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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】分光測定装置及び分光測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/45 20060101AFI20221125BHJP
   G01J 3/36 20060101ALI20221125BHJP
   G01N 21/27 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
G01J3/45
G01J3/36
G01N21/27 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018112764
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019215262
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】304028346
【氏名又は名称】国立大学法人 香川大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石丸 伊知郎
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-058068(JP,A)
【文献】特開2012-181060(JP,A)
【文献】国際公開第2012/118079(WO,A1)
【文献】小島大輔,結像型ワンショットフーリエ分光イメージングによる高時間分解能計測,2011年度精密工学会春季大会学術講演会講演論文集,2011年,pp.1059-1060
【文献】Marja-Leena Junttila,Stationary Fourier-transform spectrometer,APPLIED OPTICS,1992年,Vol.31 No.21,pp.4106-4112
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
G01N 21/00-21/958
G01B 9/02-9/029
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 測定対象物の測定点から発せられた光を一つの平行光束に統合する統合光学系と、
b) 複数の画素が二次元的に配置された受光面を有し、該受光面上の光の強度分布を検出する検出器と、
c) 前記統合光学系で統合された平行光束を第1光束と第2光束に分割し、該第1光束と該第2光束を、それらの間に光路長差を付与しつつ前記受光面に向けて出射し、前記受光面の異なる二方向のそれぞれに複数画素分の幅を持つ領域に該第1光束と該第2光束の両方を重複させて入射させる位相シフタと、
d) 前記受光面における前記第1光束の入射領域と前記第2光束の入射領域が重複する領域の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えることを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記位相シフタが、前記平行光束が斜め方向から入射するように並んで配置された平面状の第1反射面及び平面状の第2反射面を有しており、
前記第1反射面に平行であって該第1反射面に入射する前記第1光束と直交する軸をx軸、該第1反射面に平行であってx軸に垂直な軸をy軸としたときに、前記第2反射面は、前記第1反射面をx軸周りに所定の角度回転させ、y軸周りに所定の角度回転させた仮想面に平行である
ことを特徴とする分光測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の分光測定装置において、
前記位相シフタが、平面状の光導入面と平面状の光導出面を有し該光導入面と該光導出面が互いに平行な第1透過部と、平面状の光導入面と平面状の光導出面を有し該光導入面に対して該光導出面が傾いている第2透過部とを備えており、前記第1透過部の光導入面と前記第2透過部の光導入面が同一面上に位置するように構成されていることを特徴とする分光測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれに記載の分光測定装置において、
前記検出器が二次元エリアセンサから成り、
前記処理部が、前記二次元エリアセンサの或るラインで検出される光の強度分布と、別のラインで検出される光の強度分布を光路長差を揃えて足し合わせることにより光の強度分布を合算し、合算された光の強度分布に基づきインターフェログラムを求めることを特徴とする分光測定装置。
【請求項5】
a) 測定対象物の測定点から発せられた光を統合光学系によって一つの平行光束に統合し、
b) 位相シフタによって、前記統合光学系から出射された平行光束を第1光束と第2光束に分割し、該第1光束と該第2光束を、それらの間に光路長差を付与しつつ検出器の複数の画素が二次元的に配置された受光面に向けて出射し、前記受光面の異なる二方向のそれぞれに複数画素分の幅を持つ領域に該第1光束と該第2光束の両方を重複させて入射させ、
c) 前記受光面における前記第1光束の入射領域と前記第2光束の入射領域の重複領域の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得することを特徴とする分光測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の分光特性を利用して該測定対象物の物性を定性的又は定量的に測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病や高脂血症等、様々な病気において、血液に含まれるグルコースやコレステロール等の生体成分の管理は、病気の予防や治療のために重要である。血液中の生体成分を測定するためには血液を採取しなければならない。ところが、血液を採取するためには、採血部位の消毒や採血器具の廃棄等の煩わしい処理が必要であるため、病気を予防する目的で生体成分を測定するための採血を日常的に行うことは敬遠される。そこで、血液を採取せずに生体成分を測定可能な、非侵襲の測定装置が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1及び特許文献2には、生体の被検部位に光を照射し、それにより被検部位の内部の生体成分から発せられる光(物体光)の分光特性を求め、該分光特性から生体成分を定性的、定量的に測定する分光測定装置が記載されている。
特許文献1に記載されている装置では、生体成分を光学的に構成する各輝点から発せられる透過光や拡散光、散乱光等の物体光は対物レンズによって一つの平行光束(物体光束)に統合された後、位相シフタである固定ミラーと可動ミラーに導かれる。固定ミラー及び可動ミラーのそれぞれで反射された物体光束は結像レンズに通され、その後、結像面上に集光し、干渉する。固定ミラーと可動ミラーは並んで配置されており、互いに平行な反射面を有している。可動ミラーは、ピエゾ素子等によりその反射面の法線方向に移動されるようになっており、該可動ミラーの移動量に応じた光路長差が固定ミラーで反射される物体光束と可動ミラーで反射される物体光束の間に生じる。したがって、可動ミラーの移動に伴い両物体光束の光路長差が変化して結像面上の干渉光の強度が変化し、いわゆるインターフェログラムが形成されるため、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性(スペクトル)を取得することができる。
【0004】
また、特許文献2に記載されている装置では、位相シフタが、並んで配置された、反射面の傾きが異なる2つのミラー(基準ミラー及び傾斜ミラー)から構成されている。この装置では、各輝点から発せられ、対物レンズによって一つに統合された物体光束は、基準ミラー及び傾斜ミラーに導かれた後、各ミラーの反射面で反射される。基準ミラーで反射された光(基準反射光)と傾斜ミラーで反射された光(傾斜反射光)は結像レンズを通して、前記基準反射光及び傾斜反射光の光軸とは異なる向きに延びる同一直線上に集光され、線状の干渉像を形成する。基準ミラーの反射面と傾斜ミラーの反射面の傾きが異なることから、物体光束の光軸と基準ミラー及び傾斜ミラーの各反射面とのなす角度の違いに応じた連続的な光路長差が基準反射光と傾斜反射光との間に生じる。したがって、線状の干渉像に沿った光強度変化を検出することによりインターフェログラムを取得することができる。また、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより物体光の分光特性を取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-309706号公報
【文献】特開2012-058068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
物体光の分光特性は生体成分の性質を反映していることから、特許文献1及び2に記載の装置を用いることにより、非侵襲で生体成分を定性的、定量的に求めることができる。ところが、特許文献1に記載されている装置において、正確な分光特性を取得するためには、高精度で且つ高い運動真直度で可動ミラーを駆動する必要があり、そのためには高精度ピエゾステージといった高額な駆動機構が必要となる。また、可動ミラーの駆動機構を有する分、装置が大形化する。
【0007】
一方、特許文献2に記載されている装置は、ミラーを駆動する機構が不要であるため、特許文献1に記載の装置でみられるような問題は生じない。しかしながら、特許文献2に記載の装置では、各輝点から発せられる物体光から1本の線状の干渉像を形成し、この干渉像に沿う光強度変化を検出することにより分光特性を求めている。したがって、波長分解能を高めるためには、干渉像の光強度変化を検出する素子の画素数を増やす必要があるが、そのためには、検出器の受光面や位相シフタ、対物レンズ等を大きくする必要があり、やはり、装置が大形化するという問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、装置を大きくすることなく、正確で且つ高波長分解能の分光特性を測定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る分光測定装置は、
a) 測定対象物の測定点から発せられた光を一つの平行光束に統合する統合光学系と、
b) 複数の画素が二次元的に配置された受光面を有し、該受光面上の光の強度分布を検出する検出器と、
c) 前記統合光学系で統合された平行光束を第1光束と第2光束に分割し、該第1光束と該第2光束を、それらの間に光路長差を付与しつつ前記受光面に向けて出射し、前記受光面の異なる二方向のそれぞれに複数画素分の幅を持つ領域に該第1光束と該第2光束の両方を重複させて入射させる位相シフタと、
d) 前記受光面における前記第1光束の入射領域と前記第2光束の入射領域が重複する領域の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得する処理部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
統合光学系は、1個の対物レンズ(コリメータレンズ)から構成したり、集光レンズと対物レンズ(コリメータレンズ)、或いは集光レンズ及び対物レンズと両レンズの共通の焦点位置に配置されたピンホールから構成したりすることができる。また、統合光学系として凹面鏡を用いることも可能である。
【0011】
上記構成の分光測定装置では、統合光学系から出射された平行光束は、第1光束及び第2光束に分割された後、検出器の受光面における第1光束の入射領域と第2光束の入射領域の少なくとも一部が重複した状態で、前記受光面に面状に入射する。このとき、第1光束と第2光束の間に所定の光路長差が付与されているため、両光束の入射領域が重複する領域(重複領域)には、第1光束と第2光束の干渉像が形成される。したがって、前記重複領域の光の強度分布を検出することにより、干渉像の強度分布、つまり測定点のインターフェログラムが取得され、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより測定点の分光特性を取得することができる。
【0012】
上記分光測定装置においては、前記位相シフタが、前記平行光束が斜め方向から入射するように並んで配置された平面状の第1反射面及び平面状の第2反射面を有しており、
前記第1反射面に対する前記平行光束の入射角と前記第2反射面に対する前記平行光束の入射角、及び前記第1反射面に対する前記平行光束の入射と前記第2反射面に対する前記平行光束の入射が、いずれも異なるように、前記第1反射面と前記第2反射面が構成されていることが好ましい。
【0013】
この構成においては、統合光学系から出射され、位相シフタの第1反射面と第2反射面に対して斜め方向から入射した平行光束は、各反射面によって第1光束及び第2光束として反射される。このとき、前記第1反射面と前記第2反射面は、上述した関係を有するため、第1反射面に対して第2反射面が傾いた状態にある。このため、第1光束の光軸と第2光束の光軸は平行ではなく、検出器の受光面に向かって進行するにつれて交差し、該受光面において両光束の入射領域の少なくとも一部が重複する。
【0014】
前記第1反射面に対して前記第2反射面をどのように傾けるかについて、以下に説明する。
前記第1反射面内の前記平行光束の入射軸と直交する軸をx軸、該x軸と直交する前記第1反射面内の軸をy軸としたとき、前記第1反射面を前記x軸を中心に所定角度回転させるとともに前記y軸を中心に所定角度回転させた仮想的な面を考える。この仮想面と平行な面であって、前記第1反射面と並んだ位置に第2反射面を設定する。仮想面が、第1反射面をx軸周りに回転していることによって、第1光束と第2光束の間に光路長差が付与され、前記仮想面が、第1反射面をy軸周りに回転していることによって、第1光束と第2光束は少なくとも一部が重複した状態で検出器の受光面に入射する。x軸周りに回転させる角度、y軸周りに回転させる角度は、統合光学系の光学条件、検出器の受光面の光強度分布を検出する検出素子の仕様(画素数、画素ピッチ等)等によって決定される。
【0015】
また、上記分光測定装置においては、位相シフタを、平面状の光導入面と平面状の光導出面を有する第1透過部と、平面状の光導入面と平面状の光導出面を有する第2透過部とを備えた透過型光学素子から構成し、第1透過部の光導出面から出射する第1光束の光軸に対して、第2透過部の光導出面から出射する第2光束の光軸が傾くように構成するようにしても良い。
【0016】
この構成では、統合光学系から出射された平行光束は第1透過部の光導入面と第2透過部の光導入面に入射し、それぞれの内部を通過した後、光導出面から第1光束及び第2光束として出射する。このとき、平行光束が、例えば第1及び第2透過部の光導入面に対して垂直に入射することとすると、第1光束及び第2光束は、各透過部の光導入面に対する光導出面の傾斜角度、透過型光学素子と外部(大気)の屈折率差に応じて決まる角度だけ屈折して光導出面から出射する。したがって、第1透過部及び第2透過部の光導入面に対する光導出面の傾斜角度をそれぞれ適切に設定することにより、第1光束と第2光束の間に光路長差を付与しつつ、両光束を、入射領域の少なくとも一部が重複した状態で検出器の受光面に入射させることができる。
【0017】
上記分光測定装置においては、位相シフタを、例えば前記第1透過部と前記第2透過部の光導入面が同一平面上に位置するように構成し、前記光導入面に対して前記第1透過部の光導出面及び前記第2透過部の光導出面が異なる角度で傾斜するように構成することにより、第1光束の光軸に対して第2光束の光軸を傾けることができる。この場合、第1透過部を、光導入面と光導出面が互いに平行な構成とし、第2透過部を、光導入面に対して光導出面が傾斜している構成とすると、比較的簡単に位相シフタを設計することができる。
また、第1透過部と第2透過部を屈折率が異なる別の透過型光学部材から作製し、第1透過部と大気の屈折率差と、第2透過部と大気の屈折率差の違いを利用して、第1光束の光軸に対して第2光束の光軸を傾けることもできる。
【0018】
上記分光測定装置では、位相シフタが透過型光学素子から構成されているため、統合光学系が対物レンズから構成されている場合には、統合光学系と位相シフタを一体化した一つの透過型光学素子から構成することができる。
【0019】
また、本発明においては、前記検出器を二次元エリアセンサとし、
前記処理部が、前記二次元エリアセンサの或るラインで検出される光の強度分布と、別のラインで検出される光の強度分布を光路長差を揃えて足し合わせることにより光の強度分布を合算し、合算された光の強度分布に基づきインターフェログラムを求めるように構成することができる。
【0020】
上記構成によれば、インターフェログラムを取得するためのラインを長くすることができ(つまり、前記ラインに対応する画素数を増やすことができ)、分光特性の波長分解能を高めることができる。
【0021】
なお、光の強度分布を合算する処理は、二次元エリアセンサの或るライン及び別のラインのそれぞれに含まれる全ての画素の出力信号を処理して各ラインの光の強度分布を求めてから行っても良く、各ラインに含まれる画素のうち特定の画素の出力信号を処理することにより行っても良い。
また、或るラインと別のラインに、光路長差が同じになる領域(同光路長差領域)が重複して存在する場合、いずれか一方のラインの同光路長差領域に含まれる画素の出力信号を、光の強度分布の算出に使用しないようにしても良く、両方のラインの同光路長差領域に含まれる画素の出力信号を積算し、平均値化した値を光の強度分布の算出に使用するようにしても良い。
【0022】
本発明は、測定対象物の測定点の分光特性を測定する方法にも適用できる。すなわち、本発明に係る分光測定方法は、
a) 測定対象物の測定点から発せられた光を統合光学系によって一つの平行光束に統合し、
b) 位相シフタによって、前記統合光学系から出射された平行光束を第1光束と第2光束に分割し、該第1光束と該第2光束を、それらの間に光路長差を付与しつつ検出器の複数の画素が二次元的に配置された受光面に向けて出射し、前記受光面の異なる二方向のそれぞれに複数画素分の幅を持つ領域に該第1光束と該第2光束の両方を重複させて入射させ、
c) 前記受光面における前記第1光束の入射領域と前記第2光束の入射領域の重複領域の光の強度分布に基づき前記測定点のインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することによりスペクトルを取得することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、測定点から発せられた光を一つの平行光束に統合した後、該平行光束を第1光束と第2光束に分割し、これら第1光束と第2光束の干渉現象を利用して測定点のインターフェログラムを求める。本発明では、特徴的な構成の位相シフタを用いることによって、第1光束と第2光束の間に光路長差を与えるとともに、第1光束と第2光束を、検出器の受光面に面状で入射させ、干渉させるようにしたため、広い面積の干渉像が得られる。したがって、装置を大きくすることなく、正確で且つ高波長分解能の分光特性を測定できる。また、従来の分光測定装置において干渉像を得るために用いていた結像レンズ等の光学部材が不要であるため、装置の小形化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る分光測定装置の第1実施形態の概略構成図。
図2】従来の分光測定装置の概略構成図。
図3】本発明に係る分光測定装置における基準反射光と傾斜反射光の干渉イメージを示す図。
図4】インターフェログラムを求めるための解析ラインの説明図。
図5】本発明に係る分光測定装置の測定感度を調べるために行った実験に使用した分光特性装置の概略構成図。
図6】カメラの観察画像。
図7】光源から出射されたCOレーザ光のインターフェログラム(a)、分光特性(b)。
図8】本発明に係る分光測定装置の測定感度を調べるために行った別の実験に使用した分光特性装置の概略構成図。
図9】カメラの観察画像。
図10】光源から出射された中赤外白色光のインターフェログラム(a)、分光特性(b)。
図11】或る一つのライン上の画素において検出された光強度分布、及びこの光強度分布から求められたインターフェログラム並びにスペクトルが示された表示画面の例。
図12図11の表示画面に示されているスペクトルの拡大図。
図13】或る一つのライン上の画素において検出された光強度分布と別のライン上の画素において検出された光強度分布を合算した光強度分布、及びこの合算した光強度分布から求められたインターフェログラム並びにスペクトルが示された表示画面の例。
図14図13の表示画面に示されているスペクトルの拡大図。
図15】本発明に係る分光測定装置の第2実施形態の概略構成図。
図16】第2実施形態の分光測定装置に用いられている光学素子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る分光測定装置について具体的に説明する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1(a)は、本発明に係る分光測定装置の第1の実施形態を示す概略構成図である。同図に示すように、この分光測定装置1は、対物レンズ(コリメータレンズ)10、基準ミラー21及び傾斜ミラー22を有する位相シフタ20、受光面を有する検出器40、検出器40の検出信号を処理する処理部50を備えている。基準ミラー21及び傾斜ミラー22はいずれも平面状の反射面を有している。傾斜ミラー22の反射面と基準ミラー21の反射面は平行ではなく、一方の反射面に対して他方の反射面が傾斜している。また、検出器40は、複数の画素が二次元配置されたCCDカメラ等の二次元エリアセンサから成る。
【0027】
上記構成の分光測定装置1では、図示しない光源から試料S(測定対象物)上の測定点SPに対して光が照射されることにより当該測定点SPから散乱光や蛍光発光等の光線群(物体光)が生じ、該物体光が対物レンズ10を通過すると、物体光は一つの平行光束(以下「物体光束」という)に統合されて、位相シフタ20の基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面にそれぞれ斜め方向から導入される。したがって、この実施形態では、対物レンズ10が統合光学系として機能する。基準ミラー21の反射面に対して、傾斜ミラー22の反射面は傾斜しており、両反射面は同一面上にない。このため、基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面に入射した物体光束は異なる方向に向かって反射される。以下、基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面で反射された物体光束をそれぞれ基準反射光及び傾斜反射光という。
【0028】
上記分光測定装置1では、基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面から出射された基準反射光及び傾斜反射光は、いずれも検出器40の受光面に面状に入射し、且つ、両反射光の入射領域が重複するように、基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面は設計されている。基準ミラー21の反射面と傾斜ミラー22の反射面の関係を説明する前に、従来の分光測定装置の構成を、図2を参照して説明する。
【0029】
図2(a)は、上記分光測定装置1の従来装置の概略構成図である。この分光測定装置100は、特許文献2に記載されている分光測定装置に相当する。同図に示すように、この分光測定装置100は、対物レンズ(コリメータレンズ)110、基準ミラー121及び傾斜ミラー122を有する位相シフタ120、結像レンズ(シリンドリ力ルレンズ)130、結像レンズ13の結像面となる位置に受光面を有する検出器140、検出器140の検出信号を処理する処理部(図示せず)を備えている。基準ミラー121及び傾斜ミラー122はいずれも平面状の反射面を有している。
【0030】
上記分光測定装置100においては、図示しない光源から試料S(測定対象物)上の線状の測定領域SLに対して光が照射されることにより当該測定領域SL内の各輝点から散乱光や蛍光発光等の光線群(物体光)が発せられると、該物体光は対物レンズ110を通過することによって一つの平行光束(物体光束)に統合された後、位相シフタ120の基準ミラー121及び傾斜ミラー122の各反射面に斜め方向から導入される。そして、基準ミラー121及び傾斜ミラー122の各反射面に導入された物体光束は、その入射角と同じ角度(反射角)で反射された後、結像レンズ130に向かう。ここでも、基準ミラー121及び傾斜ミラー122の各反射面で反射された物体光束をそれぞれ基準反射光及び傾斜反射光という。
【0031】
いま、基準ミラー121の反射面を規定する直交座標軸であるx軸及びy軸を図2(b)に示すように定義し、x軸及びy軸に直交する軸をz軸と定義する。そして、基準ミラー121の反射面に入射する物体光束の光軸(入射軸)とyz平面が平行になるように、対物レンズ110及び位相シフタ120の基準ミラー121を配置する。このような配置により、x軸は物体光束の入射軸と直交することになる。上記のように定義されたx軸に対して、基準ミラー121の反射面をx軸周りに所定角度θx回転させた仮想の面を考え、この仮想面と傾斜ミラー122の反射面が平行になるように該傾斜ミラー122を設置する。この結果、基準ミラー121の反射面に対して傾斜ミラー122の反射面がy軸方向に傾斜し、各反射面に対する物体光束の光学的な入射角度が異なることになるため、z軸と基準反射光の光軸のなす角度と、z軸と傾斜反射光の光軸のなす角度が異なることになる。
【0032】
具体的には、例えば、基準ミラー121の反射面に対する物体光束の入射角が45°であり、傾斜ミラー122の反射面のx軸周りの回転角θxがα°であるとき、傾斜ミラー122の反射面と物体光束の入射軸のなす角度は(45+α)°となり、傾斜ミラー122の反射面に対する物体光束の入射角は(45-α)°となる。このため、z軸と基準反射光の光軸のなす角度(これは、反射角に相当する。)は45°であるのに対して、z軸と傾斜反射光の光軸のなす角度は(45-2α)°となり、基準反射光の進行方向に対して傾斜反射光の進行方向がy軸方向に2α°ずれることになる。このずれ角度によって基準反射光と傾斜反射光の間に連続的な光路長差が生じる。
【0033】
ただし、基準ミラー121の反射面に対して傾斜ミラー122の反射面はy軸方向に傾斜しているのみであり、基準反射光と傾斜反射光は交わることがない。そこで、従来の分光測定装置100では、位相シフタ120と検出器140の間に結像レンズ130を配置している。基準反射光及び傾斜反射光は、結像レンズ130を通過することによって検出器140の受光面上であって測定領域SLと直交する直線L上に集光し、直線状の干渉像を形成する。したがって、直線状の干渉像に沿った光強度変化を測定することにより各輝点のインターフェログラムを取得することができ、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより各輝点の分光特性を取得することができる。
【0034】
これに対して、図1(b)は本実施形態に係る分光測定装置1における前記位相シフタ20の基準ミラー21と傾斜ミラー22の関係を示している。x軸、y軸及びz軸の定義、対物レンズ10及び基準ミラー21の配置は、分光測定装置100におけるそれらと同様である。
【0035】
分光測定装置1においては、基準ミラー21の反射面をx軸周りに所定角度θx回転させ、さらに、y軸周りに所定角度θy回転させた仮想の面を考え、この仮想面と傾斜ミラー22の反射面が平行になるように該傾斜ミラー22を設置する。この結果、基準ミラー21の反射面に対して傾斜ミラー22の反射面はy軸方向及びz軸方向に傾斜することになる。
【0036】
θx=α°、θy=β°とするとき、y軸方向の傾斜(x軸周りの回転)によって、基準反射光の進行方向に対して傾斜反射光の進行方向がy軸方向に2α°ずれ、このずれ角度によって基準反射光と傾斜反射光の間に光路長差が生じる。また、z軸方向の傾斜(y軸周りの回転)によって、傾斜反射光の進行方向がz軸方向に傾き、位相シフタ20からの所定の距離で傾斜反射光と基準反射光が交わる。位相シフタ20から両反射光が交わる箇所までの距離は、θy=β°の角度に応じて決まり、そのような箇所に検出器40の受光面が配置されている。
【0037】
これにより、分光測定装置1では、図1(a)に示すように基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面から出射された基準反射光及び傾斜反射光は、検出器40の受光面41に面状に入射し、各入射領域の一部が重複する。上述したように、基準反射光と傾斜反射光の間には光路長差が生じているため、基準反射光の入射領域と傾斜反射光の入射領域が重複する領域(重複領域DA)では、基準反射光と傾斜反射光の干渉像が形成される。したがって、この干渉像の光強度分布を検出することにより測定点SPのインターフェログラムを取得することができ、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより測定点SPの分光特性を取得することができる。
【0038】
次に、図3(a)~(d)を参照しつつ、検出器40の受光面に形成される干渉像について詳しく説明する。
測定点SPから生じた物体光は対物レンズ10を通過することにより一つの物体光束BLに統合された後、位相シフタ20の基準ミラー21及び傾斜ミラー22の各反射面に入射し、それぞれ基準反射光La及び傾斜反射光Lbとして出射される。なお、基準ミラー21と傾斜ミラー22には、それぞれ同量の物体光束BLが入射することとする。そして、基準反射光Laと傾斜反射光Lbは検出器40に向かい、その受光面41に、基準反射光Laの入射領域と傾斜反射光Lbの入射領域が重複した状態で入射し、重複領域DAに干渉像が形成される。
【0039】
検出器40の受光面41内の軸であって基準ミラー21と傾斜ミラー22が並ぶ方向(上下方向)に延びる軸をX軸、該X軸と直交する軸をY軸と定義すると、図3(b)及び(c)に示すように、傾斜反射光Lbはその波面が基準反射光Laの波面に対してX軸方向及びY軸方向の両方向に傾斜するため、重複領域DAでは、両反射光の光路長差がX軸方向及びY軸方向に沿って変化する。このため、重複領域DAにおいて光路長差が同じになる箇所を線で結ぶと、その線は、図3(d)に示すように、X軸及びY軸に対して傾斜する。
【0040】
そこで、分光測定装置1の処理部50は、検出器40である二次元エリアセンサの或るラインで検出される光の強度分布と、別のラインで検出される光の強度分布を、光路長差を揃えて足し合わせる処理を行う。具体的には、例えば図4に示すように、最下位にあるライン上の画素列P1で検出される干渉像の右端部の光路長差と、その画素列P1よりも4段上のライン上に位置する画素列P2で検出される干渉像の左端部の光路長差が同じである場合、画素列P1の右側に画素列P2を仮想的につなぎ合わせる。同様に、画素列P2の右側にそれよりも4段上に位置する画素列P3を仮想的につなぎ合わせ、画素列P3の右側にそれよりも4段上に位置する画素列P4を仮想的につなぎ合わせ、画素列P4の右側にそれよりも4段上に位置する画素列P5を仮想的につなぎ合わせて、解析ラインP(=P1+P2+P3+P4+P5)を得る。そして、解析ラインPに含まれる画素の出力値からインターフェログラムを求め、このインターフェログラムをフーリエ変換することにより分光特性(スペクトル)を取得する。
このような方法によれば、画素列P1の出力値からインターフェログラムを求める場合に比べて、インターフェログラムを求めるための画素数が多くなるため、広い波長範囲で且つ高い波長分解能で分光特性を取得することができる。
【0041】
以下、分光測定装置1を用いて分光特性を測定した実験結果について説明する。
【0042】
<実験1>
この実験では、図5に示すように、光源から発せられた光を集光レンズ、ピンホールに順に通過させ、対物レンズによって一つの平行光束に統合して位相シフタに導入した後、その反射光(基準反射光及び傾斜反射光)を検出器としてのカメラに入射させた。実験に用いた光源、集光レンズ、ピンホール、対物レンズ、カメラの仕様は以下の通りである。
光源:中心波長が10.6μmのレーザ光を出力するCOレーザ(型式:RF4、アクセスレーザ社(Access Laser Company)製)
集光レンズ:焦点距離f=100mm
ピンホール:直径50μm
対物レンズ:焦点距離f=200mm
カメラ:320×240画素赤外線カメラモジュールC200V(日本アビオニクス株式会社製)
【0043】
図6はカメラの撮影画像である。同図から分かるように、この実験では明確な干渉縞が確認された。次に、カメラの出力値から光強度分布を求め、この強度分布に基づきインターフェログラムを取得するとともに、インターフェログラムをフーリエ変換して分光特性を求めた。その結果を図7の(a)及び(b)に示す。なお、ここでは、カメラが有する画素(320×240画素)のうち、或る一つのライン上の画素の出力値から光強度分布を求めた。
図7(b)に示すように、本実験では、COレーザが出力するレーザ光の中心波長である10.6μmに明確なピークを有するスペクトルが取得された。このことから、本実験に用いた分光測定装置により、レーザ光の分光特性を精度良く取得できることが分かった。
【0044】
<実験2>
この実験では、図8に示すように、光源から発せられた光を集光レンズ、ピンホールに順に通過させ、対物レンズによって一つの平行光束に統合して位相シフタに導入した後、その反射光(基準反射光及び傾斜反射光)をカメラに入射させた。実験に用いた光源、集光レンズ、ピンホール、対物レンズ、カメラは以下の通りである。
光源:フィラメント式中赤外白色光源(Kanthal Filament IR Source, 型式:EK8620、HELIOWORKS社製)
集光レンズ:焦点距離f=100mm
ピンホール:直径1mm
対物レンズ:焦点距離f=25mm
カメラ:320×240画素赤外線カメラモジュールC200V(日本アビオニクス株式会社)
【0045】
図9はカメラの撮影画像である。同図から分かるように、この実験では、上記実験1で得られた撮影画像ほど明確ではないものの、干渉縞が確認された。次に、カメラの出力値から光強度分布を求め、この強度分布に基づきインターフェログラムを取得するとともに、インターフェログラムをフーリエ変換して分光特性を求めた。その結果を図10の(a)及び(b)に示す。なお、ここでは、カメラが有する画素(320×240画素)のうち、或る一つのライン上の画素の出力値から光強度分布を求めた。
図10(a)及び(b)と図7(a)及び(b)との比較から分かるように、本実験では、インターフェログラム及びプランクの法則に従った分光特性を取得することができた。このことから、中赤外領域における分光測定の可能性が実証された。
【0046】
<実験3>
次に、複数のライン上の画素の出力値を足し合わせる処理(合算処理)によって、分光特性の波長分解能が向上することを検証するための実験を行った。この実験に使用した分光測定装置の構成、光学条件は実験1と同じである。
【0047】
図11は、足し合わせる前、つまり、1ライン上の画素の出力値から得られたインターフェログラム及び分光特性が示された表示画面を、図12は、図11に示されている分光特性の拡大図を示している。なお、図11の左上の領域に表示されている画像は、カメラの撮影画像である。
【0048】
一方、図13は、或る1つのライン上の画素の出力値と別の1つのライン上の画その出力値を足し合わせることにより得られた光強度分布から求めたインターフェログラム及び分光特性が示された表示画面を、図14は、図13に示されている分光特性の拡大図を示している。なお、図13の左上の領域に示されている画像は、図11の左上領域に表示されている撮影画像の縮小画像である。
【0049】
図12及び図14の比較から分かるように、どちらの分光特性も同じ波長範囲にピークが現れたものの、複数のライン上の画素の出力値を足し合わせる処理によって、足し合わせる前は62nmであったピークの半値幅が29nmになった。このことから、合算処理によって、高い波長分解能が実現できることが実証された。
【0050】
[第2の実施形態]
上述した分光測定装置1は、位相シフタ20をミラーから構成した例であるが、これに代えて透過光学部材から位相シフタを構成することも可能である。
すなわち、図15(a)は本発明に係る分光測定装置の第2の実施形態を示している。この実施形態では、分光測定装置1Aは、透過型光学素子80、受光面41を有する検出器40、検出器40の検出信号を処理する処理部50を備えている。試料Sの測定点SPから発せられた物体光は、透過型光学素子80に入射して平行光束(物体光束)に統合された後、第1光束と第2光束に分割され、それぞれ検出器40の受光面41に面状に入射する。
【0051】
図15(b)に示すように、透過型光学素子80は、試料側の面である凸面部81と、その反対側の面である位相シフタ部82とから構成され、位相シフタ部82は、さらに第1透過部82Aとその上の第2透過部82Bから構成される。凸面部81は、第1の実施形態における対物レンズ10に相当し、測定点SPから発せられた物体光を平行光束に統合する統合光学部材として機能する。一方、位相シフタ部82は、本発明の位相シフタとして機能する。
【0052】
図16(a)は、透過型光学素子80を位相シフタ部82側から見た図、(b)は図16(a)のb-b’線に沿う断面図、(c)は図16(a)のc-c’線に沿う断面を上から見た図、(d)は図16(a)のd-d’線に沿う断面を下から見た図である。ここでは、図16(a)における上下左右を、位相シフタ部82の上下左右とする。
これらの図から明らかなように、第1透過部82Aの表面と第2透過部82Bの表面は、それぞれ、位相シフタ部82の上下方向の中心線CLから下方及び上方に向かって凸面部81側に傾斜している。これにより、第1透過部82A及び第2透過部82Bは、中心線CLから下方及び上方に向かって厚みが徐々に小さくなる。ただし、第1透過部82Aの表面と第2透過部82Bの表面の傾斜角度はわずかに異なっている。一方、第1透過部82Aの厚みは左右方向で一定であるのに対して、第2透過部82Bの厚みは、左側の方が右側よりも大きくなっている。つまり、第2透過部82Bの表面は、中心線CLから上方に向かって傾斜しているとともに、左側から右側に向かって傾斜している。
【0053】
上記構成により、透過型光学素子80の凸面部81に入射した物体光は、凸面部81を通過することにより平行光束(物体光束)となり、さらに、第1透過部82A及び第2透過部82Bを通過し、それらの表面から出射する際に、各表面の傾斜角度、物体光束の波長、及び透過型光学素子80と外部(空気)の屈折率差に応じた角度で屈折する。したがって、透過型光学素子80の材質、第1透過部82A及び第2透過部82Bの表面の傾斜角度、透過型光学素子80から検出器40の受光面41までの距離等を適切に選択することにより、第1透過部82A及び第2透過部82Bから出射した第1光束及び第2光束を、受光面41において各光束の入射領域の少なくとも一部が重複した状態で、該受光面41に入射させることができる。
【0054】
また、第1透過部82Aの表面に対する第2透過部82Bの表面の傾斜角度は、測定波長範囲、波長分解能等の光学条件に基づき設計される。
例えば、透過型光学素子80の直径Dが6mm、透過型光学素子80から検出器40の受光面までの距離Lが20mm、検出器40の画素数が80×80、上下方向及び左右方向の画素ピッチが共に34μm、測定波長範囲が8~14μmとし、第1透過部82Aの表面に対する第2透過部82Bの表面の傾斜角(水平方向の傾斜角度)をθ、第1透過部82A及び第2透過部82Bの表面のなす角度(垂直方向の傾斜角度)をφとすると、角度θを1.12deg、角度φを177.15degとすることにより、第1光束及び第2光束は、受光面41において各光束の入射領域の少なくとも一部が重複した状態で、該受光面41に入射する。
【0055】
本発明は上記した例に限らず、適宜の変更が可能である。
第1の実施形態では、基準ミラー121の反射面に入射する物体光束の光軸とyz平面が平行になるように構成したが、基準ミラー121を傾斜ミラー122側にやや傾けても良い。つまり、物体光束の光軸を挟んで基準ミラー121と傾斜ミラー122の両方が前記光軸側に傾くように、対物レンズ10、基準ミラー121及び傾斜ミラー122を配置しても良い。
第2の実施形態では、統合光学系と位相シフタと一つの光学素子から構成したが、別々の光学素子から構成することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
1、1A…分光測定装置
10…対物レンズ(コリメータレンズ)
20…位相シフタ
21…基準ミラー(第1反射面)
22…傾斜ミラー(第2反射面)
40…検出器
41…受光面
50…処理部
80…透過型光学素子
81…凸面部
82…位相シフタ部
82A…第1透過部
82B…第2透過部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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