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特許7182255木質床板及びその製造方法ならびに建物用床
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】木質床板及びその製造方法ならびに建物用床
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20221125BHJP
   E04F 15/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B27M3/00 C
E04F15/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018170156
(22)【出願日】2018-09-12
(65)【公開番号】P2020040314
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500432321
【氏名又は名称】株式会社イクタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 芳文
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-062085(JP,U)
【文献】特開2018-115426(JP,A)
【文献】特開平06-015617(JP,A)
【文献】実開平03-055444(JP,U)
【文献】特開2007-315165(JP,A)
【文献】特開平03-172453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0284964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 3/00
E04F 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板と、
該下地基板の上面に並列配置されて接合された複数の木質ブロック板と、を有する木質床板であって、
上記下地基板は、上面から見た形状において、長尺形状を有すると共に、長手方向に平行な一対の基板長辺と、該一対の基板長辺に対して傾斜した互いに平行な一対の基板短辺とを有し、
上記木質ブロック板は、意匠面となる上面から見た形状において、上記下地基板の上記基板長辺に沿った一対のブロック板側辺と、該ブロック板側辺に対して傾斜して互いに平行な一対のブロック板斜辺とを有し、
一対の該ブロック板斜辺には、それぞれ斜辺雄実部及び斜辺雌実部が形成されており、
複数の上記木質ブロック板は、上記ブロック板斜辺同士が対向すると共に、上記ブロック板側辺同士が直線状につながるように、上記下地基板上に配列されており、
かつ、配列方向の両端に配された上記木質ブロック板の一方の上記ブロック板斜辺は、上記下地基板の上記基板短辺に沿って配置されており、
配列方向に隣り合う上記木質ブロック板同士は、上記斜辺雄実部と上記斜辺雌実部とが実接合しており、
一対の床板短辺の一方と他方とに沿って、それぞれ短辺雄実部と短辺雌実部とを有し、
上記短辺雄実部は、配列方向の一端に配された上記木質ブロック板の上記斜辺雄実部からなり、上記短辺雌実部は、配列方向の他端に配された上記木質ブロック板の上記斜辺雌実部からなる、木質床板。
【請求項2】
上記長手方向に隣り合う上記木質ブロック板同士の間には、上記ブロック板斜辺に沿って形成された表層溝部が形成されている、請求項1に記載の木質床板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の木質床板を、上記長手方向及び短手方向に複数枚継ぎ合わせて形成した建物用床であって、
上記長手方向に隣り合う上記木質床板同士は、上記短辺雄実部と上記短辺雌実部とを実接合されており、
上記下地基板の短手方向に隣り合う上記木質床板同士は、上記長手方向に対する上記床板短辺の傾斜方向が互いに逆である、建物用床。
【請求項4】
上記建物用床を上面から見たとき、上記床板短辺同士の継ぎ目は、当該継ぎ目に沿った方向における少なくとも一端において、他の上記継ぎ目とつながらないように配置されている、請求項3に記載の建物用床。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の木質床板を製造する方法であって、
上記下地基板と、複数の上記木質ブロック板とを作製し、
複数の上記木質ブロック板を、上記斜辺雄実部と上記斜辺雌実部とを実接合させつつ、上記下地基板の上面に貼着する、木質床板の製造方法。
【請求項6】
複数の上記木質ブロック板を作製するにあたっては、
長尺のブロック板素材の素材長辺に、実加工を施すことで、長尺の素材雄実部及び長尺の素材雌実部を形成した後、
上記ブロック板素材を、その素材長手方向及び素材短手方向に対して傾斜した互いに平行な傾斜面にて切断して、
上記素材雄実部の一部及び上記素材雌実部の一部を上記斜辺雄実部及び上記斜辺雌実部として備えた複数の上記木質ブロック板を作製する、請求項5に記載の木質床板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質床板及びその製造方法ならびに建物用床に関する。
【背景技術】
【0002】
建物用床において、例えば、特許文献1に開示されているように、いわゆるヘリンボーン調の模様を形成したものがある。すなわち、表層の木目を、複数の板材の並び方向に対して傾斜させると共に、傾斜方向が互いに異なる板材同士を、その短手方向に隣り合うように(すなわち、長辺同士を突き合わせるように)配置して、建物用床を形成している。これにより、短手方向に隣り合う板材の継ぎ目(すなわち、長辺同士の継ぎ目)を境にして、表層の木目の向きが逆となる、いわば魚(ニシン)の骨のような模様である、ヘリンボーン調の模様が、建物用床の意匠面に表れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】意匠登録第1524350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された構成床板体は、長方形状を有する。それゆえ、長手方向に隣り合う構成床板体同士の間に、長手方向に直交する方向の継ぎ目が表れる。この継ぎ目は、ヘリンボーンの斜めの木目を分断するように形成される。その結果、ヘリンボーン調の意匠性を阻害するおそれもある。
【0005】
また、上述のようなヘリンボーン調の建物用床を形成するにあたり、その風合いや、高級感を出すためには、表層にも、ある程度の厚みのある挽板等を用いることが望まれる。その一方で、多数の独立した挽板等を、建築現場等において組み合わせて、ヘリンボーン調の模様が表れるように施工することは、時間も手間もかかり、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、意匠性に優れた木質床板及びその製造方法ならびに建物用床を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、下地基板と、
該下地基板の上面に並列配置されて接合された複数の木質ブロック板と、を有する木質床板であって、
上記下地基板は、上面から見た形状において、長尺形状を有すると共に、長手方向に平行な一対の基板長辺と、該一対の基板長辺に対して傾斜した互いに平行な一対の基板短辺とを有し、
上記木質ブロック板は、意匠面となる上面から見た形状において、上記下地基板の上記基板長辺に沿った一対のブロック板側辺と、該ブロック板側辺に対して傾斜して互いに平行な一対のブロック板斜辺とを有し、
一対の該ブロック板斜辺には、それぞれ斜辺雄実部及び斜辺雌実部が形成されており、
複数の上記木質ブロック板は、上記ブロック板斜辺同士が対向すると共に、上記ブロック板側辺同士が直線状につながるように、上記下地基板上に配列されており、
かつ、配列方向の両端に配された上記木質ブロック板の一方の上記ブロック板斜辺は、上記下地基板の上記基板短辺に沿って配置されており、
配列方向に隣り合う上記木質ブロック板同士は、上記斜辺雄実部と上記斜辺雌実部とが実接合しており、
一対の床板短辺の一方と他方とに沿って、それぞれ短辺雄実部と短辺雌実部とを有し、
上記短辺雄実部は、配列方向の一端に配された上記木質ブロック板の上記斜辺雄実部からなり、上記短辺雌実部は、配列方向の他端に配された上記木質ブロック板の上記斜辺雌実部からなる、木質床板にある。
【0008】
本発明の他の態様は、上記木質床板を、上記長手方向及び短手方向に複数枚継ぎ合わせて形成した建物用床であって、
上記長手方向に隣り合う上記木質床板同士は、上記短辺雄実部と上記短辺雌実部とを実接合されており、
上記下地基板の短手方向に隣り合う上記木質床板同士は、上記長手方向に対する上記床板短辺の傾斜方向が互いに逆である、建物用床にある。
【0009】
本発明のさらに他の態様は、上記木質床板を製造する方法であって、
上記下地基板と、複数の上記木質ブロック板とを作製し、
複数の上記木質ブロック板を、上記斜辺雄実部と上記斜辺雌実部とを実接合させつつ、上記下地基板の上面に貼着する、木質床板の製造方法にある。
【発明の効果】
【0010】
上記木質床板において、上記下地基板は、一対の基板長辺と、該一対の基板長辺に対して傾斜した互いに平行な一対の基板短辺とを有する。そして、配列方向の両端に配された上記木質ブロック板の一方のブロック板斜辺は、基板短辺に沿って配置されている。これにより、複数の木質床板を並べて建物用床を構成したとき、長手方向の継ぎ目(すなわち床板短辺同士の継ぎ目)も、木質ブロック板のブロック板斜辺と平行に形成されることとなる。これにより、ヘリンボーン調の模様が、木質床板の継ぎ目で分断されることを防ぐことができる。その結果、全体として、ヘリンボーン調の模様が連続的に自然に表れた、意匠性に優れた建物用床を得ることができる。
【0011】
また、上記木質床板は、下地基板の上面に、複数の木質ブロック板を配置してなる。これにより、木質床板の上面(すなわち意匠面)に、厚みを有する複数の木質ブロック板の表面を表出させることができる。これにより、木質床板の意匠性を向上させやすい。
【0012】
また、1枚の木質床板が、複数の木質ブロック板を備えるため、建物用床を施工する際、建築現場等における作業効率を向上させることができる。
また、配列方向の両端に配された木質ブロック板の斜辺雄実部と斜辺雌実部が、木質床板の短辺雄実部と短辺雌実部とになる。そのため、木質床板の床板短辺同士の継ぎ目の構造を、木質床板内における木質ブロック板同士の継ぎ目と略同様にすることができる。その結果、木質床板の床板短辺同士の継ぎ目が目立つことを抑制することができる。
【0013】
また、上記建物用床は、上記木質床板を複数枚継ぎ合わせて形成したものであるため、意匠性に優れている。
【0014】
また、上記木質床板の製造方法においては、複数の木質ブロック板を、斜辺雄実部と斜辺雌実部とを実接合させつつ、下地基板の上面に貼着する。これにより、意匠性に優れた木質床板を容易に製造することができる。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、意匠性に優れた木質床板及びその製造方法ならびに建物用床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態1における、木質床板の断面説明図であり、図2のI-I線矢視断面図。
図2】実施形態1における、木質床板の平面説明図。
図3】実施形態1における、下地基板の平面説明図。
図4】実施形態1における、木質ブロック板の平面説明図。
図5図4のV-V線矢視断面図。
図6】実施形態1における、第1の木質床板の平面説明図。
図7】実施形態1における、第2の木質床板の平面説明図。
図8図6のVIII-VIII線矢視断面説明図。
図9図6のIX-IX線矢視断面説明図。
図10】実施形態1における、建物用床の平面説明図。
図11】実施形態1における、大判の積層板を作製する段階の斜視説明図。
図12】実施形態1における、長尺積層板を作製する段階の斜視説明図。
図13】実施形態1における、ブロック板素材を作製する段階の斜視説明図。
図14】実施形態1における、ブロック板素材に実加工した段階の斜視説明図。
図15】実施形態1における、ブロック板素材に切断線を付した平面説明図。
図16】実施形態1における、ブロック板素材を切断して得られた多数の木質ブロック板を並べた平面説明図。
図17】実施形態1における、木質ブロック板を下地基板上に配置する段階の断面説明図。
図18】実施形態1における、長辺雄実部及び長辺雌実部を形成した段階の平面説明図。
図19】実施形態1における、長手方向に隣り合う木質床板の継ぎ目部分の断面説明図。
図20】実施形態2における、建物用床の平面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書においては、木質床板等について、施工した状態の姿勢において、上、下となる向きを、それぞれ、上、下として説明する。つまり、例えば、木質床板の上面は、建物用床の上面であり、意匠面でもある。
【0018】
上記長手方向に隣り合う上記木質ブロック板同士の間には、上記ブロック板斜辺に沿って形成された表層溝部が形成されているものとすることができる。この場合には、複数の表層溝部によって、ヘリンボーン調の模様をより際立たせることができる。その結果、木質床板を用いた建物用床の意匠性をより向上させることができる。
【0019】
上記建物用床を上面から見たとき、上記床板短辺同士の継ぎ目は、当該継ぎ目に沿った方向における少なくとも一端において、他の上記継ぎ目とつながらないように配置されているものとすることができる。この場合には、より意匠性に優れた建物用床を得ることができる。すなわち、上記継ぎ目が広範囲にわたって連続することを防ぐことができる。その結果、床板短辺同士の継ぎ目が目立つことを一層抑制し、意匠性に優れたヘリンボーン調の建物用床を容易に形成することができる。
【0020】
複数の上記木質ブロック板を作製するにあたっては、長尺のブロック板素材の素材長辺に、実加工を施すことで、長尺の素材雄実部及び長尺の素材雌実部を形成した後、上記ブロック板素材を、その素材長手方向及び素材短手方向に対して傾斜した互いに平行な傾斜面にて切断して、上記素材雄実部の一部及び上記素材雌実部の一部を上記斜辺雄実部及び上記斜辺雌実部として備えた複数の上記木質ブロック板を作製することもできる。この場合には、斜辺雄実部及び斜辺雌実部の実加工を効率的かつ容易に行うことができる。その結果、意匠性に優れた木質床板を生産性良く製造することができる。
【0021】
(実施形態1)
木質床板及びその製造方法ならびに建物用床の実施形態につき、図1図18を用いて説明する。
本実施形態の木質床板1は、図1図2に示すごとく、下地基板2と、複数の木質ブロック板3と、を有する。複数の木質ブロック板3は、下地基板2の上面に並列配置されて接合されている。なお、特に図1は、便宜的に、木質ブロック板3等の厚みを大きくして描いてある。
【0022】
下地基板2は、図3に示すごとく、上面から見た形状において、長尺形状を有する。そして、下地基板2は、長手方向Xに平行な一対の基板長辺21と、一対の基板長辺21に対して傾斜した互いに平行な一対の基板短辺22とを有する。
【0023】
木質ブロック板3は、図2に示すごとく、意匠面となる上面から見た形状において、下地基板2の基板長辺21に沿った一対のブロック板側辺31と、ブロック板側辺31に対して傾斜して互いに平行な一対のブロック板斜辺32とを有する。
【0024】
一対のブロック板斜辺32には、それぞれ斜辺雄実部321及び斜辺雌実部322が形成されている。
複数の木質ブロック板3は、ブロック板斜辺32同士が対向すると共に、ブロック板側辺31同士が直線状につながるように、下地基板2上に配列されている。
【0025】
配列方向の両端に配された木質ブロック板3の一方のブロック板斜辺32は、下地基板2の基板短辺22に沿って配置されている。
配列方向に隣り合う木質ブロック板3同士は、斜辺雄実部321と斜辺雌実部322とが実接合している。
【0026】
木質床板1は、一対の床板短辺13の一方と他方とに沿って、それぞれ短辺雄実部131と短辺雌実部132とを有する。
短辺雄実部131は、配列方向の一端に配された木質ブロック板3の斜辺雄実部321からなる。短辺雌実部132は、配列方向の他端に配された木質ブロック板3の斜辺雌実部322からなる。
【0027】
なお、基板長辺21に平行な方向である、下地基板2の長手方向を、適宜、単に長手方向Xともいう。また、下地基板2の短手方向も、適宜、単に短手方向Yともいう。長手方向Xと短手方向Yとは、木質床板1の上面の法線方向から見たときの、下地基板2の長手方向と短手方向とである。長手方向X及び短手方向Yは、木質床板1の上面の法線方向、すなわち木質床板1の厚み方向に直交する。この木質床板1の厚み方向を、単に厚み方向Zともいう。
【0028】
図5に示すごとく、各木質ブロック板3は、合板301と、合板301の上面に順次積層した中板302及び木質表層板303とを有する。木質表層板303は、例えば、厚み1.8~2.1mm程度の挽板からなる。また、合板301の下面には、裏貼単板304が積層されている。これらの板材は、それぞれ接着材を介して、互いに接着されている。
【0029】
図1図2に示すごとく、木質床板1において、長手方向Xに隣り合う木質ブロック板3同士の間には、ブロック板斜辺32に沿って形成された表層溝部11が形成されている。表層溝部11は、木質ブロック板3のブロック板斜辺32に垂直な断面において、略V字形状を有する。表層溝部11の深さは、木質表層板303の厚みよりも浅い。つまり、表層溝部11は、中板302に到達していない。また、表層溝部11の深さは、木質表層板303の厚みの半分以上である。
【0030】
また、木質ブロック板3は、ブロック板斜辺32における上面側角部に、テーパ面33を有する。隣り合う木質ブロック板3のテーパ面33が、木質ブロック板3同士の継ぎ目にて合されることで、上述の断面略V字形状の表層溝部11が形成される。
【0031】
図2図4においては省略したが、木質床板1は、図6図9に示すごとく、一対の床板長辺12の一方と他方とに、それぞれ長辺雄実部121と長辺雌実部122とを有する。
【0032】
図6図7に示すごとく、木質床板1としては、互いに略鏡像関係の形状を有する第1の木質床板1aと、第2の木質床板1bとがある。第1の木質床板1aと、第2の木質床板1bとを組み合わせて、下記のフレンチヘリンボーン調の建物用床10を形成する。
【0033】
すなわち、図10に示すごとく、木質床板1を、長手方向X及び短手方向Yに複数枚継ぎ合わせて形成して、建物用床10が構築される。短手方向Yに隣り合う木質床板1同士は、床板長辺12に対する床板短辺13の傾斜方向が互いに逆である。つまり、第1の木質床板1aと第2の木質床板1bとを、短手方向Yに隣り合わせるように、配置する。
【0034】
図6に示すごとく、第1の木質床板1aは、互いの間に鈍角の角部141を形成する床板長辺12と床板短辺13とに、それぞれ、長辺雄実部121と短辺雄実部131とを形成している。そして、第1の木質床板1aは、互いの間に鈍角の角部142を形成する他の床板長辺12と床板短辺13とに、それぞれ、長辺雌実部122と短辺雌実部132とを形成している。
【0035】
図7に示すごとく、第2の木質床板1bは、互いの間に鋭角の角部143を形成する床板長辺12と床板短辺13とに、それぞれ、長辺雄実部121と短辺雄実部131とを形成している。そして、第2の木質床板1bは、互いの間に鋭角の角部144を形成する他の床板長辺12と床板短辺13とに、それぞれ、長辺雌実部122と短辺雌実部132とを形成している。
【0036】
これにより、第1の木質床板1aの長辺雌実部122に、第2の木質床板1bの長辺雄実部121を嵌入して、実接合する。また、第2の木質床板1bの長辺雌実部122に、他の第1の木質床板1aの長辺雄実部121を嵌入して、実接合する。
【0037】
また、長手方向Xにおいては、第1の木質床板1a同士、及び第2の木質床板1b同士を、互いに実接合して、連結する。
また、図10に示すごとく、床板短辺13同士の継ぎ目130は、その少なくとも一端において、他の継ぎ目130とつながらないように配置されている。本形態においては、継ぎ目130の一端が、他の継ぎ目130とつながり、継ぎ目130の他端は、他の継ぎ目130とつながらないようにずれている。
【0038】
すなわち、特定の一つの木質床板1に着目したとき、当該木質床板1に対して、短手方向Yの一方に隣接する木質床板1との間は、床板長辺12同士が長手方向Xにずれないように接合されている。一方、当該木質床板1に対して、短手方向Yの一方に隣接する木質床板1との間は、床板長辺12同士が長手方向Xにずれるように接合されている。ただし、他の継ぎ目130とつながっていない継ぎ目130の一端は、他方の木質床板1の表層溝部11とつながっている。
【0039】
このようにして、図10に示すごとく、フレンチヘリンボーン調の建物用床10が構築される。なお、図10は、継ぎ目130を、表層溝部11よりも太い線にて描いているが、これは便宜的なものである。継ぎ目130の幅と表層溝部11の幅とは、略同等であることが、意匠性の観点からは望ましい。後述する図20においても、同様である。
【0040】
次に、木質床板1を製造する方法につき、図11図18を用いて説明する。
まず、木質床板1の製造方法の一部を、概略として説明する。
下地基板2(図3参照)と、複数の木質ブロック板3(図16参照)とを、それぞれ作製する。そして、図17に示すごとく、複数の木質ブロック板3を、斜辺雄実部321と斜辺雌実部322とを実接合させつつ、下地基板2の上面に貼着する。
【0041】
次に、木質床板1の製造方法の具体例を、より詳細に説明する。
まず、図11図16に示すごとく、木質ブロック板3を製造するにあたり、合板301の表裏に、それぞれ中板302と裏貼単板304とを貼着する。ここでは、1枚の合板301に対して、その長手方向に並ぶように、2枚の中板302を貼着する。中板302は、例えば、厚み1mm程度の単板を用いることができる。
【0042】
1枚の合板301の上面に対して、2枚の中板302を、合板301の長手方向Xに並べて積層して、貼着する。また、1枚の合板301の下面に対して、3枚の裏貼単板304を短手方向Yに並べて積層して、貼着する。これにより、大判の積層板を得る。
【0043】
そして、中板302の繊維方向は、合板301の2つの表層の繊維方向に対して、交差するような方向としてある。本形態において、中板302の繊維方向は、合板301の表層の繊維方向に対して、略直交している。
【0044】
次に、図12に示すごとく、大判の積層板を、その長手方向に沿って切断して、長尺積層板300を得る。この長尺積層板300の上面に、図13に示すごとく、長尺の木質表層板303を貼着する。これにより、長尺のブロック板素材39を得る。
【0045】
その後、図14に示すごとく、長尺のブロック板素材39の素材長辺に、実加工を施すことで、長尺の素材雄実部391及び長尺の素材雌実部392を形成する。その後、図15図16に示すごとく、ブロック板素材39を、その素材長手方向及び素材短手方向に対して傾斜した互いに平行な傾斜面にて切断する。これにより、素材雄実部391の一部及び素材雌実部392の一部を斜辺雄実部321及び斜辺雌実部322として備えた複数の木質ブロック板3を作製する。
【0046】
なお、本形態においては、実加工後、切断前において、意匠面となる木質表層板303の上面に、UV塗装を行う。すなわち、紫外線硬化樹脂からなる塗料を木質表層板303の上面に塗布した後、紫外線を照射することによって膜を硬化させる。これにより、木質表層板303の表面に、塗膜を形成する。この塗膜は、透明または半透明のクリア塗膜である。
【0047】
その後、図15に示すごとく、ブロック板素材39を同図に示す一点鎖線に沿って、切断する。これにより、図16に示すごとく、複数の木質ブロック板3を得る。この段階で、木質ブロック板3は、斜辺雄実部321と斜辺雌実部322とを有する。
【0048】
これらの木質ブロック板3を、図17に示すごとく、互いに実接合させつつ、下地基板2(図3参照)の上面に並べて貼着する。
その後、図18に示すごとく、複数の木質ブロック板3のブロック板側辺31にわたり、長手方向Xに沿って連続して実加工を行う。これにより、木質床板1に、長辺雄実部121及び長辺雌実部122を形成する。
以上により、木質床板1を得る。
なお、図18に示す木質床板1は、上述の第2の木質床板1bに相当するが、第1の木質床板1aも、実質的に同様の製法にて得ることができる。
【0049】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記木質床板1において、下地基板2は、一対の基板長辺21と、一対の基板長辺21に対して傾斜した互いに平行な一対の基板短辺22とを有する。そして、配列方向の両端に配された木質ブロック板3の一方のブロック板斜辺32は、基板短辺22に沿って配置されている。これにより、複数の木質床板1を並べて建物用床10を構成したとき、長手方向Xの継ぎ目130(すなわち床板短辺13同士の継ぎ目130)も、木質ブロック板3のブロック板斜辺32と平行に形成されることとなる。これにより、ヘリンボーン調の模様が、木質床板1の継ぎ目130で分断されることを防ぐことができる。その結果、全体として、ヘリンボーン調の模様が連続的に自然に表れた、意匠性に優れた建物用床10を得ることができる。
【0050】
また、木質床板1は、下地基板2の上面に、複数の木質ブロック板3を配置してなる。これにより、木質床板1の上面(すなわち意匠面)に、厚みを有する複数の木質ブロック板3の表面を表出させることができる。これにより、木質床板1の意匠性を向上させやすい。
【0051】
また、1枚の木質床板1が、複数の木質ブロック板3を備えるため、建物用床10を施工する際、建築現場等における作業効率を向上させることができる。
また、配列方向の両端に配された木質ブロック板3の斜辺雄実部321と斜辺雌実部322が、木質床板1の短辺雄実部131と短辺雌実部132とになる。そのため、木質床板1の床板短辺13同士の継ぎ目130の構造を、木質床板1内における木質ブロック板3同士の継ぎ目(表層溝部11が形成される部分)と略同様にすることができる(図19参照)。その結果、木質床板1の床板短辺13同士の継ぎ目130が目立つことを抑制することができる。
【0052】
また、上記建物用床10は、木質床板1を複数枚継ぎ合わせて形成したものであるため、意匠性に優れている。
【0053】
また、木質床板1の製造方法においては、複数の木質ブロック板3を、斜辺雄実部321と斜辺雌実部322とを実接合させつつ、下地基板2の上面に貼着する。これにより、意匠性に優れた木質床板1を容易に製造することができる。
【0054】
長手方向Xに隣り合う木質ブロック板3同士の間には、表層溝部11が形成されている。これにより、複数の表層溝部11によって、ヘリンボーン調の模様をより際立たせることができる。その結果、木質床板1を用いた建物用床10の意匠性をより向上させることができる。また、木質表層板303の木目を表層溝部11に沿って形成することにより、木目と表層溝部11とが相俟って、ヘリンボーン調の模様をより際立たせることができる。その結果、建物用床10の意匠性をより向上させることができる。
【0055】
また、建物用床10において床板短辺13同士の継ぎ目130は、その少なくとも一端において、他の継ぎ目130とつながらないように配置されているものとすることができる(図10参照)。これにより、継ぎ目130が広範囲にわたって連続することを防ぐことができる。その結果、床板短辺13同士の継ぎ目130が目立つことを一層抑制し、意匠性に優れたヘリンボーン調の建物用床10を容易に形成することができる。
【0056】
複数の木質ブロック板3を作製するにあたっては、長尺のブロック板素材39の素材長辺に、実加工を施すことで、素材雄実部391及び素材雌実部392を形成した後、ブロック板素材39を、傾斜面にて切断する(図14図16参照)。これにより、素材雄実部391の一部及び素材雌実部392の一部を斜辺雄実部321及び斜辺雌実部322として備えた複数の木質ブロック板3を作製することができる。それゆえ、斜辺雄実部321及び斜辺雌実部322の実加工を効率的かつ容易に行うことができる。その結果、意匠性に優れた木質床板1を生産性良く製造することができる。
【0057】
以上のごとく、本実施形態によれば、意匠性に優れた木質床板及びその製造方法ならびに建物用床を提供することができる。
【0058】
(実施形態2)
本形態は、図20に示すごとく、複数の木質床板1の並べ方を変更した、建物用床10の形態である。
本形態においては、床板短辺13同士の継ぎ目130が、その両端において、他の継ぎ目130とつながらないように配置されている。すなわち、短手方向Yに隣り合う木質床板1同士が、長手方向Xにずれた状態で、接合されている。これにより、複数の継ぎ目130は、いずれも独立した状態で、散在することとなる。
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0059】
本形態においては、継ぎ目130がより目立たなくなりやすい。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0060】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の形態に適用することができる。
例えば、木質ブロック板の層構造は、上記の実施形態に示したものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0061】
1 木質床板
10 建物用床
13 床板短辺
131 短辺雄実部
132 短辺雌実部
2 下地基板
21 基板長辺
22 基板短辺
3 木質ブロック板
31 ブロック板側辺
32 ブロック板斜辺
321 斜辺雄実部
322 斜辺雌実部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図18
図19
図20