(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)プロウイルスDNAの測定方法及び測定キット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20221125BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221125BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12N15/11 Z ZNA
G01N33/50 P
(21)【出願番号】P 2017171605
(22)【出願日】2017-09-06
【審査請求日】2020-07-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月7日国際レトロウイルス学会が発行した第18回国際ヒトレトロウイルスHTLV会議 Program & Abstracts Book第111頁で公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成29年3月7日ホテルグランドアーク半蔵門において開催された第18回国際ヒトレトロウイルスHTLV会議で発表。
(73)【特許権者】
【識別番号】596165589
【氏名又は名称】学校法人 聖マリアンナ医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】ミナリスメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106574
【氏名又は名称】岩橋 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山野 嘉久
(72)【発明者】
【氏名】東久世 裕太
(72)【発明者】
【氏名】永井 豪
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-163769(JP,A)
【文献】Mohammad Mehdi Akbarin et al.,Evaluation of the role of TAX, HBZ, and HTLV-1 proviral load on the survival of ATLL patients.,Blood Res.,2017年06月22日,Vol.52, No.2,p.106-11,doi: 10.5045/br.2017.52.2.106
【文献】Tetsuya Usui et al.,Characteristic expression of HTLV-1 basic zipper factor (HBZ) transcripts in HTLV-1 provirus-positive cells.,Retrovirology,2008年04月22日,5:34,doi: 10.1186/1742-4690-5-34
【文献】Human T-lymphotropic virus 1 bZIP factor(HBZ) mRNA, complete cds,GenBank: DQ273132.1,2006年01月19日,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nucleotide/DQ273132.1?report=genbank&log$=nuclalign&blast_rank=30&RID=GWKA490D01R&from=580&to=1331
【文献】Sayed-Hamidreza Mozhgani et al.,Evaluation of HTLV-1 HBZ and proviral load, together with host IFN λ3, in pathogenesis of HAM/TSP.,J. Med. Virol.,2016年11月10日,Vol.89, No.6,p.1102-1107,doi: 10.1002/jmv.24721
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者より採取した検体中のヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAの測定方法であって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子
と、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子とを、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いて測定することを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法。
【請求項2】
前記PCR法を用いる、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子の測定が、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーとのプライマー対を用いて行われる、請求項
1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記プライマー対が、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、配列番号3~配列番号7からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8~配列番号13からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとのプライマー対である、請求項
2に記載の測定方法。
【請求項4】
被検者より採取した検体中のヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAの測定方法であって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いて測定することを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法であって、
前記PCR法を用いる、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子の測定が、以下の(1)~(6)のいずれか
のプライマー対を用いて行われる、測定方法。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対
【請求項5】
前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子の測定が、さらに、第1のPCRプライマーと第2のPCRプライマーとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブを用いて行われる、請求項
2~
4のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、請求項
5に記載の測定方法。
【請求項7】
前記プライマー対とプローブとの組み合わせが、以下の(1)~(7)のいずれかである、請求項
5又は
6に記載の測定方法。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ
【請求項8】
さらに、前記検体中の内部標準遺伝子をPCR法を用いて測定する、請求項1~
7のいずれかに記載の測定方法。
【請求項9】
前記内部標準遺伝子が、RNaseP遺伝子である、請求項
8に記載の測定方法。
【請求項10】
前記被検者が、HTLV-1関連疾患患者である、請求項1~
9のいずれかに記載の測定方法。
【請求項11】
HTLV-1関連疾患が、HTLV-1関連脊髄症(HAM)である、請求項
10に記載の測定方法。
【請求項12】
被検者より採取した検体中のヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いて測定するためのキットであって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬
、及び、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬、を含むことを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNA測定キット。
【請求項13】
前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬が、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーとのプライマー対を含む試薬である、請求項
12に記載のキット。
【請求項14】
前記プライマー対が、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、配列番号3~配列番号7からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8~配列番号13からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとのプライマー対である、請求項
13に記載のキット。
【請求項15】
被検者より採取した検体中のヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いて測定するためのキットであって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬を含むことを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNA測定キットであって、
前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬が、以下の(1)~(6)のいずれか
のプライマー対を含む、キット。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対
【請求項16】
前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬が、さらに、第1のPCRプライマーと第2のPCRプライマーとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブを含む、請求項
13~
15のいずれかに記載のキット。
【請求項17】
前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、請求項
16に記載のキット。
【請求項18】
前記プライマー対とプローブとの組み合わせが、以下の(1)~(7)のいずれかである、請求項
16又は
17に記載のキット。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ
【請求項19】
さらに、前記検体中の内部標準遺伝子測定試薬を含む、請求項
12~
18のいずれかに記載のキット。
【請求項20】
前記内部標準遺伝子が、RNaseP遺伝子である、請求項
19に記載のキット。
【請求項21】
前記被検者が、HTLV-1関連疾患患者である、請求項
12~
20のいずれかに記載のキット。
【請求項22】
前記HTLV-1関連疾患が、HTLV-1関連脊髄症(HAM)である、請求項
21に記載のキット。
【請求項23】
被検者より採取した検体中のヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAを、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いて測定するために用いるプライマー対であって、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーと、からなるプライマー対
であって、
前記プライマー対が、以下の(1)~(6)のいずれかであるプライマー対。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対
【請求項24】
請求項
23に記載のプライマー対を用いて増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブ。
【請求項25】
前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、請求項
24に記載のプローブ。
【請求項26】
以下の(1)~(7)からなる群より選ばれる、プライマー対とプローブとのセット。(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとのセット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型[Human T-cell leukemia virus type I(以下、HTLV-1と記す)]プロウイルスDNAの測定方法及び測定キット、並びに、HTLV-1プロウイルスDNAを標的として結合するプローブ及びプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
HTLV-1はRNAレトロウイルスの一種で、日沼らによって成人T細胞白血病/リンパ腫(Adult T-cell leukemia:ATL)の原因ウイルスとして同定された(非特許文献1~3)。HTLV-1プロウイルスDNAには、gag、pol、env、pX領域が存在し、pX領域にはtax遺伝子、HBZ遺伝子が存在する。HTLV-1プロウイルスDNAとは、HTLV-1のRNAが逆転写酵素により変換されて、ヒトゲノム中に組み込まれたDNAであり、HTLV-1感染の診断に用いられている。
【0003】
HTLV-1が引き起こす疾患としては、例えば血流内やリンパ器官内で発症する成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATL)、脊髄内で発症するHTLV-1関連脊髄症(HTLV-1 associated myelopathy:HAM)、眼球内で発症したHTLV-1ぶどう膜炎(HTLV-1 uveitis:HU)等が知られている(非特許文献4~7)。
【0004】
ヒトにおけるHTLV-1感染は、主に母から子への垂直感染ならびに夫から妻への水平感染であるが、輸血による医原性感染も知られている。輸血による医原性感染は、1986年から開始された抗HTLV-1抗体を検査することにより防止されてきた。輸血による医原性感染の疫学的研究から、HTLV-1感染は血球細胞成分が介在していることが知られている。HTLV-1に感染すると、生体中に抗HTLV-1抗体が生成してくるため、抗HTLV-1抗体を測定することにより、HTLV-1の感染を知ることができる。
【0005】
抗HTLV-1抗体を測定する方法としては、免疫学的手法を用いた測定方法が知られており、ゼラチン粒子凝集法(PA法)、蛍光抗体法(FA法)、間接蛍光抗体法(IF法)、化学発光酵素免疫測定法(CLEIA法)、ウェスタンブロット法(WB法)などが知られている。HTLV-1キャリア 指導の手引き(厚生労働省研究班「本邦におけるHTLV-1感染及び関連疾患の実態調査と総合対策」、2011年)によると、一般医療機関ではスクリーニング検査としてPA法やCLEIA法が用いられる。スクリーニング検査で陽性と判断された場合であっても、WB法による確認検査が実施される。さらに、WB法による確認検査で判定保留となった場合、ポリメラーゼ連鎖反応法(以下、PCR法と記す)を用いてHTLV-1プロウイルスを検出する検査が実施される。
【0006】
PCR法を用いてHTLV-1プロウイルスDNAを検出する方法として、HTLV-1プロウイルスDNAのpX領域におけるtax遺伝子という比較的配列が安定した領域を標的とする方法(特許文献1)が知られているが、HTLV-1キャリア又はHTLV-1関連疾患患者において、tax遺伝子領域に遺伝子変異や欠損が見られることが報告されている(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.78(10), pp.6476-6480. 1981
【文献】Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America, Vol.79, 2031-2035. 1982
【文献】Sciences, Vol.219, pp.856-859. 1983
【文献】Uchiyama et al,Blood,1977;50:481-492.
【文献】Gessain et al,Lancet,1985;2:407-410.
【文献】Osame et al,Lancet,1986;1;1031-1032.
【文献】Kaplan et al,J.Aquir.Immune Defi.Syndro.,1990;3:1096-1101.
【文献】JOURNAL OF VIROLOGY, July 2010, p. 7278-7287.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
pX領域のうちtax遺伝子領域を標的とした従来のPCR法では、tax遺伝子領域に遺伝子変異がある場合、正確なHTLV-1プロウイルスDNAの測定ができない。本発明の目的は、pX領域のtax遺伝子に遺伝子変異がある場合であっても、正確なHTLV-1プロウイルスDNAの測定を可能とする方法およびキット、並びに、HTLV-1プロウイルスDNAを標的として結合するプライマー及びプローブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、HTLV-1プロウイルスDNAのpX領域におけるHBZ遺伝子をPCR法を用いて測定することにより、HTLV-1プロウイルスDNAを正確に測定できるという知見を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の[1]~[30]に関する。
[1]被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法であって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を、PCR法を用いて測定することを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法。
[2]さらに、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子をPCR法を用いて測定する、[1]記載の測定方法。
[3]前記PCR法を用いる、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子の測定が、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーとのプライマー対を用いて行われる、[1]又は[2]に記載の測定方法。
[4]プライマー対が、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、配列番号3~配列番号7からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8~配列番号13からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対である、[3]に記載の測定方法。
[5]前記プライマー対が、以下の(1)~(6)のいずれかである、[4]に記載の測定方法。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
[6]前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子の測定が、さらに、第1のPCRプライマーと第2のPCRプライマーとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブを用いて行われる、[3]~[5]のいずれかに記載の測定方法。
[7]前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、[6]記載の測定方法。
[8]前記プライマー対とプローブとの組み合わせが、以下の(1)~(7)のいずれかである、[6]又は[7]に記載の測定方法。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ
[9]さらに、前記検体中の内部標準遺伝子をPCR法を用いて測定する、[1]~[8]のいずれかに記載の測定方法。
[10]前記内部標準遺伝子が、RNaseP遺伝子である、[9]に記載の測定方法。
[11]前記被検者が、HTLV-1関連疾患患者である、[1]~[10]のいずれかに記載の測定方法。
[12]前記HTLV-1関連疾患が、HAMである、[11]に記載の測定方法。
[13]被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルスDNAを、PCR法を用いて測定するためのキットであって、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬を含むことを特徴とするHTLV-1プロウイルスDNA測定キット。
[14]さらに、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬を含む、[13]記載のキット。
[15]前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬が、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーとのプライマー対を含む試薬である、[13]又は[14]に記載のキット。
[16]前記プライマー対が、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、配列番号3~配列番号7からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8~配列番号13からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対である、[15]に記載のキット。
[17]前記プライマー対が、以下の(1)~(6)のいずれかである、[16]に記載のキット。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対
[18]前記HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬が、さらに、第1のPCRプライマーと第2のPCRプライマーとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブを含む、[15]~[17]のいずれかに記載のキット。
[19]前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、[18]に記載のキット。
[20]前記プライマー対とプローブとの組み合わせが、以下の(1)~(7)のいずれかである、[18]又は[19]に記載のキット。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとの組み合わせ
[21]さらに、前記検体中の内部標準遺伝子測定試薬を含む、[13]~[20]のいずれかに記載のキット。
[22]前記内部標準遺伝子が、RNaseP遺伝子である、[19]に記載のキット。
[23]被検者が、HTLV-1関連疾患患者である、[13]~[22]のいずれかに記載のキット。
[24]前記HTLV-1関連疾患が、HAMである、[23]に記載のキット。
[25]被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルスDNAを、PCR法を用いて測定するために用いるプライマー対であって、HTLV-1プロウイルスDNAの増幅を可能とし、かつ、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第1のPCRプライマーと、15塩基以上50塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含む第2のPCRプライマーと、からなるプライマー対。
[26]前記プライマー対が、配列番号3~配列番号7からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8~配列番号13からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーと、からなるプライマー対である、[25]記載のプライマー対。
[27]前記プライマー対が、以下の(1)~(6)のいずれかである、[26]に記載のプライマー対。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(2)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対:
(3)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(4)配列番号6で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(5)配列番号7で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対;
(6)配列番号5で示される配列番号からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される配列番号からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対
[28][25]~[27]のいずれかに記載のプライマー対を用いて増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブ。
[29]前記プローブが、配列番号14~配列番号20からなる群より選ばれる1つの配列番号で示される塩基配列からなるプローブである、[28]記載のプローブ。
[30]以下の(1)~(7)からなる群より選ばれる、プライマー対とプローブとのセット。
(1)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号14で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(2)配列番号3で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号8で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号15で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(3)配列番号4で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号9で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号16で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(4)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号10で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号17で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(5)配列番号6で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号11で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号18で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(6)配列番号7で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号12で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号19で示される塩基配列からなるプローブとのセット;
(7)配列番号5で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーと、配列番号13で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーとからなるプライマー対と、配列番号20で示される塩基配列からなるプローブとのセット
【発明の効果】
【0011】
本発明により、pX領域のうちtax遺伝子領域に遺伝子変異がある場合であっても、正確なHTLV-1プロウイルスDNAの測定を可能とする方法及びキット、並びに、HTLV-1プロウイルスDNAを標的として結合するプライマー及びプローブが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】HTLV-1陽性細胞(TL-Om1)のゲノムDNAを、第6表に示すHBZ遺伝子を標的として結合するプライマー対(HBZ1プライマー対~HBZ7プライマー対)、又は、tax遺伝子を標的として結合するプライマー対を用いて、リアルタイムPCRを行った際の反応曲線を示す。実線は、tax遺伝子を標的として結合するプライマー対を用いた際の反応曲線を示し、破線及び一点鎖線は、HBZ1プライマー対~HBZ7プライマー対を用いた際の反応曲線を示す。横軸はPCTのサイクル数を、縦軸は正規化された発光強度を表す。また、陰性コントロールとして精製水を、第6表に示すHBZ遺伝子を標的として結合するプライマー対(HBZ1プライマー対~HBZ7プライマー対)を用いて、リアルタイムPCRを行った際の反応曲線の結果を二点鎖線で示す。さらに、Threshold lineを点線で示す。
【
図2】HAM患者ゲノムDNA28検体中を用いて、HBZ5プライマー対を用いたPCRにより算出されたHTLV-1プロウイルス量(y軸)と、taxプライマー対を用いたPCRにより算出されHTLV-1プロウイルス量(x軸)との相関関係を示す図である。
【
図3】tax遺伝子内に一塩基変異が存在するHAM患者由来のゲノムDNA中の、HBZプライマー対を用いたPCRにより算出されたHTLV-1プロウイルス量、及び、taxプライマー対を用いたPCRにより算出されたHTLV-1プロウイルス量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.HTLV-1プロウイルスDNAの測定方法
本発明の、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法は、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を、PCR法を用いて測定することを特徴とする方法である。
【0014】
本発明におけるHTLV-1プロウイルスDNAとは、HTLV-1のRNAが逆転写酵素により変換されて、ヒトゲノム中に組み込まれたDNAである。
本発明における被検者としては、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法を可能とする被検者であれば特に制限はなく、例えばHTLV-1感染者、HTLV-1関連疾患患者等が挙げられ、HTLV-1関連疾患患者が好ましい。HTLV-1関連疾患としては、例えばHTLV-1関連脊髄症(HAM)等が挙げられる。
【0015】
本発明における検体としては、HTLV-1プロウイルスDNAが測定され得る検体であれば特に制限はなく、例えば血液、尿、唾液、乳汁、鼻汁、脳脊髄液、骨髄液、リンパ組織等が挙げられ、血液が好ましい。前記血液としては、例えば全血、血球、血清、血漿等が挙げられ、血球が好ましい。血球としては、例えば末梢血単核球(PBMC)等が挙げられる。リンパ組織としては、例えば脾臓、胸腺、リンパ節等が挙げられる。
【0016】
本発明の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法は、以下の工程を含む
方法により行うことができる。
(1)被検者から検体を採取し、当該採取された検体からDNAを含有する試料を調製する工程;
(2)工程(1)で調製した試料に対して、HBZ遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーHBZと、HBZ遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程;
(3)工程(2)で得られる増幅断片の量を測定する工程。
<工程(1)>
工程(1)は、被検者から採取された検体からDNAを含有する試料を調製する工程であり、例えばQIAamp DNA Blood miniキット(キアゲン社製)等を用いて調製することができる。被検者より採取された検体としては、前述の検体が挙げられる。なお、工程(1)において、被検者から採取された検体から調製されるDNAを含有する試料としては、被検者から採取された検体そのものであっても、被検者から採取された検体から抽出されたDNAでもよい。
【0017】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)で調製したDNAを含む試料に対して、本発明に係る前記第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程である。PCRは、PCR増幅装置を用い、常法に従って行うことができる。これにより、試料中にHTLV-1プロウイルスDNAが含まれている場合には、pX領域におけるHBZ遺伝子に対応する増幅断片が得られる。より具体的には、被検者のゲノムDNAに組み込まれた、プロウイルス化したHTLV-1のpX領域におけるHBZ遺伝子に対応する増幅断片が得られる。
【0018】
本発明における第1のPCRプライマーHBZは、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであって、第2のPCRプライマーHBZと共にプライマー対として、PCRによるHTLV-1プロウイルスDNAの測定に用いられるプライマーである。本発明における第1のPCRプライマーHBZとしては、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであれば特に制限はないが、15塩基以上50塩基以下、好ましくは15塩基以上35塩基以下、より好ましくは15塩基以上30塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号1で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含むプライマーが好ましい。第1のPCRプライマーHBZとしては、例えば配列番号3~7のいずれかで示される塩基配列からなるプライマー等が挙げられる。
本発明における第2のPCRプライマーHBZは、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであって、第1のPCRプライマーHBZと共にプライマー対として、PCRによるHTLV-1プロウイルスDNAの測定に用いられるプライマーである。本発明における第2のPCRプライマーHBZとしては、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであれば特に制限はないが、15塩基以上50塩基以下、好ましくは15塩基以上35塩基以下、より好ましくは15塩基以上30塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号2で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含むプライマーが好ましい。第2のPCRプライマーHBZとしては、例えば配列番号8~13のいずれかで示される塩基配列からなるプライマー等が挙げられる。
本発明における、PCRによるHBZ遺伝子の測定に用いられる第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対としては、例えば以下の第1表に記載した配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対等が挙げられる。
【0019】
【0020】
本発明における第1のPCRプライマーHBZ及び第2のPCRプライマーHBZは常法の核酸合成法に従って合成することができる。
【0021】
工程(2)におけるPCRの反応条件は、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定が可能であれば特に制限は無いが、好ましいPCRの条件を以下に例示する。
1)PCRの反応液に含まれる第1のPCRプライマーHBZの終濃度は、0.01~10 μmol/Lが好ましく、0.03~3 μmol/Lがより好ましく、0.1~1 μmol/Lが特に好ましい。PCRの反応液に含まれる第2のPCRプライマーHBZの終濃度は、0.01~10μmol/Lが好ましく、0.03~3μmol/Lがより好ましく、0.1~1μmol/Lが特に好ましい。
2)PCRの反応液に含まれるゲノムDNAの終濃度は、0.1 ng/μL~1000 ng/μLの範囲内が好ましく、0.4~400 ng/μLの範囲内がより好ましい。
3)PCRのサイクル数は、20~60回が好ましく、30~60回がより好ましく、40~60回がさらに好ましい。
4)PCRの変性温度は、90℃~100℃が好ましく、94℃~98℃がより好ましく、95℃程度が特に好ましい。
5)PCRのアニーリング温度は、55~70℃が好ましく、55~65℃がより好ましく、60℃程度がさらに好ましい。
6)PCRの伸長反応温度は、70℃~78℃が好ましく、72℃~75℃がより好ましい。PCRの伸長反応の時間は、20~40秒が好ましく、25~35秒がより好ましい。なお、アニーリングの後に伸長反応を行っても、アニーリングと伸長反応を同時に行ってもよい。
7)PCRの反応液に含まれるポリメラーゼの終濃度は、0.005 U/μL~0.2U/μLが好ましく、0.015 U/μL~0.15 U/μLがより好ましく、0.025 U/μL~0.1 U/μLが特に好ましい。
8)PCRの反応液に含まれるdNTPの終濃度は、0.01 mmol/L~1.2 mmol/Lが好ましく、0.05 mmol/L~0.8 mmol/Lがより好ましく、0.1 mmol/L~0.6 mmol/Lが特に好ましい。
9)PCRの反応液に含まれる塩化マグネシウムの終濃度は、1.0 mmol/L~8.0 mmol/Lが好ましく、1.5 mmol/L~6.0 mmol/Lがより好ましく、2.25 mmol/L~4.5 mmol/Lが特に好ましい。
【0022】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定する工程である。PCR増幅断片の量を測定する方法としては、例えば電気泳動によりPCR増幅断片の量を測定する方法、プローブを用いてPCR増幅断片の量を測定する方法等が挙げられる。
本発明においては、工程(2)と工程(3)とは同時に行っても、工程(2)の後に工程(3)を行ってもよいが、工程(2)と工程(3)とを同時に行う方が好ましい。工程(2)と工程(3)とを同時に行う場合、リアルタイムPCRを用いることができる。
工程(2)と工程(3)とを同時に行う場合、以下の工程(1a)~(3a)を行うことにより、工程(2)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定することができる。
(1a)被検者から採取された検体から、DNAを含有する試料を調製する工程;
(2a)工程(1a)で調製した試料に対して、HBZ遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーHBZと、HBZ遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対と、プローブとを用いてPCRを行い、当該増幅断片と当該プローブとからなる複合体を形成させる工程;
(3a)工程(2a)で得られる当該複合体の量を測定する工程。
【0023】
工程(2)の後に工程(3)を行う場合、以下の工程(1b)~(3b)を行うことにより、工程(2)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定することができる。
(1b)被検者から採取された検体から、DNAを含有する試料を調製する工程;
(2b)工程(1b)で調製した試料に対して、HBZ遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーHBZと、HBZ遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程;
(3b)工程(2b)で得られる反応液にプローブを添加し、当該増幅断片と当該プローブとからなる複合体を形成させ、当該複合体の量を測定する工程。
PCRの反応液に含まれる当該プローブの終濃度は、0.005~5 μmol/Lが好ましく、0.01~1 μmol/Lがより好ましく、0.05~0.4 μmol/Lが特に好ましい。
【0024】
前記プローブとしては、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAを測定し得るプローブであれば特に制限は無く、例えば、前記第1のPCRプライマーHBZと前記第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド等が挙げられる。前記第1のPCRプライマーHBZと前記第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとしては、配列番号14~20のいずれかで示される塩基配列からなるオリグヌクレオチド等が挙げられる。
前記プローブは、標識物質で修飾されていてもよい。標識物質としては、蛍光物質、蛍光物質とクエンチャー物質の組み合わせ等が挙げられる。
標識物質で修飾された前記プローブとしては、例えば、5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャー物質で修飾したオリゴヌクレオチドであるTaqManプローブ(アプライドバイオシステムズ社製)やDual Labeled Probe(シグマアルドリッチ社製)、RNAとDNAからなるキメラプローブとRNase Hとの組み合わせによるサイクリングプローブ(タカラバイオ社製)等が挙げられる。TaqManプローブやDual Labeled Probeにおける蛍光物質とクエンチャー物質との組み合わせとしては、例えば第2表に記載の組み合わせ等が挙げられる。
【0025】
【0026】
PCR増幅断片の量を測定する場合は、既知濃度のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品を試料として用いて、上記(1)~(3)を行うことにより、予め作成した、HTLV-1プロウイルスDNAの量とPCR増幅断片の量との関係を表す検量線と、工程(3)で測定されたPCR増幅断片の量とから、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの量を決定することができる。
なお、既知濃度のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品として、既知コピー数のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品を用いることもできる。既知コピー数のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品を用いることにより、HTLV-1プロウイルス量、すなわち、一定の細胞数あたりのHTLV-1プロウイルスDNAコピー数を測定することができる。なお、当該一定の細胞数は任意に設定することができ、例えば1~10000の範囲の細胞数が挙げられる。
リアルタイムPCRを行う場合、「PCR増幅断片の量」の代わりに、Ct値(Threshold Cycle値)を用いることもできる。このCt値は、PCR増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数を表し、この値が小さいほど、試料中のDNA量が多い。
本発明における、PCRによるHBZ遺伝子の測定に用いられる第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対、及び、プローブのセットとしては、HTLV-1プロウイルスDNAの測定方法を可能とするセットであれば特に制限はなく、例えば以下の第3表に記載の配列番号で示される第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとプローブとのセット等が挙げられる。
【0027】
【0028】
本発明の検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法は、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を、PCR法を用いて測定すると共に、さらに、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子をPCR法を用いて測定する方法を含んでもよい。HBZ遺伝子と共に、tax遺伝子を測定することにより、tax遺伝子、HBZ遺伝子のいずれか一方の遺伝子に変異がある場合でも、HTLV-1プロウイルスDNAを正確に測定することができる。
HBZ遺伝子と共に、tax遺伝子をPCR法を用いて測定する方法は、前記工程(1)~(3)と共に、以下の工程(4)及び(5)を含む方法により行うことができる。なお、工程(2)及び工程(3)と工程(4)及び工程(5)は、いずれの順に行ってもよく、工程(2)及び工程(3)の後に工程(4)及び工程(5)を行っても、工程(4)及び工程(5)の後に工程(2)及び工程(3)を行ってもよい。
(4)工程(1)で調製した試料に対して、tax遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーtaxと、tax遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程;
(5)工程(4)で得られる増幅断片の量を測定する工程。
【0029】
<工程(4)>
工程(4)は、工程(1)で調製したDNAを含む試料に対して、前記期第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程である。PCRは、PCR増幅装置を用い、常法に従って行うことができる。これにより、試料中にHTLV-1プロウイルスDNAが含まれている場合には、pX領域におけるtax遺伝子に対応する増幅断片が得られる。より具体的には、被検者のゲノムDNAに組み込まれた、プロウイルス化したHTLV-1のpX領域におけるtax遺伝子に対応する増幅断片が得られる。
本発明における第1のPCRプライマーtaxは、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであって、第2のPCRプライマーtaxと共にプライマー対として、PCRによるHTLV-1プロウイルスDNAの測定に用いられるプライマーである。本発明における第1のPCRプライマーtaxとしては、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであれば特に制限はないが、15塩基以上50塩基以下、好ましくは15塩基以上35塩基以下、より好ましくは15塩基以上30塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号30で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含むプライマーが好ましい。第1のPCRプライマーtaxとしては、例えば配列番号24又は25示される塩基配列からなるプライマー等が挙げられる。
本発明における第2のPCRプライマーtaxは、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであって、第1のPCRプライマーtaxと共にプライマー対として、PCRによるHTLV-1プロウイルスDNAの測定に用いられるプライマーである。本発明における第2のPCRプライマーtaxとしは、HTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を増幅可能なPCRプライマーであれば特に制限はないが、15塩基以上50塩基以下、好ましくは15塩基以上35塩基以下、より好ましくは15塩基以上30塩基以下のオリゴヌクレオチドからなり、配列番号31で示される塩基配列における連続する15以上の塩基を含むプライマーが好ましい。第2のPCRプライマーtaxとしては、例えば配列番号26又は27で示される塩基配列からなるプライマー等が挙げられる。
前記第1のPCRプライマーtax及び第2のPCRプライマーtaxは常法の核酸合成法に従って合成することができる。
本発明における、PCRによるtax遺伝子の測定に用いられる第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるPCRプライマー対としては、例えば以下の第4表に記載の配列番号で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対等が挙げられる。
【0030】
【0031】
工程(4)におけるPCRの反応条件は、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定を可能とする条件であれば特に制限は無く、例えば前述の条件等が挙げられる。PCRの反応液に含まれる第1のPCRプライマーtaxの終濃度は、0.01~10 μmol/Lが好ましく、0.03~3 μmol/Lがより好ましく、0.1~1 μmol/Lが特に好ましい。また、PCRの反応液に含まれる第2のPCRプライマーtaxの終濃度は、0.01~10 μmol/Lが好ましく、0.03~3 μmol/Lがより好ましく、0.1~1 μmol/Lが特に好ましい。
工程(2)と工程(4)とは別々に行っても、同時に行ってもよいが、同時に行うことが好ましい。
また、工程(2)と工程(4)とは同一容器内で行ってもよいし、別々の容器で行ってもよい。
<工程(5)>
工程(5)は、工程(4)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定する工程である。PCR増幅断片の量を測定する方法としては、例えば電気泳動によりPCR増幅断片の量を測定する方法、並びにプローブを用いてPCR増幅断片の量を測定する方法等が挙げられる。
本発明においては、工程(4)と工程(5)とは同時に行っても、工程(4)の後に工程(5)を行ってもよいが、工程(4)と工程(5)とを同時に行う方が好ましい。工程(4)と工程(5)とを同時に行う場合、リアルタイムPCRを用いることができる。
工程(4)と工程(5)とを同時に行う場合、以下の工程(1c)、(4c)及び(5c)を行うことにより、工程(4)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定することができる。
(1c)被検者から検体を採取し、当該採取された検体からDNAを含有する試料を調製する工程;
(4c)工程(1c)で調製した試料に対して、tax遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーtaxと、tax遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対と、プローブとを用いてPCRを行い、当該増幅断片と当該プローブとからなる複合体を形成させる工程;
(5c)工程(4c)で得られる当該複合体の量を測定する工程。
工程(4)の後に工程(5)を行う場合、以下の工程(1d)、(4d)及び(5d)を行うことにより、工程(4)の増幅工程で得られるPCR増幅断片の量を測定することができる。
(1d)被検者から検体を採取し、当該採取された検体からDNAを含有する試料を調製する工程;
(4d)工程(1d)で調製した試料に対して、tax遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーtaxと、tax遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対を用いてPCRを行う工程;
(5d)工程(4d)で得られる反応液にプローブを添加し、当該増幅断片と当該プローブとからなる複合体を形成させ、当該複合体の量を測定する工程。
PCRの反応液に含まれる当該プローブの終濃度は、0.005~5 μmol/Lが好ましく、0.01~1 μmol/Lがより好ましく、0.05~0.4 μmol/Lが特に好ましい。
本発明におけるtax遺伝子測定用プローブとしては、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAを測定し得るプローブであれば特に制限は無く、例えば、前記第1のPCRプライマーtaxと前記第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド等が挙げられる。前記第1のPCRプライマーtaxと前記第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドとしては、例えば配列番号28又は29で示される塩基配列からなるオリゴヌクレオチド等が挙げられる。
本発明における、PCRによるtax遺伝子の測定に用いられる第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるPCRプライマー対、及び、プローブのセットとしては、HTLV-1プロウイルスDNAの測定方法を可能とするセットであれば特に制限はなく、例えば以下の第5表に記載の配列番号で示される第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとプローブとのセット等が挙げられる。
【0032】
【0033】
本発明のプローブは、標識物質で修飾されていてもよい。標識物質としては、例えば前述の標識物質等が挙げられる。
PCR増幅断片の量を測定する場合は、既知濃度のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品を試料として用いて、上記工程(1)、工程(4)及び工程(5)を行うことにより、予め作成した、HTLV-1プロウイルスDNAの量とPCR増幅断片の量との関係を表す検量線と、工程(4)で検出されたPCR増幅断片の量とから、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの量を決定することができる。
なお、既知濃度のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品として、既知コピー数のHTLV-1プロウイルスDNAを含む標準品を用いることもできる。リアルタイムPCRを行う場合、「PCR増幅断片の量」の代わりに、Ct値を用いることもできる。このCt値は、PCR増幅産物がある一定量に達したときのサイクル数を表し、この値が小さいほど、試料中のDNA量が多い。
【0034】
本発明の測定方法において、検体中に含まれる細胞数を定量化して、検体中のゲノムDNA量を正規化(ノーマライズ)するために、HBZ遺伝子の代わりに、内部標準遺伝子を用いて工程(1)~工程(3)を行い、内部標準遺伝子の断片を増幅する方法を含んでいてもよい。
上記内部標準遺伝子の断片を増幅する方法を含む本発明の測定方法により、検体中の、一定の細胞数当たりのHTLV-1プロウイルスDNAコピー数、すなわち、HTLV-1プロウイルス量を測定することができる。本発明の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法には、当該内部標準遺伝子の断片を増幅する方法を含む、HTLV-1プロウイルス量の測定方法も包含される。なお、当該一定の細胞数は任意に設定することができ、例えば、1~10000の範囲の細胞数が挙げられる。
内部標準遺伝子の断片を増幅する方法は、工程(1)で調製した試料について、内部標準遺伝子を標的として結合する第1のプライマー内部標準と、内部標準遺伝子を標的として結合する第2のプライマー内部標準とからなるプライマー対を用いてPCRを行うことにより行うことができる。
本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法において、内部標準遺伝子の断片を増幅するPCRは、pX領域内のHBZ遺伝子のPCRと同一の反応液中で行っても、異なった反応液中で行ってもよいが、同一の反応液中で行うことが好ましい。
また、HBZ遺伝子と共にtax遺伝子を用いるHTLV-1プロウイルスDNAの測定を行う場合は、上記と同様に、検体中に含まれる細胞数を定量化して、検体中のゲノムDNA量を正規化(ノーマライズ)するために、tax遺伝子の代わりに、内部標準遺伝子を用いて工程(1)、工程(4)及び工程(5)を行い、内部標準遺伝子の断片を増幅する方法を含んでいてもよい。内部標準遺伝子の断片を増幅するPCRは、tax遺伝子のPCRと同一の反応液中で行っても、異なった反応液中で行ってもよいが、同一の反応液中で行った方が好ましい。
内部標準遺伝子の断片を増幅するPCRの反応は、前述の、HTLV-1プロウイルスDNAを増幅するPCRと同一の条件で行うことが好ましい。
内部標準遺伝子としては、本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定が可能であれば特に制限は無いが、シングルコピーの宿主遺伝子等が挙げられる。シングルコピーの宿主遺伝子としては例えば、RNaseP遺伝子等が挙げられる。
RNaseP遺伝子を標的として結合する第1のプライマーRNasePと第2のプライマーRNasePとからなるプライマー対としては、RNaseP遺伝子を標的として結合するプライマー対であれば特に制限はなく、例えば、配列番号21で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマーRNasePと、配列番号22で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマーRNasePと、からなるプライマー対等が挙げられる。
工程(2)又は工程(4)の増幅工程の方法に従って得られる、内部標準遺伝子のPCR増幅断片の量を測定する方法としては、電気泳動によりPCR増幅断片の量を測定する方法、並びにプローブを用いてPCR増幅断片の量を測定する等が挙げられる。プローブを用いてPCR増幅断片の量を測定する方法としては、例えば前述の方法等が挙げられる。
当該プローブとしては、配列番号23で示される塩基配列からなるプローブ等が挙げられる。
【0035】
2.検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キット
本発明の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットは、当該検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬を含むことを特徴とするキットであり、本発明の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法に用いることができる。検体としては、例えば前述の検体等が挙げられる。検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬は、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を測定する試薬であって、前述の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子を、PCR法を用いて測定する方法に用いられる試薬である。
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬には、HBZ遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーHBZと、HBZ遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対が含まれている。第1のPCRプライマーHBZ、及び、第2のPCRプライマーHBZとしては、例えば前述の第1のPCRプライマーHBZ、及び、第2のPCRプライマーHBZ等がそれぞれ挙げられる。第1のPCRプライマーHBZと、第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対としては、例えば前記の第1表に記載した配列番号で示される塩基配列からなるプライマー対等が挙げられる。
pX領域内のHBZ遺伝子測定試薬には、さらに、第1のPCRプライマーHBZと、第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブが含まれていてもよい。プローブとしては、例えば前述のプローブ等が挙げられる。
第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対と、プローブのセットとしては、例えば前記の第3表に記載した配列番号で示される塩基配列からなるPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとプローブとのセット等が挙げられる。
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬に含まれる第1のPCRプライマーHBZの濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬に含まれる第2のPCRプライマーHBZの濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のHBZ遺伝子測定試薬に含まれる前記プローブの濃度は、0.05~50 μmol/Lが好ましく、0.1~10 μmol/Lがより好ましく、0.5~4 μmol/Lが特に好ましい。
【0036】
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットには、pX領域内のHBZ遺伝子測定試薬と共に、さらに、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬が含まれていてもよい。当該pX領域内のtax遺伝子測定試薬は、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を測定する試薬であって、前述の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子を、PCR法を用いて測定する方法に用いられる試薬である。pX領域内のtax遺伝子測定試薬には、tax遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマーtaxと、tax遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対が含まれている。第1のPCRプライマーtax、及び、第2のPCRプライマーtaxとしては、例えば前述の第1のPCRプライマーtax、及び、第2のPCRプライマーtax等がそれぞれ挙げられる。第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対としては、例えば前記の第4表に記載した配列番号で示される第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対等が挙げられる。
pX領域内のtax遺伝子測定試薬には、さらに、第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブが含まれていてもよい。プローブとしては、例えば前述のプローブ等が挙げられる。
第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとからなるPCRプライマー対とプローブのセットとしては、例えば前記の第5表に記載された配列番号で示される第1のPCRプライマーtaxと第2のPCRプライマーtaxとプローブとのセット等が挙げられる。
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬に含まれる第1のPCRプライマーtaxの濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬に含まれる第2のPCRプライマーtaxの濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAにおけるpX領域内のtax遺伝子測定試薬に含まれる前記プローブの濃度は、0.05~50 μmol/Lが好ましく、0.1~10 μmol/Lがより好ましく、0.5~4 μmol/Lが特に好ましい。
【0037】
本発明における、検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットには、さらに、内部標準遺伝子測定試薬が含まれていてよい。内部標準遺伝子としては、例えば前述の内部標準遺伝子等が挙げられる。内部標準遺伝子測定試薬には、内部標準遺伝子を標的として結合する第1のPCRプライマー内部標準と、内部標準遺伝子を標的として結合する第2のPCRプライマー内部標準とからなるプライマー対が含まれている。第1のPCRプライマー内部標準、及び、第2のPCRプライマー内部標準としては、例えば前述の第1のPCRプライマー内部標準、及び、第2のPCRプライマー内部標準等がそれぞれ挙げられる。第1のPCRプライマー内部標準と第2のPCRプライマー内部標準とからなるプライマー対としては、例えば前述のプライマー対等が挙げられる。
内部標準遺伝子測定試薬には、さらに、第1のPCRプライマー内部標準、及び、第2のPCRプライマー内部標準とからなるプライマー対により増幅された遺伝子断片に特異的にハイブリダイズするプローブが含まれていてもよい。プローブとしては、例えば前述のプローブ等が挙げられる。
第1のPCRプライマー内部標準と第2のPCRプライマー内部標準とからなるプライマー対とプローブのセットとしては、例えば配列番号21で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマー内部標準と配列番号22で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマー内部標準とからなるプライマー対と、配列番号23で示される塩基配列からなるプローブとのセット等が挙げられる。
本発明における内部標準遺伝子測定試薬に含まれる第1のPCRプライマー内部標準の濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。本発明における内部標準遺伝子測定試薬に含まれる第2のPCRプライマー内部標準の濃度は、0.1~100 μmol/Lが好ましく、0. 3~30 μmol/Lがより好ましく、1~10 μmol/Lが特に好ましい。
本発明における内部標準遺伝子測定試薬に含まれる前記プローブの濃度は、0.05~50 μmol/Lが好ましく、0.1~10 μmol/Lがより好ましく、0.5~4 μmol/Lが特に好ましい。
【0038】
本発明の検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットは、前述のHBZ遺伝子測定試薬を含んでいれば、その構成に特に制限はなく、例えば、HBZ遺伝子測定試薬を含む1試薬系のキット、HBZ遺伝子測定試薬のうち、第1のPCRプライマーHBZと第2のPCRプライマーHBZとからなるプライマー対を第1試薬に含み、プローブを第2試薬に含む2試薬系のキット等が挙げられる。本発明の検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットが、pX領域内のHBZ遺伝子測定試薬と、前述のtax遺伝子測定試薬が含まれている場合も、その構成に特に制限はなく、例えば、第1試薬にHBZ遺伝子測定試薬とtax遺伝子測定試薬とを含む1試薬系のキット、第1試薬にHBZ遺伝子測定試薬を含み、第2試薬にtax遺伝子測定試薬を含む2試薬系のキット等が挙げられるが、第1試薬にHBZ遺伝子測定試薬を含み、第2試薬にtax遺伝子測定試薬を含む2試薬系のキットが好ましい。また、HBZ遺伝子測定試薬のうちプライマー対を第1試薬、HBZ遺伝子測定試薬うちプローブを第2試薬に含み、tax遺伝子測定試薬を第3試薬に含む3試薬系のセットであっても、tax遺伝子測定試薬のうちプライマー対を第1試薬、tax遺伝子測定試薬うちプローブを第2試薬に含み、HBZ遺伝子測定試薬を第3試薬に含む3試薬系のセットや、HBZ遺伝子測定試薬のうちプライマー対を含む第1試薬、HBZ遺伝子測定試薬うちプローブを含む第2試薬、tax遺伝子測定試薬のうちプライマー対を含む第3試薬、tax測定試薬のうちプローブを含む第4試薬からなる4試薬系であってもよい。
また、本発明の検体中のHTLV-1プロウイルスDNA測定キットが、前述の内部標準遺伝子測定試薬を含んでいる場合も、その構成に特に制限はなく、例えば、HBZ遺伝子測定試薬を第1試薬含み、内部標準遺伝子を第2試薬に含む2試薬系、HBZ遺伝子試薬を第1試薬に含み、tax遺伝子を第2試薬に含み、内部標準遺伝子を第3試薬に含む3試薬系等が挙げられる。
【0039】
3.本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法及び測定キットの用途
本発明のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法及び測定キットは、HTLV-1関連疾患の検査に用いることができる。HTLV-1関連疾患としては、例えばATL、HAM、HU等が挙げられる。HTLV-1関連疾患の検査としては、例えば被検者が現在、HTLV-1関連疾患を発症している可能性のモニタリング、被検者が将来、HTLV-1関連疾患を発症する可能性のモニタリング、被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性のモニタリング等が挙げられる。具体的には、例えば被検者が現在、ATLを発症している可能性のモニタリング、被検者が将来、ATLを発症する可能性のモニタリング、被検者が発症しているATLが治癒する可能性のモニタリング、被検者が現在、HAMを発症している可能性のモニタリング、被検者が将来、HAMを発症する可能性のモニタリング、被検者が発症しているHAMが治癒する可能性のモニタリング等が挙げられる。なお、ここでの「治癒」とは、HTLV-1感染細胞が消失することの他、ATLにおいて症状や検査結果でがんの存在を確認できなくなった状態を示す「寛解」、HAMにおいて、HAMの臨床症状(例えば、歩行障害、排尿障害、両下肢の感覚障害等)、検査所見若しくは画像所見が改善することを意味する。
(1)被検者が現在、HTLV-1関連疾患を発症している可能性のモニタリング
被検者が現在、HTLV-1関連疾患を発症している可能性をモニタリングする方法としては、例えば以下の工程(A1)及び(B1)を含む方法等が挙げられる。
(A1)被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定し、経時的に当該検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する工程。
(B1)工程(A1)で測定したHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1関連疾患を発症していないHTLV-1の感染者(以下、HTLV-1キャリアと記す)より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量よりも高い量で維持されている場合には該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性が高いと判定し、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合には該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性は低いと判定する工程。
<工程(A1)>
工程(A1)において、被検者より経時的に採取された検体としては、前述の検体が挙げられる。
工程(A1)において、被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する方法としては、例えば前述の方法等が挙げられる。
<工程(B1)>
工程(B1)は、工程(A1)で得られた、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量とを対比する工程であり、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量よりも高い量で維持されている場合には、現在、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性が高いと判定し、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合には、現在、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性が低いと判定する。
HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量は、現在、当該被検者がHTLV-1関連疾患を発症している可能性を判定するための基準値であり、複数のHTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定し、得られた測定値の統計解析により設定することができる。
HTLV-1キャリアより採取した検体としては、被検者より採取した検体と同種の検体であることが好ましく、例えば、被検者より採取した検体が血液である場合、HTLV-1キャリアより採取した検体も血液を用いることが好ましい。
被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量とを対比する方法としては、例えば公知の解析方法(Steel法、t検定、Wilcoxon検定等)を用いることができる。当該解析により、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量よりも高い量で維持されている場合は、現在、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性が高いと判定され、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合は、現在、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症している可能性は低いと判定される。
【0040】
(2)被検者が将来、HTLV-1関連疾患を発症する可能性のモニタリング
被検者が将来、HTLV-1関連疾患を発症する可能性をモニタリングする方法としては、例えば以下の工程(A2)及び(B2)を含む方法等が挙げられる。
(A2)被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定し、経時的に当該検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する工程。
(B2)工程(A2)で測定したHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量へ推移している場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が高いと判定し、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が低いと判定する工程。
<工程(A2)>
工程(A2)において、被検者より経時的に採取された検体としては、前述の検体が挙げられる。
工程(A2)において、被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する方法としては、例えば前述の方法等が挙げられる。
<工程(B2)>
工程(B2)は、工程(A2)で得られた、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量とを対比する工程であり、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量へ推移している場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が高いと判定し、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が低いと判定する。
HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量は、将来、当該被検者がHTLV-1関連疾患を発症する可能性を判定するための基準値であり、前述の方法により設定することができる。
HTLV-1キャリアより採取した検体としては、被検者より採取した検体と同種の検体であることが好ましく、例えば、被検者より採取した検体が血液である場合、HTLV-1キャリアより採取した検体も血液を用いることが好ましい。
被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中HTLV-1プロウイルス量とを対比する方法としては、例えば前述の解析方法を用いることができる。当該解析により、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量へ推移している場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が高いと判定され、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量で維持されている場合には、将来、当該被検者はHTLV-1関連疾患を発症する可能性が低いと判定される。
【0041】
(3)被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性のモニタリング
被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性をモニタリングする方法としては、例えば以下の工程(A3)及び(B3)を含む方法等が挙げられる。
(A3)被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定し、経時的に当該検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する工程。
(B3)工程(A3)で測定したHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量から、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量へ推移している場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性が高いと判定し、高い量で維持されている場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性は低いと判定する工程。
<工程(A3)>
工程(A3)において、被検者より経時的に採取された検体としては、前述の検体が挙げられる。
工程(A3)において、被検者より経時的に採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量を測定する方法としては、例えば前述の方法等が挙げられる。
<工程(B3)>
工程(B3)は、工程(A3)で得られた、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量とを対比する工程であり、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量から、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量へ推移している場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性が高いと判定し、高い量で維持されている場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性は低いと判定する。
HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量は、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性を判定するための基準値であり、前述の方法により設定することができる。
HTLV-1キャリアより採取した検体としては、被検者より採取した検体と同種の検体であることが好ましく、例えば、被検者より採取した検体が血液である場合、HTLV-1キャリアより採取した検体も血液を用いることが好ましい。
被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と、HTLV-1キャリアより採取した検体中HTLV-1プロウイルス量とを対比する方法としては、例えば前述の解析方法を用いることができる。当該解析により、被検者より採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量が、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と比較して、高い量から、HTLV-1キャリアより採取した検体中のHTLV-1プロウイルス量と同じか又は低い量へ推移している場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性が高いと判定し、高い量で維持されている場合には、当該被検者が発症しているHTLV-1関連疾患が治癒する可能性は低いと判定される。 以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0042】
[実施例1]
〔HTLV-1含有ゲノムDNAでの増幅の確認〕
HTLV-1陽性細胞(TL-Om1)(ATCC社製)より調製したゲノムDNAを、HTLV-1陰性細胞(SR細胞)(ATCC社製)より調製したゲノムDNAで希釈したサンプルを準備し、精製水を陰性コントロールとして準備した。それぞれのサンプルを鋳型として、第6表に記載した配列番号で示される、HBZ遺伝子を増幅するプライマー対(HBZ1プライマー対~HBZ7プライマー対)と、各プライマー対に対応するよう設計された、第6表に記載した配列番号で示されるプローブより調製された各Dual Labeled Probe(シグマアルドリッチ社製)とのセットを用いてリアルタイムPCRを行った。また、tax遺伝子を増幅する、配列番号24で示される塩基配列からなる第1のPCRプライマー
taxと配列番号26で示される塩基配列からなる第2のPCRプライマー
taxとからなるプライマー対(以下、taxプライマー対という)と、配列番号28で示される塩基配列からなるプローブを用いて設計したDual Labeled Probeとのセットを用いて上記と同様にリアルタイムPCRを行い、HBZプライマー対の反応性とtaxプライマー対の反応性とを比較した。PCR反応は、DNA量1.0μg/test、PCR反応液25μLで、PCR装置Rotor-Gene Q MDx 5plex HRM(キアゲン社製)を用いて、95℃ 30秒の後、95℃ 5秒、60℃ 30秒のPCRサーマルサイクルを50サイクル行った。それぞれのプライマー対を用いるPCRについて、2回ずつPCRを行った。その結果を、
図1に示す。TL-Om1由来のDNAを鋳型として標的配列を増幅した結果、すべてのHBZプライマー対において、Ct値を得て、陽性となったが、一方、陰性コントロールでは、全ての反応で陰性であった。その中でも、HBZ5プライマー対がtaxプライマーとCt値の差が最も小さく、反応性が近かったため、以下の実施例では、HBZ5のプライマー対と対応のDual Labeled Probeプローブとのセットを使用した。
【0043】
【0044】
[実施例2]
〔taxプライマー対を用いたPCRにより測定したHTLV-1プロウイルス量と、HBZプライマー対を用いたPCRにより測定したHTLV-1プロウイルス量との相関〕
HBZプライマー対の妥当性を評価するために、前記HBZプライマー対を用いたPCRにより測定したHTLV-1プロウイルス量が、前記taxプライマー対を用いたPCRにより測定したHTLV-1プロウイルス量と相関しているか否かを検討した。
被検体細胞数定量用として、RNasePのプライマー対及び、そのプライマー対に対応するよう設計された各Dual Labeled Probe(シグマアルドリッチ社製)を使用し、HAM患者ゲノムDNA28検体(50 ng/test)(以下、HAM検体という)を用いて、リアルタイムPCRを行った。PCRは実施例1に記載した条件と同じ条件の下で行った。各HAM検体について、HBZプライマー対及びtaxプライマー対のそれぞれのプライマー対を用いるPCRにより、HTLV-1プロウイルスDNAコピー数を測定し、また、RNasePプライマーを用いるPCRにより被検体細胞数を測定し、各HAM検体中のHTLV-1プロウイルス量を、HBZプライマー対及びtaxプライマー対それぞれのプライマー対に対して算出し、相関性を評価した。その結果を
図2に示す。
図2に示したように、HBZプライマー対を用いたPCRによるHTLV-1プロウイルス量の測定と、taxプライマー対を用いたPCRによるHTLV-1プロウイルス量の測定との相関における相関係数の平方(R
2)は、0.9565であり、両プライマー対を用いるPCRによる測定間で良好な相関が認められた。この結果から、HBZ遺伝子を、HBZプライマー対を用いるPCR法により測定することにより、HTLV-1プロウイルス量を正確に測定できることが判明した。なお、本法におけるHTLV-1プロウイルス量は、以下の式によって算出した。
【0045】
【0046】
[実施例3]
〔変異検体の検出〕
tax遺伝子内に一塩基変異が確認された、HAM患者より採取された検体を対象とし、HBZ5プライマー対又は前記taxプライマー対のそれぞれのプライマー対を用いて、実施例1に記載した条件と同様の条件でリアルタイムPCRを行った。その結果を
図3に示す。
図3に示したように、当該taxプライマー対を用いたPCRにおいては、HTLV-1プロウイルス量が極めて低く、PCRでの増幅反応が進行しなかったのに対して、HBZプライマー対を用いたPCRにおいては、HTLV-1プロウイルス量は高く、PCRでの増幅反応が正常に進行した。この結果から、本発明のHBZプライマー対を用いるPCRにより、tax遺伝子に変異のある検体に対しても正確にHTLV-1プロウイルス量を測定できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の、検体中のHTLV-1プロウイルスDNAの測定方法及び測定キット、並びに、HTLV-1プロウイルスDNAを標的として結合するプローブ及びプライマーは、臨床診断において有用である。
【配列表】