(B)高級アルコールは化粧料インクの溶媒としての機能を果たす。なお、(B)高級アルコールは、化粧料インクを被印刷体に印刷した後、被印刷体に吸収されたり、揮発したりする。
【0024】
(B)高級アルコールの炭素数は、3~5であることが好ましく、3または4であることがより好ましい。(B)高級アルコールの炭素数が当該範囲であると、(C)精製水と相溶しやすくなる。
【0025】
また、(B)高級アルコールには、3価のアルコールが含まれることが好ましい。(B)高級アルコールとして、3価のアルコールが含まれるが含まれると、各種印刷装置内部で、(B)高級アルコールや(C)精製水が過度に揮発し難くなる。その結果、安定して印刷装置から印刷することが可能となる。またこの場合、化粧料インクの粘度が一定に保持されるため、安定して所望の画像を形成することが可能となる。
【0026】
ここで、3価のアルコールは、皮膚刺激性がないものであれば特に制限されないが、グリセリンであることが好ましい。グリセリンは生体安全性が高い。また、化粧料インクにグリセリンが含まれると、(A)反射剤や後述の(E)色材等の凝集が抑制されやすく、化粧料インクを長期間保存しても、インクの増粘等が生じ難くなる。
【0027】
一方で、(B)高級アルコールには、2価のアルコールや1価のアルコールが含まれていてもよい。2価のアルコールの例には、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール等が含まれる。1価のアルコールの例には、プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコール等が含まれる。これらの中でも、好ましくは2価のアルコールであり、特にプロピレングリコールが好ましい。2価のアルコールは、(C)精製水や3価のアルコールより粘度が低く、さらに表面張力が低い。したがって、化粧料インクに2価のアルコールが含まれると、化粧料インクの被印刷体に対する濡れ性が良好になり、得られる画像にムラが生じ難くなる。
【0028】
化粧料インク100質量部に含まれる(B)高級アルコールの総量は、20質量部以下であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましい。(B)高級アルコール量が過剰になると、(A)反射剤等が凝集しやすくなる傾向がある。これに対し、(B)高級アルコール量が20質量部以下であれば、(A)反射剤の凝集等が生じ難く、化粧料インクを各種印刷装置から安定して吐出させることが可能となる。
【0029】
また、化粧料インク100質量部に対する3価のアルコールの量は、化粧料インクの印刷方法に応じて適宜選択される。例えば、化粧料インクをインクジェット装置から印刷する場合には、その量が20質量部以下であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましい。3価のアルコール量が上記範囲であると、化粧料インクにおいて、(B)高級アルコールや(C)精製水の揮発性が適度に調整されて、化粧料インクをインクジェット装置から安定して吐出させやすくなる。
【0030】
さらに、化粧料インク100質量部に対する2価のアルコールの量も、化粧料インクの印刷方法に応じて適宜選択される。例えば、化粧料インクをインクジェット装置から印刷する場合には、その量が20質量部以下であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましい。2価のアルコール量が上記範囲であると、化粧料インクの粘度が所望の範囲に収まりやすくなる。
【0031】
<(C)精製水>
本実施形態の化粧料インクには、(C)精製水が含まれる。(C)精製水も化粧料インクの溶媒としての機能を果たし、(C)精製水は、化粧料インクを被印刷体に印刷した後、被印刷体に吸収されたり、揮発したりする。
【0032】
(C)精製水は、化粧料に一般的に用いられるものであれば特に制限されず、蒸留やイオン交換等、各種方法によって精製した水であってもよく、例えば温泉水、深層水、植物の水蒸気蒸留水等であってもよい。
【0033】
化粧料インク100質量部に対する(C)精製水の量は、10質量部以上であることが好ましく、20質量部以上であることがより好ましい。
【0034】
<(F)バインダ>
本実施形態の化粧料インクには、(F)バインダが含まれる。(F)バインダは、(A)反射剤や、後述の(E)色材等を、被印刷体に結着するための化合物である。本明細書において、「バインダ」は、(B)高級アルコールおよび(C)精製水に不溶の粒子状の樹脂とする。化粧料インクには、(F)バインダが一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。
【0035】
(F)バインダの例には、(メタ)アクリル酸アルキル重合体、スチレン・(メタ)アクリル共重合体、(メタ)アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリルアルキル共重合体、(メタ)アクリル酸アルキルジメチコン重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;酢酸ビニル重合体;ビニルピロリドン・スチレン共重合体;等からなる粒子が含まれる。なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル、メタクリル、およびアクリルとメタクリルとの混合体を表すものとする。
【0036】
上記の中でも、(F)バインダは(メタ)アクリル系樹脂からなる粒子(以下、単に「アクリル系粒子」とも称する)であることが好ましい。(F)バインダが、アクリル系粒子からなると、(A)反射剤や(E)色材の定着性が良好になりやすく、さらに印刷物の耐久性が良好になりやすい。(F)バインダは、皮膚刺激性のない(メタ)アクリル系樹脂からなることがさらに好ましい。アクリル系粒子は、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、EU化粧品規制(Cosmetics Directive 76/768/EEC)に則った成分、米国CTFA(Cosmetic,Toiletry & Fragrance Association,U.S.)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(2002年1月1日、9th版)に記載されている成分等から選択されることが好ましく、公知の化粧料等に適用されているアクリル系樹脂の粒子とすることができる。
【0037】
アクリル系粒子を構成する(メタ)アクリル系樹脂の具体例には、(メタ)アクリル系モノマーの単独重合体や、二種以上の(メタ)アクリル系モノマーの共重合体、(メタ)アクリル系モノマーと他のモノマーとの共重合体等が含まれる。
【0038】
上記(メタ)アクリル系モノマーの例には、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸アミド、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エチル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ハイドロキシエチル、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、等が含まれる。
【0039】
また、上記(メタ)アクリル系モノマーと共重合可能な他のモノマーの例には、スチレン、酢酸ビニル、シリコーンマクロマー、フッ素系モノマー、アルコキシシラン不飽和単量体等が含まれる。
【0040】
ここで、(F)バインダの平均粒子径は、30nm~150nmであることが好ましい。上記平均粒子径は、レーザ回折法で測定される粒度分布の積算値の中央値(D50)である。また、平均粒子径(D50)が30nm~150nm、かつ当該粒度分布の積算値の90%の値(D90)が250nm以下であることがさらに好ましい。(F)バインダの平均粒子径が当該範囲であると、(A)反射剤や(E)色材等が被印刷体に結着されやすくなる。
【0041】
また、化粧料インク100質量部に含まれる(F)バインダの量は、10質量部以下であることが好ましく、2.5~10質量部であることがより好ましい。(F)バインダの量は、2.5質量部未満であってもよいが、2.5質量部以上であると、被印刷体に対する、化粧料インクのインク弾きが少なくなる。一方、(F)バインダの量が過度に多いと、化粧料インクの粘度が過度に高くなることがあるが、10質量部以下であれば、各種印刷法により印刷しやすい粘度とすることができる。
【0042】
さらに、化粧料インク中に含まれる(A)反射剤および(E)色材の量を10質量部としたとき、(F)バインダの量は、0.5~10質量部であることが好ましく、1.5~5.7質量部であることがより好ましい。(A)反射剤および(E)色材の量に対する(F)バインダの量が上記範囲であると、化粧料インクから得られる印刷物において、(A)反射剤や(E)色材の定着性が高まる。ただし、(F)バインダの量が過剰であると、前述のように、化粧料インクの粘度が過度に高まりやすくなる。
【0043】
なお、(F)バインダは、化粧料インク調製の際、通常、分散媒に分散させた状態(スラリーや分散液)で、(A)反射剤や(B)高級アルコール、(C)精製水等と混合される。このときの分散媒についても、皮膚刺激性がない溶媒であることが好ましく、上述の高級アルコールや水であることが好ましい。
【0044】
<その他>
本実施形態の化粧料インクには、上述のように、必要に応じて(E)色材や皮膜形成剤、各種添加剤等がさらに含まれていてもよい。
【0045】
化粧料インクに含まれる(E)色材の種類は特に制限されないが、皮膚刺激性の観点から、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、EU化粧品規制(Cosmetics Directive 76/768/EEC)に則った成分、米国CTFA(Cosmetic,Toiletry & Fragrance Association,U.S.)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(2002年1月1日、9th版)に記載されている成分等から選択されるものであることが好ましい。(E)色材は、公知の無機顔料や有機顔料、染料のいずれであってもよい。当該(E)色材は、作製する化粧用シートの色や外観に応じて、適宜選択される。(E)色材には、例えば化粧用シートを着色するための有色顔料や有色染料だけでなく、化粧用シートに光沢を付与するためのパール顔料等も含むものとする。化粧料インクには、(E)色材が一種のみ含まれてもよく、二種以上含まれてもよい。なお、上述の(A)反射剤の一部が、(E)色材としての機能を兼ねてもよい。
【0046】
(E)色材の例には、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料;γ-酸化鉄等の無機褐色系顔料;黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料;黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料;酸化チタン等の白色顔料;マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料;水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料;紺青(フェロシアン化第二鉄)、群青等の無機青色系顔料;各種タール系色素をレーキ化したもの;各種天然色素をレーキ化したもの;及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が含まれる。
【0047】
また、パール顔料の例には、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等が含まれる。
【0048】
(E)色材が(B)高級アルコールおよび(C)精製水に不溶の成分からなる場合、その形状は特に制限されず、球状、針状等いずれの形状であってもよいが、そのレーザ回折法で測定される粒度分布の積算値の中央値(D50)は、125nm以上2μm以下であることが好ましく、125nm~1000nmであることがより好ましい。さらに、平均粒子径(D50)が125nm~1000nm、かつ当該粒度分布の積算値の90%の値(D90)が3000nm以下であることがさらに好ましい。(E)色材の粒度分布の平均粒子径(D50)が上記範囲であると、化粧料インクを各種印刷法で印刷することが可能となる。
【0049】
化粧料インク100質量部に含まれる(E)色材の量は、40質量部以下であることが好ましく、3~10質量部であることがより好ましい。(E)色材の量が3質量部以上であると、化粧用シートに(E)色材由来の色や光沢等が付与されやすくなる。また、(E)色材の量が過剰となると、(E)色材の凝集等によって、化粧料インクを各種印刷装置から塗布し難しくなったりすることがある。ただし、(E)色材の量が40質量%以下であれば、(E)色材の凝集等が生じ難く、安定して印刷することが可能である。
【0050】
また、本実施形態の化粧料インクには、必要に応じて皮膜形成剤が含まれていてもよい。皮膜形成剤は、化粧料インクの皮膜形成性(例えば乾燥性等)を高めるための化合物である。ここで、本明細書において「皮膜形成剤」は、室温で水分散可能な化合物とする(ただし、上述の(F)バインダに相当する成分は除く)。化粧料インクには、皮膜形成剤が一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。なお、皮膜形成剤の具体的な種類については、第2の実施形態にて詳しく説明するため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0051】
本実施形態の化粧料インク100質量部に含まれる皮膜形成剤の量は、20質量部以下であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましい。皮膜形成剤の量が0.3質量部以上であると、第2の実施形態にて説明するように、化粧料インクの乾燥性が良好になる。一方、皮膜形成剤の量が過度に多いと、化粧料インクの粘度が過度に高くなることがあるが、20質量部以下であれば、化粧料インクを、各種印刷法により印刷しやすい粘度とすることができる。
【0052】
さらに、化粧料インクには、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲において、各種添加剤がさらに含まれていてもよい。各種添加剤について、皮膚刺激性が陰性である化合物であることが好ましい。各種添加剤の例には、界面活性剤、pH調整剤、増粘剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、防腐防カビ剤、脱酸素剤、酸化防止剤、防腐剤、褪色防止剤、消泡剤、香料、(B)高級アルコール及び(C)精製水以外の溶媒等が含まれる。
【0053】
また、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲において、化粧料インクには、(A)反射剤や、(E)色材等を、被印刷体に結着するための水溶性ポリマー(上述の皮膜形成剤に相当しないポリマー)等を含んでいてもよい。
【0054】
<化粧料インクの調製方法>
上述の化粧料インクは、(A)反射剤、(B)高級アルコール、および(C)精製水と、(F)バインダを含むスラリーもしくは分散液と、必要に応じて他の成分とを分散機で混合すること等により得られる。各成分の混合は、公知のボールミル、サンドミル、ロールミル、ホモミキサー、アトライターなど分散機等で行うことができる。
【0055】
1-2.第2の実施形態
本開示の第2の実施形態の化粧料インクには、(B)炭素数3以上の高級アルコールと、(C)精製水と、(D)皮膜形成剤と、(E)色材と、が含まれる。
【0056】
従来の顔料および溶媒(例えば水や高級アルコール)を含むインクでは、インクを被印刷体に塗布した際、溶媒が蒸発することで、インク中の固形分が動き難くなり、これらが被印刷体上に定着する。つまり、インク中の固形分が被印刷体に定着するためには、溶媒が略完全に蒸発することが必要であった。
【0057】
これに対し、本実施形態の化粧料インクには、(D)皮膜形成剤が含まれる。前述のように、皮膜形成剤は、室温で水分散可能な樹脂であり、これらは、本実施形態の化粧料インクにゾルとなって含まれている。このような化粧料インクを被印刷体上に塗布すると、塗膜中の溶媒((B)高級アルコールや(C)精製水)が蒸発によって減少することで(D)皮膜形成剤どうしの距離が近くなり、これらが水素結合やイオン結合、疎水結合等して架橋構造を形成する。その結果、塗膜内に皮膜が形成され、当該皮膜によって化粧料インク中の固形分の移動が抑制される。つまり、化粧料インクの塗布後、早い段階から化粧料インク中の固形分が被印刷体に定着されやすく、画像の定着(本明細書では、便宜上「乾燥」とも称する)にかかる時間が非常に早くなる。
【0058】
ここで、本実施形態の化粧料インクには、上記の必須成分の他に、必要に応じて反射剤や、バインダ、各種添加剤、水溶性ポリマー等がさらに含まれていてもよい。なお、第2の実施形態の化粧料インクに含まれる(B)高級アルコール、(C)精製水、(E)色材、(A)反射剤、バインダ、各種添加剤、および水溶性ポリマーについては、上述の第1の実施形態の化粧料インクに含まれる各化合物や、含有量と同様とすることができるため、ここでの説明は省略し、(D)皮膜形成剤についてのみ、以下説明する。
【0059】
<(D)皮膜形成剤>
本実施形態の化粧料インクに用いられる(D)皮膜形成剤は、(B)高級アルコールおよび/または(C)精製水に可溶な化合物であって、アクリル系ポリマー、多糖類系ポリマー、糖アルコール、ステロール類、エスエル類、および変性コーンスターチからなる群から選ばれる、一種以上の化合物である。化粧料インクには、(D)皮膜形成剤が一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。(D)皮膜形成剤が、上記群から選ばれる化合物であると、化粧料インクから形成される塗膜の乾燥が非常に早くなる。
【0060】
ここで、(D)皮膜形成剤のHLB値は、8以上であることが好ましく、8~19であることがより好ましい。(D)皮膜形成剤のHLB値が8以上であると、(D)皮膜形成剤が、(B)高級アルコールや(C)精製水等に均一に溶解されやすくなる。HLB値とは、油-水系で両液体に対する相対的親和力の比を表す指標であり、一般にHLB値の大きいものは、水に対する親和性が高い。なお、本明細書におけるHLB値はグリフィン法より算出される値とする。
【0061】
(D)皮膜形成剤も、皮膚刺激性のない材料であることが好ましい。上記アクリル系ポリマーの例には、アクリル酸アルキルコポリマー、アクリル酸アルキルコポリマーの2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール塩(以下、「AMP」とも称する)、アクリル酸アルキルコポリマーのナトリウム塩(以下、「Na」とも称する)、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、アクリル酸・アクリル酸アルキルコポリマー、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミドコポリマー、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミドコポリマーAMP、アクリル酸アルキル・ジアセトンアクリルアミドコポリマーの2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール塩(以下、「AMPD」とも称する)、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチルコポリマー、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸ブチル・アクリル酸メトキシエチルコポリマー、アクリレーツ・アクリル酸アルキル(炭素数1~18)・アルキル(炭素数1~8)アクリルアミドコポリマーAMP、アクリル酸アルキル・オクチルアクリルアミドコポリマー、アクリレーツ・t-ブチルアクリルアミドコポリマー、アクリレーツ・アクリル酸エチルヘキシルコポリマー、アクリレーツコポリマー、アクリレーツコポリマーAMP、アクリレーツコポリマーNa、ポリウレタン-14・アクリレーツコポリマーAMP等の分子内に環状構造を有さない鎖状アクリル系ポリマー;スチレン・アクリル酸アルキルコポリマー、スチレン・アクリレーツコポリマー、スチレン・アクリル酸アミドコポリマー、ポリウレタン-1(INCI名:POLYURETHANE-1で表記される化合物)、ポリアクリレート-22(INCI名:POLYACRYLATE-22で表記される化合物)、トリコンタニルポリビニルピロリドン(PVP)、(エイコセン/ビニルピロリドン)コポリマー、(ビニルピロリドン/ヘキサデセン)コポリマー、酢酸ビニル・マレイン酸ブチル・アクリル酸イソボルニルコポリマー等の分子内に環状構造を含む環状アクリル系ポリマーが含まれる。
【0062】
また、多糖類系ポリマーの例には、アラビアガム、グルカン、サクシノグリカン、カラギーナン、カラヤガム、トラガカントガム、グアガム、ローカストビーンガム、ガラクトマンナンガム、キサンタンガム、デンプン、キャロブガム、クインスシード(マルメロ)、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、ペクチン酸ナトリウム、アラギン酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアガム、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ローカストビーンガム、塩化ヒドロキシプロピルトリモニウムでんぷん、グリセリルグルコシド、グリコシルトレハロース、シロキクラゲ多糖体、イソステアリン酸デキストリン等が含まれる。
【0063】
糖アルコールの例には、ソルビトール、マルチトール、グルコース等が含まれる。ステロール類は、ステロール骨格を有する化合物であればよく、その例には、カンペステロール、カンペスタノール、ブラシカステロール、22-デヒドロカンペステロール、スティグマステロール、スチグマスタノール、22-ジヒドロスピナステロール、22-デヒドロスチグマスタノール、7-デヒドロスチグマステロール、シトステロール、チルカロール、オイホール、フコステロール、イソフコステロール、コジステロール、クリオナステロール、ポリフェラステロール、クレロステロール、22-デヒドロクレロステロール、フンギステロール、コンドリラステロール、アベナステロール、ベルノステロール、ポリナスタノール等のフィトステロール;コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレスタノール、コプロスタノール、エピコプロステロール、エピコプロスタノール、22-デヒドロコレステロール、デスモステロール、24-メチレンコレステロール、ラノステロール、24,25-ジヒドロラノステロ-ル、ノルラノステロ-ル、スピナステロール、ジヒドロアグノステロール、アグノステロール、ロフェノール、ラトステロール等の動物性ステロール;デヒドロエルゴステロール、22,23-ジヒドロエルゴステロール、エピステロール、アスコステロール、フェコステロール等の菌類性ステロール;およびこれらの水添物等が含まれる。
【0064】
エステル類の例には、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル等の分子内に環状構造を含むジペンタリトリット脂肪酸エステル(環状エステル化合物);ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル等の分子内に環状構造を含まないジペンタエリトリット脂肪酸エステル(鎖状エステル化合物);ステアリン酸硬化ヒマシ油、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、ヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油等の硬化ヒマシ油脂肪酸エステル(鎖状エステル化合物);ヒドロキシステアリン酸コレステリル等のコレステロール脂肪酸エステル(環状エステル化合物);オレイン酸フィトステリル、マカデミアンナッツ油脂肪酸フィトステリル等のフィトステロール脂肪酸エステル(環状エステル化合物);水添ヤシ油、水添パーム油等の水添植物油(鎖状エステル化合物);ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)(環状エステル化合物);ペンタヒドロキシステアリン酸スクロース(環状エステル化合物);ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘニル)(環状エステル化合物)等が含まれる。
【0065】
変性コーンスターチは、本実施形態の目的および効果を損なわない範囲において、コーンスターチを任意の化合物で変性した化合物とすることができ、例えば、コーンスターチに3-(ドデセニル)ジヒドロ2,5-フランジオンを反応して得られるヒドロキシプロピル変性デンプン等とすることができる。
【0066】
上記の中でも、化粧料インクの乾燥性が良好になるとの観点から、アクリレーツコポリマー、アクリレーツ(アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、ポリウレタン-14・アクリレーツコポリマーAMP、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)・水添ロジン酸トリグリセリル、キサンタンガムクロスポリマー・ヒドロキシエチルセルロース、シロキクラゲ多糖体、変性コーンスターチ、イソステアリン酸デキストリンが好ましく、アクリレーツコポリマー、アクリレーツ(アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、ポリウレタン-14・アクリレーツコポリマーAMP、アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)・水添ロジン酸トリグリセリル、キサンタンガムクロスポリマー・ヒドロキシエチルセルロース、シロキクラゲ多糖体がより好ましい。
【0067】
また、(D)皮膜形成剤として、分子内に環状構造を有する環状化合物と、分子内に環状構造を有さない鎖状化合物との両方が含まれ、かつ環状化合物および鎖状化合物の合計体積に対する、環状化合物の体積分率が0.01以上0.66以下であると、化粧料インクの塗布後、乾燥にかかる時間が非常に早くなる。環状化合物の体積分率は、0.1以上0.6以下であることがより好ましい。塗膜中で、鎖状化合物は、網目構造を形成する。一方、環状化合物も、環構造どうしが平面的に連結したり、環構造がスタッキングしたりする(これらをまとめて、「連結構造」とも称する)。ここで、環状化合物と鎖状化合物とが、上記体積分率で含まれると、鎖状化合物が形成する網目構造と、環状化合物が形成する連結構造とが、バランスよく形成され、いずれか一方のみの構造を含む場合より、上述の皮膜が早く形成される。これに対し、環状化合物の体積分率が大きくなりすぎたり、小さくなりすぎたりすると、皮膜の形成時に、立体障害が生じやすくなり、化粧料インクの乾燥に対する、上記相乗効果が得られ難いことがある。
【0068】
なお、化粧料インク100質量部に含まれる(D)皮膜形成剤の量は、20質量部以下であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましい。(D)皮膜形成剤の量が0.3質量部以上であると、上述のように、化粧料インクの乾燥性が良好になる。一方、(D)皮膜形成剤の量が過度に多いと、化粧料インクの粘度が過度に高くなることがあるが、20質量部以下であれば、化粧料インクを、各種印刷法により印刷しやすい粘度とすることができる。
【0069】
また、(D)皮膜形成剤は、化粧料インク調製の際、通常、(D)皮膜形成剤を溶媒に溶解させた溶液の状態で、(B)高級アルコール、(C)精製水、(E)色材等と混合される。このときに用いられる溶媒についても、皮膚刺激性がない溶媒であることが好ましく、上述の高級アルコールや水であることが好ましい。
【0070】
<化粧料インクの調製方法>
本実施形態の化粧料インクは、(B)高級アルコール、(C)精製水、および(E)色材と、(D)皮膜形成剤を含む溶液と、必要に応じて他の成分とを分散機で混合することで得られる。各成分の混合は、公知のボールミル、サンドミル、ロールミル、ホモミキサー、アトライターなど分散機等で行うことができる。
【0071】
1-3.化粧料インクの物性
上述の第1の実施形態の化粧料インク、および第2の実施形態の化粧料インクのいずれにおいても、コーンプレート型粘度計にて、速度100(1/s)で測定したときの25℃における粘度が、50mPa・s以下であることが好ましく、1~20mPa・sであることがより好ましく、3.5~8mPa・sであることがさらに好ましい。化粧料インクの粘度が上記範囲であると、化粧料インクを、各種印刷装置を用いて印刷しやすくなる。また特に、粘度が上記範囲であると、インクジェット装置からから安定して吐出しやすくなる。
【0072】
化粧料インクのpHは、6~10であることが好ましく、7.5~9.5であることがより好ましい。化粧料インクのpHが上記範囲であると、化粧料インクが、各種印刷装置の部材を侵食すること等がなく、さらには、化粧料インクを長期間保存しても、色材や反射剤の凝集等が生じ難くなる。
【0073】
また、化粧料インクの表面張力は、50mN/m以下であることが好ましく、32mN/m~46mN/mであることがより好ましい。なお、上記表面張力は、25℃で測定したときの値である。表面張力が50mN/m以下であると、各種印刷装置から化粧料インクを各種被印刷体に塗布した際、化粧料インクの濡れ性が良好になり、厚みが均一な膜を形成することができる。なお、表面張力は、種々の計測方法が適用可能であるが、上記値は、汎用機器に展開されている懸滴法(ペンダント・ドロップ法)にて測定される値である。
【0074】
さらに、化粧料インクに含まれる粒子の平均粒子径、すなわちレーザ回折法で測定される粒度分布の積算値の中央値(D50)は、125nm以上2μm以下であることが好ましく、平均粒子径(D50)が125nm以上1000nm以下であることがより好ましく、平均粒子径(D50)が125nm以上1000nm以下、かつ当該粒度分布の積算値の90%の値(D90)が3000nm以下であることがさらに好ましい。化粧料インクに含まれる粒子の平均粒子径が上記範囲であると、各種印刷装置、特にインクジェット装置から安定して吐出することが可能となる。D50やD90の値が上記範囲であると、化粧料インクをインクジェット装置等から安定して吐出させることが可能となる。
【0075】
また、上記化粧料インクは、皮膚刺激性が陰性である、すなわち生体安全性が高いことが好ましい。皮膚刺激性を陰性とすることで、皮膚等と接触して使用される用途にも用いることが可能となる。ここで、本開示において、「皮膚刺激性が陰性である」とは、皮膚刺激性試験の代替法である三次元皮膚モデルにて試験を行った場合に、細胞の生存率が50%超であることをいう。当該皮膚刺激性試験の代替法では、5%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液を刺激性コントロールとし、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を陰性コントロールとして行う。また、インクを、三次元皮膚モデルに18時間曝露した後、MTT試験によって、細胞の生存率を評価する。
【0076】
化粧料インクの皮膚刺激性を陰性にする手法の一例として、化粧料インクに含まれる全ての成分を、日本の薬事法に基づく化粧品の成分表示名称リストに掲載のある成分や、EU化粧品規制(Cosmetics Directive 76/768/EEC)に則った成分、米国CTFA(Cosmetic,Toiletry & Fragrance Association,U.S.)によるInternational Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(2002年1月1日、9th版)に記載されている成分等とする手法が挙げられる。
【0077】
1-4.インクカートリッジ
上述の化粧料インクは、例えばカートリッジに充填して保存することができる。カートリッジの種類や構造は特に制限されず、化粧料インクを印刷するための印刷装置に合わせて適宜選択される。このようなインクカートリッジの一例として、化粧料インクを収容するためのインク収容部と、インクを印刷装置の記録ヘッドに供給するためのインク供給口と、を有するカートリッジが挙げられる。
【0078】
2.化粧用シートの製造方法
本開示の化粧用シートは、上述の化粧料インクを被印刷体に印刷する工程と、被印刷体に塗布された化粧料インクを乾燥させる工程と、を含む製造方法により製造することができる。
【0079】
ここで、化粧料インクを被印刷体に印刷する方法は特に制限されず、公知の方法とすることができる。このような印刷方法の例には、インクジェット印刷法や、スクリーン印刷法、オフセット印刷、グラビア印刷等が含まれる。これらの中でも、化粧用シートの使用者の肌の状態や色等に合わせて、化粧料インクを複数回に亘って塗布できる、積層印刷を行うことができるとの観点から、インクジェット法が好ましい。以下、化粧料インクをインクジェット法で印刷する場合を例に化粧用シートの製造方法を説明するが、本開示は当該方法に限定されない。
【0080】
化粧料インクを被印刷体にインクジェット法で塗布する場合のインクジェット装置は特に制限されず、公知のピエゾ方式、サーマル方式、静電方式のいずれの装置を用いることが可能である。これらの中でも、ピエゾ素子方式のインクジェット装置であることが、サーマルインクジェット方式のような加熱が不要であるという点で好ましい。
【0081】
また、化粧料インクは、被印刷体に一回のみ塗布してもよく、二回以上塗布してもよい。さらに、組成の異なる(例えば顔料の種類や濃度等が異なる)複数の化粧料インクをインクジェット装置のインクタンクに充填し、当該インクジェット装置から、被印刷体にこれらを順次塗布してもよい。また、インクジェット装置内で、組成の異なる複数の化粧料インクを混合して混合インクを調製し、当該混合インクを被印刷体上に塗布してもよい。なお、複数の化粧料インクを組み合わせる場合、少なくとも1つの化粧料インクが、本開示の化粧料インクであればよいが、全ての化粧料インクが本開示の化粧料インクであることが、化粧料インクの乾燥性、もしくは印刷物の隠蔽性の観点から好ましい。なお、化粧料インクを被印刷体に複数回塗布する場合、化粧料インクを一回塗布する毎に、乾燥させてもよく、複数回塗布した後、乾燥させてもよい。本開示の化粧料インク(特に第2の実施形態の化粧料インク)は、乾燥性が良好である。したがって、複数回塗布した後に乾燥させる工程を行ったとしても、短時間で乾燥させることが可能である。
【0082】
ここで、化粧料インクを乾燥させる方法は、化粧料インク中の(B)高級アルコールおよび(C)精製水を除去することが可能な方法であれば特に制限されない。例えば、大気圧下、室温で乾燥させる方法であってもよく、所定の温度に加熱および/または減圧して乾燥させる方法であってもよい。加熱を行う場合、例えば25~50℃に加熱することが好ましい。当該範囲であれば、被印刷体や化粧料インク中の固形分を劣化させることなく、効率良く乾燥させることができる。一方、減圧する場合、-0.1~0MPa減圧することが好ましい。当該範囲減圧することで、効率良くインクを乾燥させることができる。
【0083】
ここで、上述の化粧料インクを塗布する被印刷体は、本開示の目的および効果を損なわない限り特に制限されず、公知の化粧用シートの基材と同様のものを被印刷体とすることができる。このような被印刷体の例には、普通紙や、専用記録紙、プラスチック、布等が含まれる。また被印刷体は、一層のみからなるものであってもよく、二層以上が積層されたものであってもよい。これらの中でも特に、皮膚に直接または間接的に貼着、もしくは密着させて用いる、生体適合性を有する材料からなる各種シートが好適である。
【0084】
生体適合性を有する材料の例には、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、またはこれらの共重合体に代表されるポリエステル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールに代表されるポリエーテル類;ナイロン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、またはこれらの塩に代表されるポリアミド類;プルラン、セルロース、デンプン、キチン、キトサン、アルギン酸、ヒアルロン酸、コーンスターチに代表される多糖類またはこれらの塩;アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸に代表されるシリコーン類;アクリル酸アルキル、アクリル酸シリコーン、アクリル酸アミドや、これらの共重合体に代表されるアクリル酸類;ポリビニルアルコール;ポリウレタン;ポリカーボネート;ポリ酸無水物;ポリエチレン;ポリプロピレン;多孔質層コーティングシート、ナノファイバーシート、等が含まれる。また、生体適合性を有する材料からなるシートの例には、医療用部材を固定するためのシートや、スポーツテーピング用シート、肌装飾用シート、化粧用シート、外科手術用癒着防止材等が含まれる。
【0085】
ここで、本開示の化粧料インク(特に第1の実施形態の化粧料インク)は、得られる印刷物の隠蔽性が高い、すなわち光の透過性が低い。したがって、被印刷体が透明または半透明である場合に、化粧シートを貼着する対象(例えば肌)の色等を透け難くすることができる。本開示の化粧料インクによれば、被印刷体が透明または半透明であっても、得られる化粧シートの波長380~780nmの光の透過率を70%以下とすることができる。
【0086】
一方、被印刷体の厚さは特に制限されず、被印刷体の種類や用途等に応じて適宜選択され、例えば10μm以下とすることができる。ここで、被印刷体の厚みが薄い場合、被印刷体に溶媒(例えば、(B)高級アルコールや(C)精製水)が吸収され難く、インクが乾燥し難い。これに対し、本開示の化粧料インク(特に第2の実施形態の化粧料インク)は、乾燥性が良好である。したがって、例えば被印刷体の厚みが3000nm以下であったとしても、印刷が可能であり、例えば10nm以上1000nm以下である薄膜にも、印刷が可能である。
【0087】
なお、このような薄膜からなる被印刷体に画像形成する場合には、被印刷体とこれを支持する支持体とが積層された積層体に印刷を行い、印刷後に支持体から薄膜を剥離してもよい。このような支持体としては特に制限されないが、例えば吸水性が高い材料からなるものとすることができる。支持体が吸水性を有する場合、(B)高級アルコールおよび(C)精製水を支持体にすばやく吸収させることができ、化粧料インクの固形分のみを、被印刷体表面に固着させることができる。したがって、得られる画像に滲み等が生じ難く、高精細な画像形成が可能となる。吸水性の高い支持体の例には、紙、布、不織布、織物、多孔質層コーティングシート、ナノファイバーシート、吸水性ポリマー、水溶性ポリマー等からなる基材が含まれる。
【実施例】
【0088】
以下において、実施例を参照して本開示を説明する。実施例によって、本開示の範囲は限定して解釈されない。
【0089】
1.化粧料インクA
1-1.材料
各実施例および比較例に用いた材料は、以下の通りである。なお、各粒子の平均粒子径は、レーザ回折法で測定される粒度分布の積算値の中央値(D50)の値である。
(A)反射剤
酸化チタンa(平均粒子径:950nm)
酸化チタンb(平均粒子径:120nm)
(B)高級アルコール
グリセリン
1,3-プロパンジオール
(C)精製水
(F)バインダ
アクリル系ポリマー粒子(平均粒子径:50nm)
【0090】
1-2.化粧料インクの調製
下記表1に示す成分比で、各材料を混合し、化粧料インクを調製した。表1には、各化粧料インクの物性も併せて示す。粘度は、コーンプレート型粘度計にて、せん断速度1000(1/s)にて測定したときの25℃における粘度である。pHは、pHメータ(LAQUAtwin HORIBA社製)により測定した値である。表面張力は、接触角計(DropMaster DM-501、協和界面化学社製)にて、25℃で測定した値である。
【0091】
【0092】
1-3.評価
図1に示すように、標準肌模型(バイオスキン(ビューラックス社製、品番BIO))上にシミを模した色紙(9種類)を添付し、シミ模型を作製した。一方、OHPシート(波長380~780nmの光の透過率:90%、A-one社製OHPフィルム(品番:27077))上に、比較例Aまたは実施例Aの化粧料インクをスキージ、もしくはインクジェット装置で塗布し、塗りつぶしパターンを形成した。なお、インクジェット装置は、パナソニックプレシジョンデバイス社製LB3インクジェットヘッドを備える装置とした。そして、印刷後のシートを50℃の環境下で乾燥させた。なお、スキージで作製した場合の塗膜の平均厚みは、比較例Aは9μm、実施例Aは10.4μmであった。一方、インクジェット装置で作製した場合の塗膜の平均厚みは、比較例Aは3.6μm、実施例Aは2.9μmであった。そして、各方法で作製した塗膜を、上記シミ模型上にかざし、その透過度合いを、以下の基準で目視により評価した。結果を表2に示す。なお、表2中のシミ模型の番号は、
図1に示すシミ模型の番号に対応している。
〇:シミ模型が視認されない
△:シミ模型の色は確認できるものの、輪郭は認識できない
×:完全にシミ模型が認識される
【0093】
【0094】
さらに、スキージで作製した塗膜をシミ模型上にかざした場合の画像を
図2に示す。なお、
図2は、比較例Aの化粧料インクの塗膜を、
図1のシミ模型の1~3上に、実施例Aの化粧料インクの塗膜を
図1のシミ模型の7~9上にかざした場合の画像である。さらに、これらの塗膜の波長380nm~780nmの光の透過率を
図3に示す。塗膜の透過率は、紫外・可視・近赤外分光光度計(UV-3600Plus)/島津製作所製により測定した。
【0095】
同様に、インクジェット装置で作製した塗膜をシミ模型上にかざした場合の画像を
図4A、
図4Bに示す。なお、
図4Aは、比較例Aの化粧料インクの塗膜を、
図1のシミ模型の1上にかざした場合の画像である。
図4Bは、実施例Aの化粧料インクの塗膜を、
図1のシミ模型の1上にかざした場合の画像である。さらに、当該塗膜の波長200nm~1000nmの光の透過率を
図5に示す。
【0096】
表2および
図2に示すように、反射剤を含まない比較例Aの化粧料インクは、スキージで塗膜を形成すると、シミ模型の色が薄い場合、シミ模型の輪郭が確認されないものの、隠蔽性が十分ではなかった。そして、シミ模型の色が濃くなると、シミ模型が視認されやすかった。これに対し、反射剤を含む実施例Aの化粧料インクでは、シミ模型がいずれである場合にも視認されず、非常に良好な結果となった。このことは、
図3のグラフにおいて、いずれの波長域でも実施例Aの化粧料インクの塗膜の光の透過率が、比較例Aの化粧料インクの塗膜の光の透過率より低いことからも裏づけられている。
【0097】
また、表2、
図4Aおよび
図4Bに示すように、反射剤を含まない比較例Aの化粧料インクは、インクジェット装置で塗膜を形成すると、いずれのシミ模型においても隠蔽性が十分ではなかった。これに対し、反射剤を含む実施例Aの化粧料インクでは、シミ模型がいずれの種類である場合にも視認されず、非常に良好な結果となった。このことは、
図5のグラフにおいて、いずれの波長域でも実施例Aの化粧料インクの塗膜の光の透過率が、比較例Aの化粧料インクの塗膜の光の透過率より低いことからも裏づけられている。
【0098】
2.化粧料インクB
2-1.材料
各実施例および比較例に用いた材料は、以下の通りである。
(B)高級アルコール
グリセリン
1,3-プロパンジオール
(C)精製水
(D)皮膜形成剤
(アクリル系ポリマー)
アクリレーツコポリマー、HLB値:8程度
アクリレーツ(アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、HLB値:10程度
ポリウレタン-14・アクリレーツコポリマーAMP、HLB値:13程度
アクリル酸アルキルコポリマーアンモニウム、HLB値:8程度
(エステル類)
ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(ベヘニル/イソステアリル/フィトステリル)・水添ロジン酸トリグリセリル、HLB値:8程度
(多糖類系ポリマー)
キサンタンガムクロスポリマー・ヒドロキシエチルセルロース、HLB値:8程度
(E)色材
酸化鉄赤(平均粒子径:291nm)
(F)バインダ
アクリル系ポリマー粒子(平均粒子径:50nm)
【0099】
2-2.化粧料インクの調製
下記表3に示す成分比で、各材料を混合し、化粧料用インクを調製した。表3には、各化粧料インクの物性も併せて示す。
【表3】
【0100】
2-3.評価
(スキージ塗膜での評価)
実施例B-1~B-7、および比較例Bで作製した化粧料インクを、スキージにより、インクジェット記録用紙(厚み270μm)に塗布し、15mm×15mmの矩形状の塗りつぶしパターンを形成した。
【0101】
上記塗りつぶしパターンを50℃で乾燥させた。このとき、塗膜の形成から0.5分後、1分後、2分後、3分後、および5分後に、それぞれティッシュを押しつけ、インクの付着の有無によって、インクの乾燥性を評価した。なお、評価は、以下の基準に基づき行った。結果を表4に示す。
〇:インクの付着無し
▲:インクの付着殆ど無し、ただし硬化後のインクが粘着して一部付着
△:インクの付着有り(かすれ程度)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
×:インクの付着有り(明確に付着)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
【0102】
【0103】
表4に示されるように、皮膜形成剤を含まない比較例Bと比較して、皮膜形成剤を含む実施例B-1~B-7の化粧料インクは、いずれも乾燥性が良好であった。特に、実施例B-7では、1分後にインクが殆ど乾燥する、という優れた結果が得られた。
【0104】
(インクジェット塗膜の評価)
実施例B-1~B-5、およびB-7、ならびに比較例Bで作製した化粧料インクを、パナソニックプレシジョンデバイス株式会社製LB3インクジェットヘッドを備えるインクジェット装置のインクタンクに充填した。一方、厚みが200nmのポリ乳酸シートを、ろ紙からなる支持体に貼り付けた被印刷体を準備した。そして、上記化粧料インクを、インクジェット装置から、ポリ乳酸シート上に塗布し、15mm×15mmの矩形状の塗りつぶしパターンを形成した。そしてさらに、同様のパターン状にさらに4回インクを塗布し、計5層からなる塗膜を形成した。
【0105】
上記塗りつぶしパターンを40℃、-0.1MPaで乾燥させた。このとき形成直後(0分後)、15分後、30分後、45分後、および60分後に、それぞれティッシュを押しつけ、インクの付着の有無によって、インクの乾燥性を評価した。なお、評価は、以下の基準に基づき行った。結果を表5に示す。
〇:インクの付着無し
△:インクの付着有り(かすれ程度)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
×:インクの付着有り(明確に付着)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
【0106】
【0107】
表5に示されるように、皮膜形成剤を含まない比較例Bでは、乾燥に約60分要したのに対し、皮膜形成剤を含む実施例B-1~B-5、およびB-7の化粧料インクでは、30分後には硬化していた。つまり、皮膜形成剤によって、インクの乾燥性が大幅に向上した。
【0108】
3.化粧料インクC
3-1.化粧料インクの調製
上述の実施例B-4と、実施例B-7とを混合し、実施例C-1~C-3の化粧料インクを調製した。なお、各化粧料インクに含まれる鎖状化合物からなる(D)皮膜形成剤(実施例B-4由来)と、環状化合物からなる(D)皮膜形成剤(実施例B-7由来)とが、下記表に示す体積比となるように、かつ化粧料インク中の(D)皮膜形成剤の量が5質量%となるように、インクの混合比を調整した。
【0109】
【0110】
3-2.評価
実施例B-4、B-7、および実施例C-1~C-3で作製した化粧料インクを、スキージにより、インクジェット記録用紙(厚み270μm)に塗布し、15mm×15mmの矩形状の塗りつぶしパターンを形成した。
【0111】
上記塗りつぶしパターンを50℃で乾燥させた。このとき、塗膜の形成から0.5分後、1分後、2分後、3分後、および5分後に、それぞれティッシュを押しつけ、インクの付着の有無によって、インクの乾燥性を評価した。なお、評価は、以下の基準に基づき行った。結果を表7に示す。なお、
図6に、(D)皮膜形成剤(鎖状化合物および環状化合物)の合計体積に対する環状化合物の体積分率と、化粧料インクの乾燥時間(評価が○になった時間)との関係を示すグラフも示す。
〇:インクの付着無し
▲:インクの付着殆ど無し、ただし硬化後のインクが粘着して一部付着
△:インクの付着有り(かすれ程度)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
×:インクの付着有り(明確に付着)、付着したインクは液体状でティッシュに浸漬
【0112】
【0113】
表7および
図6に示されるように、(D)皮膜形成剤の総体積(鎖状化合物および環状化合物の合計体積)に対する、環状化合物の体積分率が0.01以上0.66以下である場合(実施例C-1およびC-2)、(D)皮膜形成剤が環状化合物単独からなる場合(実施例B-7)や、(D)皮膜形成剤が鎖状化合物単独からなる場合(実施例B-4)と比較して、非常に乾燥時間が短くなった。ただし、(D)皮膜形成剤が、鎖状化合物および環状化合物を含んでいたとしても、鎖状化合物および環状化合物の合計体積に対する環状化合物の体積分率が0.66を超える場合(実施例C-3)には、(D)皮膜形成剤が鎖状化合物単独からなる場合(実施例B-4)と同等の乾燥時間となった。鎖状化合物および環状化合物がそれぞれ網目構造や連結構造を形成する際に、立体障害が生じたと推察される。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示の一実施形態にかかる化粧料インクは、光透過性の高いフィルム等に塗膜を形成した場合に、隠蔽性が良好である。また、本開示の他の実施形態にかかる化粧料インクは乾燥性が高い。したがって、これらは、普通紙だけではなく専用記録紙、プラスチック、布などの紙以外の被印刷体にも、高精細印刷が可能であり、各種化粧シートの製造のためのインクとして非常に有用である。