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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】行動誘導システム及び行動誘導方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 15/02 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A01K15/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018201340
(22)【出願日】2018-10-25
(65)【公開番号】P2019208496
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018106313
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、革新的研究開発プログラム(ImPACT)「タフ・ロボティクス・チャレンジ/ロボットプラットフォーム/動物サイボーグの研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】大野 和則
(72)【発明者】
【氏名】濱田 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】田所 諭
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0056531(US,A1)
【文献】特開2007-082514(JP,A)
【文献】特開2008-237076(JP,A)
【文献】特開2008-161172(JP,A)
【文献】特開2006-296221(JP,A)
【文献】特開2002-176873(JP,A)
【文献】特開2018-174830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成する照射装置と、
前記照射装置を制御して、四足動物を移動させる方向の地点に前記光を照射させる制御部と、
を備え、
前記照射装置は、前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光として、前記照射面で反射した光の輝度値と、前記照射面の周りの環境の輝度値との差が閾値以上となる光を前記照射面に形成し
前記四足動物に装着され、前記照射装置を複数搭載した取り付け具をさらに備え、
複数の前記照射装置は、前記四足動物の位置から所定の距離進んだ位置に前記光を照射する近距離用の照射装置と、前記近距離用の照射装置よりも遠い位置に前記光を照射する遠距離用の照射装置であり、
前記取り付け具には、前記四足動物の姿勢に関する姿勢データを取得するセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記センサにより得られる前記姿勢データに応じて、前記近距離用の照射装置及び前記遠距離用の照射装置を切り替えて制御して前記光を照射させる行動誘導システム。
【請求項2】
前記照射装置は、高輝度な光を照射する光源と、前記光源から照射された前記光を集光して前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成するレンズとを備える、請求項1に記載の行動誘導システム。
【請求項3】
前記照射装置は、前記光源から照射された前記光を反射する反射板を内部にさらに備える、請求項2に記載の行動誘導システム。
【請求項4】
前記照射装置は、前記光源を複数備える、請求項2に記載の行動誘導システム。
【請求項5】
前記照射装置は、前記レンズを複数備え、
複数の前記レンズは、凸面側が互いに向き合って設けられる、請求項2に記載の行動誘導システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記センサにより得られる前記姿勢データが予め定められた基準値以上である場合に前記近距離用の照射装置を制御して前記光を照射させ、前記センサにより得られる前記姿勢データが予め定められた基準値未満である場合に前記遠距離用の照射装置を制御して前記光を照射させる、請求項1から5のいずれか一項に記載の行動誘導システム。
【請求項7】
複数の前記照射装置の一部又は全ては、前記取り付け具において前記四足動物の身体で遮光されない位置に配置され、
前記制御部は、入力された指示に応じて、前記四足動物の身体で遮光されない位置に配置された照射装置を制御して前記光を照射させる、請求項1から6のいずれか一項に記載の行動誘導システム。
【請求項8】
前記四足動物に対して動作を指示するトリガーとなる音を出力する音出力装置をさらに備え、
前記音出力装置は、自装置を制御する装置からの指示に応じて、前記四足動物に対して前記光の探索を開始させる第1の音、又は、前記四足動物に対して前記光の探索を終了させる第2の音を出力する、請求項1からのいずれか一項に記載の行動誘導システム。
【請求項9】
四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成する照射装置を制御して、四足動物を移動させる方向の地点に前記光を照射させる制御ステップ、
を有し、
前記制御ステップにおいて、前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光として、前記照射面で反射した光の輝度値と、前記照射面の周りの環境の輝度値との差が閾値以上となる光を前記照射面に形成し、
前記照射装置を複数搭載した取り付け具が前記四足動物に装着され、
複数の前記照射装置が、前記四足動物の位置から所定の距離進んだ位置に前記光を照射する近距離用の照射装置と、前記近距離用の照射装置よりも遠い位置に前記光を照射する遠距離用の照射装置であり、
前記取り付け具には、前記四足動物の姿勢に関する姿勢データを取得するセンサがさらに備えられ、
前記制御ステップにおいて、前記センサにより得られる前記姿勢データに応じて、前記近距離用の照射装置及び前記遠距離用の照射装置を切り替えて制御して前記光を照射させる行動誘導方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動誘導システム及び行動誘導方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬を誘導する手法として、飛行中のUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を追うように犬を訓練することで任意の場所へ誘導する方法や、振動モータとスピーカーを搭載したスーツを犬に着せ、振動の位置や音の高低の組み合わせと移動方向を覚えさせることで誘導する方法が研究されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】“SWARMIX-Finding Linda”、SWARMIX、[online]、[平成30年10月25日検索]、インターネット〈URL:http://www.swarmix.ch/swarmix-finding-linda/>
【文献】Miller, J. and Bevly, D.M.“A system for autonomous canine guidance”、International Journal of Modelling Identification and Control, 2013 Vol.20, No.1, pp.33-46
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、事前に犬に学習させるための時間を多く要するという問題があった。このような問題は、犬に限らず、上記方法により四足動物を誘導する場合に生じる問題である。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、事前の学習に要する時間を削減して四足動物を誘導することができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成する照射装置と、前記照射装置を制御して、四足動物を移動させる方向の地点に前記光を照射させる制御部と、を備え、前記照射装置は、前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光として、前記照射面で反射した光の輝度値と、前記照射面の周りの環境の輝度値との差が閾値以上となる光を前記照射面に形成する行動誘導システムである。
【0007】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記照射装置は、高輝度な光を照射する光源と、前記光源から照射された前記光を集光して前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成するレンズとを備える。
【0008】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記照射装置は、前記光源から照射された前記光を反射する反射板を内部にさらに備える。
【0009】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記照射装置は、前記光源を複数備える。
【0010】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記照射装置は、前記レンズを複数備え、複数の前記レンズは、凸面側が互いに向き合って設けられる。
【0011】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記四足動物に装着され、前記照射装置を複数搭載した取り付け具をさらに備え、複数の前記照射装置は、前記四足動物の位置から所定の距離進んだ位置に前記光を照射する近距離用の照射装置と、前記近距離用の照射装置よりも遠い位置に前記光を照射する遠距離用の照射装置である。
【0012】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記取り付け具には、前記四足動物の姿勢に関する姿勢データを取得するセンサをさらに備え、前記制御部は、前記センサにより得られる前記姿勢データに応じて、前記近距離用の照射装置及び前記遠距離用の照射装置を切り替えて制御して前記光を照射させる。
【0013】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記制御部は、前記センサにより得られる前記姿勢データが予め定められた基準値以上である場合に前記近距離用の照射装置を制御して前記光を照射させ、前記センサにより得られる前記姿勢データが予め定められた基準値未満である場合に前記遠距離用の照射装置を制御して前記光を照射させる。
【0014】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、複数の前記照射装置の一部又は全ては、複数の前記照射装置の一部又は全ては、前記取り付け具において前記四足動物の身体で遮光されない位置に配置され、前記制御部は、入力された指示に応じて、前記四足動物の身体で遮光されない位置に配置された照射装置を制御して前記光を照射させる。
【0015】
本発明の一態様は、上記の行動誘導システムであって、前記四足動物に対して動作を指示するトリガーとなる音を出力する音出力装置をさらに備え、前記音出力装置は、自装置を制御する装置からの指示に応じて、前記四足動物に対して前記光の探索を開始させる第1の音、又は、前記四足動物に対して前記光の探索を終了させる第2の音を出力する。
【0016】
本発明の一態様は、四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成する照射装置を制御して、四足動物を移動させる方向の地点に前記光を照射させる制御ステップ、を有し、前記制御ステップにおいて、前記四足動物が視認可能な輪郭を有する光として、前記照射面で反射した光の輝度値と、前記照射面の周りの環境の輝度値との差が閾値以上となる光を前記照射面に形成させる行動誘導方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、事前の学習に要する時間を削減して四足動物を誘導することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態における行動誘導システムのシステム構成を表す構成図である。
図2】実施形態におけるLED光源モジュールの取り付けイメージを示す図である。
図3】実施形態におけるLED光源モジュールの機能構成を表す概略ブロック図である。
図4】実施形態における制御装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
図5】屋外における照射光の大きさと照度に関する実験例を示す図である。
図6】屋外における照射光の大きさと照度に関する実験例を示す図である。
図7】屋外における照射光の大きさと照度に関する実験例を示す図である。
図8】屋外のような明るい環境で犬が視認できるスポット光の照度に関する実験を行うための実験環境の概要を示す図である。
図9】光を照射する領域の実験環境の概要及び光の照射例を示す図である。
図10】屋外のような明るい環境で犬が視認できるスポット光の照度に関する実験の結果を示す図である。
図11】犬に搭載される照射装置に要求される照射距離の一例を示す図である。
図12】結像モデルの一例を示す図である。
図13】照射装置の要求仕様を満たすレンズを選定するための一例を示す図である。
図14】結像モデルから算出したレンズ焦点距離毎の照射光の直径、照度比及びLED-レンズ間の距離の関係を表す図である。
図15】第1の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図16】第2の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図17】第3の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図18】第4の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図19】光源として太陽光を用いた場合の照射装置の適用例を示す図である。
図20】光源として高輝度な光源を用いた場合の照射装置の適用例を示す図である。
図21】第5の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図22】第6の実施形態における照射装置の構成を示す図である。
図23】第7の実施形態における取り付け具に取り付けられる照射装置の設置位置の一例を示す図である。
図24】照射装置を第7の実施形態における取り付け具に取り付けるための構造の一例を示す図である。
図25】第7の実施形態におけるLED光源モジュールの機能構成を表す概略ブロック図である。
図26】第8の実施形態における取り付け具に取り付けるための構造の一例を示す図である。
図27】第8の実施形態におけるLED光源モジュールの機能構成を表す概略ブロック図である。
図28】低姿勢時においても遠くへ照射できる照射装置の角度を決定する方法の結果を示す図である。
図29】実験により得られた閾値をもとに、遠距離照射用の照射装置を取り付け具に搭載した一例を示す図である。
図30】第8の実施形態におけるLED光源モジュールの処理の流れを示すフローチャートである。
図31】犬の姿勢変化に対応した取り付け具の効果についての検証結果を説明するための図である。
図32】犬の姿勢変化に対応した取り付け具の効果についての検証結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(概要)
本発明における行動誘導システムは、光を用いて動物の行動を誘導するシステムである。行動誘導システムは、四足動物のうち光を追いかける習性をもつ動物に適用可能である。以下の説明では、一例として、犬に適用した場合を例に説明する。
【0020】
図1は、実施形態における行動誘導システム100のシステム構成を表す構成図である。行動誘導システム100は、LED光源モジュール10及び制御装置20を備える。LED光源モジュール10及び制御装置20は、有線又は無線により接続される。図1では、室外に犬30がいる状況を示している。行動誘導システム100では、LED光源モジュール10が、誘導対象となる犬30の身体に装着される取り付け具32に設けられる。取り付け具32は、犬30に巻きつくように構成されていてもよい。
【0021】
LED光源モジュール10は、制御装置20からの指示により、所定の大きさの輝度値の光を照射する。
制御装置20は、LED光源モジュール10を制御するための指示をLED光源モジュール10に出力する。
【0022】
図2は、LED光源モジュール10の取り付けイメージを示す図である。
図2に示すように、犬30には、取り付け具32が装着される。ここで、LED光源モジュール10が備える照射装置15は取り付け具32の前方方向に備えられる。図2(A)では、照射装置15が、犬30の胸と両肩にそれぞれ備えられている例を示している。また、照射装置15の装着イメージの拡大図を図2(B)に示す。なお、照射装置15を除くLED光源モジュール10が備える他の機能部は、取り付け具32の内部に備えられる。
【0023】
図3は、LED光源モジュール10の機能構成を表す概略ブロック図である。LED光源モジュール10は、入力部11、位置情報取得部12、照射情報記憶部13、制御部14及び照射装置15-1~15-n(nは2以上の整数)を備える。なお、以下の説明では、照射装置15-1~15-nについて区別しない場合には照射装置15と記載する。
【0024】
入力部11は、制御装置20から出力された指示を入力する。制御装置20から出力された指示には、目的地の座標位置及び犬30の種別等がある。目的地とは、犬30を誘導させる地点を表す。犬30の種別としては、大型犬、中型犬及び小型犬等の種別であってもよいし犬種であってもよい。
【0025】
位置情報取得部12は、犬30の現在位置の情報を取得する。具体的には、位置情報取得部12は、GPS(Global Positioning System)により犬30の現在位置の情報を取得してもよいし、その他の方法で犬30の現在位置の情報を取得してもよい。
照射情報記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。照射情報記憶部13は、照射情報を記憶する。照射情報とは、照射に関する情報であり、例えば犬30の種別毎に、光を動かす速度、光を照射する距離、照射時間の情報である。光を動かす速度は、ある位置に光を照射してから次の位置に光を照射する際の移動速度を表す。光を照射する距離は、犬30の現在位置を基準として、目的地までの移動経路上における照射先の距離を表す。例えば、光を照射する距離が1mであれば、犬30の現在位置から目的地までの移動経路上における1m先を表す。照射時間は、1つの地点で光の照射を継続する時間を表す。照射情報は、予め設定される。
【0026】
制御部14は、入力された指示と、取得された犬30の現在位置と、照射情報とに基づいて、照射装置15を制御する。具体的には、制御部14は、照射装置15の光の照射タイミング及び光の照射方向を制御する。
【0027】
照射装置15は、制御部14の制御に従って、四足動物が視認可能な輪郭を有する光を照射面に形成する。四足動物が視認可能な輪郭を有する光とは、照射先で反射した光の輝度値と、照射先の周りの環境の輝度値との差(以下「輝度差」という。)が閾値以上となる光を照射する。照射される光の輝度値は、予め設定されていてもよいし、ユーザが適宜設定してもよい。照射装置15が照射する光源としては、例えば高輝度LED(Light Emitting Diode)とレンズとの組み合わせが用いられる。照射装置15が照射する光源の色は何色であってもよい。
【0028】
図4は、実施形態における制御装置20の機能構成を表す概略ブロック図である。
制御装置20は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、制御プログラムを実行する。制御プログラムの実行によって、制御装置20は、指示入力部21、制御部22、出力部23を備える装置として機能する。なお、制御装置20の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。また、制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、制御プログラムは、電気通信回線を介して送受信されてもよい。
【0029】
指示入力部21は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、タッチパネル、ボタン等の既存の入力装置を用いて構成される。指示入力部21は、ユーザの指示を制御装置20に入力する際にユーザによって操作される。指示入力部21は、指示の入力を受け付ける。また、指示入力部21は、入力装置を制御装置20に接続するためのインタフェースであってもよい。この場合、指示入力部21は、入力装置においてユーザの入力に応じて生成された入力信号を制御装置20に入力する。
【0030】
制御部22は、出力部23を制御して、指示入力部21を介して入力された指示をLED光源モジュール10に出力させる。
出力部23は、制御部22の制御に従って、指示入力部21から入力された指示をLED光源モジュール10に出力する。
【0031】
光を利用した犬30の誘導手法として、室内の場合にはレーザ光を利用した手法が存在する。屋外のように、芝生や草むらなどの凹凸のある地面では、犬30がレーザ照射光を見つけられず、犬30を誘導できない場合がある。そこで、本実施形態では、犬30の誘導手法の構築の前段階として、屋外で犬30の誘導に利用できる照射装置15について検討する。
【0032】
まず、犬30が屋外で見てくれる光を照射可能な光源を明らかにする。見つけやすい照射光として、大きさと照度に着目する。大きさに関しては、従来の研究で実現されている直径3mmでは、屋外の凹凸のある地面では犬30が照射光を見つけにくい。また、照度が低いと屋外の明るい環境光に埋もれてしまい、犬30は照射光を見つけにくいと考えられる。そこで、屋外で犬30が見つけられる照射光として、地面の凹凸に埋もれない大きさで、かつ、照度が環境光より高い照射光であると仮説する。この仮説をもとに、照射光の大きさと照度について検討する。
【0033】
図5図7は、屋外における照射光の大きさと照度に関する実験例を示す図である。屋外における照射光の大きさと照度に関する実験にあたり、検討する光源の照射光を、自由に動き回れる犬30の正面1m付近の地面に照射し、犬30の反応を観察する。そして、犬30が照射光を見たと判断したら、誘導方向へ照射光を動かす。犬30が照射光を追う動きがあれば誘導できたとする条件下で実験を行っている。
【0034】
図5は、光源として、高輝度の懐中電灯を用いた場合を示している。図6は、光源として、高輝度の懐中電灯と、凸レンズとを用いた場合を示している。図7は、光源として、1個の高輝度LEDと、凸レンズとを用いた場合を示している。
【0035】
まず図5について説明する。図5では、照射光が大きく、照度が高い光源として、高輝度LEDを12個搭載した懐中電灯を用いて検証した。照射光は、1m先の壁に垂直に照射した場合、図5(A)に示すように直径600mm、照度5000lxであった。実験環境は、屋外の芝生で、天気は曇、時刻は夕方16時ごろである。被験体の条件は、実験時1才、メスのスタンダード・プードルである。
【0036】
検証した結果、犬30が光を見て追う動きを観察できなかった。懐中電灯の照射光は、図5(B)に示すように、広い範囲に拡散されて、ぼんやりと明るい部分が見えるだけであった。そのため、犬30は、照射光を見つけにくかったと考えられる。
【0037】
次に図6について説明する。図6では、高輝度な懐中電灯の光を凸レンズで集光し、より明るくした照射光で検証した。懐中電灯とレンズを手で持ち、照射光が明るくなるように懐中電灯と、レンズとの間の距離を調節した。照射光は、1m先の壁に垂直に照射した場合、図6(A)に示すように直径200mm、照度10000lxであった。実験環境は、屋外の芝生で、天気は曇、時刻は夕方16時ごろである。被験体の条件は、実験時1才、メスのスタンダード・プードルである。
【0038】
検証した結果、犬30が照射光を見て追う動きを観察できた。高輝度な懐中電灯と、凸レンズとの組み合わせによる照射光は、図6(B)に示すように、集光されてエッジが際立っていることがわかる。また、集光した照射光のエッジがはっきりしていないと犬30は照射光を追わないこともわかった。懐中電灯の光を凸レンズによる集光でより明るくし、エッジを際立たせ照射光を利用することで、屋外で犬30を誘導できることがわかった。
【0039】
次に図7について説明する。図7では、光源の数が少なくても凸レンズによる集光でエッジを際立たせた照射光であれば、犬30を誘導できるか検証した。そこで、図7では、1個の高輝度LEDでも犬30を誘導できるか検証を行った。照射装置としては、高輝度LEDと、凸レンズの光軸を合わせ、1m先の照射光のエッジが際立つようにLEDと、レンズとの間の距離を固定した。照射光は、1m先の壁に垂直に照射した場合、図7(A)に示すように直径30mm、照度20000lxであった。実験環境は、屋外の芝生で、天気は曇、時刻は夕方16時ごろで環境光の照度が1800lxである。被験体の条件は、実験時2才、メスのスタンダード・プードルである。
【0040】
検証した結果、犬30が光を見て追う動きを観察できた。1個の高輝度LEDと、凸レンズとの組み合わせによる照射光は、図7(B)に示すように、集光されてエッジが際立っていることがわかる。このように、高輝度LED1個でも、光を凸レンズで集光してエッジを際立たせた光であれば犬30を屋外で誘導できることがわかった。
【0041】
図5図7の実験結果より、屋外で犬30の誘導に適する光は、光源が1個以上の高輝度LEDで、かつ、LED光を凸レンズで集光してエッジを際立たせた照射光であることがわかった。以下の説明では、照射光をスポット光と称する。また、犬30の誘導に利用できるスポット光として、大きさは屋内であれば3mm以上、屋外であれば20mm以上が好ましい。ただし、草むらや凸凹等のある屋外の場合には、スポット光の大きさは30mm以上であることが好ましい。また、照射装置を犬30に搭載することを踏まえ、照射装置を小型化することを考えると、照射装置が形成するスポット光の大きさは、20~300mmであることがより好ましい。スポット光の照度は10000lx程度であると検討付けられた。
【0042】
次に、図8図10を用いて、屋外のような明るい環境で犬30が視認できるスポット光の照度に関する実験例について説明する。
図8は、屋外のような明るい環境で犬30が視認できるスポット光の照度に関する実験を行うための実験環境の概要を示す図である。図8に示すように、室内を犬30が動き回れる領域Aと、光を照射する領域Bとの間を衝立33で隔てている。衝立33の1箇所に、犬30が任意のタイミングで反対側(例えば、光を照射する領域B)に顔を出せる窓34を設けた。また、領域Bには、屋外環境に近づけるため、スポット光が照射される地面には人工芝を設置している。また、領域Bには、環境光の代わりとなるハロゲンランプ35が人工芝に向けて設けている。
【0043】
図9は、光を照射する領域の実験環境の概要及び光の照射例を示す図である。図9(A)に示すように、光を照射する領域Bには、ハロゲンランプ35、照射装置36及び近接センサ37が設置されている。
【0044】
照射装置36は、1個の高輝度LEDと、凸レンズとで構成されているものを使用した。なお、照射装置36の高輝度LEDと、凸レンズとの光軸は合わせており、窓の1m先にスポット光が照射されるようにLEDと、凸レンズとの距離を固定した。また、スポット光の大きさは直径50mmである。照射装置36は、犬30が顔を出すと近接センサ37が反応し、近接センサ37が検出したことに応じてスポット光を照射する。照射装置36は、モータにより図9(B)に示すように左右120°、1m/sでスポット光を照射する。
【0045】
近接センサ37は、窓34に設置され、犬30が窓34から顔を出したことを検出する。ハロゲンランプ35は、人工芝の上の照度を3500lxと高くし、屋外の朝方・夕方と同程度の照度とした。
【0046】
検証方法は、環境光とスポット光の照度差毎に、犬30が窓34から顔を出した回数に対して、犬30が顔で光を追った回数の割合を算出した。犬30がしばらく窓34から顔を出さないときは、犬30の名前を呼ぶ、又は、窓34にエサを置くことで窓34に近づくようにした。検証する環境光とスポット光の照度差は、1000、2500、5000、10000、20000、30000、40000lxである。各照度差で10分間の検証を行った。被験体は、実験時3才で、オスのスタンダード・プードルである。
【0047】
図10は、屋外のような明るい環境で犬30が視認できるスポット光の照度に関する実験の結果を示す図である。図10の横軸は環境光(ハロゲンランプ35)と、スポット光の照度差を表し、縦軸は犬30が顔を出した回数に対して光を見た回数の割合を表す。図10に示す結果では、3500lxの環境光下では、全て環境光とスポット光の照度差で、犬30は直径50mmのスポット光を見つけられた。このことから、環境光とスポット光の照度差が1000lx程度でも犬30はスポット光を見つけられることがわかった。また、環境光とスポット光の照度差が大きいほど、犬30はスポット光を見つけられる割合が高くなる傾向があった。そのため、照度が高いスポット光ほど、高い割合で犬30を誘導することができるものと考えられる。
【0048】
図11は、犬30に搭載される照射装置15に要求される照射距離の一例を示す図である。図11に示すように、犬30の目から水平方向1m先の位置が、犬30が光を見つけやすい位置である。また、照射装置15は、一般的に犬30の肩や胸辺りが安定するため、搭載される可能性が高い。犬30の肩付近に照射装置15が搭載されるものとすると、犬30に搭載される照射装置15に要求される照射距離は、図11に示すようにおよそ1280mmであると推定される。なお、犬30の犬種によって目の位置や犬30の大きさが異なるため、必ずしも照射距離は1280mmであるとは限らない。犬30の犬種毎の照射距離は、例えば図11のように求められる。本実施形態では、一例として照射距離が1280mmである場合を例に説明する。
【0049】
犬30を誘導するための照射装置は、犬30に搭載する必要がある。そのため、図3に示す照射装置15は、屋外で犬30が見つけられるスポット光を照射可能で、かつ、犬30に搭載可能な小型の照射装置である必要がある。また、照射装置15は、屋外で犬30を誘導することを踏まえ、図5図7の実験により得られた結果から1個の高輝度LEDと、凸レンズとで構成されるものとする。この場合、照射装置15におけるスポット光の照射方法は、図12の結像モデルに示すように、LEDの発光部からの光を凸レンズに通し、照射面へ結像することでスポット光となる。図12において、aはLEDとレンズ間の距離を表し、bは実像とレンズ間の距離を表し、fは焦点距離を表し、wはLEDの発行部の大きさを表し、dはスポット光の大きさを表す。
【0050】
結像モデルから得られる式を使って、照射装置15の要求仕様に合うLEDと、レンズの組み合わせを選定する。本実施形態における要求仕様は、例えば輪郭がある光、すなわちエッジが際立ったスポット光を形成できること、スポット光の大きさが30mm以上であること、スポット光の照度が1000lx以上であること、照射距離が1000mm以上であること及び照射装置15の長さが150mm以内であることである。例えば、ジャック・ラッセル・テリアなどの小型犬であれば照射装置15の長さをより小さくするのが好ましい。なお、照射装置15の長さは、犬種によっては150mm以上であってもよい。ゴールデン・レトリバー、ジャーマン・シェパード・ドッグ等の大型犬であれば照射装置15の長さが150mm以上であってもよい。結像の公式であるガウスの結像公式を式(1)として、結像モデルから得られる三角形の相似を式(2)に示す。式(1)、(2)から得られる、スポット光の大きさと焦点距離の関係式を式(3)に示す。
【0051】
【数1】
【数2】
【数3】
【0052】
照射距離を、例えば1280mmとするため、結像モデルのbは1280mmとする。また、LEDの発光部の大きさwを、既存の製品で入手可能なもので構成したためw=5とした。ただし、LEDの発光部の大きさは、w=5に限られない。また、本実施形態では、一例としてレンズの焦点距離fを、50、65、100及び150mmの4種類としているが、焦点距離fはこれに限られない。例えば、20mm以上のスポット光を形成できる焦点距離fと、LEDの発光部の大きさであればその他の値であってもよい。本実施形態の一例として、LEDの発光部の大きさw=5、レンズの焦点距離fを50、65、100及び150mmとして、式(3)で示される図を描くことによってレンズの焦点距離とスポット光の大きさの関係を示す。図13は、照射装置15の要求仕様を満たすレンズを選定するための一例を示す図である。図13(A)において、横軸はレンズの焦点距離を表し、縦軸は照射光の直径を表す。図13(B)において、横軸はレンズの焦点距離を表し、縦軸はLED-レンズ間の距離を表す。
【0053】
図14は、結像モデルから算出したレンズ焦点距離毎の照射光の直径、照度比及びLED-レンズ間の距離の関係を表す図である。
図14に示すように、レンズの焦点距離fが50、65mmの場合には、照射装置15に要求される照度よりも低いため、好ましくないことがわかる。また、レンズの焦点距離fが150mmの場合には、照射装置15に要求される照射装置15の長さよりも照射装置15の長さが長くなってしまうため、好ましくないことがわかる。それに対して、レンズの焦点距離fが100mmの場合には、照射装置15に要求される条件を満たしていることがわかる。そこで、本実施形態では、照射装置15におけるレンズの焦点距離を100mmとする。
【0054】
(第1の実施形態)
図15は、第1の実施形態における照射装置15の構成を示す図である。
照射装置15は、筒151、LED152、レンズ153及びヒートシンク154を備える。筒151は、円筒の筒状の物体で構成され、一部に開口部が設けられる。LED152は、発光部を備え、制御部14の制御に応じて光を照射する。LED152は、筒151の開口部と反対側の端部に設置される。レンズ153は、凸レンズであり、LED152から照射された光を集光する。レンズ153は、筒151の開口部に設けられる。これにより、エッジが際立ったスポット光が照射面に形成される。ヒートシンク154は、LED152の熱を放熱する。
【0055】
以上のように構成された行動誘導システム100によれば、事前の学習に要する時間を削減して四足動物を誘導することが可能となる。具体的には、犬30は、光を追いかける習性があるため、照射された光を追いかける。この習性を利用して、LED光源モジュール10が、目的地への移動経路上に光を照射して、誘導対象となる犬30を誘導する。そのため、事前の学習に要する時間を削減して四足動物を誘導することができる。また、LED光源モジュール10における照射装置15は、エッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
【0056】
(変形例)
LED光源モジュール10は、撮像装置をさらに備えてもよい。このように構成される場合、撮像装置は、照射装置15の光軸と、撮像装置のレンズの光軸とが略同じ方向を向くように設置される。ここで、略同じ方向とは、照射装置15が照射した光を撮像装置が撮像可能な方向を表す。
行動誘導システム100は、LED光源モジュール10を複数備えてもよい。
【0057】
(第2の実施形態)
図16は、第2の実施形態における照射装置15aの構成を示す図である。
照射装置15aは、筒151、LED152、レンズ153、ヒートシンク154、リフレクタ155及び鏡156を備える。照射装置15aは、リフレクタ155及び鏡156を新たに備える点で照射装置15と構成が異なる。その他の構成については、照射装置15と同様であるため、相違点についてのみ説明する。
【0058】
リフレクタ155は、LED152から照射された光40を反射する反射板である。リフレクタ155は、LED152から照射された光40をレンズ153に反射させるようにLED152の周りに設けられる。
鏡156は、LED152から照射された光40を反射する反射鏡である。鏡156は、筒151に光40が吸収、又は、光40が筒151を透過しないように、筒151の内面に沿って設けられている。
【0059】
以上のように構成された照射装置15aによれば、LED152から照射された光40をリフレクタ155及び鏡156それぞれにより反射させることにより、図16に示すように、光40が筒151に吸収、又は、光40が筒151を透過せずにレンズ153に向かう。このように、レンズ153に向かう光量を増加させることができる。したがって、高い照度のスポット光を形成することができる。すなわち、照射装置15aは、照射装置15に比べてよりエッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
【0060】
(変形例)
鏡156は、筒151の内側の全面に設けられる必要はなく、一部に設けられてもよい。
【0061】
(第3の実施形態)
図17は、第3の実施形態における照射装置15bの構成を示す図である。
照射装置15bは、筒151、複数のLED152-1~152-3、レンズ153及びヒートシンク154を備える。照射装置15bは、LED152を複数備える点で照射装置15と構成が異なる。その他の構成については、照射装置15と同様であるため、相違点についてのみ説明する。
LED152-1~152-3は、発光部を備え、制御部14の制御に応じて光を照射する。
【0062】
以上のように構成された照射装置15bによれば、LED152を複数備えることによって、レンズ153に向かう光量を増加させることができる。したがって、高い照度のスポット光を形成することができる。すなわち、照射装置15bは、照射装置15に比べてよりエッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
【0063】
(第4の実施形態)
図18は、第4の実施形態における照射装置15cの構成を示す図である。
照射装置15cは、パラボラアンテナ157、鏡158、複数の光ファイバ159及び複数のレンズ153を備える。
パラボラアンテナ157は、外部からの光を集光する。例えば、パラボラアンテナ157は、太陽又は高輝度な光源(例えば、LED152)から照射される光を集光する。
鏡158は、パラボラアンテナ157に集光された光を反射する。
以下の説明では、パラボラアンテナ157と鏡158の組み合わせをパラボラ集光器と記載する。
【0064】
光ファイバ159は、一端にパラボラアンテナ157が接続され、他端にレンズ153が設けられる。光ファイバ159は、パラボラアンテナ157によって集光、又は、鏡158によって反射された光をレンズ153を介して集光して照射面に像を結像させる。
レンズ153は、凸レンズであり、光ファイバ159を介して出力された光を集光する。
【0065】
次に、図19及び図20を用いて、照射装置15cの適用例について説明する。
図19は、光源として太陽光を用いた場合の照射装置15cの適用例を示す図である。図19に示すように、照射装置15cは、パラボラ集光器(パラボラアンテナ157及び鏡158)が犬30の背中に設けられ、レンズ153が光ファイバ159により犬30の胸又は肩付近に設けられて利用される。光源が太陽42から照射される太陽光である場合、パラボラ集光器は太陽光を集光する。そして、パラボラ集光器によって集光された太陽光が、光ファイバ159を介してレンズ153で集光されて照射面で結像される。
【0066】
図20は、光源として高輝度な光源を用いた場合の照射装置15cの適用例を示す図である。図20に示すように、照射装置15cは、パラボラ集光器(パラボラアンテナ157及び鏡158)が犬30の背中に設けられ、レンズ153が光ファイバ159により犬30の胸又は肩付近に設けられて利用される。光源が高輝度な光源(例えば、LED152)から照射される光である場合、パラボラ集光器は光を集光する。そして、パラボラ集光器によって集光された光が、光ファイバ159を介してレンズ153で集光されて照射面で結像される。
【0067】
以上のように構成された照射装置15cによれば、高輝度な光を照射する光源の光を利用することができる。したがって、照射装置15cは、エッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
【0068】
(第5の実施形態)
図21は、第5の実施形態における照射装置15dの構成を示す図である。
照射装置15dは、筒151、LED152、ヒートシンク154及び複数のレンズ160-1~160-2を備える。照射装置15dは、レンズ153に代えてレンズ160を複数備える点で照射装置15と構成が異なる。その他の構成については、照射装置15と同様であるため、相違点についてのみ説明する。
【0069】
レンズ160-1~160-2は、平凸レンズであり、LED152から照射された光を集光する。レンズ160-1~160-2は、凸面側が向かい合うように設けられる。これにより、レンズ160-1ではLED152から照射された光を平行光にし、レンズ160-2ではレンズ160-1によって平行光にされた光をスポット光として照射面41に結像する。
【0070】
レンズ160-1とレンズ160-2と間の光は平行光であるため、2枚のレンズ160間の距離は任意の長さにでき、最短は接した状態である。よって、照射装置15dの最短の長さは、f1+t1+t2であり、ほとんどf1が影響する。すなわち、レンズ160-1の焦点距離が短いほど、照射装置15dの長さ(LED152が設置されている面に垂直な方向の長さ)は短くなる。なお、fnはレンズ160-n(nは1以上の整数)の焦点距離を表し、tnはレンズ160-nの厚さを表す。
【0071】
ただし、焦点距離が短いほどレンズ160が厚くなり、収差が大きくなり、結像がぼやけると考えられる。そのため、いくつかの焦点距離のレンズ160で実験を行って輪郭がある、すなわち、エッジが際立ったスポット光になるレンズ160-1及び160-2の組み合わせを選定する必要がある。照射装置15dの長さは、照射装置15に比べて半分くらいの長さになることが想定される。
【0072】
以上のように構成された照射装置15dによれば、エッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
また、照射装置15dは、2枚のレンズ160-1及びレンズ160-2を組み合わせて用いることによって照射装置15dの長さを短くすることができる。
【0073】
(第6の実施形態)
図22は、第6の実施形態における照射装置15eの構成を示す図である。
照射装置15eは、筒151、LED152、レンズ153、ヒートシンク154及び鏡161を備える。照射装置15eは、鏡161を新たに備える点で照射装置15と構成が異なる。その他の構成については、照射装置15と同様であるため、相違点についてのみ説明する。
【0074】
鏡161は、LED152から照射された光を反射する反射鏡である。
光路の長さが同じであれば、図22に示すように鏡161を使って光路を折り、レンズ153で集光する。
【0075】
以上のように構成された照射装置15eによれば、エッジが際立ったスポット光を照射面に形成する。これにより、屋外のような明るい環境であっても犬30がスポット光を見つけることができる。そのため、屋外においても四足動物を誘導することができる。
また、照射装置15eは、筒151の一部を曲げて光路を折ることによって犬30の体の横から飛び出る照射装置15eの部分の長さを短くすることができる。
【0076】
(第7の実施形態)
第1の実施形態から第6の実施形態では、照射装置が3方向(例えば、犬の胸と両肩にそれぞれ1つずつ)に備えられている構成で説明した。このような構成において犬が光を見つけ捕まえようと前のめりになった場合、犬の頭で光が遮られることによって誘導できなくなる可能性がある。そこで、第7の実施形態では、このような問題を解消するための構成について説明する。第7の実施形態では、取り付け具において犬の身体で遮光されない位置に照射装置を配置される。具体的には、第7の実施形態では、犬の頭で遮られない位置に光源である照射装置を追加する。
【0077】
まず、犬30の頭で遮られない位置の決定方法について説明する。
まず、ユーザが、地面に犬30の興味を引く物を置き、犬30が首をまっすぐ伸ばした状態又は少し下を向いた状態を作る。
次に、ユーザが、犬30が首をまっすぐ伸ばした状態又は少し下を向いた状態で、照射装置15が犬30の顔や耳等の頭の一部にかからない位置に照射装置15を設置する。
【0078】
照射装置15の設置位置は、図23に示す通りである。
図23は、第7の実施形態における取り付け具32fに取り付けられる照射装置15の設置位置の一例を示す図である。図23(A)は、照射装置15の第1の設置位置の一例を示す図である。図23(B)は、照射装置15の設置位置の一例を示す図である。
図23において取り付け具32fには、図2に示す取り付け具32と比較して、4つの照射装置15-1~15-4が取り付けられている。照射装置15-1~15-4は、第1の実施形態~第6の実施形態に示したいずれかの照射装置であり、第1の実施形態~第6の実施形態に示した照射装置のいずれが組み合わされていてもよいし、全て同じ照射装置であってもよい。
【0079】
まず、照射装置15の第1の設置位置について説明する。
照射装置15の第1の設置位置としては、犬30の前足上腕部又は肩胛部等の犬30の肩付近である。具体的には、図23(A)に示すように、照射装置15-1~15-4が、取り付け具32fの犬30の両肩付近に対応する位置に2つずつ異なる角度で設置される。例えば、図23(A)では、照射装置15-1及び15-2が、取り付け具32fの犬30の左肩付近の位置に異なる角度で設置され、照射装置15-3及び15-4が、取り付け具32fの犬30の右肩付近の位置に異なる角度で設置されている。
【0080】
照射装置15-1は、犬30の進行方向に対して左方向に光を照射する位置に設置される。照射装置15-2は、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する位置に設置される。照射装置15-3は、犬30の進行方向に対して右方向に光を照射する位置に設置される。照射装置15-4は、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する位置に設置される。
【0081】
次に、照射装置15の第2の設置位置について説明する。
照射装置15の第2の設置位置としては、犬30の前足上腕部又は肩胛部等の犬30の肩付近及び下胸の左右側面(胸骨の左右側面、人間で言う脇腹)である。具体的には、図23(B)に示すように、照射装置15-1及び15-3が取り付け具32fの犬30の下胸の側面付近に対応する位置に設置され、照射装置15-2及び15-4が取り付け具32fの犬30の両肩付近に対応する位置に設置される。例えば、図23(B)では、照射装置15-1が、取り付け具32fの犬30の左側面付近の位置に設置され、照射装置15-2が、取り付け具32fの犬30の左肩付近の位置に設置され、照射装置15-3が、取り付け具32fの犬30の右側面付近の位置に設置され、照射装置15-4が、取り付け具32fの犬30の右肩付近の位置に設置されている。
【0082】
照射装置15-1は、図23(A)と同様に、犬30の進行方向に対して左方向に光を照射する位置に設置される。照射装置15-2は、図23(A)と同様に、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する位置に設置される。照射装置15-3は、図23(A)と同様に、犬30の進行方向に対して右方向に光を照射する位置に設置される。照射装置15-4は、図23(A)と同様に、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する位置に設置される。
以上のように、照射装置15-1及び照射装置15-3は、横方向(左右)照射用の照射装置であり、照射装置15-2及び照射装置15-4は、前方照射用の照射装置である。
【0083】
図24は、照射装置15を取り付け具32fに取り付けるための構造の一例を示す図である。
図24に示すように、照射装置15は、取り付け部材51により取り付け具32fに取り付けられる。取り付け部材51は、軸受け部52及び固定部53を備える。照射装置15と、軸受け部52とは、接続部材54を介して接続される。具体的には、接続部材54の第1端部541が照射装置15の一部に固定され、接続部材54の第2端部542が軸受け部52に固定されることによって、照射装置15と、軸受け部52とが接続される。第2端部542は、球体であり、照射装置15の向きを自由に変更することができる。軸受け部52は、照射装置15の向きを変えるために第2端部542を可動に支持する。固定部53は、例えばネジであり、第2端部542の位置を固定する。
上記のような構成により、照射装置15は、取り付け具32fに設置された後であっても、向きを自由に変更することができる。
【0084】
図25は、第7の実施形態におけるLED光源モジュール10fの機能構成を表す概略ブロック図である。LED光源モジュール10fは、制御装置20からの指示により、所定の大きさの輝度値の光を照射する。
LED光源モジュール10fは、入力部11、位置情報取得部12、照射情報記憶部13、制御部14f及び照射装置15-1~15-o(oは4以上の整数)を備える。本実施形態では、oが4の場合を例に説明する。なお、照射装置15を除くLED光源モジュール10fが備える他の機能部は、取り付け具32fの内部に備えられる。
LED光源モジュール10fは、制御部14に代えて制御部14fを備える点でLED光源モジュール10と構成が異なる。LED光源モジュール10fは、他の構成についてはLED光源モジュール10と同様である。そのため、LED光源モジュール10f全体の説明は省略し、制御部14fについて説明する。
【0085】
制御部14fは、制御部14と同様の動作を行う。また、制御部14fは、入力された指示に応じて、指示された方向に光を照射する照射装置15を制御して光を照射させる。例えば、犬30の進行方向に対して左方向に光を照射する指示が制御装置20を介してLED光源モジュール10fに入力された場合、制御部14fは、入力された指示に応じて、犬30の進行方向に対して左方向に光を照射する照射装置15-1を制御して光を照射させる。
【0086】
また、例えば、犬30の進行方向に対して右方向に光を照射する指示が制御装置20を介してLED光源モジュール10fに入力された場合、制御部14fは、入力された指示に応じて、犬30の進行方向に対して右方向に光を照射する照射装置15-3を制御して光を照射させる。
また、例えば、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する指示が制御装置20を介してLED光源モジュール10fに入力された場合、制御部14fは、入力された指示に応じて、犬30の進行方向に対して前方に光を照射する照射装置15-2及び15-4を制御して光を照射させる。
【0087】
以上のように構成された第7の実施形態における行動誘導システム100によれば、犬30の頭で遮られない取り付け具32fの位置に照射装置15が設置されている。したがって、犬30が光を追いかけて頭を動かした場合であっても犬30を誘導することができる。
【0088】
(変形例)
本実施形態では、一例として取り付け具32fにおいて犬30の両肩付近の位置に4台の照射装置15を搭載する構成(図23(A))を示したが、取り付け具32fにおいて犬30の両肩付近の位置に5台以上の照射装置15が搭載されてもよい。
本実施形態では、照射装置15の向きを変えるために接続部材54を用いたが、接続部材54に代えてアクチュエーターが用いられてもよい。
犬30の頭で遮られない位置を決定する方法として、次のような方法が行われてもよい。具体的には、行動誘導システム100が、犬30の興味を引く物の近く(例えば、上部や後方等)から犬30を撮像する撮像装置を備え、撮像装置が撮像した画像を制御装置20に送信する。制御装置20は、撮像された画像から、犬30が首をまっすぐ伸ばした状態又は少し下を向いた状態に該当する画像を検索する。そして、制御装置20は、検索した画像において犬30の頭を認識し、犬30の頭を左右に動かした場合であっても照射装置が隠れない犬30の部位を、犬30の頭で遮られない位置、すなわち照射装置15の設置候補位置として決定する。制御装置20は、決定した照射装置15の設置候補位置をユーザに提示する。そして、ユーザは、提示された照射装置15の設置候補位置の中から目的の位置に照射装置15を設置する。
【0089】
(第8の実施形態)
第7の実施形態では、犬が光を捕まえようと低姿勢になった場合には、光が犬に近づいてしまい誘導できなくなる可能性がある。そこで、第8の実施形態では、このような問題を解消するための構成について説明する。具体的には、第8の実施形態では、低姿勢時においても遠くへ照射できる照射装置を追加し、犬の姿勢に合わせて照射する照射装置を自動で切り替える。
【0090】
図26は、第8の実施形態における取り付け具に取り付けるための構造の一例を示す図である。図26(A)は、取り付け具32gを取り付けた犬30を上方向から撮影した図である。図26(B)は、取り付け具32gを取り付けた犬30を横方向から撮影した図である。
図26において取り付け具32gには、照射装置15-1~15-4に加えて、さらに4つの照射装置15-5~15-8及びIMUセンサ55が取り付けられる。照射装置15-5~15-8は、第1の実施形態~第6の実施形態に示したいずれかの照射装置であり、第1の実施形態~第6の実施形態に示した照射装置のいずれが組み合わされていてもよいし、全て同じ照射装置であってもよい。
【0091】
照射装置15-5~15-8は、取り付け具32gの犬30の両肩付近に対応する位置に2つずつ異なる角度で設置される。例えば、図26(A)及び(B)では、照射装置15-5及び15-6が、取り付け具32gの犬30の左肩付近の位置に異なる角度で設置され、照射装置15-7及び15-8が、取り付け具32gの犬30の右肩付近の位置に異なる角度で設置されている。
【0092】
例えば、照射装置15-5及び15-7の設置角度は図2に示す照射装置15と同じ角度であり、照射装置15-6及び15-8の設置角度は、鉛直方向に対して照射装置15-5及び15-7よりも所定の角度だけ大きい。これにより、照射装置15-6及び15-8は、照射装置15-5及び15-7よりも遠い位置に光を照射することができる。所定の角度は、予め実験などにより得られる角度であり、例えば犬30が低姿勢になった場合であっても、犬30の位置より遠い位置に光を照射できる角度である。
【0093】
なお、以下の説明では、照射装置15-5及び15-7を近距離照射用の照射装置として説明し、照射装置15-6及び15-8を遠距離照射用の照射装置として説明する。このように、第8の実施形態における取り付け具32gには、近距離照射用の照射装置と、遠距離照射用の照射装置とが同一の方向に設置される。遠距離照射用の照射装置は、犬30が低姿勢になった場合に用いられる照射装置である。また、照射装置15-1~15-4が取り付け具32gに設置されている場合、照射装置15-5~15-8は照射装置15-1~15-4よりも上方に設置される。
上記のように、取り付け具32gは、犬30の姿勢変化に対応した取り付け具である。
【0094】
IMUセンサ55は、IMUセンサ55を身に着けている物体(例えば、犬)の姿勢を検知することができるセンサである。IMUセンサ55は、3軸ジャイロセンサ、加速度計、磁力計を搭載し、重力ベクトルやオイラー角、四元数などの3D位置や姿勢データを取得する。IMUセンサ55は、より精度よく犬30の姿勢を検知するために犬30の背中付近に設けられる。
【0095】
図27は、第8の実施形態におけるLED光源モジュール10gの機能構成を表す概略ブロック図である。LED光源モジュール10gは、入力部11、位置情報取得部12、照射情報記憶部13、制御部14g、照射装置15-1~15-o及びIMUセンサ55を備える。本実施形態では、oが4の場合を例に説明する。
LED光源モジュール10gは、制御部14fに代えて制御部14gを備える点、IMUセンサ55を新たに備える点でLED光源モジュール10fと構成が異なる。LED光源モジュール10gは、他の構成についてはLED光源モジュール10fと同様である。そのため、LED光源モジュール10g全体の説明は省略し、IMUセンサ55及び制御部14gについて説明する。なお、IMUセンサ55は、上記で説明したため説明を省略する。なお、照射装置15を除くLED光源モジュール10gが備える他の機能部は、取り付け具32gの内部に備えられる。
【0096】
制御部14gは、制御部14fと同様の動作を行う。また、制御部14gは、IMUセンサ55によって取得された犬30の姿勢データに基づいて犬30の姿勢を判定して、犬30の姿勢に応じた照射装置15を制御して光を照射させる。
【0097】
ここで、低姿勢時においても遠くへ照射できる照射装置15の角度を決定する方法について説明する。まず、取り付け具32gを犬30に装着して以下の条件で実験を行った。
・光を照射する、えさを与える、飼い主と遊ぶなどして犬30を動かす
・犬30の動きを撮影した動画と、動画に対になった姿勢データを取得
・取り付け具32gを装着してから外すまでを1セットとして、5セット分のデータを収集
上記の条件を行い、動画においてユーザが、光の照射元を近距離照射用の照射装置から遠距離照射用の照射装置に切り替えたいタイミングにラベル付けする。次に、ピッチ角で閾値判定した際に、最もラベルと重なる閾値を算出する。そして、閾値判定結果とラベルが最も一致した角度を算出する。
【0098】
図28は、低姿勢時においても遠くへ照射できる照射装置15の角度を決定する方法の結果を示す図である。
図28(A)において、横軸は時間を表し、左縦軸は計測されたピッチ角を表し、右縦軸は閾値の判定結果を表す。なお、図28(A)において、符号60で示される範囲はラベル付けされた範囲を表す。判定結果との重なりは、F値を用いて評価を行った。F値は、予測結果の評価尺度の一つであり、Fの値が1に近いほど良い予測であると判定される。ピッチ角の閾値を0度から45度まで1度刻みで閾値を変化させたときのF値の結果を図28(B)に示す。F値は、以下の式(4)に基づいて算出した。
【0099】
【数4】
【0100】
図28(B)において、横軸は閾値としたピッチ角を表し、縦軸はF値を表す。図28(B)に示すように、閾値が10度の時、F値が0.75で最大となった。この結果から、光源である照射装置15を切り替える閾値は10度が適切であるとした。そこで、本実施形態では、照射装置15を切り替える閾値を10度として用いるが、この結果は一例であり、犬種によって異なる。そのため、犬種によって同様の実験を行い、照射装置15を切り替える閾値を設定することが望ましい。
【0101】
図29は、実験により得られた閾値をもとに、遠距離照射用の照射装置15を取り付け具32gに搭載した一例を示す図である。
図29では、決定した閾値を10度であるとする。この場合、遠距離照射用の照射装置15は、近距離照射用の照射装置15の角度よりも鉛直方向に10度大きく傾けた位置へ照射できる位置に取り付けられる。このような構成により、図29に示すように、近距離照射用の照射装置15-5から照射された光151よりも遠距離照射用の照射装置15-6から照射された光152のほうが犬30の位置よりも遠い位置に照射される。
【0102】
図30は、第8の実施形態におけるLED光源モジュール10gの処理の流れを示すフローチャートである。なお、図30の説明では、制御装置20から一度照射指示がなされた後に、別の照射指示が制御装置20からなされないものとする。
入力部11は、制御装置20からの光の照射指示を入力する(ステップS101)。入力部11は、入力した照射指示を制御部14gに出力する。なお、照射指示には、光を照射する方向(例えば、左側又は右側)を指定する情報が含まれる。制御部14gは、入力部11から出力された照射指示に基づいて、近距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる(ステップS102)。具体的には、制御部14gは、照射指示に左側を指定する情報が含まれている場合、犬30の左側に設置されている照射装置15のうち、近距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる。図26を例にすると、制御部14gは、照射装置15-5を制御して光を照射させる。照射装置15-5は、制御部14gの制御に従って、光を照射する。
【0103】
IMUセンサ55は、姿勢データを取得する(ステップS103)。IMUセンサ55は、取得した姿勢データを制御部14gに出力する。制御部14gは、IMUセンサ55から出力された姿勢データに基づいて、犬30の低姿勢の条件を満たすか否かを判定する(ステップS104)。犬30の低姿勢の条件とは、犬30の姿勢が低姿勢になったと判定するための条件である。犬30の低姿勢の条件を満たす場合とは、例えば姿勢データが予め定められた姿勢データよりも低い場合である。すなわち、制御部14gは、IMUセンサ55から出力された姿勢データが予め定められた姿勢データよりも低い場合に、犬30の低姿勢の条件を満たすと判定する。一方、制御部14gは、IMUセンサ55から出力された姿勢データが予め定められた姿勢データよりも高い場合に、犬30の低姿勢の条件を満たさないと判定する。
【0104】
犬30の低姿勢の条件を満たさない場合(ステップS104-NO)、制御部14gは近距離照射用の照射装置15からの照射を継続させる。すなわち、制御部14gは、近距離照射用の照射装置15に対して照射の終了指示を行わない。
一方、犬30の低姿勢の条件を満たす場合(ステップS104-YES)、制御部14gは近距離照射用の照射装置15から遠距離照射用の照射装置15に切り替えて光を照射させる(ステップS105)。具体的には、まず制御部14gは、近距離照射用の照射装置15を制御して光の照射を終了させる。次に、制御部14gは、遠距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる。なお、ここでは、光を照射する方向を変更する指示が入力されていないため、制御部14gはステップS102の処理で選択した方向の遠距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる。図26を例にすると、制御部14gは、照射装置15-5を制御して光の照射を終了させ、照射装置15-6を制御して光を照射させる。照射装置15-6は、制御部14gの制御に従って、光を照射する。
【0105】
IMUセンサ55は、姿勢データを取得する(ステップS107)。IMUセンサ55は、取得した姿勢データを制御部14gに出力する。制御部14gは、IMUセンサ55から出力された姿勢データに基づいて、犬30の低姿勢の条件を満たすか否かを判定する(ステップS108)。犬30の低姿勢の条件を満たす場合(ステップS108-YES)、既に遠距離照射用の照射装置15で光の照射が行われているため、制御部14gは遠距離照射用の照射装置15からの照射を継続させる。すなわち、制御部14gは、遠距離照射用の照射装置15に対して照射の終了指示を行わない。
【0106】
その後、制御部14gは、光の照射終了の指示がなされたか否かを判定する(ステップS110)。光の照射終了の指示がなされた場合(ステップS110-YES)、制御部14gは光の照射終了の指示を受け付けた時点で光を照射している照射装置15を制御して光の照射を終了させる。
一方、光の照射終了の指示がなされていない場合(ステップS110-NO)、LED光源モジュール10gはステップS107以降の処理を繰り返し実行する。
【0107】
ステップS108の処理において、犬30の低姿勢の条件を満たさない場合(ステップS108-NO)、制御部14gは遠距離照射用の照射装置15から近距離照射用の照射装置15に切り替えて光を照射させる(ステップS111)。具体的には、まず制御部14gは、遠距離照射用の照射装置15を制御して光の照射を終了させる。次に、制御部14gは、近距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる。なお、ここでは、光を照射する方向を変更する指示が入力されていないため、制御部14gはステップS102の処理で選択した方向の近距離照射用の照射装置15を制御して光を照射させる。図26を例にすると、制御部14gは、照射装置15-6を制御して光の照射を終了させ、照射装置15-5を制御して光を照射させる。照射装置15-5は、制御部14gの制御に従って、光を照射する。その後、LED光源モジュール10gはステップS103以降の処理を繰り返し実行する。
【0108】
次に、犬30の姿勢変化に対応した取り付け具32gの効果について検証した結果を説明する。
図31及び図32は、犬30の姿勢変化に対応した取り付け具32gの効果についての検証結果を説明するための図である。
検証では、姿勢変化に対応した取り付け具32gと、姿勢変化に対応していない取り付け具32のそれぞれを犬30に装着して、3方向(前方向、左方向、右方向)への誘導を行って比較した。より具体的には、3方向に5回ずつランダムな順序で照射装置15から光を照射し、姿勢変化に対応した取り付け具32g(8光源)と、姿勢変化に対応していない取り付け具32(3光源)を用いてそれぞれ2巡ずつ行った。ここで、姿勢変化に対応していない取り付け具32とは、図2に示すような照射装置15を3つ(犬30の胸及び両肩)取り付けた取り付け具32である。
【0109】
上記の検証の結果、図31に示すように、姿勢変化に対応した取り付け具32gでは、97.6%の割合で誘導に成功しており、姿勢変化に対応していない取り付け具32に比べて成功確率が2.4%も上昇している。図31に示す結果から、姿勢変化に対応した取り付け具32gにおいても3方向への誘導が可能であることがわかる。
【0110】
評価については、犬30の移動方向を8方向から判定し、姿勢変化に対応した取り付け具32gを用いた場合と、姿勢変化に対応していない取り付け具32を用いた場合とで成功率と、判定された方向の分布で比較した。評価結果は、図32に示す通りである。なお、図32において、増設光源不使用は、姿勢変化に対応していない取り付け具32を用いた時の結果であり、増設光源使用は、姿勢変化に対応した取り付け具32gを用いた時の結果である。
【0111】
図32に示す表から、姿勢変化に対応した取り付け具32gを装着している犬30に左を指示した際には、後ろ方向へ移動したと判定された数が、増設光源不使用に比べて4.3%減った。また、姿勢変化に対応した取り付け具32gを装着している犬30に右を指示した際には右後ろへの判定が、増設光源不使用に比べて5.7%減り、右前への判定が増設光源不使用に比べて12.9%増えた。
【0112】
また、正面方向を指示した場合の移動量として歩数で比較したところ、姿勢変化に対応していない取り付け具32を用いた場合では1.8±0.6歩、姿勢変化に対応した取り付け具32gを用いた場合では2.5±0.5歩であり、片側t検定で有意差が確認された。このことから、犬30の姿勢変化に対応した取り付け具32gには、より望ましい方向へ移動させる効果があると言える。
【0113】
以上のように構成されたLED光源モジュール10gによれば、第7の実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、LED光源モジュール10gによれば、犬30の姿勢に応じて光を照射する照射装置15を切り替えることができる。これにより、犬30の姿勢が低姿勢の場合には、犬30の位置より遠い位置に光を照射する照射装置15から光を照射させることができる。これにより、犬の姿勢が変化した場合であっても精度よく犬30を誘導することが可能になる。
【0114】
(変形例)
第8の実施形態は、第7の実施形態と同様に変形されてもよい。
取り付け具32gには、照射装置として照射装置15-1~15-4が設置されず、照射装置15-5~15-8のみが設置されるように構成されてもよい。すなわち、取り付け具32gには、近距離照射用の照射装置15及び遠距離照射用の照射装置15のみが設置されるように構成されてもよい。
【0115】
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、犬に対して、照射装置から照射された光の探索を開始させる、及び、終了させるためのトリガーを加えた構成について説明する。なお、LED光源モジュール及び制御装置については、第1の実施形態~第8の実施形態のいずれかと同じ構成である。
第9の実施形態において照射装置15から照射された光の探索を開始させる、及び、光の探索を終了させるためのトリガーとして、スピーカーのような音出力装置で出力する特定の音が挙げられる。スピーカーは、取り付け具32,32f,32g内又は外に搭載される。また、スピーカーは、制御装置20の制御に従って音の出力の開始又は停止する。音出力装置と、制御装置20とは、無線又は有線により通信可能に接続される。音出力装置は、犬30に対して動作を指示するトリガーとなる音を出力する。制御装置20は、ユーザの指示に応じて音出力装置を制御して、犬30に対して動作を指示するトリガーとなる音を出力させる。
【0116】
上記のような光の探索の開始及び終了の動作を犬30に実行させるために、犬30に対して事前に以下のような訓練を行う。
・照射装置15から照射された光の探索を開始させるためのトリガーとなる第1の音(例えば、人が犬30の名前を呼ぶ等した音声)を犬30に学習させる。
・照射装置15から照射された光の探索を終了させるためのトリガーとなる第2の音(例えば、クリッカー音)を犬30に学習させる。
【0117】
実際に犬30を誘導する際には、ユーザが制御装置20を制御して、音出力装置から第1の音を出力させる。これにより、犬30は、光の探索を開始する。その後、ユーザが制御装置20を制御して照射装置15に対して指示することで、犬30を誘導したい方向に光を照射させて犬30を誘導する。そして、犬30の誘導を終了する際には、ユーザが制御装置20を制御して、音出力装置から第2の音を出力させる。これにより、犬30は、光の探索を終了する。
【0118】
ここで、第2の音の使い方について補足する。犬30の訓練として、望み通りのこと(例えば、第1の音を聞いて光を追う動作)が出来たときに第2の音を聞かせる。その結果、犬30は、第2の音(クリッカー音)=良く出来たと褒められていることを学習する。このようにすることで犬30は、自分のやったことが褒められていることが分かって、第1の音を聞いたときに継続して光を追う動作を行うようになる。
【0119】
以上のように構成された第9の実施形態によれば、犬に光の探索を開始させるタイミングと、光の探索を終了させるタイミングとを制御することができる。これにより、効率的に犬30を誘導させることが可能になる。
【0120】
(変形例)
音出力装置は、LED光源モジュール10,10f,10gからの制御に応じて、犬30に対して動作を指示するトリガーとなる音を出力するように構成されてもよい。このように構成される場合、LED光源モジュール10,10f,10gは、音出力装置に対して音を出力させるように指示させる通知を制御装置20から受信すると、音を出力させるように音出力装置に対して指示する。
【0121】
(第1の実施形態から第9の実施形態に共通する変形例)
LED光源モジュール10,10f,10gが備える照射装置15の一部は、レーザ光を照射する照射装置であってもよい。
【0122】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0123】
10、10f、10g…LED光源モジュール, 20…制御装置, 11…入力部, 12…位置情報取得部, 13…照射情報記憶部, 14、14f、14g…制御部, 15-1~15-n、15-1~15-o、15a、15b、15c、15d、15e…照射装置, 21…指示入力部, 22…制御部, 23…出力部, 51…取り付け部材, 52…軸受け部, 53…固定部, 54…接続部材, 541…第1端部, 542…第2端部, 55…IMUセンサ, 151…筒, 152…LED, 153…レンズ, 154…ヒートシンク, 155…リフレクタ, 156…鏡, 157…パラボラアンテナ, 158…鏡, 159…光ファイバ, 160-1,160-2…レンズ, 161…鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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