(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ワーム並びにこのワームを組み合わせた擬餌針
(51)【国際特許分類】
A01K 85/00 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A01K85/00 C
A01K85/00 B
(21)【出願番号】P 2018213500
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】598015095
【氏名又は名称】株式会社 デュオ
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】萩原 徹
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-223296(JP,A)
【文献】特開2018-046778(JP,A)
【文献】特開平09-107848(JP,A)
【文献】特開平11-164636(JP,A)
【文献】実開平07-030668(JP,U)
【文献】家邊 克己,ワームの刺し方。,日本,[online],2012年02月10日,[2022年6月3日検索],インターネット<URL:https://www.fimosw.com/u/thirtyfour/u4p6g6yf3ovbyw>
【文献】komegen,『DUO(デュオ) テトラワークス スナイプヘッド』入荷!,日本,[online],2018年09月23日,[2022年6月3日検索],インターネット<URL:https://ameblo.jp/komegen35/entry-12406950668.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00 - 85/18
A01K 91/00 - 95/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟な弾性部材で短寸細径状のワーム本体に対し、その外面部に屈曲誘導部を
形成するものであり、
前記屈曲誘導部は、ワームの頭部寄りの部位が、ジグヘッドのヘッドが嵌り込むように凹陥形成されて成ることを特徴とするワーム
【請求項2】
前記屈曲誘導部にヘッドが位置するようにジグヘッドの針先を屈曲誘導部に刺し込み、ワームの胴部から針先が突き出るように組み合わされていることを特徴とする請求項
1記載のワームを組み合わせた擬餌針。
【請求項3】
前記ワーム先端にヘッドが位置するようにジグヘッドの針先を頭部に刺し込み、ワームの胴部から針先が突き出るように組み合わされていることを特徴とする請求項
1記載のワームを組み合わせた擬餌針。
【請求項4】
前記ジグヘッドは、フックに対して錘としてのヘッドを組み付けて構成されるものであり、
前記フックにおけるラインアイと胴曲げとの間に形成されたオフセット
曲げの部分がヘッドに埋没するように形成され、
前記オフセット
曲げによりラインアイが針先側に接近し、前記フックにおけるシャンクを水平にした状態で、前記ラインアイが重心の上方に位置していることを特徴とする請求項
2または
3記載の擬餌針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用擬餌餌の一種であるワーム並びにこのワームを組み合わせた擬餌針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的小型のアジ等の魚を対象とした擬餌餌としてワームがある。このものは柔らかい本体をPVC等で昆虫、小魚等の形状に成型したものであり、これにジグヘッドを差し込んで擬餌針が構成される(例えば特許文献1参照)。
そしてこのような擬餌針を用いて釣果を上げるには、ワームを水中で小刻みに動かすことが良い場合がある。
そのための手法の一例として、
図7に示すように、ワーム1′に組み合わされるジグヘッド10′のヘッド10H′の一部を切除する等して傾斜面を形成して水受構造20′とし、水流を受け流すことにより動きを出している。
しかしながら一方で、ワームの動きが求められない状況や対象魚もあるため、この場合には、前記水受け構造を有するジグヘッドでは対応できないため、水受け構造を有しないジグヘッドへの交換が必要となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこのような背景に基づいてなされたものであって、ワーム側に水受け構造を出現させることにより擬餌針に動きを出すと共に、動きを求めない場合には、ワームの取り付け態様を変更することにより、ワーム側に水受け構造が出現しないようにすることのできる、ワーム並びにこのワームを組み合わせた擬餌針を提案することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載のワームは、柔軟な弾性部材で短寸細径状のワーム本体に対し、その外面部に屈曲誘導部を形成するものであり、前記屈曲誘導部は、ワームの頭部寄りの部位が、ジグヘッドのヘッドが嵌り込むように凹陥形成されて成ることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載の擬餌針は、前記屈曲誘導部にヘッドが位置するようにジグヘッドの針先を屈曲誘導部に刺し込み、ワームの胴部から針先が突き出るように、請求項1記載のワームが組み合わされていることを特徴として成るものである。
【0007】
更にまた請求項3記載の擬餌針は、前記ワーム先端にヘッドが位置するようにジグヘッドの針先を頭部に刺し込み、ワームの胴部から針先が突き出るように、請求項1記載のワームが組み合わされていることを特徴として成るものである。
【0008】
更にまた請求項4記載の擬餌針は、前記請求項2または3記載の要件に加え、前記ジグヘッドは、フックに対して錘としてのヘッドを組み付けて構成されるものであり、前記フックにおけるラインアイと胴曲げとの間に形成されたオフセット曲げの部分がヘッドに埋没するように形成され、前記オフセット曲げが鋭角に設定されることにより、ラインアイが針先側に接近した個所に位置し、且つ前記フックの一部は、胴打ち加工が施されて平坦面が形成されていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0009】
まず請求項1記載の発明によれば、屈曲誘導部を機能させることにより、ワームが屈曲した状態を維持して水受け構造を出現させることができる。
また、前屈曲誘導部に対し、ジグヘッドにおけるヘッドを位置させることにより、ワームが屈曲した状態を維持して水受け構造を出現させることができる。
【0010】
また請求項2記載の発明によれば、ワームに対して水受け構造を出現させた擬餌針が構成され、ワームを水中で小刻みに動かすアクションを実現することができる。
【0011】
また請求項3記載の発明によれば、ワームに対して水受け構造が出現していない擬餌針が構成され、水中でのワームの動きの少ないアクションを実現することができる。
【0012】
また請求項4記載の発明によれば、ラインアイが針先側に接近した個所に位置しているためワームの水中姿勢を、重心の上方にラインアイが位置した状態とし、実際の小魚等と同様、頭部から尾びれ部にかけて水平状態に近いものとすることができ、釣果の向上を期待することができる。
また胴打ち加工された部位が煌くため、集魚効果を高めることができる。また胴打ち加工された部位が、抜け止め効果を奏するため、ワームの脱落を防止することができるとともに、姿勢の安定化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のワームとジグヘッドとを組み合わせた擬餌針を示す斜視図である。
【
図2】ワームを示す平面図(a)、側面図(b)及び底面図(c)である。
【
図3】ワームに対してジグヘッドを組み合わせる様子を段階的に示す側面図である。
【
図4】ワームを組み合わせた擬餌針の水受構造を出現させた形態と動きを示す側面図(a)及び平面図(b)並びに水受構造を出現させない形態と動きを示す側面図(c)である。
【
図5】ワームとジグヘッドとの組み付け態様を異ならせた実施例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明のワーム並びにこのワームを組み合わせた擬餌針の最良の形態について、図示の実施例に基づいて説明するが、この実施例に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例】
【0015】
図中符号Lで示すものが本発明の擬餌針であって、このものは本発明のワーム1に対して、ジグヘッド10を組み付けて構成される。
前記ワーム1は、可塑剤が添加されたポリ塩化ビニル(PVC)等の柔軟な弾性部材を素材とし、小魚、甲殻類、昆虫等を模した短寸細径状を成すものである。
図2に示すワーム1は、一例として小魚を模したものであり、頭部2、胴部3及び尾びれ部4が連設され、前記胴部3の尾びれ部4寄りの部位には、胴部3の一部を切除したスリット6が形成される。なお本明細書においては、頭部2側を前方、尾びれ部4側を後方とする。
そしてワーム1外面部に屈曲誘導部5が形成されるものであり、この実施例では頭部2寄りの部位に屈曲誘導部5を側面視で凹陥状になるように形成した。
【0016】
また前記ジグヘッド10は
図6に示すように、フック10Kに対して錘としてのヘッド10Hを組み付けて構成されるものである。
前記フック10Kは、ラインアイ11と針先12との間に、オフセット
曲げ13、胴曲げ14及び先曲げ15の三個所に曲げ加工が施された釣針であり、オフセット
曲げ13から胴曲げ14までの部位をシャンク(胴、軸)16と称し、シャンク16と針先12との間隔をゲイブ(フトコロ)17と称するものである。
また前記針先12と先曲げ15との間の針先12寄りの個所には、バーブ(カエシ)18が設けられる。
そして前記ヘッド10Hを一例として鉛の鋳造により成型する際に、オフセット
曲げ13の部分がヘッド10Hに埋没するように形成される。
【0017】
そしてこの実施例では、前記オフセット曲げ13により、ラインアイ11が、オフセット曲げ13の屈曲部よりも針先12側に接近した個所に位置するようになっている。更にシャンク16が水平になった状態で、ラインアイ11が重心Gの上方に位置するとともに、針先12からバーブ18にかけての部位が、ラインアイ11よりも上方に位置している。
【0018】
また前記フック10Kの一部には、胴打ち(平打ち)加工が施されて平坦面19が形成されるものであり、この実施例では、胴曲げ14周辺に平坦面19が形成されるようにした。この様な平坦面19が形成されることにより、針先12側を広げようとする力に対する強度が増すこととなる。
【0019】
ここで前記ワーム1に対するジグヘッド10の組付態様について説明するものであり、
図3( a)、(b)に示すように、シャンク16とワーム1とが略平行となった状態で、針先12を屈曲誘導部5の後側壁面に突き刺す。
次いでここからシャンク16を前方に押し倒すようにして針先12を押し進め、やがて
図3(c)に示すように針先12が胴部3から突き出るようにする。
更にシャンク16が胴部3に埋もれるように押し進め、やがて
図3(d)に示すようにヘッド10Hが屈曲誘導部5に嵌り込むとともに、胴曲げ14付近が胴部3から外部に突き出た状態とする。この状態でワーム1の頭部2は屈曲して下垂した状態となるものであり、この部分が水受構造20となるものである。
【0020】
そして上述のように構成される本発明の擬餌針Lは、
図1、
図4(a)、(b)に示すように、リトリーブやロッドアクションによりラインTを通じて引かれる際に、水受構造20が水流を受けた際に頭部2が振られ、胴部3から尾びれ部4にかけてを主に
図4(b)に示すように激しく振動させることができ、ワーム1を水中で小刻みに動かすアクションを実現することができる。具体的にはアングラーは、リールを巻くだけで、ウォブリング(揺動)等のルアーアクションを実施することができるものである。
なお
図4では、ラインTが引かれる方向がアングラーが操作するリール(図示省略)と擬餌針Lとを結ぶ直線よりも上方向となっている様子を描写しているが、これはリールから水面まで伸びたラインTは、水中をそのまま直線状に擬餌針Lまで伸びるのではなく、屈折するように伸びるといった実際の様子を表したものである。
【0021】
またラインアイ11が針先12側に接近した個所に位置しているためワーム1の水中姿勢を、重心Gの上方にラインアイ11が位置した状態とし、実際の小魚等と同様、頭部2から尾びれ部4にかけて水平状態に近いものとすることができ、釣果の向上を期待することができる。
また胴打ち加工された平坦面19が煌くため、集魚効果を高めることができる。また平坦面19が抜け止め効果を奏するため、ワーム1の脱落を防止することができるとともに、姿勢の安定化が図られる。
また特にワーム1を透明素材や半透明素材で形成した場合、ワーム1に埋没状態となった平坦面19が煌くため、対象魚Fに対して今までになかった視覚的アピールをすることができる。
【0022】
また請求項4で定義し
図4(c)に示すように、ワーム1の先端にヘッド10Hが位置するようにジグヘッド10の針先12を頭部2に刺し込み、ワーム1の胴部3から針先12が突き出るように組み合わされた場合には、屈曲誘導部5が機能しないため擬餌針Lに水受構造20は出現しない。このためリトリーブやロッドアクションにより、胴部3から尾びれ部4にかけて振動させることができるもののその度合いは小さなものとなる。
【0023】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想の範囲で以下に示すような改変形態を採ることもできる。
まず、上述した
図4(c)で示した実施例では、ワーム1の先端にヘッド10Hが位置するようにジグヘッド10の針先12を刺し込み、針先12が胴部3の側周部から突き出るようにしたが、
図5(a)に示すように、ワーム1の先端にヘッド10Hが位置するようにジグヘッド10の針先12を刺し込み、針先12が屈曲誘導部5から突き出るようにすることもできる。
この場合、胴曲げ14周辺が屈曲誘導部5の後側壁面に当接して、ワーム1の頭部2は僅かに屈曲して下垂した状態が維持されることとなり、この部分が水受構造20となるものである。
このような水受構造20は、
図4(a)に示した形態の水受構造20よりも、受ける水流の角度が緩やかとなるため、頭部2の振れは小さなものとなり、胴部3から尾びれ部4にかけて生じる振動は小さなものとなるが、
図4(c)で示した擬餌針Lで生じる振動よりは大きなものとなる。
【0024】
また
図5(b)に示すように、
図4(c)に示した擬餌針Lの状態からワーム1を90°または270°回転させた状態で、針先12が胴部3の側周部から突き出るようにすることもできる。
この場合、尾びれ部4が水平面に直交した状態となって、
図4(c)に示した擬餌針Lとは異なるアクションを行わせることができる。
【0025】
このように本発明のワーム1は、一つの個体を用いて少なくとも四種類の異なった形態の擬餌針Lを構成することができるものであり、また特に請求項5で定義すると共に
図6に示したジグヘッド10と組み合わせることにより、平坦面19が煌くことによりアピール度が増し、更にフッキング効果が向上して良好な釣果を期待することができるものである。
【符号の説明】
【0026】
1 ワーム
2 頭部
3 胴部
4 尾びれ部
5 屈曲誘導部
6 スリット
10 ジグヘッド
10K フック
10H ヘッド
11 ラインアイ
12 針先
13 オフセット曲げ
14 胴曲げ
15 先曲げ
16 シャンク
17 ゲイブ
18 バーブ
19 平坦面
20 水受構造
F 対象魚
G 重心
L 擬餌針
T ライン