IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 公立大学法人大阪の特許一覧 ▶ 株式会社いけうちの特許一覧 ▶ 日本山村硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図1
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図2
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図3
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図4
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図5
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図6
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図7
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図8
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図9
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図10
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図11
  • 特許-噴霧ノズル及び噴霧方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】噴霧ノズル及び噴霧方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 7/10 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B05B7/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019567931
(86)(22)【出願日】2018-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2018047575
(87)【国際公開番号】W WO2019146348
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018011802
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅章
(72)【発明者】
【氏名】黒木 智之
(72)【発明者】
【氏名】藤島 英勝
(72)【発明者】
【氏名】平松 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】中井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 柱
(72)【発明者】
【氏名】辻 良太
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-017663(JP,A)
【文献】特開2003-021309(JP,A)
【文献】特開2011-092889(JP,A)
【文献】特開2001-161801(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181771(WO,A1)
【文献】特開平10-230229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010800(US,A1)
【文献】特開2015-097987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
B01D 53/00-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管と、第1管の端部に設けられた第1噴出孔と、第1管を囲むように設けられた第2噴出孔と、第2管と、第3管と、連通流路とを備え、
第2噴出孔は、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら第2噴出孔から噴出するように設けられ、
第1噴出孔は、第2噴出孔から噴霧用ガスと共に噴出させた水又は水溶液を含むミスト中に、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられ、
第1管、第2管及び第3管は、第1管が第2管の内部に位置し、第2管が第3管の内部に位置する構造を有し、
前記連通流路は、第1管と第2管との間の流路と、第2管と第3管との間の流路とを連通するように設けられ、
第1管の内部流路は、酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路であり、
第2管と第3管との間の流路は、噴霧用ガスを流す気体流路であり、
第1管と第2管との間の流路は、水又は水溶液を流す水流路と、気液混合部とを含み、
前記気液混合部は、前記水流路から供給される水又は水溶液と前記連通流路から吹き込まれる噴霧用ガスと混合しながら旋回流を生じさせるように設けられ、
第2噴出孔は、前記気液混合部により形成された旋回する気液混合体が第2噴出孔から噴出するように設けられたことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項2】
第2噴出孔は、円環形状を有する請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
旋回流形成部をさらに備え、
前記旋回流形成部は、前記水流路を流れる水又は水溶液に旋回流が形成されるように設けられ、
前記気液混合部は、前記旋回流形成部により形成される旋回流の回転方向と同じ回転方向の旋回流が形成されるように設けられた請求項1又は2に記載の噴霧ノズル。
【請求項4】
第1噴出孔は、第2噴出孔と同一面上に配置された、又は第2噴出孔よりも噴出方向に突出して配置された請求項1~3のいずれか1つに記載の噴霧ノズル。
【請求項5】
第2噴出孔は、円環形状を有し、
第2噴出孔の外壁は、第1噴出孔よりも噴出方向に突出するように設けられた請求項1~3のいずれか1つに記載の噴霧ノズル。
【請求項6】
第1噴出孔は、前記噴霧ノズルの外部において前記ミスト中に第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられた請求項5に記載の噴霧ノズル。
【請求項7】
第2噴出孔の外壁の先端と第1噴出孔との間の距離は0mmより大きく2mm以下である請求項5又は6に記載の噴霧ノズル。
【請求項8】
第1管の端部に設けられた第1噴出孔と、第1管を囲むように設けられた第2噴出孔と、空気放出孔と、空気流路とを備え、
第2噴出孔は、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら第2噴出孔から噴出するように設けられ、
第1噴出孔は、第2噴出孔から噴霧用ガスと共に噴出させた水又は水溶液を含むミスト中に、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられ、
前記空気流路は、第2噴出孔に水又は水溶液と噴霧用ガスとを供給する流路の外壁を構成する管と、前記外壁を構成する管の外周に配置された管との間の流路であり、
前記空気放出孔は、前記空気流路から供給される空気を前記空気放出孔から噴霧ノズルの外部に放出し前記ミストの外周及びその周囲に空気を供給するように設けられかつ第2噴出孔に水、水溶液又は噴霧用ガスを供給する流路又は第2噴出孔を囲むように設けられたことを特徴とする噴霧ノズル。
【請求項9】
前記酸化剤ガスは、オゾン含有ガスである請求項1~8のいずれか1つに記載の噴霧ノズル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の噴霧ノズルが取り付けられた被処理ガス流路を流れる被処理ガス中に第2噴出孔から水又は水溶液を噴霧用ガスと共に旋回させながら噴出させ被処理ガス中にミストを形成し、第1噴出孔から酸化剤ガスを噴出させ前記ミスト中に酸化剤ガスを供給するステップを含む噴霧方法。
【請求項11】
前記被処理ガスは、NOxを含む排ガスであり、
前記酸化剤ガスは、オゾン含有ガスである請求項10に記載の噴霧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧ノズル及び噴霧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解する化学的性質を有する酸化剤ガスで被処理ガスを酸化処理する場合、被処理ガスを熱分解温度以下の温度まで冷却した後この処理を行う。
例えば、150℃以上の温度で熱分解する化学的性質を有するオゾンガスで燃焼排ガスを処理する排ガス処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、シャワーリング室で十分に冷却した燃焼排ガス中にオゾンガスを供給することにより、燃焼排ガスを浄化している。この方法では、燃焼排ガスを冷却するために大規模な冷却装置が必要である。
また、ミストの局所冷却域を利用してオゾンガスで燃焼排ガスを処理する排ガス処理方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、ミストの局所冷却域だけをオゾンガスの熱分解温度以下の温度に冷却して燃焼排ガスをオゾンガスで処理するため、大規模な冷却装置を必要としない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-137537号公報
【文献】特開2015-016434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ミストの局所冷却域を利用して酸化剤ガスにより被処理ガスを酸化処理する場合、酸化剤ガスが局所冷却域の外部へ拡散し熱分解するため、効率よく被処理ガスを酸化処理することが難しい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、酸化剤ガスが熱分解することを抑制することができ、酸化剤ガスで効率よく被処理ガスを酸化処理することができる噴霧ノズルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1管の端部に設けられた第1噴出孔と、第1管を囲むように設けられた第2噴出孔とを備え、第2噴出孔は、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら第2噴出孔から噴出するように設けられ、第1噴出孔は、第2噴出孔から噴出させた水又は水溶液を含むミスト中に、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられたことを特徴とする噴霧ノズルを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の噴霧ノズルは、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら噴出するように設けられた第2噴出孔を備える。この第2噴出孔から水又は水溶液と噴霧用ガスとを二流体噴霧することにより、旋回流を有するミストを形成することができる。また、水又は水溶液の気化熱によりミスト中に局所冷却域を形成することができる。
本発明の噴霧ノズルは、第1管の端部に設けられた第1噴出孔を備える。この第1噴出孔は、第2噴出孔から噴出させた水又は水溶液を含むミスト中に、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられる。この第1噴出孔から酸化剤ガスを噴出させることにより、旋回流を有するミストの旋回軸付近に酸化剤ガスを供給することができる。
【0007】
ミストに形成される旋回流は、旋回軸を中心として回転しながら噴出方向に流れる流れであり、噴出方向の速度成分と回転方向の速度成分とを持っている。このため、第1噴出孔から旋回軸付近に供給された酸化剤ガスは、旋回流の旋回軸付近を噴出方向に向かって流れると考えられる。また、ミストの外側の被処理ガスは、旋回流の外周の流れに巻き込まれ、旋回流にのって流れる間にミストの気化熱により冷却されると考えられる。この冷却された被処理ガスがミスト中において酸化剤ガスと接触し酸化されると考えられる。
従って、本発明の噴霧ノズルを用いることにより、酸化剤ガスが熱分解されることを抑制することができ、酸化剤ガスで効率よく被処理ガスを酸化処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の噴霧ノズルの概略断面図である。
図2図1の破線で囲んだ範囲Aにおける噴霧ノズルの概略断面図である。
図3図2の矢印Bで示した方向から見た噴霧ノズルの概略端面図である。
図4】(a)は図2の破線C-Cにおける噴霧ノズルの概略断面図であり、(b)は図2の破線D-Dにおける噴霧ノズルの概略断面図である。
図5】(a)は図3の破線で囲んだ範囲Eにおける拡大端面図であり、(b)~(d)は変形例の噴霧ノズルの概略端面図である。
図6】本発明の一実施形態の噴霧ノズルの概略部分断面図である。
図7】本発明の一実施形態の噴霧ノズルの概略部分断面図である。
図8】本発明の一実施形態の噴霧ノズルを用いて被処理ガスを処理する方法の概念図である。
図9】本発明の一実施形態の噴霧ノズルが組み込まれた排ガス処理装置の概略構成図である。
図10】第1噴霧実験におけるミストの平均流速の測定位置を示す説明図である。
図11】オゾン管の先端の位置が異なる噴霧ノズルから気液混合体及びオゾン含有ガスを噴出させた際のオゾン含有ガスの供給圧力差を示すグラフである。
図12】オゾン管の先端の位置が異なる噴霧ノズルから気液混合体及びオゾン含有ガスを噴出させることにより形成したミストに含まれる液滴のザウター平均粒子径の変化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の噴霧ノズルは、第1管の端部に設けられた第1噴出孔と、第1管を囲むように設けられた第2噴出孔とを備え、第2噴出孔は、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら第2噴出孔から噴出するように設けられ、第1噴出孔は、第2噴出孔から噴出させた水又は水溶液を含むミスト中に、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられたことを特徴とする。
【0010】
本発明の噴霧ノズルに含まれる第2噴出孔は、円環形状を有することが好ましい。このことにより、ミストの旋回流の回転方向の速度成分を大きくすることができ、第1噴出孔から噴出させた酸化剤ガスがミストの外部に拡散し熱分解することを抑制することができる。
本発明の噴霧ノズルに含まれる第1管、第2管及び第3管は、第1管が第2管の内部に位置し、第2管が第3管の内部に位置する構造を有することが好ましい。本発明の噴霧ノズルに含まれる連通流路は、第1管と第2管との間の流路と、第2管と第3管との間の流路とを連通するように設けられることが好ましく、第1管の内部流路は、酸化剤ガスを流す酸化剤ガス流路であることが好ましい。第2管と第3管との間の流路は、噴霧用ガスを流す気体流路であることが好ましく、第1管と第2管との間の流路は、水又は水溶液を流す水流路と、気液混合部とを含むことが好ましい。気液混合部は、水流路から供給される水又は水溶液と連通流路から吹き込まれる噴霧用ガスと混合しながら旋回流を生じさせるように設けられることが好ましく、第2噴出孔は、気液混合部により形成された旋回する気液混合体が第2噴出孔から噴出するように設けられたことが好ましい。このような構成によれば、第2噴出孔から水又は水溶液を噴霧用ガスと共に旋回させながら噴出させミストを形成することができ、第1噴出孔からミスト中に酸化剤ガスを供給することができる。
【0011】
本発明の噴霧ノズルは、旋回流形成部を備えることが好ましい。旋回流形成部は、水流路を流れる水又は水溶液に旋回流が形成されるように設けられることが好ましく、前記気液混合部は、旋回流形成部により形成される旋回流の回転方向と同じ回転方向の旋回流が形成されるように設けられることが好ましい。このことにより、旋回流を有する水又は水溶液を水流路から気液混合部に供給することができ、気液混合部で形成される気液混合体の旋回流の旋回速度を速くすることができる。この結果、第2噴出孔から噴出させる複数の水滴をより微細化することができる。また、ミストの旋回流の旋回速度を速くすることができる。
本発明の噴霧ノズルに含まれる第1噴出孔は、第2噴出孔と同一面上に配置されることが好ましく、又は第2噴出孔よりも噴出方向に突出して配置されることが好ましい。このことにより、ミストの旋回軸付近に酸化剤ガスを供給することができ、酸化剤ガスがミストの外部に拡散し熱分解することを抑制することができる。
【0012】
本発明の噴霧ノズルは、空気放出孔を備えることが好ましく、前記空気放出孔は、空気放出孔から空気を噴霧ノズルの外部に放出するように設けられかつ第2噴出孔に水、水溶液又は噴霧用ガスを供給する流路又は第2噴出孔を囲むように設けられたことが好ましい。この空気放出孔から空気を放出することにより、ミストの旋回流の外周及びその周囲に空気を供給することができる。このことにより、ミストの旋回流の周囲において空気放出孔から供給された空気が被処理ガスと混合し、被処理ガスが冷却される。このため、ミスト中の酸化剤ガスが熱分解することを抑制することができる。
前記酸化剤ガスは、オゾン含有ガスであることが好ましい。オゾンは強力な酸化性を有するため、被処理ガスに含まれるガスを酸化することができる。
【0013】
本発明は、本発明の噴霧ノズルが取り付けられた被処理ガス流路を流れる被処理ガス中に第2噴出孔から水又は水溶液を噴霧用ガスと共に旋回させながら噴出させ被処理ガス中にミストを形成し、第1噴出孔から酸化剤ガスを噴出させミスト中に酸化剤ガスを供給するステップを含む噴霧方法も提供する。本発明の噴霧方法により、酸化剤ガスが熱分解されることを抑制することができ、酸化剤ガスで効率よく被処理ガスを酸化処理することができる。
本発明の噴霧方法において、第2噴出孔から水又は水溶液及び噴霧用ガスを30m/s以上340m/s以下の初速度で噴出させることが好ましい。また、被処理ガスはNOxを含む排ガスであることが好ましく、酸化剤ガスはオゾン含有ガスであることが好ましい。
【0014】
以下、図面を用いて本発明の一実施形態を説明する。図面や以下の記述中で示す構成は、例示であって、本発明の範囲は、図面や以下の記述中で示すものに限定されない。
【0015】
図1~8は、本実施形態の噴霧ノズルに関する図面である。図面の説明は上述の説明と同様である。
本実施形態の噴霧ノズル30は、第1管4の端部に設けられた第1噴出孔3と、第1管4を囲むように設けられた第2噴出孔2とを備え、第2噴出孔2は、水又は水溶液が噴霧用ガスと共に旋回しながら第2噴出孔2から噴出するように設けられ、第1噴出孔3は、第2噴出孔2から噴出させた水又は水溶液を含むミスト24中に、第1噴出孔3から噴出させた酸化剤ガスを供給するように設けられたことを特徴とする。
本実施形態の噴霧方法は、本実施形態の噴霧ノズル30が取り付けられた被処理ガス流路21を流れる被処理ガス中に第2噴出孔2から水又は水溶液を噴霧用ガスと共に旋回させながら噴出させ被処理ガス中にミスト24を形成し、第1噴出孔3から酸化剤ガスを噴出させミスト24中に酸化剤ガスを供給するステップを含む。
ミストとは、多数の水滴23が気体中に浮遊しているものをいう。ミストに含まれる水滴23は、100μm以下の平均粒子径を有することができる。
【0016】
噴霧ノズル30は、第2噴出孔2と第1噴出孔3とを備えるものであれば、その構成は特に限定されないが、例えば、第1管4が第2管5の内部に位置し、第2管5が第3管6の内部に位置する構造を有することができる。噴霧ノズル30は、第1管4、第2管5及び第3管6からなる3重管構造を有してもよく、第1管4、第2管5、第3管6、第4管7からなる4重管構造を有してもよく、5重管構造を有してもよい。また、3重管構造、4重管構造又は5重管構造は、同軸型とすることができる。例えば、噴霧ノズル30は、第3管6の中に第2管5が同軸となるように挿入され、その第2管5の中に第1管4が同軸となるように挿入された構造を有することができる。また、第1管4、第2管5、第3管6又は第4管7は、円筒形状を有することができる。
噴霧ノズル30は、3重管、4重管又は5重管の先端部にアダプタ、混合スリーブ、コア、ノズルチップ、キャップのうち少なくとも1つを取り付けた構造を有してもよい。
【0017】
噴霧ノズル30は、酸化剤ガスが噴出するように設けられた第1噴出孔3を有する。第1噴出孔3は、第1管4の端部に設けられる。第1噴出孔3は、中心噴出孔であってもよい。また、酸化剤ガスは、第1管4の内部流路である酸化剤ガス流路10を介して第1噴出孔3に供給される。酸化剤ガス流路10は、第1管4の内部流路を含む。また、酸化剤ガス流路10は、第1管4の内部流路と他の部材の内部流路とが連結された流路であってもよい。また、第1管4は、多重管構造の最も内側の管とすることができる。
【0018】
酸化剤ガスは、酸化剤として機能するガスであれば特に限定されないが、例えばオゾン含有ガスである。酸化剤ガスがオゾン含有ガスである場合、酸化剤ガス流路10はオゾンガス流路であってもよい。オゾン含有ガスは、例えば、放電法、電解法、紫外線ランプ法などにより空気、酸素ガスなどを原料として製造することができる。また、酸化剤ガスは熱分解性ガスであってもよい。
【0019】
噴霧ノズル30は、水又は水溶液の微粒子(水滴23)が噴霧用ガスと共に旋回しながら噴出するように設けられた第2噴出孔2を有する。第2噴出孔2は円環状噴出孔であってもよい。第2噴出孔2は、第1噴出孔3又は酸化剤ガス流路10を囲むように設けられる。このことにより、第2噴出孔2から水又は水溶液と噴霧用ガスとを噴出させることによりミスト24を形成することができ、第1噴出孔3からミスト24の中に酸化剤ガスを供給することができる。第1噴出孔3及び第2噴出孔2は、例えば、図3のように設けることができる。
例えば、水流路11から供給される水又は水溶液と、気体流路12から供給される噴霧用ガスとを内部混合し第2噴出孔2から噴出させることができる。第2噴出孔2は、内壁が第1管4であり外壁が第2管5又は第3管6である円環状の孔とすることができる。
噴霧ノズル30は、一方の端が第1管4に固定され、他方の端が第1管4の外側の管(第2管5又は第3管6)に固定された支持部18を有することができる。支持部18は、第1管4がその外側の管の中心に固定されるように設けることができる。このことにより、噴霧の際に第1管4が振動し破損することを抑制することができる。また、噴霧ノズル30は、複数の支持部18を有することができる。
支持部18は、第2噴出孔2に設けられてもよい。例えば、図5(b)~(d)のように、複数の支持部18を第2噴出孔2に設けることができる。この場合、第2噴出孔2は、円環状の噴出孔が支持部18で分断された形状を有することができる。なお、図5(b)~(d)は、図3の破線で囲んだ範囲Eにおける端面図である図5(a)に対応する端面図である。
第2噴出孔2から水又は水溶液及び噴霧用ガスを噴出させる初速度は、例えば、30m/s以上340m/s以下とすることができる。このことにより、ミスト24の旋回流の噴出方向の速度成分及び回転方向の速度成分を大きくすることができ、第1噴出孔3から噴出させた酸化剤ガスがミスト24の外部に拡散し熱分解することを抑制することができる。
【0020】
水流路11は、例えば、第1管4と第2管5との間の円管状流路断面を有する流路に設けることができる。水流路11を流れる水又は水溶液は、例えば冷却水であってもよく、アルカリ性水溶液であってもよい。水流路11から供給される水又は水溶液は、第2噴出孔2から噴出し、ミスト24を構成する複数の水滴23となる。
気体流路12は、例えば、第2管5と第3管6との間の円管状流路断面を有する流路に設けることができる。気体流路12を流れる噴霧用ガスは、水流路11から供給される水又は水溶液を微粒化するために用いられる気体である。噴霧用ガスには、例えば、空気、窒素ガス、酸素ガスなどを用いることができる。
【0021】
噴霧ノズル30は、第1管4と第2管5との間の流路と、第2管5と第3管6との間の流路とを連通するように設けられた連通流路13を有することができる。気体流路12及び連通流路13は、気体流路12を流れてきた噴霧用ガスが連通流路13に流入し、第1管4と第2管5との間の流路に流入するように設けることができる。噴霧用ガスが第1管4と第2管5との間の流路に流入する部分は、気液混合部16となる。気液混合部16は、円環形状の流路断面を有する流路に連通流路13から噴霧用ガスが吹き込まれるように設けることができる。
気液混合部16では、水流路11から供給される水又は水溶液と連通流路13から吹き込まれる噴霧用ガスとが衝突混合し、噴霧用ガスの高速気流により水又は水溶液が粉砕され微粒化する。このようにして形成される水又は水溶液の微粒子(水滴23)と噴出用ガスとを含む気液混合体が気液混合体流路15を流れ、第2噴出孔2から噴出する。
【0022】
連通流路13は、第1管4と第2管5との間の流路の円周方向に噴霧用ガスが吹き込まれるように設けることができる。このことにより、連通流路13を流れる噴霧用ガスの速度成分を円周方向(回転方向)の速度成分に変換することができ、気液混合部16に旋回流を生じさせることができる。また、この旋回流を高速化することができ、水又は水溶液の微細な微粒子を形成することができる。また、第2噴出孔2から気液混合体を噴出させて形成するミスト24に旋回流を生じさせることができる。また、噴霧ノズル30は、複数の連通流路13を備えることができる。このことにより、気液混合部16における旋回流の速度をより速くすることができ、水又は水溶液の微粒子(水滴)をより微細化することができる。また、ミスト24の旋回流の旋回速度を速くすることができる。また、複数の連通流路13は同じ円周方向に噴霧用ガスを吹き込むように設けることができる。
【0023】
複数の連通流路13は、例えば、図2図4のように設けることができる。図4(a)に示した図2の破線C-Cにおける断面においては、4つの連通流路13a~13dがそれぞれ気液混合部16の同じ円周方向に噴霧用ガスを吹き込むように設けられている。また、図4(b)に示した図2の破線D-Dにおける断面においては、4つの連通流路13e~13hがそれぞれ気液混合部16の同じ円周方向に噴霧用ガスを吹き込むように設けられている。また、連通流路13a~13dと連通流路13e~13hとは、吹き込み口が重ならないように設けられ、同じ円周方向に噴霧用ガスを吹き込むように設けられている。このように複数の連通流路13を設けることにより、気液混合部16に形成される旋回流の旋回速度を速くすることができ、水又は水溶液の微粒子をより微細化することができる。また、ミスト24の旋回流の旋回速度を速くすることができる。
【0024】
第1噴出孔3は、第2噴出孔2から旋回しながら噴出させた水又は水溶液の微粒子(水滴23)を含むミスト24中に酸化剤ガスを供給するように設けられる。このことにより、第1噴出孔3からミスト24の旋回流の旋回軸付近に供給した酸化剤ガスを、ミスト24の旋回流の旋回軸付近を噴出方向に向かって流すことができ、ミスト24の局所冷却域において被処理ガスと反応させることができる。
【0025】
噴霧ノズル30は、例えば、第2噴出孔2から水又は水溶液及び噴霧用ガスを旋回させながら被処理ガス中に噴出させミスト24を形成し、第1噴出孔3からミスト24中に酸化剤ガスを供給するように使用することができる。例えば、図8のように噴霧することができる。
ミスト24に形成される旋回流は、旋回軸を中心として回転しながら噴出方向に流れる流れであり、噴出方向の速度成分と回転方向の速度成分とを持っている。このため、第1噴出孔3から旋回軸付近に供給された酸化剤ガスは、旋回流の旋回軸付近を噴出方向に向かって流れると考えられる。また、ミスト24の外側の被処理ガスは、旋回流の外周の流れに巻き込まれ、旋回流にのって流れる間にミスト24の気化熱により冷却されると考えられる。この冷却された被処理ガスがミスト24中において酸化剤ガスと接触し酸化されると考えられる。このため、酸化剤ガスが熱分解されることを抑制することができ、酸化剤ガスで効率よく被処理ガスを酸化処理することができる。
【0026】
被処理排ガスは、酸化剤ガスにより酸化処理される気体であれば特に限定されないが、例えば、NOxを含む燃焼排ガスとすることができる。この場合、酸化剤ガスは、オゾン含有ガスとすることができる。また、被処理排ガスは、NOx及びSOxを含む排ガスであってもよい。
オゾンガスは強力な酸化性を有し、酸化剤として機能する。このため、NOxを含む燃焼排ガスとオゾンガスとを混合することにより、燃焼排ガスに含まれる水に溶けにくいNOガスを水や還元剤と反応しやすいNO2ガスに酸化することができる。また、燃焼排ガス中のNO2ガスは、還元剤などにより除去することができる。このように、オゾンガスによるNOガスの酸化処理は、燃焼排ガス中のNOxの除去処理に利用することができる。
しかし、オゾンガスは熱分解性を有し、150℃を超えると熱分解速度が速くなる。このため、オゾンガスによる燃焼排ガスの酸化処理は150℃以下の温度で行う必要がある。
本発明の噴霧ノズル30により燃焼排ガス中にミスト24を形成しこのミスト24中にオゾン含有ガス(酸化剤ガス)を供給すると、ミスト24中の局所冷却域においてオゾンガスと燃焼排ガスとを効率よく混合することができるため、オゾンガスの利用効率を高くすることができる。
【0027】
第1噴出孔3は、図1~4に示した噴霧ノズル30のように、第2噴出孔2と同一面上(噴口面上)に配置することができる。このことにより、第2噴出孔2より噴出させた気液混合体と第1噴出孔3から噴出させた酸化剤ガスとを適度に外部混合することができ、被処理ガスと酸化剤ガスとが反応する領域を広くすることができる。
第1噴出孔3は、図6に示した噴霧ノズル30のように、第2噴出孔2(噴口面)よりも噴出方向に突出して配置することができる。このことにより、ミスト24の旋回軸付近に酸化剤ガスを供給することができ、酸化剤ガスがミスト24の外部に拡散し熱分解することを抑制することができる。
第1噴出孔3は、図7に示した噴霧ノズル30のように、複数の水滴23と噴霧用ガスとが噴霧ノズル30の外部へ噴出する噴出孔(噴口面)よりも内部側に配置することができる。また、図7に示した噴霧ノズル30のように、第2噴出孔2の外壁は、第1噴出孔3よりも噴出方向に突出するように設けることができる。このことにより、第2噴出孔2からノズル外部へ噴出させた水滴が粗大化することを抑制することができ、微細なミスト24を形成することができる。このため、ミスト24の冷却効率を向上させることができる。
また、第1噴出孔3(第1管4の先端)が噴出面よりもノズル内側に配置された場合であっても、第1噴出孔3から噴出させた酸化剤ガスが噴霧ノズル30の外部においてミスト24中に供給される(外部混合)ように第1噴出孔3を配置することができる。このことにより、旋回流を有するミスト24の旋回軸付近に酸化剤ガスを供給することができ、酸化剤ガスが熱分解されることを抑制することができる。
例えば、図7に示した噴霧ノズル30のように、第1管4の先端(第1噴出孔3)を噴口面からわずかに凹ませることができる。例えば、第2噴出孔2の外壁の先端19(噴口面)と第1噴出孔3(第1管4の先端)との間の距離(凹みの深さ)を0.01mm以上2mm以下とすることができる。また、凹みの深さを0.01mm以上1mm以下とすることもできる。
【0028】
噴霧ノズル30は、水流路11を流れる水又は水溶液に旋回流を形成するように設けられた旋回流形成部17を備えることができる。旋回流形成部17は、気液混合部16により形成される旋回流の回転方向と同じ回転方向の旋回流を生じさせるように設けることができる。このことにより、旋回流を有する水又は水溶液を水流路11から気液混合部16に供給することができ、気液混合部16で形成される気液混合体の旋回流の旋回速度を速くすることができる。この結果、水又は水溶液の微粒子(水滴)をより微細化することができる。また、ミスト24の旋回流の旋回速度を速くすることができる。
旋回流形成部17は、例えば、スクリュー形状のブレードを有することができる。水又は水溶液がこのブレードに沿って流れることにより、水流路11を流れる水又は水溶液に旋回流を形成することができる。このブレードは、例えば、第1管4の外周面上に設けることができる。
【0029】
噴霧ノズル30は、空気を噴霧ノズル30の外部に放出するように設けられた空気放出孔8を備えることができる。空気放出孔8は、第2噴出孔2に水、水溶液又は噴霧用ガスを供給する流路又は第2噴出孔2を囲むように設けることができる。この空気放出孔8から空気を放出させることにより、ミスト24の旋回流の外周及びその周囲に空気を供給することができる。このことにより、ミスト24の旋回流の周囲において被処理ガスが供給した空気と混合され、被処理ガスが冷却される。このため、被処理ガスがミスト24と混合される前に被処理ガスを冷却することができ、ミスト24中の酸化剤ガスが熱分解することを抑制することができる。また、空気放出孔8から空気を放出することにより、噴霧ノズル30の先端部にダストが付着することを防止することができる。また、噴霧ノズル30の先端部の温度が高くなることを抑制することができる。
【0030】
空気放出孔8は、1つの放出孔であってもよく、複数の放出孔から構成されてもよい。空気放出孔8は、円環状の放出孔であってもよい。例えば、空気放出孔8は、図1~3に示したように設けることができる。この場合、第3管6と第4管7との間に空気流路14を設けることができる。この空気流路14から供給される空気を空気放出孔8から放出することができる。
噴霧ノズル30は、例えば、被処理ガスが流れる流路21の内部の気圧と、大気圧との差により大気中の空気が空気流路14を流れ空気放出孔8から流路21に放出するように設けることができる。
【0031】
図9は、本実施形態の噴霧ノズル30が組み込まれた排ガス処理装置80の概略構成図である。排ガス処理装置80では、ガラス溶解炉41から排出されるNOxを含む排ガスを排ガス流路45において排ガス処理する。排ガス流路45は、排ガス源から大気中への放出までに排ガスが流れる流路である。排ガス流路45には、反応塔42及び電気集塵器43を設けることができる。また、排ガス処理装置80はボイラの排ガス、ごみ焼却炉の排ガスなどを排ガス処理するものであってもよい。
【0032】
噴霧ノズル30は、排ガス流路45を流れる排ガス中に第2噴出孔2から冷却水71の微粒子を空気(噴霧用ガス)と共に旋回させながら噴出させ排ガス中に第1ミスト24を形成するように設けられる。また、噴霧ノズル30は、第1噴出孔3からオゾン含有ガスを噴出させ第1ミスト24中にオゾン含有ガスを供給するように設けられる。第1ミスト24の旋回流によりオゾンガスが第1ミスト24の外部に拡散することを抑制することができ、第1ミスト24中の150℃以下の局所冷却域において、排ガスに含まれるNOガスとオゾンガスとを効率的に反応させることができる。この結果、排ガス中のNOガスをNO2ガスに効率的に変換することができる。また、第1ミスト24よりも上流の排ガスの温度は150℃以上である。また、第1ミスト24よりも上流の排ガスの温度は200℃以上であってもよい。
【0033】
複数の噴霧ノズル30が排ガス流路45を囲み、それぞれの噴霧ノズル30が排ガス流路45の中心部に向けて冷却水71、オゾン含有ガスなどを噴出するように、複数の噴霧ノズル30を配置してもよい。また、複数の噴霧ノズル30からそれぞれ冷却水71、オゾン含有ガスなどを噴出させ合わさった1つの第1ミスト24が形成されるように複数の噴霧ノズル30を設けることができる。このことにより、排ガス流路45を流れる排ガスのほとんどを第1ミスト24中を通過させることができ、排ガス中のNOガスを効率よくNO2ガスに変換することができる。
【0034】
排ガス処理装置80は、排ガス流路45の第1ミスト24よりも下流側の排ガス中に少なくともNaOHが溶解した水溶液72を噴霧し第2ミスト47を形成するように設けられた噴霧ノズル67を備えることができる。また、排ガス流路45を流れる排ガスは、SOxを含んでもよい。この噴霧ノズル67を用いて、第1ミスト24よりも下流側のSOx及びNO2を含む排ガス中にNaOH水溶液72を噴霧することにより第2ミスト47を形成することができる。噴霧ノズル67は、例えば二流体噴霧ノズルである。
【0035】
排ガス流路45を流れる排ガスはSO2を含み、第2ミスト47に含まれる微小水滴はNaOHを含むため、第2ミスト47において次の式(1)のような化学反応を進行させることができる。このため、排ガスに含まれるSO2を除去できる(排ガスを脱硫できる)と共に第2ミスト47の微小液滴中に還元剤であるNa2SO3を生成することができる。
SO2+2NaOH → Na2SO3+H2O・・・(1)
また、排ガス流路45を流れる排ガスはNOがオゾンにより酸化され生成したNO2を含むため、次の式(2)のような気液反応を進行させることができる。
2NO2+4Na2SO3 → N2+4Na2SO4・・・(2)
従って、第2ミスト47中においてNO2をN2に還元することができ、排ガス中のNOxを除去することができる。式(1)、(2)の化学反応は、第2ミスト47の微小水滴中又は微小水滴と排ガスとの気液界面において進行すると考えられるため、微小水滴の存続期間を、これらの化学反応が進行するために必要な時間(約1秒間必要と考えられる)以上とすることができる。
式(2)の化学反応が進行すると、還元剤であるNa2SO3からNa2SO4が生成し、Na2SO4のダストが排ガス中に生じる。
【0036】
噴霧ノズル67は、NaOHと還元剤(例えば、Na2SO3)が溶解した混合水溶液を排ガス中に噴霧するように設けてもよい。この場合、排ガス中のNO2を還元剤によりN2に還元することができるため、SOxを含まない排ガス又はSOx濃度が十分に低い排ガスが排ガス流路45を流れていてもよい。また、排ガス中のSOxから生成されるNa2SO3だけではNO2を十分にN2に還元できない場合に、NaOHと還元剤が溶解した混合水溶液を噴霧するように噴霧ノズル67を設けることができる。
【0037】
噴霧ノズル67は、第1ミスト24が消失した後の排ガス中にNaOH水溶液72を噴霧して第2ミスト47を形成するように設けることができる。このことにより、第1ミスト24と第2ミスト47とを分離して形成することができ、第2ミスト47中の還元剤と、第1ミスト24中のオゾンガスとが反応することを抑制することができる。
【0038】
図9に示した排ガス処理装置80のように、噴霧ノズル30が反応塔42の内部に第1ミスト24を形成するように設けられ、噴霧ノズル67が反応塔42の内部に第2ミスト47を形成するように設けられている場合、排ガス処理装置80は、反応塔42を流れる排ガス中に冷却水(封水64)を噴霧して第3ミスト48を形成するように設けられた噴霧ノズル68を有することができる。噴霧ノズル68を設けることにより、第1~第3ミストにより排ガスを冷却することができ、高温の排ガス(例えば、反応塔42の流入口における温度が450℃以上)であっても、集塵器43に流入する排ガスの温度を350℃以下又は230℃以下とすることができる。
【0039】
排ガス処理装置80は、排ガス流路45の第1ミスト24及び第2ミスト47よりも下流側に集塵器43を備えることができる。集塵器43を設けることにより、排ガス流路45で生じたNa2SO4のダストを排ガスから除去することができる。集塵器43は、電気集塵器であってもよく、バグフィルタであってもよい。
【0040】
排ガス処理実験
図9に示したような排ガス処理装置によりガラス溶解炉から排出される排ガスを処理した。また、噴霧ノズル30には、図1~4に示したような噴霧ノズルを用いた。反応塔のダクト径は3.5mである。排ガス量は約13000Nm3/hであり、反応塔内の約360℃の排ガス温度における排ガスの流速は約0.8m/secであった。また、反応塔入口におけるNOx濃度(酸素濃度15%に換算時の濃度)は約220ppmでありSOx濃度(酸素濃度15%に換算時の濃度)は約180ppmであり、酸素濃度は約8%であった。
【0041】
反応塔の内周に等間隔で7本の噴霧ノズル30を設置して、各噴霧ノズル30において冷却水と空気とを内部混合した気液混合体を第2噴出孔から反応塔を流れる排ガス中に噴霧し合わさった第1ミストを形成した。各噴霧ノズル30から噴出させた第1ミストはそれぞれ旋回流を有している。また、各噴霧ノズル30の第1噴出孔から第1ミスト中に、オゾナイザで生成したオゾン含有ガスを供給した。また、各噴霧ノズル30の空気放出孔から大気中の空気を反応塔中に流入させた。また、表1に示した噴霧条件1~3のそれぞれで噴霧ノズル30から第1ミスト及びオゾン含有ガスを噴出させ排ガス処理実験を行った。
【0042】
【表1】
【0043】
噴霧ノズル30よりも下流側の反応塔の内周に等間隔で設置した7本の噴霧ノズル67により2%NaOH水溶液(還元剤を含んでいない)を反応塔を流れる排ガス中に噴霧し第2ミストを形成した。噴霧ノズル67の総噴霧量は、噴霧条件1~3でそれぞれ0.35m3/h、0.47m3/h、0.45m3/hであった。
また、噴霧ノズル68による噴霧は行っていない。また、集塵器には電気集塵器を用いた。
噴霧条件1~3のそれぞれで行った排ガス処理実験における第1ミストの局所冷却域の温度の測定結果と、オゾンガスによるNOの酸化効率(ΔNO/O3)を表2に示す。また、反応塔入口の排ガス温度は約360℃であり、反応塔出口の排ガス温度は約210℃であった。
【0044】
【表2】
【0045】
オゾンガスによるNOの酸化効率(ΔNO/O3)は、反応塔において酸化されたNOガスの量ΔNOと、第1噴出孔から第1ミスト中に注入したオゾンガスの量とのモル比である。ΔNO/O3の値が大きいほどオゾンにより酸化されたNOガスの量が多いことを示す。また、ΔNO/O3の値が小さいと、注入したオゾンのうちNOの酸化に利用されずに熱分解したオゾンの量が多いと考えられる。
第1ミストの局所冷却域の温度は、条件1~3のいずれにおいても100℃以下であり、局所冷却域におけるオゾンの熱分解は抑制されると考えられる。条件1では冷却水の量が条件2、3よりも少ないため、局所冷却域の温度が条件2、3よりも高くなったと考えられる。
【0046】
ΔNO/O3の値は、条件1、2では50%以下であったのに対し、条件3では80%以上となった。条件2と条件3は、冷却水の噴霧量がほぼ同じであり、噴霧用ガス(空気)の供給圧力が条件2よりも条件3のほうが高い。従って、空気の供給圧力を高くすることによりオゾンガスによるNOの酸化効率を向上できることがわかった。
【0047】
第1噴霧実験
図1~4に示したような噴霧ノズルを用いて、冷却水と空気とを内部混合した気液混合体を第2噴出孔から噴出させ第1ミストを形成し、第1ミスト内の複数の水滴の平均流速及び水滴の粒子径を測定した。この測定における噴霧条件は表1に示した条件1~3の水圧、空気圧と同じであり、図10に示したA点、B点における複数の水滴のX方向の平均流速を測定し、B点における水滴の粒子径を測定した。測定結果を表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
A点及びB点における平均流速は、条件1よりも条件2のほうが速く、条件2よりも条件3のほうが速かった。これは空気圧及び水圧が高いほど複数の水滴の平均流速が速くなるためと考えられる。また、空気圧及び水圧が高いほど第1ミストの旋回流の旋回速度も速くなると考えられる。また、ミスト内の水滴の平均粒径は70μm以下であるため、第2噴出孔から噴出させた水滴は気体の流れにのって浮遊すると考えられる。
【0050】
排ガス処理実験において条件3でΔNO/O3の値が高くなった原因は不明であるが、条件3で第1ミストの旋回流の旋回速度が最も速くなると考えられるため、第1ミストの旋回流により、オゾンガスが第1ミストの外部に拡散することが抑制され、オゾンガスが熱分解することが抑制されたためと考えられる。
【0051】
第2噴霧実験
図2に示した噴霧ノズルのように第1管4(オゾン管)の先端(第1噴出孔3)が噴口面に位置する噴霧ノズル(噴口面からオゾン管の先端までの距離d=0mm)、図6に示した噴霧ノズルのように第1管4(オゾン管)の先端(第1噴出孔3)が噴口面から突出した噴霧ノズル(d=2mm)、図7に示した噴霧ノズルのように第1管4(オゾン管)の先端(第1噴出孔3)が噴口面から凹んだ位置に配置された5つの噴霧ノズル(d=-1mm、-2mm、-3mm、-4mm、-5mm)を作製した。
【0052】
作製した噴霧ノズルを用いて、冷却水と空気とを内部混合した気液混合体を第2噴出孔から噴出させ第1ミストを形成し、オゾン含有ガスを第1噴出孔から噴出させた。この形成した第1ミストの図10のB点(噴霧ノズル30の先端からの距離が1000mmである点)における水滴のザウター平均粒子径Dを測定した。また、冷却水の供給流量Qwが150L/hとなり、空気の供給流量Qaが500L/minとなり、オゾン含有ガスの供給流量Qoが100L/minとなるように供給圧力を調節した。測定結果を表4、図11図12に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4、図11に示したオゾン含有ガスの供給圧力差ΔPoはd=0mmとした噴霧ノズルを用いた測定におけるオゾン供給圧力Poを基準圧とし、この基準圧との差を示している。
表4に示したザウター平均粒子径Dは、d=0mmとした噴霧ノズルを用いた測定において測定されたザウター平均粒子径Dを基準(100%)としてパーセントで表している。表4、図12に示したザウター平均粒子径の変化率は、この基準平均粒子径からの平均粒子径Dの変化率である。
【0055】
表4、図11に示したように、d=-1mm、2mmとした噴霧ノズルを用いた測定におけるオゾン含有ガスの供給圧力Poは、d=0mmとした噴霧ノズルを用いた測定おけるオゾン含有ガスの供給圧力Po(基準圧)とほぼ同じであったが、d=-2mm、-3mm、-4mm、-5mmとした噴霧ノズルを用いた測定では、噴口面からのオゾン管の先端までの距離が大きいほど(オゾン管の先端がより深い位置に位置するほど)供給圧力差ΔPoは大きくなることがわかった。オゾン管の先端が深い位置にあると、第1噴出孔3が第2噴出孔2から噴出する気液混合体の噴出圧力の影響を受けるため、オゾン含有ガスの供給圧力Poが大きくなると考えられる。
【0056】
d=-1mmとした噴霧ノズルではオゾン管の先端が噴口面から凹んだ位置に配置されているにも関わらず、オゾン含有ガスの供給圧力Poは、d=0mmとした噴霧ノズルを用いた測定おけるオゾン含有ガスの供給圧力Po(基準圧)とほぼ同じであった。このため、この噴霧ノズルでは、第1噴出孔3から噴出させたオゾン含有ガスは、噴霧ノズルの内部においては第2噴出孔2から噴出させた気液混合体とは混合(内部混合)されず、噴霧ノズルの外部において気液混合体と混合(外部混合)していると考えられる。
【0057】
表4、図12に示したように、d=-1mm、-2mm、-3mm、-4mm、-5mmとした噴霧ノズルを用いた測定では、測定された水滴のザウター平均粒子径Dは小さかったが、d=0mmとした噴霧ノズルを用いた測定での水滴のザウター平均粒子径Dはより大きくなり、d=2mmとした噴霧ノズルを用いた測定での水滴のザウター平均粒子径Dはさらに大きくなった。このため、オゾン管の先端の位置がミストに含まれる水滴の平均粒径Dに影響を及ぼしていることがわかった。
従って、-2mm≦d<0mmとすることにより、オゾン含有ガスの供給圧力の上昇を抑えることができ、かつ、ミストに含まれる水滴の平均粒子径Dを小さくすることができることがわかった。なお、エアー流量Qaが同じである場合、ミストの水滴の平均粒径Dが小さいほど冷却効率が高くなる。
【符号の説明】
【0058】
2:第2噴出孔 3:第1噴出孔 4:第1管 5:第2管 6:第3管 7:第4管 8:空気放出孔 10:酸化剤ガス流路 11:水流路 12:気体流路 13、13a~13h:連通流路 14:空気流路 15:気液混合体流路 16:気液混合部 17:旋回流形成部 18:支持部 19:第2噴出孔の外壁の先端 21:被処理ガス流路 22:流路壁 23:水滴 24:第1ミスト 30:第1噴霧ノズル 41: ガラス溶解炉 42:反応塔 43:集塵器 44:煙突 45:排ガス流路 47:第2ミスト 48:第3ミスト 49:水封槽 52、52a、52b、52c:ポンプ 55、55a、55b、55c、55d:温度計 56、56a、56b、56c:ガス濃度測定装置 58:ORP計 62:ダスト 64:封水(冷却水) 66:オゾン発生装置 67:第2噴霧ノズル 68:第3噴霧ノズル 69:エアコンプレッサ 71:冷却水 72:NaOH水溶液(又はNaOHとNa2SO3の混合水溶液) 80:排ガス処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12