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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】組織接合器
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2016192185
(22)【出願日】2016-09-29
(65)【公開番号】P2018051070
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-08-28
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5507743(US,A)
【文献】特開2008-272472(JP,A)
【文献】特開平11-221221(JP,A)
【文献】特開2011-177503(JP,A)
【文献】特表2009-513296(JP,A)
【文献】特表2011-520488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0366612(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0147446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B18/18
A61B18/12-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート固定用組織接合器であって、
該組織接合器は、
外部導体、
中心導体、
該外部導体に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極、
該中心導体に直接又は間接的に接続しているマイクロ波印加用中心電極、
シャフト、
ホルダー、ここで、該ホルダーは該シャフト、該中心導体及び該外部導体を含み、及び、
該螺旋形状電極及び該中心電極を回転させるための回動子、ここで、該回動子は該ホルダーの近位方向の末端に設置されておりかつ該シャフトに直接又は間接的に接続されており、
該シャフトは、該螺旋形状電極及び/又は該中心電極の長軸に対しての回転動作を与え、
を含み、並びに、
該螺旋形状電極は該組織接合器の長軸の遠位方向に螺旋が伸長しており、並びに、該中心電極は該螺旋形状電極の螺旋内腔に存在しかつ長軸の遠位方向に伸長しており、
並びに、該螺旋形状電極及び該中心電極は、中空ではなくかつ流体供給口を有さないことを特徴とする、
シート固定用組織接合器。
【請求項2】
狭視野手術又は鏡視下手術用である請求項1に記載のシート固定用組織接合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を利用し、糸で縫合する代わりに組織と組織又はシートを合わせ、組織とシートを凝固・固着して対象組織に縫合と実質的に同一効果を出す器具、すなわち組織接合器(アンカー)、特に、ヘルニア用組織接合器に関する。
【背景技術】
【0002】
鏡視下手術(内視鏡手術)、特に、腹腔鏡下でのヘルニアの手術が盛んに行われるようになってきている。該手術の際において、ヘルニア孔の大小にかかわらず、ヘルニア孔部にメッシュを当て、周りの組織に固定してヘルニア孔を塞ぐ治療が盛んに行われている。
ヘルニアのみならず様々な創に対してシート(メッシュ)が用いられている。メッシュを用いた手術の場合、メッシュを腹壁等に固定するにはスクリュータイプの釘(ビス)を使用する。しかし、ビスは異物であり大きく、さらに高価でもある。また、従来の手術では、それぞれの固定部を鏡視下で糸をかけて縫うことがあるが、腹腔鏡下手術では腹壁内側は死角になって結紮に時間がかかり、うまく固定する事が難しい。
【0003】
マイクロ波を利用した縫合装置に関する文献(参照:特許文献1)は報告されている。特に、本発明者らは、マイクロ波を利用した組織接合器の試作に成功している(参照:特許文献2)。
しかし、本発明の組織接合器の構造は、これらの文献に記載の組織接合器の構造とはまったく異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-47144
【文献】国際公開WO2013/089257A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のヘルニア孔を塞ぐ治療において、シートを組織に固定する場合には、糸での縫合又はビスでの固定が一般的であった。しかし、これらの方法では、異物である糸やビスが体内に残存するという問題があった。さらに、これらの方法では、腹壁の内側に向け、直角の視野が必要となるので、外から覗く鏡視下手術にとって困難であった。
すなわち、本発明の課題は、鏡視下手術でも使用しやすく、さらに、糸やビスを使用しないで組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、2つのまったく新しい構造を有する組織接合器を想到して本発明を完成した。
○螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(参照:図1
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む螺旋形状電極、並びに、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している中心電極又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む中心電極、を有し、
該螺旋形状電極は長軸の遠位方向に螺旋が伸長しており、並びに、該中心電極は該螺旋形状電極の螺旋内腔に存在しかつ長軸の遠位方向に伸長しており、
該螺旋形状電極及び該中心電極の長軸先端をシートで覆った組織に長軸に対して回転させながら長軸の遠位方向に押すことにより該シートを該組織に押し込み、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
○複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(参照:図3
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含みかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む内側組織捕捉器具、並びに、複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒、を有し
該複数の外側組織捕捉器具は、該内側組織捕捉器具を囲むように配置されており、
該複数の外側組織捕捉器具及び該内側組織捕捉器具は、該収納筒が長軸の近位方向に移動することにより搬出され、さらに外方へ展開する。
該内側組織捕捉器具の長軸先端でシートを組織に押し込む又は該内側組織捕捉器具の長軸方向の先端でシートを捕捉し、
該外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の末端が長軸の近位方向に移動することにより、該複数の外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の先端が該組織と該シートを接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
【0007】
すなわち本発明は以下よりなる。
1.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む螺旋形状電極、並びに、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している中心電極又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む中心電極、を有し、
該螺旋形状電極は長軸の遠位方向に螺旋が伸長しており、並びに、該中心電極は該螺旋形状電極の螺旋内腔に存在しかつ長軸の遠位方向に伸長しており、
該螺旋形状電極及び該中心電極の長軸先端をシートで覆った組織に長軸に対して回転させながら長軸の遠位方向に押すことにより該シートを該組織に押し込み、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
2.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極、並びに、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している中心電極、を有し、
該螺旋形状電極は長軸の遠位方向に螺旋が伸長しており、並びに、該中心電極は該螺旋形状電極の螺旋内腔に存在しかつ長軸の遠位方向に伸長しており、
該螺旋形状電極及び該中心電極の長軸先端をシートで覆った組織に長軸に対して回転させながら長軸の遠位方向に押すことにより該シートを該組織に押し込み、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
3.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための外部導体に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極、並びに、マイクロ波を印加するための中心導体に直接又は間接的に接続している中心電極、を有し、
該螺旋形状電極は長軸の遠位方向に螺旋が伸長しており、並びに、該中心電極は該螺旋形状電極の螺旋内腔に存在しかつ長軸の遠位方向に伸長しており、
該螺旋形状電極及び該中心電極の長軸先端をシートで覆った組織に長軸に対して回転させながら長軸の遠位方向に押すことにより該シートを該組織に押し込み、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
4.シート固定用である前項1~3のいずれか1に記載の組織接合器。
5.長軸方向の接合用である前項1~4のいずれか1に記載の組織接合器。
6.狭視野手術又は鏡視下手術用である前項1~5のいずれか1に記載の組織接合器。
7.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含みかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具又はマイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体を含む内側組織捕捉器具、並びに、複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒、を有し
該複数の外側組織捕捉器具は、該内側組織捕捉器具を囲むように配置されており、
該複数の外側組織捕捉器具及び該内側組織捕捉器具は、該収納筒が長軸の近位方向に移動することにより搬出され、
該内側組織捕捉器具の長軸先端でシートを組織に押し込む又は該内側組織捕捉器具の長軸先端でシートを捕捉し、
該外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の末端が長軸の近位方向に移動することにより、該複数の外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の先端が該組織と該シートを接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織又は組織同志を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
8.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具、マイクロ波を印加するための中心導体及び/若しくは外部導体に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具、並びに、複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒、を有し
該複数の外側組織捕捉器具は、該内側組織捕捉器具を囲むように配置されており、
該複数の外側組織捕捉器具及び該内側組織捕捉器具は、該収納筒が長軸の近位方向に移動することにより搬出され、
該内側組織捕捉器具の長軸先端でシートを組織に押し込む又は該内側組織捕捉器具の長軸方向の先端でシートを捕捉し、
該外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の末端が長軸の近位方向に移動することにより、該複数の外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の先端が該組織と該シートを接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織又は組織同志を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
9.組織接合器であって、
マイクロ波を印加するための外部導体に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具、マイクロ波を印加するための中心導体に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具、並びに、複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒、を有し
該複数の外側組織捕捉器具は、該内側組織捕捉器具を囲むように配置されており、
該複数の外側組織捕捉器具及び該内側組織捕捉器具は、該収納筒が長軸の近位方向に移動することにより搬出され、
該内側組織捕捉器具の長軸先端でシートを組織に押し込む又は該内側組織捕捉器具の長軸方向の先端でシートを捕捉し、
該外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の末端が長軸の近位方向に移動することにより、該複数の外側組織捕捉器具及び/又は該内側組織捕捉器具の先端が該組織と該シートを接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、該シートと該組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定することを特徴とする組織接合器。
10.シート固定用である前項7~9のいずれか1に記載の組織接合器。
11.ヘルニアシート固定用である前項7~10のいずれか1に記載の組織接合器。
12.鏡視下手術用である前項8~11のいずれか1に記載の組織接合器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器並びに複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器は、鏡視下手術で容易に糸やビスを使用しないで組織とシートを固定することができる。
詳しくは、腹壁の内側に向けた直角の視野が必ずしも必要ではないので、外から覗く鏡視下手術では容易に接合することができる。さらに、糸で縫合した時やビスで固定した時と実質的に同じように組織とシートを固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の模式図。A:螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の外観模式図、B:螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の長軸(X)の先端をシート(11)で覆った組織(10:体壁)に長軸(X)の遠位方向に対して回転させながら長軸(X)の遠位方向に押しこんでいることを示す模式図、C:螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の長軸(X)の先端をシート(11)で覆った組織(10)に対して押し込んだことを示す模式図。
図2】螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の先端の模式図。
図3】複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)の模式図。A:複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)が複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)に格納されていることを示す複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)の模式図。B:内側組織捕捉器具(22)の長軸先端でシートを捕捉していることを示す複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)の模式図。C:複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)の先端が組織(10)とシート(11)を接触又は重ねていることを示す複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)の模式図。
図4】A:先端が先細りしている中心電極(2)、B:先端が先細りしておりかつ半割構造の中心電極(2)、C:半割構造している中心電極(2)。
図5】螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器の試作例。A:試作例の外観図、B:先端の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、以下で添付図面を参照しながら説明する。ただし、これらの図は本発明の内容を象徴的に示す一例であって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
(螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器)
本発明の組織接合器の1つである螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)は、少なくとも以下の構成を有する(参照:図1)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極(3)又はマイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)を含む螺旋形状電極(3)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している中心電極(2)又はマイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)を含む中心電極(2)。
なお、螺旋形状電極(3)は、長軸(X)の遠位方向に螺旋が伸長している。
中心電極(2)は、螺旋形状電極(3)の螺旋内腔に存在しかつ長軸(X)の遠位方向に伸長している(参照:図2)。
【0012】
本発明の組織接合器の1つである螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)は、好ましくは少なくとも以下の構成を有する(参照:図1)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極(3)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している中心電極(2)。
【0013】
本発明の組織接合器の1つである螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)は、より好ましくは少なくとも以下の構成を有する(参照:図1)。
マイクロ波を印加するための外部導体(8)に直接又は間接的に接続している螺旋形状電極(3)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)に直接又は間接的に接続している中心電極(2)。
【0014】
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(参照:図1A)の使用方法では、組織接合器(1)の長軸(X)の先端をシート(11)で覆った組織(10)に長軸(X)の遠位方向に対して回転させながら長軸(X)の遠位方向に押す(参照:図1B)ことによりシート(11)を組織(10)に押し込み(参照:図1C)、さらにマイクロ波によって、シート(11)と組織(10)を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定する。
なお、固定とは、組織とシートが固定されている状態を意味し、例えば、接合も含む。
なお、長軸方向の遠位及び近位への移動は、Xに対して実質的な平行移動だけでなく、略平行移動(例えば、Xに対して、1度~40度、1度~30、1度~20度、1度~10度、1~8度、1~5傾いた移動)も含む。
【0015】
(螺旋形状電極)
螺旋形状電極(3)は、1又は複数の螺旋を有し、中心電極(2)と共にシート(11)と組織(10)を接触又は重ねて、さらにマイクロ波を印加できる構造・形状であれば特に限定されないが、組織(10)に押し込むことを考慮すれば、先端が鋭利な形状である針形状、先細、円柱・角柱の平面、又は多角形であることが例示される。なお、マイクロ波を印加するための外部導体(8)を含む螺旋形状電極(3)の場合には、外部導体(8)の先端部位で絶縁体(9)から露出させる。
【0016】
螺旋形状電極(3)を長軸(X)の遠位又は近位方向に回転させて移動させる機構としては、従来の医療器具で使用されている機構を採用することができる。例えば、螺旋形状電極(3)の末端を長軸(X)に対して回転させながら長軸(X)の近位方向に引くことにより、螺旋形状電極(3)を長軸(X)の近位方向に回転させながら移動させることができる。一方、螺旋形状電極(3)の末端を長軸(X)に対して回転させながらの長軸(X)の遠位方向に押すことにより、螺旋形状電極(3)を長軸(X)の遠位方向に回転させながら移動させることができる。
【0017】
(中心電極)
中心電極(2)は、螺旋形状電極(3)と共にシート(11)と組織(10)を接触又は重ねて、さらにマイクロ波を印加できる構造・形状であれば特に限定されないが、組織(10)に押し込むことを考慮すれば、先端が針形状、円柱・角柱の平面、又は多角形であることが例示される。なお、マイクロ波を印加するための中心導体(7)を含む中心電極(2)の場合には、中心導体(7)の先端部位で絶縁体(9)から露出させる。
好ましくは、中心電極(2)の直径が先端に向かって漸次又は段階的に小さくなることを特徴とする。本発明者らは、このような先細りする中心電極(2)(先細構造、参照:図4A)は、凝固対象の組織とシートに効率的にマイクロ波を印加することができ、さらに非凝固対象組織の損傷を少なくすることができることを確認している。
また、中心電極(2)は、半割(柱を縦方向に、真ん中あたりで半分に切った柱の半分であって、柱の中心をマイクロ波伝送用中心導体(7)が走っており、半分に切った時、該中心導体が露出する構造をいう。製造方法は、中心導体(7)と外部導体(8)の間に絶縁層を設けた同軸構造にし、それを縦に切断し、中心導体(7)が縦長に露出した半割形状:参照:図4C)構造でも良い。本発明者らは、このような半割構造の中心電極(2)は、凝固対象組織にマイクロ波を印加することができ、さらに非凝固対象組織の損傷を少なくすることができることを確認している。
【0018】
中心電極(2)を長軸(X)の遠位又は近位方向に回転させて移動させる機構としては、従来の医療器具で使用されている機構を採用することができる。例えば、中心電極(2)の末端を長軸(X)に対して回転させながら長軸(X)の近位方向に引くことにより、中心電極(2)を長軸(X)の近位方向に回転させながら移動させることができる。一方、中心電極(2)の末端を長軸(X)に対して回転させながらの長軸(X)の遠位方向に押すことにより、中心電極(2)を長軸(X)の遠位方向に回転させながら移動させることができる。
【0019】
(螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器の好ましい態様)
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の好ましい態様及び使用方法は、図5で例示することができ、詳しくは以下の通りである。
中心電極(2)はマイクロ波を印加するための中心導体(7)と直接又は間接的に接続しており、螺旋形状電極(3)はマイクロ波を印加するための外部導体(8)と直接又は間接的に接続している。
加えて、組織接合器(1)は、グリップ(4)及びホルダー(6)を有する。なお、ホルダー(6)は、中心導体(7)及び外部導体(8)を含んでいる。
使用者・操作者(医師)が、自身の手でグリップ(4)を持って、シート(11)で覆った組織(10)に長軸(X)に対して回転させながら長軸(X)の遠位方向に押すことによりシート(11)を組織(10)に押し込み、さらにマイクロ波によって、シートと組織を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定する。
【0020】
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の別の態様及び使用方法は、以下の通りである。
中心電極(2)はマイクロ波を印加するための中心導体(7)と直接又は間接的に接続しており、螺旋形状電極(3)はマイクロ波を印加するための外部導体(8)と直接又は間接的に接続している。
加えて、組織接合器(1)は、回動子、グリップ(4)及びホルダー(6)を有する。なお、ホルダー(6)は、シャフト、中心導体(7)及び外部導体(8)を含んでいる。シャフトは、螺旋形状電極(3)及び/又は中心電極(2)の長軸(X)に対しての回転動作を与える。回動子は、ホルダーの末端に設置されており、さらにシャフトと直接又は間接的に接続されている。これにより、回動子を長軸(X)に対して回転させることにより、螺旋形状電極(3)及び/又は中心電極(2)の長軸(X)に対しての回転動作を与える。また、回動子を長軸(X)の遠位方向に押すことにより螺旋形状電極(3)及び/又は中心電極(2)を長軸(X)の遠位方向に移動させることができ、該回動子を長軸(X)の近位方向に引くことにより螺旋形状電極(3)及び/又は中心電極(2)を長軸(X)の近位方向に移動させることができる。
【0021】
(螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器の用途)
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)は、鏡視下手術でも容易に糸やビスを使用しないで組織とシートを接合することができるので、シートを組織に縫合することが必要な手術であるヘルニア、追加接合等に好ましく使用することができる。
ここで、ヘルニアは、特に限定されず、鼠径ヘルニア、臍ヘルニア、瘢痕ヘルニア等がある。
ここで、シートは、組織と接合できるシートであれば特に限定されないが、例えば、自体公知のヘルニアメッシュ(特に、医療用メッシュ)、補強シート、ゴアテックス等を例示できる。
【0022】
(複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器)
本発明の組織接合器の1つである複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)を有する組織接合器(20)は、少なくとも以下の構成を有する(参照:図3)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具(21)又はマイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)を含みかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具(21)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具(22)又はマイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)を含む内側組織捕捉器具(22)。
複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)。
なお、複数の外側組織捕捉器具(21)は、内側組織捕捉器具(22)を囲むように配置されている。ここで、囲むように配置されているとは、内側組織捕捉器具(22)が3以上の外側組織捕捉器具(21)で形成される面積(三角形、正方形、台形、四角形、5角形、6角形、7角形、8角形)の内部に設置されている、又は、2本の外側組織捕捉器具(21)で形成される線の周辺に設置されていることを意味する。
【0023】
本発明の組織接合器の1つである複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)を有する組織接合器(20)は、好ましくは少なくとも以下の構成を有する(参照:図3)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具(21)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)及び/若しくは外部導体(8)に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具(22)。
複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)。
【0024】
本発明の組織接合器の1つである複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)を有する組織接合器(20)は、より好ましくは少なくとも以下の構成を有する(参照:図3)。
マイクロ波を印加するための外部導体(8)に直接又は間接的に接続しておりかつ先端が組織を捕捉することができる形状を有する複数の外側組織捕捉器具(21)。
マイクロ波を印加するための中心導体(7)に直接又は間接的に接続している内側組織捕捉器具(22)。
複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)。
さらに、最も好ましくは、複数の外側組織捕捉器具(21)は二本である。
【0025】
本発明の複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(参照:図3)の使用方法では、複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)は、収納筒(23)が長軸(X)の近位方向に移動することにより搬出される(参照:図3B)。次に、内側組織捕捉器具(22)の長軸先端でシート(11)を組織(10)に押し込む又は内側組織捕捉器具(22)の長軸先端でシートを捕捉する(参照:図3B)。さらに、複数の外側組織捕捉器具(21)及び/又は内側組織捕捉器具(22)の末端が長軸(X)の近位方向に移動することにより、複数の外側組織捕捉器具(21)及び/又は内側組織捕捉器具(22)の先端が組織(10)とシート(11)を接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、シート(11)と組織(10)を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定する。
なお、長軸方向の遠位及び近位への移動は、Xに対して実質的な平行移動だけでなく、略平行移動(例えば、Xに対して、1度~40度、1度~30、1度~20度、1度~10度、1~8度、1~5傾いた移動)も含む。
【0026】
(複数の外側組織捕捉器具)
本発明の複数の外側組織捕捉器具(21)は、先端が組織(10)を捕捉することができる形状を有すれば特に限定されないが、フック形状(複数のフック形状も含む)、かえし形状(複数のかえし形状も含む)、釣り針形状(複数の釣り針形状も含む)、L型フックを例示することができる。さらに、複数の外側組織捕捉器具(21)は、形状記憶合金であることが好ましい。
【0027】
複数の外側組織捕捉器具(21)を長軸(X)の遠位又は近位方向に移動させる機構としては、従来の医療器具で使用されている機構を採用することができる。例えば、複数の外側組織捕捉器具(21)の末端を長軸(X)の近位方向に引くことにより、複数の外側組織捕捉器具(21)を長軸(X)の近位方向に移動させることができる。一方、複数の外側組織捕捉器具(21)の末端を長軸(X)の遠位方向に押すことにより、複数の外側組織捕捉器具(21)を長軸(X)の遠位方向に移動させることができる。
【0028】
(内側組織捕捉器具)
内側組織捕捉器具(22)は、先端が組織(10)を捕捉することを考慮すれば、特に限定されないが、フック形状(複数のフック形状も含む)、かえし形状(複数のかえし形状も含む)、釣り針形状(複数の釣り針形状も含む)、L型フックを例示することができる。さらに、内側組織捕捉器具(20)は、形状記憶合金であることが好ましい。また、内側組織捕捉器具(22)は、シート(11)を組織(10)に押し込むことを考慮すれば、先端が鋭利な形状である針形状、先細、円柱・角柱の平面、又は多角形であることが例示される。
なお、マイクロ波を印加するための中心導体(7)を含む内側組織捕捉器具(22)の場合には、中心導体(7)の先端部位で絶縁体(9)から露出させる。
好ましくは、内側組織捕捉器具(22)の直径が先端に向かって漸次又は段階的に小さくなることを特徴とする。本発明者らは、このような先細りする内側組織捕捉器具(22)(先細構造、参照:図4A)は、凝固対象の組織とシートに効率的にマイクロ波を印加することができ、さらに非凝固対象組織の損傷を少なくすることができることを確認している。
また、内側組織捕捉器具(22)は、半割(柱を縦方向に、真ん中あたりで半分に切った柱の半分であって、柱の中心をマイクロ波伝送用中心導体(7)が走っており、半分に切った時、該中心導体が露出する構造をいう。、製造方法は、中心導体(7)と外部導体(8)の間に絶縁層を設けた同軸構造にし、それを縦に切断し、中心導体(7)が縦長に露出した半割形状:参照:図4C)構造でも良い。本発明者らは、このような半割構造の内側組織捕捉器具(22)は、凝固対象組織にマイクロ波を印加することができ、さらに非凝固対象組織の損傷を少なくすることができることを確認している。
【0029】
内側組織捕捉器具(22)を長軸(X)の遠位又は近位方向に移動させる機構としては、従来の医療器具で使用されている機構を採用することができる。例えば、内側組織捕捉器具(22)の末端を長軸(X)の近位方向に引くことにより、内側組織捕捉器具(22)を長軸(X)の近位方向に移動させることができる。一方、内側組織捕捉器具(22)の末端を長軸(X)の遠位方向に押すことにより、内側組織捕捉器具(22)を長軸(X)の遠位方向に移動させることができる。
【0030】
(複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒)
本発明の複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)は、複数の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)を収納できる筒であれば特に限定されない。さらに、収納筒(23)が、長軸(X)の近位方向に移動することにより、複数の外側組織捕捉器具(21)及び/又は内側組織捕捉器具(22)が該筒から解放される。該収納筒は、捕捉具がポートを通す際に組織に引っかかることを防ぐ役割も有する。
【0031】
(複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器の好ましい態様)
本発明の複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)の好ましい態様及び使用方法は、詳しくは以下の通りである。
2本の外側組織捕捉器具(21)を有し、マイクロ波を印加するための外部導体(8)と直接又は間接的に接続している。さらに、2本の外側組織捕捉器具(21)の先端はフック形状である。
内側組織捕捉器具(22)を有し、マイクロ波を印加するための中心導体(7)と直接又は間接的に接続している。さらに、内側組織捕捉器具(22)の先端はフック形状である。
複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒(23)を有する。
加えて、組織接合器(20)は、グリップ、収納筒トリガー、複数の外側組織捕捉器具トリガー、内側組織捕捉器具トリガー及びホルダー(6)を有する。なお、ホルダー(6)は、中心導体(7)及び外部導体(8)を含んでいる。
使用者・操作者(医師)が、自身の手のひらでグリップを持ち、人差し指で収納筒トリガーを長軸(X)の近位方向に移動することにより(引くことにより)、収納筒(23)が長軸(X)の近位方向に移動することにより、2本の外側組織捕捉器具(21)及び内側組織捕捉器具(22)が収納筒(23)より開放される。
次に、内側組織捕捉器具トリガーを長軸(X)の近位方向に移動することにより(引くことにより)又は遠位方向に移動させることにより(押すことにより)、内側組織捕捉器具(22)が長軸(X)の近位方向又は遠位方向に移動して、これにより内側組織捕捉器具(22)の長軸先端でシート(11)を組織(10)に押し込む又は内側組織捕捉器具(22)の長軸先端でシートを捕捉する。
次に、複数の外側組織捕捉器具トリガーを長軸(X)の近位方向に移動することにより(引くことにより)、2本の外側組織捕捉器具(21)が長軸(X)の近位方向に移動して接合対象組織の断片(さらには、シート(11))を引っかけ、複数の外側組織捕捉器具(21)及び/又は内側組織捕捉器具(22)の先端が組織(10)とシート(11)を接触又は重ねて、さらにマイクロ波によって、シート(11)と組織(10)を凝固及び/又は固着して組織とシートを固定する。
【0032】
(複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器の用途)
本発明の複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器(20)は、鏡視下手術で容易に糸やビスを使用しないで組織とシートを固定することができるので、シートを組織に縫合することが必要な手術であるヘルニア、追加縫合、追加接合、開腹時の等に好ましく使用することができる。
【0033】
(組織接合器の構成)
本発明の組織接合器(1)、(20)は、同軸状のケーブルからなるマイクロ波伝送部でマイクロ波発生装置と接続されていても良い。
本発明において、中心導体(7)及び外部導体(8)は、いわゆる電気伝導体によって調製される。そして、伝導体は好適には、非磁性体材料で形成されていることが好ましい。非磁性体材料とは、具体例として、黄銅(銅+スズ)、リン青銅(銅+スズ+リン)、銅、亜鉛、金、銀合金等が挙げられる。絶縁体は、いわゆる耐熱性であり電気を通しにくい性質を持つ物質であれば特に限定はない。耐熱温度は、約120℃以上であればよく特に限定されない。
出力源と中心導体(7)を繋ぐ同軸ケーブルは、据え置き型発振器の場合、マイクロ波伝送部となり、チューブ状の軟性の屈曲可能なケーブルとすることができる(同軸ケーブルを包み込むチューブ)。携帯型発振器では電気コードとなる。
【0034】
本発明の組織接合器(1)、(20)は、出力源から同軸ケーブルを経て中心導体(7)によってマイクロ波が接合対象生体組織等に印加される。本発明において、好ましくは印加される電圧は1V~60Vである。60Vより高ければ、組織に及ぼす損傷が大きくなる可能性がある。また、1V~15Vは、細小血管の止血や近傍部熱損傷を避ける(脳外科)場合も考慮した条件である。
【実施例1】
【0035】
(螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器の試作器の効果の確認)
本発明の螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器(1)の試作器を使用して組織の接合効果を確認した。詳細は、以下の通りである。
【0036】
(試作器)
試作器を図5に示す。中心電極(2)はマイクロ波を印加するための中心導体(7)に接続しており、螺旋形状電極(3)はマイクロ波を印加するための外部導体(8)に接続している。
なお、試作器の直径は、約7 mmであったので、内視鏡下でも十分に使用できる。
【0037】
(使用例)
鏡視下手術において、ヘルニアシートを腹壁に設置する場合では、ヘルニア門の外周でシートを腹壁に試作器で押し付け、押し付けながら該試作器を回転させ、シートを組織にめり込ませる。シートが組織の中にめり込んだ状態でマイクロ波を照射して凝固固定する。さらに、この操作を、シートの周りに繰り返してシートを腹壁に固定する。
螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器の別の使用例として、該接合器の先端を開いた一方の創縁から反対側の創縁を通して押し付ければ、創閉鎖に使用できる。
【0038】
(接合効果の確認)
接合効果の確認のためにビーグル犬を使用した。該犬を全身麻酔下に開腹した。次に、腹壁にシート{Bardメッシュ(非吸収性)、メディコン社製品}を設置した。
さらに、試作器の螺旋形状電極及び中心電極の長軸先端を該シートで覆った組織に長軸に対して回転させながら長軸の遠位方向に押すことにより該シートを該組織に押し込み、さらに、マイクロ波(40W)を10秒印加(照射)して、組織とシートを凝固・固着して対象組織を固定(接合)した。
次に、接合した箇所を牽引して固着の強さを確認したところ、十分な接合力を確認した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明の組織接合器は、医療分野での外科的処置領域において、接合対象物である生体組織等にマイクロ波が印加されることで、シートと組織を凝固・固着して接合を達成することができる。特に、腹壁の内側に向けた直角の視野が必要ではないので、外から覗く鏡視下手術では容易に接合することができる。
したがって、本発明の組織接合器は、操作しやすく、組織接合を簡単に達成しうる手術器である。また、ミストや煙が出ず、止血能が極めて強く優れており、限られた空間での手術器としても適している。
【符号の説明】
【0040】
1:螺旋形状電極及び中心電極を有する組織接合器
2:中心電極
3:螺旋形状電極
4:グリップ
6:ホルダー
7: 中心導体
8: 外部導体
9: 絶縁体
10:組織
11:シート
20:複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を有する組織接合器
21:複数の外側組織捕捉器具
22:内側組織捕捉器具
23:複数の外側組織捕捉器具及び内側組織捕捉器具を格納する収納筒
X:組織接合器の長軸方向を示す。なお、矢印の方向は、組織接合器の遠位方向を示す。
図1
図2
図3
図4
図5