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特許7182144活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜、塗装物品及び塗膜形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜、塗装物品及び塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/16 20060101AFI20221125BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20221125BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20221125BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20221125BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221125BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09D175/16
C09D7/40
C09D4/00
C09D4/02
B05D7/24 301T
B05D3/06 Z
B05D7/24 302T
B05D7/24 302P
B05D7/24 302V
B05D7/24 302Z
B05D7/24 302X
B05D7/24 303A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021502392
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008202
(87)【国際公開番号】W WO2020175664
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2019036452
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】中岡 晴河
(72)【発明者】
【氏名】後藤 宏太
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006161(JP,A)
【文献】特開2014-141654(JP,A)
【文献】特開2017-165870(JP,A)
【文献】特開平8-092342(JP,A)
【文献】特開2020-114929(JP,A)
【文献】特開2018-192470(JP,A)
【文献】特開2018-098578(JP,A)
【文献】特開2018-193529(JP,A)
【文献】国際公開第2017/073522(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/16
C09D 7/40
C09D 4/00
C09D 4/02
B05D 7/24
B05D 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
(A)1分子内にポリカーボネート骨格及び3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート
(B)重量平均分子量が1,000以上10,000未満の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート
(C)1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が280以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c1)、
1分子内に脂環構造及び1個又は2個の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が200以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c2)、並びに
重量平均分子量が110以上1,000未満の範囲内である(メタ)アクリルアミド化合物(c3)
から成る群から選択される少なくとも1種の化合物
(D)光重合開始剤
【請求項2】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリカーボネートジオール(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であって、
前記重合性不飽和化合物(a3)が少なくとも、1分子内に水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’)を含有する、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート化合物(a2)がジイソシアネート化合物である、請求項2に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記重合性不飽和化合物(a3’)が、1分子内に1個の水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’’)である、請求項2又は3に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項5】
前記成分(A)、(B)及び(C)の合計固形分を基準として、前記成分(A)の固形分配合量が10~40質量%の範囲内であり、前記成分(B)の固形分配合量が25~70質量%の範囲内であり、前記成分(C)の固形分配合量が20~50質量%の範囲内である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項6】
さらに、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも一方を含有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項7】
前記活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた硬化塗膜のガラス転移温度が40~90℃の範囲内である、請求項1~6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた、架橋間分子量が200~900g/molの範囲内である硬化塗膜。
【請求項9】
被塗物上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた硬化塗膜を有する塗装物品。
【請求項10】
被塗物上に、請求項1~7のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装して未硬化塗膜を形成した後、該未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射し、硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型塗料組成物、硬化塗膜、塗装物品及び塗膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線や放射線などの活性エネルギー線により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、例えば、塗料、インキ、接着剤などの用途に幅広く利用されている。一般的に、熱硬化型塗料やラッカーなどの塗料は、仕上がり直後の塗膜硬化が十分でないために一定時間経過(冷却、乾燥)してから製品の巻き取り、積み重ね及び運搬などが行われているので生産性が劣るといった欠点がある。これに対し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、一般的に、秒単位で硬化できるとともに加熱を必要としないので、熱硬化型塗料やラッカーでは成し得なかった高速硬化乾燥を可能とし、これに適した用途に幅広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、一分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基と水酸基とを併せ有する化合物(a-1)と、300~3,000なる分子量を有するポリカーボネートジオール(a-2)と、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート(a-3)とを反応させて得られる樹脂(A)と、(メタ)アクリロイル基と光によりラジカルを発生する基とを併せ有する化合物(B)とを、必須成分として含有することを特徴とする、紫外線硬化型樹脂組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、次の成分(A)、(B)および(C):(A)(a)ポリカーボネートジオール、(b)ジイソシアネート化合物、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、(B)(d)1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール化合物、(b)ジイソシアネート化合物、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、(C)反応性希釈剤、を含有することを特徴とする放射線硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開平5-70535号公報
【文献】日本国特開平8-92342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術では、硬化性樹脂組成物から得られる塗膜の硬化性や耐擦傷性等については検討されているが、塗膜の基材追随性については検討されておらず、その効果は不明であった。
【0007】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度、耐候性に優れた塗膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記(A)、(B)、(C)及び(D)を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は下記<1>~<10>に関するものである。
<1>下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有する活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
(A)1分子内にポリカーボネート骨格及び3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート
(B)重量平均分子量が1,000以上10,000未満の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート
(C)1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が280以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c1)、
1分子内に脂環構造及び1個又は2個の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が200以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c2)、並びに
重量平均分子量が110以上1,000未満の範囲内である(メタ)アクリルアミド化合物(c3)
から成る群から選択される少なくとも1種の化合物
(D)光重合開始剤
<2>前記ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、ポリカーボネートジオール(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であって、前記重合性不飽和化合物(a3)が少なくとも、1分子内に水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’)を含有する、<1>に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<3>前記ポリイソシアネート化合物(a2)がジイソシアネート化合物である、<2>に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<4>前記重合性不飽和化合物(a3’)が、1分子内に1個の水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’’)である、<2>又は<3>に記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<5>前記成分(A)、(B)及び(C)の合計固形分を基準として、前記成分(A)の固形分配合量が10~40質量%の範囲内であり、前記成分(B)の固形分配合量が25~70質量%の範囲内であり、前記成分(C)の固形分配合量が20~50質量%の範囲内である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<6>さらに、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも一方を含有する、<1>~<5>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<7>前記活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた硬化塗膜のガラス転移温度が40~90℃の範囲内である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物。
<8><1>~<7>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた、架橋間分子量が200~900g/molの範囲内である硬化塗膜。
<9>被塗物上に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させた硬化塗膜を有する塗装物品。
<10>被塗物上に、<1>~<7>のいずれか1つに記載の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装して未硬化塗膜を形成した後、該未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射し、硬化させることを特徴とする塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度、耐候性に優れた塗膜を形成することができる活性エネルギー線硬化型塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0013】
[活性エネルギー線硬化型塗料組成物]
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物(以下、本発明の塗料組成物と称することがある。)は、下記成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有することを特徴とする。
【0014】
〔(A)ウレタン(メタ)アクリレート〕
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、1分子内にポリカーボネート骨格及び3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレートである。
【0015】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートを有することで、カーボネート基とウレタン結合を同分子鎖内に持つ架橋構造を有する塗膜を形成できる。なおかつ、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの分子量が大きく多数の重合性不飽和基を持つので、水素結合や凝集力が強く発現した高架橋密度の塗膜を形成でき、当該塗膜は、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性に優れると考えられる。
【0016】
重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエート基、アクリルアミド基等を挙げることができる。これらの中でも、硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基が好ましく、アクリロイル基がより好ましい。
【0017】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートが1分子内に有する重合性不飽和基の数が3個以上であると、本発明の塗料組成物によって形成される塗膜が高架橋密度の塗膜となる。該重合性不飽和基の数は、硬度と基材追随性の観点から、3~10個が好ましく、4~6個がより好ましい。
【0018】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が10,000以上であることにより基材追随性及び耐洗車擦り傷性に優れた塗膜が形成され、40,000以下であることにより、付着性、硬度及び耐候性に優れた塗膜が形成される。
【0019】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、好ましくは10,000~30,000、より好ましくは11,000~25,000、さらに好ましくは12,000~18,000である。
【0020】
なお、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の測定は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の測定条件によって行うことができる。
【0021】
装置:HPLC-8220 (東ソー社製)
カラム構成:TSKgel SuperHZ3000 + TSKgel SuperHZ1000 (いずれも東ソー社製)
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器)
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液の流速:0.6mL/min
温度:40℃
昇温速度:昇温なしの温度一定
キャリブレーション:ポリスチレン換算
試料濃度:0.01g/5mL
【0022】
上記ウレタン(メタ)アクリレート(A)としては、例えば、後述のポリカーボネートジオール(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物が好ましい。
【0023】
なお、上記反応物は、ポリカーボネートジオール(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)のみを反応させることにより得られたものであってもよいし、必要に応じてポリオール化合物(a4)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(a5)を併せて反応させることにより得られたものであってもよい。
【0024】
<ポリカーボネートジオール(a1)>
ポリカーボネートジオール(a1)は、特に制限されず、通常用いられるポリカーボネートジオールを使用することができる。ポリカーボネートジオール(a1)は、例えば、ジオールとカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得ることができる。
【0025】
ポリカーボネートジオール(a1)の製造に用いられるジオールとしては、炭素数が2~10、好ましくは4~8の2価アルコールを使用することができる。具体的には、例えば、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族系ジオール;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式系ジオール;p-キシレンジオール、p-テトラクロロキシレンジオール等の芳香族系ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系ジオール等を挙げることができる。これらのジオールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0026】
ポリカーボネートジオール(a1)の製造に用いられるジオールとしては、これを用いて得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレートを含有する塗料組成物の塗膜の耐候性及び硬度の観点から、上記脂肪族系ジオール及び/又は脂環式系ジオールを使用することが好ましく、脂肪族系ジオール及び脂環式系ジオールを併用することがより好ましい。
【0027】
ポリカーボネートジオール(a1)の製造に用いられるジオールとして、上記脂環式系ジオールを使用する場合、該脂環式系ジオール中の脂環構造の含有量は、これを用いて得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレートを含有する塗料組成物の塗膜の耐候性及び硬度の観点から、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として、好ましくは0.5~25質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは8~15質量%の範囲内である。
【0028】
なお、本発明において、脂環構造とは、芳香族性(π電子共役系)を有さない環構造をいい、炭素原子のみで構成された環構造のほか、構成原子として複素原子を含むものを含む概念である。
【0029】
また、本発明において、脂環構造の含有量は、化合物の合成時に使用した原料の構造式と、当該原料の使用割合から算出される理論値である。
【0030】
ポリカーボネートジオール(a1)の製造に用いられるジオールとしては、これを用いて得られるウレタン(メタ)アクリレート(A)を含有する塗料組成物の塗膜の耐候性及び硬度に優れる観点から、1,6-ヘキサンジオールとこれ以外の1又は2以上のジオールとを混合使用するのがより好ましく、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種とを混合使用するのがさらに好ましい。具体的な組合せとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールの組合せ、1,6-ヘキサンジオールと1,4-ブタンジオールの組合せ、1,6-ヘキサンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールの組合せ、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールと1,4-シクロヘキサンジメタノールの組合せ等を挙げることができる。
【0031】
ポリカーボネートジオール(a1)の製造に用いられるカルボニル化剤としては、公知のものを使用できる。具体的には、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、ホスゲン等を挙げることができ、これらの1種を又は2種以上を組合せて使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
【0032】
ポリカーボネートジオール(a1)としては、市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の「DURANOL T-5650J」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオール)、「DURANOL T-4671」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオール及び1,4-ブタンジオール);宇部興産社製の「ETERNACOLL UH-100」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオール)、「ETERNACOLL PH-100」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオール及び1,5-ペンタンジオール)、「ETERNACOLL UHC50-100」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオールのカプロラクトン変性体)、「ETERNACOLL UC-100」(商品名、ジオール成分:1,4-シクロヘキサンジメタノール)、「ETERNACOLL UM-90(1/1)」(商品名、ジオール成分:1,6-ヘキサンジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール);三菱ケミカル社製の「BENEBiOL NL1010DB」(商品名、ジオール成分:1,10-デカンジオール)、「BENEBiOL HS0840B」(商品名、ジオール成分:イソソルバイド);クラレ社製の「クラレポリオール C-1090」(商品名、ジオール成分:3-メチル-1,5-ペンタンジオール及び1,6-ヘキサンジオール)などを挙げることができる。
【0033】
<ポリイソシアネート化合物(a2)>
ポリイソシアネート化合物(a2)は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物である。ポリイソシアネート化合物(a2)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート及び芳香族ポリイソシアネート並びにこれらのポリイソシアネートの誘導体等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート及び2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート並びに2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン及び2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0035】
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-若しくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、メチレンビス(1,4-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)及びノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート並びに1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン及び6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0036】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(1,4-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-若しくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン及び1,3-若しくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート並びに1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
【0037】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-若しくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート及び4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン及び2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート並びに4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
【0038】
また、前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、前記ポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)及びクルードTDI等を挙げることができる。
【0039】
上記ポリイソシアネート化合物(a2)としては、形成される塗膜の基材追随性及び耐擦り傷性の観点から、ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。なかでも、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましく、形成される塗膜の硬度及び耐候性の観点から、脂環族ジイソシアネートがより好ましい。
【0040】
<重合性不飽和化合物(a3)>
重合性不飽和化合物(a3)は、水酸基を有する重合性不飽和化合物である。
【0041】
重合性不飽和化合物(a3)は、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、少なくとも1分子内に水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’)を含有することが好ましい。
【0042】
重合性不飽和化合物(a3)中の重合性不飽和化合物(a3’)の含有量は、基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、50~100質量%の範囲内であることが好ましく、60~100質量%の範囲内であることがより好ましく、70~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0043】
重合性不飽和化合物(a3’)は、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、1分子内に1個の水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’’)であることが好ましい。
【0044】
また、重合性不飽和化合物(a3)は、形成される塗膜の硬度及び耐候性の観点から、1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有することが好ましく、1分子内に3~5個の重合性不飽和基を有することがより好ましく、1分子内に3個の重合性不飽和基を有することがさらに好ましい。
【0045】
重合性不飽和化合物(a3)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、形成される塗膜の硬度及び耐候性の観点から、好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及び/又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、より好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はジペンタエリスリトールペンタアクリレート、さらに好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレートを使用することができる。
【0046】
重合性不飽和化合物(a3)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
<ポリオール化合物(a4)>
ポリオール化合物(a4)は、後述のポリオール化合物(b3)と同様のものを使用することができる。
【0048】
<水酸基含有化合物の鎖伸長成分(a5)>
水酸基含有化合物の鎖伸長成分(a5)は、後述の水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)と同様のものを使用することができる。
【0049】
<(A)ウレタン(メタ)アクリレートの合成>
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートジオール(a1)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び重合性不飽和化合物(a3)、並びに必要に応じてポリオール化合物(a4)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(a5)を公知のウレタン化反応させることにより合成することができる。
【0050】
該ウレタン化反応に伴い、(A)ウレタン(メタ)アクリレートには、(a1)~(a5)以外の成分が含まれていてもよい。
(a1)~(a5)以外の成分としては、例えば、鎖延長剤を用いることができる。鎖延長剤としては、公知の鎖延長剤を使用することができ、例えば、水、低分子ポリオール、ポリアミン等が挙げられる。また、鎖延長剤としては、例えば、「最新ポリウレタン応用技術」(株式会社CMC社、1985年に発行)に記載のものが挙げられる。
【0051】
上記ウレタン化反応は、有機溶液中で行うことができる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0052】
反応温度は常温~100℃が好ましく、反応時間は1~10時間が好ましい。
【0053】
上記ウレタン化反応においては、反応液のイソシアネート当量を追跡することにより、反応の進行状態を確認することができる。該イソシアネート当量は、ジブチルアミンを用いた逆滴定により求めることができる。該逆滴定は、具体的には、試料に過剰のジブチルアミンを加えて反応させ、滴定指示薬としてブロモフェノールブルーを用い残余のジブチルアミンを塩酸水溶液で滴定することにより行うことができる。
【0054】
上記ウレタン化反応においては、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト等の有機スズ触媒を使用してもよい。触媒の量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01~1.0質量部であることが好ましく、0.1~0.5質量部であることがより好ましい。
【0055】
また、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤を使用する場合、その添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01~1.0質量部であることが好ましい。
【0056】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートが脂環構造を有する場合、(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量は、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度、耐候性等の観点から、(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として、好ましくは5~30質量%、より好ましくは10~25質量%、さらに好ましくは15~20質量%の範囲内である。
【0057】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を使用することもできる。該市販品としては、例えば、宇部興産社製の、「UA0036B」、「UA0065B」、「UA0499B」等が挙げられる。
【0058】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐擦り傷性、硬度、耐候性等の観点から、酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃におけるB型粘度が、好ましくは500~50,000mPa・s、より好ましくは1000~10000mPa・s、さらに好ましくは1500~5000mPa・sの範囲内である。
【0059】
本明細書において、B型粘度の測定は、Brookfield viscometerを使用し、25℃及び6rpmの条件で行なうことができる。
【0060】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0061】
〔(B)ウレタン(メタ)アクリレート〕
(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、重量平均分子量が1,000以上10,000未満の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレートである。重量平均分子量が1,000以上であることにより得られる塗膜の基材追随性及び耐洗車擦り傷性が良好となり、10,000未満であることにより得られる塗膜の付着性、硬度及び耐候性が良好となる。
【0062】
(B)ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、得られる塗膜の基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、好ましくは1,000~8,000、より好ましくは1,000~6,000、さらに好ましくは1,000~5,000である。
【0063】
上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレートの説明欄において記載したゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いる方法によって測定することができる。
【0064】
(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、得られる塗膜の基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、1分子内に2個以上の重合性不飽和基を有することが好ましく、2~10個の重合性不飽和基を有することがより好ましく、2~6個の重合性不飽和基を有することがさらに好ましい。
【0065】
また、(B)ウレタン(メタ)アクリレートの不飽和基当量は、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、250~5,000g/molの範囲内であることが好ましく、300~3,000g/molの範囲内であることがより好ましく、350~1,500g/molの範囲内であることがさらに好ましい。
【0066】
本発明において、上記(B)ウレタン(メタ)アクリレートを含有することにより、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性に優れた塗膜が形成される理由としては、該(B)ウレタン(メタ)アクリレートと前記(A)ウレタン(メタ)アクリレートとの間に水素結合に基づく非共有結合性の強い凝集力が発現し、弾性回復能を持った塗膜が形成されることが考えられる。
【0067】
(B)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、後述のポリイソシアネート化合物(b1)と、1分子内に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)と、必要に応じてポリオール化合物(b3)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)とを反応させることにより得られる(B1)ウレタン(メタ)アクリレート;上記ポリオール化合物(b3)と、後述の1分子内にイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有するイソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)と、必要に応じて上記ポリイソシアネート化合物(b1)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)とを反応させることにより得られる(B2)ウレタン(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0068】
<ポリイソシアネート化合物(b1)>
上記ポリイソシアネート化合物(b1)は、1分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。
ポリイソシアネート化合物(b1)としては、ポリイソシアネート化合物(a2)と同様のものを使用できる。
【0069】
ポリイソシアネート化合物(b1)としては、耐洗車擦り傷性等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアヌレート環付加物、なかでもヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物を好適に使用することができる。
【0070】
<水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)>
前記水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)は、1分子内に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0071】
該水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。
【0072】
<ポリオール化合物(b3)>
前記ポリオール化合物(b3)は、上記水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)以外の、1分子内に2個以上の水酸基を有する化合物である。
【0073】
該ポリオール化合物(b3)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
【0074】
<水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)>
前記水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)は、前記水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)及びポリオール化合物(b3)等の水酸基含有化合物と反応して分子鎖を伸長させることができる化合物である。
【0075】
該水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)としては、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン化合物;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0076】
<イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)>
前記イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)は、1分子内にイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0077】
該イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)としては、例えば、イソシアネートメチル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、イソシアネートプロピル(メタ)アクリレート、イソシアネートブチル(メタ)アクリレート、イソシアネートオクチル(メタ)アクリレート、p-メタクリロキシ-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、m-アクリロキシ-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、m-又はp-イソプロペニル-α,α’-ジメチルベンジルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート1モルとジイソシアネート化合物1モルとの反応生成物、具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネート等の反応性の異なる2つのイソシアネート基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有重合性不飽和モノマーとの等モル付加反応により得られる化合物等が挙げられる。
【0078】
<(B)ウレタン(メタ)アクリレートの合成>
((B1)ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
上記(B1)ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネート化合物(b1)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)と、必要に応じてポリオール化合物(b3)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)とをウレタン化反応させることにより得られる。
【0079】
ポリイソシアネート化合物(b1)の配合量は、ポリイソシアネート化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)、ポリオール化合物(b3)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、20~70質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
【0080】
水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)の配合量は、ポリイソシアネート化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)、ポリオール化合物(b3)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、10~80質量部であることが好ましく、20~60質量部であることがより好ましい。
【0081】
ポリオール化合物(b3)の配合量は、ポリイソシアネート化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)、ポリオール化合物(b3)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、0~60質量部であることが好ましく、0~50質量部であることがより好ましい。
【0082】
水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の配合量は、ポリイソシアネート化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート(b2)、ポリオール化合物(b3)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、0~50質量部であることが好ましく、0~30質量部であることがより好ましい。
【0083】
((B2)ウレタン(メタ)アクリレートの合成)
上記(B2)ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物(b3)とイソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)と、必要に応じてポリイソシアネート化合物(b1)及び/又は水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)とをウレタン化反応させることにより得られる。
【0084】
ポリオール化合物(b3)の配合量は、ポリオール化合物(b3)、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)、ポリイソシアネート化合物(b1)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、20~80質量部であることが好ましく、30~60質量部であることがより好ましい。
【0085】
イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)の配合量は、ポリオール化合物(b3)、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)、ポリイソシアネート化合物(b1)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、10~60質量部であることが好ましく、20~50質量部であることがより好ましい。
【0086】
ポリイソシアネート化合物(b1)の配合量は、ポリオール化合物(b3)、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)、ポリイソシアネート化合物(b1)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、0~60質量部であることが好ましく、0~50質量部であることがより好ましい。
【0087】
水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の配合量は、ポリオール化合物(b3)、イソシアネート基含有(メタ)アクリレート(b5)、ポリイソシアネート化合物(b1)及び水酸基含有化合物の鎖伸長成分(b4)の合計量100質量部に対して、0~40質量部であることが好ましく、0~30質量部であることがより好ましい。
【0088】
上記ウレタン化反応は、有機溶液中で行うことができる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上の混合物として使用できる。
【0089】
反応温度は、常温~100℃であることが好ましく、反応時間は1~10時間であることが好ましい。
【0090】
上記ウレタン化反応においては、反応液のイソシアネート当量を追跡することにより、反応の進行状態を確認することができる。
【0091】
上記ウレタン化反応においては、必要に応じてジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト等の有機スズ触媒を使用してもよい。触媒の量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01~1.0質量部であることが好ましく、0.1~0.5質量部であることがより好ましい。また、ハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤を使用してもよい。重合禁止剤を使用する場合、その添加量は、反応原料の総量100質量部に対して0.01~1.0質量部であることが好ましい。
【0092】
(B)ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販品を使用することもできる。該市販品としては、 例えば、「紫光 UV-7000B」、「紫光 UV-7510B」、「紫光 UV-7550B」(以上、日本合成化学工業社製)、「EBECRYL4666」、「EBECRYL8402」、「EBECRYL8804」(以上、ダイセル・オルネクス社製)、「アロニックスOT-1005」(以上、東亞合成社製)、「ETERCURE DR-U065B」(以上、長興材料工業社製)、「アートレジン UN-952」(以上、根上工業社製)等が挙げられる。
【0093】
(B)ウレタン(メタ)アクリレートは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】
〔(C)重合性不飽和化合物〕
(C)重合性不飽和化合物は、1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が280以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c1)、1分子内に脂環構造及び1個又は2個の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が200以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c2)、並びに重量平均分子量が110以上1,000未満の範囲内である(メタ)アクリルアミド化合物(c3)から成る群から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0095】
<重合性不飽和化合物(c1)>
重合性不飽和化合物(c1)は、1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が280以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物である。
1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有することにより、得られる塗膜が硬度及び耐候性に優れた塗膜となる。また、重量平均分子量が280以上であることにより、得られる塗膜が付着性に優れた塗膜となり、1,000未満であることにより、得られる塗膜が硬度及び耐候性に優れた塗膜となる。
【0096】
重合性不飽和化合物(c1)を有することで、得られる塗膜の架橋密度が向上し該塗膜の硬度及び耐候性が向上すると推察される。
【0097】
重合性不飽和化合物(c1)は、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、1分子内に3~10個の重合性不飽和基を有することがより好ましく、3~6個の重合性不飽和基を有することがさらに好ましく、3個の重合性不飽和基を有することが特に好ましい。
【0098】
また、重合性不飽和化合物(c1)は、得られる塗膜の付着性、硬度及び耐候性向上の観点から、重量平均分子量が290以上800未満の範囲内であることが好ましく、300以上700未満の範囲内であることがより好ましく、400以上600未満の範囲内であることがさらに好ましい。
【0099】
また、重合性不飽和化合物(c1)の不飽和基当量は、得られる塗膜の付着性、硬度及び耐候性向上の観点から、80~250g/molの範囲内であることが好ましく、85~225g/molの範囲内であることがより好ましく、100~200g/molの範囲内であることがさらに好ましい。
【0100】
重合性不飽和化合物(c1)としては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等、又はこれらのアルキレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体及び多量体混合物等が挙げられる。
【0101】
なかでも、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートが好ましく、得られる塗膜の付着性向上の観点から、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートがさらに好ましい。
【0102】
<重合性不飽和化合物(c2)>
重合性不飽和化合物(c2)は、1分子内に脂環構造及び1個又は2個の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が200以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物である。
1分子内に脂環構造を有することにより、得られる塗膜が塗膜硬度及び耐候性に優れた塗膜となる。また、重量平均分子量が200以上であることにより、得られる塗膜が塗膜硬度及び耐候性に優れた塗膜となり、1,000未満であることにより、得られる塗膜が付着性、塗膜硬度及び耐候性に優れた塗膜となる。
【0103】
重合性不飽和化合物(c2)を有することで、該重合性不飽和化合物(c2)中の脂環構造により得られる塗膜の塗膜硬度が向上し該塗膜の耐候性が向上すると考えられる。
【0104】
重合性不飽和化合物(c2)は、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、1分子内に2個以上の脂環構造を有することがより好ましい。
該1分子内に2個以上の脂環構造を有する重合性不飽和化合物(c2)としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、好ましくはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレートを使用することができる。
【0105】
また、重合性不飽和化合物(c2)は、得られる塗膜の耐洗車擦り傷性、塗膜硬度及び耐候性向上の観点から、1分子内に2個の重合性不飽和基を有することが好ましい。該1分子内に2個の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(c2)としては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、好ましくはトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジアクリレートを好適に使用することができる。
【0106】
また、重合性不飽和化合物(c2)は、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、重量平均分子量が250以上700未満の範囲内であることが好ましく、300以上500未満の範囲内であることがより好ましい。
【0107】
また、重合性不飽和化合物(c2)の不飽和基当量は、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、100~1,000g/molの範囲内であることが好ましく、125~350g/molの範囲内であることがより好ましく、150~250g/molの範囲内であることがさらに好ましい。
【0108】
上述の具体例以外の重合性不飽和化合物(c2)としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
上記重合性不飽和化合物(c2)のなかでも、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0110】
<(メタ)アクリルアミド化合物(c3)>
(メタ)アクリルアミド化合物(c3)は、重量平均分子量が110以上1,000未満の範囲内である(メタ)アクリルアミド化合物である。
重量平均分子量が110以上であることにより、得られる塗膜が基材追随性に優れた塗膜となり、1,000未満であることにより、得られる塗膜が付着性及び硬度、耐候性に優れた塗膜となる。
【0111】
(メタ)アクリルアミド化合物(c3)を有することで、ウレタン(メタ)アクリレートと共に水素結合性成分として強靭な架橋構造を形成すると考えられる。また、(メタ)アクリルアミド化合物(c3)は、同時に低分子量成分でもある事からプラスチック素材表面を浸食し投錨効果に基づく強い付着性が発現すると考えられる。よって、アクリルアミド構造に由来する基材追随性が向上するとともに、付着性及び塗膜硬度が向上すると考えられる。
【0112】
(メタ)アクリルアミド化合物(c3)は、得られる塗膜の付着性及び塗膜硬度向上の観点から、重量平均分子量が120以上500未満の範囲内であることが好ましく、140以上300未満の範囲内であることがより好ましい。
【0113】
(メタ)アクリルアミド化合物(c3)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられる。
【0114】
なかでも、該(メタ)アクリルアミド化合物(c3)としては、得られる塗膜の硬度及び耐候性向上の観点から、水酸基を含有しない(メタ)アクリルアミド化合物(c3)を好適に使用することができる。該水酸基を含有しない(メタ)アクリルアミド化合物(c3)としては、例えば(メタ)アクリロイルモルフォリン、好ましくはアクリロイルモルフォリンを使用することができる。
【0115】
また、上記(C)重合性不飽和化合物は、得られる塗膜の基材追随性、付着性、硬度及び耐候性向上の観点から、前記重合性不飽和化合物(c1)及び重合性不飽和化合物(c2)の少なくとも一方と、上記(メタ)アクリルアミド化合物(c3)とを含むことが好ましい。
【0116】
この理由としては、上記重合性不飽和化合物(c1)及び重合性不飽和化合物(c2)は、得られる塗膜の硬度及び耐候性を向上させる効果が大きく、上記(メタ)アクリルアミド化合物(c3)は得られる塗膜の基材追随性及び付着性を向上させる効果が大きいことが考えられる。なかでも、得られる塗膜の基材追随性、付着性、硬度及び耐候性向上の観点から、上記(C)重合性不飽和化合物が、重合性不飽和化合物(c2)及び(メタ)アクリルアミド化合物(c3)を含むことがより好ましい。
【0117】
〔(D)光重合開始剤〕
(D)光重合開始剤は、活性エネルギー線を吸収して、フリーラジカルを発生する化合物又はこれらの化合物の混合物である。なお、(D)光重合開始剤は、中間体の形態でフリーラジカルを発生する化合物であってもよい。
【0118】
(D)光重合開始剤としては、光化学的に活性化可能な化合物(例えば、ベンゾイン);発色団と共開始剤(例えば、ベンゾフェノン及び第三級アミン)との組合せ及びこれらの混合物;増感剤と、共開始剤との(例えば、チオキサントンと第三級アミン)又は発色団との(例えば、チオキサントンとアミノケトン)の組合せ;Hと鉄(II)塩との組合せ等のレドックス系;染料及びホウ酸塩及び/又はアミン等の電子輸送ペアー等を挙げることができる。
【0119】
(D)光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ジアセチル等のα-ジケトン化合物;ベンゾイン等のアシロイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のアシロインエーテル化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸等のチオキサントン化合物;ベンゾフェノン、o-メチルベンゾイルベンゾエート、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;ミヒラーケトン化合物;アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、α,α’-ジメトキシアセトキシベンゾフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、α-イソヒドロキシイソブチルフェノン、α,α’-ジクロル-4-フェノキシアセトフェノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(アシル)フォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;アントラキノン、1,4-ナフトキノン等のキノン化合物;フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン、トリス(トリハロメチル)-s-トリアジン等のハロゲン化合物;ジ-tert-ブチルパーオキサイド等の過酸化物等を挙げることができる。
【0120】
(D)光重合開始剤の市販品としては、例えば、オムニラッド(OMNIRAD)-127、オムニラッド-184、オムニラッド-MBF、オムニラッド-BP Flakes、オムニラッド-500、オムニラッド-369、オムニラッド-651、オムニラッド-754、オムニラッド-819、オムニラッド-907、オムニラッド-2959、オムニラッド-TPO H、オムニラッド-1173(以上、IGM resins社製、商品名);カヤキュアー(KAYACURE)-MBP、カヤキュアー-DETX-S、カヤキュアー-DMBI、カヤキュアー-EPA、カヤキュアー-OA(以上、日本化薬社製、商品名);ビキュア(VICURE)-10、ビキュア-55(以上、ストウファー社(STAUFFER Co.,LTD.)製、商品名);トリゴナル(Trigonal)P1(アクゾ社(AKZO Co.,LTD.)製、商品名);サンドレイ(SANDORAY)1000(サンドズ社(SANDOZ Co.,LTD.)製、商品名);ディープ(DEAP)(アプジョン社(APJOHN Co.,LTD.)製、商品名);カンタキュア(QUANTACURE)-PDO、カンタキュア-ITX、カンタキュア-EPD(以上、ウォードブレキンソプ社(WARD BLEKINSOP Co.,LTD.)製、商品名)、ESACURE KIP 150、ESACURE ONE(LAMBERTI社製、商品名)等を挙げることができる。
【0121】
上記(D)光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0122】
〔紫外線吸収剤、光安定剤〕
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、さらに、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0123】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。また、上記紫外線吸収剤は、重合性不飽和基を有するものであってもよい。
【0124】
ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0125】
トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0126】
サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0127】
ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0128】
また、上記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、TINUVIN 900、TINUVIN 928、TINUVIN 384-2、TINUVIN 479、TINUVIN 405、TINUVIN 400、(BASF社製、商品名、TINUVIN/チヌビンは登録商標)、RUVA-93(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0129】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物が、上記紫外線吸収剤を含有する場合、該紫外線吸収剤の配合量は、該活性エネルギー線硬化型塗料組成物の固形分総量に対して、通常0.5~10質量%、好ましくは0.8~9質量%、さらに好ましくは1.0~8質量%の範囲内であることが好適である。
【0130】
本明細書において、「固形分」は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、組成物中に含有される樹脂、添加剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、例えば、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の合計固形分は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に活性エネルギー線硬化型塗料組成物を量り取り、容器底面に該活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する活性エネルギー線硬化型塗料組成物中の成分の質量を秤量して、乾燥前の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
【0131】
<光安定剤>
光安定剤は、塗膜の劣化過程で生成する活性なラジカル種を捕捉するラジカル連鎖禁止剤として用いられるもので、例えば、ヒンダードアミン化合物の光安定剤等が挙げられる。
【0132】
光安定剤のなかでも、優れた光安定化作用を示す光安定剤としてヒンダードピペリジン化合物が挙げられる。
ヒンダードピペリジン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2’,6,6’-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの等が挙げられるが、これらに限ったものではない。光安定剤としては、また、公知の重合性光安定剤も使用することが可能である。
【0133】
上記光安定剤の市販品としては、例えば、TINUVIN 123、TINUVIN 152、TINUVIN 292(BASF社製、商品名、TINUVIN/チヌビンは登録商標)、HOSTAVIN 3058(クラリアント社製、商品名、Hostavinは登録商標)、アデカスタブLA-82(株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブ/ADKSTAB及びアデカスタブは登録商標)等が挙げられる。
【0134】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物が、上記光安定剤を含有する場合、該光安定剤の配合量は、該活性エネルギー線硬化型塗料組成物の固形分総量に対して、0.5~10質量%、好ましくは0.8~9質量%、さらに好ましくは1.0~8質量%の範囲内であることが好適である。
【0135】
〔その他の成分〕
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、さらに、その他の重合性不飽和化合物を含有してもよい。
【0136】
その他の重合性不飽和化合物としては、1分子内に1個の重合性不飽和基を有する化合物を好適に使用することができる。
【0137】
その他の重合性不飽和化合物としては、例えば、一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、水酸基含有(メタ)アクリレート、グリシジル基含有(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート、ビニル芳香族化合物、含窒素アルキル(メタ)アクリレート、重合性アミド化合物、重合性不飽和基を有する加水分解性シラン化合物等が挙げられる。
【0138】
一価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等が挙げられる。
【0139】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0140】
グリシジル基含(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0141】
カルボキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5-カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0142】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレン等が挙げられる。
【0143】
含窒素アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-tert-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0144】
重合性アミド化合物としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0145】
重合性不飽和基を有する加水分解性シラン化合物としては、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0146】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、さらに必要に応じて、溶媒、顔料、触媒、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、乳化剤、界面活性剤、防汚剤、湿潤剤、増粘剤、染料、耐擦り傷性向上剤、ツヤ調整剤等の塗装の分野で通常使用される他の添加成分等を適宜含有することができる。
【0147】
前記溶媒としては、例えば、有機溶剤、水等を使用することができる。該有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0148】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、有機溶剤型塗料組成物及び水性塗料組成物のいずれであってもよいが、塗料の貯蔵安定性の観点から、有機溶剤型塗料組成物であることが好適である。なお、本明細書において、水性塗料組成物は溶媒の主成分が水である塗料であり、有機溶剤型塗料組成物は溶媒として実質的に水を含有しない塗料である。
【0149】
前記顔料としては、例えば、光輝性顔料、着色顔料、体質顔料等を挙げることができる。該顔料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0150】
上記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。
【0151】
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。
【0152】
前記体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0153】
[活性エネルギー線硬化型塗料組成物の調製方法]
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、例えば、以上に述べた成分を、溶媒中に混合し、溶解又は分散せしめることによって調製することができる。
【0154】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物における前記成分(A)、(B)、(C)及び(D)の配合割合は、形成される塗膜の基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性の観点から、前記成分(A)、(B)及び(C)の合計固形分を基準として、以下の範囲内であることが好適である。
【0155】
成分(A):10~40質量%、好ましくは15~35質量%、さらに好ましくは20~30質量%。
成分(B):25~70質量%、好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは40~50質量%。
成分(C):20~50質量%、好ましくは25~45質量%、さらに好ましくは30~40質量%。
成分(D):3.0~7.0質量%、好ましくは3.5~6.5質量%、さらに好ましくは4.0~6.0質量%。
【0156】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物により、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性に優れた塗膜が形成される理由としては、以下のように推察される。
すなわち、(A)ウレタン(メタ)アクリレートが、比較的長鎖(平均分子量が10,000以上40,000以下の範囲内)のポリカーボネートポリウレタン骨格と比較的多数(3個以上)の重合性不飽和基とを有するため、該重合性不飽和基が、(B)ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は(C)重合性不飽和化合物中の重合性不飽和基と反応する。
【0157】
そして、比較的長鎖のポリカーボネートポリウレタン骨格が(B)ウレタン(メタ)アクリレート及び/又は(C)重合性不飽和化合物を介して結合した架橋塗膜が形成される。このとき、架橋間分子量(Mc)が大きい(A)ウレタン(メタ)アクリレートが柔軟性成分として働き、成分(C)のMcより大きく成分(A)のMc未満のMcを有する(B)ウレタン(メタ)アクリレートが物性調整成分として働き、Mcが小さい(C)重合性不飽和化合物が硬度付与成分として働く。その結果、該架橋塗膜が適度な柔軟性と硬度を有することになるため、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性に優れた塗膜を得ることができる。なお、Mcが小さくなるほど、塗膜の硬度は大きくなる。
【0158】
[硬化塗膜]
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化させることにより、本発明の硬化塗膜を得ることができる。
【0159】
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物の硬化は、該塗料組成物を被塗物上に塗装して未硬化塗膜を形成した後、該未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射して行うことができる。
【0160】
また、本発明の硬化塗膜の架橋間分子量は200~900g/molの範囲内であり、好ましくは220~800g/molの範囲内、より好ましくは240~700g/molの範囲内である。
架橋間分子量が200g/mol以上であると、得られる塗膜が、基材追随性に優れた塗膜となり、900g/mol以下であると、得られる塗膜が硬度及び耐侯性に優れた塗膜となるからである。
【0161】
本発明において、上記硬化塗膜の架橋間分子量は、試料をFTレオロジースペクトラー「Rheogel E-4000」(UBM株式会社製)を用いて、周波数11ヘルツ、昇温速度3℃/分、温度範囲30~200℃の条件下でtanδ値を測定したときに測定される動的粘弾性測定において、貯蔵弾性率の極小値を下記ゴム粘弾性理論式1にあてはめて求めた理論計算値である。
式1:Mc=3ρRT/Emin
Mc :架橋間分子量(g/mol)
ρ :試料塗膜の密度(g/cm
R :気体定数(8.314J/K/mol)
T :貯蔵弾性率がEminの時の絶対温度(K)
Emin:貯蔵弾性率の極小値(MPa)
【0162】
上記試料は以下のように調製する。まず、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物をポリプロピレン板上に硬化膜厚が30±5μmになるように塗布し、1分間静置した後、80℃で3分間加熱して該活性エネルギー線硬化型塗料組成物中の溶媒を揮発させる。次いで、メタルハライドランプを用いて400mW/cm、1500mJ/cmの照射条件(ウシオ電機株式会社製紫外線積算光量計UIT-250、受光部UVD-C365使用時)でUV照射を行うことにより硬化塗膜を形成する。その後、該硬化塗膜を長さ20mm、幅5mmの短冊状に裁断し、ポリプロピレン板から剥離し得られた短冊状の塗膜を試料とする。
【0163】
上記硬化塗膜の架橋間分子量の調整は、例えば、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)の不飽和基当量の調整や、配合割合の調整等により行うことができる。
【0164】
また、上記活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装して得られる硬化塗膜は、ガラス転移温度が40~90℃、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは55~80℃の範囲内であることが好適である。
硬化塗膜のガラス転移温度が40℃以上であると、得られる塗膜が硬度及び耐侯性に優れた塗膜となり、90℃以下であると、得られる塗膜が、基材追随性に優れた塗膜となるからである。
【0165】
本発明において、上記硬化塗膜のガラス転移温度は、上記架橋間分子量測定の際の、動的粘弾性測定において、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の極大値を示す温度として測定される動的ガラス転移温度である。
【0166】
上記硬化塗膜のガラス転移温度の調整は、例えば、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)のガラス転移温度の調整、該成分(A)、(B)及び(C)の配合割合の調整等により行うことができる。
【0167】
[塗装物品、塗膜形成方法]
被塗物上に、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装して未硬化塗膜を形成した後、該未硬化塗膜に活性エネルギー線を照射し、硬化させることにより、被塗物上に硬化塗膜を有する塗装物品を得ることができる。本発明は、このような塗膜形成方法及び塗装物品にも関する。
【0168】
〔被塗物〕
被塗物の材質としては、特に制限はなく、無機材料、有機材料、或いは、有機材料と無機材料とのハイブリッド材料のいずれであってもよい。
【0169】
上記無機材料としては、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ガラス;セメント;コンクリート等が挙げられる。
【0170】
上記有機材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン-1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどのようなポリエステル樹脂、エピコート(商品名、油化シェルエポキシ株式会社製)などの市販品に代表されるエポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル-エチレン-スチレン(AES)樹脂、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、各種の繊維強化プラスチック材料(Fiber Reinforced Plastics:以下、FRP材料又は単にFRPという。)等を挙げることができる。
【0171】
また、被塗物は、例えば、上記無機材料、有機材料、或いは、有機材料と無機材料とのハイブリッド材料等の材料上に、プライマー塗料、カチオン電着塗料、中塗り塗料、上塗り塗料等が塗装され、予めプライマー層、電着塗膜層、中塗り層、上塗り層等が形成されたものであってもよい。
【0172】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物が塗装される被塗物の用途としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;バンパー、センターピラー、ミラー、ドアハンドル等の自動車外装用部品;インストルメント・パネル、ドアトリム、センターコンソール等の自動車内装用部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。
【0173】
なかでも、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物によって得られた塗膜は基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度及び耐候性に優れるため、自動車外装用部品の用途で好適に使用することができる。
【0174】
〔塗装工程〕
本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装する方法は、特に限定されるものではない。例えば、エアスプレー、エアレススプレー、回転霧化塗装機、浸漬塗装、刷毛等により塗装することができる。塗装の際、静電印加を行ってもよい。塗装膜厚は、硬化膜厚で通常10~100μm、好ましくは15~75μm、さらに好ましくは20~50μmの範囲内とすることができる。
【0175】
本発明に係る塗膜形成方法においては、被塗物上に、該活性エネルギー線硬化型塗料組成物を塗装して、静置し及び/又は予備加熱を施し、得られた塗膜の固形分を95質量%以上にした後、活性エネルギー線を照射することが好ましい。
【0176】
〔活性エネルギー線照射〕
上記被塗物上に塗布された塗膜は、活性エネルギー線を照射することにより重合させ、硬化塗膜とすることができる。
【0177】
照射される活性エネルギー線としては、公知のものを使用することができる。具体的には、紫外線、可視光線、レーザー光(近赤外線レーザー、可視光レーザー、紫外線レーザー等)、マイクロ波、電子ビーム、電磁波等を挙げることができる。
【0178】
これらの活性エネルギー線のうち、経済性の観点から、紫外線を好適に使用することができる。
【0179】
活性エネルギー線の照射は、活性エネルギー線硬化型塗料組成物中に存在する(D)光重合開始剤が吸収できる波長の電磁波を発する任意の光源を用いて行うことができる。このような光源は通常、波長200nm~2,000nmの範囲の電磁波を発するものである。
【0180】
活性エネルギー線の照射源としては、公知のものを使用することができる。具体的には、超高圧、高圧、中圧、低圧の水銀灯、無電極ランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、蛍光灯、タングステン灯、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)、太陽光等を使用することができる。また、パルス発光型の活性エネルギー線照射装置も使用することができる。
【0181】
また、活性エネルギー線の照射は、全領域及び/又は一部を、例えば、マスクを介して行っても、レーザービームを用いて行ってもよい。その手段によって特定の領域だけの被膜の硬化を行うことも可能である。
【0182】
活性エネルギー線の照射量は、活性エネルギー線硬化型塗料組成物の重合を行なうことができる範囲であればよく、通常、例えば、高圧水銀灯の場合は、50~3,000mJ/cm、メタルハライドランプの場合は、100~5,000mJ/cm、特に高圧水銀灯の場合は、100~1,500mJ/cm、メタルハライドランプの場合は、500~2,500mJ/cmの範囲内であることが好ましい。
【0183】
活性エネルギー線の照射は、空気中又は不活性ガス下で行うことができる。不活性ガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム等又はこれらの混合物を使用することができる。
【0184】
また、活性エネルギー線による硬化と併せて、加熱を行ってもよい。加熱手段としては、熱風、熱ガス、赤外線ヒーター、IRラジエータ、オーブン、及び熱ローラー等を使用することができる。
【0185】
加熱を行う場合、加熱条件は、生産性、作業性及び基材の熱安定性等の観点から決定されるが、加熱温度は30~120℃、特に、50~90℃の範囲内であることが好ましく、加熱時間は1~60分間、特に1~20分間の範囲内であることが好ましい。
【0186】
加熱を行う場合、活性エネルギー線照射及び加熱の順序は特に限定されず、活性エネルギー線照射の後に加熱を行ってもよく、加熱の後に活性エネルギー線照射を行ってもよく、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行ってもよい。
【0187】
また、活性エネルギー線照射と加熱とを同時に行う際には、活性エネルギー線の照射源からの熱(例えば、ランプが発する熱)を熱源としてもよい。さらに、加熱の後に活性エネルギー線照射を行う際には、被膜形成基材が熱を帯びた状態(余熱を持った状態)で活性エネルギー線照射を行ってもよい。
【0188】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、塗膜硬度に優れる塗膜を形成できることから、最上層に塗装される塗料として使用することが好ましい。
【実施例
【0189】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りのない限り、質量基準を意味する。
【0190】
各例で使用した成分は以下のとおりである。
[(A)ウレタン(メタ)アクリレート]
1分子内にポリカーボネート骨格及び3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ、重量平均分子量が10,000以上40,000以下の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート(A)として、以下の製品を使用した。
【0191】
「ウレタンアクリレートUA0581B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:10,800
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として16.6質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として8.8質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:830mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
なお、ペンタエリスリトールトリアクリレートは、前記1分子内に1個の水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’’)に該当する。
【0192】
「UA0499B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:14,100
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として18.0質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として10.2質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:2,770mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0193】
「UA0582B-30」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:20,100
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として18.3質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として10.7質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:49,900mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0194】
「UA0484B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:13,100
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:4
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として27.6質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として20.0質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:3,100mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートを当量比1:1で使用
【0195】
「UA0036B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:14,300
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として26.6質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として19.3質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:3,230mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0196】
「UA0592B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:16,000
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:10
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として16.1質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として9.1質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:28,000mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてジペンタエリスリトールペンタアクリレートを使用
なお、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートは、前記1分子内に1個の水酸基及び2個以上の重合性不飽和基を有する重合性不飽和化合物(a3’’)に該当する。
【0197】
「UA0503B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:14,300
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として18.9質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として11.7質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:2,040mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0198】
「UA0505B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:14,100
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として16.0質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として8.7質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:2,310mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0199】
「UA0500B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:14,400
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として10.3質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として10.3質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:2,000mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂肪族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0200】
「UA0065B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:13,400
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として8.9質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として0.7質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:1,789mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0201】
また、比較例では、ウレタン(メタ)アクリレート(A)に該当しないウレタン(メタ)アクリレートとして、下記のものを用いた。
【0202】
「ウレタンアクリレートUA0584B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:10,600
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:2
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として19.1質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として10.7質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:1,330mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)として4-ヒドロキシブチルアクリレートを使用
【0203】
「ウレタンアクリレートUA0580B」(宇部興産株式会社製)
ポリカーボネートジオール(a1)(宇部興産株式会社製)、ポリイソシアネート化合物(a2)及び水酸基を有する重合性不飽和化合物(a3)の反応物であるウレタンアクリレート
重量平均分子量:7,700
1分子あたりの重合性不飽和官能基数:6
(A)ウレタン(メタ)アクリレート中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として15.6質量%
ポリカーボネートジオール(a1)中の脂環構造の含有量:(A)ウレタン(メタ)アクリレートの質量を基準として7.8質量%
酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈した時の25℃で6rpmの条件でのB型粘度:330mPa・s
ポリイソシアネート化合物(a2)として脂環族ジイソシアネートを使用
重合性不飽和化合物(a3)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用
【0204】
「アートレジン UN-5500」(根上工業社製)
ポリカーボネート骨格を有するウレタンアクリレート
重量平均分子量:50,000
「紫光 UV-7610B」(日本合成化学工業社製)
ポリエーテル骨格を有するウレタンアクリレート
重量平均分子量:11,000
「ETERCURE 6194」(長興材料工業社製)
ポリエステル骨格を有するウレタンアクリレート
重量平均分子量:10,000
【0205】
[(B)ウレタン(メタ)アクリレート]
<(B1)ウレタン(メタ)アクリレートの製造>
撹拌機、温度計、還流冷却器、空気導入管、及び滴下装置を備えた反応容器に、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)50.0部、ジブチルスズジラウレート0.02部、及びp-メトキシフェノール0.1部の混合物を仕込んだ。乾燥空気を吹き込みながら該混合物を撹拌し、80℃まで加熱した。
【0206】
続いて、該混合物の温度が90℃を超えないようにしながら、4-ヒドロキシブチルアクリレート37.7部を2時間かけて滴下し、混合物を80℃で更に4時間撹拌し、反応生成物のIR(赤外吸収)分析でイソシアネート基が消失していることを確認して反応を終了した。1-メトキシ-2-プロパノール21.9部を加えて不揮発分60質量%のウレタンアクリレート溶液(B1-1)を得た。
【0207】
このウレタンアクリレートの重量平均分子量は1900(GPC測定、ポリスチレン換算)、一分子内の重合性不飽和基の個数は3個であった。
【0208】
ウレタン化反応の確認は、前記(B)ウレタン(メタ)アクリレートの項で記載したイソシアネート当量の測定方法により確認した。
【0209】
上記で得られたウレタンアクリレート溶液(B1-1)の他に、重量平均分子量が1,000以上10,000未満の範囲内であるウレタン(メタ)アクリレート(B)として、以下の製品を使用した。
【0210】
「EBECRYL 8402」(ダイセル・オルネクス社製)
重量平均分子量:1,000
一分子内の重合性不飽和基数:2
「紫光 UV-7510B」(日本合成化学工業社製)
重量平均分子量:3,500
一分子内の重合性不飽和基数:3
「ETERCURE DR-U065B」(長興材料工業社製)
重量平均分子量:6,000
一分子内の重合性不飽和基数:2
「アートレジン UN-952」(根上工業社製)
重量平均分子量:8,750
一分子内の重合性不飽和基数:10
【0211】
また、比較例では、ウレタン(メタ)アクリレート(B)に該当しないウレタン(メタ)アクリレートとして、下記のものを用いた。
【0212】
「EBECRYL 4858」(ダイセル・オルネクス社製)
重量平均分子量:450
一分子内の重合性不飽和基数:2
「EBECRYL 8411」(ダイセル・オルネクス社製)
重量平均分子量:12,000
一分子内の重合性不飽和基数:2
【0213】
[(C)化合物]
1分子内に3個以上の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が280以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c1)として、以下の製品を使用した。
【0214】
「NKエステル A-DPH」(新中村化学工業社製)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
重量平均分子量:578
一分子内の重合性不飽和基数6
「アロニックス M-450」(東亞合成社製)
ペンタエリスリトールテトラアクリレート
重量平均分子量:352
一分子内の重合性不飽和基数:4
「MIRAMER M410」(MIWON社製)
ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
重量平均分子量:466
一分子内の重合性不飽和基数:4
「NKエステル A-TMPT」(新中村化学工業社製)
トリメチロールプロパントリアクリレート
重量平均分子量:296
一分子内の重合性不飽和基数:3
「MIRAMER M370」(MIWON社製)
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート
重量平均分子量:423
一分子内の重合性不飽和基数:3
【0215】
1分子内に脂環構造及び1個又は2個の重合性不飽和基を有し、かつ重量平均分子量が200以上1,000未満の範囲内である重合性不飽和化合物(c2)として、以下の製品を使用した。
【0216】
「IRR 214-K」(ダイセル・オルネクス社製)
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
重量平均分子量:300
一分子内の重合性不飽和基数:2
「サートマー CD406」(サートマー社製)
1,4-シクロヘキサンジメタノールジアクリレート
重量平均分子量:252
一分子内の重合性不飽和基数:2
「ファンクリル FA-513AS」(日立化成社製)
ジシクロペンタニルアクリレート
重量平均分子量:206
一分子内の重合性不飽和基数:1
「IBXA」(大阪有機化学工業社製)
イソボルニルアクリレート
重量平均分子量:208
一分子内の重合性不飽和基数:1
「サートマー SR217NS」(サートマー社製)
4-tert-ブチルシクロヘキシルアクリレート
重量平均分子量:210
一分子内の重合性不飽和基数:1
【0217】
重量平均分子量が110以上1,000未満の範囲内である(メタ)アクリルアミド化合物(c3)として、以下の製品を使用した。
【0218】
「ACMO」(KJケミカルズ社製)
アクリロイルモルフォリン
重量平均分子量:141
「HEAA」(KJケミカルズ社製)
2-ヒドロキシエチルアクリルアミド
重量平均分子量:115
【0219】
また、比較例では、上記化合物(c1)~(c3)に該当しない化合物として、下記のものを用いた。
【0220】
「EBECRYL 810」(ダイセル・オルネクス社製)
ポリエステルアクリレート
重量平均分子量:1,000
一分子内の重合性不飽和基数:4
「アロニックス MT-3547」(東亞合成社製)
グリセリントリアクリレート
重量平均分子量:254
一分子内の重合性不飽和基数:3
「アクリックスCHA」(東亞合成社製)
シクロヘキシルアクリレート
重量平均分子量:154
一分子内の重合性不飽和基数:1
「DMAA」(KJケミカルズ社製)
ジメチルアクリルアミド
重量平均分子量:99
一分子内の重合性不飽和基数:1
【0221】
[(D)光重合開始剤]
(D)光重合開始剤として、以下の製品を使用した。
【0222】
「Omnirad 184」(商品名、IGM resins社製、固形分含有率100%)
「Omnirad TPO H」(商品名、IGM resins社製、固形分含有率100%)
【0223】
[実施例1]
〔活性エネルギー線硬化型塗料組成物の作製〕
「ウレタンアクリレートUA0581B」(宇部興産株式会社製)40部(固形分20部)、「EBECRYL 8402」(ダイセル・オルネクス社製)15部(固形分15部)、ウレタンアクリレート溶液(B1-1)16.7部(固形分10部)、「紫光 UV-7510B」(日本合成化学工業社製)20部(固形分20部)、「IRR 214-K」(ダイセル・オルネクス社製)20部(固形分20部)、「ACMO」(KJケミカルズ社製)15部(固形分15部)、「Omnirad 184」(商品名、IGM resins社製、光重合開始剤、固形分含有率100%)5部、「Omnirad TPO H」(商品名、IGM resins社製、光重合開始剤、固形分含有率100%)1部、「TINUVIN 400」(商品名、BASF社製、トリアジン系紫外線吸収剤、固形分含有率85%)1.56部(有効成分1.33部)、「TINUVIN 479」(商品名、BASF社製、トリアジン系紫外線吸収剤、固形分含有率100%)0.67部、「TINUVIN 292」(商品名、BASF社製、ヒンダードアミン系光安定剤、固形分含有率100%)2部、及び「BYK UV-3505」(商品名、ビックケミー社製、シリコン系表面調整剤、有効成分40%)0.30部(有効成分0.12部)を均一に混合した。
さらに固形分が40%になるように酢酸イソブチルで希釈撹拌して、実施例1の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を得た。
【0224】
[実施例2~39、比較例1~14]
実施例1において、配合組成を表1~7に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、固形分40%の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を得た。なお、表1~7に示す配合組成は、各成分の固形分質量による。
【0225】
〔試験用塗装板の作製〕
(被塗物)
ABS基材
100mm×150mm×3.0mmのABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)板の表面をイソプロピルアルコールで脱脂してABS基材を得た。
【0226】
ASA基材
100mm×150mm×3.0mmのASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート板)の表面をイソプロピルアルコールで脱脂してASA基材を得た。
【0227】
(試験用塗装板)
ABS基材上に、実施例1~34及び比較例1~14で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が30μmとなるように塗装した。続いて、常温で1分間静置し、その後80℃で3分間プレヒートした。次に、メタルハライドランプを用いて400mW/cm、1,500mJ/cmのUV照射を行い、試験用塗装板を作製した。
【0228】
実施例35については、実施例35で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が15μmとなるように塗装した以外は実施例1と同様にして、試験用塗装板を作製した。
実施例36については、実施例36で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が25μmとなるように塗装した以外は実施例1と同様にして、試験用塗装板を作製した。
実施例37については、実施例37で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が35μmとなるように塗装した以外は実施例1と同様にして、試験用塗装板を作製した。
実施例38については、実施例38で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が45μmとなるように塗装した以外は実施例1と同様にして、試験用塗装板を作製した。
【0229】
また、実施例39については、ASA基材上に、実施例39で得た活性エネルギー線硬化型塗料組成物を、エアスプレーを用いて膜厚が30μmとなるように塗装した以外は実施例1と同様にして、試験用塗装板を作製した。
【0230】
〔評価試験〕
実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型塗料組成物から得られた塗膜を評価するため、下記の試験を行った。結果を表1~7に示す。
【0231】
(基材追随性)
ポリプロピレン板上に、上記で得られた各々の活性エネルギー線硬化型塗料組成物を硬化膜厚が30±5μmになるようエアスプレーを用いて塗布し、常温で1分間静置し、80℃で3分間プレヒートした。次に、メタルハライドランプを用いて400mW/cm、1,500mJ/cmのUV照射を行うことにより硬化塗膜を形成した。その後、該硬化塗膜を長さ80mm、幅10mmの短冊状に裁断し、ポリプロピレン板から剥離し得られた短冊状の塗膜を基材追随性試験用塗膜とした。
【0232】
得られた試験用塗膜を、23±2℃/50±10%RH条件の下でチャック間距離を50mmに設定したオートグラフ「EZTest EZ-LX HS」(島津製作所製)に取り付けた。5mm/minの引張り速度で下記式に基づく破断伸び率を測定し、下記基準に基づき基材追随性を評価した。破断伸び率が大きいほど、基材追随性が優れていることを示す。
【0233】
破断伸び率(%)=(破断時のチャック間距離-試験前のチャック間距離)/(試験前のチャック間距離)×100
【0234】
A:破断伸び率が25%以上であった。
B:破断伸び率が20%以上25%未満であった。
C:破断伸び率が15%以上20%未満であった。
D:破断伸び率が10%以上15%未満であった。
E:破断伸び率が10%未満であった。
【0235】
(付着性)
得られた試験用塗装板を40℃の温水に240時間浸漬し、引き上げ、20℃で24時間乾燥した後、試験用塗装板の塗膜を素地に達するようにカッターで格子状に切り込み、大きさ1mm×1mmのゴバン目を100個作った。続いて、その表面に粘着セロハンテープを貼着し、温度:21±2℃、湿度:50±5%相対湿度においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存状態を調べ、下記基準に基づき付着性を評価した。
【0236】
A:ゴバン目塗膜が100個残存し、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな淵欠けが生じなかった。
B:ゴバン目塗膜が100個残存したが、カッターの切り込みの縁において塗膜の小さな淵欠けが生じた。
C:ゴバン目塗膜が90~99個残存した。
D:ゴバン目塗膜が80~89個残存した。
E:ゴバン目塗膜の残存数が79個以下であった。
【0237】
(耐洗車擦り傷性)
得られた試験用塗装板の20度鏡面反射率(20°光沢値)を、BYKガードナー社製光沢計を用いて予め測定した。
試験用塗装板をAmtec Kistler社製洗車擦り傷試験機へ取り付け、DIN EN ISO 20566に従い室温でシリカ(Quarzwerke社製SIKRON SH200)1.5g/L懸濁水を噴霧しながら10往復の洗車擦り傷試験を行った。試験用塗装板を水洗及びイソプロピルアルコールでワイプした後、BYKガードナー社製光沢計を用いて20度鏡面反射率(20°光沢値)を測定した。
洗車擦り傷試験前の20°光沢値に対する、洗車擦り傷試験後の20°光沢値の保持率(%)を下記基準に基づき評価した。該光沢保持率が高いほど耐洗車擦り傷性が良好であることを示す。
【0238】
A:光沢保持率が80%以上であった。
B:光沢保持率が70%以上80%未満であった。
C:光沢保持率が60%以上70%未満であった。
D:光沢保持率が50%以上60%未満であった。
E:光沢保持率が50%未満であった。
【0239】
(塗膜硬度)
得られた試験用塗装板のマルテンス硬さ(N/mm)を、「フィッシャースコープ(登録商標)HM2000S」(商品名、(株)フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定し、下記基準に基づき評価した。測定条件は、圧子:四角錐型のビッカース圧子(材質:ダイヤモンド、対面角:136°)、最大試験荷重:20mN、押し込み速度:20mN/25秒、温度:21±2℃、湿度:50±5%相対湿度とした。
【0240】
A:マルテンス硬さが125N/mm以上であった。
B:マルテンス硬さが100N/mm以上125N/mm未満であった。
C:マルテンス硬さが75N/mm以上100N/mm未満であった。
D:マルテンス硬さが50N/mm以上75N/mm未満であった。
E:マルテンス硬さが50N/mm未満であった。
【0241】
(耐候性)
得られた試験用塗装板について、マルチアングル分光測色計「CM-512m3」(コニカミノルタ社製)を用いて、塗膜面に垂直な軸に対し25°の角度から光を照射し、反射した光のうち塗膜面に垂直な方向の光についてL、a、bを測色した。次いで、各試験用塗装板について、JIS K 5600-7-7に準じ、耐候性試験機「スーパーキセノンウエザーメーター」(スガ試験機社製)を用いて、試験片ぬれサイクル:18分/2時間、ブラックパネル温度:61~65℃、ランプの照射時間:1,200時間の条件で、促進耐候性試験を行った。
【0242】
次いで、各試験板について、上記マルチアングル分光測色計「CM-512m3」(コニカミノルタ社製)を用いて、塗膜面に垂直な軸に対し25°の角度から光を照射し、反射した光のうち塗膜面に垂直な方向の光についてL、a、bを測色した。次いで、促進耐候性試験前と試験後のL、a、b測色値からJIS K 5600-4-6(1999)に従いΔEを算出し、下記基準に基づき評価した。色差ΔEが小さいほど試験板の変色が小さく耐候性が良好である事を示す。
【0243】
A:ΔEが3.0未満であった。
B:ΔEが3.0以上3.5未満であった。
C:ΔEが3.5以上4.0未満であった。
D:ΔEが4.0以上5.0未満であった。
E:ΔEが5.0以上であった。
【0244】
【表1】
【0245】
【表2】
【0246】
【表3】
【0247】
【表4】
【0248】
【表5】
【0249】
【表6】
【0250】
【表7】
【0251】
以上の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型塗料組成物は、基材追随性、付着性、耐洗車擦り傷性、硬度、耐候性に優れた塗膜を形成できることがわかった。
【0252】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は2019年2月28日出願の日本特許出願(特願2019-36452)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。