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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】管状医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/97 20130101AFI20221125BHJP
   A61F 2/06 20130101ALI20221125BHJP
【FI】
A61F2/97
A61F2/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020514349
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 GB2018051285
(87)【国際公開番号】W WO2018211242
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】1707929.4
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】503116084
【氏名又は名称】バスクテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】VASCUTEK LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ティロ コルベル
(72)【発明者】
【氏名】ビンセント ネリス
(72)【発明者】
【氏名】セオネイド ニモ
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5591228(US,A)
【文献】特表2015-518394(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043011(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0158121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/97
A61F 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)分岐した構成を有する自己拡張型管状体(31,243)であって、
i)自己拡張型ステントを含むステント留置された管状長さ部分L1と、
ii)一対の分岐した肢であって、
a.捲縮された管状長さ部分L2であって、前記捲縮された管状長さ部分L2は、前記ステント留置された管状長さ部分L1に固定されている該管状長さ部分L2と、
b.前記捲縮された管状長さ部分L2のアクセスブランチ(34)と
を含む該一対の分岐した肢と
を含む該自己拡張型管状体(31,243)と、
b)前記ステント留置された管状長さ部分L1を径方向に圧縮する取り外し可能なシース(230,241)と、
c)送達システムであって、
i)スプリッタ機構(224)を有し、前記取り外し可能なシース(230,241)がこれを通って延在する、オペレータハンドル(220)と、
ii)前記オペレータハンドル(220)から少なくとも部分的に前記ステント留置された管状長さ部分L1内を延在する送達シャフト(249)と、
iii)前記オペレータハンドル(220)に設けたプルハンドル(232)と、
iv)前記プルハンドル(232)から前記取り外し可能なシース(230,241)へと延在するストラップ(233)であって、前記取り外し可能なシース(230,241)は、前記プルハンドル(232)上で引くことによって分割される該ストラップ(233)と、
v)前記自己拡張型管状体(31,243)内に設けた一体型バルーン(15,245)であって、前記取り外し可能なシース(230,241)を取り外した後に前記一体型バルーン(15,245)を膨張させることによって、前記自己拡張型管状体(31,243)の前記ステント留置された管状長さ部分L1の径方向の更なる拡張を可能とする、該一体型バルーン(15,245)と
を有する該送達システムと
を備える、管状医療装置。
【請求項2】
前記一体型バルーン(15,245)が、前記管状体(1,31,243)の潜在的な最大拡張寸法に対して小さいものである、請求項1に記載の管状医療装置。
【請求項3】
前記アクセスブランチ(34)に設けた内部バルブを更に含む、請求項に記載の管状医療装置。
【請求項4】
前記バルブは、イントロデューサシールを含む、請求項3に記載の管状医療装置。
【請求項5】
前記アクセスブランチ(34)が外面を有し、前記外面に取り付けられた複数のタブまたはリボンループ(38)を有する、請求項1に記載の管状医療装置。
【請求項6】
前記ステント留置された管状長さ部分L1が、サドル型のリングステント(244)を含み、その各々がピーク(252)およびバレー部分(253)を有する、請求項1に記載の管状医療装置。
【請求項7】
前記ステント留置された管状長さ部分L1が、ポリエチレンテレフタレート(PTFE)製の織地を備える、請求項1に記載の管状医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療器具、特には、血管系における欠陥のある天然の部分を治療する際に使用するための、グラフトおよびそのようなグラフトの送達システムに関する。本開示は、天然の血管(天然血管)の狭い管腔で有用な手法、送達システム、および器具に関するが、便宜上、そのような手法および器具の重要かつ従来対処されていない必要性が存在する血管系に関連して制限なく説明する。
【背景技術】
【0002】
動脈は、動脈内の管腔が経時的に異常に狭くなる狭窄症の影響を受けることがある。そのような狭窄症は、動脈の閉塞、組織への血液供給の制限、および血圧上昇を含む悪影響をもたらす可能性がある。特に、腸骨動脈は、曲がりくねっており、管腔が狭いために困難を呈し、高齢患者のこれらの動脈は、アテローム性動脈硬化または石灰化による疾患または狭窄症の影響を受けやすくなっている。腸骨動脈閉塞は、運動性の低下、疲労、脚の痙攣などの下肢の問題につながる可能性があり、また、放置されている場合や糖尿病患者の場合、腫瘍および組織壊死につながる可能性がある。血管再生やバイパス手術などの外科的介入が可能な場合もあるが、低侵襲的手法である血管内治療は、多くの場合、患者へのリスクが少なく、より効果的な治療アプローチを提供する。
【0003】
典型的な血管内治療は、血管内動脈瘤修復(EVAR)である。通常、当該処置には、送達システム上のエンドグラフトを、鼠径部の切開部を介して、大腿動脈に挿入されたガイドワイヤまたはカテーテルに沿って挿入することにより、最終的に、血管系の主要血管の1つにおける動脈瘤部位にアクセスするステップが含まれる。しかしながら、送達に使用する血管経路の一部が閉塞されていたり、過度に曲がりくねっていたり、あるいは腸骨動脈の狭窄の場合のように開通性が制限されていたりする場合、このような手法は、阻害され、または妨げられ得る。
【0004】
血管内治療では、管状形状の部品を含む製造された医療器具を、天然血管の疾患部分または虚弱部分の代用移植片(グラフト)として、または天然血管の疾患部分または虚弱部分の補綴支持体(サポート)として、脈管構造の一部を形成する天然または生来の血管に挿入する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、血管系の欠陥および虚弱に苦しむ患者の治療に有用であり得る血管内器具に関し、特に、総腸骨動脈、内腸骨動脈および外腸骨動脈を含む天然の腸骨血管における狭窄症の治療を必要とする患者を対象としている。
【0006】
腸骨動脈は、通常、管腔の直径が小さいため、血管内へのアクセスが制限され、血管内治療を行うには薄型の器具が必要である。そのような治療は、多くの場合、イントロデューサシースの使用を伴う。イントロデューサシースは、カテーテル、イントロデューサ、またはアクセスガイドワイヤを誘導し、血管系内の標的部位に器具を送達する。そのような血管内治療の目的は、管状器具を挿入して動脈の疾患部分または虚弱部分を架橋するバイパスを提供し、動脈の残りの健康な部分の間に代用の管腔を提供することにより、血液の貫流を可能にすることである。しかしながら、腸骨動脈は、シース誘発裂傷などの損傷を特に受けやすいことが観察されている。イントロデューサシースの取り外しが、腸骨動脈を意図せずに破裂させたり、または剥離によって破裂可能な弱点を露出させたりすることについては知られていない。したがって、天然の腸骨血管を介して血管系内の標的部位に器具を送達するアクセスは困難である。
【0007】
そのような管状器具は、典型的には、管状スリーブに形成された生理学的に許容される織物から作られている。管状スリーブは、送達システム内で折り畳まれた構成またはコンパクトな構成で搬送され、拡張可能なバルーン装置または付属の弾性ステントを使用して標的部位で拡張され得る。拡張可能なバルーン装置または付属の弾性ステントは、管状スリーブを支持し、その管腔を開いた状態に維持して、該管状スリーブを通る流体の流れを可能にすることができる。
【0008】
天然の腸骨血管へのアクセスおよび天然の腸骨血管を介したアクセスが制限されることが予想されるため、適切なグラフトを移植するための撮像および準備による予備段階のアセスメントでは、適切な治療には、標的の血管を介し、かつ該標的の血管を越えたアクセスを改善するための、連続的な拡張ステップが必要であることが示される場合がある。連続的な拡張ステップは、それぞれのステップで徐々に標的の血管を拡大させることを目的とするものである。拡張は、膨張可能なバルーン装置を使用して実現することができる。しかしながら、そのようなバルーン装置を血管系の血管に挿入するには、複数のイントロデューサシース/カテーテルを使用する必要があり、これらも連続して挿入および除去する必要がある。これらの動作により、貫通した血管壁が損傷する可能性がある。注意深く拡張した場合でさえ、達成可能な拡張が、意図されたグラフトおよびその関連する送達システムのアクセスを可能にするのには不十分な場合がある。そのような場合、外科的切開により、標的の血管を意図的に破ることが依然として必要な場合がある。これらの問題の少なくとも一部を軽減または緩和できたら有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、天然血管の管腔を拡張して該天然血管の拡張された管腔を介したアクセスを提供する、管状器具を植え込むことにより、天然血管の管腔を通る器具の操作に起因する有害事象のリスクを低減し、拡張された管腔を介した後続の処置のためのアクセスを可能にする装置に関する。
【0010】
天然血管の管腔を拡張する装置は、膨張可能なバルーンなどの取り除くことができる拡張コンポーネントを含む拡張器具と、ステントが挿入された少なくとも一部を有する自己拡張型管状体などの、拡張された管腔を支持する支持コンポーネントと、を備える。これにより、拡張コンポーネントが取り除かれたときに、残された管腔支持コンポーネントによって天然血管の拡張された管腔は拡張されたままになる。
【0011】
天然血管は、血管系、特には腸骨動脈などの狭いか、あるいは捻じれた天然血管の部分であり得る。したがって、本開示は、管状形態である改良された血管内拡張器具、該血管内拡張管状器具の送達システム、および血管系の狭く捻じれた管腔を有する天然血管に関連した問題に対処するための手法にも関する。管状形態の植え込まれた血管内拡張器具は、取り外し可能なシース内にある最初のコンパクトな構成から拡張して、後続の血管内治療の(例えば、器具、機器、および材料を、植え込まれた管状の血管内拡張器具を越えた別の治療部位へ前進させる)ためのアクセスを提供する。
【0012】
現在開示されている管状器具、例えば血管内管状器具用の送達システムは、送達シャフトおよび一体型バルーンを含む。一体型バルーンもまた、管状の器具内のコンパクトな形態であり、取り外し可能なシース内のコンパクトな形態で血管内拡張器具内を送達され得る。当該システムおよび管状器具の典型的な使用の一実施形態では、拡張可能な管状器具および一体型バルーンの両方が、天然血管の最初の拡張を開始するために使用され、取り外し可能なシース内のコンパクトな形態で、同じ送達シャフトで同時に搬送される。管状器具には、ステントが挿入された少なくとも一部を有する自己拡張型管状体が含まれているので、取り外し可能なシースが取り外されると、管状器具はすぐに拡張し、一体型バルーンの膨張によって天然血管が拡張された範囲によってのみ制限される。したがって、使用中に、天然血管の血管内腔の拡張は、一体型バルーンによって開始され、一体型バルーンが取り除かれると管状器具によって維持される。
【0013】
血管内管状器具は、ファブリックスリーブと、該ファブリックスリーブの少なくとも長さ部分に取り付けられた複数のリングステントと、を含み得る。
【0014】
拡張器具を使用した天然血管の管腔寸法の拡張は、連続したステップ;まず、一体型バルーンを拡張させ、その後、その送達シャフト上の一体型バルーンを取り除き、拡張能力がより高いバルーンを支える少なくとも1つのさらなる送達シャフトを挿入すること、により達成され得る。天然血管の、狭く、細く、おそらく捻じれた管腔では、管腔の所望の拡張中に、有害事象を回避するために注意を払わなければならないことが理解されよう。連続したステップで拡張能力を高める複数のバルーンを使用した慎重なアプローチにより、必要な複雑な処置に関連するリスクを最小限に抑えることができる。
【0015】
この連続的な拡張手順を達成するための装置は、拡張可能な管状器具と、一体型バルーンを備えた送達シャフトを含む送達システムと、一体型バルーンが使用されて引き出された後にそれぞれ送達シャフト上で送達可能である、拡張可能なサイズが増大する、複数の拡張可能なバルーンと、を含むキットの形態であり得る。このようにして、捻じれた狭い管腔を有する天然血管は、任意の血管内治療(EVAR、TEVER、TAVRおよびそれらの改良版など)に必要とされるような送達システム上の器具の送達に適した許容可能な管腔寸法になるまで、連続したステップで拡張され得る。適切なアクセスを得るために、捻じれた狭い管腔を有する天然血管を割いて開く必要がある場合でさえも、管状器具は、拡張処置を通して、天然血管の割けた部分の代用として機能し、拡張処置後も留まったままで、拡張された天然血管の割けた部分を架橋し、それにより、器具が送達され処置が実行される連続した管腔を提供する。したがって、本開示は、そうでなければ開腹術による外科的介入なしには使用することが困難である天然管腔を介したアクセスを提供し、例えば、捻じれた狭い管腔を有する天然血管の部位に、開腹術による外科的介入を必要とすることなく血管内治療を遂行する目的で、捻じれた狭い管腔を強化し、あるいは置換することが理解されよう。
【0016】
実施形態において、拡張された天然血管を支持し、該拡張された天然血管の開通性を維持するために使用される管状器具は、例えば形状記憶材料で作られた自己拡張型ステントを含むステントが組み込まれた、完全な管腔内管状体とすることができる。
【0017】
いくつかの代替的な実施形態において、拡張された天然血管を支持し、該拡張された天然血管の開通性を維持するために使用される管状器具は、天然血管を拡張するために使用されるバルーンの制御下で受動的に拡張される、完全な管腔内管状体とすることができる。
【0018】
実施形態において、拡張された天然血管を支持し、該拡張された天然血管の開通性を維持するために使用される管状器具は、管状器具の長さ部分だけが、例えば形状記憶材料で作られた自己拡張型ステントを含むステントが組み込まれた管腔内管状体である、ハイブリッドデバイスであってもよい。
【0019】
実施形態において、血管内での用途に適したキット形態の装置は、取り外し可能なシース内のコンパクトな形態で血管系の天然血管の管腔内に挿入するように構成された管状体を組み合わせて含む、血管内拡張器具と;送達シャフト、および取り外し可能な同一シース内のコンパクトな形態で血管系の天然血管の管腔内に挿入されるように構成された一体型バルーンを含む送達システムであって、一体型バルーンが管状体の潜在的な最大拡張寸法に比べて小さい、送達システムと;管状体を拡張するのに連続して使用するための、異なる拡張サイズを有する複数の拡張可能なバルーンであって、各拡張可能なバルーンが、血管系の天然血管の管腔を徐々に拡張する際に使用するために、送達シャフト上のコンパクトな形態で管腔内に順に挿入可能であるバルーンと、を含む。キットは、可鍛性の送達シャフト、可撓性の送達シャフト、および任意でガイドワイヤまたはカテーテルを含んでいてもよい。
【0020】
一体型バルーンまたは任意の後続のバルーンと同時に拡張する管状体を使用して、天然血管の管腔を拡張するので、バルーンを取り除いた後における天然血管の崩壊を防ぎ、天然血管の拡張された管腔の開通性を維持することができる。あるいは、一体型バルーンが管状体を介して作用し、その組み合わせが管腔内拡張装置における血管内拡張器具として機能すると考えることができる。
【0021】
実施形態において、管状体は、送達シャフト上で一体型バルーンとともに送達されるように、取り外し可能なシース内に完全に圧縮されていてもよく、また、管状体は、血管内治療によって完全に留置されるように構成されていてもよい。管状体は、血管内留置術後、送達システムおよび任意の管腔拡張バルーンが取り除かれたときに完全に自己展開するように、その全長にわたって十分な数の自己拡張型ステントで完全にステント留置され得る。
【0022】
本明細書に開示される血管内拡張器具としての使用に適した管状器具は、取り外し可能なシース内のコンパクトな形態で血管系の天然血管の管腔に挿入するように構成されている管状体を含む。該管状体は、長さLを有し、その少なくとも1つの管状長さ部分Lは、最初は覆われているが、その後、血管系の天然血管の管腔内で拡張可能であり、少なくとも1つのさらなる管状長さ部分Lは、管状体の配置に弾性支持体を使用できるように、弾性支持体上に配置されている。これにより、管状体の管状長さ部分Lを、天然血管の管腔内に配置し、取り外し可能なシースから解放して、血管系の天然血管の管腔内に開放開口を提供することができる。
【0023】
弾性支持体は、細長いカテーテル、細長い可撓性シャフト、または細長いガイドワイヤを含んでいてもよい。弾性支持体に可鍛性材料を使用して金属ロッドを形成してもよく、あるいは柔軟なポリマー樹脂または柔軟な複合樹脂コーティングと共押出しされた金属ロッドまたはコイルを使用して、送達シャフトを形成してもよい。送達シャフトは、天然血管または天然血管に隣接する組織の一部への位置決めまたはアクセスを支援するために、処置中に、ユーザによって成形することが可能である。可鍛性材料は、ステンレス鋼または形状記憶合金などの金属材料とすることができる。
【0024】
実施形態において、管状長さ部分Lは、管状器具の送達システムの一部を形成するか、あるいはそれに関連する細長いカテーテル、細長い可撓性シャフト、または細長いガイドワイヤの周りに液密シールを提供する、内部バルブを有する。管状長さ部分Lは、天然の血管、例えば血管系の血管の劣化した部分を修復することを目的とした外科的処置の血管内ステップで必要とされる、送達システムのためのアクセスルートを提供する。
【0025】
任意に、外部ツールを使用して長さ部分Lをクランプし、例えば、治療されている天然血管内の管状体の中にある、あるいはそれを通る器具の配置、展開、または操作などの手順のあらゆる段階での失血を最小限に抑える止血バルブまたは止水バルブとして、流量制御を提供することができる、
【0026】
管状長さ部分Lは、その全長にわたってステントなどのいずれの内部支持体も必要としないが、流体不透過性または無視できる透過性のファブリックの波形付きまたはひだ付きスリーブを含んでいてもよい。
【0027】
ステント無しの管状長さ部分Lは、取り扱い易くするために、外面に取り付けたタブまたはリボンループを有していてもよい。
【0028】
実施形態において、長さ部分Lは、天然血管の管腔内に配置可能な管状長さLよりも著しく短くてもよい。
【0029】
送達システムまたは送達器具のシース内に適切に圧縮されている場合、天然血管の管腔内に適合する外部幅寸法は、3mm~6mmの範囲であり得る。実施形態において、管状器具、および天然血管の管腔内への送達のために管状器具をコンパクトな形態に維持するために使用されるシースは、約6~18フレンチの範囲であり得る。
【0030】
取り外し可能なシースは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの生理学的に良性の低摩擦または滑りやすい高分子材料から作ることができる。あるいは、取り外し可能なシースは、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成されていてもよい。選択される材料は、生態適合性があり、粘着することなく天然血管または人工管腔を容易に通過することができるものでなければならない。取り外し可能なシースは、表面処理されていてもよく、例えば、親水性を付与または強化するために親水性コーティングが施されていてもよい。
【0031】
取り外し可能なシースに適した高分子可撓性材料は、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、フッ素化エチレンプロピレン、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリブチレンテレフタレートなどの、熱可塑性ポリマー、エラストマー、およびコポリマーから選択され得る。
【0032】
シースは、シースに取り付けられた、ハンドル、ドローワイヤ、またはストラップを使用して引っ張ることにより取り外し可能である。
【0033】
シースは、適切に加えられた力の適用下で、予測可能かつ制御可能な方法で裂ける(破れる)ように設計され得る。そのような力は、送達システムに組み込まれ得るスリッティングツールを使用して加えられる。そのような力を加えることにより、シースは、その長さに沿って破れて分離し、管状体を解放することができる。
【0034】
実施形態において、分裂可能なシースは、天然血管内に配置された後に、ステント付き管状部分から後退したシースの取り外しを容易にするスプリッタ機構を含むハブに対して格納可能である。
【0035】
実施形態において、スプリッタ機構は、管状体の近位-遠位軸方向にスリッタブレードエッジを提示するように配置された、1つまたは複数の受動(静的)スリッタ要素を含んでいてもよく、それにより、シースは、受動スリッタ要素のこれらのスリッタブレードエッジに対して後退することにより分裂される。
【0036】
実施形態において、スプリッタ機構は、ハブ上またはハブ内に設けられ得る少なくとも一対のスリッタ要素を含んでいてもよい。
【0037】
スプリッタ機構は、分裂可能なシースを1つまたは複数の場所で分離し、少なくとも1つの縦方向スリットを形成して、シースを一体に、または任意で複数の部分に、例えば縦に半分に分裂できるようにすることができる。
【0038】
スリッタ要素は、ポリアミドなどのプラスチック材料(例えば、ナイロン)で作られていてもよい。
【0039】
代替的な実施形態において、分裂可能なシースは、引き裂き線、ミシン目、プリカット部分を組み込むか、あるいは制御された方法で分離を促進する縫合糸を導入することにより、引き剥がされるか、あるいは引き離されるように設計され得る。
【0040】
そのような実施形態の選択肢は、回収可能であり、分裂可能なシース内を通過し、該分割可能なシースの遠位端に例えば縫合により取り付け可能である、細いプルストランドを提供するものである。プルストランドは、分割可能なシース上を近位端に戻り、分裂可能なシース上で引き出されるときに、該分裂可能なシースを分裂するのに十分なほど薄い。ユーザは、プルストランドの近位端から外側にプルストランドを引っ張ると、プルストランドの遠位端が持ち上がり、プルストランドによる分裂可能なシースの分裂が開始する。ユーザがプルストランドを外部から引き続けると、分裂可能なシースが遠位端から近位端に分割される。分裂可能なシースの近位端は、分割されたシース回収のために、プルワイヤまたはプルストラップに取り付けられていてもよい。
【0041】
管状体は、標的の天然血管内に解放されると、血流のための回復された管腔を形成し、天然血管を通る器具の通過を容易にする。
【0042】
管状体の長さ部分Lは、拡張ステップ後に拡張された寸法を保持するために、永久的に拡張可能な材料で形成され得る。
【0043】
実施形態において、管状体の長さ部分Lは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリエステルファブリックで形成され得る。
【0044】
ポリエステルなどの任意の生理学的に不活性または良性である材料を使用して、空気を含む流体および体液を実質的に透過させない管状体を形成してもよい。
【0045】
そのような置換に通常使用される補綴グラフトは、典型的には、織地または編地であり得るポリエステルファブリックからできており、例えばゼラチンまたはコラーゲンなどのシーラントで密封されていてもよい。
【0046】
管状体は、ePTFE、PTFEまたはポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンのファブリック(通常は、編地または織地)でできていてもよく、また、摩擦を減らすために、あるいは凝固を防いで医薬品を送達するために、必要に応じてコーティングされていてもよい。ファブリックは、一般に、細胞の内部成長を可能にするために、少なくとも1つの表面が多孔質であろう。
【0047】
天然血管の管腔を拡張するためにバルーン装置を使用すると、管状体の長さ部分Lが拡張され得る。バルーン装置は、米国特許第5925074号、欧州特許出願公開第085571(A2)号、および欧州特許出願公開第2676639(A1)号に記載されているように、当技術分野で知られている。適切な器具を代表するバルーン装置は、Atrium Internationalから入手することができる。典型的には、送達シャフトまたはカテーテル上に提示されることになるバルーン拡張可能グラフトなどの、器具の拡張に使用されるバルーンは、テーパー状の端部を備えた折り畳み可能な管状形状を有している。したがって、管状形状は、真っ直ぐな管状プロファイルセクションの遠位端および近位端に、円錐台形のテーパーセクションを提示することができ、このテーパーセクションは、管状要素の上にあるか、または管状要素に固定されており、通常、そのような管状要素内への送達ワイヤ、シャフトまたはカテーテルの通過を受け入れる。真っ直ぐな管状プロファイルセクションは、中空の円筒形状に拡張され得る。グラフトなどのバルーン拡張可能器具は、真っ直ぐな管状セクションの外面に取り付けられる。このような器具は、本明細書に記載された管状体の展開に関連して、天然血管の狭窄部位を越えてアクセスするための明確な通路を提供する、天然血管の管腔を拡張する目的に有用である。
【0048】
管状体の長さ部分Lは、送達システムに関連するバルーンを受容するように設計されていてもよく、このバルーンは、送達システムとともに取り除くことができる。例えば、バルーン拡張可能コンポーネントを備えた管状体グラフトなどの器具、その器具の送達システム、およびバルーンが、リリースワイヤによって接続されたアセンブリとして一緒に患者に挿入されるように、バルーンが送達システムの一体化部分であってもよい。送達システムおよびバルーンは、器具の送達、配置、および解放後に取り除かれる。
【0049】
管状体の長さ部分Lは、1つまたは複数のステント要素によって、拡張されたプロファイルで支持され得るので、それにより、バルーンが取り除かれた後も大きくなった管腔幅寸法が維持される。長さ部分Lは、天然血管の管腔に最初に挿入可能である管状体の部分であるため、以下では「内部セクション」として説明される場合がある。
【0050】
ステント要素は、リングステントを含んでいてもよく、その少なくともいくつかは、サドル形状であってもよい。適切なステントは、国際公開第2012/164292(A1)号に記載されている。
【0051】
管状体の長さ部分Lは、正常な天然血管、すなわちくびれておらず、病気、弱化または狭窄症の影響を受けていない天然血管の管腔のサイズを超える幅寸法まで拡張可能であってもよい。管状体の長さ部分Lを使用して、腸骨血管を拡張することができ、また、腸骨血管内に補強グラフトを提供することができる。そのような補強グラフトは、腸骨などの脆弱な血管に対する保護を提供し、また、送達システム、さらなる拡張を可能にするバルーンなどのコンポーネント、またはグラフトなどの物品をその後通過させる機会を提供する。
【0052】
実施形態において、管状体の長さ部分Lは、6mm~14mmの範囲内の寸法に拡張可能であってもよい。
【0053】
使用中、管状体の長さ部分Lは、管状器具のユーザに対して遠位部分である。
【0054】
長さ部分Lの開口管腔は、通常の天然血管、すなわち、くびれていない、疾患のない、弱化していない、または狭窄症でない天然の血管の管腔と少なくとも実質的に等しいサイズとすることができ、送達システムコンポーネントまたはコンパクトデバイスが通過できるように寸法設定することができる。長さ部分Lの開口管腔は、6mm~14mmの範囲内の幅寸法を有し得る。
【0055】
使用中、管状体の長さ部分Lは、管状器具のユーザに対して近位部分である
【0056】
管状体は、例えば典型的なEVAR治療のように、管状体の管腔を通る送達システムコンポーネントの繰り返しの通過から生じる摩擦または物理的接触に耐性のある材料とすることができる。材料は、管状体の管腔を通して送達システムを挿入して引き抜くための、少なくとも3回、または4回、または5回、または6回以上の連続的処置に耐えるように設計され得る。
【0057】
適切な材料には、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリエステルファブリックが含まれる。
【0058】
ポリエステルなどの生理的に不活性または良性の材料を使用することができる。
【0059】
そのような置換に通常使用される補綴グラフトは、典型的には、織地または編地であり得るポリエステルファブリックでできており、例えばゼラチンまたはコラーゲンなどのシーラントで密封されていてもよい。
【0060】
管状体は、ePTFE、PTFEまたはポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンのファブリック(通常は、織地または編地)でできていてもよく、また、摩擦を減らすために、あるいは凝固を防いで医薬品を送達するために、必要に応じてコーティングされていてもよい。ファブリックは、細胞の内部成長を可能にするために、少なくとも1つの表面が多孔質であってもよい。
【0061】
実施形態において、材料は、織地または編地であり得るポリエステルファブリックとすることができ、例えばゼラチンまたはコラーゲンなどのシーラントで密封されていてもよい。
【0062】
管状体を形成する材料の少なくとも一部は、ひだ付きであっても、あるいはプリーツ加工されていてもよい。ひだ付きのファブリックスリーブを使用して管状体の少なくとも一部を形成すると、長さが調整可能になり、管状体を縦方向に引き伸ばし、必要に応じて所望の方向に湾曲させることができる。
【0063】
本開示で使用される「ひだ付き」という用語は、側面から見たときに、ほぼジグザグの輪郭または正弦曲線のプロファイルを有する、周方向の波形または螺旋プロファイルを有し、外面が、管状体の捲縮部分の実質的な長さにわたって最大寸法から最小寸法まで繰り返しうねっているファブリックに関する。そのようなひだ付きプロファイルによれば、縦方向に伸張させることにより、管状体のひだ付き部分に追加の長さを得ることを可能にする。あるいは、縦方向に圧縮させることにより、より短い長さを得ることができる。さらに、ひだ付きの表面は、ひだ付き部分の曲げにも対応し、管状体の、天然血管との接続および患者の血管の変動に対応するために必要な直線プロファイルから曲線プロファイルへの方向転換に対応する。さらに、ひだ付きの表面は、ひだ付き部分の曲げにも対応している。これは、天然血管との接続に必要であり得る直線プロファイルから曲線プロファイルへの管状体の方向転換に対応し、患者の血管の変動を考慮するためである。
【0064】
実施形態において、管状体の一部は、一連のセクションを含む長さを有し、各セクションは、管状体のその部分の長さをトリミングし易くするためにグリップされ得るタブを有する。
【0065】
実施形態において、各セクションは、タブの代わりに保持ループを有しており、体液の存在に起因する外科的処置の滑りやすい条件下でトリミングするために、管状体を把持および保持する能力を改善する。
【0066】
タブまたはループは、管状体に使用される材料と同じまたは異なる生体適合材料で作ることができる。
【0067】
実施形態において、管状体は、該管状体を通る送達システムコンポーネントまたは器具の通過を容易にするために、その内部が低摩擦または滑り促進材料で裏打ちまたはコーティングされていてもよい。この目的には、PTFEライナー、コーティングまたはレイヤーが適切であり得る。
【0068】
管状体を形成する材料の厚さは、0.05mm~1.0mmの範囲内とすることができ、好ましくは、0.7mm±0.2mmである。
【0069】
管状体は、ステントまたは一連のステント要素であり得る弾性支持体によって、少なくとも部分的に支持され得る。適切なステントタイプは、リングステントであってもよいが、螺旋、Z型またはジグザグ、および管状メッシュタイプ、ならびにリングステントの有無に関わらずこれらのタイプの任意の組み合わせも適切であり得る。
【0070】
実施形態において、管状体は、長さLを有し、その少なくとも1つの長さ部分Lはステントによって支持されておらず、少なくとも1つのさらなる長さ部分Lがステントによって外部または内部で支持されている。ステントは、自己拡張型ステントであり得る。ステントは、形状記憶材料でできていてもよい。
【0071】
実施形態において、管状体は、長さLを有し、その少なくとも1つの長さ部分Lが少なくとも1つのさらなる長さ部分Lよりも短い。
【0072】
実施形態において、管状体は、長さLを有し、その少なくとも1つの長さ部分Lが少なくとも1つのさらなる長さ部分Lよりも長い。
【0073】
実施形態において、管状体は、長さLを有し、その少なくとも1つの長さ部分Lが少なくとも1つのさらなる長さ部分Lとほぼ同じ長さである。
【0074】
実施形態において、管状体の少なくとも一部は先細(テーパー)になっている。
【0075】
実施形態において、少なくとも1つのさらなる長さ部分Lは、天然血管の幅寸法に一致するように先細になっている。
【0076】
実施形態において、管状体は、少なくとも1つの長さ部分Lと、少なくとも1つのさらなる長さ部分Lと、必要な湾曲度を保持するために任意選択で縫い付けられた、湾曲した、例えばプリーツ状のファブリック材料を導入するように構成された少なくとも1つの長さ部分Lと、を含む長さLを有する。実施形態において、少なくとも1つの長さ部分Lは、少なくとも1つの長さ部分Lと、少なくとも1つの長さ部分Lとの間に位置する。実施形態において、少なくとも1つの長さ部分Lは、少なくとも1つの長さ部分Lと、Lタイプの少なくとも1つのさらなる長さ部分と、の間に位置する。
【0077】
実施形態において、管状体は、その全長Lの各端部にLタイプの長さ部分を含み、かつ該全長Lは、それらの間にある少なくとも1つの長さ部分Lで構成されている;あるいは、管状体は、その全長Lの各端部にLタイプの長さ部分を含み、かつ該全長Lは、少なくとも1つの長さ部分Lと少なくとも1つの長さ部分Lとが交互に連続して構成されているため、全長Lは少なくとも1つの拡張可能部分および少なくとも1つの曲線を含んでいる。
【0078】
管状体には、該管状体から横方向に延びる灌流ブランチを設けることができる。
【0079】
灌流ブランチは、管状の本体に取り付けられたファブリックで形成され、全体として二股の「Y」構成を形成し得る。灌流ブランチは、管状体を形成するのに使用される材料と同じ材料で作ることができる。灌流ブランチは、外科的処置の実施において、天然血管に吻合され得る。
【0080】
使用中、管状体は、典型的には脆弱な天然血管に対する永続的な補強材として作用するため、アクセスのための、拡張もしくは膨張、または閉塞もしくは管腔制限の除去を必要とする標的の天然血管内に留められる。このようにして、追加の手順または介入のための後続のアクセスが容易になり、アクセス可能な標的の天然血管への損傷のリスクが低減される。
【0081】
例えば、大動脈の疾患のある部分または機能不全の部分を治療するための、その後の血管内動脈瘤修復(EVAR)は、常在の管状体を介して、該常在の管状体が位置する天然血管を損傷するリスクを低減して行われ得る。
【0082】
注目すべきは、いったん標的の天然血管内に配置された前述の管状体は、膨張能力がより高い異なるバルーン拡張器具を使用して、連続した天然血管拡張ステップで、より大きな管腔寸法に拡張され得る。実施形態において、管状体は、自己拡張型ステントを有し、送達シャフトが取り除かれると、天然血管の範囲によってのみ抑制される。このようにして、バルーン拡張器具が天然血管を拡張するとき、管状体は、自己拡張型ステントからの支持により拡張寸法を保持する。
【0083】
従って、拡張可能な管状体内でバルーンを使用して天然血管を拡大する拡張手順は、所望の管腔寸法を達成するために複数回繰り返すことができる。最初のステップでは、一体型バルーンを備えた送達システムを使用して天然血管の寸法に初期拡張をもたらし、支持管状体を配置および展開して天然血管の初期拡張を維持する。天然血管の初期拡張がその後の所望のEVAR治療には不十分である場合、一体型バルーンを備えた送達システムを取り出し、拡張能力がより高い別のバルーンを送達システム上に導入して膨張させ、天然血管の第2の拡張を引き起こす。このステップは、所望の管腔寸法を達成するために繰り返すことができる。状況によっては、腸骨血管などの重度に損傷または閉塞した天然血管を割き、EVAR送達システムを受け入れるための所望の管腔寸法に管状体を十分に拡張することが望ましいか、あるいは必要でさえある。拡張された管状体は、拡張されるか、あるいは割かれた天然血管内に留まって、損傷部分を代替し、管腔の開通性を維持する。
【0084】
本開示の管状器具用の手持ち式送達システムは、その上で管状器具を支えて送達することができる、細長い、可鍛性の、「送達」シャフト、(またはカテーテルもしくはワイヤなどの機能的同等物)を含んでいてもよい。送達シャフトは、ステント無しセクション(管状長さ部分L)を介して、管状器具の管腔に挿入することができる。送達シャフトは、体液の漏れと空気の進入を防ぐために、イントロデューサドライシール/バルブを通過することができる。
【0085】
細長い、可鍛性の送達シャフトは、その上に取り付けられた一体型バルーンを有していてもよい。
【0086】
使用中、血管内拡張器具として使用される管状体は、細長い、可鍛性の送達シャフト上の一体型バルーン上に配置され、器具およびバルーンは、該器具およびバルーン上に取り外し可能なシースを適用することにより、薄型のコンパクトな送達可能形態に抑制される。
【0087】
送達システムは、遠位先端から離れた送達シャフトの一端に取り付けられたユーザ操作制御ハンドルをさらに含み、ユーザが、送達システムおよびそこから展開される管状器具の位置を移動、操作、および制御できるようにする。
【0088】
ハンドルは、細長い送達シャフトの上および周囲に嵌合するように構成されたスロット付きハウジングを含んでいてもよく、その上に器具を取り付けて、取り外し可能なシース内にコンパクトな形態で拘束してもよい。スロット付きハウジングは、送達シャフト上に配置されたときに、管状器具の少なくとも一部を覆う。
【0089】
取り外し可能なシースは、取り外し時にシースを縦方向に分割するために、例えば、所定の引き裂き線に沿って分割することができ、これは、取り外し可能なシースがプラーを使用して引っ張られるときに、スリッタ要素またはカッター刃との接触によって穿孔されたり、スリットが入れられたり、あるいは切断されたりする。
【0090】
送達システムの一実施形態は、シースを縦方向に分割して、管状器具の血管内セクションの拘束されたステント付き管状部分を展開構成に拡張できるようにするための少なくとも1つのスリッタ要素と、シースの取り外しを可能にするために該シースに接続された、プルストラップ、コード、テープ、ワイヤなどのシース取り外し要素と、を含む、シース取り外し機構を含んでいてもよい。プルストラップを引っ張ってシースがスリッタ要素に接触させると、シースがスリットされ得る。
【0091】
スリッタ要素は、シースの直線的な均等分割を可能にし得る。
【0092】
スリッタ要素は、細長い、可鍛性の送達シャフトに取り外し可能に取り付けられたハブに固定されるか、あるいはハブ内に配置され得る。
【0093】
ハブは、細長い送達シャフト(および使用する場合はガイドワイヤ)の周りに嵌合し、クリップ止めされるか、あるいは取り外し可能に一緒に固定されるようになっている、2つの部分円筒部品を含んでいてもよい。
【0094】
実施形態において、ハブは、シースの後退中にシースを分割して、内部人工血管器具のステント付き管状部分の展開を可能にするスリッタ要素を提供する、スリット縁部を有するように形成された突出部を有し得る。
【0095】
ハブは、シースの尾部の両側に接続されたプルストラップを、シースを取り外すためにユーザによって使用されるプルハンドルに通すことができる、一対のスリットを有していてもよい。
【0096】
以下の説明では、添付の図面を参照して、実施形態の追加の詳細を例示的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】ステント無しセクションに接続されたステント付き留置セクションを含む、植込み型の管状体の側面図である。
図2】バルーン拡張器を使用してステント付き留置セクションを拡張した後の、図1に示す植込み型の管状体の側面図である。
図3】植込み型の管状体の別の実施形態の上方からの側面図である。
図4図3の植込み型の管状体の側面図である。
図5図3の植込み型の管状体の上面図である。
図6図3の左から長手方向に見た、図3の植込み型の管状体の端面図である。
図7】前部上腸骨棘から恥骨結節まで延びる鼠径靱帯を参照して、天然血管、例えば腸骨に関する血管の位置を特定するための、外科的処置の最初のステップを模式的に示す図である。
図8】最初の外科的切開部位をすべての外科医の側方に引き込み、アクセスポイントを提供するために、腸骨に関する血管などの天然血管を露出し、(結紮により)結び、切開した、外科的処置における後続のステップを模式的に示す図である。
図9】送達システムの導入を準備するための、ガイドワイヤ(セルディンガーワイヤ法)の導入を模式的に示す図である。
図10】特に送達システムによって運ばれる管状器具の灌流ブランチへの止血クランプの適用、および切開アクセスポイントを介した天然血管への送達システムの前進を模式的に示す図である。
図11】天然血管への灌流ブランチの吻合を模式的に示す図である。
図12】管状器具の管状部分に関連する内部バルブを介して送達システムから空気を排出し、管状器具が配置された送達システムにより運ばれる一体型バルーンによって、該バルーンの拡張中に管状器具の留置部分を天然血管内に展開する、手順のステップを模式的に示す図である。
図13】外部の流体供給器具(注射器が示されている)から一体型バルーン(後に、取り出すために収縮させることができる)を膨張させることによる、配置された管状器具の拡張を模式的に示す図である。
図14】管状器具の管状部分内に配置されたバルブを介した、一体型バルーンを備える送達システムの除去を模式的に示す図である。
図15】管状器具内に配置されたバルブを介して挿入されたより大型のバルーンの膨張、および管状器具がより大きな管腔寸法に拡張された後の収縮を模式的に示す図である。
図16】収縮したより大型のバルーンの除去を模式的に示す図である。
図17】管状器具を通り、血管系を通ってエンドグラフトの展開を必要とする部位へと続く、バルブを介したその後の導入のための、ガイドワイヤへのEVARシステムのねじ込み(セルディンガーガイドワイヤ法)を模式的に示す図である。
図18】EVARシステムによって導入された展開された分岐グラフトを模式的に示す図である。システムは、引き込まれている(後退している)。
図19】バルブおよび管状器具の余分な長さの切断を可能にするための、ガイドワイヤの除去、ならびに送達システムが血管系にアクセスするために通過した管状体の一部の縫合閉鎖を模式的に示す図である。
図20】後退した切開部位内の最終的な管状器具の配置を模式的に示す図である。
図21】切開部を縫合する最終の外科的ステップを模式的に示す図である。
図22】送達システムの一実施形態のハンドル部分を示す図である。
図23】取り外し可能なシース内に、薄型のコンパクトな形態である管状器具を搭載した、送達システムの一実施形態を示す図である。
図24】取り外し可能なシース内に、薄型のコンパクトな形態である管状器具および一体型バルーンを搭載した、送達システムの一実施形態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
図1および2に示す実施形態において、植込み型グラフトは、例えば縫合糸12によって互いに固定されて血液密封シールを形成する、2つの管状セクションを含む。この2つの管状セクションは、管状長さ部分Lおよびさらなる管状長さ部分Lを含む長さ寸法Lを有する、中空管状体1を形成している。管状長さ部分Lは、血管内セクション10を形成しており、複数のステント11を有する。複数のステント11は、コンパクトな形態に圧縮可能であり、かつ拡張(膨張)構成で管状長さLを支持するように拡張可能である。取り外し可能なシースの使用により、送達用にコンパクトな形態を保持することができる。
【0099】
植込み型グラフトは、折り畳み可能なスリーブの形態の布地で作られており、その少なくとも一部が、ひだ付きであっても、あるいはプリーツ加工されていてもよい。管状の長さ部分Lおよびさらなる管状の長さ部分Lはそれぞれ、ePTFE、PTFEまたはポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンの編地または織地などの、生理学的に許容される材料または良性の材料から選択された、同一または異なる流体不透過性のファブリックで作られていてもよい。生地は、例えばゼラチンまたはコラーゲンなどのシーラントで密封されていてもよい。
【0100】
ステント11は、ファブリックスリーブに個別に取り付けられた、別個の変形可能なリングステントである。これらのステント11の少なくともいくつか、任意にすべては、自己拡張するように、形状記憶金属またはプラスチック材料で作られていてもよい。リングステント11の各々は、ステンレス鋼などの弾性材料、またはニチノール(ニッケルチタン合金)などの形状記憶金属合金、またはポリエーテルエーテルケトンPEEKなどの高弾性率ポリマーの連続ループでできていてもよく、縫合糸、接着剤、または必要に応じて熱接着によって、血管内セクション10に取り付けられていてもよい。各リングステント11は、血管内セクション10の外面に対してヒートセットされ得る形状記憶材料から形成されていてもよい。図示の例では、各リングステント11の起伏のある輪郭は、使用中に「サドル型」のリングステントを形成するために2つのピーク20および2つのバレー22を容易に形成する圧縮可能な形状記憶材料を含んでいる。ニチノールワイヤの複数の巻線の連続ループの使用は、この目的のために有利である。
【0101】
本明細書に記載される植込み可能なグラフトに適した送達システムは、とりわけ、シースのない血管内セクション10の拡張を支援し、少なくとも天然血管の拡張を開始するための一体型バルーン拡張器を含む。一例のバルーン15は、テーパー状の端部を備えた、折り畳み可能な管状形状である。管状形状は、直管状の輪郭部18の遠位および近位端上にそれぞれ、円錐台形のテーパーセクション16、17を有し、このテーパーセクション16、17は、管状要素19に固定されて、それらの間に膨張容積を画定する。膨張容積は、その最大限の膨張で、狭い管腔の標的の天然血管の対応する長さの初期の天然の容積を超える場合がある。
【0102】
狭い管腔の標的の天然血管は、腸骨動脈などの元から狭く捻じれた血管系の一部、または狭窄(stenosis)、狭窄(stricture)もしくは石灰化によりくびれた天然血管の管腔であり得る。
【0103】
本実施形態の使用においては、一体型バルーン15によって少なくとも部分的に拡張された天然血管の管腔に支持を提供するために、植込み型グラフトが該バルーンの膨張中に拡張可能であるように、また、取り外し可能なシース内での送達用にパッケージ化されるように、特には、血管内セクション10が血管系の標的の狭い天然血管内への送達用にコンパクトに覆われ、かつ少なくとも血管内セクション10が標的の天然血管内の所定の位置にあるときに覆いが取り払われるように、植込み型グラフトは、一体型バルーン15を十分に覆っている。シースの除去後、バルーン15は、天然血管を少なくとも第1の程度まで拡張するために、拡張または部分的に拡張された血管内セクション10内で膨張する。
【0104】
例えば、EVARシステムを収容するために追加の拡張が必要な場合、送達システムおよび一体型バルーン拡張器を撤収し、拡張容量の大きい別のバルーンを適切なさらなる送達システムで送達し、該バルーンを膨張させて天然血管をさらに拡張し、血管内セクション10の追加の拡張を可能にし、その後、バルーンの収縮後に、さらなる送達システムおよびバルーンを除去する。この手順は、天然血管が完全に拡張されるまで、あるいは天然血管は破裂する一方で、完全に拡張された血管内セクションが所望の管腔開通性を有する植込み型グラフトとして機能するまで、さらなるバルーンの置換により繰り返すことができる。
【0105】
図3~6に示す一実施形態において、まず図3を参照すると、植込み型グラフトは、分岐(Y)構成を有し、管状長さ部分Lおよびさらなる管状長さ部分Lを含む長さ寸法Lを有する、管状体31を含む。管状長さ部分Lは、血管内セクション30を形成し、複数のステント41を有する。当該複数のステント41は、コンパクトな形態に圧縮可能であり、かつ拡張(膨張)構成において管状長さ部分Lを支持するように拡張可能である。使用中、血管内セクション30は、脈管構造の標的の天然血管内に送達するために被覆される。
【0106】
分岐した肢の1つは、外科手術の実施において天然血管60(図11)に吻合される灌流ブランチ36として機能する。
【0107】
分岐した肢のもう一方は、送達システムコンポーネントの導入または除去のための、ならびにEVAR手術を実施するための、アクセスブランチ34として機能する。
【0108】
アクセスブランチ34の少なくとも一部は、一連のセクション37を含むトリミング可能な長さを有し、各セクションは、管状体31のそのブランチリムの長さのトリミングを容易にするために把持され得るタブまたはループ38を有している。
【0109】
植込み型グラフトは、折り畳み可能なスリーブの形態のファブリックでできている。管状長さ部分Lおよびさらなる管状長さ部分Lはそれぞれ、ePTFE、PTFEまたはポリエステル、ポリエチレンまたはポリプロピレンの編地または織地などの、生理学的に許容される材料または良性の材料から選択された、同一または異なる流体不透過性のファブリックで作られていてもよい。生地は、例えばゼラチンまたはコラーゲンなどのシーラントで密封されていてもよい。
【0110】
血管内セクション30は、別個のリングステントであるステント41を含む。ステント41は、ファブリックスリーブに個別に取り付けられており、ピーク42およびバレー43部分を有する「サドル」形状のステントとして、拡張されたファブリックスリーブを支持する最終用途向けに構成されている。
【0111】
リングステント41の各々は、ステンレス鋼などの弾性材料、またはニチノール(ニッケルチタン合金)などの形状記憶金属合金、またはポリエーテルエーテルケトンPEEKなどの高弾性率ポリマーの連続ループでできていてもよく、縫合糸、接着剤、または必要に応じて熱接着によって、ファブリックスリーブに取り付けられていてもよい。
【0112】
各リングステント41は、血管内セクション30の外面に対してヒートセットされ得る形状記憶材料から形成されていてもよい。図示の例(図3)では、各リングステント41の起伏のある輪郭は、使用中に「サドル型」のリングステントを形成するために2つのピーク42および2つのバレー43を容易に形成する圧縮可能な形状記憶材料を含んでいる。ニチノールワイヤの複数の巻線の連続ループの使用は、この目的のために有利である。
【0113】
このように、ステント付き血管内セクションは自己拡張型であり、標的の天然血管がバルーンによって完全に拡張された後、完全に開いた管腔寸法をとることができる。
【0114】
使用中、図7~21を参照すると、図3~6の実施形態を使用した外科的処置が「ストーリーボード」形式で示されている。この外科的処置は、以下のように実施され得る。
【0115】
現在推奨されている医療慣行に従って手術野を準備した後、前部上腸骨棘から恥骨結節まで延びる鼠径靱帯を参照して、天然血管、例えば腸骨血管の位置を特定する。
【0116】
つぎに、適切に切開して後退させ、(結紮により)結ばれた標的の腸骨血管を露出させ、該腸骨血管を切開し、灌流に使用するのに適したブランチを含む分岐式血管内管状器具を挿入するためのアクセスポイントを提供する。
【0117】
ガイドワイヤを腸骨血管に導入し(セルディンガーワイヤ法)、血管内管状器具を備えた送達システムの導入を準備する。血管内管状器具の留置セクションは、ガイドワイヤを介して腸骨血管に通され、ガイドされる。
【0118】
送達システムによって運ばれる管状器具の灌流ブランチを含む器具に適切な止血クランプを適用し、最初の挿入切開ポイントから離れた地点で灌流ブランチを腸骨血管に提示するのに十分になるまで、送達システムを。切開アクセスポイントを介して腸骨血管内へと前進させる。
【0119】
つぎに、灌流ブランチを腸骨血管に吻合して、血管内管状器具を通る灌流バイパス経路を完成させる。
【0120】
手順のこの段階で、管状器具の管状部分に関連付けられた内部バルブを介して、送達システムから空気を排気することが可能であり、管状器具のステント付き留置部分は、送達システムによって運ばれた一体型バルーン(その上に管状器具が配置されている)によって少なくとも部分的に拡張される天然血管内に展開される。
【0121】
展開された管状器具の膨張は、外部の流体供給器具(例えば、図13に示される注射器)からの一体型バルーンの膨らみとともに進行し、その後、バルーンは、除去のために収縮させることができる。
【0122】
腸骨血管の拡張部分を支持する管状器具の膨張したステント付き血管内部分を残して、管状器具の管状部分内に配置されたバルブを通して、バルーンが組み込まれた送達システムを引き抜く。
【0123】
例えば、EVARシステムの通過を可能にするなどの目的で、腸骨血管の拡張部分をさらに拡張する必要がある場合は、別の送達システムのより大型のバルーンを、管状器具内に配置されたバルブを介して挿入し、続いて膨張させて、先に膨らませた管状器具のステント付き血管内部分をさらに膨張させることができる。その後、2番目のバルーンを収縮させて、その送達システムで撤収し、管状器具のステント付き留置部分をさらに拡張した状態のままにして、すでに拡張した腸骨血管をより大きな管腔寸法に拡大することができる。上記のような繰り返しステップで膨張容量が増加し続けるさらなるバルーンの使用は、天然血管が十分に拡張されるか、あるいは天然の血管が破裂する一方で血管内ステント付き管状体部分Lが適切に拡張してEVARシステムがアクセスできるようになるまで実施することができる。管状器具は、破裂した可能性のある腸骨血管の代わりとなり、腸骨血管における管状グラフト移植部を越えて血管系にアクセスするのに十分な管腔寸法を有する、常駐管状グラフトとして移植されたままにされる。
【0124】
バルーンの連続使用によって腸骨血管が十分に拡張されたと仮定すると、常駐の膨張された管状器具は、EVARシステムをガイドワイヤに通して(セルディンガーガイドワイヤ法)、エンドグラフトの配置を必要とする部位への、管状器具を介し、血管系を介したその後の導入のための十分な開通性を維持する。
【0125】
送達システムを取り除いて、通常の優良な慣行に従って外科的処置を完了することができる。
【0126】
図22を参照すると、送達システムは、システムを操作および制御するためのオペレータハンドル220を有する。ハンドル220は、部品で構成されており、送達する管状器具の少なくとも一部の上に重なるように設計された長さを有し、ワイヤ、カテーテルまたは可撓性もしくは可鍛性シャフトを通過させることができる長手方向の軸貫通孔を備えている。ハンドル部品には、取り外し可能なシースに通されるプルハンドルストラップを受け入れるための第1のハンドル部分221、ハブ222、およびスロット付きテーパーグリップ223が含まれる。シーススリッター器具224は、ハンドル内に、任意にハブ上に組み込むことができるが、スロット付きテーパーグリップ223の遠位面でハンドル220の前面に設けると便利である。
【0127】
図23は、取り外し可能なシース230内に薄型でコンパクトな形態で入っている管状器具231が装填された、送達システムの一実施形態を示している。U字形のプルハンドル232は、ストラップ233により、オペレータハンドル220を介して、取り外し可能なシース230に接続されている。使用中、オペレータは、オペレータハンドル220を使用して送達システムを操作し、挿入されたガイドワイヤに対して送達システムを前進または後退させて(セルディンガー法)、天然の腸骨血管内に管状器具231を配置することができる。管状器具231を適切に配置したら、U字形のプルハンドル232を使用してシース230を後退させ、天然の腸骨血管内に管状器具231を展開することができる。適切なバルーン膨張ステップ後に、オペレータハンドル220を使用して、管状器具のステント無しの肢に組み込まれたドライシール/バルブ(図14)を介して収縮させた一体型バルーンを含む、送達システムの挿入部分を後退させることができる。
【0128】
図24は、取り外し可能なシース241内に薄型でコンパクトな形態で構成された管状器具240および一体型バルーン245が装填された、送達システムを含む装置の一実施形態の部分断面図を示す。
【0129】
管状器具240は、上述したような管状器具31、231と同様の植込み型グラフトを提供する。管状器具240は、例えば縫合糸242によって互いに固定されて血液密封シールを形成する2つの管状セクションを含み、これらは、管状長さ部分L1およびさらなる管状長さ部分L2を含む長さ寸法Lを有する中空の管状体243を形成している。管状長さ部分L1は、血管内セクション250を形成しており、複数のステント244を有する。複数のステント244は、コンパクトな形態に圧縮可能であり、かつ拡張(膨張)構成で管状長さL1を支持するように拡張可能である。図示するように、取り外し可能なシースの使用により、送達用にコンパクトな形態を保持することができる。植込み型グラフトは、血管内セクション250がシースで被覆されていないときに該セクション250を拡張することができる、一体型バルーン245を含む。バルーン245は、テーパー状の端部を備えた折り畳み可能な管状形状を有する。管状形状は、直管状の輪郭部248の遠位および近位端上にそれぞれ、円錐台形のテーパーセクション246、247を有し、このテーパーセクション246、247は、管状要素249に固定されて、それらの間に膨張容積を画定する。膨張容積は、標的の天然血管の対応する長さの天然の容積を超える場合がある。血管内セクション250は、別個のリングステントであるステント244を含む。該ステント244は、ファブリックスリーブに個別に取り付けられており、ピーク252およびバレー253部分を有する「サドル」形状のステントとして、拡張されたファブリックスリーブを支持する、最終用途向けに構成されている。
【0130】
送達システムは、図23を参照して説明したタイプのものであり、システムを操作および制御するためのオペレータハンドル260を有する。ハンドル260は、部品で構成されており、送達する管状器具の少なくとも一部の上に重なるように設計された長さを有し、ワイヤ、カテーテルまたは可撓性もしくは可鍛性シャフトを通過させることができる長手方向の軸貫通孔を備えている。ハンドル部品には:取り外し可能なシースに通されるプルハンドルストラップを受け入れるための第1のハンドル部分261、ハブ262、およびスロット付きテーパーグリップ263が含まれる。シーススリッター器具264は、ハンドル269内に、任意にハブ上に組み込むことができるが、スロット付きテーパーグリップ263の遠位面でハンドル260の前面に設けると便利である。
【0131】
図24の実施形態は、図3~6の実施形態について説明したものと類似に使用され、図7~21を参照して説明したような外科的処置で使用される。
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