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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/3745 20110101AFI20221125BHJP
   H04N 5/341 20110101ALI20221125BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H04N5/3745
H04N5/341
A61B5/11 120
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018114834
(22)【出願日】2018-06-15
(65)【公開番号】P2019220761
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25~30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム(精神的価値が成長する感性イノベーション拠点)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】川人 祥二
【審査官】西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054632(JP,A)
【文献】特開2012-165851(JP,A)
【文献】特開2010-040594(JP,A)
【文献】特開2017-104491(JP,A)
【文献】米国特許第05954644(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/3745
H04N 5/341
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の脈動に関する情報を得る撮像装置であって、
前記被験者に対して可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する測定光の照射と、前記被験者への前記測定光の照射の停止と、を相互に切替可能な光源と、
光に応答して電荷を生成するフォトダイオードを有し、前記測定光を照射したときの前記被験者を含む第1画像に関する第1信号と、前記測定光の照射を停止したときの前記被験者を含む第2画像に関する第2信号と、を得る信号取得部と、
前記光源及び前記信号取得部の動作を制御する制御部と、
前記第1信号に基づく前記第1画像及び前記第2信号に基づく前記第2画像の差分を利用して前記脈動に関する情報を得る演算部と、を備え、
前記信号取得部は、
N行M列(M及びNは2以上の整数)に配置され、受けた光に対応する電荷を生成する複数の画素を含む画素アレイ部と、
前記画素アレイ部を制御するとともに、前記測定光を照射したときに前記画素が受けた光に応じて生じた前記電荷に基づいて、前記第1信号を形成すると共に、前記測定光の照射を停止したときに前記画素が受けた光に応じて生じた前記電荷に基づいて、前記第2信号を形成する周辺回路部と、を有し、
前記画素は、
前記フォトダイオードと、
前記電荷を蓄積する第1電荷蓄積部及び第2電荷蓄積部と、
前記電荷を前記第1電荷蓄積部及び前記第2電荷蓄積部に選択的に転送する電荷振り分け部と、を含み、
前記光源は、前記被験者に対して前記測定光である第1測定光の照射と、前記第1測定光とは異なる可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する第2測定光の照射と、前記被験者への前記第1測定光及び前記第2測定光の照射の停止と、を相互に切替可能であり、
前記制御部は、
第1の前記画素における前記電荷振り分け部を制御することにより、前記第1測定光の照射と同期するように、前記フォトダイオードから前記第1電荷蓄積部に前記電荷を転送させ、前記第1測定光及び前記第2測定光の照射の停止と同期するように、前記フォトダイオードから前記第2電荷蓄積部に前記電荷を転送させ、
第1の前記画素に隣接する第2の前記画素における前記電荷振り分け部を制御することにより、前記第2測定光の照射と同期するように、前記フォトダイオードから前記第1電荷蓄積部に前記電荷を転送させ、前記第1測定光及び前記第2測定光の照射の停止と同期するように、前記フォトダイオードから前記第2電荷蓄積部に前記電荷を転送させる動作と、を行う、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、生体状態を検出する装置を開示する。この生体状態検出装置は、生体状態としての脈拍と体動とを検出する。また、生体状態検出装置は、発光素子と受光素子とを備えており、生体に対して発光素子から光を照射すると共に、生体において反射した成分を含む光を受光素子が捉える。受光素子が捉えた光に基づいて、生体状態を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-264302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、脈拍といった生体情報を非接触で検出可能なセンサ技術が検討されている。当該技術として、例えば、特許文献1のように光学的に生体情報を得る技術が知られている。センサを被験者に接触させない場合には、センサと被験者との間には空間が存在する。従って、センサには、被験者の生体情報を含む光成分の他に、生体情報を含まない光成分、いわゆる背景光が入射し易くなる。この背景光は、ノイズとなり得る。
【0005】
本発明は、生体情報の精度を向上可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、被験者の脈動に関する情報を得る撮像装置であって、被験者に対して可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する測定光の照射と、被験者への測定光の照射の停止と、を相互に切替可能な光源と、光に応答して電荷を生成するフォトダイオードを有し、測定光を照射したときの被験者を含む第1画像に関する第1信号と、測定光の照射を停止したときの被験者を含む第2画像に関する第2信号と、を得る信号取得部と、光源及び信号取得部の動作を制御する制御部と、第1信号に基づく第1画像及び第2信号に基づく第2画像の差分を利用して脈動に関する情報を得る演算部と、を備え、信号取得部は、N行M列(M及びNは2以上の整数)に配置され、受けた光に対応する電荷を生成する複数の画素を含む画素アレイ部と、画素アレイ部を制御するとともに、測定光を照射したときに画素が受けた光に応じて生じた電荷に基づいて、第1信号を形成すると共に、測定光の照射を停止したときに画素が受けた光に応じて生じた電荷に基づいて、第2信号を形成する周辺回路部と、を有する。
【0007】
上記の撮像装置によれば、演算部において第1画像と第2画像の差分を利用して、脈動に関する情報を得る。この差分によれば、第1画像に含まれるノイズ成分としての背景光の影響が低減される。従って、生体情報である脈動に関する情報の精度を向上させることができる。
【0008】
一形態において、画素は、フォトダイオードと、電荷を蓄積する第1電荷蓄積部及び第2電荷蓄積部と、電荷を第1電荷蓄積部及び第2電荷蓄積部に選択的に転送する電荷振り分け部と、を含み、制御部は、電荷振り分け部を制御することにより、測定光の照射と同期するように、フォトダイオードから第1電荷蓄積部に電荷を転送させ、測定光の照射の停止と同期するように、フォトダイオードから第2電荷蓄積部に電荷を転送させてもよい。この構成によれば、第1及び第2信号を好適に得ることができる。
【0009】
一形態において、画素は、電荷を受けるドレインをさらに含み、制御部は、電荷振り分け部を制御することにより、フォトダイオードから第1電荷蓄積部及び第2電荷蓄積部に電荷を転送するとき以外に、フォトダイオードからドレインに電荷を転送させ、測定光を照射する期間は、フォトダイオードからドレインに電荷を転送させる期間よりも短くてもよい。この構成によれば、フォトダイオードから第1及び第2電荷蓄積部に電荷を転送している期間中以外に、フォトダイオードから新たな電荷が第1及び第2電荷蓄積部に転送されることがない。従って、第1及び第2信号のノイズ成分の増加を抑制できる。さらに、測定光を照射する期間がドレインに電荷を転送させる期間よりも短いので、測定光を照射する期間に得た信号におけるS/N比の低下を抑制できる。
【0010】
一形態において、制御部は、それぞれの画素において1回の第1電荷蓄積部への転送と1回の第2電荷蓄積部への転送とが行われるたびに、選択する行を変更しながら、画素から行ごとに電荷を出力させてもよい。この動作によれば、第1及び第2信号を好適に得ることができる。
【0011】
一形態において、制御部は、それぞれの画素において複数回の第1電荷蓄積部への転送と複数回の第2電荷蓄積部への転送とが行われた後に、選択する行を変更しながら、画素から行ごとに電荷を出力させてもよい。この動作によっても、第1及び第2信号を好適に得ることができる。
【0012】
一形態において、光源は、被験者に対して測定光である第1測定光の照射と、第1測定光とは異なる可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する第2測定光の照射と、被験者への第1測定光及び第2測定光の照射の停止と、を相互に切替可能であり、画素は、電荷を蓄積する第3電荷蓄積部をさらに含み、制御部は、電荷振り分け部を制御することにより、第1測定光の照射と同期するように、フォトダイオードから第1電荷蓄積部に電荷を転送させ、第2測定光の照射と同期するように、フォトダイオードから第3電荷蓄積部に電荷を転送させ、第1測定光及び第2測定光の照射の停止と同期するように、フォトダイオードから第2電荷蓄積部に電荷を転送させてもよい。この構成によれば、互いに異なる2つの測定光を照射して2種の画像を得ることができる。従って、脈動に関する取得可能な情報の種類を増加させることができる。
【0013】
一形態において、光源は、被験者に対して測定光である第1測定光の照射と、第1測定光とは異なる可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する第2測定光の照射と、被験者への第1測定光及び第2測定光の照射の停止と、を相互に切替可能であり、制御部は、第1の画素における電荷振り分け部を制御することにより、第1測定光の照射と同期するように、フォトダイオードから第1電荷蓄積部に電荷を転送させ、第1測定光及び第2測定光の照射の停止と同期するように、フォトダイオードから第2電荷蓄積部に電荷を転送させ、第1の画素に隣接する第2の画素における電荷振り分け部を制御することにより、第2測定光の照射と同期するように、フォトダイオードから第1電荷蓄積部に電荷を転送させ、第1測定光及び第2測定光の照射の停止と同期するように、フォトダイオードから第2電荷蓄積部に電荷を転送させてもよい。この構成によれば、簡易な画素構成によって、互いに異なる2つの測定光を照射して2種の画像を得ることができる。従って、脈動に関する取得可能な情報の種類を増加させることができる。
【0014】
一形態において、制御部は、フォトダイオードから第1電荷蓄積部に電荷を転送させるとき、測定光の照射を停止させた後に、第1電荷蓄積部への転送を停止してもよい。この動作によれば、測定光が照射されている被験者に起因する光を確実に捉えることができる。
【0015】
一形態において、演算部は、脈動に関する情報として、単位時間あたりの拍動数を得てもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生体情報の精度を向上可能な撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1に示す撮像装置が備える信号取得部の構成を示す図である。
図3図3は、図2に示す信号取得部が備える画素の接続構成を示す図である。
図4図4は、図2に示す信号取得部が備える画素の構成を示す図である。
図5図5は、第1実施形態に係る撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
図6図6は、第2実施形態に係る撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
図7図7は、第3実施形態に係る撮像装置の構成を示す図である。
図8図8は、図7に示す信号取得部が備える画素の構成を示す図である。
図9図9は、第3実施形態に係る撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
図10図10は、第4実施形態に係る撮像装置の露光動作及び転送動作を示すタイミングチャートである。
図11図11の(a)部は変形例1に係る撮像装置の動作を示すタイミングチャートであり、図11の(b)部は変形例2に係る撮像装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
〔撮像装置〕
図1に示すように、撮像装置1は、被験者100の脈動に関する情報を得る。脈動に関する情報とは、例えば、脈拍数、脈拍変動及び血圧などを含む。撮像装置1は、被験者100に対して離間して設置される。例えば、撮像装置1は、被験者100の身体に取り付けるものではなく、被験者100との間に視認可能な物理的な空間を介して設置されるものである。
【0020】
撮像装置1は、光源2と、信号取得部3と、制御部4と、演算部6と、を有する。撮像装置1は、光源2から可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する測定光Lを被験者100に向けて出射する。例えば、測定光Lの波長は、870ナノメートルである。従って、測定光Lは、可視光より長い波長帯域であるので、測定光Lの照射を被験者100が認識することはない。被験者100に照射された測定光Lは、被験者100の脈動の状態に応じて、吸収及び反射される。信号取得部3は、制御部4によって動作させられて、測定光Lを受けた被験者100の画像を得る。そして、演算部6は、当該画像を用いて脈動に関する情報を得る。例えば、画像が含む信号強度は、周期的に変化する。この周期的な変化の周期は、脈拍数に対応する。
【0021】
〔光源〕
光源2は、上述したように、可視光領域又は近赤外光領域の波長を有する測定光Lを出射する。なお、測定光Lの波長は、当該数値に限定されず、測定対象の特性や測定パラメータの特性などに応じて適宜選択してよい。光源2は、制御部4によって測定光Lの出射と、その停止とを相互に切替可能に制御される。つまり、光源2は、撮像装置1の動作中、常に測定光Lを照射しておらず、照射と停止とを切り替えている。この照射と停止とを繰り返す動作を、「点滅動作」と呼ぶ。光源2の点滅動作は、制御部4から提供される制御信号によって制御される。この点滅動作は、後述する信号取得部3の動作と同期している。
【0022】
〔信号取得部〕
信号取得部3は、被験者100の像を得る、いわゆる画像取得部としてのカメラである。信号取得部3は、制御部4に接続されて、制御部4から提供される制御信号に応じて動作する。ここでいう動作とは、例えば、露光動作及び転送動作を含む。また、信号取得部3は、演算部6に接続されて、第1信号及び第2信号を演算部6に提供する。この第1信号及び第2信号の形式は、特に制限はない。
【0023】
〔制御部〕
上述したように、光源2の動作と信号取得部3の動作とは同期する。そこで、制御部4は、これらの同期動作のための制御信号を生成し、光源2及び信号取得部3に提供する。同期動作によれば、測定光Lを照射したときに信号取得部3によって第1信号を得るとともに、測定光Lを照射しないときに信号取得部3によって第2信号を得る。つまり、同期とは、測定光Lの照射と信号取得部3の露光とのタイミングを合わせる動作と、測定光Lの照射の停止と信号取得部3の露光とのタイミングを合わせる動作と、を少なくとも含む。制御部4の具体的な動作は、図5などに示すタイミングチャートによって示されるが、制御部4のさらに詳細な説明は、後述する。
【0024】
〔演算部〕
演算部6は、信号取得部3から提供された信号を利用して、脈動に関する情報を得る。
例えば演算部6は、第1信号に基づいて複数の画像G1を得ると共に、第2信号に基づいて複数の画像G2を得る。次に、演算部6は、複数の差分画像GSを得た後に、当該差分画像GSを利用して脈動に関する情報(グラフBS)を得る。
【0025】
ここで、第1信号には、真の信号成分に加えて、ノイズである信号成分も含む。ノイズ成分には、例えば、背景光に起因する成分があり得る。そうすると、測定光Lを照射しないときに得た第2信号は、真の信号成分を含まず、ノイズ成分を含む。従って、第1信号と第2信号との差分を得ることにより、ノイズ成分を差し引くことができる。従って、演算部6は、ノイズ成分が低減され、良好なS/N比を有する信号を得ることが可能である。その結果、脈動に関する情報の精度も向上させることができる。
【0026】
〔信号取得部〕
図2に示すように、信号取得部3は、画素アレイ部7と周辺回路部8とを有する。画素アレイ部7及び周辺回路部8は、同一の半導体チップ上に集積化している。画素アレイ部7は、2次元マトリクス状に配列された、複数の画素X(i、j)を有する。ここで、i=1~m;j=1~n:m,nはそれぞれ整数である。画素アレイ部7は、方形状の撮像領域を構成する。画素アレイ部7の上辺部には、水平走査回路9Aが設けられている。画素アレイ部7の下辺部には、水平走査回路9Bが設けられている。画素アレイ部7の左辺部には、垂直走査回路11が設けられている。水平走査回路9A、9B及び垂直走査回路11は、制御部4に接続されており、制御部4から受ける制御信号を利用して画素Xを駆動する。
【0027】
つまり、水平走査回路9A、9B及び垂直走査回路11によって、画素アレイ部7内の画素Xが順次走査される。その結果、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される。撮像装置1は、各画素Xを行ごとに垂直方向へ走査する。その結果、画素Xから出力される信号は、各画素の行ごとの画素信号を各画素の列ごとに設けられた垂直出力信号線B1、B2を介して読み出される。各画素Xからの信号の読み出しは、おおむね通常のCMOSイメージセンサと同様である。
【0028】
図3に示すように、画素Xは、複数の信号線を介して互いに接続されている。複数の信号線は、リセット信号線と、転送信号線と、ドレイン信号線と、振り分け信号線と、を含む。また、画素Xは、選択信号線を介して互いに接続されている。選択信号線は、画素Xの読み出しバッファアンプA1、A2に接続されている。
【0029】
図2に示すように、画素アレイ部7の一方の出力側(上辺部)には、信号処理部12Aが設けられている。また、画素アレイ部7の他方の出力側(下辺部)には、信号処理部12Bが設けられている。信号処理部12A、12Bは、例えば、アナログデジタル変換処理を行う。つまり、信号処理部12A、12Bは、それぞれ列ごとに設けられたAD変換回路を有する。具体的には、信号処理部12A、12Bは、折り畳み積分型AD変換回路14と、巡回型AD変換回路16と、をそれぞれ有する。そして、信号処理部12A、12Bは、演算部6に接続されており、演算部6にデジタル信号(第1信号、第2信号)を提供する。
【0030】
図4は、画素Xの構成を示す図である。画素Xは、光検出部Dと、読み出しバッファアンプA1と、読み出しバッファアンプA2と、を有する。光検出部Dは、光を受けて電荷を発生させる。当該電荷は、浮遊拡散部28と読み出しバッファアンプA1、A2とを介して対応する電圧として信号処理部12A、12Bにそれぞれ出力される。
【0031】
光検出部Dは、フォトダイオードPDと、電荷転送部17と、を有する。光検出部Dは、本件発明者らが開発したラテラル電界制御電荷変調素子(LEFM : Lateral Electric Field controlled charge Modulator)の原理に基づく構造を有する。ラテラル電界制御電荷変調素子は、電荷輸送路の電界制御を、その側面に設けた複数のゲートによる横方向電界により行い、高速電子輸送制御を行う。
【0032】
フォトダイオードPDは、開口部APを介して受けた光に応じた電荷を発生させる。当該電荷は、電荷転送部17に提供される。フォトダイオードPDは、例えば870ナノメートルの波長を有する光に応じて電荷を生成する。なお、フォトダイオードPDは、検出の対象となる波長の光に対応して電荷を生成できればよい。
【0033】
電荷転送部17は、フォトダイオードPDから提供された電荷を受ける。電荷転送部17は、当該電荷を一時的に蓄積し、読み出しバッファアンプA1又は読み出しバッファアンプA2に提供する。電荷転送部17は、電荷収集領域18と、ドレイン19と、電荷振り分け部21と、電荷処理部22A、22Bと、を有する。
【0034】
電荷収集領域18は、フォトダイオードPDにおいて生じた電荷を収集する。そして、電荷振り分け部21は、収集された電荷を電荷処理部22A、22B及びドレイン19のいずれかに転送する。そして、電荷処理部22A、22Bは、転送された電荷に応じた出力を読み出しバッファアンプA1、A2に提供する。
【0035】
ドレイン19には、電源VDDが接続されている。フォトダイオードPDが光を受けている期間は、電荷が発生し続ける。一方、電荷処理部22A、22Bにおいて、電荷に対する所定の処理が行われている間には、電荷処理部22A、22Bへの電荷の転送が禁止される。そこで、電荷処理部22A、22Bへの電荷の転送が禁止される期間に発生した電荷を、ドレイン19が受け入れる。つまり、ドレイン19が電荷を受け入れている期間は、電荷処理部22A、22Bに電荷は蓄積されない。
【0036】
電荷振り分け部21は、光源2の点滅動作に応じて、電荷を振り分ける。電荷振り分け部21は、振り分け電極24A、24Bと、ドレインゲート電極25と、を有する。振り分け電極24A、24Bには、振り分け信号線がそれぞれ接続されている。振り分け電極24A、24Bは、振り分け信号線から提供される制御信号に応じて、電荷収集領域18から電荷処理部22A又は電荷処理部22Bへの電荷の転送を制御する。ドレインゲート電極25には、ドレイン信号線が接続されている。ドレインゲート電極25は、ドレイン信号線から提供される制御信号に応じて、電荷収集領域18からドレイン19への電荷の転送を制御する。
【0037】
電荷処理部22A、22Bは、配置及び接続構成が互いに異なるだけである。そこで、電荷処理部22Aについて詳細に説明し、電荷処理部22Bについては必要に応じて説明を行う。
【0038】
電荷処理部22Aは、電荷蓄積部27(第1電荷蓄積部)と、浮遊拡散部28と、リセットドレイン29と、を有する。なお、電荷処理部22Bの電荷蓄積部27は、第2電荷蓄積部である。電荷蓄積部27は、電荷収集領域18に隣接する。浮遊拡散部28は、電荷蓄積部27に隣接する。また、浮遊拡散部28は、出力線31を介して読み出しバッファアンプA1に接続されている。リセットドレイン29は、浮遊拡散部28に隣接する。リセットドレイン29には、電源VDDが接続されている。
【0039】
これらの領域は、電荷を一時的に蓄積する領域である。そして、これらの領域間における電荷の転送は、いつくかの電極から与えられる電圧によって制御される。そこで電荷処理部22Aは、転送ゲート電極32と、リセットゲート電極33と、を有する。転送ゲート電極32は、転送信号線から提供される制御信号に応じて、電荷蓄積部27から浮遊拡散部28への電荷の転送を制御する。リセットゲート電極33は、リセット信号線から提供される制御信号に応じて、浮遊拡散部28からリセットドレイン29への電荷の転送を制御する。
【0040】
読み出しバッファアンプA1と読み出しバッファアンプA2とは、配置及び接続構成が互いに異なるだけである。そこで、読み出しバッファアンプA1について詳細に説明し、読み出しバッファアンプA2については必要に応じて説明を行う。
【0041】
読み出しバッファアンプA1は、信号読み出しトランジスタTAと、スイッチングトランジスタTSと、を有する。信号読み出しトランジスタTAにおいて、ドレインは電源VDDに接続され、ゲートは電荷処理部22Aの浮遊拡散部28に接続され、ソースはスイッチングトランジスタTSに接続されている。スイッチングトランジスタTSにおいて、ドレインは信号読み出しトランジスタTAのソースに接続され、ゲートは選択信号線に接続され、ソースは垂直出力信号線B1に接続されている。読み出しバッファアンプA1は、スイッチングトランジスタTSのゲートに提供される制御信号に応じて、浮遊拡散部28に蓄積された電荷に対応する電圧を垂直出力信号線B1に出力する。
【0042】
〔制御部〕
上記の信号取得部3は、制御部4から提供される制御信号に応じて動作する。この動作は、図5に示すタイミングチャートによって説明される。以下、図5に示すタイミングチャートを参照しつつ、撮像装置1の動作について説明する。
【0043】
図5は、上から順に、光源2のための制御信号群S1と、電荷振り分け部21のための制御信号群S2と、転送動作のための制御信号群S3と、における時間的変化をそれぞれ示している。さらに、制御信号群S1は、光源2の点灯信号NPを含む。制御信号群S2は、振り分け信号TG1と、振り分け信号TG2と、ドレイン信号TDと、を含む。そして、制御信号群S3は、リセット信号RTと、転送信号TXと、選択信号SELと、を含む。
【0044】
さらに、図5は、制御信号群S3に続いて、読み出しバッファアンプA1、A2から読みだされた信号VPと当該信号VPをAD変換するための信号とを含む制御信号群S4の時間的変化をそれぞれ示している。制御信号群S4は、折り畳み積分型AD変換回路14のためのクロック信号Fと、巡回型AD変換回路16のためのクロック信号Cと、を含む。なお、信号VPは、図3の各点Pにおける電圧の例示である。つまり、信号VPは、信号処理部12A、12Bに提供される電圧である。なお、図5では、信号処理部12A、12Bに同一波形の電圧が入力される場合を示しているが、信号処理部12A、12Bに入力される電圧の波形は、この態様に限定されず、互いに異なっていてもよい。
【0045】
また、以下の説明において、便宜上、ローレベル(0)を「L」として示し、ハイレベル(1)を「H」として示す。例えば、『リセット信号RTを「L」に設定する。』とは、リセット信号RTをローレベル(0)に設定することを意味する。逆に、『リセット信号RTを「H」に設定する。』とは、リセット信号RTをハイレベル(1)に設定することを意味する。
【0046】
まず、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」に設定する。一方、制御部4は、その他の信号(点灯信号NP、振り分け信号TG1、TG2、リセット信号RT、転送信号TX、選択信号SEL)を「L」に設定する。
【0047】
〔リセット動作〕
次に、制御部4は、i行目のリセット信号RTを、「L」から「H」に切り替える。制御部4は、この切り替えと同期して、選択信号SELも「L」から「H」に切り替える。そして、制御部4は、リセット信号RT及び選択信号SELが「H」である状態を所定期間(例えば0.78マイクロ秒)維持する。なお、この所定期間において、制御部4は、折り畳み積分型AD変換回路14及び巡回型AD変換回路16を駆動するクロック信号F、Cを出力しない。所定経過後、制御部4は、リセット信号RTを「H」から「L」に切り替える。一方、制御部4は、選択信号SELが「H」である状態を維持する。
【0048】
〔第1AD変換動作〕
次に、制御部4は、第1AD変換動作を行う。第1AD変換動作は、デジタル方式の相関二重サンプリング(CDS:correlated double sampling)のためのものである。具体的には、制御部4は、折り畳み積分型AD変換回路14にクロック信号Fを提供した後に、巡回型AD変換回路16にクロック信号Cを提供する。制御部4は、これらクロック信号F、Cを出力している期間において、選択信号SELが「H」である状態を維持する。
【0049】
〔第1露光動作〕
次に、制御部4は、点灯信号NPを「L」から「H」に切り替える。この切り替えと同期して、制御部4は、振り分け信号TG1も「L」から「H」に切り替える。さらに、この切り替えと同期して、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。そして、点灯信号NPが「H」であり、振り分け信号TG1が「H」であり、ドレイン信号TDが「L」である状態を所定期間(例えば0.5マイクロ秒)維持する。この所定期間において、制御部4は、折り畳み積分型AD変換回路14及び巡回型AD変換回路16を駆動するクロック信号を出力しない。所定期間の経過後、制御部4は、点灯信号NP及び振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替える。さらに、制御部4は、ドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0050】
次に、制御部4は、点灯信号NP、振り分け信号TG1、TG2、リセット信号RT、転送信号TXが「L」であり、ドレイン信号TD、選択信号SELが「H」である状態を所定期間維持する。
【0051】
〔第2露光動作〕
次に、制御部4は、振り分け信号TG2を「L」から「H」に切り替える。さらに、この切り替えと同期して、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。そして、振り分け信号TG2が「H」であり、ドレイン信号TDが「L」である状態を所定期間(例えば0.5マイクロ秒)維持する。この所定期間においても、制御部4は、折り畳み積分型AD変換回路14及び巡回型AD変換回路16を駆動するクロック信号を出力しない。
【0052】
〔転送動作〕
所定期間の経過後、制御部4は、振り分け信号TG2を「H」から「L」に切り替える。この切り替えと同期して、制御部4は、ドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替えるとともに、転送信号TXを「L」から「H」に切り替える。そして、転送信号TXが「H」である状態を所定期間(例えば0.78マイクロ秒)維持する。この所定期間においても、制御部4は、折り畳み積分型AD変換回路14及び巡回型AD変換回路16を駆動するクロック信号を出力しない。所定期間の経過後、制御部4は、転送信号TXを「H」から「L」に切り替える。
【0053】
〔第2AD変換動作〕
制御部4は、第2AD変換動作を行う。第2AD変換動作は、転送動作によって出力された電圧をAD変換するためのものである。具体的には、制御部4は、所定期間だけ折り畳み積分型AD変換回路14にクロック信号Fを提供する。折り畳みAD変換動作の終了後、制御部4は、続いて、所定期間だけ巡回型AD変換回路16にクロック信号Cを出力する。
【0054】
次に、制御部4は、対象とする行を変更しながら(変数iを1ずつ増加させながら)、上述したリセット動作、第1AD変換動作、第1及び第2露光動作、転送動作及び第2AD変換動作を行う。つまり、撮像装置1の読み出し方式は、いわゆるローリングシャッタである。
【0055】
上記のリセット動作、第1AD変換動作、第1及び第2露光動作、転送動作及び第2AD変換動作は、蓄積及び読み出し動作を構成する。つまり、第1実施形態の動作は、蓄積及び読み出しをひとくくりの動作として捉える。この蓄積及び読み出し動作の実施には、例えば80.6マイクロ秒を要する。図5では、蓄積及び読み出し動作の期間を、期間T1Hとして示す。つまり、期間T1Hは、1行の読み出し期間であるともいえる。期間T1Hは、選択信号SELが「H」である期間と定義してもよいし、i行目のリセット信号RTが「L」から「H」に切り替えられたタイミングから、i+1行目のリセット信号RTが「L」から「H」に切り替えられたタイミングまでの期間としてもよい。そして、1枚の画像を得るために、当該蓄積及び読み出し動作を、例えば412回繰り返す。つまり、1フレームは、33ミリ秒である。
【0056】
なお、上記のいくつかの動作において、露光動作、転送動作及び第2AD変換動作は、この順で実施されればよい。例えば、露光動作と第1AD変換動作とは並行して実施してもよい。また、露光動作を行った後に第1AD変換動作を実施し、その後、転送動作を行ってもよい。つまり、露光動作は、転送前の期間内において、所望のタイミングで実施してよい。
【0057】
〔情報取得動作〕
次に、演算部6は、脈動に関する情報を得る処理を行う。具体的には、図1に示すように、演算部6は、信号処理部12A、12Bから出力されたデジタル信号を用いて、RAW形式の画像G1、G2を形成する。具体的には、信号処理部12Aのデジタル信号を用いて、画像G1(第1画像)を形成する。また、信号処理部12Bのデジタル信号を用いて、画像G2(第2画像)を形成する。次に、演算部6は、取得した画像G1、G2を用いて、差分画像GSを得る。演算部6は、差分画像GSに処理領域を設定し、処理領域内の輝度平均を得る。これら画像G1、G2の形成から輝度平均の取得までの処理は、所定回数繰り返される。
【0058】
次に、演算部6は、輝度平均の強度と時間との関係をグラフ化(グラフBS)する。この処理によって、ヘモグロビン濃度の時間変化を示すグラフが得られる。ヘモグロビン濃度は、脈動に応じているので、ヘモグロビン濃度の周期的な時間変化は、脈拍に対応する。このグラフBSを用いて、種々の脈動に関する情報を得る。
【0059】
例えば、単位時間(1分間)あたりの拍動数(いわゆる脈拍数)を得てもよい。また、ヘモグロビン濃度の経時変化を示すグラフ(図1のグラフBS)を得てもよい。
【0060】
ところで、上述したように、脈動は、ヘモグロビン濃度の変化に対応し、ヘモグロビン濃度は、画素Xの出力の強度(電圧値)に対応する。つまり、画素Xの出力の変動は、ヘモグロビン濃度の変動(脈動)に対応する。一方、画素Xの出力には、ヘモグロビン濃度の変化(脈動)に起因する成分のほかに、画素Xに入射する環境光(背景光)の成分も含む。背景光成分に起因する光強度の変動幅は、ヘモグロビン濃度(脈動)の変動に起因する変動幅よりも大きい場合があり得る。つまり、ヘモグロビン濃度の変動に起因する信号成分は、背景光成分に埋もれることが生じ得る。
【0061】
本実施形態の撮像装置1は、測定光Lを照射したタイミングで画像G1を取得している。従って、画像G1は、測定光Lの照射に起因する信号成分を確実に含む。また、撮像装置1は、測定光Lを消灯したタイミングで画像G2を取得している。画像G2は、測定光Lの照射に起因する信号成分を含まず、測定光Lの照射に起因しない成分(ノイズ成分)を含む。このような動作は、ロックイン動作(同期動作)と呼んでよい。そして、信号成分とノイズ成分とを含む画像G1と、信号成分を含まない画像G2と、を得て、画像G1から画像G2を減ずる(例えば、輝度値の差分を得る)ことによって、真の信号成分を抽出することができる。このようなロックイン動作によれば、ノイズ成分の変動幅よりも小さい真の信号成分の変動を得ることができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の撮像装置1について説明する。第2実施形態の撮像装置1は、画素アレイ部7からの読み出し動作が第1実施形態の撮像装置1と相違する。具体的には、第1実施形態の撮像装置1の読み出し動作は、いわゆるローリングシャッタ方式であった。一方、第2実施形態の撮像装置1の読み出し動作は、いわゆるグローバルシャッタ方式である。
【0063】
つまり、第2実施形態の撮像装置1は、動作方式が第1実施形態の撮像装置1と相違するのみであるので、例えば、画素Xの物理的な構成などは、第1実施形態の撮像装置1と共通である。以下、制御部4が行う制御内容について詳細に説明する。
【0064】
〔制御部〕
図6は、図5と同様に、光源2のための制御信号群S1と、電荷振り分け部21のための制御信号群S2と、転送動作のための制御信号群S3と、における時間的変化をそれぞれ示している。なお、図6では、AD変換動作のためのタイミングチャートは省略する。
【0065】
まず、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」に設定する。一方、制御部4は、その他の信号(点灯信号NP、振り分け信号TG1、TG2、リセット信号RT、転送信号TX、選択信号SEL)を「L」に設定する。
【0066】
次に、制御部4は、複数回の露光動作を連続して行う。第1実施形態において、制御部4は、1回の露光動作と、1回の転送動作と、を交互に行った。一方、第2実施形態の制御部4は、グローバルシャッタ方式に基づき、複数回の露光動作を行う。
【0067】
具体的には、制御部4は、期間T2aにおいて、点灯信号NP、振り分け信号TG1を「H」とし、振り分け信号TG2、ドレイン信号TDを「L」とする動作(第1露光)と、点灯信号NP、振り分け信号TG1及び振り分け信号TG2を「L」とし、ドレイン信号TDを「H」とする動作と、振り分け信号TG2を「H」とし、点灯信号NP、振り分け信号TG1及びドレイン信号TDを「L」とする動作(第2露光)と、を所定回数(例えば412回)繰り返す。
【0068】
また、制御部4は、期間T2aにおいて、リセット信号RT、転送信号TX、及び選択信号SELの状態を「L」に維持し続ける。
【0069】
次に、制御部4は、期間T2bにおいて、複数回の読み出し動作を行う。
【0070】
〔リセット動作〕
まず、i行目のリセット信号RTを「L」から「H」に切り替える。この切り替えと同期して、制御部4は、i行目の選択信号SELも「L」から「H」に切り替える。そして、リセット信号RT及び選択信号SELが「H」である状態を所定期間(例えば0.78マイクロ秒)維持する。所定期間の経過後、制御部4は、リセット信号RTを「H」から「L」に切り替える。一方、制御部4は、選択信号SELは、「H」を維持する。
【0071】
〔転送動作〕
次に、制御部4は、転送信号TXを「L」から「H」に切り替える。所定期間の経過後、制御部4は、転送信号TXを「H」から「L」に切り替える。一方、制御部4は、選択信号SELは、「H」を維持する。
【0072】
〔AD変換動作〕
リセット動作から転送動作までの期間T2cにおいて、相関二重サンプリングのためのAD変換動作を行う。具体的には、この期間T2cにおいて、制御部4は、クロック信号F、Cを出力する。
【0073】
次に、制御部4は、i+1行目の画素Xに対する読み出し動作を行う。
【0074】
ここで、i行目の転送信号TXを「H」から「L」に切り替えたタイミングから、i+1行目の画素Xの読み出し動作が開始されるタイミング(i+1行目のリセット信号RTを切り替えるタイミング)までの期間T2dは、折り畳み積分型AD変換回路14及び巡回型AD変換回路16の第2AD変換動作に応じている。
【0075】
上記の読み出し動作を、1行目の画素Xからn行目の画素Xに至るまで、繰り返し行う。なお、読み出し動作において、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」に維持し続ける。
【0076】
上記の動作では、複数回の露光動作を行った後に、複数回の読み出し動作を行う。例えば、824マイクロ秒の間に412回の露光動作を行った後に、78.6マイクロ秒の412回の読み出し動作を行う。つまり、1フレームは、33ミリ秒である。
【0077】
〔情報取得動作〕
次に、演算部6は、脈動に関する情報を得る処理を行う。この処理は、第1実施形態における処理と同様である。
【0078】
第2実施形態の撮像装置1によっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
〔第3実施形態〕
第3実施形態の撮像装置1Aについて説明する。図7に示すように、第3実施形態の撮像装置1Aは、測定光L1を被験者100に照射して得た画像G1Aと、測定光L2を被験者100に照射して得た画像G1Bと、測定光L1、L2を被験者100に照射せずに得た画像G2と、の3種類の画像を取得し、これらの画像G1A、G1B、G2を用いて情報を得るものである。そこで、第3実施形態の撮像装置1Aは、第1実施形態の撮像装置1に対して、光源2A及び画素XAの構成が相違する。要するに、第3実施形態の撮像装置1Aは、3タップ2波長型の動作を行う。以下、光源2A及び画素XAの構成と、撮像装置1Aの動作と、について説明する。
【0080】
〔光源〕
第1実施形態の光源2は、測定光L1のみを照射可能であった。一方、第3実施形態の光源2Aは、測定光L1(第1測定光)に加えて測定光L2(第2測定光)も照射可能である。光源2Aは、光発生部2a、2bを有する。光発生部2aは、可視光領域又は近赤外光領域の第1波長を有する測定光L1を出射する。光発生部2bは、可視光領域又は近赤外光領域の第2波長を有する測定光L2を出射する。ここで、第1波長は、第2波長とは異なっている。例えば、第1波長は、870ナノメートルであり、第2波長は、780ナノメートルである。
【0081】
また、光発生部2a、2bは、それぞれ独立して点灯及び/又は消灯させることができる。従って、光源2は、光発生部2aから測定光L1を照射させ、光発生部2bを消灯させる動作と、光発生部2bから測定光L2を照射させ、光発生部2aを消灯させる動作と、測定光L1、L2の何れも消灯させる動作と、を選択的に行う。これらの動作の切り替えは、制御部4から提供される制御信号に基づいて行われる。
【0082】
〔画素〕
図8に示すように、第3実施形態の画素XAは、電荷処理部22A、22Bに加えて、追加された電荷処理部22Cを有する。電荷処理部22Cは、電荷処理部22Aと同様の構成を有する。従って、電荷処理部22Cの電荷蓄積部27は、第3電荷蓄積部である。さらに、画素XAは、読み出しバッファアンプA1、A2に加えて、追加された読み出しバッファアンプA3を有する。さらに、電荷振り分け部21Aは、振り分け電極24Cをさらに含む。読み出しバッファアンプA3も、読み出しバッファアンプA1と同様の回路構成及び接続構成を有する。
【0083】
〔制御部〕
上記の画素XAは、制御部4から提供される制御信号に応じて動作する。この動作は、図9に示すタイミングチャートによって説明される。以下、図9に示すタイミングチャートを参照しつつ、撮像装置1Aの動作について説明する。
【0084】
〔リセット動作〕
まず、制御部4は、リセット動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態のリセット動作と同様である。つまり、制御部4は、リセット信号RTを、「L」から「H」に切り替えると共に、選択信号SELを「L」から「H」に切り替える。所定期間の経過後、制御部4は、リセット信号RTを「H」から「L」に切り替える。
【0085】
〔第1露光動作〕
次に、制御部4は、第1露光動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態の第1露光動作と同様である。
【0086】
〔第2露光動作〕
次に、制御部4は、第2露光動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態の第2露光動作と同様である。
【0087】
〔第3露光動作〕
次に、制御部4は、第3露光動作を行う。具体的には、制御部4は、点灯信号NP2を「L」から「H」に切り替える。この切り替えと同期して、制御部4は、振り分け信号TG3も「L」から「H」に切り替える。さらに、この切り替えと同期して、制御部4は、ドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。そして、点灯信号NP2が「H」であり、振り分け信号TG3が「H」であり、ドレイン信号TDが「L」である状態を所定期間(例えば0.5マイクロ秒)維持する。所定期間の経過後、制御部4は、点灯信号NP2及び振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替える。さらに、制御部4は、ドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0088】
〔第1AD変換動作〕
ここで、第1実施形態では、第1AD変換動作を行った後に、露光動作を行った。しかし、第1AD変換動作と露光動作との関係は、この順に限定されない。第3実施形態では、第1AD変換動作と露光動作とは並行して行われる。従って、制御部4は、第1~第3露光動作を行う期間において、第1AD変換動作のための制御信号を信号処理部12A、12Bに提供する。具体的な制御は、第1実施形態の第1AD変換動作と同様である。
【0089】
〔転送動作〕
次に、制御部4は、転送動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態の転送動作と同様である。
【0090】
〔第2AD変換動作〕
制御部4は、第2AD変換動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態の第2AD変換動作と同様である。
【0091】
〔情報取得動作〕
次に、演算部6は、脈動に関する情報を得る処理を行う。例えば、第1実施形態と同様の処理によって、第1波長に基づく画像G1Aと背景光に基づく画像G2とを用いて脈動に関する情報を得ると共に、第2波長に基づく画像G1Bと背景光に基づく画像G2とを用いて脈動に関する情報を得てもよい。
【0092】
また、第1波長に基づく画像G1Aと第2波長に基づく画像G1Bとの関係を利用して、酸素化ヘモグロビン濃度と脱酸素化ヘモグロビン濃度の比から酸素飽和度に関する情報を得てもよい。
【0093】
〔第4実施形態〕
第4実施形態の撮像装置について説明する。第4実施形態の撮像装置の光源及び信号取得部は、第1実施形態の撮像装置1が備える光源2と構成が異なり、さらに、当該光源2及び信号取得部3と動作が異なる。つまり、第4実施形態の撮像装置の光源は、第3実施形態の撮像装置1Aが備える光源2Aと構成が共通する。具体的には、光源2Aが測定光L1を照射したとき、画素X1によって画像G1Aを得る。次に、光源2Aが測定光L2を照射したとき、画素X1に隣接する別の画素X2によって画像G1Bを得る。つまり、第4実施形態の撮像装置は、第1実施形態の画素Xと同じ構成(2タップ型)によって、第3実施形態の撮像装置1Aと同様の結果(画像G1A、G1B、G2の取得)を得るものである。要するに、第4実施形態の撮像装置は、2タップ2波長型の動作を行う。
【0094】
なお、第4実施形態の撮像装置では、信号取得部3が第1実施形態と同様の構成を有し、光源2Aが第3実施形態と同様の構成を有する。従って、第4実施形態の撮像装置の物理的な構成については説明を省略し、撮像装置の動作について説明する。
【0095】
図10は、上から順に、光源2のための制御信号群S1Aと、電荷振り分け部21のための制御信号群S2A、S2Bと、転送動作のための制御信号群S3と、における時間的変化をそれぞれ示している。なお、制御信号群S2Aは、測定光L1を対象とする奇数列(Odd Col.)の画素Xのためのものである。制御信号群S2Bは、測定光L2を対象とする偶数列(Even Col.)の画素Xのためのものである。「偶数」及び「奇数」は、例えば、画素アレイ部7の列数に対応するものとしてよい。つまり、奇数列の画素Xは、画素アレイ部7において奇数列(j=1、3、5…)に位置するものを意味する。偶数列の画素Xは、画素アレイ部7において偶数列(j=2、4、6…)に位置するものを意味する。つまり、奇数列の画素Xは、偶数列の画素Xに隣り合っている。
【0096】
なお、測定光L1を対象とする画素X及び測定光L2を対象とする画素Xの選択は、例示である。測定光L1を対象とする画素X及び測定光L2を対象とする画素Xは、互いに近接していればよく、列同士で隣り合う構成に限定されない。例えば、行によって分別してもよい。つまり、測定光L1を対象とする画素Xを偶数行に位置する画素Xとし、測定光L2を対象とする画素Xを奇数行に位置する画素Xとしてもよい。また、測定光L1を対象とする画素X及び測定光L2を対象とする画素Xは、格子状に配置されていてもよい。
【0097】
このように、画素ごとに対象とする測定光を異ならせる構成は、空間的に分解するものとも言える。
【0098】
また、露光動作は、奇数列の画素Xと偶数列の画素Xとで互いに独立して動作させる必要がある。一方、転送動作は、露光動作のように互いに独立させる必要はない。従って、転送動作のための制御信号群S3のみにより示される。
【0099】
〔リセット動作〕
制御部4は、リセット動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態のリセット動作と同様である。つまり、制御部4は、リセット信号RTを、「L」から「H」に切り替えると共に、選択信号SELを「L」から「H」に切り替える。所定期間の経過後、制御部4は、リセット信号RTを「H」から「L」に切り替える。
【0100】
〔奇数列の画素Xの第1露光動作〕
次に、制御部4は、奇数列の画素Xの第1露光動作を行う。制御部4は、点灯信号NP1を「L」から「H」に切り替え、奇数列の画素Xの振り分け信号TG1を「L」から「H」に切り替え、さらに、奇数列の画素Xのドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。そして、制御部4は、この状態を所定期間(例えば0.5マイクロ秒)維持する。所定期間の経過後、制御部4は、点灯信号NP1を「H」から「L」に切り替え、振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替え、さらに、奇数列の画素Xのドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0101】
〔奇数列の画素Xの第2露光動作〕
次に、制御部4は、奇数列の画素Xの第2露光動作を行う。制御部4は、奇数列の画素Xの振り分け信号TG2を「L」から「H」に切り替え、奇数列の画素Xのドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。所定期間の経過後、制御部4は、奇数列の画素Xの振り分け信号TG2を「H」から「L」に切り替え、奇数列の画素Xのドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0102】
〔偶数列の画素Xの第1露光動作〕
次に、制御部4は、偶数列の画素Xの第1露光動作を行う。制御部4は、点灯信号NP2を「L」から「H」に切り替え、偶数列の画素Xの振り分け信号TG1を「L」から「H」に切り替え、さらに、偶数列の画素Xのドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。そして、制御部4は、この状態を所定期間だけ維持する。所定期間の経過後、制御部4は、点灯信号NP2を「H」から「L」に切り替、振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替える。さらに、制御部4は、偶数列の画素Xのドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0103】
〔偶数列の画素Xの第2露光動作〕
次に、制御部4は、偶数列の画素Xの第2露光動作を行う。制御部4は、偶数列の画素Xの振り分け信号TG2を「L」から「H」に切り替え、偶数列の画素Xのドレイン信号TDを「H」から「L」に切り替える。所定期間の経過後、制御部4は、偶数列の画素Xの振り分け信号TG2を「H」から「L」に切り替え、偶数列の画素Xのドレイン信号TDを「L」から「H」に切り替える。
【0104】
〔転送動作〕
次に、制御部4は、転送動作を行う。具体的な制御は、第1実施形態の転送動作と同様である。
【0105】
〔AD変換動作〕
なお、上記の一連の動作において、転送動作が行われる前に相関二重サンプリングのための第1AD変換動作を行う。この第1AD変換動作は、第3実施形態のように、露光動作と並行して行ってよい。また、転送動作の後に、第2AD変換動作を行う。第1及び第2AD変換動作の具体的な制御は、第1実施形態の第1及び第2AD変換動作と同様である。
【0106】
以上のステップにより、i行目の露光動作、読み出し動作及びAD変換動作が完了する。次に、制御部4は、i+1行目の奇数列の画素X、XEに対して、上述した制御と同様の動作を行う。
【0107】
〔情報取得動作〕
次に、演算部6は、脈動に関する情報を得る処理を行う。第4実施形態の動作によっても、画像G1A、G1B、G2が得られる。従って、第3実施形態と同様の処理を行ってよい。
【0108】
本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0109】
〔変形例1〕
第1実施形態において、測定光Lの照射(点灯信号NP:「H」)と同期するように、フォトダイオードPDから電荷蓄積部27に電荷を転送させる(振り分け信号TG1:「H」)と説明した。そして、図5に示すように、第1実施形態では、点灯信号NPの「L」から「H」への切り替えと、振り分け信号TG1の「L」から「H」への切り替えは、同じタイミングで行った。また、点灯信号NPの「H」から「L」への切り替えと、振り分け信号TG1の「H」から「L」への切り替えも、同じタイミングで行った。つまり、点灯信号NPが「H」を維持する時間は、振り分け信号TG1が「H」を維持する時間と等しかった。しかし、測定光Lの照射と電荷蓄積部27への転送とを「同期」させるとは、これらの切替タイミングの一致や期間の一致に限定されない。
【0110】
例えば、図11の(a)部に示すように、点灯信号NPの「L」から「H」への切り替えと、振り分け信号TG1の「L」から「H」への切り替えは、タイミングがずれていてもよい。同様に、点灯信号NPの「H」から「L」への切り替えと、振り分け信号TG1の「H」から「L」への切り替えも、タイミングがずれていてもよい。つまり、点灯信号NPが「H」を維持する時間は、振り分け信号TG1が「H」を維持する時間と異なっていてもよい。つまり、実施形態でいう「同期」とは、点灯信号NPが「H」である期間と、振り分け信号TG1が「H」である期間と、が重複する部分を有することをいう。従って、これらの期間は、開始のタイミングと終了のタイミングとが完全に一致していてもよいし、重複する部分を有していれば開始のタイミングと終了のタイミングがずれていてもよい。
【0111】
例えば、まず、制御部4は、振り分け信号TG1を「L」から「H」に切り替える。そして、所定期間の経過後に制御部4は、点灯信号NPを「L」から「H」に切り替える。
振り分け信号TG1と点灯信号NPとのずれは、例えば、点灯信号NPを「H」にする期間に対する割合(例:5%)で規定してよい。次に、所定期間の経過後に制御部4は、点灯信号NPを「H」から「L」に切り替える。そして、当該切替が行われた後に制御部4は振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替える。この動作によれば、点灯信号NPが「H」である期間は、振り分け信号TG1が「H」である期間と全て重複する。つまり、点灯信号NPが「H」である時間よりも、振り分け信号TG1が「H」である時間の方が長い。この動作によれば、測定光Lが照射されている被験者100に起因する光を確実に捉えることができる。
【0112】
また、点灯信号NPと振り分け信号TG1とを同時に「L」から「H」に切り替え、所定期間の経過後、まず、点灯信号NPを「H」から「L」に切り替え、その後、振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替えてもよい。
【0113】
〔変形例2〕
上記実施形態では、振り分け信号TG1が「H」である期間と、振り分け信号TG2が「H」である期間との間に、所定の待機期間が設けられていた。つまり、振り分け信号TG1が「H」である期間と、振り分け信号TG2が「H」である期間との間に、ドレイン信号TDが「H」である期間が設定されていた。図11の(b)部に示すように、例えば、この期間は省略してもよい。つまり、振り分け信号TG1を「H」から「L」に切り替えると同時に、振り分け信号TG2を「L」から「H」に切り替える。そして、この切り替えタイミングの前後において、ドレイン信号TDは「L」を維持し続ける。
【符号の説明】
【0114】
1,1A…撮像装置、2,2A…光源、3…信号取得部、4…制御部、6…演算部、7…画素アレイ部、8…周辺回路部、9A,9B…水平走査回路、11…垂直走査回路、12A…信号処理部、12B…信号処理部、14…折り畳み積分型AD変換回路、16…巡回型AD変換回路、17…電荷転送部、18…電荷収集領域、19…ドレイン、21…電荷振り分け部、22A,22B,22C…電荷処理部、24A,24B…振り分け電極、25…ドレインゲート電極、27…電荷蓄積部(第1電荷蓄積部、第2電荷蓄積部、第3電荷蓄積部)、28…浮遊拡散部、29…リセットドレイン、32…転送ゲート電極、33…リセットゲート電極、100…被験者、A1,A2,A3…読み出しバッファアンプ、AP…開口部、D…光検出部、TA…信号読み出しトランジスタ、TS…スイッチングトランジスタ、PD…フォトダイオード、VDD…電源、X…画素。
図1
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図11