(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ジャーク測定システム
(51)【国際特許分類】
G01P 15/09 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G01P15/09 V
(21)【出願番号】P 2019038881
(22)【出願日】2019-03-04
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】工藤 高裕
(72)【発明者】
【氏名】辺見 信彦
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-29212(JP,A)
【文献】特許第4066786(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2006/0021435(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャーク測定システムであって、
加速度に応じた電荷を出力する第1センサと、
前記加速度に応じた電荷を出力する第2センサであって、前記第1センサが出力する電荷の極性とは逆極性の電荷を出力する、第2センサと、
前記第1センサが出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号と、前記第2センサが出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号とから形成される差動信号を生成する差動信号生成部と、
前記差動信号の差動成分に基づいてジャークを示す信号を生成するジャーク信号生成部と
を備え、
前記第1センサ及び前記第2センサは、圧電式の電荷出力型加速度センサ又はそれに準ずる圧電センサであり、
前記第1センサは、
特定方向の加速度に応じて負電荷を出力する第1電極と、
圧電素子と、
前記圧電素子において前記第1電極が設けられた面の反対側に設けられ、前記特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極と
を備え、
前記第2センサは、
前記特定方向の加速度に応じた負電荷を出力する第1電極と、
圧電素子と、
前記第2センサの前記圧電素子において前記第2センサの前記第1電極が設けられた面の反対側に設けられ、前記特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極と
を備え、
前記ジャーク測定システムは、
前記第1センサの前記第1電極及び前記第2センサの前記第2電極に荷重を加える単一の錘
をさらに備える
ジャーク測定システム。
【請求項2】
前記第1センサ、前記第2センサ、前記単一の錘、及び前記差動信号生成部は、センサ筐体内に設けられ、
前記ジャーク信号生成部は、前記センサ筐体外に設けられ、
前記ジャーク測定システムは、
前記差動信号生成部が生成した前記差動信号を前記ジャーク信号生成部まで伝送する一対の差動信号線を備える差動信号ケーブル
をさらに備える請求項
1に記載のジャーク測定システム。
【請求項3】
前記ジャーク信号生成部は、前記差動信号ケーブルで伝送された前記差動信号が入力され、前記ジャークを示す信号を出力する差動増幅器を備える
請求項
2に記載のジャーク測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャーク測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電素子に発生する電荷を電流として検出することにより、ジャークを測定する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
特許文献1 特開2006-23287号公報
特許文献2 特開2013-160749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ジャークを高いS/N比で測定することができるジャーク測定システムが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様において、ジャーク測定システムが提供される。ジャーク測定システムは、加速度に応じた電荷を出力する第1センサを備える。ジャーク測定システムは、加速度に応じた電荷を出力する第2センサを備える。第2センサは、第1センサが出力する電荷の極性とは逆極性の電荷を出力する。ジャーク測定システムは、第1センサが出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号と、第2センサが出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号とから形成される差動信号を生成する差動信号生成部を備える。ジャーク測定システムは、差動信号の差動成分に基づいてジャークを示す信号を生成するジャーク信号生成部を備える。
【0005】
第1センサ及び第2センサは、圧電式の電荷出力型加速度センサ又はそれに準ずる圧電センサであってよい。
【0006】
第1センサは、特定方向の加速度に応じて負電荷を出力する第1電極を備えてよい。第1センサは、圧電素子を備えてよい。第1センサは、圧電素子において第1電極が設けられた面の反対側に設けられ、特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極を備えてよい。第2センサは、特定方向の加速度に応じた負電荷を出力する第1電極を備えてよい。第2センサは、圧電素子を備えてよい。第2センサは、第2センサの圧電素子において第2センサの第1電極が設けられた面の反対側に設けられ、特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極を備えてよい。ジャーク測定システムは、第1センサの第1電極及び第2センサの第2電極に荷重を加える単一の錘をさらに備えてよい。
【0007】
第1センサ、第2センサ、単一の錘、及び差動信号生成部は、センサ筐体内に設けられてよい。ジャーク信号生成部は、センサ筐体外に設けられてよい。ジャーク測定システムは、差動信号生成部が生成した差動信号をジャーク信号生成部まで伝送する一対の差動信号線を備える差動信号ケーブルをさらに備えてよい。
【0008】
ジャーク信号生成部は、差動信号ケーブルで伝送された差動信号が入力される差動増幅器を備えてよい。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態におけるジャーク測定システム10の機能構成を概略的に示す。
【
図2】ジャークセンサ100、差動信号ケーブル150、及び電圧増幅部160の構成を示す。
【
図3】被測定物90に鉛直上向きの加速度Aが生じた場合の出力を模式的に示す。
【
図4】被測定物90に鉛直下向きの加速度Aが生じた場合の出力を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、一実施形態におけるジャーク測定システム10の機能構成を概略的に示す。ジャーク測定システム10は、ジャークセンサ100と、差動信号ケーブル150と、電圧増幅部160とを備える。ジャーク測定システム10は、運動する物体のジャークを高いS/N比で測定するためのシステムである。
【0013】
ジャークセンサ100は、被測定物90のジャークを測定する。ジャークは、単位時間あたりの加速度の変化率である。ジャークは、躍度、加加速度等とも呼ばれる。ジャークセンサ100は、被測定物90に対して固定される。ジャークセンサ100は、振動検出部110と、電流電圧変換部130と、センサ筐体102とを備える。振動検出部110及び電流電圧変換部130は、センサ筐体102内に設けられる。電圧増幅部160は、センサ筐体102外に設けられる。センサ筐体102は、被測定物90に固定される。
【0014】
振動検出部110は、1方向の加速度に対して、加速度に比例し互いに極性が反転した2つの電荷を出力する機能を有する。具体的には、振動検出部110は、特定方向の加速度が加わった場合に、加速度に比例する正電荷及び負電荷を出力する。振動検出部110は、出力する正電荷及び負電荷の流れである電流I及び-Iを出力する。振動検出部110が出力した電流I及び-Iは、電流電圧変換部130に入力される。
【0015】
電流電圧変換部130は、振動検出部110から出力された電荷をジャークに比例した電圧へ変換して出力する機能を有する。電流電圧変換部130は、電流I及び-Iを電圧信号に変換して、差動信号を生成する。差動信号ケーブル150は、電流電圧変換部130が生成した差動信号を一対の差動信号線を通じて、電圧増幅部160まで伝送する。
【0016】
電圧増幅部160は、電流電圧変換部130から出力された電圧信号に混入する電気ノイズを除去する機能を有する。具体的には、電圧増幅部160は、差動信号ケーブル150により伝送される差動信号を差動増幅することにより、被測定物90のジャークに比例するジャーク信号を生成する。
【0017】
ジャーク測定システム10によれば、差動信号ケーブル150のケーブル長が長く、電気ノイズの侵入が避けられない状況下においてもS/N比が高いジャークを測定することができる測定システムを提供することができる。
【0018】
一般に、センサの出力インピーダンスは大きいので、センサ出力は外部からの電気ノイズの影響を受け易く、ケーブルでノイズを拾いやすい。そのため、通常は、センサ筐体内部にプリアンプを内蔵して出力インピーダンスを小さくしてから、センサから後段回路に信号を伝送するケーブルを接続する。
【0019】
ジャークセンサにおいても同様の課題がある。例えばジャークにより生じた信号を検出するためのアンプは、プリアンプとしてセンサ筐体内に内蔵することが好ましい。しかしながら、ジャークセンサの出力を受け取る後段回路からみた前段回路の出力インピーダンスは、プリアンプの出力インピーダンスにケーブルのインピーダンスを加算したものになる。そのため、ケーブル長が長くなると結果的に出力インピーダンスが大きくなる。このため、特にケーブル長を長くせざるを得ない場合には、プリアンプによるインピーダンス変換のみではノイズの影響を避けることができなくなるという問題がある。
【0020】
このようなノイズの問題はジャークセンサにおいて特に顕著となる場合がある。例えば、ジャークセンサを用いて振動を実際に測定する場合、振動がなく安定して後段回路を設置できる場所が、振動測定を行うセンサの設置個所からから離れた場所にしか確保できない場合がある。さらに、ケーブルに入り込むノイズの周波数がジャークの測定帯域に含まれる場合、ジャークを高精度に測定できないという問題がある。
【0021】
また、ジャークセンサにおいては、検出方式により生じるノイズの問題もある。例えばジャークは加速度の微分により算出できる。しかし、例えば加速度センサの出力信号を微分すると、出力信号に含まれるノイズ成分も微分される。そのため、特に高周波ノイズが大きくなってしまい、ジャークを高精度に測定できないという問題がある。
【0022】
一般に、人間は、加速度を感じ取る感度より、ジャークを感じ取る感度の方が高いといわれている。そのため、例えば自動車、列車、エレベータ、ローラーコースター等の乗物の設計を行うときには、利用者の乗り心地や利用者の体への影響を抑制することを目的として、ジャーク量を制限するように設計される。また、人間が日常行っている運動はジャーク最小モデルで表現できるとされている。そのため、ジャーク最小モデルは、ロボットアームの制御や人間の腕等の動き予測に利用されている。したがって、ジャークを高精度に測定することが強く望まれていた。
【0023】
上述したように、ジャーク測定システム10によれば、振動検出部110が、加速度に比例し互いに極性が反転した2つの電荷を出力する。そして、電流電圧変換部130が、振動検出部110から出力された電荷の流れにより生じる電流をジャークに比例した電圧へ変換して出力する。そして、電圧増幅部160が、出力された電圧信号に混入する電気ノイズを除去する。これにより、ジャークの信号成分を大きくすることができ、差動信号ケーブル150による信号伝送中に入り込むノイズを抑制し、かつ、加速度センサの出力信号を微分する必要がない。そのため、ジャークを高精度に測定することができる。
【0024】
図2は、ジャークセンサ100、電流電圧変換部130、差動信号ケーブル150、及び電圧増幅部160の構成を示す。ジャークセンサ100において、振動検出部110は、単一の錘202と、第1加速度センサ210と、第2加速度センサ220とを備える。差動信号ケーブル150は、グランド線と、一対の信号線251及び信号線252とを備える。
【0025】
静止状態において、第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、鉛直方向において錘202とセンサ筐体102の内壁との間に固定される。第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、錘202の鉛直下方の位置に並列に配置されて錘202を支える構成となっている。錘202は、剛性を有する単一の物体である。
【0026】
第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、加速度に応じた電荷を出力する。例えば、第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、圧電式の電荷出力型加速度センサである。後述するように、第2加速度センサ220は、第1加速度センサ210が出力する電荷の極性とは逆極性の電荷を出力する。第1加速度センサ210は、第1センサの一例である。第2加速度センサ220は、第2センサの一例である。
【0027】
第1加速度センサ210は、圧電素子213と、第1電極211と、第2電極212とを備える。静止状態において、第1電極211は圧電素子213の鉛直方向上端の面に設けられ、第2電極212は圧電素子213の鉛直方向下端の面に設けられる。
【0028】
第2加速度センサ220は、圧電素子223と、第1電極221と、第2電極222とを備える。静止状態において、第1電極221は圧電素子223の鉛直方向下端の面に設けられ、第2電極222は、圧電素子223の鉛直方向上端の面に設けられる。
【0029】
圧電素子213及び圧電素子223は、圧電特性とサイズが同一である。圧電素子213は、第2電極212から第1電極211に向かう方向に分極している。圧電素子223は、第2電極222から第1電極221に向かう方向に分極している。したがって、圧電素子223は、圧電素子213を上下反転したものに相当する。静止状態において、圧電素子213及び圧電素子223の分極方向は鉛直方向に沿っており、互いに逆方向となる。
【0030】
第2電極212と第1電極221とは電線204によって電気的に接続されている。電線204の電位を基準として、圧電素子213及び圧電素子223の電荷出力が取り出される。
【0031】
このように、第1加速度センサ210は、特定方向の加速度に応じて負電荷を出力する第1電極211と、圧電素子213と、圧電素子213において第1電極211が設けられた面の反対側に設けられ、特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極212とを備える。第2加速度センサ220は、特定方向の加速度に応じた負電荷を出力する第1電極221と、圧電素子223と、圧電素子223において第1電極221が設けられた面の反対側に設けられ、特定方向の加速度に応じて正電荷を出力する第2電極222とを備える。単一の錘202は、第1加速度センサ210の第1電極221及び第2加速度センサ220の第2電極222に荷重を加えるように設けられる。
【0032】
電流電圧変換部130は、第1加速度センサ210が出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号と、第2加速度センサ220が出力した電荷の流れにより生じる電流の量を示す信号とから形成される差動信号を生成する。電流電圧変換部130は、差動信号生成部の一例である。
【0033】
具体的には、電流電圧変換部130は、オペアンプ232及び抵抗器231を含む電流電圧変換回路230と、オペアンプ242及び抵抗器241を含む電流電圧変換回路240とを備える。抵抗器231及び抵抗器241の抵抗値はRである。
【0034】
オペアンプ232の反転入力端子には、第1電極211が電気的に接続される。オペアンプ242の反転入力端子には、第2電極222が電気的に接続される。オペアンプ232及びオペアンプ242の非反転入力端子には電線204が電気的に接続される。
【0035】
電流電圧変換回路230は、圧電素子213の電荷出力を電流出力に変換する。電流電圧変換回路240は、圧電素子223の電荷出力を電流出力に変換する。
【0036】
差動信号ケーブル150は、電流電圧変換部130が生成した差動信号を電圧増幅部160まで伝送する一対の差動信号線を備える。具体的には、差動信号ケーブル150は、信号線251及び信号線252と、グランド線253とを備える。信号線251及び信号線252は、一対の差動信号線を形成する。
【0037】
オペアンプ232の出力端子は、信号線251に電気的に接続される。オペアンプ242の出力端子は、信号線252に電気的に接続される。電線204はグランド線253に電気的に接続される。
【0038】
電圧増幅部160は、差動信号の差動成分に基づいてジャークを示す信号を生成する。電圧増幅部160は、ジャーク信号生成部の一例である。電圧増幅部160は、電圧増幅部160の差動信号線で伝送された差動信号が入力される差動増幅器を備える。
【0039】
具体的には、電圧増幅部160は、オペアンプ166と、抵抗器161と、抵抗器162と、抵抗器163と、抵抗器164とを備える。抵抗器161及び抵抗器162の抵抗値はR1である。抵抗器163及び抵抗器164の抵抗値はR2である。
【0040】
信号線251は、抵抗器161の一端に電気的に接続される。抵抗器161の他端は、オペアンプ166の反転入力端子と、抵抗器163の一端とに電気的に接続される。抵抗器163の他端は、オペアンプ166の出力端子に電気的に接続される。
【0041】
信号線252は、抵抗器162の一端に接続される。抵抗器162の他端は、オペアンプ166の非反転入力端子と、抵抗器164の一端とに電気的に接続される。抵抗器164の他端は、グランド線253に電気的に接続される。グランド線とオペアンプ166の出力端子との間の電圧信号Voがジャーク信号となる。
【0042】
図3は、被測定物90に鉛直上向きの加速度Aが生じた場合の出力を模式的に示す。符号300で示されるように被測定物90に鉛直上向きの加速度が生じると、圧電素子213及び圧電素子223は、符号310で示されるように、錘202から鉛直下向きの慣性力を受けて圧縮変形する。この圧縮変形は、圧電素子213及び圧電素子223の分極を弱めるように働く。これにより、圧電素子213の鉛直上方の第1電極211には負電荷が出力され、鉛直下方の第2電極212には正電荷が出力される。
【0043】
一方、圧電素子223が生成する電荷の極性は、配置上、圧電素子213が生成する電荷の極性とは逆になり、鉛直上方の第2電極222に正電荷、鉛直下方の第1電極221に負電荷が出力される。このように、圧電素子213及び圧電素子223から互いに極性が反転した電荷出力が得られる。
【0044】
上述したように圧電素子213及び圧電素子223はサイズ及び圧電特性が同一であり、圧電素子213及び圧電素子223が共通の錘202を支えているので、圧電素子213及び圧電素子223にかかる慣性力は等しい。そのため、第1加速度センサ210の第1電極211及び第2電極212から出力される電荷の量は、第2加速度センサ220の第1電極221及び第2電極222から出力される電荷の量と同じとなる。これらの電荷量は、慣性力の大きさに比例する。慣性力は、被測定物90の加速度に比例する。そのため、第1電極211及び第2電極212から出力される電荷の量と、第1電極221及び第2電極222から出力される電荷の量は、加速度の大きさに比例することとなる。
【0045】
そのため、第1電極211及び第2電極212と第1電極221及び第2電極222に出力される電荷の極性を考慮すれば、電線204の電位を基準としたとき、圧電素子213が出力する電荷により生じる電圧と、圧電素子223が出力する電荷により生じる電圧とは、大きさが等しく、位相が反転したものとなる。
【0046】
圧電素子213が出力した電荷の流れによる電流は、電流電圧変換回路230の抵抗器231を流れる。圧電素子223が出力した電荷の流れによる電流は、電流電圧変換回路240の抵抗器241を流れる。
【0047】
上述したように圧電素子213と圧電素子223が出力した電荷により生じる電圧は、大きさが等しく位相が反転している。それぞれの圧電素子が出力した電荷の流れによる電流についても、同様の関係が成立する。したがって、圧電素子213の出力電荷が第1電極211に向かって抵抗器231を流れることにより生じる電流をIとすると、圧電素子223の出力電荷がオペアンプ242の出力端子に向かって抵抗器241を流れることにより生じる電流がIとなる。よって、電線204の電位を基準としたとき、オペアンプ232の出力端子の電圧はRI、オペアンプ242の出力端子の電圧は-RIとなる。
【0048】
ここで、上述したように圧電素子213及び圧電素子223が出力する電荷は加速度に比例しており、回路を短絡した場合に流れる電流は電荷の時間微分であるので、抵抗器231を流れる電流及び抵抗器241を流れる電流の大きさは、ジャークに比例することになる。したがって、オペアンプ232及びオペアンプ242の出力端子の電圧は、ジャークに比例した電圧となる。
【0049】
差動信号ケーブル150の信号線251及び信号線252は、それぞれRI及び-RIの信号を伝送する。電気ノイズの混入は、差動信号ケーブル150で信号伝送中に生じ得る。差動信号ケーブル150が長くなるほど、電気ノイズの混入量が大きくなる。
【0050】
差動信号ケーブル150の信号線251及び信号線252は、一本のケーブル差動信号ケーブル150に収められ、差動信号ケーブル150内で近接して設けられる。この場合、差動信号ケーブル150で伝送される信号線251及び信号線252に加わるノイズにより生じるノイズ電圧は、互いに振幅と位相が等しい同相ノイズとみなすことができる。
【0051】
電圧増幅部160は、信号線251及び信号線252から伝送される一対の差動信号の差動を入力とする差動増幅回路として機能する。これにより、電圧増幅部160は、差動信号ケーブル150の信号線251及び信号線252で伝送される信号に入り込む電気ノイズを実質的に相殺することができる。よって、電圧増幅部160のオペアンプ166に入力される差動電圧は-2RIとなる。これにより、電圧増幅部160の差動増幅回路により、実質的にノイズを含まない出力電圧R2/R1×(-2RI)が得られる。この出力電圧は、ジャークに比例した値となる。
【0052】
図4は、被測定物90に鉛直下向きの加速度Aが生じた場合の出力を模式的に示す。符号400で示されるように被測定物90に鉛直上向きの加速度が生じると、圧電素子213及び圧電素子223は、符号410で示されるように錘202から鉛直上向きの慣性力を受けて、引っ張り変形する。この引っ張り変形は、圧電素子213及び圧電素子223の分極を強めるように働く。これにより、圧電素子213の鉛直上方の第1電極211には正電荷が出力され、鉛直下方の第2電極212には負電荷が出力される。
【0053】
一方、圧電素子223が生成する電荷の極性は、配置上、圧電素子213が生成する電荷の極性とは逆になり、鉛直上方の第2電極222に負電荷、鉛直下方の第1電極221に正電荷が出力される。このように、圧電素子213及び圧電素子223から互いに極性が反転した電荷出力が得られる。
【0054】
ここで、鉛直下向きの加速度Aは、
図3に示す鉛直上向きの加速度Aと大きさが等しく、向きが逆である。したがって、第1電極211及び第2電極212が出力する電荷は、
図3に示すように鉛直上向きの加速度Aが生じた場合に第1電極211及び第2電極212が出力する電荷とは、電荷量が同じであり、極性が反対である。同様に、第1電極221及び第2電極222が出力する電荷は、
図3に示すように鉛直上向きの加速度Aが生じた場合に第1電極221及び第2電極222が出力する電荷とは、電荷量が同じであり、極性が反対とある。
【0055】
したがって、圧電素子213の出力電荷の流れにより生じる電流は、及び圧電素子223の出力電荷の流れにより生じる電流は、
図3に示すように鉛直上向きの加速度Aが生じた場合の電流と大きさが同じで向きが反転したものとなる。よって、電線204の電位を基準としたとき、オペアンプ232の出力端子の電圧は-RI、オペアンプ242の出力端子の電圧は+RIとなる。
【0056】
また、
図3に関連して説明したように、電圧増幅部160は、差動信号ケーブル150の信号線251及び信号線252で伝送される信号に入り込む電気ノイズを実質的に相殺するので、電圧増幅部160のオペアンプ166に入力される差動電圧は2RIとなる。これにより、電圧増幅部160の差動増幅回路により、実質的にノイズを含まない出力電圧R2/R1×(2RI)が得られる。この出力電圧は、ジャークに比例した値となる。
【0057】
以上、
図3及び
図4等に関連して説明したように、被測定物90の加速度が鉛直上向き及び下向きのどちらの場合であっても、ジャークに実質的に比例し、実質的にノイズを含まない出力電圧が得られる。
【0058】
以上に説明したように、ジャーク測定システム10によれば、ジャークに相当し互いに逆向きの2つの電流信号をフィルタ回路を用いずに生成して、それらの電流信号の電圧の差動成分からジャーク信号を生成するので、ケーブルに侵入し信号成分に重なった同相ノイズを相殺し、かつ信号成分の振幅を大きくすることができる。そのため、ケーブル長が長く、電気ノイズの侵入が避けられない状況下においても、ジャークを高いS/N比で測定することができるジャーク測定システムを提供することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、第1加速度センサ210の圧電素子213の分極方向が第2加速度センサ220の圧電素子223の分極方向と実質的に反対向きになるように配置される。しかし、第1加速度センサ210の圧電素子213の分極方向が第2加速度センサ220の圧電素子223の分極方向と実質的に同じ向きになるように配置した形態も採用できる。第1加速度センサ210の第2電極212と第2加速度センサ220の第1電極221とを基準電位となる電線204で電気的に接続し、第1加速度センサ210の第1電極211及び第2加速度センサ220の第2電極222をそれぞれ電流電圧変換回路230及び電流電圧変換回路240に入力するように接続されている限り、上述した実施形態と同じ効果が得られる。すなわち、第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220が互いに逆極性の電荷を出力するように物理的又は電気的に配置されていればよい。また、上述した実施形態では、第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、圧電式の電荷出力型加速度センサである。しかし、第1加速度センサ210及び第2加速度センサ220は、圧電式の電荷出力型加速度センサに準ずる圧電センサ等、加速度に応じた電荷を出力する任意の形態のセンサを適用できる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 ジャーク測定システム
90 被測定物
100 ジャークセンサ
102 センサ筐体
110 振動検出部
130 電流電圧変換部
150 差動信号ケーブル
160 電圧増幅部
161 抵抗器
162 抵抗器
163 抵抗器
164 抵抗器
166 オペアンプ
202 錘
204 電線
210 第1加速度センサ
211 第1電極
212 第2電極
213 圧電素子
220 第2加速度センサ
221 第1電極
222 第2電極
223 圧電素子
230 電流電圧変換回路
231 抵抗器
232 オペアンプ
240 電流電圧変換回路
241 抵抗器
242 オペアンプ
251 信号線
252 信号線
253 グランド線